以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(一実施形態)
図1〜図4は、本発明の一実施形態に係る流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置を示している。
本実施形態は、本発明を車両用の内燃機関の燃料の圧力を調整するプレッシャレギュレータとしての流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置に適用したものであり、いわゆるインタンク式の燃料供給システムとして構成されている。すなわち、具体的なタンク構造は図示しないが、本実施形態の燃料供給装置は、燃料タンク内のサブタンクに収納されたプレッシャレギュレータを具備しており、例えばエンジンで遂次消費される燃料消費量分だけサブタンク内に燃料を移送するようになっている。
まず、本実施形態の燃料供給装置の構成について説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態の燃料供給装置は、内燃機関であるエンジン1(燃料消費部)で消費される燃料、例えばガソリンを貯留する燃料タンク2と、その燃料タンク2内に貯留された燃料をエンジン1に装備される複数のインジェクタ3(燃料噴射弁;図2中に1つのみ図示している)に圧送・供給する燃料圧送回路10と、この燃料圧送回路10からインジェクタ3に供給される燃料を導入して予め設定されたシステム圧P1に調圧するとともに、そのシステム圧P1を高圧側の設定圧と低圧側の設定圧とに切り替える、すなわち可変制御することができるプレッシャレギュレータ20(流体圧力調整装置)と、プレッシャレギュレータ20の設定圧を高圧側と低圧側とのうち任意の一方側の設定圧に切替え制御することができる設定圧切替機構40と、を備えている。
エンジン1は、例えば多気筒の4サイクルガソリンエンジンであり、このエンジン1の複数の気筒に対応して設けられたインジェクタ3は、例えばその噴孔側端部3aを複数の気筒の吸気ポート(図示せず)内に露出している。また、燃料圧送回路10からの燃料は、デリバリーパイプ4を介して各インジェクタ3に分配されるようになっている。
燃料圧送回路10は、燃料タンク2内の燃料を汲み上げるとともに加圧して吐出する燃料ポンプ11と、燃料ポンプ11の吸入口側で異物の吸入を阻止するサクションフィルタ12と、燃料ポンプ11の吐出口側で吐出燃料中の異物を除去する燃料フィルタ13と、燃料フィルタ13より下流側に位置するチェック弁14(逆止弁)と、を含んで構成されている。
燃料ポンプ11は、詳細を図示しないが、例えばポンプ作動用の羽根車を有するポンプ作動部分とそのポンプ作動部分を駆動する直流の内蔵モータとを有しており、燃料タンク2内から燃料を図1中に仮想線で示すように汲み上げて加圧し、吐出することができる。この燃料ポンプ11は、内蔵モータの回転速度[rpm]を変化させることで、その単位時間当りの吐出量を可変制御することができるようになっている。また、チェック弁14は、燃料ポンプ11からインジェクタ3側への燃料供給方向に開弁する一方、インジェクタ3側から燃料ポンプ11側への燃料の逆流方向には閉弁し、加圧された供給燃料の逆流を阻止するようになっている。
また、燃料ポンプ11は、後述する電子制御ユニット(以下、ECUという)41により内蔵モータへの通電を制御されることで、駆動および停止されるとともに、単位時間当りの燃料吐出量を変化させるようになっている。
プレッシャレギュレータ20は、燃料が導入される複数の燃料導入口21a、21cおよびその燃料が排出される燃料排出口21bを有するハウジング21を備えており、このハウジング21は、一対の凹状のハウジング部材18、19をそれらの外周フランジ部18j、19jでかしめ結合したものである。なお、燃料導入口21aおよび燃料排出口21bは、それぞれハウジング21の円周方向に等間隔に離間しているが、それぞれハウジング21の円周方向のいずれかの位置に少なくとも1つ形成すればよく、それぞれの開口形状は任意である。また、ハウジング部材18、19は、例えば鋼板やステンレス鋼板を凹状にプレス加工したものであるが、図示する形状に成型したものであってもよい。
図1および図2に示すように、ハウジング21の内部には、ハウジング21の内部を2室に区画する隔壁状の調圧部材22が設けられており、調圧部材22は、ハウジング21の内部にあってこのハウジング21との間に燃料導入口21aに連通する調圧室23を形成している。この調圧部材22は、調圧室23内に導入される燃料圧力に応じた開度で燃料導入口21aを燃料排出口21bに連通させる開弁方向に変位するようになっており、可撓性の環状膜部材24とその環状膜部材24の内周側に位置する略円板状の板状部材25とを一体的に組み付ける(一体化する)ことにより、環状膜部材24はその一面側で燃料導入口21aから調圧室23内に導入される燃料の圧力を常時受圧するようになっている(詳細は後述する)。また、調圧部材22は、その他面側でハウジング21との間に背圧室26を形成しており、この背圧室26内には、調圧部材22の板状部材25を閉弁方向に付勢する付勢機構としての圧縮コイルばね27(弾性部材)が設けられている。また、調圧部材22と共に背圧室26を形成する一方のハウジング部材19には、少なくとも1つの大気圧導入穴19aが形成されている。
具体的には、調圧部材22の環状膜部材24は、例えば基布材料層(例えば、ポリアミド合成繊維等)に燃料に対し劣化し難いゴム層(例えば、水素添加ニトリルゴムやフッ素ゴム等)を一体的に接着した可撓性のダイヤフラムで構成されており、調圧部材22の板状部材25は、環状膜部材24の中央部に支持された例えば金属(例えば、工具鋼、ステンレス鋼等)製の略円板状のプレートで構成されている。
また、ハウジング21の内部には、調圧室23の内部で調圧部材22の板状部材25に対向する環状弁座部31および環状内突部32が略同心に配置されており、環状弁座部31および板状部材25は相対変位により開閉する調圧バルブ機構を構成している。
具体的には、環状弁座部31および環状内突部32は、互いに径が異なりハウジング21の内部に同軸に配置された外側筒状部材35および内側筒状部材36によって構成されており、環状弁座部31は、その内周側では内側筒状部材36との間に燃料排出口21bに連通する燃料排出通路31hを形成し、一方、その外周側ではハウジング21および調圧部材22との間に燃料導入口21aに連通する環状の外側燃料導入通路37(第1の流体導入通路)を形成している。なお、環状弁座部31の内外周縁部には、それぞれ面取りが施されている。
また、環状内突部32と調圧部材22の板状部材25とは、板状部材25の変位方向において十分に離間しており、環状内突部32の内周側には内側燃料導入通路32h(第2の流体導入通路)が形成されている。この内側燃料導入通路32hには、燃料ポンプ11からの加圧燃料が選択的に導入されるようになっており、内側燃料導入通路32hは、環状弁座部31と板状部材25とが相対変位するとき、その相対変位量に応じて内側燃料導入通路32hが調圧室23の内部に開口する内端側での開度を変化させるようになっている。
一方、調圧部材22は、外側燃料導入通路37に導入される流体の圧力を受ける第1受圧面部22aと、外側燃料導入通路37および内側燃料導入通路32hのうち内側燃料導入通路32hに導入される流体の圧力を受ける第2受圧面部22bと、第2受圧面部22bと共に内側燃料導入通路32hの内端部を閉塞して流体排出通路から常時遮断する通路閉塞部22cと、を有している。
調圧部材22の第1受圧面部22aは、板状部材25の外周部に液密(気密的)に結合するとともにハウジング21に支持された環状膜部材24によって、板状部材25の周囲に形成されており、環状の外側燃料導入通路37の内部の燃料の圧力を常時受けるようになっている。また、調圧部材22の第2受圧面部22bは、調圧室23に面する板状部材25の一面側部分25aによって形成され、内側燃料導入通路32hの内部の燃料圧力を受けるようになっている。
図3に示すように、調圧部材22の第1受圧面部22aと第2受圧面部22bは、燃料排出通路31hに対応する非加圧中間面22dとを挟んで半径方向に離間しており、非加圧中間面22dは、タンク2の内圧(例えば大気圧)相当の圧力を受け、実質的に加圧されないようになっている。そして、調圧部材22の第1受圧面部22aおよび第2受圧面部22bに対し燃料ポンプ11からの加圧燃料の圧力が選択的に作用するとき、調圧部材22は、外側燃料導入通路37と燃料排出通路31hとを連通および遮断することで、外側燃料導入通路37内に導入される供給側の燃料の圧力を設定圧に調整する一方、その第2受圧面部22bに作用する内側燃料導入通路32h内の燃料の圧力に応じて設定圧を切り替えるようになっている。ここで、第1受圧面部22aの受圧面積A1と内側の第2受圧面部22bの受圧面積A2とは、予め設定された面積比A1/A2になるように設定されている。
調圧部材22の通路閉塞部22cは、環状膜部材24の素材と同様な素材からなる可撓性の筒状部材28によって構成されており、この可撓性の筒状部材28は、調圧部材22の第2受圧面部22bの周囲で板状部材25に気密的に結合された一端部28aと、ハウジング21の環状内突部32に気密的に保持された他端部28bとを有している。また、可撓性の筒状部材28は、環状膜部材24と一体に形成されることで、この環状膜部材24と共に可撓性の膜部材29を構成している。
また、板状部材25は、その外周側に環状の段付き部25pを有し、その段付き部25pの外周側に、可撓性の膜部材29を間に挟んで保持リング部25rが気密的に圧接するよう嵌着されている。すなわち、調圧部材22の板状部材25は、環状膜部材24の内周部および可撓性の筒状部材28の一端部28aを板状部材25との間に気密的に挟圧保持する保持リング部25rを有している。
この板状部材25の保持リング部25rは、ハウジング21に設けられる環状弁座部31に対向する環状のバルブ面25vを有しており、この環状のバルブ面25vが環状弁座部31側に形成されたシール面31sに着座するとき、外側燃料導入通路37と燃料排出通路31hとの連通が遮断されるようになっている。
また、保持リング部25rのバルブ面25vは、図1中に部分拡大図で示すように、環状弁座部31のシール面31sよりも半径方向に幅広くなっており、例えば環状弁座部31の内側に余裕幅mを有している。
このように、本実施形態では、外側燃料導入通路37および内側燃料導入通路32hと燃料排出通路31hとがそれぞれ調圧部材22の一面側に配置されており、調圧部材22は、ハウジング21の内部で外側燃料導入通路37および内側燃料導入通路32hに導入される燃料の圧力に基づく開弁方向(外側燃料導入通路37と燃料排出通路31hとを遮断する方向)の付勢力と、圧縮コイルばね27からの閉弁方向(外側燃料導入通路37と燃料排出通路31hとの連通を遮断する方向)の付勢力と応じて、外側燃料導入通路37と燃料排出通路31hとを連通および遮断するようになっている。
図1に示すように、ハウジング21の他の一方のハウジング部材18は径方向内方側ほど深くなるよう複数段の段付凹状に形成されており、環状弁座部31および環状内突部32を構成する外側筒状部材35および内側筒状部材36は、そのハウジング部材18に異なる半径位置で固定されている。また、ハウジング21のハウジング部材18は、外側筒状部材35に対し径方向の外側に離間する第1環状壁部18aと、外側筒状部材35を支持する第2環状壁部18bと、内側筒状部材36を支持する第3環状壁部18cとを有し、さらに、第1環状壁部18aおよび第2環状壁部18bを連結する第1段付壁部18dと、第2環状壁部18bおよび第3環状壁部18cを連結する第2段付壁部18eと、第3環状壁部18cの外端部に連結された第3段付壁部18fとを有している。
ハウジング21に形成される燃料導入口21aは、外側筒状部材35の外周面側(径方向外側)でハウジング部材18の第1段付壁部18dに開口しており、ハウジング21に形成される燃料排出口21bは、外側筒状部材35の内周面側(径方向内側)で第2段付壁部18eに開口している。また、外側燃料導入通路37は、ハウジング部材18、調圧部材22の環状膜部材24および外側筒状部材35によって形成され、燃料導入口21aから燃料を導入するとともに第1受圧面部22aにその燃料圧力を受圧させるようになっている。また、環状弁座部31の燃料排出通路31hは、外側筒状部材35と内側筒状部材36の間に略円筒状に形成されるとともに、ハウジング部材18と外側筒状部材35および内側筒状部材36と間の環状排出通路38を介してハウジング21の燃料排出口21bに連通している。さらに、環状内突部32の内側燃料導入通路32hは、内側筒状部材36の内方に略円柱状に形成されており、ハウジング部材18の第3段付壁部18fには、環状内突部32の内側燃料導入通路32hに連通する中心の燃料導入口21cが形成されている。
図2に示すように、燃料導入口21aは、燃料圧送回路10のチェック弁14より下流側の回路部分である燃料通路15の分岐通路15a(供給側分岐通路)に接続されており、プレッシャレギュレータ20の内側燃料導入通路32hは、燃料圧送回路10のチェック弁14より上流側の回路部分である分岐通路16に接続されている。ここで、燃料通路15の分岐通路15aは、デリバリーパイプ4とチェック弁14の間の燃料配管路部分を構成するとともに、例えばサクションフィルタ12および燃料フィルタ13のフィルタエレメント(図示せず)を燃料ポンプ11と共に収納するフィルタケースの一部17(図2に一部のみ図示)に形成された分岐部分15bと、このフィルタケースの一部17とハウジング21との間に形成された環状通路部分15cとを有している。また、分岐通路16は、燃料ポンプ11から圧送された燃料をチェック弁14より上流側の一端側から導入する燃料配管路であり、この分岐通路16の他端側が内側燃料導入通路32hに連通するハウジング21の中心の燃料導入口21cに接続されている。
また、燃料通路15の分岐通路15aには、外側燃料導入通路37および内側燃料導入通路32hのうち少なくとも一方、例えば内側燃料導入通路32hの上流側に位置する三方電磁弁45が設けられている。
この三方電磁弁45は、内側燃料導入通路32hの上流側で内側燃料導入通路32hへの燃料の流入(導入)を規制することができる通路開閉弁としての機能と、この通路開閉弁が内側燃料導入通路32hへの燃料の導入を規制するよう閉弁するときに、その通路開閉弁より燃料導入方向下流側の内側燃料導入通路32h内の圧力を燃料排出口21b側(タンク内圧側)に解放する圧力解放弁の機能と、を併有している。そして、この三方電磁弁45の開閉状態に応じて内側燃料導入通路32hへの燃料の流入が選択的に規制されることで、調圧部材22に加圧燃料の圧力の作用する領域が、第1受圧面部22aおよび第2受圧面部22bの双方になるか、あるいは第1受圧面部22aおよび第2受圧面部22bのうちいずれか一方になるかが切り替えられるようになっている。
三方電磁弁45は、燃料通路15の分岐通路15aのうち上流側部分に接続されて加圧燃料を導入する第1ポート45aと、燃料通路15の分岐通路15aのうち下流部分に接続され、第1ポート45aに連通するときに加圧燃料を内側燃料導入通路32hに導入させる第2ポート45bと、燃料タンク2内に開放され、第2ポート45bに連通するときに内側燃料導入通路32h内の燃料圧力を解放させる第3ポート45cと、これら3つのポート45a〜45cの間の連通状態を切替え操作する電磁操作部45dと、を有している。
電磁操作部45dは、ECU41側から励磁駆動電流が供給される操作信号ON状態になるか否かに応じて、そのON状態(図2中に示す状態)では第2ポート45bを第1ポート45aから遮断しつつ第3ポート45cに連通させ、ECU41側から励磁駆動電流が供給されない操作信号OFF状態では第2ポート45bを第3ポート45cから遮断しつつ第1ポート45aに連通させるようになっている。したがって、三方電磁弁45の第1ポート45aおよび第2ポート45bは、前述の通路開閉弁の入口ポートおよび出口ポートに相当し、三方電磁弁45の第2ポート45bおよび第3ポート45cは、前述の圧力解放弁の入口ポートおよび出口ポートに相当する。また、三方電磁弁45の操作信号ON状態において、前記通路開閉弁としては閉弁状態となり、前記圧力解放弁としては開弁状態となる。
この三方電磁弁45が燃料ポンプ11から吐出されインジェクタ3に供給される燃料を調圧室23内の内側燃料導入通路32hに選択的に導入させるとき、プレッシャレギュレータ20は、燃料通路15から外側燃料導入通路37に導入される燃料を設定圧に調圧するとともに、その設定圧を予め設定された高圧側の設定圧と低圧側の設定圧とのうち任意の設定圧に切り替えることができる。
ここで、プレッシャレギュレータ20の高圧側の設定圧および低圧側の設定圧は、第1受圧面部22aおよび第2受圧面部22bの面積比A1/A2に対応する圧力比を持っており、低圧側の設定圧と高圧側の設定圧の比は、第1受圧面部22aの受圧面積A1と両受圧面部22a、22bの受圧面積の和(A1+A2)との比(A1/(A1+A2))に相当する。
すなわち、プレッシャレギュレータ20は、例えばエンジン1の通常運転時の燃料供給圧に相当する低圧側の設定圧と、この低圧側の設定圧より高圧で、エンジン1の停止中、例えばアイドリングストップ時に後述する残圧保持区間内に保持される燃料圧力に相当する高圧側の設定圧とに切り替わるように構成されている。
ここにいう残圧保持区間とは、燃料ポンプ11が停止するとともに通路開閉弁としての三方電磁弁45が開弁するときに、燃料通路15のうちインジェクタ3の上流側であってチェック弁14より下流側に形成され、外側燃料導入通路37に連通しつつ調圧部材22を介した圧縮コイルばね27からの付勢力によって燃料圧力を保持する通路区間である。また、高圧側の設定圧は、調圧部材22に燃料圧力の作用する領域が外側燃料導入通路37に対応する第1受圧面部22aのみとなるときの設定圧であり、本実施形態ではエンジン1および燃料ポンプ11の停止中にチェック弁14からインジェクタ3までの下流側通路区間(以下、残圧保持区間ともいう)内の燃料圧力を第1受圧面部22aに受圧させるときの設定圧(調圧すべき燃料圧力の設定値)であり、さらに、エンジン1の始動のために燃料ポンプ11からインジェクタ3への燃料供給が開始されるときや高負荷運転時に残圧保持区間内に高圧を生じさせるときの設定圧である。
なお、高圧側の設定圧は、例えば400[kPa](ゲージ圧;以下、同様)であり、エンジン停止直後等にデリバリーパイプ4内の燃料温度が高温になっても、燃料ベーパが生じ難い燃料圧力(通常、324kPa以上)の設定値となっている。また、低圧側の設定圧は、例えば240[kPa]であり、走行中にデリバリーパイプ4内の燃料温度が比較的低温になっても、燃料ベーパが生じ難い燃料圧力設定値となっている。
ECU41は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリからなるバックアップメモリに加えて、入力インターフェース回路および出力インターフェース回路等を含んで構成されており、このECU41には車両のイグニッションスイッチのON/OFF信号が取り込まれるとともに、バッテリからの電源供給がなされるようになっている。さらに、ECU41の入力インターフェース回路には、各種センサ群が接続されており、これらセンサ群からのセンサ情報がA/D変換器等を含む入力インターフェース回路を通してECU41に取り込まれるようになっている。ECU41の出力インターフェース回路には、インジェクタ3、燃料ポンプ11および三方電磁弁45等のアクチュエータ類を制御するため、リレースイッチやスイッチング素子、駆動回路等が設けられている。
また、ECU41は、ROM内に格納された制御プログラムを実行することで、各種センサ群からのセンサ情報およびROMやバックアップメモリに予め格納された設定値やマップ情報に基づいて、エンジン1の始動のために燃料供給を開始する直前やエンジン1の停止直前に三方電磁弁45をON状態に切り替え、燃料ポンプ11からの燃料を調圧室23内で高圧側の設定圧に調圧させるようになっている。また、ECU41は、エンジン1の運転中にその負荷状態を繰返し判定し、始動後の運転状態の大半を占める部分負荷の運転、すなわち始動後であって高負荷運転でない通常運転の領域においては、三方電磁弁45をOFF状態に切り替え、燃料ポンプ11からインジェクタ3への供給燃料圧を調圧室23内で低圧側の設定圧に調圧させるようになっている。そのため、ECU41のROMおよびバックアップメモリに格納される設定値には、燃料圧力の高圧側の設定値および低圧側の設定値がそれぞれ含まれ、ROMやバックアップメモリに格納されるマップ情報には、運転負荷の判定とその判定結果に応じた燃料圧力の切替え制御のための運転領域判定マップ等が含まれている。
ここにいう始動時とは、具体的には、例えばイグニッションキーがスタート位置に操作されてイグニッションONの要求が発生するとき、公知のアイドリングストップを実行する車両でエンジン1を一時停止させた後に再始動させるとき、あるいは、ハイブリッド方式のパワーユニットを搭載する車両でそのパワーユニットの効率を高めるためにエンジン1を一時停止させた後に再始動するとき等に、その始動のためのイグニッションON要求が発生したときである。
次に、本実施形態の燃料供給装置における燃料圧力の制御方法について説明する。
上述のように構成された本実施形態のプレッシャレギュレータ20およびこれを用いた燃料供給装置では、エンジン1が長時間停止している停止中においては、調圧対象の燃料圧送回路10の燃料ポンプ11は燃料供給停止状態で、その吐出側燃料圧力は0[kPa(gauge)]であり、三方電磁弁45は電磁操作部45dに通電されないOFF状態にある。
このとき、三方電磁弁45は、第1ポート45aおよび第2ポート45bを連通させる燃料導入位置にあるが、燃料ポンプ11が燃料供給停止状態であるから、プレッシャレギュレータ20の内側燃料導入通路32hには加圧燃料が供給されない。したがって、調圧部材22が開弁方向に燃料圧力を受ける実質的な受圧領域面積は、環状の外側燃料導入通路37内の燃料圧力を受ける第1受圧面部22aのみとなるから、インジェクタ3への燃料供給圧であるチェック弁14からインジェクタ3までの残圧保持区間の燃料圧力P1は、外側燃料導入通路37内の燃料圧力に等しい。
また、調圧部材22は圧縮コイルばね27により板状部材25を環状弁座部31および環状内突部32に着座させているから、外側燃料導入通路37内の燃料圧力Pは、外側燃料導入通路37側から調圧部材22に作用する開弁方向の付勢力P1×第1受圧面部22aの受圧面積A1に相当する開弁方向の付勢力が、圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力と釣り合うかそれより小さい付勢力となっている(P1≦H)。ただし、エンジン1の運転が停止される直前の燃料圧力P1は、低圧側の設定圧Lであり、燃料圧力P1は低圧側の設定圧Lより高く、高圧側の設定圧H以下の値となる(L≦P1≦H)。なお、エンジン1を停止させるときおよびその停止直後の動作については、後述する。
エンジン1が始動されるときには、その始動に先立って、ECU41により、最初に三方電磁弁45への通電がなされる。すなわち、燃料ポンプ11による燃料供給が開始されてその吐出圧が立ち上がるより前に、三方電磁弁45が一旦ON状態に切り替えられる。
この時点では、三方電磁弁45は、第2ポート45bを第1ポート45aから遮断しつつ第3ポート45cに連通させる状態に切り替わる。一方、燃料ポンプ11は未だ燃料供給停止状態である。
三方電磁弁45がON状態に切り替えられると、三方電磁弁45の圧力解放弁の機能により内側燃料導入通路32h内の残圧が解放される(P=0kPa)。また同時に、三方電磁弁45の通路開閉弁の機能により、チェック弁14からインジェクタ3までの残圧保持区間の燃料圧力P1がそれまでと同一の圧力、すなわち低圧側の設定圧L以上で高圧側の設定圧H以下となる燃料圧力に保持される(L≦P1≦H)。
次いで、燃料ポンプ11が起動されると、残圧保持区間内に燃料ポンプ11からの燃料が供給され、外側燃料導入通路37内の燃料圧力が即座に高圧側の設定圧Hに達する。
すなわち、外側燃料導入通路37側から調圧部材22に作用する開弁方向の付勢力が、圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力である高圧側の設定圧H×第1受圧面部の面積A1に相当する付勢力に達するまで、外側燃料導入通路37の内部の燃料圧力が即座に上昇し、余剰の加圧燃料は燃料排出通路31hに排出される(図4中に細い点線の矢印Rで示す)。
次いで、エンジン1が始動される。このとき、インジェクタ3には、高圧側の設定圧Hまで昇圧された高圧燃料が供給されることから、インジェクタ3からエンジン1の燃焼室内に噴射される燃料の霧化が助長される。なお、エンジン1の再始動においても上述と同様な始動時の制御が実施可能であることはいうまでもない。
エンジン1の始動後の運転状態は、高燃料圧力が要求される特定の運転状態、例えば高負荷運転の要求時を除いて、通常は、専ら部分負荷運転状態となり、その通常運転時にはエンジン1の燃費や燃料ポンプ11の信頼性の面から、低圧側の設定圧が要求される。
この通常運転時においては、ECU41から三方電磁弁45への通電が停止されるとともに、燃料ポンプ11の運転が継続される。したがって、エンジン1が始動後、通常運転に移行するときには、三方電磁弁45がOFF状態に切り替えられる。
エンジン1の運転中、ECU41は、各種センサ情報から得られるエンジン1の回転速度や車両の車速等の運転状態、運転者のアクセルペダル操作量等に基づいて、エンジン1に要求される運転状態が予めマップ情報として保持している運転領域のどれに該当するかを判定し、要求される運転状態に適した燃料圧力になるように、三方電磁弁45への通電を制御止するとともに燃料ポンプ11への通電を制御する。
エンジン1の通常運転時には、プレッシャレギュレータ20の内側燃料導入通路32hおよび外側燃料導入通路37の双方に燃料ポンプ11からの加圧燃料が供給される。したがって、調圧部材22は圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力H×A1を受ける一方、外側燃料導入通路37内の燃料圧力P(=P1)が作用する第1受圧面部22aにおける開弁方向の付勢力P1×A1と、内側燃料導入通路32h内の燃料圧力P2(=P1)が作用する第2受圧面部22bにおける開弁方向の付勢力P1×A2とを受け、これらの付勢力P1(A1+A2)が釣り合うように調圧がなされる。
よって、このときの燃料供給圧P1は、P1=H×A1/(A1+A2)=低圧側の設定圧Lとなる。したがって、高圧側の設定圧Hが400[kPa]で、第1受圧面部22aと第2受圧面部22bとの面積比A1/A2=1とすると、このときの燃料供給圧P1は、200[kPa]の低圧側の設定圧Lとなる。
車両を運転するドライバからの操作入力や車両の走行環境の変化によってエンジン1に要求される運転状態が高負荷運転領域に入るときには、ECU41により、三方電磁弁45がON状態に切り替えられるとともに、燃料ポンプ11の運転が継続される。
この切替え直後に、上述のエンジン1の始動時と同様に、三方電磁弁45の圧力解放弁の機能により内側燃料導入通路32hが開放されて、内側燃料導入通路32h内の燃料圧力が解放される。
一方、燃料ポンプ11の運転は継続されるので、プレッシャレギュレータ20の外側燃料導入通路37には加圧燃料が供給され続け、内側燃料導入通路32hの内部の燃料圧力P1は即座に高圧側の設定圧Hに上昇する。したがって、高負荷要求に応え得る十分な燃料噴射量が確保できることになる。
エンジン1を停止させるときには、ECU41は、エンジン1を停止させるのに先立って三方電磁弁45をON状態にする。例えばドライバによりイグニッションキーがイグニッションOFF側に操作され、エンジン1を停止させるイグニッションOFFの要求が発生すると、まず、三方電磁弁45への通電がなされて三方電磁弁45がON状態になり、プレッシャレギュレータ20内の調圧部材22がON状態の姿勢で安定するのに十分な時間が経過したとき、エンジン1を停止させるのに必要な処理が実行される。
エンジン1の停止直後には、冷却水や冷却風によるエンジン1の冷却が停止されることで、燃料供給経路中のチェック弁14からインジェクタ3までの残圧保持区間における燃料の温度が高くなる。このとき、この残圧保持区間の燃料圧力P1はプレッシャレギュレータ20の外側燃料導入通路37内の燃料圧力Pに等しく、その外側燃料導入通路37内の燃料圧力Pは、高圧側の設定圧Hに到達するまで上昇し得るよう第1受圧面部22aで調圧部材22の可撓性の環状膜部材24により弾力的に加圧される状態にある。したがって、チェック弁14からインジェクタ3までの残圧保持区間における燃料の温度が高くなるとき、その温度上昇に伴って残圧保持区間内の燃料の蒸気圧が高くなるとともに、気液平衡を保つように燃料圧力P1が上昇する。したがって、エンジン停止直後等にデリバリーパイプ4内の燃料温度が高温になっても、燃料ベーパが生じ難い残圧が有効に確保され、良好な高温再始動等が可能になる。
次に、本実施形態の燃料供給装置の作用について説明する。
上述のようなプレッシャレギュレータ20およびこれを用いた燃料供給装置においては、圧縮コイルばね27から常時遮断方向の付勢力を受ける調圧部材22が、調圧室23内に導入される燃料の圧力に応じて外側燃料導入通路37と燃料排出通路31hとの連通状態を変化させ、第2受圧面部22bに燃料圧力を受圧させるよう内側燃料導入通路32hに加圧された燃料が導入されるか否かによって、外側燃料導入通路37に導入される燃料の圧力が、異なる設定圧に調整される。したがって、隔壁状の調圧部材22の両面側に燃料を導入することなく、外側燃料導入通路37に導入される燃料の圧力が高圧および低圧に切替え可能になり、プレッシャレギュレータ20の配管やシール箇所を少なくできる。その結果、設定圧の切替えに適し、かつ、コンパクトで配管が簡素な低コストのプレッシャレギュレータ20となる。
また、調圧部材22の変位によって外側燃料導入通路37と燃料排出通路31hとの連通状態が変化するときに、通路閉塞部22cを構成する筒状部材28が伸縮することで、内側燃料導入通路32hの閉塞状態が維持され、内側燃料導入通路32hに導入される燃料が燃料排出通路31hに排出されることがないから、燃料ポンプ11等により加圧された燃料を設定圧(調圧レベル)の切替えのために無駄に排出させる必要がなく、燃料ポンプ11の消費動力を抑えることができる。
また、伸縮可能な筒状部材28が、環状膜部材24を構成する一般的なダイヤフラム構成素材から形成可能であり、環状膜部材24および筒状部材28を一体化した可撓性の膜部材29を簡素かつ低コストに作製できる。
さらに、しかも、板状部材25に第2受圧面部22bを設けることで、内側燃料導入通路32hに導入される燃料の圧力に応じて外側燃料導入通路37と燃料排出通路31hとの連通状態を良好な応答感度で変化させることができる。
加えて、調圧部材22が、環状膜部材24の内周部および可撓性の筒状部材28の一端部28aを板状部材25との間に気密的に挟圧保持する保持リング部25rを有し、保持リング部25rが、ハウジング21に設けられる環状弁座部31に着座するとき、外側燃料導入通路37と燃料排出通路31hとの連通が遮断されるので、板状部材25に対して環状膜部材24および筒状部材28を容易にかつ確実に保持させることができ、しかも、保持リング部25rに精度良くバルブ面25vを形成することができる。また、可撓性の膜部材29が、環状膜部材24の内周部および可撓性の筒状部材28の一端部28aに対応する部分で、バルブ面25vを有する保持リング部25rによって確実に気密的に保持されることになる。
さらに、環状弁座部31に着座する保持リング部25rのバルブ面25vが、そのバルブ面25vに対向する環状弁座部31のシール面31sよりも半径方向に幅広くなっているので、調圧部材22が可撓性部分を有し、その撓みに伴う調圧部材22の径方向の変位が生じるような場合であっても、保持リング部25rのバルブ面25vが環状弁座部31のシール面31sに確実に当接可能となり、遮断時における所要のシール性能が確保される。しかも、ハウジング21に対する環状弁座部31の半径方向における調圧部材22の装着位置の要求精度が緩和され得ることから、組立も容易化できる。
また、本実施形態の燃料供給装置においては、隔壁状の調圧部材22の一面側にのみ燃料を導入するプレッシャレギュレータ20によって、内側燃料導入通路32hに導入される燃料の圧力を変化させるだけで、外側燃料導入通路37に導入される燃料の圧力を高圧および低圧に切替え可能になり、配管やシール箇所の少ないコンパクトで配管の簡素な低コストの燃料供給装置を提供できる。しかも、燃料圧力の切替えに要する燃料を燃料排出通路31hに無駄に排出しないで済むので、燃料ポンプ11の消費エネルギを低減させることができる。
(他の実施形態)
図5および図6は、本発明の他の実施形態に係る流体圧力調整装置を示している。
なお、本実施形態は、上述の一実施形態と類似する構成を有し、プレッシャレギュレータ以外の燃料供給装置の構成要素は上述の一実施形態と同一であるので、上述の一実施形態と同一の構成要素については図1〜図4に示した対応する構成要素と同一の符合を用いながら、上述の一実施形態と相違する点について以下に説明する。
図5および図6に示すように、本実施形態のプレッシャレギュレータ50(燃料圧力調整装置)においては、ハウジング21の内部には、ハウジング21の内部を2室に区画する隔壁状の調圧部材52が設けられており、調圧部材52は、ハウジング21の内部にあってこのハウジング21との間に複数の燃料導入口21a、21cに連通する調圧室23を形成している。この調圧部材52は、調圧室23内に導入される燃料圧力に応じた開度で中央の燃料導入口21cを燃料排出口21bに連通させる開弁方向に変位するようになっており、可撓性の環状膜部材24とその環状膜部材24の内周側に位置する略円板状の板状部材25とを一体的に組み付けて一体化することで、板状部材25はその一面側で中央の燃料導入口21cから調圧室23内に導入される燃料の圧力を常時受圧するようになっている。
ハウジング21の内部、特に調圧室23が形成される調圧部材52の一面側には、環状内突部61および環状弁座部62が略同心に配置されており、環状内突部61は、調圧室23の内部でハウジング部材18の第2環状壁部18bと一体に設けられるか、第2環状壁部18bの内周面に気密的に変位可能に保持された外側筒状部材65に設けられている。
また、環状弁座部62は、基端側でハウジング21に固定された内側筒状部材66の先端側に設けられ、調圧部材52と共に環状弁座部62および板状部材25の相対変位により開閉する調圧バルブ機構を構成している。そして、板状部材25が環状弁座部62側に形成されたシール面62sに着座するとき、後述する内側燃料導入通路62h(第1の流体導入通路)と燃料排出通路61hとの連通が遮断されるようになっている。
すなわち、外側筒状部材65および内側筒状部材66は、互いに径が異なるとともにハウジング21の内部に同軸に配置された略円筒状のものであり、環状弁座部62を構成する内側筒状部材66は、その外周側ではハウジング21および外側筒状部材65との間に燃料排出口21bに連通する燃料排出通路61hを形成し、その内周側ではハウジング21の複数の燃料導入口21a、21cのうち中心の燃料導入口21cに連通する内側燃料導入通路62hを形成している。そして、環状弁座部62と板状部材25とが相対変位するとき、その相対変位量に応じて内側燃料導入通路62hが調圧室23の内部に開口する内端側での開度を変化させるようになっている。
環状内突部61と調圧部材52の板状部材25とは、板状部材25の変位方向において十分に離間している。この環状内突部61の端部または/およびハウジング部材18の第2環状壁部18bの内周面には、燃料排出通路61hが形成されている。
一方、調圧部材52は、中央の燃料導入口21cから内側燃料導入通路62hに導入される燃料の圧力を受ける第1受圧面部52bと、外側燃料導入通路67および内側燃料導入通路62hのうち外側燃料導入通路67に導入される流体の圧力を受ける第2受圧面部52aと、第2受圧面部52aと共に外側燃料導入通路67の内端部を閉塞して流体排出通路61hから常時遮断する通路閉塞部52cと、を有している。
調圧部材52の第2受圧面部52aは、板状部材25の外周部に液密(気密的)に結合するとともにハウジング21に支持された環状膜部材24によって、板状部材25の周囲に形成されており、環状の外側燃料導入通路67の内部の燃料の圧力を常時受けるようになっている。また、調圧部材52の第1受圧面部52bは、調圧室23に面する板状部材25の一面側部分25aの中央部分によって形成され、内側燃料導入通路62hの内部の燃料圧力を受けるようになっている。
図6に示すように、調圧部材52の第2受圧面部52aと第1受圧面部52bは、燃料排出通路61hに対応する非加圧中間面52dを挟んで半径方向に離間しており、非加圧中間面52dは、タンク2の内圧(例えば大気圧)相当の圧力を受け、実質的に加圧されないようになっている。そして、調圧部材52の第2受圧面部52aおよび第1受圧面部52bに対し燃料ポンプ11からの加圧燃料の圧力が選択的に作用するとき、調圧部材52は、内側燃料導入通路62hと燃料排出通路61hとを連通および遮断することで、内側燃料導入通路62h内に導入される供給側の燃料の圧力を設定圧に調整する一方、その第2受圧面部52aに作用する外側燃料導入通路67内の燃料の圧力に応じて設定圧を切り替えるようになっている。ここで、第2受圧面部52aの受圧面積A2と内側の第1受圧面部52bの受圧面積A1とは、予め設定された面積比A1/A2になるように設定されている。
調圧部材52の通路閉塞部52cは、環状膜部材24の素材と同様な素材からなる可撓性の筒状部材58によって構成されており、この可撓性の筒状部材58は、調圧部材52の第1受圧面部52bの周囲で板状部材25に気密的に結合された一端部58aと、ハウジング21の環状内突部61に気密的に保持された他端部58bとを有している。また、可撓性の筒状部材58は、環状膜部材24と一体に形成されることで、この環状膜部材24と共に可撓性の膜部材59を構成している。そして、ハウジング21と調圧部材22の一部である可撓性の膜部材59との間に環状の外側燃料導入通路67が形成され、この外側燃料導入通路67が、燃料導入口21aを通して燃料圧送回路10のチェック弁14より下流側の回路部分である燃料通路15の分岐通路15a(供給側分岐通路)に接続されている。
また、板状部材25は、その外周側に環状の段付き部25pを有し、その段付き部25pの外周側に、可撓性の膜部材29を間に挟んで保持リング部25rが気密的に圧接するよう嵌着されている。すなわち、調圧部材52の板状部材25は、環状膜部材24の内周部および可撓性の筒状部材58の一端部58aを板状部材25との間に気密的に挟圧保持する保持リング部25rを有している。
このように、本実施形態では、外側燃料導入通路67および内側燃料導入通路62hと燃料排出通路61hとがそれぞれ調圧部材52の一面側に配置されており、調圧部材52は、ハウジング21の内部で外側燃料導入通路67および内側燃料導入通路62hに導入される燃料の圧力に基づく開弁方向(内側燃料導入通路62hと燃料排出通路61hとを連通させる方向)の付勢力と、圧縮コイルばね27からの閉弁方向(内側燃料導入通路62hと燃料排出通路61hとの連通を遮断する方向)の付勢力とに応じて、内側燃料導入通路62hと燃料排出通路61hとを連通および遮断するようになっている。
本実施形態の流体圧力調整装置においては、隔壁状の調圧部材52の両面側に燃料を導入することなく、第2の流体導入通路である外側燃料導入通路67を設けるだけで、第1の流体導入通路である内側燃料導入通路62hに導入される燃料の圧力を高圧および低圧に切替え可能しているので、上述の一実施形態と同様に、配管やシール箇所を少なくすることができ、設定圧の切替えに適し、かつ、コンパクトで配管が簡素な低コストのプレッシャレギュレータ50を提供することができる。
しかも、調圧部材52の第2受圧面部52aに流体圧力を受圧させるよう外側燃料導入通路67に導入される流体は、燃料排出通路61hに排出されることがないから、燃料ポンプ11により加圧された流体をプレッシャレギュレータ50の設定圧の切替えのために無駄に排出させる必要がなく、燃料ポンプ11の消費動力を低減させることができる。
また、本実施形態の燃料供給装置においては、このプレッシャレギュレータ50により外側燃料導入通路67に導入される燃料の圧力を変化させるだけで、内側燃料導入通路62hに導入される燃料の圧力を高圧および低圧に切替え可能にしているので、配管やシール箇所の少ないコンパクトで配管の簡素な低コストの燃料供給装置を提供することができる。
なお、上述の各実施形態においては、可撓性の筒状部材28、58をそれぞれ円錐面形状部分を有するように図示したが、真直円筒形状もしくはそれに近い筒状部材としてもよいことはいうまでもない。また、複数の燃料導入通路として外側燃料導入通路37(67;括弧内は他の実施形態の符号)および内側燃料導入通路32h(62h)を設け、これらに対応する同一面積のあるいは面積の異なる第1受圧面部22a(52b)および第2受圧面部22b(52a)を設けていたが、外側燃料導入通路37および内側燃料導入通路32hに代えて3つあるいはそれ以上の燃料導入通路を設けるとともに、それらに対応する3つ以上の受圧面部を調圧部材に設けるようにすることも考えられる。すなわち、第1受圧面部および第2受圧面部のうち一方または双方が複数設けられてもよい。
また、上述の一実施形態における調圧部材22は、可撓性の膜部材29とプレート状の板状部材25を有する構成としたが、環状膜部材24はハウジング21内に摺動可能に保持されたピストン状のもので、板状部材25の背面を支持するようなものであってもよいし、筒状部材28は、板状部材25から環状内突部32に向かって突出し、シールリングを介して環状内突部32に液密に摺動可能に保持された筒状突起部としてもよい。
さらに、上述の一実施形態においては、インタンク式の流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置としていたが、デリバリーパイプの近傍に配置されるものであってもよいことはいうまでもない。また、外側筒状部材35(65)および内側筒状部材36(66)は、ハウジング21と別体の作製されてハウジング21に固定されたものとしていたが、これら外側筒状部材35および内側筒状部材36をハウジング21と一体に成型してもよいことはいうまでもない。
また、上述の一実施形態では、背圧室26側を燃料タンク2内に開放されたものとしたが、ハウジング21内の調圧部材22の他面側に閉じた背圧室を形成し、その閉じた背圧室に他の負圧または正圧の圧縮性流体(例えば空気)を封入したり、専用の背圧供給回路によって背圧付与のための流体をその閉じた背圧室に供給・排出させたりすることも勿論可能である。
さらに、上述の一実施形態においては、燃料消費部がガソリンを消費する車両用のガソリンエンジンであったが、他の燃料を用いるエンジンにも使用できることは勿論であり、車両用以外のエンジンにも適用可能である。また、燃料を消費して何らかの出力をなす各種の燃料消費部において、燃料圧力の高圧/低圧切替えがなされる場合にも、本発明を適用することができる。
以上説明したように、本発明は、隔壁状の調圧部材の両面側に流体を導入することなく、第2の流体導入通路を設けるだけで、第1の流体導入通路に導入される流体の圧力を高圧および低圧に切替え可能しているので、配管やシール箇所を少なくすることができ、設定圧の切替えに適し、かつ、コンパクトで配管が簡素な低コストの流体圧力調整装置を提供することができるとともに、その流体圧力調整装置により、第2の流体導入通路に導入される燃料の圧力を変化させるだけで、第1の流体導入通路に導入される流体の圧力を高圧および低圧に切替え可能にしているので、配管やシール箇所の少ないコンパクトで配管の簡素な低コストの燃料供給装置を提供することができるという効果を奏するものであり、内燃機関の燃料を燃料ポンプから燃料噴射弁に供給するときにその燃料圧力を調整するのに好適な流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置全般に有用である。