以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、縦型の洗濯乾燥機について説明する。
図1は、第1実施形態に係る洗濯機内部を、図2は洗濯機外装を示している。この洗濯機の外装は、鋼板製の筐体1とその上部に取り付けたトップカバー2および操作・表示パネル3により構成する。この操作・表示パネル3は、電源スイッチ3a,操作ボタン3b,表示器3cを備える。トップカバー2は、蓋2aと主に給水に関連する部品を収納する後部収納部2bとで構成する。
洗濯機の内部において、有底で円筒形状の水を貯める外槽4は、筐体上部の4隅より4本の吊り棒5により弾性的に支持されている(図では1本のみ示す)。この外槽4内には、円筒形状の洗濯槽6を回転自在に設ける。洗濯槽6の側面には多数の脱水穴6aを設け、上縁部には流体バランサ6bを設ける。また、洗濯槽6の底部には、回転翼7を回転可能に設ける。外槽4の底面外側には、支持板8を取り付け、この支持板8に駆動装置9を固定する。この駆動装置9により、脱水時には回転翼7を洗濯槽6に固定し、洗濯槽6を一方向に回転駆動させる。また洗濯時には、回転翼7は洗濯槽6から切り離され、洗濯槽6内で正転・逆転し、水および衣類を搖動させる。
トップカバー2の後部には給水口10を設け、後部収納部2b内には給水弁11,冷却水給水弁12を設け、これらを接続し、給水ユニットを構成する。この給水弁11により、外槽4に洗濯用水が供給される。洗濯機上部に設けた水位センサ13により水位を検知することにより、供給される水量は制御される。水位センサ13は、外槽4の下部で外槽4とつながった空気室14とチューブ15で繋がっており、空気室14内の圧力を検出している。
外槽4の底面には、洗濯用水の排水を行う排水弁16を設け、この排水弁16に接続した排水ホース17を介して洗濯用水を洗濯機外に排出する。
また、外槽4の後ろには乾燥時に冷却除湿を行うダクト18を設ける。このダクト18と外槽4はゴム質のジャバラ管19で接続されている。ダクト18のジャバラ管19とは反対側にファン20が設けられ、乾燥時にはファン20を動作させ、ダクト18内の空気がファン20に吸い込まれる。ファン20の吐出側にヒータ21が設けられ、その先は外槽4に繋がっている。外槽4の上面には、外槽4の空気を逃がさないように、内蓋22が設けられている。
乾燥時ではファン20を動作させ、空気を循環させながら乾燥する。ファン20から吐出された空気をヒータ21で温め、洗濯槽6に吹き込む。洗濯槽6内の湿った衣類を温めて水分を蒸発させる。蒸発した水分を含んだ空気はダクト18内に送り込まれる。このとき冷却水給水弁12を開き、ダクト18内に給水し、ダクト18内で湿った空気と接触することで水冷除湿し、乾いた空気に戻す。この空気がファン20に吸い込まれ、またヒータ21に向けて吐出される。このように空気を循環させながら、衣類の水分を蒸発させて乾燥を行う。
ダクト18のファン20の吸い込み側に温度センサA23aが、ヒータ20の下流に温度センサB23bが設けられる。これら温度センサ23a,23bにより乾燥運転が制御される。
また、モータ9にはその回転を検出するホール素子あるいはフォトインタラプタなどで構成される回転検出器24を設ける。
また、外槽4の動きを検出する加速度センサ25を外槽4の胴部外周に固定する。この加速度センサ25はMEMS技術で作られたチップ状のセンサであり、外槽の上下方向,径方向,周方向の3方向の振動量を検知できる振動検知手段である。この加速度センサは抵抗等の電子部品とともに電子基板に実装され、プラスチック製のケース内に収められている。このケースの中には樹脂が流し込まれ、基板に水がかからないようにコーティングされている。また、加速度センサは外槽4の吊り棒5で支えられた部分の略鉛直上に設ける。吊り棒5により外槽4,洗濯槽6,衣類等の重量を支えるため、この付近は強固に作られている必要があり、外側に向かってリブが立てられている。このように強固に作られた部分に加速度センサ25を固定する。やわらかい部分に取り付けると、外槽4の動き以外に、外槽4自体の変形も検出してしまうため、望ましくない。
また、外槽4を覆う筐体1の下部にはモータ9,ファン20,ヒータ21などを制御する制御装置26を設ける。この制御装置26には、洗濯槽6および回転翼7を駆動するときの回転負荷量を検知する負荷検知手段、具体的には、モータへ供給する電流値を検知するモータ電流検出器27を設ける。
図3にこの制御装置26のブロック図を示す。制御装置26はマイクロコンピュータ(マイコン)31を中心に構成されている。使用者により操作ボタン3bから運転コースが入力され、その運転コースに合った運転パターンを運転パターンデータベース32から呼び出し、そのデータに沿って運転する。その運転は基本的にはモータ9の制御であり、モータ制御部33により制御される。モータ制御部33は、回転検出器24からの信号をもとに回転速度算出部34で回転速度を求めた結果を用いてモータ9を制御する。また、洗濯するための水量を制御するために水位制御部35は水位センサ13の出力を監視し、給水弁11,排水弁16の開閉を制御する。また、乾燥時においては温度センサ23a,23bの結果に基づきヒータ制御部36,ファン制御部37によりヒータ21,ファン20を制御する。また、モータ電流検出器27および加速度センサ25の結果をもとに布量・布質判定部38により衣類の布量,布質を判定する。この布量・布質判定部38について図4および図5を用いて詳しく説明する。
図4は洗濯・乾燥動作のフローチャートであり、図5は布量・布質判定部のブロック図を示す。
図4に示すように、洗濯・乾燥がスタートしたら(S1)、乾布の布量センシングを行う(S2)。このとき回転翼7を正転・逆転させながら計測する。回転翼7を毎分130回転の速度で1.0秒間回転し、1.0秒間停止し、反対方向にも同様に1.0秒間回転し、1.0秒間停止させる。この動作周期は洗い時よりも短く、回転翼7は小刻みに動作する。この動作を複数回行う最中に、モータ電流検出器27の出力から電流積算値算出部(m)39により電流積算値mを算出する。この電流積算値mは時々刻々と変化する電流値を積算することで得る。この値から、乾布重量演算部40により乾布の重量を求める。この重量の結果から、表示器に衣類の重量に合った洗剤量を表示し、洗濯水を供給し(S3)、前洗いを行う(S4)。前洗いとは、前洗いの後に行われる本洗いより少ない量の水で洗剤を溶かし、その洗剤液を衣類にしみ込ませる工程であり、高濃度の洗剤液により衣類についた汚れをはがれやすい状態にする工程である。前洗では回転翼7の上面に出るか出ないか程度の洗剤液を供給し、回転翼7を複数回、本洗いよりも短い周期で正転・逆転させる。毎分130回転の速度で1.5秒間回転し、1.0秒間停止し、反対方向にも同様に1.5秒間回転し、1.0秒間停止させる。この動作を2分程度繰り返して前洗いを終了する。前洗いにより衣類に洗剤液をしみ込ませた状態にし、布質センシングを行う(S5)。
布質センシングは、洗濯槽6内部に衣類及び水を供給し、衣類を湿らせて前洗いした状態で、回転翼7を小刻みに回転又は停止するように駆動装置9を操作した場合に、加速度センサ25で検知した振動量に基づいて、含水量の多い衣類か否かを判定する。本実施形態では毎分130回転の速度で1.0秒間回転し、1.0秒間停止させる運転を正転・逆転を5回ずつ行う。このときのモータ電流検出器27の出力と加速度センサ25の出力からは、化繊の多い衣類か否かも判定する。
具体的には、まず、加速度センサ25の出力を振動積算値算出部41により振動積算値Vを算出する。振動積算値Vは時々刻々と変化する加速度センサ出力を積算することで得る。本実施形態では加速度センサ25は3軸の加速度センサであり、3つの方向の出力が得られる。これら3方向の出力をそれぞれ積算し、これら3つの値を平均し、振動積算値Vとする。この振動積算値Vと湿布重量の関係を図6に示す。この図のひし形のプロットは綿100%のバスタオルの場合であり、四角形のプロットは綿35%,ポリエステル65%の混紡のワイシャツの場合であり、三角形のプロットはポリエステル100%のジャージの場合である。この図から布質によって異なる傾向は見られず、振動積算値Vは湿布重量に比例した値となる。つまり、布質が異なっても、同じ湿布重量ならばほぼ同じ振動積算値Vが算出されることがわかる。よって、この振動積算値Vにより湿布重量を推定することができ、湿布重量演算部42で湿布重量を推定する。
また参考として図7に乾布重量と湿布重量の関係を示す。この図から綿100%のバスタオルとポリエステル100%のジャージは乾布重量が同じなら湿布重量もほぼ同じ値であるが、綿35%,ポリエステル65%の混紡のワイシャツの湿布重量は他の衣類に比べて軽いことがわかる。これはバスタオルやジャージは水を多く含み重たくなる布質であるのに対して、ワイシャツは水を多く含むことができない布質であり、他の衣類にくらべて軽くなる。これは、繊維の編み方により大きく影響されると考える。バスタオルのように、生地が厚くなるように編むとその分水分を保持し易く、湿布重量が重くなる。逆にワイシャツのように生地が薄い場合は、水分をあまり保持できなく、湿布重量が軽くなる。
このように布質によって含水量が多いものとそうでないものがあり、これらを判別する。湿布重量演算部42で得られた湿布重量と乾布の布量センシングで得られた乾布重量から含水量判定部43において含水量が多い布質と含水量が少ない衣類とを判別する。このように湿布重量を推測することで水を多く含みやすい衣類と、水をあまり含めない衣類とを判別することができる。
本実施形態における湿布重量は、加速度センサの振動値から推定した。回転翼7の回転開始時および停止時に外槽4はその反力を受けて振動する。この反力は回転翼7に乗った衣類の慣性モーメントの速度変化から生じるものであり、それは湿布の重量に大きく依存する。本実施形態では3方向すべての振動から湿布重量を求めたが、反力の影響が大きく現れる周方向の加速度だけでも良い。また、振動から湿布重量を推定するのではなく、吊り棒5等に重量センサを設けて直接的に重量の変化から検知してもよい。
続いて、モータ電流検出器27の出力に対しても乾布の布量センシングと同様に、電流積算値算出部(I)44にてその積算値を求め、電流積算値Iとする(S5)。電流積算値Iと湿布重量の関係を図8に示す。この図も図6と同様にひし形のプロットは綿100%のバスタオルの場合であり、四角形のプロットは綿35%,ポリエステル65%の混紡のワイシャツの場合であり、三角形のプロットはポリエステル100%のジャージの場合である。同じ湿布重量の場合、ポリエステル100%の衣類の方が綿100%の衣類よりも低い値を示す。また、混紡の場合はポリエステルと綿の間に位置することが分かる。このことから湿布重量が分かれば、電流積算値Iは綿と化繊の配合割合を示していると考えられる。モータの電流値は回転翼7の回り難さを示しており、この回り難さは湿布重量と衣類の滑り難さに依存するものと考えられる。よって湿布重量が分かれば、電流積算値Iは衣類の滑り難さを示す指標となり、綿のように滑り難い繊維の場合は高い値となり、化繊のように滑りやすい繊維の場合は低い値となる。このように電流積算値Iと湿布重量演算部42から得られた湿布重量から繊維判定部45により綿が多い、もしくは化繊が多いと判断する。
本実施形態では、電流積算値により回転翼7の回り難さを判断していたが、回転翼7の動きから判断してもよい。具体的には、一定電流でモータ速度を加速した時の回転数の加速率により評価したり、一定速で回転している状態からモータの回転が停止するまでにかかる時間により評価したりする方法が挙げられる。これらの方法で回転翼7の回り難さを判定してもよい。
以上のようにモータ電流と加速度センサから布量・布質判定部38により衣類の含水量と繊維の種類を判別して、布質を判定する(S5)。布質は含水量が多い化繊(S6),含水量が少ない化繊(S7),含水量が多い綿(S8),含水量が少ない綿(S9)の4つに分類される。このように布質を細かく分類し、これらの布質に適した運転方法を行い、時短,節水による省エネ性を向上させる。
含水量が多くかつ化繊が多い場合(S6)、所定の水量より多めに給水し(S10)、本洗いを開始する(S11)。本洗いの回転翼7の動きは綿の場合より弱く、毎分110回転の速度で2.0秒間回転し、1.0秒間停止する動作を繰り返し、弱い水流で洗う。化繊の場合、汚れが繊維の奥まで染み込むことがなく、弱い水流でも洗うことができる。すすぎは水量を多くしてすすぐ(S12)。水量が少ないと、衣類に満遍なくすすぎ水を行き渡らすことができない。脱水では高速回転に到達させるまで時間をかけてゆっくりと起動させる(S13)。この布質の場合、含水量が多いため、起動途中で衣類から水が多量に放出される。この放出される水量が外槽から排出される水量より多いと、外槽に溜まっていき、水の抵抗で洗濯槽の回転がロックして脱水できない状態になってしまう。そのため、ゆっくり速度を上昇させ、衣類から一気に水が放出されないようにし、外槽に水が溜まらないようにする。一方、高速回転まで起動した後に定常運転させる時間は短くする(S13)。化繊の多い衣類の場合、衣類からの水の抜けがよく、短い時間で所定の脱水性能を確保できるため、通常よりも脱水時間を短くする。その後、乾燥に移行するが、所定の温度で運転し、所定の乾燥度に達したら(S14)、運転を終了させる(S16)。
また含水量が少なくかつ化繊の多い場合(S7)には、所定の水量給水し(S17)、本洗いを開始する(S18)。本洗いの回転翼7の動きは綿の場合より弱く、毎分110回転の速度で2.0秒間回転し、1.0秒間停止する動作を繰り返し、弱い水流で洗う。そのあとのすすぎは水量を少なくしてすすぐ(S19)。含水量が少ない衣類のため、少ない水でも衣類に満遍なくすすぎ水を行き渡らすことができる。脱水では高速回転に到達させるまでの時間を短時間にし、素早く起動させる(S20)。この布質の場合、含水量が少ないため、起動途中で衣類から水が一気に放出されても、排水能力以上に放出しないため、短時間で起動させることで時短にすることができる。また、高速回転で定常運転させる時間も短くし、時短にすることができる。その後、乾燥に移行するが、所定の温度で運転し、所定の乾燥度に達したら(S21)、運転を終了させる(S16)。
また、含水量が多くかつ化繊が少ない場合(S8)、所定の水量より多めに給水し(S22)、本洗いを開始する(S23)。本洗いの回転翼7の動きは化繊の場合より強く、毎分130回転の速度で2.5秒間回転し、0.8秒間停止する動作を繰り返し、強い水流で洗う。綿の場合、汚れが繊維の奥まで染み込んでおり、強い水流で洗うことで所定の性能を確保する。そのあとのすすぎは水量を多くしてすすぐ(S24)。脱水では高速回転に到達させるまで時間をかけてゆっくりと起動させ(S25)、外槽に水が溜まらないようにする。また、高速回転まで起動した後の定常運転させる時間は所定の時間より長くする。綿の場合、衣類からの水の抜けが悪く、化繊より長い時間が必要であり、さらに含水量も多いため時間を長くして脱水性能を確保する。その後、乾燥に移行するが、綿は縮みやすいため、所定の温度より低めで運転し、衣類の縮みを抑える(S26)。また、含水量が多い衣類は布が厚手であるため、乾きむらが発生し易く、所定の乾燥度よりも高い乾燥度に達したら、運転を終了させる(S16)。
また、含水量が少なくかつ化繊が少ない場合(S9)、所定の水量給水し(S27)、本洗いを開始する(S28)。本洗いの回転翼7の動きは化繊の場合より強く、毎分130回転の速度で2.5秒間回転し、0.8秒間停止する動作を繰り返し、強い水流で洗う。そのあとのすすぎは所定の水量ですすぐ(S29)。脱水では高速回転に到達させるまで時間も短時間で素早く起動させる(S30)。また、高速回転まで起動した後の定常運転させる時間は所定の時間で脱水する。その後、乾燥に移行するが、所定の温度より低めで運転し、衣類の縮みを抑える(S31)。所定の乾燥度に達したら、運転を終了させる(S16)。また、乾燥を終了する時期を通常よりも早めるよう設定しても良い。
以上のように洗いの初期段階においてモータの電流値と外槽の加速度センサの値から布質を判定し、その後の洗濯・乾燥運転を布質に適した運転パターンで行うことで、所定の性能を維持しながら、省エネ性を向上させることができる。
次に第2の実施形態について、図9を用いて説明する。本実施形態は第1の実施形態とほとんど同じであるが、布質判定を行うマイコン内の布量・布質判定部が異なる。この部分についてのみ説明する。それ以外は第1の実施形態と同じである。
洗濯・乾燥がスタートしたら給水する前に乾布布量センシングを行う。このときのモータ電流検出器から得られた電流値から電流積算値算出部(m)39にて電流積算値mを算出する。この値をもとに乾布重量演算部40において乾布重量を算出する。この処理と同時に、基準振動値V0なる値を基準振動値算出部51にて算出する。また、基準電流値I0なる値を基準電流値算出部52にて算出する。これら基準振動値V0,基準電流値I0は乾布時の電流積算値mに基づき求められるが、詳しくは後で説明する。
この後給水し、前洗いを行い、布質センシングを行う。布質センシング時の回転翼の動作は第1の実施形態と同じであるが、布質判定の方法が異なる。まず、加速度センサ25から振動積算値算出部(V)41で振動積算値Vを求める。この振動積算値Vと先に求めた基準振動値V0から振動積算値距離演算部53にて振動積算値距離DVなる値を求める。(振動積算値距離DVは後で説明する。)また、電流積算値算出部(I)44により湿布時の電流積算値Iを求める。この電流積算値Iと先に求めた基準電流値I0から電流積算値距離演算部54にて電流積算値距離DIなる値を求める。(電流積算値距離DIは後で説明する。)これら振動積算値距離DVと電流積算値距離DIから布質判定部55により布質を判別する。
まず、上述した振動積算値距離DVおよび基準振動値V0について図10を用いて説明する。図10は乾布時の電流積算値mを横軸に、振動積算値Vを縦軸にしてそれらの関係を示した図である。図中のひし形のプロットは綿100%のバスタオルの場合であり、四角形のプロットは綿35%,ポリエステル65%の混紡のワイシャツの場合であり、三角形のプロットはポリエステル100%のジャージの場合であり、円形のプロットは綿100%の薄手の布の場合である。各布とも複数のプロットがあるが、布量を変えて計測した結果である。この図より、バスタオルとジャージは似通った傾向であり、ワイシャツと薄手の綿は似通った傾向であることが分かる。バスタオルとジャージはワイシャツと薄手の綿より振動積算値が高く、先に説明したように、水を多く含む衣類の方が大きな値を示す。この振動積算値を用いて布質を判別するための基準となる基準振動ラインを引き、分別する。この基準振動ラインは図中に太い実線で示し、バスタオルやジャージのような水を多く含む厚手の衣類とワイシャツや薄手の綿のような水をあまり含まない薄手の衣類との間に設ける。この基準振動ラインからの遠さで布質を判断する。そこで、基準振動ラインからの遠さを示す指標として、振動積算値距離DVを用いる。まず、乾布時の電流積算値mに対応する基準振動ライン上の点における振動積算値を基準振動値V0とする。(この処理を基準振動値算出部51で行う。)次に、湿布状態での振動積算値Vを求め、これら2つの値から式1により振動積算値距離DVを求める。
〔式1〕
DV=(V−V0)/V0×100
この式に示すように振動積算値距離DVは、振動積算値Vと振動基準値V0との差を振動基準値V0で除算した値を百分率で表した値である。大きく捉えると、振動積算値距離DVがプラスならば水を多く含みやすい布質であり、マイナスなら水をあまり含まない布質であると判断される。
次に、上述した電流積算値距離DIおよび基準電流値I0について図11を用いて説明する。図11は乾布時の電流積算値mを横軸に、電流積算値Vを縦軸にしてそれらの関係を示した図である。図中のひし形のプロットは綿100%のバスタオルの場合であり、四角形のプロットは綿35%,ポリエステル65%の混紡のワイシャツの場合であり、三角形のプロットはポリエステル100%のジャージの場合であり、円形のプロットは綿100%の薄手の布の場合である。各布とも複数のプロットがあるが、布量を変えて計測した結果である。この図より、ワイシャツとジャージは似通った傾向で低い値を示し、薄手の綿,バスタオルと値が高くなる。先にも説明したが、電流積算値は回転翼の回り難さを示しており、重さと滑り難さに影響される。重ければ値が高く、化繊よりも綿の方が値が高い。そのため化繊を多く含むワイシャツは電流積算値が低く、厚手だけど化繊であるためジャージは電流積算値が低い。逆に、バスタオルのように厚手で綿のものは電流積算値が高く、薄手の綿はバスタオルより低い電流積算値となる。この図から化繊を多く含む衣類と綿を多く含む衣類との間に大きな差が見られる。この差を利用して、布質を判別する。化繊を多く含む衣類と綿を多く含む衣類と間に基準となる基準電流ラインを引き、分別する。この基準電流ラインは図中に太い実線で示し、この基準電流ラインからの遠さで布質を判断する。そこで、基準電流ラインからの遠さを示す指標として、電流積算値距離DIを用いる。振動積算値距離DVと同様に、乾布時の電流積算値mに対応する基準電流ライン上の点における電流積算値を基準電流値I0とする。(この処理を基準電流値算出部52で行う。)次に、湿布状態での電流積算値Iを求め、これら2つの値から式2より電流積算値距離DIを求める。
〔式2〕
DI=(I−I0)/I0×100
大きく捉えると、電流積算値距離DIがプラスならば綿を多く含む布質であり、マイナスなら化繊を多く含む布質であると判断される。
これら振動積算値距離DVと電流積算距離DIから布質判定部55により布質を求める。図12にこれら2つの関係を示す。横軸に電流積算距離DIを示し、縦軸に振動積算値距離DVを示す。図中の太い破線で示した線がDI=0,DV=0の線である。ひし形のプロットは綿100%のバスタオルの場合であり、四角形のプロットは綿35%,ポリエステル65%の混紡のワイシャツの場合であり、三角形のプロットはポリエステル100%のジャージの場合であり、円形のプロットは綿100%の薄手の布の場合である。布質が異なると分布が異なることが分かる。傾向的には含水量が多い綿の場合は、DI>0,DV>0であり、含水量が多い化繊の場合は、DI<0,DV>0、含水量が少ない化繊の場合はDI<0,DV<0、含水量が少ない綿の場合はDI>0,DV<0のように分布される。そこで、図中の太い実線のように領域を分けることで布質を判別し、それ以降の運転を布質に合わせて運転制御する。この運転制御は第一の実施形態と同様に行われる。
このように第1の実施形態同様に乾布時の電流積算値mと湿布時の電流積算値Iと振動積算値Vにより布質を判別した。しかし第一の実施形態は繊維の判定(推定)部における湿布重量は、振動積算値Vから推定した値を利用しており、二重の推定を行っており、判定誤差が拡大してしまう。しかし、本実施形態では推定した2つの値で作られる領域で判定することで判定誤差を小さくすることができる。
また、本実施形態で設定した基準振動ラインや基準電流ラインはワイシャツ寄りに設定した。どちらの基準ラインも任意に設定しても構わないが、布質を判断して、省エネ性を向上させる制御を考えた時には、ワイシャツ寄りに設定した方が望ましい。ワイシャツのような含水量が少ない化繊の場合、水を少なくでき、運転時間も短くできるため、ワイシャツの特徴を抽出しやすいような区分けをするために、ワイシャツ寄りに基準ラインを設けることが望ましい。
また、振動積算値Vではなく、洗濯槽6内部の衣類の重さを検知する重量検知手段により湿布の重量を検知し、含水量の多い,少ないを判断してもよい。
続いて、第3の実施形態について図13,図14を用いて説明する。本実施形態はドラム式洗濯乾燥機の例である。図13はドラム式洗濯乾燥機の外観図であり、図14は内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した側面図である。
外郭を構成する筐体61は、ベース61hの上に取り付けられており、左右の側板61a,61b,前面カバー61c,背面カバー61d,上面カバー61e,下部前面カバー61fで構成されている。左右の側板61a,61bは、コの字型の上補強材(図示せず),前補強材(図示せず),後補強材(図示せず)で結合されており、ベース61hを含めて箱状の筐体61を形成し、筐体として十分な強度を有している。また、ベース61hの四隅には洗濯機全体を支持する脚74が設けられている。
ドア62は前面カバー61cの略中央に設けた衣類を出し入れするための投入口を塞ぐためのもので、前補強材に設けたヒンジで開閉可能に支持されている。ドア開放ボタン62aを押すことでロック機構(図示せず)が外れてドアが開き、ドアを前面カバー61cに押し付けることでロックされて閉じる。前補強材は、後述する外槽の開口部と同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部を有している。
筐体61の上部中央に設けた操作・表示パネル63は、電源スイッチ64,操作ボタン65,表示器66を備える。操作・表示パネル63は筐体61下部に設けたメイン制御装置67に電気的に接続している。
図14に示すドラム68は回転可能に支持されており、その外周壁および底壁に通水および通風のための多数の貫通孔を有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部68aを設けてある。開口部68aの外側にはドラム68と一体の流体バランサ68cを備えている。外周壁の内側には軸方向に延びるリフタ68bが複数個設けてあり、洗濯,乾燥時にドラム68を回転すると、衣類はリフタ68bと遠心力で外周壁に沿って持ち上がり、重力で落下するような動きを繰り返す。ドラム68の回転中心軸は、水平または開口部68a側が高くなるように傾斜している。
円筒状の外槽70は、ドラム68を同軸上に内包し、前面は開口し、後側端面の外側中央にモータ69を取り付ける。モータ69の回転軸は、外槽70を貫通し、ドラム68と結合している。前面の開口部には外槽カバー70aを設け、外槽内への貯水を可能としている。外槽カバー70aの前側中央には、衣類を出し入れするための開口部70bを有している。
開口部10bと前補強材(図示せず)に設けた開口部は、ゴム製のベローズ71で接続しており、ドア62を閉じることで外槽70を水封する。外槽70の底面最下部には、排水口70dが設けてあり、排水ホース72が接続している。排水ホース72の途中には排水弁(図示せず)が設けてあり、排水弁を閉じて給水することで外槽70に水を溜め、排水弁を開いて外槽70内の水を機外へ排出する。
外槽70は、下側をベース61hに固定されたサスペンション73(コイルばねとダンパで構成)で防振支持されている。また、外槽70の上側は上部補強部材に取り付けた補助ばね(図示せず)で支持されており、外槽70の前後方向へ倒れを防ぐ。洗剤容器は筐体61内の上部左側に設けており、その前部の開口から引き出し式の洗剤トレイ75を装着する。洗剤容器の後ろ側には、給水弁(図示せず)や風呂水給水ポンプ,水位センサなど給水に関連する部品を設けてある。洗剤容器は、外槽70に接続されている。給水弁は多連弁で、洗剤容器,水冷除湿機構を備えた乾燥ダクト78へ給水する。カバー61eには、水道栓からの給水ホース接続口76,風呂の残り湯の吸水ホース接続口77が設けてある。
乾燥ダクト78は筐体61の背面内側に縦方向に設置され、ダクト下部は外槽70の背面下方に設けた吸気口70cにゴム製の蛇腹管A78aで接続される。乾燥ダクト78内には、水冷除湿機構を内蔵しており、給水弁から水冷除湿機構へ冷却水を供給する。冷却水は乾燥ダクト78の壁面を伝わって流下し吸気口70cから外槽70に入り排水口70dから排出される。
乾燥ダクト78の上部は、筐体1内の上部前方右側に設置した乾燥フィルタ80に接続している。乾燥フィルタ80はダクト78内に挿入されており、引き出すことが可能である。乾燥フィルタ80はメッシュ式のフィルタであり、このフィルタを通過することで糸くずが除去される。乾燥フィルタ80の掃除は、乾燥フィルタ80を引き出してメッシュ式のフィルタを取り出して行う。また、乾燥フィルタ80の挿入部の下面には開口部が設けてあり、この開口部は送風ユニット82の吸気口と繋がっており、送風ユニット82に空気が吸い込まれる。
送風ユニット82は、駆動用のモータ82a,ファン(図示せず),ファンケース82bで構成されている。ファンケース82bにはヒータ83が内蔵されており、ファン羽根車から送られる空気を加熱する。送風ユニット82の吐出口は温風ダクト84に接続する。温風ダクト84は、ゴム製の蛇腹管B84aを介して外槽カバー70aに設けた温風吹き出し口85に接続している。本実施形態では、送風ユニット82が筐体1内の上部右側に設けてあるので、温風吹き出し口85は外槽カバー70aの右斜め上の位置に設け、温風吹き出し口85までの距離を極力短くするようにしてある。
脱水運転時および乾燥運転時の風の流れは次のようになる。ファンを回転させ、ヒータ83に向けて空気を送りだす(矢印91)。ヒータ83に通電し、空気を温め温風にし、温風ダクト84へ送る。温風吹き出し口85からドラム68内に高速の温風が吹き込み(矢印92)、湿った衣類に当たり、衣類を温め衣類から水分が蒸発する。高温高湿となった空気は、ドラム68に設けた貫通孔から外槽70に流れ、吸気口70cから乾燥ダクト78に吸い込まれ、乾燥ダクト78を下から上へ流れる(矢印93)。乾燥ダクト78の壁面には、水冷除湿機構からの冷却水が流れ落ちており、高温高湿の空気は冷却水と接触することで冷却除湿され、乾いた低温空気となり、フィルタ80を通り糸屑が取り除かれ、送風ユニット82に吸い込まれる(矢印94)。そして、ヒータ83で再度加熱され、ドラム68内に吹き込むように循環する。
ダクト78のファンの吸い込み側に温度センサA95が、ヒータ83の下流に温度センサB96が設けられる。これら温度センサ95,96により乾燥運転が制御される。
また、モータ69にはその回転を検出するホール素子あるいはフォトインタラプタなどで構成される回転検出器97を設ける。
また、外槽70の動きを検出する加速度センサ98を外槽70の下部の胴部外周に固定する。この加速度センサ98はMEMS技術で作られたチップ状のセンサであり、上下方向,径方向,周方向の3方向を検出できるものである。
また、制御装置67にはモータへ供給する電流値を検知するモータ電流検出器99を設ける。この制御装置26の内部の構成は第1の実施形態と同じであり、説明を省略する。
このようなドラム式洗濯乾燥機において、図15のように運転制御する。図16は布量・布質判定部のブロック図を示す。
図15に示すように、洗濯・乾燥がスタートしたら(S51)、乾布の布量センシングを行う(S52)。このときドラムを毎分50回転の速度から毎分200回転の速度まで勢いよく上昇させる。このときのモータ電流検出装置99の出力から電流値算出部100によりモータ電流積算値mを算出する。乾布重量演算部101により乾布の重量を求める。この重量の結果から、表示器66に衣類の重量に合った洗剤量を表示し、洗濯水を供給し(S53)、前洗いを行う(S54)。前洗いは洗剤液を衣類にしみ込ませる工程であり、衣類がドラム内壁に張り付かない速度である毎分40回転の速度でドラムを正転・逆転させる。15秒間回転し、10秒間停止し、反対方向にも同様に15秒間回転し、10秒間停止させる動作を2分程度繰り返して前洗いを終了する。前洗いにより衣類に洗剤液がしみ込んだ状態で、布質センシングを行う(S55)。
布質センシングは前洗いと同様に、衣類がドラム内壁に張り付かない速度である毎分40回転の速度でドラムを正転・反転させながら行う。その動きは前洗いより周期が短く、10秒間回転し、10秒間停止させ、逆方向にも10秒間回転し、10秒間停止させる運転を3回行う。この動作の最中の加速度センサ98の出力から判定する。この布質センシングの動作により、ドラム内の衣類はドラムの回転とともにリフタによって持ち上げられ、ある高さまで上がると衣類は落下する動きを繰り返す。この落下時の衝撃を受けて外槽が振動し、この振動を加速度センサが検知する。図16に示すように加速度センサ98の出力を振動積算値算出部(V)102により振動積算値Vに変換する。振動積算値Vは時々刻々と変化する加速度センサ出力を積算することで得る。この振動積算値Vと乾布重量の関係を図17に示す。図中のひし形のプロットはバスタオルの場合であり、四角形のプロットは綿35%,ポリエステル65%の混紡のワイシャツの場合である。バスタオルの方がワイシャツより高い値を示していることが分かる。バスタオルの方が水を多く含み、乾布の状態では同じ重さでも、湿布の状態では重たくなり、運転時の落下の衝撃が大きくなる。衝撃が大きければ、加速度も大きくなり、振動積算値Vも大きくなる。振動積算値Vが大きければ含水量が多い布質であると判断できるが、その判定値は一意的に決められず、乾布重量によって、異ならせる方が望ましい。そこで、乾布重量演算部101の結果と合わせて含水量判定部103で含水量が多い布質,含水量が少ない布質、さらに含水量が中間程度の布質であるかどうか3段階で判断し、布質センシングを終了する。
布質センシングの後に本洗いに移行するが、布質センシングの結果に適した運転を行う。基本的には、含水量が中間程度の布質を基準に洗濯乾燥機の基準動作パターンが決められているが、含水量に応じて動作パターンを変化させる運転制御となる。
含水量が中間程度の布質の場合(S56)、本洗いの回転数を毎分40回転の速度で運転する(S57)。続いてすすぎ(S58),脱水(S59),乾燥(S60)に移行するが、標準的な水量,時間で運転制御を行い、標準的な乾燥度に達したら洗濯乾燥を終了させる(S61)。
このような標準的な動作に対して、含水量が多い布質の場合(S62)、運転パターンを変化させる。本洗いにおいては、衣類が重たくなっているため、標準的なドラムの回転速度では衣類を持ち上げても高いところまで行く前に落下してしまう。落下距離が短いと衝撃が小さく、洗浄力が低下してしまう。それを防ぐため、回転数を少し高めて毎分45回転の速度で運転する(S63)。
続いてすすぎに移行するが(S64)、水を多く含むことができる布質のため、衣類に満遍なく水を与えるには水量も必要になり、水量を多くする。
続いて脱水に移行するが(S65)、衣類に水を多く含んでいるため、一気に回転速度を上げると、起動途中でも多量の水が抜け、排水能力を上回り、外槽内に水がたまる場合がある。それを防ぐために、脱水起動は時間をかけてゆっくりと回転速度を上昇させる。また、定常回転でも長時間脱水する。
続いて、乾燥工程に移行するが(S66)、水を多く含む衣類は厚手の衣類であり、乾きむらが発生しやすい。そのため、乾燥を終了する時期を通常よりも遅らせる設定とし、乾きむらを発生しないようにする。
逆に含水量が少ない布質の場合(S67)、本洗いでは(S68)標準的な回転速度で回転させても持ち上げていく途中で落下することはないが、衣類が軽いためドラムの回転の勢いで真下に落下せずに、横に飛ばされるような動きになり、洗浄力が低下してしまう。それを防ぐために、回転数を少し低下させて毎分35回転の速度で運転する。
続いてすすぎに移行するが(S69)、含水量が少ない衣類のため、少ない水量でも衣類に満遍なく水を供給することができるため、水量を少なくし、節水する。
続いて脱水に移行するが(S70)、衣類に水を多く含んでいないため、一気に回転速度を上げても、起動途中でも多量の水が抜けることもなく、排水能力を上回ることもなく、外槽内に水が溜まることもない。よって時短のために短時間で所定の回転数まで上昇させる。また、もともと多く水を含んでいないため定常回転でも短時間脱水する。
続いて乾燥工程に移行するが(S71)、水を多く含まない衣類は薄手の衣類であり、しわが発生しやすい。そのため、乾燥度を低めに設定し、乾燥を少し早く終了させしわつきを低減させる。
以上のように、衣類を湿らせた状態で運転し、そのときの外槽の振動を計測し、その振動から布質を判定することができ、その判定結果に応じて、本洗い,すすぎ,脱水又は乾燥の運転を変化させることができる。なお、本発明は乾燥機能を有さない洗濯機に対しても適用可能である。