JP5533898B2 - ポリエステル系樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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Description
これらポリエステル系樹脂はテレフタル酸成分とエチレングリコール成分とを主たる成分とし、これらをエステル化反応またはエステル交換反応した後、溶融重縮合及び必要に応じて固相重縮合することにより製造されており、その際重縮合触媒としてアンチモン化合物が広く使用されている。
このような溶融成形時の環状3量体等を低減する方法として、従来から固相重縮合によりあらかじめ環状3量体等を低減させる方法(特許文献1、特許文献2)があるが、溶融成形時に生成する環状3量体等の副生物を抑制することはできず不十分であった。
そのほかにもリン化合物をリン原子として少なくとも250ppm含有するポリエステル樹脂を配合することによって、得られるポリエステル樹脂組成物のオリゴマー発生量を抑制する手法(特許文献7)が開示されているが、当該手法ではリン化合物をリン原子として少なくとも250ppm含有するポリエステル樹脂の重合触媒として150ppm以上のアンチモン化合物を使用することになっており、この手法ではアンチモン化合物に起因する異物による不具合の発生を抑えることが出来ず問題である。
ル化反応或いはエステル交換反応工程の任意の段階、又は、溶融重縮合工程の初期の段階
のいずれかにおいて、リン化合物及びゲルマニウム化合物触媒を添加することによって製
造され、且つ下記式(1)、(2)及び(3)を満たすリン原子及びゲルマニウム原子を
含むポリエステル系樹脂(A)と下記式(4)を満たすチタン原子を含むポリエステル系
樹脂(B)とを溶融混練して得たポリエステル系樹脂組成物(C)であって、該組成物(
C)は、下記式(6)を満たし、且つ下記(a)の条件を満たすことを特徴とするポリエ
ステル系樹脂組成物(C)、及び該組成物(C)を用いたフィルム、シート又はボトルに
存する。
P1≧10 (1)
0.1≦Ge1≦1.5 (2)
0.008≦Ge1/P1≦0.15 (3)
0≦P2/Ti1≦80 (4)
(但し、式(1)、(2)、(3)中、ポリエステル系樹脂(A)1トン当たりのリン原
子の含有量(モル)をP1、ゲルマニウム原子の含有量(モル)をGe1で表し、式(4
)中、ポリエステル系樹脂(B)1トン当たりのリン原子の含有量(モル)をP2、チタ
ン原子の含有量(モル)をTi1で表す。)
(但し、式(6)中、該組成物(C)1トン当たりのリン原子の含有量(モル)をP3で表し、チタン原子の含有量(モル)をTi2で表す。)
(a)該ポリエステル系樹脂(A)と該ポリエステル系樹脂(B)とを窒素雰囲気下、285℃において20分間溶融混練した場合、溶融混練前のポリエステル系樹脂組成物1トン当たりの環状3量体の含有量をX(グラム)、溶融混練後の該組成物(C)1トン当たりの環状3量体の含有量をY(グラム)とすると、Y≦8000,且つY−X≦2500である。
代表例であり、これらの内容に限定されるものではない。
本発明の製造方法により得られるポリエステル系樹脂組成物(C)は、所定割合のリン原子とゲルマニウム原子を含むポリエステル系樹脂(A)と所定割合のリン原子とチタン原子を含むポリエステル系樹脂(B)とを溶融混練して得られるものである。
本発明の製造方法に好適に用いられるポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)は、テレフタル酸及びそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、エステル化反応、またはエステル交換反応を経た後、重縮合触媒を用いて、溶融重縮合、必要に応じて固相重縮合することにより製造されたものである。そして好ましくはテレフタル酸成分が全ジカルボン酸成分の80モル%以上、さらに好ましくは90モル%、特に好ましくは95モル%以上を占めるジカルボン酸成分と、好ましくはエチレングリコールが全ジオール成分の80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上を占めるジオール成分とから製造された重縮合体であるのが好ましい。尚、反応系内で副生したジエチレングリコールが共重合されていてもよい。
本発明の製造方法に用いられるポリエステル系樹脂(A)は、その製造の際、重縮合触媒として主としてゲルマニウム化合物を使用して製造された樹脂である。ここで主としてとは、基本的にゲルマニウム化合物のみを重縮合触媒として使用することを意味するが、必要に応じ他の金属化合物を重縮合触媒として少量併用することも出来る。例えば、他の金属化合物としてアンチモン化合物を併用する場合には、その使用量はアンチモン原子として得られる樹脂1トン当たり1.0モル以下、好ましくは0.5モル以下である。重縮合触媒としてゲルマニウム化合物を用いると安定剤として用いられるリン化合物のリンによる重合触媒の失活の影響を小さく抑えることが出来、好適な重合活性が得られる。
P1≧10 (1)
リン化合物の含有量がこの下限値より少ない場合、ポリエステル系樹脂(A)とポリエステル系樹脂(B)とを溶融混練する時、ポリエステル系樹脂(B)に対するポリエステル系樹脂(A)の重量比[ポリエステル系樹脂(A)/ポリエステル系樹脂(B)]を高くしなければ生成する環状3量体等の副生を抑制するという効果が十分に得られない場合があり、好ましくない。リン化合物の含有量の上限は特に制限されないが、多量の存在は、重合速度を低下させる場合があるので100モル以下であるのが好ましい。
ポリエステル系樹脂(B)の製造において重縮合反応に使用する触媒としてはゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、チタン化合物など公知の重縮合触媒が使用できるが、本発明では少なくともチタン化合物を用いることを必須とし、アンチモン化合物など異物の要因となりうる触媒は出来るかぎり少量もしくは使用しないことが好ましい。チタン化合物としては従来公知のチタン化合物から適宜選択して使用することができ、チタンの酸化物、水酸化物、アルコキシド、酢酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、及びハロゲン化物等が挙げられる。
これはこれらのリン化合物を使用することで重縮合時に添加される金属化合物とリン化合物からなる異物の発生を抑えることが出来るからである。
0≦P2/Ti1≦80 (4)
リン原子のチタン原子に対する割合(P2/Ti1)としては、好ましくは0.1〜40、より好ましくは0.2〜20、更に好ましくは1〜10である。
また本発明の製造方法に用いられるポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)は、その製造時に、助触媒、エステル化触媒等として使用される、上記重縮合触媒以外の他の金属化合物に由来する周期表第1A族の金属元素、周期表第2A族の金属原子、マンガン、鉄、コバルトからなる群より選択された少なくとも1種の金属原子を含有してもよい。これらの化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト等の、酸化物、水酸化物、アルコキシド、酢酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、及びハロゲン化物等が挙げられる。具体的には、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マンガン、水酸化マンガン、酢酸マンガン、酢酸第二鉄、蟻酸コバルト、酢酸コバルト、蓚酸コバルト、炭酸コバルト、臭化コバルト、コバルトアセチルアセトナート等が挙げられ、中でも、マグネシウム化合物が好ましく、酢酸マグネシウム及びその水和物が特に好ましい。
これらの金属化合物は、エステル化反応あるいはエステル交換反応の開始時から重縮合反応の終了時までの任意の時期に添加することができるが、エステル化反応あるいはエステル交換反応の開始時から重縮合反応の開始時までの間に添加するのが好ましく、特にエステル化反応の場合にはエステル化反応終了後重縮合反応開始までの間に添加するのが好ましい。好ましい金属化合物としては、カルシウム化合物およびマグネシウム化合物が挙げられ、中でも酢酸カルシウムおよび酢酸マグネシウムが好ましく、酢酸マグネシウムが特に好ましい。
体積固有抵抗値が上記の値よりも高い場合は得られるポリエステル系樹脂組成物(C)を用いてのフィルム成形の際にダイから押し出されたシートと冷却ドラムとの密着性が悪くなり、結果的に冷却不足となるためフィルムの製膜速度を上げることが困難となる。
本発明のポリエステル系樹脂組成物(C)は、リン原子及びゲルマニウム原子を含むポリエステル系樹脂(A)とチタン原子を含むポリエステル系樹脂(B)とを溶融混練して得たポリエステル系樹脂組成物(C)であって、該組成物(C)は、下記式(6)を満たし、且つ下記(a)の条件を満たす組成物である。
(P3/Ti2)≧5 (6)
(但し、式(6)中、該組成物(C)1トン当たりのリン原子の含有量(モル)をP3で表し、チタン原子の含有量(モル)をTi2で表す。)
(a)該ポリエステル系樹脂(A)と該ポリエステル系樹脂(B)とを窒素雰囲気下、285℃において20分間溶融混練した場合、溶融混練前のポリエステル系樹脂組成物1トン当たりの環状3量体の含有量をX(グラム)、溶融混練後の該組成物(C)1トン当たりの環状3量体の含有量をY(グラム)とすると、Y≦8000,且つY−X≦2500である。
また、(Y−X)の上限値は2500であるが、2000であるのが好ましく、1000であるのが特に好ましい。(Y−X)が2500を超えると、高温で成形した際の環状3量体等のオリゴマーの副生が多くなり、異物が発生する場合があり好ましくない。
また該重量比の下限は0を超えるが、0.01以上であるのが好ましく、0.02以上であるのがさらに好ましい。下限値が0、即ちポリエステル系樹脂(A)を使用しない場合は、生成する環状3量体等の副生物を抑制する効果が得られず好ましくない。
本発明の製造方法に用いられるポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)の製造は、それぞれ所定量のリン原子及びゲルマニウム原子(樹脂(A))、及びチタン原子(樹脂(B))を含有するようになすこと以外は、基本的には、ポリエステル系樹脂の慣用の製造方法を用いることができる。即ち、前記テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、エステル化反応槽で、通常240〜280℃程度の温度、通常大気圧に対する相対圧力0〜4×105Pa程度の圧力下で、攪拌下に1〜10時間程度でエステル化反応させ、或いは、エステル交換触媒の存在下にエステル交換反応させた後、得られたエステル化反応生成物或いはエステル交換反応生成物としてのポリエステル低分子量体を重縮合槽に移送し、重縮合触媒及びリン化合物の存在下に、通常250〜290℃程度の温度、常圧から漸次減圧として最終的に通常絶対圧力1333〜13.3Pa程度の減圧下で、攪拌下に1〜20時間程度で溶融重縮合させる方法を用いることができ、これらは連続式、又は回分式いずれの方法であってもよい。
本発明のポリエステル系樹脂組成物(C)は、前記ポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)を上記の適切な重量比で溶融混練して調製することが出来、通常、ポリエステル系樹脂(A)及び(B)を均一に混合した樹脂配合物を押出機にて混練して押し出し、ペレット化して得られる。また、フィルム成形用などの押出機やボトル成形用の射出成形機などの原料ホッパーに上記ペレット状のポリエステル系樹脂(A)及び(B)を投入しても押出機や射出成形機のシリンダーの溶融ゾーンで該組成物(C)が得られ、溶融中に副生する環状3量体の生成量を抑制できる。
なお、本発明における各種測定方法は以下の通りである。
ポリエステル樹脂試料2.5gを硫酸存在下に常法により灰化、完全分解後、蒸留水にて50mlに定容したものについて、プラズマ発光分光分析法により定量した。
凍結粉砕したポリエステル樹脂試料0.50gをフェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒に、濃度(a)を1.0g/dlとして、110℃で30分間溶解させた後、ウベローデ型毛細粘度管を用いて、30℃で、原液との相対粘度(ηrel)を測定し、この相対粘度(ηrel)−1から求めた比粘度(ηsp)と濃度(a)との比(ηsp/a)を求め、同じく濃度(a)を、0.5g/dl、0.2g/dl、0.1g/dlとしたときについてもそれぞれの比(ηsp/a)を求め、これらの値より、濃度(a)を0に外挿したときの比(ηsp/a)を固有粘度[η](dl/g)として求めた。
クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール(容量比2/1)の混合溶媒3mlに、ポリエステル樹脂試料4mgを溶解した後、更にクロロホルム40mlを加えて希釈し、得られた溶液についてGPC(東ソー社製「HLC−8120GPC」)を用いて定量を行った。
ポリエステル樹脂試料を、内径36mm、深さ15mmの円柱状の粉体測色用セルにすりきりで充填し、測色色差計(日本電色工業社製「ZE−2000」)を用いて、日本工業規格、1970年版(JIS Z8730の参考1)に記載されるLab表色系におけるハンターの色差式の色座標bを、反射法、セルを90度ずつ回転させて4箇所測定した値の単純平均値として求めた。
ポリエステル樹脂試料15gを、内径20mm、長さ180mmの枝付き試験管に入れ、管内を十分に窒素置換した後、250℃のオイルバス中に浸漬し、管内を真空ポンプで1Torr以下として20分間真空乾燥し、次いで、オイルバス温度を285℃に昇温してポリエステル樹脂試料を溶融させた後、窒素復圧と減圧を繰り返して混在する気泡を取り除いた。この溶融体の中に、面積1cm2のステンレス製電極2枚を5mmの間隔で並行に(相対しない裏面を絶縁体で被覆)挿入し、温度が安定した後に、抵抗計(ヒューレット・パッカード社製「MODEL HP4339B」)で直流電圧100Vを印加し、そのときの抵抗値を計算して体積固有抵抗(Ω・cm)とした。
ポリエステル樹脂試料50gを試料がこぼれない目開きの網かごに入れて試料の上から純水を流して良く洗浄した。洗浄した試料を60℃で、1時間で乾燥させた。
試料を蛍光灯のバックライトを備えた台の上に広げ、2倍の拡大鏡を用いて試料一粒ずつをよく観察した。異物が含まれる試料についてPEAK社製10倍のスケールルーペでそれぞれの異物の大きさを検定し、試料の中に含まれる異物の内、0.1〜0.2mm、0.2〜0.3mm、0.3mm以上の異物の個数を数え異物数とした。異物の大きさは、その最長部の長さで示した。結果を表1に示した。
ポリエステル樹脂(C)試料10kgを、熱風乾燥機中、180℃、2時間で結晶化及び乾燥させて水分量を100ppm以下とした。40mm径の一軸押出機中に金属繊維焼結フィルター(95%カット濾過精度25μm)を内蔵し、80mm径の4条スパイラル環状ダイを備えたチューブラーフィルム成形機により、乾燥した樹脂試料を、樹脂温度285℃、押出速度8kg/時間で溶融押出し、60mm径の冷却リングで冷却してチューブラー成形することにより、厚み210μm、折り幅10cmのチューブラーフィルムを得た。引き続いて、二軸延伸機(T.M.Long社製)を用いて、未延伸フィルムを92℃で2分間予熱した後、20,000%/分の延伸速度で、縦方向4.0倍、横方向3.5倍の延伸倍率で同時二軸延伸し、延伸後、92℃で1分間の熱固定を行うことにより、二軸延伸フィルムを成形した。
二軸延伸フィルムをSUS製角形金枠に張設し、真空蒸着機内でアルミ蒸着した後、表面に無作為に2.0cm×2.5cmの枠をマーキングし、その面積内における粗大突起数を、ハロゲンランプの白色光にGフィルターをかけて光源とした二光束顕微鏡にて観察した。粗大突起は、干渉縞が閉じた等高線として観察され、突起高さが大きくなるに従いその等高線の本数が多くなる。本発明においては、突起高さが0.54μm、及び0.81μmの各等高線の本数により以下の区分で突起数をカウントし、10cm2のフィルム面積当たりに換算した。
(1)等高線数が1本以上の高さ0.27μm以上の突起数。
(2)等高線数が2本以上の高さ0.54μm以上の突起数。
○:非常に良好なフィルム
高さ0.27μm以上の突起が50個/10cm2以下で、且つ、高さ0.54μm以上の突起が10個/10cm2以下。
△:使用可能なフィルム
高さ0.27μm以上の突起が100個/10cm2以下で、且つ、高さ0.54μm以上の突起が30個/10cm2以下。
×:使用不可能なフィルム
高さ0.27μm以上の突起が100個/10cm2超過、又は、高さ0.54μm以上の突起が30個/10cm2超過。
<ポリエステル系樹脂(A)−1の製造>
テレフタル酸43kg(260モル)、及びエチレングリコール19kg(312モル)のスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約50kgが仕込まれ、温度250℃、相対圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後も更に1時間かけてエステル化反応を行った。このエステル化反応生成物の50kgを重縮合槽に移送した。
<ポリエステル系樹脂(A)−2の製造>
製造例A−1において正リン酸をポリリン酸に変更した以外は製造例A−1と同様にしてポリエステル系樹脂(A)−1と同様にポリエステル系樹脂(A)−2を製造した。得られた樹脂の物性を表1に示す。
<ポリエステル系樹脂(A)−3の製造>
製造例A−1において正リン酸をエチルアシッドホスフェートに変更した以外は製造例A−1と同様にしてポリエステル系樹脂(A)−1と同様にポリエステル系樹脂(A)−3を製造した。得られた樹脂の物性を表1に示す。
<ポリエステル系樹脂(A)−4の製造>
テレフタル酸ジメチルエステル50kg(260モル)、及びエチレングリコール32.3kg(520モル)を150℃のエステル交換反応槽に供給し、エステル交換触媒として酢酸マグネシウム4水塩をエチレングリコール溶液として得られる樹脂1トン当たり、マグネシウム原子として4.1モル含有するように添加した後、反応槽の温度を3時間かけて225℃まで昇温させた後、その温度で1時間保持してエステル交換反応を終了させた。このエステル交換反応生成物を重縮合槽に移送した。
<ポリエステル系樹脂(A)−5の製造>
テレフタル酸ジメチルエステル50kg(260モル)、及びエチレングリコール32.3kg(520モル)を150℃のエステル交換反応槽に供給し、エステル交換触媒として酢酸マンガン4水塩をエチレングリコール溶液として得られる樹脂1トン当たり、マンガン原子として2.1モル含有するように添加した後、反応槽の温度を3時間かけて225℃まで昇温させた。途中、エステル交換反応により発生したメタノールが留出開始した時点より20分間後に三酸化アンチモンをアンチモン原子として樹脂1トン当たり1.6モル含有するように添加した。
<ポリエステル系樹脂(A)−6の製造>
製造比較例1において添加するトリメチルホスフェートの量を樹脂1トン当たりリン原子として40モルとした以外は製造比較例1と同様にし、固有粘度0.60dl/gとなるまで重縮合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A)−6を製造した。得られた樹脂の物性を表1に示す。
これら製造比較例1および2から得られたポリエステル樹脂(A)中には0.1mm以上の異物が含まれており、その結果、本発明樹脂組成物(C)からのフィルムの生産上好ましくないものである。
<ポリエステル系樹脂(A)−7の製造>
製造例A−1のポリエステル系樹脂(A)−1の製造方法において、正リン酸および二酸化ゲルマニウムの添加量をそれぞれ樹脂1トン当たりリン原子として12モル、ゲルマニウム原子として1.5モル含有する様に添加した以外は同様の方法で得られる樹脂の固有粘度が0.64dl/gとなる時間溶融重縮合させ、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷後、カッターでペレット状とすることにより、約40kgのポリエステル系樹脂(A)を製造した。結果を表1に示す。この例で得られたポリエステル系樹脂(A)−7の色調はやや劣るものである。
<ポリエステル系樹脂(A)−8の製造>
製造例A−1のポリエステル系樹脂(A)−1の製造方法において、正リン酸および二酸化ゲルマニウムの添加量をそれぞれ樹脂1トン当たりリン原子として40モル、ゲルマニウム原子として0.18モル含有する様に添加した以外は同様の方法で溶融重縮合を実施した。本反応系では重合性が悪く5時間検討を続けたが固有粘度が0.55dl/gに達せず目的の樹脂は得られなかった。結果を表1に示す。
<ポリエステル系樹脂(A)−9の製造>
製造例A−1のポリエステル系樹脂(A)−1の製造方法において、二酸化ゲルマニウムの代わりにテトラ−n−ブチルチタネートを使用し、さらに酢酸マグネシウムを添加した以外は同様な方法でポリエチレンテレフタレート樹脂を製造した。それぞれの添加剤について、樹脂1トン当たり、リン原子として40モル、チタン原子として0.1モル、マグネシウム原子として0.4モル含有する様に添加した。本反応系は重合性が悪く、重縮合反応を5時間実施しても所定の固有粘度の重合体とならなかったため実験を停止した。
<ポリエステル系樹脂(A)−10の製造>
製造例A−1のポリエステル系樹脂(A)−1の製造方法において、正リン酸の添加量を樹脂1トン当たりリン原子として2モル含有する様に添加した以外は同様の方法で溶融重縮合を実施した。結果を表1に示す。
<ポリエステル系樹脂(B)−1の製造>
製造例A−1の上記ポリエステル系樹脂(A)−1の製造方法において、正リン酸の代わりにエチルアシッドホスフェート、二酸化ゲルマニウムの代わりにテトラ−n−ブチルチタネートを使用し、さらに酢酸マグネシウムを添加した以外は同様な方法でポリエチレンテレフタレート樹脂を製造した。それぞれの添加剤については、樹脂1トン当たり、リン原子として0.2モル、チタン原子として0.1モル、マグネシウム原子として0.4モル含有する様に添加した。
<ポリエステル系樹脂(B)−2の製造>
図1に示す1個の攪拌槽からなるスラリー調製槽、直列に接続した2個の攪拌槽からなるエステル化反応槽、及び攪拌槽とこれに続く2個の横型プラグフロー形式の反応槽とからなる合計3個の溶融重縮合反応槽とから構成されている連続重縮合装置を用いて、樹脂試料を連続的に製造した。
<ポリエステル系樹脂(B)−3の製造>
テレフタル酸ジメチルエステル50kg(260モル)、及びエチレングリコール32.3kg(520モル)を150℃のエステル交換反応槽に供給し、エステル交換触媒として酢酸マグネシウム4水塩をエチレングリコール溶液として得られる樹脂1トン当たり、マグネシウム原子として4.1モル含有するように添加した後、反応槽の温度を3時間かけて225℃まで昇温させた後、その温度で1時間保持してエステル交換反応を終了させた。このエステル交換反応生成物を重縮合槽に移送した。
<ポリエステル系樹脂(B)−4の製造>
製造例B−1のポリエステル系樹脂(B)−1の製造において酢酸マグネシウム4水塩を得られる樹脂1トン当たりマグネシウム原子として0.1モル添加した以外は同様にしてポリエステル樹脂を製造した。
<ポリエステル系樹脂(B)−5の製造>
製造例B−1のポリエステル系樹脂(B)−1の製造方法において酢酸マグネシウム4水塩を添加せず、また正リン酸およびテトラ−n−ブチルチタネートをそれぞれ得られる樹脂1トン当たり、リン原子として0.2モル、チタン原子として0.12モル含有する様に添加した以外は製造例B−1と同様にしてポリエステル樹脂(B)−5を得た。得られたポリエステル樹脂(B)−5の環状3量体の含有量を測定した結果、樹脂1トン当たり2800gであった。また体積固有抵抗値は150×107Ωcmであった。得られた樹脂の物性を表2に示す。
<ポリエステル系樹脂組成物(C)の製造>
製造例A−1及び製造例B−1で得られたポリエステル系樹脂(A)−1とポリエステル系樹脂(B)−1のペレットを、重量比[(A)/(B)]0.05で均一に混合し、ポリエステル系樹脂配合物を得た。得られた配合物の環状3量体の含有量(CT1)を測定した。
ポリエステル系樹脂(A)−1を配合することなく、製造例B−1で得られたポリエステル系樹脂(B)−1のみを、実施例1と同様の条件下ラボプラストミルにより溶融混練を行い、得られた樹脂の環状3量体の含有量(CT2)の定量を行った。またフィルム評価も実施した。
その結果を表3に示す。
上記ポリエステル系樹脂(A)−1とポリエステル系樹脂(B)−1の重量比を表1に記載の様に変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステル系樹脂配合物を調製し、溶融混練してポリエステル系樹脂組成物(C)を得た。また、実施例1と同様にして環状3量体の含有量(CT1及びCT2)を定量し、フィルム評価、体積固有抵抗値の測定を実施した。その結果を表3に示す。
実施例1においてポリエステル系樹脂(A)−1の代わりにポリエステル系樹脂(A)−2を用い、実施例1と同様に溶融混練してポリエステル系樹脂組成物(C)を得た。また、実施例1と同様にして環状3量体の含有量(CT1及びCT2)を定量し、フィルム評価、体積固有抵抗値の測定を実施した。その結果を表3に示す。
実施例1においてポリエステル系樹脂(A)−1の代わりにポリエステル系樹脂(A)−3を用い、実施例1と同様に溶融混練してポリエステル系樹脂組成物(C)を得た。また、実施例1と同様にして環状3量体の含有量(CT1及びCT2)を定量し、フィルム評価、体積固有抵抗値の測定を実施した。その結果を表3に示す。
実施例6においてポリエステル系樹脂(A)−1の代わりにポリエステル系樹脂(A)−4を用い、実施例1と同様に溶融混練してポリエステル系樹脂組成物(C)を得た。また、実施例1と同様にして環状3量体の含有量(CT1及びCT2)を定量し、フィルム評価、体積固有抵抗値の測定を実施した。その結果を表3に示す。
実施例1においてポリエステル系樹脂(B)−1の代わりにポリエステル系樹脂(B)−2を用い、実施例1と同様に溶融混練してポリエステル系樹脂組成物(C)を得た。また、実施例1と同様にして環状3量体の含有量(CT1及びCT2)を定量し、フィルム評価、体積固有抵抗値の測定を実施した。その結果を表3に示す。
実施例1においてポリエステル系樹脂(B)−1の代わりにポリエステル系樹脂(B)−3を用い、実施例1と同様に溶融混練してポリエステル系樹脂組成物(C)を得た。また、実施例1と同様にして環状3量体の含有量(CT1及びCT2)を定量し、フィルム評価、体積固有抵抗値の測定を実施した。その結果を表3に示す。
実施例1においてポリエステル系樹脂(B)−1の代わりにポリエステル系樹脂(B)−4を用い、実施例1と同様に溶融混練してポリエステル系樹脂組成物(C)を得た。また、実施例1と同様にして環状3量体の含有量(CT1及びCT2)を定量し、フィルム評価、体積固有抵抗値の測定を実施した。その結果を表3に示す。
実施例1においてポリエステル系樹脂(B)−1の代わりにポリエステル系樹脂(B)−5を用い、実施例1と同様に溶融混練してポリエステル系樹脂組成物(C)を得た。また、実施例1と同様にして環状3量体の含有量(CT1及びCT2)を定量し、フィルム評価、体積固有抵抗値の測定を実施した。その結果を表3に示す。
実施例1においてポリエステル系樹脂(A)−1の代わりにポリエステル系樹脂(A)−10を用い、実施例1と同様に溶融混練してポリエステル系樹脂組成物(C)を得た。また、実施例1と同様にして環状3量体の含有量(CT1及びCT2)を定量し、フィルム評価、体積固有抵抗値の測定を実施した。その結果を表3に示す。この例では溶融混練後のCTの増加量が多く認められた。
実施例1においてポリエステル系樹脂(A)−1として製造比較例A−1で得られたポリエステル樹脂(A)−5を使用し、ポリエステル系樹脂(B)−1との重量比[(A)/(B)]を0.25に変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物(C)を得た。また、実施例1と同様にして環状3量体の含有量(CT1及びCT2)を定量し、フィルム評価、体積固有抵抗値の測定を実施した。その結果を表3に示す。
実施例1においてポリエステル系樹脂(A)−1として製造比較例A−2で得られたポリエステル樹脂(A)−6を使用し、重量比[(A)/(B)]を0.05とした以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物(C)を得た。また、実施例1と同様にして環状3量体の含有量(CT1及びCT2)を定量し、フィルム評価、体積固有抵抗値の測定を実施した。その結果を表3に示す。
2,3 ;エステル化反応槽
4 ;エチレングリコール供給管
5 ;マグネシウム化合物供給管
6 ;チタン化合物供給管
7 :反応物移送管
8 :フィルター
9、10、11 ;重縮合反応槽
Claims (9)
- 原料ジカルボン酸成分及びジオール成分のスラリー調製工程、エステル化反応或いはエステル交換反応工程の任意の段階、又は、溶融重縮合工程の初期の段階のいずれかにおいて、リン化合物及びゲルマニウム化合物触媒を添加することによって製造され、且つ下記式(1)、(2)及び(3)を満たすリン原子及びゲルマニウム原子を含むポリエステル系樹脂(A)と下記式(4)を満たすチタン原子を含むポリエステル系樹脂(B)とを溶融混練して得たポリエステル系樹脂組成物(C)であって、該組成物(C)は、下記式(6)を満たし、且つ下記(a)の条件を満たすことを特徴とするポリエステル系樹脂組成物(C)。
P1≧10 (1)
0.1≦Ge1≦1.5 (2)
0.008≦Ge1/P1≦0.15 (3)
0≦P2/Ti1≦80 (4)
(但し、式(1)、(2)、(3)中、ポリエステル系樹脂(A)1トン当たりのリン原子の含有量(モル)をP1、ゲルマニウム原子の含有量(モル)をGe1で表し、式(4)中、ポリエステル系樹脂(B)1トン当たりのリン原子の含有量(モル)をP2、チタン原子の含有量(モル)をTi1で表す。)
(P3/Ti2)≧5 (6)
(但し、式(6)中、該組成物(C)1トン当たりのリン原子の含有量(モル)をP3で表し、チタン原子の含有量(モル)をTi2で表す。)
(a)該ポリエステル系樹脂(A)と該ポリエステル系樹脂(B)とを窒素雰囲気下、285℃において20分間溶融混練した場合、溶融混練前のポリエステル系樹脂組成物1トン当たりの環状3量体の含有量をX(グラム)、溶融混練後の該組成物(C)1トン当たりの環状3量体の含有量をY(グラム)とすると、Y≦8000,且つY―X≦2500である。 - ポリエステル系樹脂(B)のチタン原子の含有量が、樹脂1トン当たり0.002モル以上、1モル以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物(C)。
- ポリエステル系樹脂(B)の環状3量体の含有量が、樹脂1トン当たり8000グラム以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂組成物(C)。
- ポリエステル系樹脂(B)の体積固有抵抗値が、50×107Ωcm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂組成物(C)。
- リン化合物が、5価のリン化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂組成物(C)。
- ポリエステル系樹脂(A)とポリエステル系樹脂(B)との重量比が、下記式(5)を満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂組成物(C)。
0<ポリエステル系樹脂(A)/ポリエステル系樹脂(B)≦0.5 (5) - ポリエステル系樹脂(A)に含まれる0.1mm以上の大きさの異物の個数が、ポリエステル系樹脂50gあたり1個以下であり、かつ、0.3mm以上の大きさの異物が含まれないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物(C)。
- ポリエステル樹脂組成物(C)から形成されるフィルムが、該フィルム表面上に高さ0.27μm以上の突起を100個/10cm2以下、且つ、高さ0.54μm以上の突起を30個/10cm2以下存することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂組成物(C)。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂組成物(C)を使用したことを特徴とするフィルム、シート、又はボトル。
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