次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるスキャンシステム10の構成の概略を示す構成図である。本実施形態のスキャンシステム10は、ユーザーコンピューター(ユーザーPC)20と、ユーザーPC20にUSBケーブル12を介して接続されるプリンター30とにより構成されている。
ユーザーPC20は、各種制御を実行するCPU22や各種制御プログラムを記憶するROM23,データを一時的に記憶するRAM24などを備えたコントローラー21と、各種アプリケーションプログラムや各種ドライバー,データファイルなどを記憶するハードディスクドライブ(HDD)25と、キーボードやマウスなどの操作部26と、ディスプレイとしての表示部27とを備え、これらがバス29を介して電気的に接続された汎用のパーソナルコンピューターである。このユーザーPC20のHDD25には、ユーザーPC20とプリンター30との間で印刷データやスキャンデータなどのデータの送受信や印刷処理やスキャン処理に関する各種設定を行なうために用いられるドライバー(プリンタードライバーおよびスキャナードライバー)25aが記憶されている。このドライバー25aは、スキャン処理する際に、ある特定の色を除去するいわゆるドロップアウト処理を行なうドロップアウト機能と、ドロップアウト処理とは逆にある特定の色を強調するいわゆる強調処理を行なう強調機能とを有している。
プリンター30は、装置全体の制御を司るコントローラー31と、着色剤としてインクを用紙Sに吐出することにより印刷を行なう印刷機構32と、図示しない原稿台に載置された原稿を光学的に読み取って画像データを生成するスキャナー機構33とを備え、これらが図示しないバスを介して電気的に接続されているマルチファンクションプリンターである。なお、印刷機構32は、図示しない印刷ヘッドから用紙Sへシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(B)の各色のインクを吐出することにより印刷を行なう周知のインクジェット方式のカラープリンター機構として構成されている。また、スキャナー機構33は、周知のイメージスキャナーとして構成され、原稿に向かって発光したあとの反射光をレッド(R),グリーン(G),ブルー(B)の各色に分解したRGBデータをスキャン画像とする周知のカラーイメージセンサーを備える。なお、RGBデータは、縦横のマトリックス状に画素が配置され、配置される画素の各値は濃淡に応じて値0〜255の256階調(8ビット)で表されるものとする。
次に、こうして構成された本実施形態のスキャンシステム10の動作、特に、ドロップアウト処理と強調処理とを伴ってスキャン処理する際の動作について説明する。ユーザーの操作部26の操作によりスキャン処理が選択されると、ユーザーPC20のCPU22は、HDD25からドライバー25aを読み出して、メイン画面を表示部27に表示させ、そのメイン画面から「ドロップアウト/強調」タブが選択されると、画質調整画面40に切り替える。図2は、画質調整画面40の一例を示す説明図である。なお、本実施形態では、「ドロップアウト/強調」タブの選択により画質調整画面40に切り替えるものとしたが、メイン画面に画質調整画面40が含まれる画面構成としても構わない。以下、この画質調整画面40について説明する。なお、以下の説明では、ドロップアウト処理と強調処理とをまとめて色変換処理と称することがある。
この画質調整画面40は、スキャン処理した画像データの出力を設定する出力設定欄41と、画像データの画質を調整する画質調整欄45と、各種ボタンからなるボタン群50とにより構成されている。出力設定欄41には、カラーかグレー,モノクロのいずれの画像を出力するかを選択的に設定可能なラジオボタン42a〜42cと、プルダウン形式で出力画像の解像度を設定可能なリストボックス43とがレイアウトされている。この出力設定欄41における設定は、CPU22によりRAM24に登録される。また、画質調整欄45には、チェックを入れることによりドロップアウト処理や強調処理を伴ってスキャン処理することを指示可能なチェックボックス46と、プルダウン形式でドロップアウト処理や強調処理の対象色を設定可能なリストボックス47と、出力画像の明るさの調整が可能でその調整値が数値ボックス48aに表示される明るさ用スライドバー48と、出力画像のコントラストの調整が可能でその調整値が数値ボックス49aに表示されるコントラスト用スライドバー49とがレイアウトされている。なお、明るさ用スライドバー48やコントラスト用スライドバー49では、数値ボックス48a,49aに数値を入力することによっても設定が可能となっている。そして、ボタン群50には、スキャン画像をプレビュー表示させるためのプレビューボタン51と、本スキャンを行なうための本スキャンボタン52と、ヘルプ画面を読み出すためのヘルプボタン53と、各種環境設定を行なうための環境設定ボタン54と、処理を終了するための閉じるボタン55とがレイアウトされている。
ここで、ドロップアウト処理や強調処理の対象色を設定するリストボックス47では、ドロップアウト処理か強調処理かの処理種の指定を伴って処理の対象色として赤、青、緑などの既定の色を選択することができる他、ユーザーがカスタマイズ可能な「ユーザー設定」色を選択することができる。このリストボックス47において「ユーザー設定」が選択されると、CPU22は、ドロップアウト/強調色の設定画面60を読み出して表示部27に表示させる。ここで、図3は、ドロップアウト/強調色の設定画面60の一例を示す説明図である。以下、このドロップアウト/強調色の設定画面(以下、単に、設定画面という)60について説明する。なお、設定画面60を読み出す際に画像のプレスキャンが行なわれていなければ、CPU22はプリンター30のスキャナー機構33にスキャン指示を出力してプレスキャンを行なう。
この設定画面60は、登録済みの色設定を呼び出したり新たな色設定を登録したりする設定登録欄61と、色変換処理の対象となる複数の対象色の指定を切り替えたり各対象色について色相範囲を調整したり調整された色相範囲に対して感度や強度を調整したりする調整欄65と、処理対象の画像から色変換処理の対象領域を設定するための領域設定欄75と、各種ボタンからなるボタン群80とにより構成されている。
設定登録欄61には、プルダウン形式で登録済みの色設定を選択可能なリストボックス62と、現在の色設定を登録するための保存ボタン63と、リストボックス62のプルダウンメニューから登録済みの色設定を削除するための削除ボタン64とがレイアウトされている。この設定登録欄61では、ユーザーの操作部26の操作により設定名が入力されて保存ボタン63が押下(クリック)されると、CPU22は、そのときの調整欄65の設定内容をHDD25の所定領域に記憶して、以降はリストボックス62のプルダウンメニューからの読み出しを可能とする。
また、調整欄65には、指定色番号(本実施形態では、値1〜5としているが、5以上であっても構わない)に対応して色変換処理の対象領域の指定と対象色の指定とを切替可能なラジオボタン65a〜65eと、新たな対象領域と対象色とを指定するための追加ボタン66と、指定された対象領域と対象色の設定を削除するための削除ボタン67と、0°から360°までの色相が連続的に表示されると共に両端部における色相が連続する帯状の色相バー68と、色相バー68に重ねて表示され両端を示す2本の境界線により囲まれる表示範囲を対象色の色相範囲として設定可能なスライダー69と、スライダー69の左端の境界線の位置が表示される数値ボックス70aと、スライダー69の右端の境界線の位置が表示される数値ボックス70bと、処理種の設定としてドロップアウト処理か強調処理かのいずれかを選択可能なラジオボタン71a,71bと、感度の調整が可能であってその調整値が数値ボックス72aに表示される感度用スライドバー72と、強度の調整が可能であってその調整値が数値ボックス73aに表示される強度用スライドバー73と、各種設定をリセットするリセットボタン74とがレイアウトされている。なお、スライダー69は、2本の境界線をそれぞれスライドさせることにより色相範囲の設定が可能で、数値ボックス70a,70bに数値を入力することによっても設定が可能となっている。また、感度用スライドバー72や強度用スライドバー73も同様に数値ボックス72a,73aに数値を入力することによっても設定が可能となっている。
そして、領域設定欄75には、プレスキャンされた画像をプレビュー画像Pとして表示するためのプレビュー領域76と、プレビュー領域76に表示されたプレビュー画像Pから色変換処理を所望する領域を矩形状の対象領域Aとして設定するための十字アイコン77と、十字アイコン77の中心位置近傍が拡大表示される拡大表示領域78とがレイアウトされている。ユーザーは、操作部26の操作により十字アイコン77を移動させて、左上隅の位置を始点として指定すると共に右下隅の位置を終点として指定することで矩形状の対象領域Aを設定することができる。なお、矩形状の対象領域Aとしては、指定色番号に対応する数の領域(本実施形態では、5つの領域)を重複が可能に設定することができる。また、ボタン群80には、チェックを入れることによりプレビュー画像Pのプレビュー領域76への表示を指示可能なチェックボックス81と、ヘルプ画面を読み出すためのヘルプボタン82と、設定画面60を閉じるための閉じるボタン83とがレイアウトされている。
ここで、ユーザーの操作部26の操作により追加ボタン66が押下されると、CPU22は、ラジオボタン65a〜65eのうち未登録のラジオボタンに切り替える。そして、十字アイコン77が操作されてプレビュー画像Pから色変換を所望する色が含まれる領域が新たな対象領域Aとして設定されると、その対象領域Aに含まれる色の範囲を対象色の色相範囲として新たなスライダー69を色相バー68上に表示する。ここで、対象領域Aに含まれる色の範囲は、対象領域Aに含まれる画素のRGBデータから色相を取得してそのヒストグラムを作成し、作成したヒストグラムにおける色相のピーク値を中心とする所定範囲などに設定することができる。なお、RGBデータからの色相の取得については後述する。このように、本実施形態では、プレビュー画像Pから色変換を所望する色が含まれる対象領域Aの設定を受けてスライダー69が色相バー68上に表示されるから、カラーパレットなどから単に色を選択するものに比してより所望の色に近い対象色を選択することができる。また、本実施形態では、ドロップアウト処理と強調処理との対象色として、指定色番号1〜5に対応する最大で5つの領域に対してそれぞれ対象色が設定可能となっている。即ち、ラジオボタン65a〜65eの切り替えに伴って、指定色番号1〜5の各対象色に対応する5つの対象領域Aを十字アイコン77を用いて設定できると共に5つの色相範囲をスライダー69を用いて設定できるようになっている。なお、6以上の領域に対して対象色を設定可能なものとしても構わない。以下、これらの複数の対象領域Aの設定と複数の対象色の色相範囲の設定について説明する。図4〜6は、複数の対象領域と対象色の色相範囲とを設定する様子を示す説明図である。この図4〜6では、指定色番号1〜3にそれぞれ対応する3つの対象領域Aと3つの色相範囲HRとが設定される様子を示す。ここで、指定色番号1,2,3に対応する順に、対象領域A1,A2,A3とすると共に色相範囲HR1,2,3とする。また、色相範囲において、(d)はドロップアウト処理対象を示し、(k)は強調処理対象を示す。
まず、図4について説明する。図4では、指定色番号1,3がドロップアウト処理の対象色として設定され、指定色番号2が強調処理の対象色として設定される場合を示す。まず、図4(a)に示すように、指定色番号1に対応するラジオボタン65aが選択されている場合には、CPU22により指定色番号1に対応するスライダー69aが図中実線で示すアクティブ表示とされると共に対象領域A1が図中実線で示すアクティブ表示とされる。なお、図4(a)のプレビュー領域76に表示されているように、図4では各対象領域A1〜A3が互いに重複しない領域として設定されている。この図4(a)では、スライダー69aがアクティブ表示とされるため、スライダー69aの両端の境界線をユーザーの操作部26の操作によりスライドさせることで色相範囲HR(d)1が設定可能となる。また、数値ボックス70a,70bには、スライダー69aの両端の境界線に対応する数値がそれぞれ表示される。なお、図示は省略したが対象領域A1上の十字アイコン77をユーザーの操作部26の操作により移動させることで対象領域A1の拡大や縮小も可能となっている。一方、指定色番号2,3に対応するラジオボタン65b,65cは非選択とされるため、指定色番号2,3に対応するスライダー69b,69cが図中点線で示す非アクティブ表示とされる。このため、スライダー69b,69cの両端の境界線がスライド不能となり、ユーザー操作による色相範囲HR(k)2や色相範囲HR(d)3の設定が不能となる。また、対象領域A2,A3が図中点線で示す非アクティブ表示とされており、対象領域A2,A3の拡大や縮小は不能となる。
次に、図4(b)に示すように、図4(a)の状態からスライダー69aの図中右端の境界線が右方向にスライドされると、色相範囲HR(d)1が右方向に拡大されると共に数値ボックス70bの値が変化する。このとき、スライダー69aに対してなされたユーザーの操作がスライダー69bの色相範囲HR(k)2の範囲内に及んで、拡大された色相範囲HR(d)1は色相範囲HR(k)2と重複したものとなっている。なお、プレビュー領域76は変化がない限りその図示を省略するものとし、図4(b)のプレビュー領域76は図4(a)と同じであるため図示を省略した。ここで、図4では、各対象領域A1〜A3が互いに重複しない領域として設定されており、アクティブ表示されたスライダー69aは、他の色相範囲HR(k)2,HR(d)3を含めて色相バー68上の全ての範囲を制約なくスライド可能となっている。そして、CPU22は、他の色相範囲と重複する範囲を含めて、指定色番号1の色相範囲HR(d)1として受け付けてRAM24に登録する。このように、本実施形態では、処理種としてのドロップアウト処理や強調処理が異なる場合であっても、各対象領域A1〜A3が互いに重複しない領域として設定されている際には、色相範囲が互いに重複するのを許容して色相範囲を受け付けるのである。これは、各対象領域毎に色変換処理が行なわれるため、対象領域が重複していなければ異なる処理種の色相範囲が重複して設定されたとしても色変換処理において不都合が生じないためである。なお、本実施形態では、色相範囲としては、各スライダー69の両端の境界線で指定される範囲である表示範囲をそのまま受け付けて登録するものとした。また、図4では図示を省略したが、感度用スライドバー72による感度の調整や強度用スライドバー73による強度の調整がなされていれば、CPU22は、それぞれ感度パラメーターTs,強度パラメータTdとして受け付けて色相範囲HR(d)1に従属させて登録する。なお、それらの調整がなされていない場合には、各パラメーターにはデフォルト値が登録される。
また、図4(c)に示すように、ラジオボタン65aから指定色番号3に対応するラジオボタン65cに選択が切り替えられると、CPU22によりスライダー69aと対象領域A1とがアクティブ表示から非アクティブ表示に切り替えられると共に指定色番号3に対応するスライダー69cと対象領域A3とが非アクティブ表示からアクティブ表示に切り替えられる。なお、スライダー69bと対象領域A2とは非アクティブ表示のままとされる。また、数値ボックス70a,70bは、それぞれスライダー69cの両端の境界線に対応する数値の表示に切り替えられる。これにより、スライダー69cによる指定色番号3の色相範囲HR(d)3の設定や対象領域A3の拡大縮小が可能となる。また、感度や強度の調整がなされていれば、感度パラメーターTs,強度パラメータTdを色相範囲HR(d)3に従属させて登録する。このように、各スライダー69a〜69cによりその範囲が設定された各色相範囲HR(d)1〜HR(d)3を登録することができると共に感度パラメーターTs,強度パラメータTdを各色相範囲HR(d)1〜HR(d)3のそれぞれに従属させて登録することができる。本実施形態では、このような複数の色相範囲の設定を、帯状の色相バー68とそれに重ねて表示されるスライダー69とを用いて行なうものとしている。また、調整欄65には、帯状の色相バー68の長手方向に直交する方向にある色相バー68の上下の領域に、ラジオボタン65a〜65eやラジオボタン71a,71b,感度用スライドバー72,強度用スライドバー73をレイアウトするものとしている。これらのことから、複数の対象色を指定可能な場合であっても、色相が環状に表示される色相環や色相がパレット状に表示されるものを用いる場合に比して効率のよいレイアウトを可能として、調整欄65の省スペース化を図ることができる。また、感度と強度の調整においては、感度用スライドバー72と強度用スライドバー73とを各色相範囲に共用するものとしたから、調整欄65の更なる省スペース化を図ることができる。したがって、設定画面60が大型化するのを防止することができる。
さらに、アクティブ表示とされたスライダー69cにおいて図中右端の境界線が色相バー68の右端を超えてスライド操作されると、図4(d)に示すように、CPU22は、右端の境界線(図4(d)中、(R)と表示)を色相バー68の左端側に表示する。ここで、上述したように、色相バー68は両端の色相が連続したものとなっている。このため、図4(d)に示す場合には、CPU22は、スライダー69cの左端の境界線(図4(d)中、(L)と表示)と色相バー68の右端までの範囲と、スライダー69cの右端の境界線と色相バー68の左端までの範囲とを合わせた色相範囲HR(d)3を、色相が連続した範囲として受け付けることができる。このように、色相バー68として帯状のバーを用いた場合であっても、色相バー68の両端で色相の連続性が途切れないから操作性よく色相範囲を設定することができる。
次に、図5について説明する。図5では、図4と同様に、指定色番号1,3がドロップアウト処理の対象色として設定され、指定色番号2が強調処理の対象色として設定されている。ただし、図4とは異なり、図5(a)のプレビュー領域76に示すように各対象領域A1〜A3のうち対象領域A1と対象領域A2とが重複する領域として設定される場合を示す。図5(a)では、図4(a)と同様の状態を示しており、スライダー69aがアクティブ表示とされている。この図5(a)の状態から、スライダー69aの図中右端の境界線が右方向にスライドされる様子を図5(b)〜(d)に示す。なお、図4と同様に、プレビュー領域76は変化しない場合にはその図示を省略する。
図5(b)に示すように、スライダー69aが色相範囲HR(k)2の左端の境界線まで到達しない領域にある場合即ちスライダー69aに対してなされた操作がスライダー69bの色相範囲HR(k)2まで及ばない場合には、スライダー69aのスライドによってスライダー69bは影響を受けず色相範囲HR(k)2は変化しない。しかし、図5(c)に示すように、スライダー69aの右端の境界線が右方向にスライド操作されて、スライダー69aに対してなされた操作がスライダー69bの色相範囲HR(k)2の範囲内に及んだ以降は、異なる処理種の色相範囲HR(d)1と色相範囲HR(k)2とが重複して設定されないようスライダー69bの左端の境界線をスライダー69aの右端の境界線と共にスライドさせる。即ち、スライダー69aに対してなされた操作がスライダー69bの色相範囲HR(k)2に及ぶ分だけ色相範囲HR(k)2が狭くなるものとなる。このように、非アクティブ化されたスライダー69bの境界線であっても、ユーザーのスライダー69aに対する操作に合わせてスライドさせて表示するから、ユーザーの操作を妨げることなく優先させて異なる処理種の色相範囲同士が重なるのを防止することができる。これにより、本実施形態では、ドロップアウト処理と強調処理との異なる処理種の処理設定を、対象領域Aが重複する場合における色相範囲の重なりを防止して適切に受け付けることができる。なお、色相範囲HR(k)2は、図5(a)に示す元の範囲よりも小さな範囲として表示され、CPU22は、このときの表示範囲を色相範囲HR(k)2として受け付けることになる。
また、スライダー69aの右端の境界線がさらに右方向にスライド操作されて色相範囲HR(k)2の元の範囲の右端の境界線を越えた場合には、図5(d)に示すように、CPU22は、色相範囲HR(k)2の左端の境界線と右端の境界線とを接触させた状態でスライダー69aの右端の境界線と共にスライドさせる。これにより、アクティブ表示したスライダー69aに対して非アクティブ表示のスライダー69bの色相範囲HR(k)2の元の範囲の全てを越えるスライド操作がなされた場合であっても、異なる処理種の色相範囲同士が重なるのを防止することができる。なお、CPU22は、このときの範囲を色相範囲HR(k)2として受け付けることになるが、左端の境界線と右端の境界線とを接触させた状態は色相範囲HR(k)2に含まれる色相がないため、後述する処理において色相範囲HR(k)2に色相が該当すると判定される対象画素はなく実際には指定色番号2の色変換処理は行なわれないことになる。ただし、図示は省略したが、図5(d)の状態から指定色番号2に対応するラジオボタン65bに選択が切り替えられると、アクティブ表示に切り替えられたスライダー69bの左右の境界線がスライド操作可能となるため、色相範囲HR(k)2をある範囲をもったものとして再び設定し直すこともできる。このように、重複する対象領域A1,A2に対してドロップアウト処理と強調処理との異なる処理種が設定される場合には、異なる処理種の色相範囲が重複することがないようアクティブ表示とされるスライダー69aのスライド操作に合わせて非アクティブ表示とされるスライダー69bをスライドさせるのである。これにより、1つの色相バー68を用いて、複数の対象領域に対してドロップアウト処理と強調処理との異なる処理種の色相範囲を設定する場合であっても、重複する対象領域に対して異なる処理種の色相範囲が重複して設定されることによる不具合が生じるのを防止することができる。なお、ここでは、色相範囲HR(d)1と色相範囲HR(k)2との元の範囲即ち十字アイコン77が操作されて対象領域A1,A2が設定された際に最初に表示される色相範囲が離れている場合を例にとって説明したが、元の範囲についても同様に色相範囲HR(d)1と色相範囲HR(k)2とが重複しないよう表示される。その場合、例えば、後から設定される色相範囲を優先させて色相範囲HR(d)1を色相範囲HR(k)2と重複しない範囲まで縮小して表示するものとしたり、あるいは、先に設定される色相範囲を優先させて色相範囲HR(k)2を色相範囲HR(d)1と重複しない範囲まで縮小して表示するものとしたりすればよい。
続いて、図6について説明する。図6では、図4,5とは異なり指定色番号1〜3の全てがドロップアウト処理の対象色として設定され、また、図5と同様に各対象領域A1〜A3のうち対象領域A1と対象領域A2とが重複する領域として設定される場合を示す。まず、図6(a)は、図4(a),図5(a)と同様の状態を示しており、スライダー69aがアクティブ表示とされている。この図6(a)の状態から、スライダー69aの図中右端の境界線が右方向にスライド操作されて、スライダー69aに対してなされた操作がスライダー69bの色相範囲HR(k)2に及ぶ様子を図6(b)に示す。図示するように、色相範囲HR(d)1と色相範囲HR(d)2とが重複している。ここで、指定色番号1,2はいずれもドロップアウト処理対象として処理種が同一であるから、対象領域A1,A2が重複する場合に色相範囲が重複して設定されても不具合が生じることがない。このため、処理種が同じ対象領域が重複する場合には、重複する色相範囲の設定を許容するのである。なお、図4〜図6では図示は省略したが、各指定色番号の処理種が同一であって各対象領域が重複しない場合であれば、色相範囲同士の重複は問題なく許容されることになる。
こうして、各指定色に対する対象領域の設定や色相範囲の設定,処理種の設定を受け付けて閉じるボタン83が押下されると、CPU22は設定画面60を閉じる。そして、画質調整画面40において、本スキャンボタン52が押下されると、色変換処理が開始される。この処理は、CPU22により色変換処理ルーチンが読み出されて実行される。図7は、色変換処理ルーチンの一例を示す説明図である。なお、本実施形態では、画質調整画面40の出力設定欄41において、出力画像としてグレーやモノクロが設定された場合について説明する。
このルーチンが開始されると、CPU22は、まず、画像データ(RGBデータ)を入力する(ステップS100)。ここでは、本スキャンボタン52の押下に伴って、プリンター30のスキャナー機構33へスキャン指示が出力されており、そのスキャン指示を受けて駆動したスキャナー機構33によりスキャンされた画像データを入力するものとした。なお、プレスキャンした画像データを入力するものなどとしてもよい。画像データを入力すると、ドロップアウト処理や強調処理の対象となる対象画素を設定する(ステップS110)。この処理は、図8に示す対象画素の設定処理により行なわれる。ここで、色変換処理ルーチンの説明を中断して、対象画素の設定処理について説明する。
この対象画素の設定処理では、まず、判定画素を選定し(ステップS300)、選定した判定画素のRGB値を入力する(ステップS310)。ここで、判定画素の選定は、画像データを構成する画素のうち左上の画素から順に右方向に選定し、右方向に未選定の画素がなくなると一段下の左端の画素から順に右方向に選定することにより行なわれる。次に、入力したRGB値に対し色空間の変換処理を行なって色相Hを取得する(ステップS320)。ここで、RGB値から色相Hの取得は、次式(1)〜(3)によりRGB表色系の階調値をYCbCr表色系に変換し、変換したYCbCr表色系を次式(4)〜(6)によりLCH表色系に変換することにより行なうことができる。なお、上述したように、設定画面60の十字アイコン77の操作により対象領域Aが設定された際に対象領域Aに含まれる画素のRGBデータから色相を取得する場合も、これらの式(1)〜(6)により行なうことができる。
Y=0.2990×R+0.5870×G+0.1140×B (1)
Cb=−0.1687×R−0.3313×G+0.5000×B (2)
Cr=0.500×R−0.4187×G−0.0813×B (3)
H=180/π×tan(Cb/Cr) (4)
C=(Cr^2+Cb^2)^(1/2) (5)
L=Y (6)
こうして判定画素の色相Hを取得すると、変数nに値1をセットする(ステップS330)。ここで、変数nは、設定画面60における指定色番号に対応するものであり、本実施形態では値1〜5までの数となる。次に、指定色番号nの対象領域Anの座標を読み込んで(ステップS340)、判定画素が対象領域Anの範囲内にあるか否かを判定する(ステップS350)。ここで、対象領域Anの座標は、例えば画像の左上隅を原点とするXY座標系を予め定めて対象領域Anが設定された場合にその左上隅の座標と右下隅の座標とをRAM24に記憶しておくものとし、それらをステップS350で読み込むものとすればよい。そして、判定画素の座標が読み込んだ左上隅の座標と右下隅の座標との間にある場合に、判定画素が対象領域Anの範囲内にあると判定するものとした。判定画素が対象領域Anの範囲内にあると判定した場合には、指定色番号nの色相範囲HRnを読み込む(ステップS360)。そして、ステップS320で取得した色相Hが読み込んだ色相範囲HRnの範囲内にあるか否かを判定し(ステップS370)、範囲内にあると判定した場合には、指定色番号nに設定されている処理種がドロップアウト処理か強調処理かを判定する(ステップS380)。そして、ドロップアウト処理であると判定した場合には、色相範囲HR(d)nのドロップアウト対象画素に設定し(ステップS390)、強調処理であると判定した場合には、色相範囲HR(k)nの強調対象画素に設定する(ステップS400)。
一方、ステップS350で判定画素が対象領域Anの領域内にないと判定した場合あるいは判定画素が対象領域Anの領域内にはあるもののステップS370で色相Hが色相範囲HRnの範囲内にないと判定した場合には、変数nを値1だけインクリメントして(ステップS410)、変数nが最大値nmax(値5)を超えたか否かを判定する(ステップS420)。なお、図5(d)の説明で上述したように、色相範囲の左端の境界線と右端の境界線とを接触させた状態の範囲を色相範囲として受け付けた場合には、ステップS370において色相Hがその色相範囲内にないと判定されることになる。ステップS420で変数nが最大値nmaxを超えていないと判定した場合には、再びステップS340に戻って処理を行なう。こうした処理を繰り返し行なって、ステップS420で変数nが最大値nmaxを超えたと判定した場合には、判定画素を非対象画素に設定する(ステップS430)。なお、本実施形態では、変数nの最大値nmaxを値5としているが、値6以上としても構わない。例えば、6色以上の指定色が設定されている場合には、その指定色の数を最大値nmaxとすればよい。
こうして判定画素をドロップアウト対象画素か強調対象画素か非対象画素かのいずれかに設定すると、未判定の画素があるか否かを判定し(ステップS440)、未判定の画素があればステップS300に戻り処理を繰り返し、未判定の画素がなければ本処理を終了する。なお、CPU22は、各画素についてドロップアウト対象画素か強調対象画素か非対象画素かの設定と共に色空間の変換処理により得られたLCH表色系の各値をRAM24に登録する。
色変換処理ルーチンに戻って、こうしてドロップアウト対象画素や強調対象画素を設定すると、処理画素を選定し(ステップS120)、選定した処理画素がドロップアウト対象か強調対象か非対象かを判定する(ステップS130)。ここで、処理画素の選定は、上述した判定画素の選定と同様に左上の画素から順に選定するものとした。また、ドロップアウト対象か強調対象か非対象かの判定は、処理画素が上述した対象画素の設定処理におけるステップS370で設定されたドロップアウト対象画素かステップS380で設定された強調対象画素かいずれにも設定されない非対象画素かのいずれであるかを判定することにより行なうものとした。ステップS130で処理画素がドロップアウト対象であると判定した場合には、ドロップアウト用の色変換処理を行なってRGBにそれぞれ対応するRd,Gd,Bdを取得し(ステップS140)、上述した式(1)のRGBの各値に取得したRd,Gd,Bdをそれぞれ代入してグレースケール化処理を行なう(ステップS160)。また、ステップS130で処理画素が強調対象であると判定した場合には、強調用の色変換処理を行なってRGBにそれぞれ対応するRk,Gk,Bkを取得し(ステップS150)、ステップS160で上述した式(1)のRGBの各値に取得したRk,Gk,Bkをそれぞれ代入してグレースケール化処理を行なう。このように、本実施形態では、ドロップアウト処理と強調処理との異なる処理種の色変換処理を処理領域毎の対象画素に対して行なうのである。また、これらの処理の受け付けを設定画面60により一括して受け付けることができるから、例えば用紙の本文中に赤色で書かれた文字を強調処理すると共に用紙の余白に赤色で書かれたメモ書きをドロップアウト処理したい場合などにおいて、複数の設定画面を行き来して処理の設定を行なう必要がなく、ユーザーの利便性の向上を図ることができる。なお、ドロップアウト用の色変換処理や強調用の色変換処理の詳細については後述する。
一方、ステップS130で処理画素が非対象画素であると判定した場合には、ステップS160で上述した式(1)により処理画素のRGB値をそのまま用いてグレースケール化処理を行なう。こうしてステップS160でグレースケール化処理を行なうと、未処理画素があるか否かを判定し(ステップS170)、未処理画素があればステップS120に戻り処理を繰り返す。一方、ステップS170で未処理画素がなければ、出力画像としてモノクロかグレーかのいずれが設定されているかを判定する(ステップS180)。ステップS180でモノクロが設定されていると判定すれば、グレースケール化した各画素の階調値を2値化処理して(ステップS190)、2値画像を出力して(ステップS200)、本ルーチンを終了する。一方、ステップS180でグレーが設定されていれば、グレースケール画像を出力して(ステップS210)、本ルーチンを終了する。以下、ドロップアウト用の色変換処理と強調用の色変換処理の詳細についてそれぞれ説明する。まず、ドロップアウト用の色変換処理について説明する。図9は、ドロップアウト用色変換処理の一例を示すフローチャートである。
このドロップアウト用色変換処理では、まず、処理画素のLCH表色系の各値を読み込んで(ステップS500)、色相範囲HR(d)nに対応付けて登録された感度パラメータTsを読み込む(ステップS510)。次に、読み込んだ感度パラメータTsに応じて変換曲線L1,L2の交点Qの位置を変更して交点Qの位置が変更された変換曲線L1,L2を用いて明度Lの明度変換処理を行なう(ステップS520)。ここで、図10は、明度変換処理に用いる変換曲線L1,L2を示す説明図である。図10(a)に示すように、入力の明度Lを横軸にとり出力の明度L’を縦軸にとり、高明度側の明度Lを明度L’に変換するための変換曲線L1と低明度側の明度Lを明度L’に変換するための変換曲線L2との交点を交点Qと称する。また、この交点Qは、感度パラメータTsの値に応じて図中左右方向に平行移動させることができる。即ち、交点Qの位置を座標(TIn,K(Kは定数))で表すと、TInの値を感度パラメータTsによって調整できるものとなっている。より具体的には、図10(b)に示すように、感度パラメータTsを高くするほどTInの値が小さくなり交点Qが図中左方向に移動する(例えば、交点Q’)。この場合には、変換曲線L1’により特に低明度側の明度Lがより高い明度L’に変換されることになる。一方、感度パラメータTsを低くするほどTInの値が大きくなり交点Qが図中右方向に移動する(例えば、交点Q”)。この場合には、変換曲線L2”により特に低明度側の明度Lがより低い明度L’に変換されることになる。このように、変換曲線L1,L2を用いた明度変換処理は、明度Lのヒストグラムのレンジを圧縮する色域圧縮処理となることがわかる。そして、例えば、画像の背景などに色のグラデーションがあって一律にドロップアウトしたい場合には、感度パラメータTsを高く設定することで低明度側の明度Lが高明度側の明度L’に変換されるから、背景の画素の明度Lを均一な明度Lに変換することができる。これにより、背景の画素を一律にドロップアウトすることができる。また、画像中の文字をドロップアウトさせたくない場合には、同じ色相であっても文字は背景より低明度であることが多いから、感度パラメータTsを低く設定することで文字のある低明度側の明度Lをより低明度側の明度L’に変換することができる。これにより、画像中の文字をドロップアウトさせずに残すことができる。このような感度パラメータTsの調整を、各色相範囲毎に設定可能なものとしたから、ドロップアウト処理の対象色毎に、ユーザーの所望するドロップアウト効果を与えることができる。
こうして明度変換処理を行なうと、色空間の逆変換処理を行なう(ステップS530)。この逆変換処理は、明度変換処理後の明度L’と彩度C,色相Hとから次式(7)〜(9)によりYCbCr表色系(Y’Cb’Cr’)に変換し、変換したY’Cb’Cr’を次式(10)〜(12)によりRGB表色系(R’G’B’)に変換することにより行なわれる。
Y'=L' (7)
Cb'=C×sin(H×π/180) (8)
Cr'=C×cos(H×π/180) (9)
R'=Y'+1.402Cr' (10)
G'=Y'−0.344Cb'−0.714Cr' (11)
B'=Y'+1.773Cb' (12)
こうして色空間の逆変換処理を行なうと、色相範囲HR(d)nに対応付けて登録された強度パラメータTdを読み込む(ステップS540)。次に、読み込んだ強度パラメータTdに基づいて変換行列の係数を調整し調整した変換行列を用いて色変換処理を行なう(ステップS550)。ここでは、まず、次式(13)に示す調整用行列(dIntensity)に強度パラメータTdを入力して調整用行列(dIntensity)の各値を定める。次に、次式(14)により調整用行列(dIntensity)を後述する基準係数d1,d2,d3に乗じて変換行列の各係数d1’,d2’,d3’を算出する。そして、次式(15)により、ステップS530の逆変換処理で得られたR’G’B’に変換行列を乗じてRd,Gd,Bdを得る。このようにしてステップS550の色変換処理が行なわれ、この処理で得られたRd,Gd,Bdは、ドロップアウト非対象の画素と共に、上述した色変換処理ルーチンのステップS150のグレースケール化処理に用いられる。
ここで、色変換用の基準係数d1,d2,d3の一例を図11に示す。図示するように、各色に応じて基準係数d1,d2,d3の値が定められている。例えば、赤や桃の場合には、基準係数d1が値1に定められ基準係数d2,d3が値0に定められている。赤や桃の場合にはもとよりR(R’)の値が高いため、上述した式(13)〜(15)から、R(R’)の高い値をより反映させた色変換処理が行なわれることがわかる。即ち、グレースケール化されたときの階調値がより高くなるよう係数値が定められている。また、他の色についても同様に定められている。一方、調整用行列(dIntensity)についても、強度パラメータTdが大きくなるほどより高い階調値が得られるように変換行列の係数d1’,d2’,d3’を導き出す行列となっている。このため、強度パラメータTdを大きくするほどグレースケール化処理された画素の階調値が一律に高くされてドロップアウトされやすくなる。このような強度パラメータTdの調整を、各色相範囲毎に設定可能なものとしたから、ドロップアウト処理の対象色毎に、ユーザーの所望するドロップアウト効果を一律に与えることができる。ここで、色相範囲HR(d)nが主にどの色を示すものであるかは、例えば色相範囲HR(d)nの中央値と各色の代表的な色相範囲の中央値とを比較して最も近い色に定めるなど、色相の値を用いて定めることができるため、色相範囲HR(d)nが示す色に応じて図11の基準係数d1,d2,d3を選択するものなどとすればよい。
次に、強調用の色変換処理について説明する。図12は、強調用色変換処理の一例を示すフローチャートである。この強調用色変換処理では、まず、処理画素のLCH表色系の各値を読み込んで(ステップS600)、色空間の逆変換処理を行なう(ステップS610)。この逆変換処理は、LCH表色系の各値を上述した式(7)〜(9)と同様の式によりYCbCr表色系に変換し、変換したYCbCr表色系の各値を上述した式(10)〜(12)と同様の式によりRGB表色系に変換することにより行なわれる。こうして逆変換処理を行なうと、変換したRGB表色系の各値を強調用処理の値として予め設定されたRk,Gk,Bkに置換する置換処理を行なう(ステップS620)。ここでは、予め設定された値として、(Rk,Gk,Bk)=(0,0,0)即ち黒画素となる値が定められているものとした。なお、色相範囲HR(k)nに対応付けて登録された強度パラメータTdを、予め設定されたRk,Gk,Bkの各値を調整するためのパラメータとして用いることもできる。例えば、強度パラメータTdが低いほど黒色よりも明るくなる色の画素値に調整するものなどとしてもよい。この処理で得られたRk,Gk,Bkは、強調非対象の画素と共に、上述した色変換処理ルーチンのステップS150のグレースケール化処理に用いられる。このため、強調処理のすべての対象色は黒色に変換されるから、強調処理の対象である文字などを視認性のよい色に色変換することができる。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のドライバー25aを読み出して設定画面60を表示部27に表示するCPU22が本発明の「受付画面表示手段」に相当し、ラジオボタン65a〜65eの操作に伴って設定画面60の調整欄65における色相バー68上のスライダー69のアクティブ表示や非アクティブ表示を切り替えるCPU22が「表示制御手段」に相当し、設定画面60の調整欄65における色相バー68上のスライダー69による色相範囲の設定やラジオボタン71a,71bによるドロップアウト処理または強調処理の処理種の設定を受け付けたり領域設定欄75における対象領域Aの設定を受け付けたりするCPU22が「設定受付手段」に相当する。
以上詳述した本実施形態のスキャンシステム10によれば、色相バー68上にレイアウトされる複数のスライダー69のうちアクティブ表示したスライダー69に対して非アクティブ表示したスライダー69の色相範囲に及ぶ操作がなされた際には、アクティブ表示したスライダー69と変更操作が及ぶスライダー69とにそれぞれ対応する対象領域Aが重複しない場合や処理種が同一である場合には、変更操作が及ぶスライダー69の色相範囲はそのままにしてアクティブ表示したスライダー69を変更操作に従って色相範囲を変更する。また、アクティブ表示したスライダー69と変更操作が及ぶスライダー69とにそれぞれ対応する対象領域Aが重複し且つ処理種が異なる場合には、アクティブ表示したスライダー69をユーザーの変更操作に従って色相範囲を変更すると共に変更操作が及ぶスライダー69の色相範囲をアクティブ表示したスライダー69の色相範囲と重ならないよう狭くして表示する。これにより、ドロップアウト処理と強調処理との異なる処理種の処理設定を受け付ける際に処理種の異なる対象領域Aが重複する場合には色相範囲同士が重なるのを防止することができる。この結果、異なる処理種の処理設定を一括して適切に受け付けることができるから、ユーザーの使い勝手を向上させることができる。また、非アクティブ表示のスライダー69であっても、アクティブ表示したスライダー69に対するユーザーの操作に合わせてスライドさせるから、ユーザーの操作を優先させて異なる処理種の色相範囲同士が重なるのを防止することができる。さらに、アクティブ表示したスライダー69に対して非アクティブ表示のスライダー69の元の表示範囲の全てを越えるスライド操作がなされた場合であっても、非アクティブ表示のスライダー69の両境界線を接触させた状態でスライドさせて異なる処理種の色相範囲同士が重なるのを防止することができる。
なお、本発明は上述した実施態様に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
上述した実施形態では、アクティブ表示とされるスライダー69のスライドに合わせて非アクティブ表示とされるスライダー69がスライドすることにより異なる処理種の色相範囲同士が重複することがないようにしたが、これに限られるものではない。例えば、アクティブ表示とされるスライダー69のスライド範囲を非アクティブ表示とされる異なる処理種のスライダー69の色相範囲上をスライドできないように制限することにより、異なる処理種の色相範囲同士が重複しないようにしてもよい。あるいは、複数の指定色番号のうち番号の小さいものに対応するスライダー69のスライド範囲を優先させることにより異なる処理種の色相範囲同士が重複することがないようにしてもよい。その場合、例えば指定色番号3に対応するスライダー69cがアクティブ表示とされる場合には、それよりも番号の小さい指定色番号1,2に対応するスライダー69a,bの色相範囲上はスライドできず、指定色番号3よりも番号の大きい指定色番号4,5に対応するスライダー69d,eの色相範囲上をスライドできると共にそのスライドに合わせて本実施形態と同様にスライダー69d,eの色相範囲が変更されるものなどとしてもよい。
上述した実施形態では、ドロップアウト用の色変換処理と強調用の色変換処理とをそれぞれ異なる処理としたが、共通の処理としてもよく、例えばいずれも図9に示すドロップアウト用色変換処理(変換行列を用いた処理)を行なうものとしてもよいし、いずれも図12に示す強調用色変換処理(置換による処理)を行なうものとしてもよい。置換による処理の場合、ドロップアウト対象の画素の色を白色に置換するものとしたり画像に占める最も多い色を背景色と判定して背景色に置換するものとしてもよい。また、図12に示す強調用色変換処理においては、処理対象の画素の色を黒色に置換するものとしたが、これに限られず、赤色などの他の色に置換するものとしてもよい。
上述した実施形態では、設定画面60の調整欄65における感度用スライドバー72と強度用スライドバー73とにより感度と強度との両方を調整可能なものとしたが、これに限られず、いずれか一方のみを調整可能なものとしてもよいし、両方の調整を受け付けないものとしてもよい。
上述した実施形態では、設定画面60の調整欄65における色相バー68を長手方向が左右方向になるようレイアウトするものとしたが、これに限られず、長手方向が上下方向になるようレイアウトするものとしてもよい。この場合、帯状の色相バー68の長手方向に直交する方向にある色相バー68の左右の領域に、ラジオボタン65a〜65eやラジオボタン71a,71b,感度用スライドバー72,強度用スライドバー73をレイアウトするものとすればよい。
上述した実施形態では、CPU22がドロップアウト機能と強調機能とを有するドライバー25aを読み出して色変換処理を伴ってスキャン処理するものとしたが、これに限られるものではなく、ドロップアウト機能と強調機能とを有するアプリケーションソフトを読み出して処理を行なうものとしてもよい。あるいは、ドロップアウト機能と強調機能とがプリンター30に組み込まれ、このプリンター30のコントローラー31がドロップアウト機能や強調機能を読み出して処理を行なうものとしてもよい。その場合、設定画面60をプリンター30の表示部に表示するものなどとすればよい。
上述した実施形態では、出力画像としてグレーやモノクロを出力する場合を例示したが、カラーの画像を出力する場合に適用するものとしてもよい。
上述した実施形態では、印刷機構32やスキャナー機構33を備える複合機としてのプリンター30を例として説明したが、印刷機構32を備えずにスキャナー機構のみを備えるスキャナー単体機であってもよい。また、上述した実施形態では、インクジェット方式の印刷機構32を例として説明したが、レーザー方式のプリンター機構であってもよい。さらに、上述した実施形態では、原稿に向かって発光したあとの反射光をレッド(R),グリーン(G),ブルー(B)の各色に分解したRGBデータをスキャン画像とする周知のカラーイメージセンサーを備えるスキャナー機構33を例として説明したが、レッド(R),グリーン(G),ブルー(B)の各色の光源およびモノクロイメージセンサーを備えるCIS(コンタクトイメージセンサー)方式のスキャナー機構であってもよい。