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JP5505030B2 - 複合口金および複合繊維の製造方法 - Google Patents

複合口金および複合繊維の製造方法 Download PDF

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JP5505030B2 JP2010077062A JP2010077062A JP5505030B2 JP 5505030 B2 JP5505030 B2 JP 5505030B2 JP 2010077062 A JP2010077062 A JP 2010077062A JP 2010077062 A JP2010077062 A JP 2010077062A JP 5505030 B2 JP5505030 B2 JP 5505030B2
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Description

本発明は、2種類以上のポリマーによって構成される複合ポリマー流を吐出するための複合口金、およびこの複合口金を用いた複合紡糸機により溶融紡糸を行う複合繊維の製造方法に関するものである。
ポリエステルやポリアミドなどの熱可塑性ポリマーを用いた繊維は、力学特性や寸法安定性に優れるため、衣料用途だけではなく、インテリア、車両内装等の産業用途に幅広く利用されており、産業上の利用価値は益々高くなっている。近年、これら用途が多様化し、様々な機能性を付与した繊維が数多く開発されるようになった。
例えば、衣料用途では、ソフトな風合い等を付与する狙いで単糸細繊度化・多フィラメント化や、吸水・速乾性の向上や光沢感を変更する等の狙いで単糸異形断面化、また、鮮明性に優れた染色の実現等の新たな機能性付与の狙いでポリマーを改質する等の改良が行われている。また、産業用途では、同様に単糸細繊度化・多フィラメント化や単糸異形断面化の他、高強度化、高弾性化や、耐候性、難燃性等の新たな機能性付与を狙ったポリマーの改質等の改良が行われている。さらに、上記改良に加えて、2種類以上のポリマーを組み合わせることによって、単一成分のポリマーでは不十分な性能を補完したり、また、全く新しい機能を付与する複合繊維の開発も盛んに行われている。
この複合繊維を製造する手法には、芯鞘、サイドバイサイド、海島型と言った複合口金を利用した複合紡糸法と、ポリマー同士を溶融混練するポリマーアロイ法がある。複合紡糸法は、2種類以上のポリマーを複合繊維とする原理的な面では、ポリマーアロイ法と差は無いが、複合口金で複合ポリマー流を精密に制御し、特に、糸の走行方向において高精度な糸断面形態を形成できる点においては、ポリマーアロイ法よりも優位性が高いと考えられる。
複合紡糸法を用いた例として、芯鞘型は、芯成分を鞘成分が被覆することで、単独繊維では達成されない風合い、嵩高性などといった感性的効果、また、強度、弾性率、耐摩耗性などといった力学特性の付与が可能となる。また、易溶出成分で鞘成分、難溶出成分で芯成分を異形断面となるように構成し、鞘成分を除去することで精度の高い異形断面繊維を得ることができる。このように、通常、ポリエステルやポリアミドなどのポリマーを溶融紡糸によって得た場合、真円形の断面を持つことが多いが、異形断面とすることで真円形の繊維では得られない特殊な風合いを付与したり、織り編みの際のこなれを良くしたり、繊維を被覆する他の樹脂との接触面積を増加させ、剥離などの問題を抑制することができる。また、サイドバイサイド型では、単独繊維では不可能であった捲縮性を発現させ、ストレッチ性等を付与することが可能となる。また、海島型では、溶融紡糸した後に易溶出成分(海成分)を溶出することにより、難溶出成分(島成分)だけが残存し、例えば、糸径がナノオーダーの極細繊維を得ることができる。この極細繊維は、糸表面積が大きいことから、肌触りやドレープ性に優れており、不織布や織物の構成材料に幅広く使用されている。
そこで、これら複合紡糸法では、一般的に、2種類以上のポリマーを口金内で複合ポリマー流とし、同一の吐出孔から吐出する方法が採用されているが、当然のことながら、この複合口金技術が繊維形態を決定する上で極めて重要となっている。
上記の複合口金の一つとして、海島型の複合口金を大きく二つに区分けすると、パイプ方式口金と分配方式口金になる。パイプ方式口金の代表的な例として、図16に示すように、特許文献1の複合口金が開示されている。図16は特許文献1の複合口金の断面図である。図中、30はパイプ、31は海成分ポリマー導入流路、32は島成分ポリマー導入流路、33は上口金板、34は中口金板、35は下口金板、40は海成分ポリマー分配室、41はパイプ挿入孔、42は口金吐出孔をそれぞれ示す。以下、各図面において、説明済みの図に対応する部材が存在する場合は、同じ参照符号を用いて説明を省略することがある。
特許文献1は、一般的な海島型繊維を製造するパイプ方式口金として知られており、海成分ポリマー導入流路31、島成分ポリマー導入流路32、およびパイプ30を設けた上口金板33と、パイプ30の外径と同等、もしくは大きな口径のパイプ挿入孔41を設けた中口金板34と、口金吐出孔42を設けた下口金板35にて構成されている。そこで、易溶出成分の海成分ポリマーは、海成分ポリマー導入流路31から海成分ポリマー分配室40に導かれ、パイプ30の外周を充満するのに対して、難溶出成分の島成分ポリマーは、島成分ポリマー導入流路32からパイプ30に導かれ、パイプ30から吐出することで、両成分のポリマーが合流し、海島複合断面を形成した後、パイプ挿入孔41を経て、口金吐出孔42から複合ポリマー吐出し、海島複合繊維を製造することができると記載されている。
一方、分配方式口金の代表的な例として、図17に示すように、特許文献2の複合口金が開示されている。図17は特許文献2の複合口金の平面図である。図中、黒丸の1は島成分ポリマーを吐出する島成分吐出孔、白丸の4は海成分ポリマーを吐出する海成分吐出孔、5は最下層分配板、8は分配溝をそれぞれ示す。特許文献2は、分配板を複数枚重ね、その分配板の最下層に、分配溝8、島成分吐出孔1、海成分吐出孔4を設けた最下層分配板5を配設し、分配板により島成分ポリマーと海成分ポリマーを予め多数に分配した後、最下層分配板5の島成分吐出孔1と海成分吐出孔4より両成分のポリマーを各々吐出し、吐出直後に複合化させることで複雑な断面を形成できることが記載されている。
特開2009−91680号公報 国際公開1989−02938号パンフレット
しかしながら、従来の複合口金には以下に述べる問題点がある。
特許文献1(図16参照)のパイプ方式口金の大きな問題点は、1島を製作するのに、パイプ厚みが加算されることから1吐出孔当たりの面積が拡大する。また、口金の製作上、パイプ30を上口金板33に圧入し溶接固定していることから、溶接代が必要であり、さらに、パイプ30を挿入するための孔を設けることから、強度上の問題によりパイプ間同士の間隙を狭化できない。そのため、パイプ30を単位面積当たりに密に配置することができず(本明細書では孔充填密度と呼ぶ)、孔充填密度を大きくできず、糸径がナノオーダーの超極細繊維を製造することが困難である。また、孔充填密度を限界まで大きくした場合には、海成分ポリマーが、海成分ポリマー分配室40の中心側にまで充分に行き渡らず、島成分ポリマー同士の合流が発生する場合がある。また、所望の繊維形態を得るためには、複数の複合口金を試作して紡糸評価を幾つか繰り返す必要があるが、この複合口金の構造は非常に複雑であるため、口金の製作に期間や手間、費用が必要となり、この点においても設備費が過大となる問題がある。また、パイプ30の配置に自由度が低く、制御できる繊維断面形態には限界があり、複雑な断面が多層になったような繊維を製造することが困難である。
また、特許文献2(図17参照)の複合口金では、最下層分配板5に設けられた島成分吐出孔1と海成分吐出孔4の配置(千鳥配置)では、例えば、島成分吐出孔1より吐出直後に島成分ポリマー同士の合流が発生し、所望の繊維断面形態が得られない場合がある。特に、海成分ポリマーは溶融紡糸した後に溶出するため、生産性の観点からするとポリマー吐出量比は、溶出する海成分ポリマーを少なく、島成分ポリマーを多くすることが好ましいが、その場合には、島成分ポリマー同士の合流がより顕著となる。また、一度、島成分ポリマー同士の合流が発生すると、各成分ポリマーの吐出量、および吐出量比等の紡糸条件を変更しても、問題を解消できない場合があり、最悪の場合は、複合口金を変更しなければ、生産不可能となり、生産性が悪化する場合がある。また、吐出孔1,4の配置パターンとして千鳥配置を採用すると、吐出孔1,4にポリマーを供給する分配板の分配溝8の壁面間距離の関係から、孔充填密度を大きくすることができず、糸径がナノオーダーの超極細繊維を製造することが困難な場合がある。それに加えて、孔充填密度が大きくできない場合には、複合口金が大型化し、繊維分野の多錘型の紡糸設備では生産性、操業性が好ましくない問題が生じる場合がある。
以上の様に、島成分吐出孔の孔充填密度を高めつつ、島成分ポリマーの合流を防止することは、海島型の複合繊維を製造する上で、極めて重要な要素であるが、上記した様に、種々の問題が残されており、海島型の複合繊維製造の妨げとなってきた。従って、この問題を解決することは、工業上、重要な意味を有するのである。
よって、本発明の目的は、海島型複合繊維を製造するための分配板方式口金において、複合口金が安価に製作できると共に、島成分ポリマーの吐出孔の孔充填密度を拡大しつつ、島成分ポリマー同士の合流を防止し、多様な繊維断面形態を高精度に形成し、この断面形態の寸法安定性を高く維持できる複合口金、および複合口金を用いた複合紡糸機により溶融紡糸を行う複合繊維の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の複合口金は次のような構成を有する。すなわち、 島成分ポリマーと海成分ポリマーによって構成される複合ポリマー流を吐出するための複合口金であって、
各ポリマー成分を分配するための分配孔および/又は分配溝が形成された1枚以上の分配板と、
前記分配板のポリマーの紡出経路方向の下流側に位置し、複数の島成分吐出部と複数の海成分吐出部とが形成された最下層分配板と、で構成され、
前記各島成分吐出部は、島成分ポリマーを吐出するための1つ以上の島成分吐出孔で構成されており、
前記各海成分吐出部は、海成分ポリマーを吐出するための1つ以上の海成分吐出孔で構成されており、
最も短い中心間距離で隣接する2つの前記島成分吐出部と、該2つの島成分吐出部の2本の共通外接線とで囲まれる領域内に、前記海成分吐出部の少なくとも一部が存在することを特徴とする。
また、本発明は、本発明の複合口金を使用した複合紡糸機により溶融紡糸を行う複合繊維の方法である。
本発明において、「ポリマーの紡出経路方向」とは、各ポリマー成分が計量板から吐出板の口金吐出孔まで流れる主方向をいう。
本発明において、「ポリマーの紡出経路方向に垂直な方向」とは、各ポリマー成分が計量板から吐出板の口金吐出孔まで流れる主方向に垂直な方向をいう。
本発明において、「孔充填密度」とは、島成分ポリマーを吐出する島成分吐出孔数を吐出導入孔径で除することによって求めた値をいう。この孔充填密度が大きい程、島成分ポリマー成分が多数にて構成される複合繊維である。
本発明の複合口金によれば、島成分ポリマーの吐出孔の孔充填密度を拡大しつつ、島成分ポリマー同士の合流を長期にわたって防止できる。また、多様な繊維断面形態を高精度に形成することができる。
本発明の実施形態に用いられる最下層分配板の部分拡大平面図である。 本発明の実施形態に用いられる複合口金の概略断面図である。 図1のX−X矢視図である。 本発明の実施形態に用いられる複合口金と、紡糸パック、冷却装置周辺の概略断面図である。 本発明の別の実施形態に用いられる最下層分配板の部分拡大平面図である。 本発明の別の実施形態に用いられる最下層分配板の部分拡大平面図である。 本発明の別の実施形態に用いられる最下層分配板の部分拡大平面図である。 本発明の実施形態に用いられる複合口金により製造された代表的な複合繊維の断面形態を示した断面図である。 本発明の実施形態に用いられる分配板、最下層分配板の概略部分断面図である。 本発明の実施形態に用いられる分配板、最下層分配板の概略部分断面図である。 本発明の別の実施形態に用いられる最下層分配板の平面図であり、図3と同じ方向から見た矢視図である。 本発明の別の実施形態に用いられる最下層分配板の部分拡大平面図である。 本発明の実施形態に用いられる最下層分配板、分配板の概略部分断面図である。 本発明の実施形態に用いられる最下層分配板、分配板の概略部分断面図である。 本発明の実施形態に用いられる最下層分配板、分配板の概略部分断面図である。 従来例の複合口金の概略断面図である。 従来例の複合口金の最下層分配板の部分拡大平面図である。 本発明とは異なる最下層分配板の部分拡大平面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の複合口金の実施形態について詳細に説明する。図2は本発明の実施形態に用いられる複合口金の概略断面図であり、図3は図2のX−X矢視図であり、図1は図3の部分拡大平面図であり、図9、図10、図13、図14、図15は本発明の実施形態に用いられる分配板、最下層分配板の概略部分断面図であり、図11は本発明の別の実施形態に用いられる複合口金の平面図であり、図5、図6、図7、図12は本発明の別の実施形態に用いられる複合口金の部分拡大平面図であり、図4は本発明の実施形態に用いられる複合口金と、紡糸パック、冷却装置周辺の概略断面図である。なお、これらは、本発明の要点を正確に伝えるための概念図であり、図を簡略化しており、本発明の複合口金は特に制限されるものでなく、孔および溝の数ならびにその寸法比などは実施の形態に合わせて変更可能なものとする。
本発明の実施形態に用いられる複合口金18は、図4に示すように、紡糸パック15に装備され、スピンブロック16の中に固定され、複合口金18の直下に冷却装置17が構成される。そこで、複合口金18に導かれた2成分以上のポリマーは、各々、計量板9、分配板6、最下層分配板5を通過して、吐出板10の口金吐出孔42から吐出された後、冷却装置17により吹き出される気流により冷却され、油剤を付与された後に、マルチフィラメン糸として巻き取られる。なお、図4では、環状内向きに気流を吹き出す環状の冷却装置17を採用しているが、一方向から気流を吹き出す冷却装置を用いてもよい。また、計量板9の上流側に装備する部材に関しては、既存の紡糸パック15にて使用された流路等を用いればよく、特別に専有化する必要が無い。
本発明の実施形態に用いられる複合口金18は、図2に示すように、計量板9と、少なくとも1枚以上の分配板6、最下層分配板5、吐出板10を順に積層して構成され、特に、分配板6と最下層分配板5は薄板にて構成されるのが好ましい。その場合、計量板9と分配板6、および最下層分配板5と吐出板10は、位置決めピンにより、紡糸パック18の中心位置(芯)が合うように位置決めを行い、積層した後に、ネジ、ボルト等で固定してもよく、熱圧着により金属接合(拡散接合)させてもよい。特に、分配板6同士や、分配板6と最下層分配板5は、薄板を使用するため、熱圧着により金属接合(拡散接合)させるのが好ましい。
そこで、計量板9より供給された各成分のポリマーは、少なくとも1枚以上積層された分配板6の分配溝8、および分配孔7を通過した後、最下層分配板5の島成分ポリマーを吐出するための島成分吐出孔1、および海成分ポリマーを吐出するための海成分吐出孔4より吐出することで、各成分のポリマーが合流し、複合ポリマー流が形成される。その後、複合ポリマー流は、吐出板10の吐出導入孔11、縮小孔12を通過して、口金吐出孔42より吐出される。
まず、本発明の最も重要なポイントである、複合口金18の孔充填密度を大きくしつつ、島成分のポリマー同士の合流を防止できる原理について説明する。ここで、孔充填密度を大きくするためには、島成分吐出孔1の間隔を極力近接しなければならないが、その場合、隣り合う島成分吐出孔間において、島成分ポリマー同士の合流が発生する。この島成分ポリマー同士の合流を防止するために、例えば図18に示すように、島成分吐出孔1の周りを、海成分ポリマーを吐出する海成分吐出孔4にて囲い込む配置を行うと、隣り合う島成分ポリマー同士の合流を抑制することは比較的容易に想像できるが、島成分吐出孔間距離が大きくなり過ぎて、孔充填密度を大きくすることができない。つまりは、孔充填密度と島成分ポリマーの合流防止にはトレードオフの関係が発生する。
従って、孔充填密度を大きくしつつ、島成分ポリマー同士の合流を防止することが複合繊維を製造する上で極めて重要な技術となる。そこで、本発明者らは、従来の技術では、何の配慮もされていなかった、上記問題に関して、鋭意検討を重ねた結果、本発明の新たな技術を見出すに至った。
即ち、本発明の実施形態の最下層分配板5は、最も短い中心点間距離で隣接する2つの島成分吐出孔と、この2つの島成分吐出孔の2本の共通外接線とで囲まれる領域内に、海成分吐出孔の少なくとも一部が存在するように各吐出孔が配置されている。具体的には図1に示すように、ある島成分吐出孔1を基準とし、その基準の島成分吐出孔1に最も短い中心間距離で隣接する島成分吐出孔1を島成分吐出孔2aとしたとき、基準の島成分吐出孔1と、島成分吐出孔2aと、この2つの島成分吐出孔1,2aの2本の共通外接線3とに囲まれた領域内に、海成分吐出孔4の少なくとも一部が存在するように各吐出孔が配置されている。このような構成とすることで、最もポリマー同士の合流が発生し易い、基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2aとの間におけるポリマー同士の合流を防止することができる。
上記の本発明の原理をポリマーの流れ形態に沿って説明すると、島成分ポリマー、海成分ポリマーの両ポリマーは、最下層分配板5の下流側の吐出導入孔11に向けて一斉に吐出され、各ポリマーがポリマーの紡出経路方向に垂直な方向に拡幅しつつ、ポリマーの紡出経路方向に沿って流れ、両ポリマーが合流し、複合ポリマー流を形成する。その際、基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2aから吐出された島成分ポリマーが合流するのを防止するためには、島成分ポリマーを物理的に分断する海成分ポリマーを介在させることが有効である。つまり、基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2aを繋ぐ流路空間(この場合、基準の島成分吐出孔1と、島成分吐出孔2aと、この2つの島成分吐出孔1,2aの2本の共通外接線3とに囲まれた領域)に、海成分ポリマーを供給する海成分吐出孔2の少なくとも一部が存在するようにすることで、島成分ポリマー同士の合流を防止することができる。
本発明における最下層分配板5は、島成分吐出孔1が1種類又は2種類の周期で形成されていることが多い。例えば、図1の最下層分配板5では、島成分吐出孔1が2種類の周期で形成されている。1つは、基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2aとの中心点間距離であり、これが短い方の周期である。この短い方の周期が、前述の「最も短い中心点間距離」である。もう1つは、基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2bとの中心点間距離であり、これが長い方の周期である。島成分吐出孔1が1種類の周期で形成されている場合、基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2aとの中心点間距離と、基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2bとの中心点間距離とが同じである。なお、図1では、2種類の周期の繰り返し方向は直交しているが、直交していなくともよい。
島成分吐出孔1が2種類の周期で形成されている場合、(i)短い方の周期で隣接する基準の島成分吐出孔1、島成分吐出孔2aと、この2つの島成分吐出孔1、2aとの2本の共通外接線3とで囲まれる領域内に、海成分吐出孔4の少なくとも一部が存在し、かつ、(ii)長い方の周期で隣接する基準の島成分吐出孔1、島成分吐出孔2bと、この2つの島成分吐出孔1,2bの2本の共通外接線3とで囲まれる領域内に、海成分吐出孔4の少なくとも一部が存在するように配置することが好ましい。最も短い中心点間距離、つまり短い方の周期で隣接する2つの島成分吐出孔1,2aより吐出する島成分ポリマー同士が合流し易いように、その次に短い中心点間距離、つまり長い方の周期で隣接する2つの島成分吐出孔1,2bより吐出する島成分ポリマー同士も合流し易い。そこで、基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2bを繋ぐ流路空間にも、海成分ポリマーを供給する海成分吐出孔4の少なくとも一部が存在するように配置することで、島成分ポリマー同士の合流を防止することができる。
また、本発明における最下層分配板5は、隣接する2つの島成分吐出孔と、この2つの島成分吐出孔の2本の共通外接線とで囲まれる領域内に、少なくとも2つの海成分吐出孔のそれぞれ少なくとも一部が存在し、隣接する2つの島成分吐出孔の中心を結ぶ線分を挟んで、2つの海成分吐出孔が配置されていることが好ましい。具体的には図1に示すように、隣接する2つの島成分吐出孔1(基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2a、又は基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2b)を繋ぐ流路空間に、少なくとも2つの海成分吐出孔4のそれぞれ少なくとも一部を存在させ、さらに隣接する2つの島成分吐出孔1(基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2a、および基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2b)の中心を結ぶ線分Aを挟んで、この2つの海成分吐出孔4を配置する。こうすることにより、隣接する島成分吐出孔1を加工限界レベルにまで近接させた状態において、2つの海成分吐出孔4を最も近接した位置に配置できるため、孔充填密度を極限にまで大きくしつつ、島成分ポリマーの合流を防止することができる。また、2つの海成分吐出孔4の配置は特に限定するものではないが、線分Aを線対称軸とするように配置されているのが好ましい。島成分吐出孔1から吐出され拡幅していく島成分ポリマーは、2つの海成分吐出孔4から吐出された海成分ポリマーにより拡幅が拒まれて一定の形状となるのであるが、2つの海成分吐出孔4が線分Aを線対称軸とするように配置されていると、拡幅後の島成分ポリマーの形状が線分Aを線対称軸とするきれいな対象形となるので好ましい。
さらに、隣接する2つの島成分吐出孔1の最小間隙DAと、2つの海成分吐出孔4の最小間隙DBを、DB/DA≦0.7とすることで、島成分ポリマー、海成分ポリマーの溶融粘度等の物性や、各ポリマーの吐出量、吐出量比等の紡糸条件の如何に関わらず、複合繊維を工業上、製造できる紡糸条件の範囲において、島成分ポリマー同士の合流を安定的に防止できる。DB/DA>0.7であると、島成分ポリマー同士の合流が発生する場合がある。なお、DB/DAの下限は特に規定するものではなく、小さければ小さいほど、島成分ポリマー同士の合流は防止できるが、最小間隙DAが大きくなり、孔充填密度が小さくなるので、実用的な範囲で下限は設定すればよい。
次に、図5、図6、図7、図12に示す本発明の別の実施形態について説明する。
図5に示す本発明の別の実施形態は、隣接する2つの島成分吐出孔1(基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2a、および基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2b)で繋がれる流路空間を完全に塞ぐように海成分吐出孔4が配設されている。この実施形態では、海成分ポリマーが、島成分ポリマー同士の合流が予想される経路空間において存在するため、より島成分ポリマー同士の合流を防止できる。ただし、この実施形態では、隣接する島成分吐出孔1の距離を、海成分吐出孔4の大きさ以下には小さくすることはできない。
また、図6に示す本発明の別の実施形態は、海成分吐出孔4の断面形状が、丸形状とは異なる形状となっている。この場合、丸形状では孔径を小さくしなければ配置できなかった場所においても、海成分吐出孔4を配置できるため、局所的に海成分ポリマーを吐出でき、より島成分ポリマー同士の合流を防止できると共に、隣接する島成分吐出孔1を極限にまで近接させることができ、孔充填密度を大きくすることができる。海成分吐出孔4がこのような丸形状以外の断面形状の場合は、海成分吐出孔4の上流側に丸断面形状の分配孔7を連通して配置することで、直上の分配孔7にて海成分ポリマーの計量性を確保した後、海成分吐出孔4にて海成分ポリマーを吐出するのが好ましい。また、海成分吐出孔4の断面形状を制御することで、島成分吐出孔1から吐出されて拡幅する島成分ポリマーを任意の断面形状に制御することもできる。
また、図7に示す本発明の別の実施形態は、海成分吐出孔4が島成分吐出孔1を取り囲む円周状のスリットになっている。この場合、海成分ポリマーが、島成分ポリマー同士の合流が予想される全経路空間において存在するため、より島成分ポリマー同士の合流を防止できる。海成分吐出孔4がこのような断面形状の場合も、海成分吐出孔4の上流側に丸断面形状の分配孔7を連通して配置することで、直上の分配孔7にて海成分ポリマーの計量性を確保した後、海成分吐出孔4にて海成分ポリマーを吐出するのが好ましい。
本発明における最下層分配板5は、その全面に島成分吐出孔1と海成分吐出孔4が配置されていてもよく、あるいは図3に示すように、部分的に島成分吐出孔1と海成分吐出孔4とが密集して配置さていてもよい(図3の仮想円19で囲まれた部分)。図3のような形態の場合、個々の仮想円19内の島成分吐出孔1と海成分吐出孔4が、これまで説明してきたように配置されていれば、仮想円19内の島成分吐出孔1と海成分吐出孔4の配置は全ての仮想円19で同じであってもいいし、個々の仮想円19によって異なっていてもよい。さらに、図11に示すように、1つの仮想円19の中で、部分的に島成分吐出孔1と海成分吐出孔4の配置が異なっていてもよい(図11の仮想円19内の右半分部分と左半分部分)。この場合も、個々の部分内の島成分吐出孔1と海成分吐出孔4が、これまで説明してきたように配置されていればよい。
また、本発明における最下層分配板5は、図12に示すように、意図的に島成分ポリマー同士を合流させるために、これら合流する島成分ポリマーを吐出する複数の島成分吐出孔1を集めて孔群(集合体)を形成してもよい。また、意図的に海成分ポリマー同士を合流させるために、これら合流する海成分ポリマーを吐出する複数の海成分吐出孔4を集めて孔群(集合体)を形成してもよい。この場合には、1つの孔群を構成する島成分吐出孔1のうち、一番外側に並ぶ島成分吐出孔1を順次接するように結んでいった線で囲まれた領域を島成分吐出部とする。また、1つの孔群を構成する海成分吐出孔4のうち、一番外側に並ぶ海成分吐出孔4を順次接するように結んでいった線で囲まれた領域を海成分吐出部とする。なお、島成分吐出部内には島成分吐出孔1のみが存在し、海成分吐出部内には海成分吐出孔4のみが存在する。そして、島成分吐出孔1の孔群を島成分吐出孔部21、島成分吐出孔2aの孔群を島成分吐出孔部22a、島成分吐出孔2bの孔群を島成分吐出孔部22b、海成分吐出孔4の孔群を海成分吐出孔部24とし、これまでの説明での島成分吐出孔1、島成分吐出孔2a、島成分吐出孔2bおよび海成分吐出孔4を、それぞれ島成分吐出部21、島成分吐出部22a、島成分吐出部22bおよび海成分吐出部24と読み替えればよい。逆に言うと、図1,5,6及び7に示す実施形態の最下層分配板5は、島成分吐出部が1つの島成分吐出孔で構成され、海成分吐出部内が1つの海成分吐出孔で構成されている最下層分配板である。図12の実施形態においては、島成分吐出部21(22a,22b)内の島成分吐出孔1(2a,2b)から吐出される島成分ポリマーや、海成分吐出部24内の海成分吐出孔4から吐出される海成分ポリマーは、それぞれ吐出直後に合流するが、もともと合流させることを意図して吐出されているので、合流したとしても問題はない。
このように、本発明の複合口金18は、最下層分配板5と、その直上の分配板6の分配溝8を用いて、海成分ポリマーを繊維断面方向に容易に分配できるため、隣接する2つの島成分吐出部21又は島成分吐出孔1の間の極めて狭い領域に、容易に海成分吐出部24又は海成分吐出孔4を配置することができる。その結果、隣接する2つの島成分吐出部21又は島成分吐出孔1を近接させることにより、孔充填密度を大きくすることができる。また、最下層分配板5の直下に、さらに分配板6を追加して重ねることで、島成分吐出孔1の配置パターンを容易に変更できるため、設計変更に伴う、時間、費用等が少なくなる利点も有する。
次に、図1、図5、図6、図7、図12に示した本発明の実施形態の複合口金18に共通した各部材、各部材の形状について詳細に説明する。
本発明における複合口金18は、円形状に限定されず、四角形であってもよく、多角形であってもよい。また、複合口金18における口金吐出孔42の配列は、マルチフィラメント糸の本数、糸条数、冷却装置17に応じて、適宜決定すればよい。冷却装置17として、環状の冷却装置では、口金吐出孔42を一列、もしくは複数列に渡り環状に配列するのがよく、また、一方向の冷却装置では、口金吐出孔42を千鳥に配列するのがよい。口金吐出孔42のポリマーの紡出経路方向に垂直な方向の断面は丸形状に限定されず、丸形以外の断面状や中空断面状であってもよい。但し、丸形以外の断面形状とする場合は、ポリマーの計量性を確保するために、口金吐出孔42の長さを大きくするのが好ましい。
また、本発明における島成分吐出孔1は、ポリマーの紡出経路方向に垂直な方向の断面は丸形状に限定されず、丸形以外の断面状や中空断面状であってもよい。島成分吐出孔1が丸形以外の断面状の場合には、その直上に連通して丸断面状の分配孔7を配置することで、直上の丸断面の分配孔7にてポリマーの計量性を確保した後、丸形以外の断面形状の島成分吐出孔1にてポリマーを吐出するのが好ましい。
また、本発明における吐出導入孔11は、ポリマーの紡出経路方向において、最下層分配板5の下面より一定の助走区間を設けることで、島成分ポリマーと海成分ポリマーが合流した直後の流速差を緩和させ、複合ポリマー流を安定化させることができる。また、吐出導入孔11の孔径は、最下層分配板5に配設された島成分吐出孔1と海成分吐出孔4の各吐出孔群の仮想円19の外径よりも大きく、かつ、仮想円19の断面積と、吐出導入孔11の断面積比が極力小さくなるように構成されるのが好ましい。それにより、最下層分配板5より吐出された各ポリマーの拡幅が抑えられ、複合ポリマー流を安定化させることができる。
また、本発明における縮小孔12は、吐出導入孔11から口金吐出孔42に至る流路の縮小角度αを50〜90°の範囲に設定することで、複合ポリマー流のドローレゾナンス等の不安定現象を抑え、安定的に複合ポリマー流を供給することができる。ここで、縮小角度αが50°より小さい場合、複合ポリマー流の不安定現象を抑えることはできるが、複合口金18自体が大型化し、また、縮小角度αが90°より大きい場合、複合ポリマー流の不安定現象がより顕著化する場合がある。
また、本発明における島成分吐出孔1、海成分吐出孔4および分配孔7は、ポリマー紡出経路方向に孔断面積が一定であるのが好適であるが、断面積が漸減、または漸増、もしくは漸減と漸増していてもよい。これは、本発明における分配板6、最下層分配板5では、主にエッチング処理を用いて孔加工していることから、微小な孔を加工する際に、孔断面積が一定とならない場合があるためであり、その場合には、加工条件等を適宜適正化すれば良い。
また、本発明における最下層分配板5は、1枚であってもよいが、複数枚が積層されていてもよい。この場合、1枚の最下層分配板5では、島成分吐出孔1、海成分吐出孔4のポリマー計量性が得られず、繊維形態が経時的に変化した場合には、複数枚を積層することで、ポリマーの計量性を確保することができる。
本発明における分配板6での1つの成分のポリマーの分配方法は、図9に示すように、一つの分配孔7に対して一つの分配溝8を構成するトーナメント方式の流路あってもよく、図10に示すように、複数の分配孔7に対して一つ分配溝8、または複数の分配孔7に対して複数の分配溝8を構成するスリット方式であってもよく、また、トーナメント方式とスリット方式を組み合わせた複合方式であってもよい。ここで、他の成分のポリマーも上記と同様の分配方法を採用しているが、説明簡略化のため、1成分のポリマーでのみ説明する。
トーナメント方式は、分配溝8の端部に分配孔7を配設することで、ポリマーの異常滞留を無くし、ポリマーの分配性が高く、精密に制御できる利点を有する。しかし、例えば、一つの分配溝8または分配孔7が生産中にポリマー詰まり等で閉塞した場合には、下流側にポリマーが分配されず、その結果、所望の複合断面繊維が得られない場合がある。
また、スリット方式は、一つの分配溝8に対して複数の分配孔7が構成されることから、上記の孔や溝の閉塞等の問題に対して対応性が高く、また、一つの分配板6でポリマーの紡出経路方向に垂直な方向にポリマーを多く分配できることから、分配板6の枚数を少なくできるため、複合口金18の製造コストを抑える利点を有する。しかし、その反面、ポリマーの異常滞留が発生し易く、ポリマー分配の精密な制御に関してはトーナメント方式に劣る場合がある。そこで、上流側(計量板9側)にスリット方式、下流側(最下層分配板5側)にトーナメント方式を構成する複合方式とすることで、上流側では孔や溝に閉塞によるポリマー分配不良が無く、ポリマーの紡出経路方向に垂直な方向に分配され、下流側ではポリマーの計量性を高めて、均一にポリマーを分配することが好ましい。
また、スリット方式において、ポリマーの計量性を高める方法としては、1成分のポリマーが、分配孔7(流入側)−分配溝8−分配孔7(流出側)を通過する場合、流入側の分配孔7に対して、流出側の分配孔7の孔径を、流入側の分配孔7に近い方の孔径を小さく、遠い方の孔径を大きくする。つまりは、流入側の分配孔7に近い方の分配孔7(流出側)と、遠い方の分配孔7(流出側)において、流路圧損が同等になるように、孔径を調整するのが好ましい。また、流路圧損の調整は、流路溝8の溝幅にて調整してもよい。また、上記のように、全ての分配板6にて、流路圧損を等しくするために、分配孔7、分配溝8の寸法を調整してもよいが、最下層分配板5に接する分配板6の分配孔7のみを、その上流側の全ての流路圧損が等しくなるように孔径を調整してもよい。
また、トーナメント方式において、孔や溝の閉塞を抑制する方法としては、分配孔7の孔径、分配溝8の溝幅、溝深さを大きくするのがよく、特に、ポリマーの紡出経路方向の上流側(計量板9側)に従い、分配溝8を構成する分配板6の厚みを大きくし、分配溝8の溝深さを大きくするのがよく、また、ポリマーの紡出経路方向の上流側(計量板9側)に従い、分配溝8の溝幅を大きくするのがよく、また、分配孔7の孔径を大きくするのがよい。これにより、通常、ポリマーの紡出経路方向の上流側(計量板9側)の分配板6での分配溝8、分配孔7を通過するポリマーの流量が多くなるに従い、流路空間を大きく確保できることから、流路圧損の増大を抑制することができる。また、流路圧損が大きくなり易い上流側の分配板6の厚みを大きくすることで、分配板6の撓みを抑制することができる。また、分配板6でのポリマーの分配方法に関しては、所望の繊維断面形態に応じて、分配板6の分配溝8、および分配孔7を適宜配置すればよく、上記方法に特に限定するものではない。
また、本発明の1枚の分配板6には、分配孔7のみが配設されていてもよく、分配溝8のみが配設されていてもよく、あるいは、分配板6の上流側に分配孔7が配設され、それに連通して分配溝8(下流側)が配設されていてもよく、また、分配板6の上流側に分配溝8が配設され、それに連通して分配孔7(下流側)が配設されていてもよい。
ここで、最下層分配板5の島成分吐出孔1の孔充填密度を大きくした、つまりは島成分吐出孔1の配列間隔を小さくした場合において、隣接する島成分吐出孔1の間に海成分吐出孔4を設けるために、本発明の分配板6、および最下層分配板5は、薄板の積層構造となっている。分配板6に配設された分配孔7は、主にポリマー紡出経路方向にポリマーを分配し、分配溝8は、主にポリマー紡出経路方向に垂直な方向にポリマーを分配する。分配孔7が配設された分配板6と、分配溝8が配設された分配板6を交互に積層させることで、繊維断面方向にポリマーを自由、かつ容易に分配することができる。これを利用して、隣接する島成分吐出孔1の間の極めて狭い領域内に海成分吐出孔4を配置できる。
特に、図13に示すように、最下層分配板5の直上の分配板6には、分配孔7と分配溝8が配設されていてもよい。この場合、分配孔7には島成分吐出孔1を連通させ、分配溝8には海成分吐出孔4を連通させる。こうすることで、分配板6において、分配孔7により近接した位置に分配溝8を配置させて、それに連通する海成分吐出孔4を島成分吐出孔1により近接させて配置させることができ、孔充填密度を大きくしつつ、ポリマー同士の合流を防止することができる。また、最下層分配板5の直上の分配板6は、図14に示すように、分配溝8のポリマー紡出経路方向の下流側に分配孔7が連通していても、また、図15に示すように、分配孔7のポリマー紡出経路方向の下流側に分配溝8が連通しても、上記と同様の効果を得ることができる。
次に、図1、図5、図6、図7に示した本発明の実施形態の複合口金18に共通した複合繊維の製造方法について詳細に説明する。
本発明の複合繊維の製造方法は、公知の複合紡糸機で、本発明の複合口金18を使用すればよい。例えば、溶融紡糸の場合には、紡糸温度は、2種類以上のポリマーのうち、主に高融点や高粘度ポリマーが流動性を示す温度とする。この流動性を示す温度としては、分子量によっても異なるが、そのポリマーの融点が目安となり、融点+60℃以下で設定すればよい。これ以下であれば、紡糸ヘッドあるいは紡糸パック内でポリマーが熱分解等することなく、分子量低下が抑制されるため、好ましい。紡糸速度はポリマーの物性や複合繊維の目的によって異なるが、500〜6000m/分程度とすることができる。特に、産業資材用途で高い力学的特性が必要な場合には、高分子量ポリマーを用い、500〜2000m/分とし、その後高倍率延伸することが好ましい。延伸に際しては、ポリマーのガラス転移温度など、軟化できる温度を目安として、予熱温度を適切に設定することが好ましい。予熱温度の上限としては、予熱過程で繊維の自発伸長により糸道乱れが発生しない温度とすることが好ましい。例えば、ガラス転移温度が70℃付近に存在するPETの場合には、通常この予熱温度は80〜95℃程度で設定される。
また、本発明の島成分吐出孔1、海成分吐出孔4から吐出される各成分のポリマーの吐出速度比は、吐出量、孔径および孔数によって、制御することが好ましい。(吐出速度とは、吐出流量を、島成分吐出孔1または海成分吐出孔4の断面積で除した値を言う。)この吐出速度の範囲としては、単孔当たりの島成分ポリマーの吐出速度Va、海成分ポリマーの吐出速度をVbとした場合、その比(Va/VbあるいはVb/Va)が0.05〜20であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜10の範囲であり、この範囲であれば、最下層分配板5から吐出されたポリマーは層流として、吐出導入孔11を経て、縮小孔12に導かれるため、断面形態が著しく安定し、精度よく形態を維持することができる。
また、本発明に使用されるポリマーの溶融粘度比は、2.0未満とすることで、安定的に複合ポリマー流を形成することができる。溶融粘度比が2.0以上の場合は、島成分ポリマーと海成分ポリマーが合流する際に不安定化し、得られた繊維断面の走行方向において糸の太さ斑が発生する場合がある。
次に、本発明の分配板6および最下層分配板5の作製方法としては、通常電気・電子部品の加工に用いられる、薄板にパターンを転写し、化学的に処理することで微細加工を施すエッチング加工が好適である。この加工方法では、被加工物の歪への配慮が必要ないため、上記した他の加工方法と比較して、被加工物の厚みの下限に制約がなく、極めて薄い金属板に本発明で言う合流溝8や分配孔7、島成分吐出孔1を穿設することができる。また、エッチング加工で作製した分配板6、および最下層分配板5は1枚当たりの厚みを薄くすることが可能になるため、複数枚積層させても、複合口金18の総厚みに与える影響はほとんど無く、所望の断面形態の複合繊維に合わせて、他のパック部材を新設する必要がない。言い換えれば、分配板6と最下層分配板5のみを交換すれば、断面形態を変更することも可能になるため、繊維製品の高性能多品種化が進む昨今では、好ましい特徴と言える。また、他の作製方法としては、従来の口金作製で用いられるドリル加工や金属精密加工である旋盤、マニシング、プレス、レーザー加工等を用いることで可能である。但し、これらの加工は被加工物の歪抑制という観点から、加工板の厚みの下限に制約があるため、複数の分配板を積層させる本発明の複合口金に適用するには分配板6の厚みを考慮する必要がある。
次に、本発明の複合口金によって得られる繊維とは、2種類以上のポリマーが組み合わされた繊維のことを意味し、繊維横断面において2種類以上のポリマーが海島状等の形態をとって存在している繊維のことを言う。ここで、本発明で言う2種類以上のポリマーとは、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン等々の分子構造が異なるポリマーを2種類以上使用するということが含まれるのは言うまでもないが、製糸安定性等を損なわない範囲で、二酸化チタン等の艶消し剤、酸化ケイ素、カオリン、着色防止剤、安定剤、抗酸化剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、着色顔料、表面改質剤等の各種機能性粒子や有機化合物等の添加剤や粒子の添加量が異なること、また、分子量が異なること、あるいは、共重合がなされている等などが含まれる。
また、本発明の複合口金18によって得られる繊維の単糸断面は、丸形状はもとより、三角、扁平等の丸形以外の形状や中空であってもよい。また、本発明は、極めて汎用性の高い発明であり、複合繊維の単糸繊度により特に限られるものではなく、複合繊維の単糸数により特に限られるものではなく、さらに、複合繊維の糸条数により特に限られるものでも無く、1糸条であってもよく、2糸条以上の多糸条であってもよい。
本発明の複合口金によって得られる海島複合繊維とは、図8(a)に示すように、異なる2種類以上のポリマーが繊維軸方向に垂直な断面において、海島構造(ここで言う海島構造とは、島成分ポリマー13で構成されている島部分が、海成分ポリマー20で構成されている海部分により複数に区別されている構造)が形成されている繊維を言う。その場合、島部分の断面形状に制約はなく、1つの島成分吐出孔1によって島部分の断面形状が構成されていてもよく、複数個の島成分吐出孔1が集まった島成分吐出部21によって断面形状が構成されていてもよい。複数個の島成分吐出孔1を任意の形状に集めて島成分吐出部21とすることで、島部分を任意の形状とすることができる。例えば、図8(b)に示すように、複数個の島成分吐出孔1を星形に配列して島成分吐出部21とすることで、島部分の形状を星形にすることができる。また、易溶出成分である海成分ポリマー20を溶出することにより、いわゆる極細繊維だけでなく、分割繊維等も得ることができる。また、島成分ポリマー13および海成分ポリマー20を制御することで、繊維軸方向に垂直な断面において、島部分を点で配置することができるため、従来技術で記載したパイプ方式口金とは異なり、島数を大幅に拡大、つまりは孔充填密度を拡大することができる。この島数に関しては、理論的には2島からスペースの許す範囲で無限に作製することは可能であるが、実質的に実施可能な範囲として2〜10000島が好ましい範囲である。本発明の複合口金の優位性を得る範囲としては100〜10000島がさらに好ましい範囲である。
また、本発明においては、孔充填密度が0.1孔/mm以上であることが好ましい。孔充填密度が0.1孔/mm以上であれば、従来の複合口金技術との差異がより明確となる。本発明者等が検討した範囲では、孔充填密度は0.1〜20孔/mmの範囲であれば実施可能であった。この孔充填密度という観点では、本発明の複合口金の優位性が得られる範囲としては1〜20孔/mmが好ましい範囲である。
また、本発明における海島複合繊維は、海成分ポリマー20を溶出することで、単独紡糸では得ることができない非常に縮小された極細繊維として、繊維径が10〜1000nm、かつ繊維径バラツキを表す繊維径CV%が0〜30%の均一性の優れた長繊維型ナノファイバーを作製することができる。この長繊維型ナノファイバーは、シート状物とすることで、磁気記録ディスクなどに用いるアルミニウム合金基板やガラス基板を超高精度の仕上げ加工を施すのに好適に用いることができる。また、他の用途として、あえて一部の島を合流させ、繊維径分布を自由に制御したシート状物も作製可能である。
また、海島複合繊維の島部分を2種類の島成分ポリマーで構成することで、芯鞘複合繊維を得ることもできる。芯鞘複合繊維とは、図8(c)に示すように、異なる2成分以上のポリマーが繊維軸方向に垂直な断面において、芯成分を鞘成分が被覆するように構成しているものである。
この芯鞘複合繊維の製造方法としては、本発明の複合口金18の最下層分配板5において、例えば島成分ポリマー(A)13の吐出孔1の配置を島部分の中心側に集め、それらを取り囲むように島成分ポリマー(A)13とは異なる島成分ポリマー(B)14の島成分吐出孔1を配置して島成分吐出部21を構成すればよい。複合繊維として紡糸した後、海成分ポリマー20を溶出することで、芯鞘複合繊維を得ることができる。また、島成分ポリマー(A)13と島成分ポリマー(B)14を断面方向に複数層重ねることで、多重芯鞘繊維とすることができる。
この芯鞘複合繊維の用途としては、衣料用途に用いた場合には品位ならびに感性に優れたものとなることが言うまでもなく、力学的特性、耐薬品性、耐熱性という観点から見ても、単独ポリマーでは出せない特性を有する繊維となるために、産業資材用途でも有効に活用することができる。特に、屈曲疲労や摩耗特性も従来品よりも向上し、タイヤコードやタイヤのキャップレイヤー材などのゴム補強用途のみならず漁網や農業資材の他、スクリーン紗などにも好適に用いることができる。
また、海島複合繊維の島部分を2種類の島成分ポリマーで構成することで、サイドバイサイド複合繊維も得ることもできる。サイドバイサイド複合繊維とは、図8(d)に示すように、異なる2成分以上のポリマーが繊維軸方向に垂直な断面において、互いに張り合わされた形態を構成し、この断面形態が1種類または2種類の間隔を持って規則的に配列されている繊維を言う。
このサイドバイサイド複合繊維の製造方法としては、本発明の複合口金18の最下層分配板5において、島成分ポリマー(A)13を吐出する島成分吐出孔1と、島成分ポリマー(A)13とは異なる島成分ポリマー(B)14を吐出する島成分吐出孔4を各々吐出孔群として集め、その吐出孔群を互いに隣接し、左右対称、あるいは左右非対称に配列させ島成分吐出部21を構成すればよい。複合繊維として紡糸した後、海成分ポリマーを溶出することで、サイドバイサイド複合繊維を得ることができる。このように、2種類以上のポリマーが多層に張り合わされていても良いし、3種類以上のポリマーを張り合わせることにより、3種類以上の特性を付与することも好適である。
このサイドバイサイド複合繊維の用途としては、繊維断面方向で、収縮特性および染色特性が断面方向に変化した繊維を得ることができる。例えば、吸湿によって収縮性を発現するポリマーを片方に配置すれが、吸湿によって、布帛の網目等が変化するため、衣料用の通気性自己調節機能及び透湿防水機能を有する布帛となる。
以上のように、本発明の複合口金18で製造可能な複合形態を従来公知の断面形態を例示して説明したが、本発明の複合口金18においては、断面形態を任意に制御することができるため、以上の形態にとらわれることなく、自由な形態を作製することができる。
また、本発明の複合繊維の強度は、強度は2cN/dtex以上が好ましく、産業資材用途で必要とされる力学的特性を考えれば、5cN/dtex以上であることが好ましい。現実的な上限としては20cN/dtexである。また、伸度は延伸糸で2〜60%、特に高強度が必要とされる産業資材分野では2〜25%、衣料用では25〜60%とすることが好ましい。また、本発明の複合繊維は、繊維巻き取りパッケージやトウ、カットファイバー、わた、ファイバーボール、コード、パイル、織編、不織布、紙、液体分散体など多用な繊維製品とすることができる。
以下実施例を挙げて、本発明の複合口金の効果を具体的に説明する。各実施例、比較例では、島成分吐出部が1つの島成分吐出孔で、海成分吐出部が1つの海成分吐出孔で構成されている最下層分配板を使用して海島型複合繊維を紡糸し、下記の通り、島成分ポリマーの合流有無を判定した。なお、実施例4は参考例である。
(1)海島型複合繊維の島成分の析出
海島型複合繊維から島成分を析出するために、易溶出成分の海成分が溶出可能な溶液などに複合繊維を浸漬して除去し、難溶出成分の島成分の繊維を得た。易溶出成分が、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが共重合された共重合PETやポリ乳酸(PLA)等の場合には、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いた。また、アルカリ水溶液は50℃以上に加熱すると、加水分解の進行を早めることができるため、また、流体染色機などを利用し、処理すれば、一度に大量に処理をすることができる。
(2)島成分ポリマーの合流有無
紡糸開始時の海島型複合繊維を繊維軸方向の任意の位置で切断し、その繊維断面を(株)キーエンス製 VE−7800型走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率3000倍で撮影した。上記で撮影した断面写真より、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、得られた繊維の全島数を測定し、全島数を全吐出孔数(最下層分配板に配設された吐出孔と近接吐出孔の合計)で除した値が1であれば、島成分ポリマー同士の合流は無く(合流無し)、1未満であれば、島成分ポリマー同士の合流は有り(合流有り)とした。また、断面形態の経時的な変化を評価するために、紡糸開始時より72時間連続して紡糸を行い、この72時間後の海島型複合繊維の断面も同様の方法で撮影し、島成分ポリマー同士の合流有無を判別した。
(2)極限粘度[η]
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
[実施例1]
島成分ポリマーとして、極限粘度[η]0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)と、海成分ポリマーとして、極限粘度[η]0.58の5−ナトリウムスルホイソフタル酸5.0モル%共重合したPET(共重合PET)を285℃で別々に溶融し、本発明の実施形態の複合口金18を用いて、海/島成分の吐出比を30/70にて吐出後、冷却装置17で冷却し、その後、給油、交絡処理、熱延伸を行い、巻取ローラで1500m/分の速度で巻き取り、150dtex−10フィラメント(単孔吐出量2.25g/min)の未延伸繊維を採取した。巻き取った未延伸繊維を90℃と130℃に加熱したローラ間で2.5倍延伸を行い、60dtex−10フィラメントの延伸繊維を得た。
複合口金の最下層分配板は、図1に示す構成とした。島成分吐出孔1は、孔数1200個、孔充填密度2.0孔/mm、直径φ0.2mm、長い方の周期0.6mm、短い方の周期0.45mmとした。そして、隣接する2つの島成分吐出孔1(図1での基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2a、基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2b)と、この2つの島成分吐出孔1の2本の共通外接線3とで囲まれる領域内に、2つの海成分吐出孔4のそれぞれ少なくとも一部を存在させ、隣接する2つの島成分吐出孔1の中心を結ぶ線分を線対象軸として、2つの海成分吐出孔4を線対象で配置した。海成分吐出孔4の直径はφ0.2mmとした。2つの島成分吐出孔1の最小間隙DAと、2つの海成分吐出孔4の最小間隙DBとの比DB/DAは0.35とした。なお、基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2aとの最小間隔をDAとした場合と、基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2bとの最小間隔をDAとした場合のいずれもDB/DA=0.35とした。
表1に記載のとおり、紡糸開始時、および72時間経過後共に、島成分ポリマーの合流は無かった。
[実施例2]
島成分吐出孔1を、孔数2400個、孔充填密度4.0孔/mm、長い方の周期0.5mm、短い方の周期0.35mmとする以外は実施例1と同じ複合口金を用い、実施例1と同等のポリマー、吐出比、同等の繊度、紡糸条件で紡糸して海島型複合繊維を製造した。
表1に記載のとおり、紡糸開始時、72時間経過後共に、島成分ポリマーの合流は無かった。
[実施例3]
海成分吐出孔4の位置を変えてDB/DA=0.6とする以外は実施例1と同じ複合口金を用い、実施例1と同等のポリマー、吐出比、同等の繊度、紡糸条件で紡糸して海島型複合繊維を製造した。
表1に記載のとおり、紡糸開始時、72時間経過後共に、島成分ポリマーの合流は無かった。
[実施例4]
複合口金の最下分配板は、図5に示す構成とした。島成分吐出孔1は孔数1020個、孔充填密度は1.7孔/mm、直径φ0.2mm、長い方の周期0.6mm、短い方の周期0.5mmとした。隣接する2つの島成分吐出孔1(図5での基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2a、基準の島成分吐出孔1と島成分吐出孔2b)と、この2つの島成分吐出孔1の2本の共通外接線3とで囲まれる領域内を完全に塞ぐように1つの海成分吐出孔4を設けた。海成分吐出孔の直径はφ0.2mmとした。
この複合口金を使用して、実施例1と同等のポリマー、吐出比、同等の繊度、紡糸条件で紡糸して海島型複合繊維を製造した。
表1に記載のとおり、紡糸開始時、72時間経過後共に、島成分ポリマーの合流は無かった。
[比較例1]
海成分吐出孔4を無くす以外は実施例1と同じ複合口金を用い、実施例1と同等のポリマー、吐出比、同等の繊度、紡糸条件で紡糸し海島型複合繊維を製造した。
表1に記載のとおり、紡糸開始時には島成分ポリマーの合流は無かったが、72時間経過後には、島成分ポリマーの合流が発生し、所望の断面の複合繊維を得ることができなかった。
[比較例2]
海成分吐出孔4の位置を変えてDB/DA=0.8とする以外は実施例1と同じ複合口金を用いた。ただし、2つの海成分吐出孔4の最小間隔DBが広がったので、隣接する2つの島成分吐出孔1と、この2つの島成分吐出孔の2本の共通外接線3とで囲まれる領域内に、海成分吐出孔4の一部が存在しなくなった。
この複合口金を使用して、実施例1と同等のポリマー、吐出比、同等の繊度、紡糸条件で紡糸し海島型複合繊維を製造した。
表1に記載のとおり、紡糸開始時、72時間経過後共に、島成分ポリマーの合流が発生し、所望の断面の複合繊維を得ることができなかった。
[比較例3]
複合口金の最下分配板は、図1に示す構成とした。島成分吐出孔1は、孔数900個、孔充填密度1.5孔/mm、直径φ0.2mm、長い方の周期0.6mm、短い方の周期0.55mmとした。DB/DA=0.35となるように海成分吐出孔4を配置した。海成分吐出孔の直径はφ0.2mmとした。隣接する2つの島成分吐出孔1と、この2つの島成分吐出孔の2本の共通外接線3とで囲まれる領域内に、海成分吐出孔4の一部は存在しなかった。
この複合口金を使用して、実施例1と同等のポリマー、吐出比、同等の繊度、紡糸条件で紡糸し海島型複合繊維を製造した。
表1に記載のとおり、紡糸開始時には島成分ポリマーの合流は無かったが、72時間経過後には、島成分ポリマーの合流が発生し、所望の断面の複合繊維を得ることができなかった。
Figure 0005505030
本発明は、一般的な溶液紡糸法に用いられる複合口金に限らず、メルトブロー法およびスパンボンド法に適用可能であるし、湿式紡糸法や、乾湿式紡糸法に用いられる口金にも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
1 島成分吐出孔
2a 基準の島成分吐出孔と短い方の周期で隣接する島成分吐出孔
2b 基準の島成分吐出孔と長い方の周期で隣接する島成分吐出孔
3 共通外接線
4 海成分吐出孔
5 最下層分配板
6 分配板
7 分配孔
8 分配溝
9 計量板
10 吐出板
11 吐出導入孔
12 縮小孔
13 島成分ポリマー(A)(島部分)
14 島成分ポリマー(B)(島部分)
15 紡糸パック
16 スピンブロック
17 冷却装置
18 複合口金
19 仮想円
20 海成分ポリマー(海部分)
21 島成分吐出部
22a 基準の島成分吐出部と短い方の周期で隣接する島成分吐出部
22b 基準の島成分吐出部と長い方の周期で隣接する島成分吐出部
24 海成分吐出部
30 パイプ
31 海成分ポリマー導入流路
32 島成分ポリマー導入流路
33 上口金板
34 中口金板
35 下口金板
40 海成分ポリマー分配室
41 パイプ挿入孔
42 口金吐出孔
DA 2つの島成分吐出孔の最小間隙
DB 2つの海成分吐出孔の最小間隙
α 縮小角度
L 助走区間

Claims (5)

  1. 島成分ポリマーと海成分ポリマーによって構成される複合ポリマー流を吐出するための複合口金であって、
    各ポリマー成分を分配するための分配孔および/又は分配溝が形成された1枚以上の分配板と、
    前記分配板のポリマーの紡出経路方向の下流側に位置し、複数の島成分吐出部と複数の海成分吐出部とが形成された最下層分配板と、で構成され、
    前記各島成分吐出部は、島成分ポリマーを吐出するための1つ以上の島成分吐出孔で構成されており、
    前記各海成分吐出部は、海成分ポリマーを吐出するための1つ以上の海成分吐出孔で構成されており、
    最も短い中心間距離で隣接する2つの前記島成分吐出部と、該2つの島成分吐出部の2本の共通外接線とで囲まれる領域内に、少なくとも2つの前記海成分吐出部のそれぞれ少なくとも一部が存在し、該2つの島成分吐出部の中心を結ぶ線分を挟んで、該2つの海成分吐出部が配置されている、複合口金。
  2. 前記複数の島成分吐出部が2種類の周期で並んでおり、
    短い方の周期で隣接する2つの前記島成分吐出部と、該短い方の周期で隣接する2つの島成分吐出部の2本の共通外接線とで囲まれる領域内に、少なくとも2つの前記海成分吐出部のそれぞれ少なくとも一部が存在し、該2つの島成分吐出部の中心を結ぶ線分を挟んで、該2つの海成分吐出部が配置されており、
    長い方の周期で隣接する2つの前記島成分吐出部と、該長い方の周期で隣接する2つの島成分吐出部の2本の共通外接線とで囲まれる領域内に、少なくとも2つの前記海成分吐出部のそれぞれ少なくとも一部が存在し、該2つの島成分吐出部の中心を結ぶ線分を挟んで、該2つの海成分吐出部が配置されている、請求項1の複合口金。
  3. 前記2つの島成分吐出部の最小間隙DAと、前記2つの海成分吐出部の最小間隔DBとが下記式を満足する、請求項1または2の複合口金。
    ・DB/DA≦0.7
  4. 前記島成分吐出孔の孔充填密度が0.1孔/mm以上である請求項1からのいずれかの複合口金。
  5. 請求項1からのいずれかの複合口金を用いた複合紡糸機により溶融紡糸を行う複合繊維の製造方法。
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