以下、添付図面を参照しながら本発明による膜厚測定装置および膜厚測定方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1の実施の形態)
最初に、本発明による膜厚測定方法、及びその測定原理について説明する。図1は、測定対象物の膜厚の測定方法について模式的に示す図である。本膜厚測定方法は、第1面及び第2面を有する膜状の測定対象物に対し、その膜厚の時間的な変化量を測定するものである。以下、測定対象物の第1面を測定光が入射される上面とし、第2面をその反対側の下面として説明する。
図1に示す例では、膜状の測定対象物の一例として、基板12上に形成された半導体膜15を示している。このような半導体膜15に対し、膜厚が時間とともに変化する半導体製造プロセスの一例として、成膜処理もしくはエッチング処理を実行することを考える。成膜処理では、処理の進行にしたがって半導体膜15の膜厚dは時間とともに増加する。また、エッチング処理では、処理の進行にしたがって半導体膜15の膜厚dは時間とともに減少する。
このような膜厚dの時間変化について、基板12及び半導体膜15からなる試料10に対し、基板12とは反対側となる半導体膜15の上面(第1面)16側から膜厚測定用の測定光L0を供給する。そして、その上面16からの反射光L1と、下面(第2面、基板12と半導体膜15との境界面)17からの反射光L2〜LMとが干渉して生成される干渉光を検出することで、半導体膜15の膜厚dを測定する。
本測定方法では、具体的には、半導体膜15を含む試料10に対し、所定帯域に亘る波長成分を少なくとも含む測定光L0を照射する(測定光供給ステップ)。次に、測定光L0の上面16、下面17からの反射光L1〜LMが重畳して成る出力光の強度を波長毎に検出可能な状態とし、出力光に含まれる各波長成分の各時点での強度を検出して、出力光のスペクトルの時間による変化を取得する(検出ステップ)。そして、この出力光スペクトルの時間変化を参照して、半導体膜15の膜厚dの時間変化を求める(膜厚解析ステップ)。
ここで、測定対象の半導体膜15の屈折率をn、時間変化する膜厚をd、測定光L0が含む、或る波長をλとすると、反射光L1〜LMが干渉して生じる干渉光の強度Iは、下記の式(2)によって表される。ただし、反射光L3〜LMは、測定対象の半導体膜15中で減衰するため、非常に弱い強度となる。そのため、強度Iは、反射光L1と反射光L2とが干渉して生じるスペクトルとして近似してもよい。
すなわち、波長λの測定光L0を用いた場合、得られる干渉光の強度Iは、エッチング処理等による膜厚dの時間変化に伴って余弦波的に変化する。ここで、A,Bは薄膜の上下界面における反射率によって定まる定数である。
図2は、このような干渉光の強度Iの時間変化の一例を示すグラフである。図2において、干渉光強度Iのピーク(山または谷)をカウントすることにより、膜厚dの時間変化量を求めることができる。また、その際の時間を計測すれば膜厚dの変化率(例えばエッチングレート)を求めることができる。なお、図2に示す干渉光強度Iの変化において、その1周期Δt1は、膜厚dがΔd=λ/2nだけ変化する時間に相当する。
しかし、干渉光強度Iのピーク(山または谷)を複数回カウントできる程度に半導体膜15の膜厚dの変化量が十分に大きい場合にはこのような方法は有効であるが、干渉光強度Iのピークの繰り返し周期(図中の周期Δt1)に満たない程度に半導体膜15の膜厚dの変化量が小さい場合、干渉光強度Iの時間変化から膜厚dの変化量を求めることは難しく、十分な測定精度を確保することが困難となる。
そこで、本測定方法の膜厚解析ステップでは、まず、互いに異なる二以上の時刻において出力光を検出し、それらの出力光の各スペクトル波形に基づいて、干渉光強度Iが極大もしくは極小となるピーク波長を求める。そして、求めたピーク波長の時間変化から、半導体膜15の膜厚dの時間変化を求める。以下、このような測定方法について具体的に説明する。
図3は、所定帯域に亘る波長成分を少なくとも含む測定光L0を半導体膜15に照射したときの、出力光スペクトルの一例を示すグラフである。通常、出力光スペクトルには、干渉光によるスペクトルだけでなく、測定光L0に含まれていた輝線スペクトル等が含まれている。したがって、出力光スペクトルの波長微分を単に演算しても、光源の輝線スペクトル等が影響し、干渉光のピークを正確に検出することはできない。
ここで、成膜速度(またはエッチング速度)rと時間tとを用いて、半導体プロセスにおいて処理された膜厚d=rtとすれば、干渉光強度Iは上式(2)から次のように表される。
そして、式(3)を時間微分すると以下となる。
これより(dI/dt)=0となる波長λは次のように表される。
上式(5)において、mが奇数のときには、反射光L1〜LM(特にL1〜L2)は互いに弱め合い、mが偶数のときには、反射光L1〜LM(特にL1〜L2)は互いに強め合う。すなわち、mが奇数のときには干渉光強度Iのピーク(谷)波長を表す条件式となり、mが偶数のときには干渉光強度Iのピーク(山)波長を表す条件式となる。つまり、干渉光強度Iの時間微分(dI/dt)がゼロとなる波長λは、干渉光スペクトルのピーク波長であることを示している。
このことから、第1の時刻T1=tにおいて検出された出力光の第1のスペクトル波形I(t,λ)と、第1の時刻T1とは異なる第2の時刻T2=t+Δtにおいて検出された出力光の第2のスペクトル波形I(t+Δt,λ)との差分I(t+Δt,λ)−I(t,λ)がゼロとなる波長λ(以下、ゼロクロス波長という)を求めることにより、干渉光スペクトルのピーク波長を得ることができると考えられる。
図4は、t=171[秒]、Δt=5[秒]とした場合の差分I(t+Δt,λ)−I(t,λ)の一例を示すグラフである。図4に示すように、第2の時刻T2における出力光スペクトルに存在したピークは正のピークとして現れており、第1の時刻T1における出力光スペクトルに存在したピークは負のピークとして現れている。そして、測定光L0に含まれていた輝線スペクトルといった干渉光以外のスペクトル成分は、膜厚dの時間変化によらず一定であるため差分I(t+Δt,λ)−I(t,λ)ではキャンセルされている。この図4においては、Δtが5[秒]と小さいため、差分I(t+Δt,λ)−I(t,λ)がゼロとなる波長(図中のゼロクロス波長λA)を、干渉光スペクトルのピーク波長とみなすことができる。なお、Δtが10[秒]以下であれば、差分I(t+Δt,λ)−I(t,λ)がゼロとなる波長(図中のゼロクロス波長λA)を、このように干渉光スペクトルのピーク波長とみなすことができる。
また、図4に示した例では、波長によって光強度が大きく異なるため、差分I(t+Δt,λ)−I(t,λ)の大きさが波長によって大きく異なる。このような場合、第1のスペクトル波形I(t,λ)と第2のスペクトル波形I(t+Δt,λ)とを重畳した波形I(t,λ)+I(t+Δt,λ)を用いて差分を正規化した後に、ピーク波長を求めるとよい。すなわち、以下の式(6)
によって正規化された差分がゼロとなる波長を、干渉光強度Iのピーク波長として求める。なお、図5は、図4に示した差分I(t+Δt,λ)−I(t,λ)を上式(6)により正規化したグラフである。この図5においては、正規化された差分がゼロとなる波長(図中のゼロクロス波長λ
A)を、干渉光スペクトルのピーク波長とみなすことができる。
ここで、式(2)より、半導体膜15の膜厚dが変化すると、干渉光スペクトルのピーク波長が変化する。例えば、膜厚dがエッチング処理によって薄くなると、干渉光スペクトルのピーク波長は短波長方向へ移動する。逆に、膜厚dが成膜処理によって厚くなると、干渉光スペクトルのピーク波長は長波長方向へ移動する。したがって、ピーク波長(ゼロクロス波長)の移動量を測定することによって、膜厚dの変化量を知ることができる。
図1に示した反射光L1〜LM(特にL1〜L2)が互いに強め合う条件は、次の式(7)によって表される。
上式(7)において、ピーク波長λが1[nm]変化するときを考えると、次の式(8)のようになる。
したがって、ピーク波長λが1[nm]変化するとき、膜厚dは(m/2n)だけ変化することがわかる。
なお、具体的なmの値については以下のようにして求めることができる。式(7)において、隣り合うピーク波長λ
1,λ
2(λ
1>λ
2)を考えると、
と表すことができる。ピーク波長λ
1,λ
2において屈折率の波長分散の影響が小さいと考えn
1=n
2とみなすと、上式(9)よりmは以下の式(10)によって求めることができる。
干渉光強度Iのピーク波長(ゼロクロス波長)の移動量をXとすると、膜厚dの変化量Δdは以下の式(11)によって求めることができる。
以上より、測定波長λ、波長λでの半導体膜15の屈折率n、プロセス終了条件である膜厚変化量Δd
fを予め設定してゼロクロス波長の時間変化を監視することにより、目的とする膜厚変化量Δd
fでプロセス(成膜処理またはエッチング処理)を終了させることができる。なお、式(11)におけるピーク波長λ
1,λ
2は、設定した測定波長λに最も近いゼロクロス波長として検出される。
ここで、正規化された差分スペクトルから膜厚dを求める方法の一例を示す。図6には、測定波長300〜900[nm]における、正規化された差分スペクトル波形S1及びS2が示されている。差分スペクトル波形S1は、時刻T1=171[秒]における差分スペクトル波形である。差分スペクトル波形S2は、時刻T1=201[秒]における差分スペクトル波形である。なお、差分スペクトル波形S1及びS2を求めた際のΔt(=T2−T1)は共に5[秒]である。
図中のゼロクロス波長λA11は、差分スペクトル波形S1における複数のゼロクロス波長のうちの一つである。本例では、ゼロクロス波長λA11=525.02[nm]である。また、図中のゼロクロス波長λA12は、差分スペクトル波形S1における複数のゼロクロス波長のうち、ゼロクロス波長λA11と隣り合うゼロクロス波長である。本例では、ゼロクロス波長λA12=452.96[nm]である。なお、「隣り合うゼロクロス波長」とは、厳密には、それらの波長における差分スペクトル波形S1の傾きが互いに同符号となるようなゼロクロス波長をいう。差分スペクトル波形S1が同じ傾きでもってゼロ軸と交差する波長は、共に干渉光が強め合う(又は弱め合う)波長だからである。
波長500[nm]付近における半導体膜15の屈折率をn=2.5とすると、上式(10)よりmが求まる。
また、30秒後の差分スペクトル波形S2では、差分スペクトル波形S1のゼロクロス波長λ
A11に対応するゼロクロス波長λ
A21が、475.52[nm]まで短波長側へ変化している。このことから、膜厚dの変化量Δdを求めることができる。
プロセス(成膜処理またはエッチング処理)開始前の半導体膜15の初期膜厚があらかじめ明らかである場合には、こうして求められる膜厚dの変化量Δdをリアルタイムで測定することにより、半導体膜15が所定の膜厚となった時点で当該プロセスを好適に停止することができる。なお、図7は、成膜プロセスにおける半導体膜15の膜厚dと成膜時間との関係を示したグラフである。同図に示すように、所定の膜厚d=100[nm]に達した時点で、成膜プロセスを終了させることができる。
なお、上述の例では測定波長を500[nm]付近とした場合の測定方法について説明したが、必要に応じて様々な波長の測定光を用いることができる。ここで、図8、図9および図10は、測定波長をそれぞれ400[nm]、600[nm]および800[nm]とした場合における、一定速度で増加する膜厚の測定結果について示すグラフである。図8を参照すると、測定波長が400[nm]の場合には膜厚の変化率にばらつきが生じている。これに対し、800[nm]の場合には、膜厚の変化率がほぼ一定となっており、高い精度で膜厚を測定できていることがわかる。このように、上記成膜方法では、測定波長が長いほど、膜厚測定精度が高くなる傾向がある。これは、測定波長が長くなるほど、膜厚変化に対する干渉ピーク(ゼロクロス波長)の変化量が大きくなるためと考えられる。
次に、上記測定方法を好適に実現できる膜厚測定装置の構成について説明する。図11は、膜厚測定装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態では、半導体処理装置(例えばエッチング装置)20の処理チャンバ内に設置された試料10の半導体膜15(図1参照)を測定対象物とした例を示している。膜厚測定装置1Aは、測定光学系21と、測定光源28と、分光光学系30と、光検出器31と、膜厚解析部40とを備えて構成されている。
処理装置20内の試料10の半導体膜15に対し、測定光学系21を介して測定光L0を供給する測定光源28が設けられている。この測定光源28は、所定帯域に亘る波長成分を少なくとも含む測定光L0を測定対象物の半導体膜15へと供給する。このような測定光源28としては、例えば、上記所定帯域の白色光を測定光L0として供給する白色光源を好適に用いることができる。或いは、上記所定帯域に亘って出力波長を変化させることが可能な波長可変レーザや、上記所定帯域に含まれる複数の単色光源を組み合わせたものでもよい。なお、前述した方法による膜厚測定では膜厚の変化量が大きいほど干渉光強度のピーク波長(ゼロクロス波長)が変化するので、上記所定帯域の幅は、測定しようとする膜厚変化量に応じて設定されることが好ましく、例えば20[nm]以上であることが好ましい。
また、測定光L0が試料10で反射された反射光L1〜LMが重畳されて成る出力光に対し、測定光学系21を介して、分光光学系30及び光検出器31が設けられている。ここで、図12及び図13は、膜厚測定装置1Aにおける測定光学系21の構成の一例を示す図である。本構成例では、試料10に対向して配置される対物レンズ211を含む測定光学系21に対し、測定光源28からの測定光を導光する測定光入力ファイバ281、試料10の画像取得時等に用いられる照明光を導光する照明光入力ファイバ282、及び試料10からの反射光(出力光)を分光光学系30へと導光する反射光出力ファイバ308が接続されている。
このような構成において、図12に示すように、測定光源28からの測定光L0は、入力ファイバ281によって測定光学系21へと入力され、ハーフミラー212を通過し、反射ミラー213で反射されて、対物レンズ211を介して試料10の半導体膜15へと供給される。また、図13に示すように、半導体膜15の上面、下面からの反射光L1〜LMが重畳されて成る出力光は、反射ミラー213、ハーフミラー212、及び反射ミラー214で反射されて、出力ファイバ308を介して分光光学系30へと出力される。
分光光学系30は、試料10から測定光学系21を介して入力される反射光を分光する分光手段であり、本実施形態における検出手段の一部を構成する。具体的には、分光光学系30は、測定光L0の半導体膜15からの出力光を、波長毎に検出可能なように分解する。
図14は、分光光学系30の構成の一例を示す図である。この分光光学系30は、入射スリット301、コリメーティング光学系302、分散素子である回折格子303、及びフォーカシング光学系304を有して構成されている。このような構成において、回折格子303で各波長成分へと分解された出力光は、フォーカシング光学系304を介して波長スペクトル出力面305において波長成分毎に結像され、出力面305に配置された光検出器によって波長成分毎に検出される。なお、本例以外にも、例えば帯域フィルタを用いることによって、半導体膜15からの出力光を波長毎に検出可能なように分解する分光光学系を好適に構成できる。
分光光学系30によって波長成分毎に分解された出力光に対し、各波長成分の各時点tでの強度を検出する検出手段として、図11に示す光検出器31が設けられている。光検出器31は、例えば図14に示した分光光学系30に対し、その出力面305に配置されて、分光光学系30によって分解された各波長成分の強度を検出する複数の光検出素子が配列されたマルチチャンネル光検出器によって構成される。
光検出器31から出力された検出信号は、膜厚解析部40へ提供される。膜厚解析部40は、測定対象物である半導体膜15の膜厚dの時間変化を求める膜厚解析手段であり、半導体膜15からの反射光L1〜LM(特にL1〜L2)が相互に干渉して生じる干渉光の強度が極大もしくは極小となるピーク波長を、互いに異なる二以上の時刻において検出された出力光の各スペクトル波形に基づいて求め、該ピーク波長の時間変化から半導体膜15の膜厚dの時間変化を求める。
具体的には、前述したように、第1の時刻T1=tにおいて検出された出力光の第1のスペクトル波形I(t,λ)と、第1の時刻T1とは異なる第2の時刻T2=t+Δtにおいて検出された出力光の第2のスペクトル波形I(t+Δt,λ)との差分I(t+Δt,λ)−I(t,λ)を求め、より好ましくは該差分を正規化し、そのゼロクロス波長を求めることにより、干渉光スペクトルのピーク波長を求める。そして、前述した式(11)により、膜厚dの時間変化を求める。膜厚解析部40は、膜厚dに関する終点情報を予め記憶しており、算出された膜厚dが所定の厚さに達すると、処理が終点に到達したことを示す信号(終点検出信号)を出力する。なお、このような膜厚解析部40は、例えば所定の解析プログラムが実行されているコンピュータによって構成することができる。
また、図11に示す膜厚測定装置1Aでは、上記の膜厚解析部40に加えて、測定制御部50が設けられている。測定制御部50は、膜厚解析部40から出力される膜厚情報や終点情報を参照し、測定装置1A及び処理装置20の装置各部を制御することで、測定装置1Aにおける膜厚測定動作、及び処理装置20におけるエッチング処理等の動作について必要な制御を行う。
また、この測定制御部50には、入力装置51と、表示装置52とが接続されている。入力装置51は、測定装置1Aにおける測定動作、及び処理装置20における処理動作に必要な情報、条件、指示等の操作者による入力に用いられる。この入力装置51は、例えば膜厚解析部40において用いられる測定波長、半導体膜15の屈折率、プロセスの目標膜厚等の入力に用いることができる。また、プロセス開始時の膜厚値をさらに入力できるようにしても良い。ただし、これらの条件、数値については、膜厚解析部40にあらかじめ用意する構成としても良い。また、表示装置52は、上記した測定動作及び処理動作についての必要な情報の操作者への表示に用いられる。
また、本実施形態の膜厚測定装置1Aでは、測定光学系21に対し、XYθステージ22が設けられている。このXYθステージ22は、測定光学系21の位置、角度等をX方向、Y方向、θ方向に調整することで、膜厚測定装置1Aによる半導体膜15での膜厚dの測定位置、測定条件を調整するために用いられる。また、XYθステージ22は、ステージ制御部23によって駆動制御される。
また、処理装置20内の試料10、及び測定光学系21に対し、さらに撮像装置24、及び測定位置設定部25が設けられている。撮像装置24は、膜厚測定装置1Aによる半導体膜15での膜厚dの測定位置を確認するための位置確認用撮像装置である。また、測定位置設定部25は、撮像装置24によって測定光学系21を介して取得された半導体膜15を含む試料10の画像を参照して、試料10に対する膜厚測定位置を設定する。
図15は、測定位置設定部25の構成の一例を示すブロック図である。本構成例による測定位置設定部25は、測定画像認識部251と、基準画像記憶部252と、画像比較部253と、制御条件算出部254とを有して構成されている。測定画像認識部251は、撮像装置24で取得された試料10の画像データを入力し、その画像での測定パターンのパターン認識を行う。また、基準画像記憶部252には、半導体膜15での膜厚dの測定位置として設定すべき位置を特定するための基準画像があらかじめ記憶されている。
画像比較部253は、認識部251で認識された測定画像での測定パターンと、記憶部252で記憶された基準画像での基準パターンとを、差分画像の算出などの方法によって比較する。また、制御条件算出部254は、画像比較部253での測定画像と基準画像との比較結果に基づいて、測定位置の調整の要否、及び調整が必要な場合にはその制御条件を算出する。そして、この算出部254で求められた制御条件に基づいて、ステージ制御部23を介してXYθステージ22、測定光学系21が駆動制御されることにより、試料10の半導体膜15に対する膜厚dの測定位置、測定条件が設定、制御される。
なお、このような試料10の半導体膜15に対する膜厚dの測定位置については、半導体ウエハ上のテグの位置とすることが好ましい。これは、半導体チップ上の位置を測定位置とすると、マスクなどの段差等が影響して、膜厚dを正確に測定できない可能性があるためである。
本実施形態による膜厚測定装置及び膜厚測定方法の効果について説明する。
膜厚測定装置1A及び膜厚測定方法においては、膜状の測定対象物である基板12上の半導体膜15に対し、所定帯域に亘る波長成分を含む測定光L0を供給し、上面16及び下面17からの反射光L1〜LMを含む出力光を分光光学系30及び光検出器31によって分光して検出する。そして、反射光L1〜LM(特にL1〜L2)が相互に干渉して生じる干渉光の強度が極大もしくは極小となるピーク波長を、互いに異なる時刻T1=t,T2=t+Δtにおいて検出された出力光の各スペクトル波形I(t,λ),I(t+Δt,λ)に基づいて求め、ピーク波長の時間変化から半導体膜15の膜厚dの時間変化を求めている。
先に述べたように、広帯域に亘る波長成分を含む測定光を半導体膜15に照射すると、その反射光(出力光)のスペクトルには、測定光に含まれていた輝線スペクトルといった不要なピークが干渉光と共に含まれる。しかし、測定光源に起因するこのような不要なピークの中心波長は、半導体膜15の膜厚dの変化にかかわらず不変であるから、異なる時刻における出力光の各スペクトル波形I(t,λ),I(t+Δt,λ)において該不要ピークの中心波長も不変である。
したがって、これらのスペクトル波形I(t,λ),I(t+Δt,λ)を用いることによって、輝線スペクトル等の影響をキャンセルして干渉光のピーク波長を正確に求めることが可能となる。すなわち、本実施形態による膜厚測定装置1A及び膜厚測定方法によれば、干渉光強度Iのピークの繰り返し周期Δt1(図2参照)に満たないような微小な膜厚dの変化量であっても、リファレンスサンプルを用いることなく、その膜厚dの変化量を精度良く測定できる。
また、本実施形態のように、膜厚測定装置1A及び膜厚測定方法は、膜厚解析部40(膜厚解析ステップ)において、第1のスペクトル波形I(t,λ)と、第2のスペクトル波形I(t+Δt,λ)との差分I(t+Δt,λ)−I(t,λ)を演算し、該差分がゼロとなる波長λAをピーク波長とすることが好ましい。
測定光源28に起因する輝線スペクトルといった不要なピークの中心波長は、半導体膜15の膜厚dの変化にかかわらず不変であるから、第1及び第2のスペクトル波形I(t,λ),I(t+Δt,λ)に含まれる輝線スペクトル等の中心波長は両波形で同一であり、差分I(t+Δt,λ)−I(t,λ)を演算することによってその影響を効果的に排除できる。また、上記差分がゼロとなるゼロクロス波長λAは、波形I(t,λ),I(t+Δt,λ)において相互に対応するピーク波長の間に位置しており、Δtが長くない場合にはこのゼロクロス波長λAを干渉光のピーク波長と見なすことができる。したがって、このゼロクロス波長λAの変化量(例えば図6に示したλA21−λA11)から、半導体膜15の膜厚dの時間変化を精度良く求めることができる。
また、差分I(t+Δt,λ)−I(t,λ)がゼロとなる波長をピーク波長と見なして半導体膜15の膜厚dの時間変化を求める場合、本実施形態のように、膜厚解析部40(膜厚解析ステップ)において、第1のスペクトル波形I(t,λ)と第2のスペクトル波形I(t+Δt,λ)とを重畳した波形I(t,λ)+I(t+Δt,λ)を用いて差分を正規化(上式(6)参照)した後に、ピーク波長を求めることが好ましい。これにより、図4に示したように測定光L0の強度が波長により異なるため差分I(t+Δt,λ)−I(t,λ)の大きさが波長により大きく異なる場合であっても、図5に示したように、差分I(t+Δt,λ)−I(t,λ)に関する良好なスペクトル波形を得ることができる。
また、膜厚測定の具体的な測定対象については、上述したように、測定対象物は基板12上の半導体膜15であり、所定の処理の実行中における半導体膜15の膜厚dの時間変化を測定することが好ましい。このような構成では、半導体膜15の膜厚dが減少または増加するエッチング処理、薄膜形成処理などの半導体プロセスの実行中において、処理の終点検出などのプロセス制御を精度良く行うことができる。なお、本実施形態による膜厚測定方法は、半導体膜15以外にも、膜状の測定対象物の膜厚dの変化量の測定に対して一般に適用可能である。
(第2の実施の形態)
続いて、本発明に係る膜厚測定装置および膜厚測定方法の第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態と本実施形態とで異なる点は、膜厚解析手段(膜厚解析ステップ)における処理内容である。すなわち、本実施形態では、膜厚解析手段(膜厚解析ステップ)において、互いに異なる二以上の時刻において出力光を検出し、それらの出力光の各スペクトル波形に基づいて、干渉光強度Iが極大もしくは極小となるピーク波長を求める点は第1実施形態と同様であるが、その具体的な手法が異なっている。なお、膜厚解析手段(膜厚解析ステップ)以外の装置構成およびステップについては、第1実施形態と同様である。
本実施形態では、第1の時刻T1=tにおいて検出された出力光の第1のスペクトル波形I(t,λ)と、第1の時刻T1とは異なる第2の時刻T2=t+Δtにおいて検出された出力光の第2のスペクトル波形I(t+Δt,λ)との比I(t+Δt,λ)/I(t,λ)が1となる波長λを求めることにより、干渉光スペクトルのピーク波長を得る。第1及び第2のスペクトル波形の比が1になる場合とは、すなわち第1及び第2のスペクトル波形が等しくなる場合であり、第1実施形態において差分I(t+Δt,λ)−I(t,λ)がゼロとなる場合と等価であるから、このような演算によっても干渉光スペクトルのピーク波長を好適に得ることができる。
図16は、t=171[秒]、Δt=5[秒]とした場合の比I(t+Δt,λ)/I(t,λ)の一例を示すグラフである。図16において、測定光L0に含まれていた輝線スペクトルといった干渉光以外のスペクトル成分は、膜厚dの時間変化によらず一定であるためキャンセルされている。この図16においても、Δtが5[秒]と小さいため、比I(t+Δt,λ)/I(t,λ)が1となる波長(図中の波長λC)を、干渉光スペクトルのピーク波長とみなすことができる。なお、Δtが10[秒]以下であれば、比I(t+Δt,λ)/I(t,λ)が1となる波長λCを、このように干渉光スペクトルのピーク波長とみなすことができる。
式(2)より、半導体膜15の膜厚dが変化すると、干渉光スペクトルのピーク波長が変化する。したがって、ピーク波長の移動量を測定することによって、式(11)により膜厚dの変化量を知ることができる。
本実施形態においても、反射光L1〜LM(特にL1〜L2)が相互に干渉して生じる干渉光の強度が極大もしくは極小となるピーク波長を、互いに異なる時刻T1=t,T2=t+Δtにおいて検出された出力光の各スペクトル波形I(t,λ),I(t+Δt,λ)に基づいて求め、ピーク波長の時間変化から半導体膜15の膜厚dの時間変化を求めている。したがって、輝線スペクトル等の影響をキャンセルして干渉光のピーク波長を正確に求めることができるので、干渉光強度Iのピークの繰り返し周期Δt1(図2参照)に満たないような微小な膜厚dの変化量であっても、リファレンスサンプルを用いることなく、その膜厚dの変化量を精度良く測定できる。
また、本実施形態のように、膜厚測定装置1A及び膜厚測定方法は、膜厚解析手段(膜厚解析ステップ)において、第1のスペクトル波形I(t,λ)と、第2のスペクトル波形I(t+Δt,λ)との比I(t+Δt,λ)/I(t,λ)を演算し、該比が1となる波長λcをピーク波長としてもよい。測定光源に起因する輝線スペクトルといった不要なピークの中心波長は、半導体膜15の膜厚dの変化にかかわらず不変であるから、比I(t+Δt,λ)/I(t,λ)を演算することによってその影響を効果的に排除できる。また、上記比が1となる波長λcは、波形I(t,λ),I(t+Δt,λ)において相互に対応するピーク波長の間に位置しており、Δtが長くない場合にはこの波長λcを干渉光のピーク波長と見なすことができる。したがって、この波長λcの変化量から、半導体膜15の膜厚dの時間変化を精度良く求めることができる。
(第3の実施の形態)
続いて、本発明に係る膜厚測定装置および膜厚測定方法の第3実施形態について説明する。上述した第1実施形態と本実施形態とで異なる点は、膜厚解析手段(膜厚解析ステップ)における処理内容である。なお、本実施形態においても、膜厚解析手段(膜厚解析ステップ)以外の装置構成およびステップについては、第1実施形態と同様である。
先に述べた式(2)において、屈折率nが波長λに対して一定であると仮定した場合、半導体膜15からの干渉光のスペクトル波形は、半導体膜15の膜厚dに応じた周期的な波形となる。そして、半導体膜15の膜厚dが薄くなるほどその周期(隣り合うピーク波長の間隔)は大きくなり、逆に半導体膜15の膜厚dが厚くなるほどその周期は小さくなる。言い換えると、半導体膜15の膜厚dが薄くなるほど、単位波長当たりの干渉光のスペクトル波形の繰り返し数が小さくなり、逆に半導体膜15の膜厚dが厚くなるほど、単位波長当たりの干渉光のスペクトル波形の繰り返し数が大きくなるということである。
このような単位波長当たりの繰り返し数は、出力光スペクトルを波長に関してフーリエ変換(好ましくは、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform))することによって求められる。そして、上述したように、FFTによって得られる干渉光のスペクトル波形の繰り返し数が膜厚dに応じて変化することから、当該繰り返し数の変化に基づいて、膜厚dの変化量を求めることができる。
本実施形態では、膜厚解析手段(膜厚解析ステップ)において、互いに異なる二以上の時刻において出力光を検出する。そして、それらの出力光の各スペクトル波形に基づいて、干渉光強度Iが極大もしくは極小となるピーク波長の波長間隔に相当する数値として、単位波長当たりの干渉光のスペクトル波形の繰り返し数を求め、該繰り返し数の時間変化から半導体膜15の膜厚dの時間変化を求める。
具体的には、第1の時刻T1において検出された出力光に関する第1のスペクトル波形I(t,λ)に対し、波長を独立変数とするフーリエ変換(好ましくは高速フーリエ変換)を行い、第1のフーリエ変換波形F{I(t,λ)}を得る。同様に、第1の時刻T1とは異なる第2の時刻T2において検出された出力光に関する第2のスペクトル波形I(t+Δt,λ)についても波長を変数とするフーリエ変換を行い、第2のフーリエ変換波形F{I(t+Δt,λ)}を得る。
図17は、各フーリエ変換波形の一例を示すグラフであり、グラフG1は第1のフーリエ変換波形F{I(t,λ)}を示しており、グラフG2は第2のフーリエ変換波形F{I(t+Δt,λ)}を示している。また、図17に示されているピークP1の中心F0は、第1のスペクトル波形I(t,λ)に含まれる干渉光の単位波長当たりの繰り返し数に相当し、ピークP2の中心Fは、第2のスペクトル波形I(t+Δt,λ)に含まれる干渉光の単位波長当たりの繰り返し数に相当する。なお、図17におけるピークP1,P2以外のピーク(例えば、図中のD領域にあるピーク)は、輝線等によるピークであり、干渉光とは関係のない成分である。
図17に示す例では、ピークP1の中心F0とピークP2の中心Fとの差が、すなわち単位波長当たりの干渉光のスペクトル波形の繰り返し数の変化量なので、この差(F0−F)に基づいて、半導体膜15の膜厚dの変化量を以下のようにして求めることができる。
すなわち、FFTは離散フーリエ変換であり、フーリエ変換前の干渉光スペクトルの一周期が基本波となるので、基本波の波長範囲をλ
1〜λ
2、FFTの基本波に相当する膜厚をD
0とすると、次の式(14)の関係がある。
上式(14)をD
0について解くと
となる。ここで、図17のピークP1に対応する干渉光の単位波長当たりの繰り返し数をF0、ピークP2に対応する干渉光の単位波長当たりの繰り返し数をFとすると、膜厚変化量Δdは次の式(16)によって求めることができる。
なお、膜厚変化量Δdが微小である場合、繰り返し数Fの時間変化よりも位相の時間変化の方が膜厚変化量Δdをより高精度に表すため、位相の時間変化に基づいて膜厚変化量Δdを算出することにより、更に高い精度で膜厚変化量Δdを算出できる。図18は、各フーリエ変換波形の横軸を位相に換算したグラフであり、グラフG3は第1のフーリエ変換波形φ{F(t,λ)}を示しており、グラフG4は第2のフーリエ変換波形φ{F(t+Δt,λ)}を示している。また、図18に示されているピークP3の中心φ0は、第1のスペクトル波形I(t,λ)に含まれる干渉光の単位波長当たりの繰り返し数に対応する位相であり、ピークP4の中心φは、第2のスペクトル波形I(t+Δt,λ)に含まれる干渉光の単位波長当たりの繰り返し数に対応する位相である。
なお、図18においても、ピークP3,P4以外のピーク(図中のD領域にあるピーク)は、輝線等によるピークであり、干渉光とは関係のない成分である。位相φ
0およびφは、次の式(17)および式(18)によって求めることができる。
ゆえに、膜厚変化量Δdは次の式(19)によって求めることができる。
本実施形態においては、反射光L1〜LM(特にL1〜L2)が相互に干渉して生じる干渉光のスペクトル波形の単位波長当たりの繰り返し数を、互いに異なる時刻T1=t,T2=t+Δtにおいて検出された出力光の各スペクトル波形I(t,λ),I(t+Δt,λ)に基づいて求め、上記繰り返し数の時間変化(F0−F)から半導体膜15の膜厚dの時間変化を求めている。また、繰り返し数からその位相を求め、上記位相の時間変化(φ0−φ)から半導体膜15の膜厚dの時間変化を求めている。したがって、例えば図17、図18の領域Dに存在する輝線スペクトル等の影響をキャンセルして、干渉光スペクトルのピーク波長の間隔に相当する数値を正確に求めることができるので、干渉光強度Iのピークの繰り返し周期Δt1(図2参照)に満たないような微小な膜厚の変化であっても、リファレンスサンプルを用いることなく、その膜厚dの変化量を精度良く測定できる。
また、第1のスペクトル波形I(t,λ)及び第2のスペクトル波形I(t+Δt,λ)に含まれる輝線スペクトル等の波形は、両波形I(t,λ),I(t+Δt,λ)で同一である。したがって、フーリエ変換後の波形F{I(t,λ)},F{I(t+Δt,λ)}やその位相φ{F(t,λ)},φ{F(t+Δt,λ)}においても輝線スペクトル等の波形は同一であり、本実施形態の膜厚測定装置および膜厚測定方法によれば、その影響を好適に排除することができる。
また、膜厚測定装置および膜厚測定方法によれば、測定光源28から出力される測定光のスペクトルが平坦でない場合であっても、半導体膜15の膜厚dに対応する繰り返し数のみ算出すればよく、測定光のスペクトルの影響を殆ど無視することができる。
本発明による膜厚測定装置および膜厚測定方法は、上記した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記各実施形態では測定対象物(半導体膜15)の膜厚dを求める為に干渉光スペクトルのピーク波長、又は単位波長当たりの干渉光スペクトル波形の繰り返し数を求めているが、膜厚dを得るために有用な数値はこれらに限られるものではなく、ピーク波長に相当する数値や、隣り合うピーク波長の間隔又は該間隔に相当する数値であれば、膜厚dを好適に求めることができる。
上記実施形態による膜厚測定装置では、第1面及び第2面を有する膜状の測定対象物の膜厚の時間変化を測定する膜厚測定装置であって、所定帯域に亘る波長成分を含む測定光を測定対象物へと供給する測定光源と、測定対象物の第1面からの測定光の反射光、及び第2面からの測定光の反射光が重畳して成る出力光の各時点での強度を波長毎に検出する検出手段と、測定対象物の膜厚の時間変化を求める膜厚解析手段とを備え、膜厚解析手段は、第1面からの反射光と第2面からの反射光とが相互に干渉して生じる干渉光の強度が極大もしくは極小となるピーク波長又は隣り合うピーク波長の間隔に相当する数値を、検出手段において互いに異なる二以上の時刻において検出された出力光の各スペクトル波形に基づいて求め、ピーク波長又は隣り合うピーク波長の間隔に相当する数値の時間変化から測定対象物の膜厚の時間変化を求める構成を用いている。
また、上記実施形態による膜厚測定方法では、第1面及び第2面を有する膜状の測定対象物の膜厚の時間変化を測定する膜厚測定方法であって、所定帯域に亘る波長成分を含む測定光を測定光源から測定対象物へと供給する測定光供給ステップと、測定対象物の第1面からの測定光の反射光、及び第2面からの測定光の反射光が重畳して成る出力光の各時点での強度を波長毎に検出する検出ステップと、測定対象物の膜厚の時間変化を求める膜厚解析ステップとを備え、膜厚解析ステップの際に、第1面からの反射光と第2面からの反射光とが相互に干渉して生じる干渉光の強度が極大もしくは極小となるピーク波長又は隣り合うピーク波長の間隔に相当する数値を、検出ステップにおいて互いに異なる二以上の時刻において検出された出力光の各スペクトル波形に基づいて求め、ピーク波長又は隣り合うピーク波長の間隔に相当する数値の時間変化から測定対象物の膜厚の時間変化を求める構成を用いている。
また、膜厚測定装置は、膜厚解析手段が、第1の時刻T1において検出された出力光に関する第1のスペクトル波形I(T1)と、第1の時刻T1とは異なる第2の時刻T2において検出された出力光に関する第2のスペクトル波形I(T2)との差分I(T2)−I(T1)を演算し、該差分がゼロとなる波長をピーク波長とすることとしてもよい。
同様に、膜厚測定方法は、膜厚解析ステップの際に、第1の時刻T1において検出された出力光に関する第1のスペクトル波形I(T1)と、第1の時刻T1とは異なる第2の時刻T2において検出された出力光に関する第2のスペクトル波形I(T2)との差分I(T2)−I(T1)を演算し、該差分がゼロとなる波長をピーク波長とすることとしてもよい。
上述したように、光源に起因する輝線スペクトルといった不要なピークの中心波長は、測定対象物の膜厚の変化にかかわらず不変である。したがって、第1のスペクトル波形I(T1)及び第2のスペクトル波形I(T2)に含まれる輝線スペクトル等の中心波長は両波形I(T1),I(T2)で同一であるため、差分I(T2)−I(T1)を演算することによりその影響が排除される。また、上記差分がゼロとなる波長(以下、ゼロクロス波長という)は、波形I(T1)に含まれる干渉光のピーク波長と波形I(T2)に含まれる干渉光のピーク波長との間に位置しており、第1及び第2の時刻T1,T2の間隔が長くない場合には、ゼロクロス波長を干渉光のピーク波長と見なすことができる。したがって、このゼロクロス波長の変化量から、測定対象物の膜厚の時間変化を精度良く求めることができる。
また、差分I(T2)−I(T1)がゼロとなる波長をピーク波長として測定対象物の膜厚の時間変化を求める場合、膜厚解析手段は、第1のスペクトル波形I(T1)と第2のスペクトル波形I(T2)とを重畳した波形I(T1)+I(T2)を用いて差分を正規化した後に、ピーク波長を求めることが好ましい。
同様に、膜厚測定方法においては、膜厚解析ステップの際に、第1のスペクトル波形I(T1)と第2のスペクトル波形I(T2)とを重畳した波形I(T1)+I(T2)を用いて差分を正規化した後に、ピーク波長を求めることが好ましい。
これにより、測定光の強度が波長により異なるため差分I(T1)−I(T2)の大きさが波長により大きく異なる場合であっても、差分I(T2)−I(T1)についての良好なスペクトル波形を得ることができる。
また、膜厚測定装置は、膜厚解析手段が、第1の時刻T1において検出された出力光に関する第1のスペクトル波形I(T1)と、第1の時刻T1とは異なる第2の時刻T2において検出された出力光に関する第2のスペクトル波形I(T2)との比I(T2)/I(T1)を演算し、該比が1となる波長をピーク波長とすることとしてもよい。
同様に、膜厚測定方法は、膜厚解析ステップの際に、第1の時刻T1において検出された出力光に関する第1のスペクトル波形I(T1)と、第1の時刻T1とは異なる第2の時刻T2において検出された出力光に関する第2のスペクトル波形I(T2)との比I(T2)/I(T1)を演算し、該比が1となる波長をピーク波長とすることとしてもよい。
前述したように、第1のスペクトル波形I(T1)及び第2のスペクトル波形I(T2)に含まれる輝線スペクトル等の中心波長は両波形I(T1),I(T2)で同一である。したがって、比I(T2)/I(T1)を演算することによりその影響が排除される。また、この比が1となる波長は、波形I(T1)に含まれる干渉光のピーク波長と波形I(T2)に含まれる干渉光のピーク波長との間に位置しており、第1及び第2の時刻T1,T2の間隔が長くない場合には、この波長を干渉光のピーク波長と見なすことができる。したがって、この波長の変化量から、測定対象物の膜厚の時間変化を精度良く求めることができる。
また、膜厚測定装置は、膜厚解析手段が、第1の時刻T1において検出された出力光に関する第1のスペクトル波形I(T1)と、第1の時刻T1とは異なる第2の時刻T2において検出された出力光に関する第2のスペクトル波形I(T2)とをそれぞれフーリエ変換して得られる第1のフーリエ変換波形F{I(T1)}及び第2のフーリエ変換波形F{I(T2)}に基づいて、隣り合うピーク波長の間隔に相当する数値を求め、該数値の時間変化から測定対象物の膜厚の時間変化を求めることとしてもよい。
同様に、膜厚測定方法は、膜厚解析ステップの際に、第1の時刻T1において検出された出力光に関する第1のスペクトル波形I(T1)と、第1の時刻T1とは異なる第2の時刻T2において検出された出力光に関する第2のスペクトル波形I(T2)とをそれぞれフーリエ変換して得られる第1のフーリエ変換波形F{I(T1)}及び第2のフーリエ変換波形F{I(T2)}に基づいて、隣り合うピーク波長の間隔に相当する数値を求め、該数値の時間変化から測定対象物の膜厚の時間変化を求めることとしてもよい。
先に示した式(1)において、屈折率nが波長λに対して一定であると仮定した場合、干渉光強度Iは波数(1/λ)に対して一定周期の余弦波形となる。したがって、該余弦波形において隣り合うピーク波長の間隔に相当する数値、例えば単位波長当たりの干渉光強度Iのスペクトル波形の繰り返し数から、測定対象物の膜厚を求めることができる。すなわち、上記した膜厚測定装置および膜厚測定方法においては、スペクトル波形I(T1),I(T2)を波長についてフーリエ変換して得られる波形F{I(T1)},F{I(T2)}から、隣り合うピーク波長の間隔に相当する数値を求めている。そして、その数値の時間変化から測定対象物の膜厚の時間変化を求めている。
これにより、測定対象物の膜厚の時間変化を精度良く求めることができる。なお、前述したように、第1のスペクトル波形I(T1)及び第2のスペクトル波形I(T2)に含まれる輝線スペクトル等の波形は両波形I(T1),I(T2)で同一なので、フーリエ変換後の波形F{I(T1)},F{I(T2)}においても輝線スペクトル等の波形は同一であり、上記した膜厚測定装置および膜厚測定方法によれば、その影響を好適に排除することができる。
また、膜厚測定装置は、隣り合う前記ピーク波長の間隔に相当する前記数値が、単位波長当たりの干渉光のスペクトル波形の繰り返し数であることが好ましい。或いは、膜厚測定装置は、隣り合う前記ピーク波長の間隔に相当する前記数値が、単位波長当たりの干渉光のスペクトル波形の繰り返し数から換算された位相であることが好ましい。
同様に、膜厚測定方法は、隣り合う前記ピーク波長の間隔に相当する前記数値が、単位波長当たりの干渉光のスペクトル波形の繰り返し数であることが好ましい。或いは、膜厚測定方法は、隣り合う前記ピーク波長の間隔に相当する前記数値が、単位波長当たりの干渉光のスペクトル波形の繰り返し数から換算された位相であることが好ましい。
上記した膜厚の時間変化の測定における具体的な測定対象については、測定対象物は基板上の半導体膜であり、所定の処理の実行中における半導体膜の膜厚の時間変化を測定することが好ましい。このような構成では、上述したように、例えばエッチング処理や薄膜形成処理などの半導体プロセスの実行中において、その膜厚の時間的な変化量を測定して、処理の終点検出などのプロセス制御を精度良く行うことができる。
上記した膜厚測定装置及び膜厚測定方法において、測定光源としては、所定帯域に亘る白色光を測定光として供給する白色光源を用いることができる。なお、測定光源については、これ以外にも様々なものを用いることが可能である。