本発明は、移動局装置及び周辺セル探測処理制御方法に関する。本発明は、移動通信分野において、送信区間に間欠的に配置されたギャップ(無送信区間)を用い、移動局装置がサービングセルの基地局装置以外の周辺セルの基地局装置の情報取得を行うために実施する周辺セルの探索及びレベル測定に適用することができる。
直交周波数分割多重方式(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式等を用いた移動通信における携帯電話等の移動局装置は、通信中の基地局装置以外の周辺の基地局装置(周辺セル)の情報取得を行い、最も受信状態が良好なセルの検出を定期的に行う。
この周辺セルの情報取得は、周辺セル探測用に間欠的に配置されたギャップで、周辺セルの探索(サーチ)及び検出したセルから送信されるセルデータのレベル測定を行うことにより実施される。なお、セルデータのレベル測定は、該セルデータの基準信号受信電力(RSRP:Reference Signal Received Power:)又は基準信号受信品質(RSRQ:Reference Signal Received Quality:)等の測定によって行うことができる。
ギャップとは、サービングセルの基地局装置のパケットスケジューリングによって、移動局装置への通信中データの送信の割り当てが停止される間欠的な無送信区間であり、移動局装置は、この区間で周辺セルの信号を探測することにより、周辺セルの情報取得を実施する。
所定の時間区間(例えば240msec)内に間欠的に配置されるギャップ数は有限であり、また、所定の時間区間内(即ち、所定のギャップ数以内)で探測しなければならない周辺セル数の下限値は、3GPP(Third Generation Partnership Project)−specification等によって規格化されている。
これらの規格に基づいて、所定の時間区間(例えば240msec)内において、周辺セルの探索(サーチ)で使用するギャップ数、及び検出した各セルのレベル測定に使用するギャップ数が決定され、移動局装置のベースバンド部に実装する測定回路の性能条件が決定される。移動局装置では、この有限数のギャップ区間を使用して周辺セルの探索及び測定の各処理のスケジューリングを行い、周辺セル探測の処理制御シーケンスを構築するのが一般的である。
通信中データにギャップを設けることは、通信中データ送受を一旦停止状態とし、周辺セルの探測を行うための異周波データ等の信号を受信する状態を構築・維持することである。これは、通信中のサービングセルの無線リソースが、周辺セル探測のためのギャップ区間で無益に浪費されることとなり、無線リソースの有効利用の観点からギャップ数は可能な限り少ないことが望まれる。
図7に従来の移動局装置における周辺セル探測の機能ブロック構成例を示す。図7において、10は無線データを受信し、該無線データをベースバンドデータへ変換する無線部、20は無線部10からのベースバンドデータを処理するベースバンド部、30は周辺セルの探索(サーチ)及びレベル測定の各処理を制御する探測制御部である。
ベースバンド部20内には、ギャップ制御部21、自セル通信処理部22、セルサーチ部23、レベル測定部24を備える。図7では、無線部10に対するギャップ制御を行うギャップ制御部21をベースバンド部20に配置した構成例を示している。ギャップ制御部21は、探測制御部30からの指示により、無線部10及び自セル通信処理部22に対して、サービングセルとの通信をギャップの区間だけ中断し、その間、周辺セルのセルデータを受信するよう制御する。
自セル通信処理部22は、サービングセルとの通信データを処理する処理部である。セルサーチ部23は、探測制御部30からのセルサーチ起動の指示により、周辺セルの探索(サーチ)を行い、セル探索(サーチ)の終了時にセル探索終了を探測制御部30に通知する。
レベル測定部24は、セルサーチ部23により検出された各セルについて、各セルの送信信号の基準信号受信電力(RSRP)又は基準信号受信品質(RSRQ)のレベルを測定し、性能条件を満たす所定数の周辺セルのレベル測定の終了時に、測定終了を探測制御部30に通知する。
図8は従来の周辺セル探測処理制御の動作フロー例を示す。図8を参照して、1つのギャップで処理される周辺セル探測制御動作例について説明する。探測制御部30は、周辺セル探測を行う場合、ベースバンド部20内のギャップ制御部21にギャップ起動指示を発行する(8−1)。
ベースバンド部20内のギャップ制御部21は、探測制御部30からギャップ起動指示を受け取ると、ギャップ制御を開始し(8−2)、先ず、通信中のサービングセルとの通信を停止する準備を実施する(8−3)。ギャップ開始後(8−4)、自セル通信処理部22におけるサービングセル処理を中断状態にし(8−5)、サービングセルとの通信データの送受を停止する。
また、ギャップ開始後、ギャップ制御部21は、無線部10に対するギャップ開始の制御を開始し(8−6)、無線部10に対して通信中の周波数の送信データ(以下、同周波データという。)の受信停止指示を発行し(8−7)、同周波データの受信停止状態を構築する(8−8)。
更に、ギャップ制御部21は、周辺セルからのデータ(以下、異周波データ又は周辺セルデータという)の受信開始指示を無線部10に発行し(8−9)、異周波データ受信状態を構築する(8−10)。ギャップ制御部21は、無線部10を異周波データ受信状態に構築すると、異周波データ受信開始を探測制御部30へ通知する(8−11)。
探測制御部30では、異周波データの受信開始を監視し(8−12)、異周波データ受信開始を契機に、異周波セル探測開始コマンドを発行する(8−13)。該異周波セル探測開始コマンドにより、ベースバンド部20のセルサーチ部23又はレベル測定部24を起動し、セルサーチ又はレベル測定の処理を実施する(8−14)。
セルサーチ部23は、周辺セルのセルサーチを実施し、処理の終了時に探測制御部30へセルサーチの終了を通知し、また、レベル測定部24は、セルサーチ部23で検出された各セルに対してレベル測定を実施し、処理の終了時に探測制御部30へレベル測定の終了を通知する(8−15)。探測制御部30は、セルサーチ部23又はレベル測定部24からの処理の終了の通知を待ち(8−16)、該処理の終了の通知を契機に、探測結果の情報を取得し、1つのギャップでの探測処理を終了する(8−17)。
一方、ベースバンド部20のギャップ制御部21は、ギャップ区間の終了端に差し掛かると、無線部に対してギャップ終了の制御を開始し(8−18)、無線部10に対して異周波データ受信停止指示を発行し(8−19)、異周波データの受信停止状態を構築する(8−20)。
更に、ギャップ制御部21は、無線部10に同周波データ受信開始指示を発行し(8−21)、ギャップ終了後に同周波データ受信状態を復帰させる(8−22)。また、ベースバンド部20のギャップ制御部21は、ギャップ終了の直前に、自セル通信処理部22に対してサービングセル処理の再開準備を実施させ(8−23)、ギャップ終了(8−24)の直後からサービングセルの受信処理を再開させる(8−25)。
以上の処理制御を、間欠的に配置されたギャップの到来毎に繰り返して実施し、異周波データによるセル探測を実施する。セルサーチ及び所定数のセルのレベル測定を実施するために、複数個のギャップに亘って以上の処理制御を繰り返し実施することとなる。
図9は通信中の移動局装置における周辺セル探測の処理シーケンス例を示す。この処理シーケンス例では、移動局装置は、240msの時間区間内でセルサーチ及び少なくとも4セル分のレベル測定を完了するという性能条件を満たすよう要求されているとする。図9は、この性能条件下でギャップが配置され、周辺セルのサーチ及びセルのレベル測定を実施する処理制御のシーケンスの例を示している。
図9の(a)はベースバンド部の通信データの処理例を示している。ベースバンド部は、図9の(a)に示すように、240msの時間区間に40msの周期で配置されたギャップ(GAP)以外で送信されるサービングセル(自セル)からの通信中データを処理する。
図9の(b)は、無線部の受信処理例を示している。無線部は、図9の(b)に示すように、6msのギャップ(GAP)区間で周辺セル(異セル)からのデータを受信し、ギャップ(GAP)区間以外ではサービングセル(自セル)からの通信中データを受信する受信状態が構築される。
図9の(c)は、ベースバンド部の異周波データの処理例を示している。ベースバンド部は、ギャップ(GAP)で受信される周辺セル(異セル)からの異周波データを使用し、異周波セルサーチ(CS)及び異周波セルのレベル測定(LM)を行う。この例では、ベースバンド部の測定回路の性能により、1回のセルサーチに2つのギャップを使用し、1つのセルのレベル測定(LM)に1つのギャップを使用し、4つのセルの測定に4つのギャップを使用する例を示している。240msの区間に配置された6つのギャップを使用してセルサーチ及び4セル分のレベル測定を完了することにより、上述の性能条件がかろうじて満たされている。
図9の(d)〜(f)は、ギャップ区間におけるベースバンド部の処理及び無線部の処理を詳細に示したものである。図9の(d)はベースバンド部の通信データの処理例を示している。図9の(e)は無線部の受信処理例を示し、ギャップ区間では図9の(e)に示すように、ギャップ開始時に無線部に対して通信中データの受信状態を一旦受信停止状態とし、更に、異周波データの受信状態を構築する。無線部では、異周波データの受信状態の構築により異周波データ受信状態となり、その後、ギャップ終了時に、異周波データの受信状態を受信停止状態とし、更に、通信中データの受信状態を復帰するよう受信状態が構築される。
また、ギャップ区間において、ベースバンド部は、図9の(f)に示すように、無線部が異周波データ受信状態のときに受信された異周波データを使用して、周辺セルのセルサーチ又はセルのレベル測定を実施する。
セルサーチに関して、CDMA方式を採用する移動機に搭載され、3段階セルサーチを実行する受信装置において、無送信区間(ギャップ)で第1段階処理部により第1段階のセルサーチ処理を実行すると同時に受信データを記録し、第1段階のセルサーチ処理の完了後に、記録した受信データを再生して第2段階及び第3段階のセルサーチ処理を実行し、セルサーチにおける処理時間の短縮を図る技術は、例えば下記の特許文献1等によって知られている。
また、セル測定を実行するシステムにおいて、サービングセルによってサービスされる移動局装置で信号を受信し、該受信信号をバッファに記憶し、該信号について、サービングセルに関する部分と、隣接基地局セルに関する部分とを判定し、異周波数と同一周波数の両方のシナリオで単一のFFTを利用するセル測定実行システム等については、特許文献2等により知られている。
特開2006−319765号公報
特開2009−542067号公報
周辺セルのセルサーチ及び検出された各セルの測定に使用するギャップの数は、移動局装置のベースバンド部20の測定性能に依存する。従来、セルサーチ及びセル測定の規格を満足するセル探測を移動局装置で行うために、セルサーチ及びセル測定の実施に使用するギャップを、移動局装置でセルサーチ及びセル測定の処理を行う毎に設け(図9の例では6個のギャップを設け)、各ギャップでセル探測の各処理を行っていた。
そのため、周辺セルの探測の際には、通信中のサービングセルに割り当てた無線リソースが、周辺セルの探測に使用されるギャップ数の区間分だけ無効に浪費されていた。これは、移動局装置とサービングセルとの通信のスループット向上の妨げの要因となっていた。
また、従来のように、各ギャップで周辺セルのデータ受信状態を構築し、周辺セルのサーチ及びレベル測定処理の起動を行う場合、セル探測の性能条件(何個のセルのセル探測が可能か)は、ギャップスケジューリング数に制限があるため、ベースバンド部20の測定回路性能に大きく依存する。そのため、一旦、ベースバンド部20の測定回路性能が固定化されると、セル探測に要求される性能条件の規格やスペックの変動等に対して柔軟に対応することが困難であった。
本発明は、周辺セルのセル探測に使用するギャップ数を削減可能にし、ギャップ区間に割り当てられ無効に浪費されていた無線リソースの削減を図り、また、ギャップスケジューリング数の制限に起因する探測可能なセル数の制約を緩和し、探測可能なセル数を容易に増加することができる周辺セル探測処理制御方法及び移動局装置を提供する。
上記課題を解決する一形態としての移動局装置は、所定の時間区間内に間欠的に設けた無通信区間で、周辺セルからのセルデータを受信し、周辺セルの探索及びセルデータのレベルを測定する移動局装置において、無線データを受信し、前記受信した無線データをベースバンドデータへ変換する無線部と、前記無通信区間で受信される周辺セルからのセルデータをバッファリングするバッファリング制御部と、前記バッファリングしたセルデータを読み出して周辺セルの探索を行うセルサーチ部と、前記バッファリングしたセルデータを読み出して周辺セルのセルデータのレベル測定を行うレベル測定部と、サービングセルの基地局装置のパケットスケジューリングにおいて自局である前記移動局装置への通信中のデータの送信の割り当てが停止される間欠的な時間区間であるギャップが開始されたことを契機に、前記無線部に対して前記サービングセルでの受信停止指示を発行し、前記周辺セルからの異周波データの受信開始指示を前記無線部に対して発行することにより、前記バッファリング制御部に前記周辺セルからの異周波データであるセルデータをバッファリングさせ、前記ギャップの終了端に差し掛かったことを契機に、前記無線部に対して前記異周波データの受信停止指示を発行し、前記サービングセルでの受信開始指示を前記無線部に対して発行することにより、前記ギャップ区間における異周波データのバッファリングを完了させ、前記ギャップ区間開始前の処理の再開準備を行い、前記セルサーチ部及び/又は前記レベル測定部に対して前記バッファリングされたセルデータを用いて前記周辺セルの探索及び/又はレベル測定の実行指示を発行する制御部と、を備えたものである。
また、上記課題を解決する他の形態としてのセル探測処理制御方法は、無線部において無線データを受信し、前記受信した無線データをベースバンドデータへ変換するステップと、サービングセルの基地局装置のパケットスケジューリングにおいて自局である前記移動局装置への通信中のデータの送信の割り当てが停止される間欠的な時間区間であるギャップが開始されたことを契機に、前記無線部に対して前記サービングセルでの受信停止指示を発行し、前記周辺セルからの異周波データの受信開始指示を前記無線部に対して発行することにより、バッファリング制御部に前記周辺セルからの異周波データであるセルデータをバッファリングさせるステップと、前記ギャップの終了端に差し掛かったことを契機に、前記無線部に対して前記異周波データの受信停止指示を発行し、前記サービングセルでの受信開始指示を前記無線部に対して発行することにより、前記ギャップ区間における異周波データのバッファリングを完了させ、前記ギャップ区間開始前の処理の再開準備を行い、前記セルサーチ部及び/又は前記レベル測定部に対して前記バッファリングされたセルデータを用いて前記周辺セルの探索及び/又はレベル測定を実行するステップと、を含むものである。
周辺セルの測定に使用するギャップ数を大幅に削減することが可能となることから、従来、ギャップで消費していた無線リソースをデータ通信に有効利用することが可能となり、スループット性能の向上を図ることができる。また、ギャップ区間で起動する制御は、周辺セルデータのバッファリング処理のみとし、セルサーチ及びレベル測定の処理をギャップ区間の制御から分離することができ、ギャップ区間の制御を簡潔化することができる。
更に、周辺セルの探測制御シーケンスにおいて、セルサーチ及びレベル測定の処理毎にギャップを設けることなく、バッファリングした周辺セルデータを読み出すことにより、最適な時間にセルサーチ及びレベル測定の処理を起動することが可能となるため、ベースバンド部の測定性能の制約を緩和することができ、周辺セルの探測に要求される条件の変動に柔軟に対応することが可能となる。
また、ギャップ区間以外で実施する他のベースバンド処理(例えば、同周波セルサーチ・レベル測定処理等)の制御シーケンスも、ギャップ数の削減により、ギャップを避けて処理するよう起動制御する制約が緩和されるため、柔軟な制御シーケンスが可能となる。
また、1つのギャップで受信しバッファリングした同一の周辺セルデータを用いて、セルサーチ及びレベル測定を実施することが可能となるため、同時刻の受信データでのセルサーチ及びレベル測定の処理結果を得ることが可能となり、より正確な探測を実現することができる。
また、ギャップ数の削減により、待ち受け状態における無線部の受信停止の時間を延長することができ、移動局装置の消費電力を削減することができ、移動局装置のバッテリーの放電量を減少させ、待ち受け時間を増加させることができる。
開示の移動局装置における周辺セル探測の機能ブロック構成例を示す図である。
開示の周辺セル探測処理制御の全体の動作フロー例を示す図である。
開示の周辺セル探測処理制御におけるセルサーチ及びレベル測定の動作フロー例を示す図である。
通信中の移動局装置における開示の周辺セル探測の処理シーケンス例を示す図である。
移動局装置が待ち受け状態における開示の周辺セル探測の処理シーケンス例を示す図である。
開示の周辺セル探測処理の機能ブロックを備えた実施例を示す図である。
従来の移動局装置における周辺セル探測の機能ブロック構成例を示す図である。
従来の周辺セル探測処理制御の動作フロー例を示す図である。
通信中の移動局装置における周辺セル探測の処理シーケンス例を示す図である。
図1に開示の移動局装置における周辺セル探測の機能ブロック構成例を示す。また、図2に開示の周辺セル探測処理制御の全体の動作フロー例を示す。また、図3に開示の周辺セル探測処理制御におけるセルサーチ及びレベル測定の動作フロー例を示す。
図1に示すように。移動局装置における周辺セル探測の機能ブロック構成例は、図7に示した従来の機能ブロック構成例に、セルサーチ及びレベル測定に使用する周辺セルの送信データを格納するバッファリング制御部25を追加したものである。また、探測制御部30は、ギャップを使用して受信した周辺セルデータのバッファリング制御と、バッファリングデータを用いて行う周辺セル探測処理の制御とを行う。
図2の動作フロー例を参照して、開示の周辺セル探測処理制御の全体の動作フローについて説明する。探測制御部30がベースバンド部20内のギャップ制御部21にギャップ起動指示を発行し(2−1)、ギャップ制御部21が無線部10及び自セル通信処理部22に対して行うギャップ制御(2−2〜2−10)は、図8に示した従来の動作フロー(8−2〜8−10)と同様である。
即ち、ベースバンド部20内のギャップ制御部21は、探測制御部30からギャップ起動指示を受け取ると、ギャップ制御を開始し(2−2)、通信中のサービングセルとの通信を停止する準備を実施する(2−3)。ギャップ開始後(2−4)、自セル通信処理部22におけるサービングセル処理を中断状態にし(2−5)、サービングセルとの通信データの送受を停止する。
また、ギャップ開始後、ギャップ制御部21は、無線部10に対するギャップ開始の制御を開始し(2−6)、無線部10に対して通信中の同周波データの受信停止指示を発行し(2−7)、同周波データの受信停止状態を構築する(2−8)。更に、ギャップ制御部21は、周辺セルからの異周波データの受信開始指示を無線部10に発行し(2−9)、異周波データ受信状態を構築する(2−10)。
従来の動作フローと異なる点は、周辺セルデータの受信開始の制御を契機に、ギャップ制御部21が周辺セルデータのバッファリング制御の起動(2−11)を行う点である。バッファリング制御部25は、該バッファリング制御の起動を契機に、無線部10側から受信する周辺セルデータ(異周波IQデータ)の格納を開始し、周辺セルの探索(サーチ)及びレベル測定に要する量のデータを格納する(2−12)。
ギャップ制御部21は、周辺セルデータの格納を完了すると、探測制御部30にバッファリング完了通知を発行する(2−13)。ギャップの終了端に差し掛かると、ギャップ制御部21は、無線部に対してギャップ終了の制御を開始し(2−14)、無線部10に対して異周波データ受信停止指示を発行し(2−15)、異周波データの受信停止状態を構築する(2−16)。
更に、ギャップ制御部21は、無線部10に同周波データ受信開始指示を発行し(2−17)、ギャップ区間終了後の同周波データ受信状態を復帰させる(2−18)。これらの動作フロー(2−14〜2−18)は、従来の動作フロー(8−18〜8−22)と同様である。
また、ベースバンド部20のギャップ制御部21は、ギャップ終了の直前に、自セル通信処理部22に対してサービングセル処理の再開準備を実施させ(2−19)、ギャップの終了(2−20)の直後からサービングセルの受信処理を再開させる(2−21)。これらの動作フロー(2−19〜2−21)は、従来の動作フロー(8−23〜8−25)と同様である。
探測制御部30は、バッファリング制御部25で異周波データの格納が完了したかを監視し(2−22)、バッファリング制御部25からのバッファリング完了通知(2−13)を契機に、周辺セル(異周波セル)の探測開始コマンドを発行する(2−23)。
図3の動作フロー例を用いて、周辺セル(異周波セル)の探測の動作フロー例について説明する。探測制御部30は、バッファリング制御部25からのバッファリング完了通知(2−13)を契機に、周辺セル(異周波セル)の測定開始コマンドを発行し(2−23)、ベースバンド部20のセルサーチ部23又はレベル測定部24の異周波セル探測処理を起動する(3−1)。
探測制御部30により起動されたセルサーチ部23又はレベル測定部24は、バッファリング制御部25にバッファリングデータの読出し要求を通知する(3−2)。バッファリング制御部25は、周辺セルデータ(異周波データ)の読出しを開始し(3−3)、セルサーチ部23及びレベル測定部24は、読み出され再生された周辺セルデータ(異周波データ)を用いて、セルサーチ処理及びレベル測定処理を実施する(3−4)。
セルサーチ部23及びレベル測定部24は、それぞれセルサーチ処理及びレベル測定処理の処理が完了を待ち(3−5)、完了すると探測制御部30にセル探測処理の終了を通知する(3−6)。探測制御部30は、ベースバンド部20からのセル探測処理の終了通知を待ち(3−7)、セル探測処理の終了通知を契機に、セルサーチ及びレベル測定の処理結果を取得し(3−8)、1つのギャップで取得した周辺セルデータを用いた処理を終了する(3−9)。
同一の周辺セルデータ(異周波データ)を用いてセルサーチ又はレベル測定を繰り返し実施するが、その場合、既に周辺セルデータ(異周波データ)は、バッファリングデータとして格納済みであるため、該バッファリングデータを再び用いてセルサーチ又はレベル測定を繰返し起動すればよく、周辺セルデータ(異周波データ)のバッファリング制御を改めて起動しなくてよい。
図4に図9の従来例と同じ性能条件で周辺セル探測を実施した場合の処理シーケンス例を示す。図4の(a)はベースバンド部の通信データの処理例を示している。ベースバンド部は、図4(a)に示すように、例えば240msの時間区間内に配置された6msの1つのギャップ(GAP)区間以外で、サービングセル(自セル)からの通信中データを処理する。
図4の(b)は、無線部の受信処理例を示している。無線部は、図4の(b)に示すように、ギャップ(GAP)区間以外で、サービングセル(自セル)からの通信中のデータを受信し、240ms区間の1つのギャップ(GAP)区間で、周辺セル(異セル)からの異周波データを受信する。
図4の(c)は、ベースバンド部の異周波データの処理例を示している。ベースバンド部のバッファリング制御部は、1つのギャップ(GAP)で受信され、セルサーチ及びレベル測定に要する異周波データをバッファリングする。該バッファリングの完了後、セルサーチ部及びレベル測定部を処理の軽負荷時に起動し、バッファリングデータの読出しを開始し、セルサーチ(CS)及びレベル測定(LM1〜LM4)を実施する。
図4に示すセルサーチ(CS)の処理例では、同一のバッファリングデータを二度読み出して再生し、異なるセルサーチ処理を二回に分けて実施し、セルサーチの処理を完了する。その後、検出したセルについて、同一のバッファリングデータを読み出してレベル測定(LM1〜LM4)を実施する。
図4の(d)〜(f)は、ギャップ区間におけるベースバンド部処理及び無線部処理の詳細を示したものである。ギャップ区間では、図4の(e)に示すように、無線部に対してギャップ開始時に、通信中データの受信状態を一旦受信停止状態とし、更に、異周波データの受信状態を構築する。無線部では、異周波データの受信状態の構築により異周波データ受信状態となり、その後、ギャップ終了時に、異周波データの受信状態を受信停止状態とし、更に、通信中データの受信状態を復帰するよう受信状態が構築される。
また、ギャップ区間でベースバンド部は、図9の(f)に示すように、無線部が異周波データ受信状態のときに、無線部で受信した異周波データのバッファリングのみを実施する。この構成により、周辺セルのサーチ及びレベル測定のために配置されるギャップ数を大幅に削減することが可能となる。更に、ギャップ区間で行う処理は、周辺セルデータのバッファリング処理のみであるので、ギャップ区間における処理制御を簡略化することが可能となる。
上述の周辺セル探測は、移動局装置が待ち受け状態のときにも適用することも可能である。図5に移動局装置が待ち受け状態における周辺セル探測の処理シーケンス例を示す。図5において、(a)はベースバンド部の通信データの処理例を示している。ベースバンド部は、図5(a)に示すように、240msの時間区間内に配置された1つのギャップ(GAP)区間以外で、休止状態(スリープ状態)とすることができる。
図5の(b)は、無線部の受信処理例を示している。無線部は、図5の(b)に示すように、ギャップ(GAP)区間以外で受信停止状態とし、240ms区間の1つのギャップ(GAP)区間で、周辺セルの異周波データを受信する受信状態を構築する。図5の(c)は、ベースバンド部の異周波データの処理例を示している。
図5の(c)に示す待ち受け状態におけるベースバンド部の異周波データの処理は、図4の(c)に示した通信中における処理例と同様であり、ベースバンド部のバッファリング制御部により、1つのギャップ(GAP)区間に受信され、セルサーチ及びレベル測定に必要な異周波データをバッファリング(Bu)する。該バッファリングの完了後、セルサーチ部及びレベル測定部を処理の軽負荷時に起動し、バッファリングデータの読出しを開始し、セルサーチ(CS)及びレベル測定(LM1〜LM4)を実施する。
開示の周辺セル探測を移動局装置が待ち受け状態のときに適用することにより、1つのギャップで、周辺セル探測に必要な周辺セルデータをバッファリングした後は、そのバッファリングデータを読み出してセルサーチ及びレベル測定を実施する。従って、1つのギャップで周辺セルデータをバッファリングした後は、セルサーチ及びレベル測定の処理毎にギャップを設定して周辺セルデータの受信状態を構築する必要が無く、その間、無線部10を受信停止状態とすることが可能であり、移動局装置における消費電力を削減することが可能となる。
図6に、開示の周辺セル探測処理の機能ブロックを備えた実施例を示す。この実施例は、図1の構成例に、異周波データ用のバッファリング制御部25と同様に、同周波データのセル探測処理のために同周波データ用のバッファリング制御部26を追加したものである。更にこの2種類のバッファリング制御部25,26から読み出されるデータを選択する選択(SEL)部27を追加している。
また、探測制御部30には、同周波データのバッファリング起動処理を追加している。バファリング制御部(同周波データ)26は、同周波データのバッファリング完了通知を探測制御部30へ通知する機能を備える。ベースバンド部20には、セルサーチ部23及びレベル測定部24を各1セットのみ搭載する構成とすることができる。
この構成例で、異周波セルサーチ処理を起動する場合には、セルサーチ部23を起動する前に予め選択(SEL)部27の設定を、異周波データのバッファリング制御部25出力を選択するように指定する。また、選択(SEL)部27を、セルサーチ部23用とレベル測定部24用とに個別に備えることにより、異周波セルサーチを実行しながら、同周波レベル測定を同時に実行する制御も可能である。
この実施例では、異周波セルの探測処理制御に限らず、同周波データを用いた同周波セルサーチ・レベル測定に対しても、同様の処理制御を行うことが可能なり、周辺セルの探測処理制御により柔軟性を与えることができる。
10 無線部
20 ベースバンド部
21 ギャップ制御部
22 自セル通信処理部
23 セルサーチ部
24 レベル測定部
25 バッファリング制御部
30 探測制御部