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JP5597469B2 - 切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は切削工具に関し、特に、ねずみ鋳鉄を加工する際に優れた耐摩耗性を発揮する切削工具に関する。
切削工具として、超硬合金やサーメット等の基体の表面に被覆層を成膜して、耐摩耗性、摺動性、耐欠損性を向上させたコーティング超硬合金が広く使われている。
例えば、特許文献1では、超硬合金基体の表面にTiCN層を含む被覆層を形成して、すくい面に位置するTiCN結晶の平均幅を逃げ面に位置するTiCN結晶の平均幅よりも狭くして、鋳鉄の断続切削等の工具切刃に強い衝撃がかかるような過酷な切削条件においても、すくい面側でのTiCN層の強固な密着性と逃げ面側でのTiCN層の耐摩耗性を向上できることが開示されている。
特開2004−216488号公報
しかしながら、特許文献1の構成では、すくい面におけるTiCN層の密着性は向上したものの、さらに過酷な切削条件に耐えられる切削工具が求められていた。特に、湿式加工においても乾式加工においても被覆層の耐摩耗性および耐欠損性を向上させることが求められていた。
本発明では、ねずみ鋳鉄の切削加工のような過酷な切削加工条件においてさらに良好な耐摩耗性および耐欠損性が得られる切削工具を提供することを目的とする。
本発明の切削工具は、基体の表面にTiCN層を含む多層からなる被覆層を形成しており、前記TiCN層は筋状結晶からなるとともに、前記TiCN層のうちの前記基体側において、該基体側より1μm高さの平均結晶幅が、切刃においてすくい面よりも細いとともに、前記被覆層が前記TiCN層の上層としてAl 層を含み、前記TiCN層の厚みと前記Al 層の厚みとの比率(Al 層/TiCN層)をRとしたとき、前記切刃における比率Rcが前記すくい面における比率Rrよりも小さいものである。
また、前記切刃における前記被覆層の総厚みが前記すくい面における前記被覆層の総厚みと同じであってもよい。
さらに、前記被覆層の最表層がTi(C(x+y+z=1、0≦x≦0.6、0≦y≦0.6、0.2≦z≦0.8、1.0≦a≦1.7)層からなってもよい。
本発明の切削工具によれば、切刃における結晶幅がすくい面における結晶幅よりも細いので、湿式加工における切刃での耐チッピング性を向上させるとともに、乾式切削加工においてすくい面でのTiCN層の密着性を高めて、被覆層の耐熱性を向上できる。
本発明の切削工具の好適例であるスローアウェイチップの一例について、(a)概略斜視図、(b)要部拡大断面図である。 図1のスローアウェイチップの切刃を含む破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
本発明の切削工具の好適例であるスローアウェイチップの一例について、図1の概略斜視図および要部拡大断面図、および図2の切刃を含む破断面の走査型電子顕微鏡写真を基に説明する。
図1のスローアウェイチップ1は、すくい面2と逃げ面3との交差稜線部が切刃4を構成しているとともに、基体6の表面に、TiCN層を含むTiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物および炭窒酸化物のうちの1層以上と、α型結晶構造のAl層(以下、単にAl層と略す。)12と、Ti(C(x+y+z=1、0≦x≦0.6、0≦y≦0.6、0.2≦z≦0.8、1.0≦a≦1.7)層からなる最表層14とが順に積層された被覆層が形成されている。
そして、図2によれば、TiCN層8は筋状結晶からなるとともに、TiCN層8のうちの最も基体側のTiCN層8aにおける基体6側より1μm高さの平均結晶幅が、切刃4においてすくい面2よりも細いので、湿式加工における切刃4での耐チッピング性を向上させて、切刃4の境界損傷による摩耗の進行を低減できるとともに、乾式切削加工においてすくい面2でのTiCN層8とその上層として存在するAl層12との密着性を高めて、被覆層の耐熱性を向上できる。
なお、各層の厚みおよび各層を構成する結晶の性状は、図2に示すような切削工具1の断面における電子顕微鏡写真(走査型電子顕微鏡(SEM)写真または透過電子顕微鏡(TEM)写真)を観察することにより、測定することが可能である。また、本発明においては、各層を構成する結晶の平均粒径(筋状結晶の場合は平均結晶幅)は、その層の平均厚みが1μm以下の場合は当該層の厚みの半分の位置に層の界面と平行な直線を引き、その線を横切る粒界の数を数えて測定した線分長さで割ることによって算出する。また、層の平均厚みが1μmを超える場合は、層の始まりから1μm厚みの位置に層の界面と平行な直線を引き、その線を横切る粒界の数を数えて測定した線分長さで割ることによって算出する。
また、切刃4における被覆層の総厚みがすくい面2における被覆層の総厚みよりも薄いことが、乾式加工におけるすくい面2での摩耗の進行を抑制できるとともに、湿式加工における逃げ面での境界損傷の防止ができる点で望ましい。
次に、基体6側に形成される被覆層は、TiCN層8を含み、他に、TiC、TiN、TiCNO、TiCO、TiNOの群から選ばれる1層以上が好適に用いられ、耐摩耗性および耐欠損性が向上する。本実施態様によれば、具体的な構成として、図2に示すように、基体6の直上には第1層としてTiN層7が形成され、第2層としてTiCN層8が形成されている。TiCN層8としては、アセトニトリル(CHCN)ガスを原料として含み成膜温度が780〜900℃と比較的低温で成膜した筋状結晶からなる、いわゆるMT−TiCN層8a,8bと、成膜温度が950〜1100℃と高温で成膜した、いわ
ゆるHT−TiCN層8cとが順に成膜された構成であることが望ましい。さらに、MT−TiCN層8a,8bは、平均結晶幅が0.5μm未満と微細な微粒筋状結晶からなる微粒MT−TiCN層8aと、平均結晶幅が0.5〜2μmと比較的大きい粗粒筋状結晶からなる粗粒MT−TiCN層8bとの積層からなることが望ましい。これによって、Al層12との密着力が高まり、被覆層の剥離やチッピングを抑えることができる。なお、筋状TiCN層は1層構成であってもよい。
また、HT−TiCN層8cの上部は、成膜工程で酸化されて、Ti原子を40〜55原子%と、酸素(O)を15〜25原子%と、炭素(C)を25〜40原子%と、残部が窒素(N)とのTiCNO層に変化して、厚み0.05〜0.5μmの中間層11を形成していることが望ましい。これによって、平均粒径0.05〜0.7μmのα型結晶構造のAl結晶からなるα型Al層12をより容易に作製することができる。
さらに、TiCN層8の上層として形成されるAl層12について説明する。Al層12を構成するAl結晶はα型結晶構造であることが望ましく、かつ基体6の表面に対して垂直な方向から見た平均結晶幅が0.05〜0.7μmであることが
、耐摩耗性の点で望ましいものである。Al層12のすくい面2における平均粒径dArと逃げ面3における平均粒径dAfとの比(dAr/dAf)は1.1〜1.5であることが、すくい面2における耐熱性の向上の点で望ましい。なお、この構成において、切刃4における被覆層5の総厚みがすくい面2における被覆層5の総厚みと同じであることが、耐摩耗性と耐欠損性のバランスがよい点で望ましい。
また、被覆層がTiCN層8の上層としてAl層12を含んで、TiCN層8の厚みとAl層12の厚みとの比率(Al層12/TiCN層8)をRとしたとき、切刃4における比率Rcが前記すくい面における比率Rrよりも小さいことが、乾式加工におけるすくい面2での摩耗の進行を抑制できるとともに、湿式加工における切刃での境界損傷の防止ができる点で重要である。すなわち、湿式加工においては切刃の逃げ面側における境界部分に局所的な損傷が発生してこれを引き金に摩耗が進行して欠損することを緩和する。また、乾式加工においてはすくい面が高温になるのですくい面の被覆層が酸化して劣化し摩耗が進行する傾向にあるが、上記構成によれば、すくい面2には酸化しにくいAl層12が厚く形成されているので、耐酸化性が高くなる。
そして、最表層14は、Ti(C(x+y+z=1、0≦x≦0.6、0≦y≦0.6、0.2≦z≦0.8、1.0≦a≦1.7)からなり、最表層14の逃げ面3の中央部における厚みが表面粗さ(Ra)よりも小さい構成となっている。この構成により、最表層14であるTiCNO層またはTiCO層が凹凸のある表面に極薄く形成されるので、最表層14が簡単に摩滅や剥離することなく安定して存在するとともに、ねずみ鋳鉄の構成成分であるSi、Mn、Al、Cr、Mo等が酸化物となってベラーグを生成することを促し、ねずみ鋳鉄の切削加工において耐摩耗性を向上させることができる。ベラーグ生成の効果は、最表層14が切削により除去される前の最表層14が被削材によって激しく擦られる段階で特に効果が大きい。なお、最表層14は切削時に摩耗して連続した被覆層として存在しない状態となるが、最表層が残存する部分についてはベラーグ生成の効果による切削性能の向上については継続する。
ここで、逃げ面3の中央部における最表層14の厚みが0.01〜0.1μmであり、表面粗さ(Ra)が0.1〜0.5μmであることが、最表層14の耐摩耗性および耐チッピング性を高める点で望ましい。また、逃げ面3の中央部における最表層14の厚み/表面粗さ(Ra)の比率は0.2〜0.3であることが、ベラーグの生成効果による耐摩耗性向上の点で望ましい。
また、逃げ面3の中央部における最表層14の表面粗さ(Ra)がすくい面頂面(最上面)部2aにおける最表層14の表面粗さ(Ra)よりも粗いことが、すくい面2における切屑排出性を高めることができるとともに、逃げ面3におけるベラーグの生成を促進する点で望ましい。なお、すくい面2においては、表面粗さが小さくても切屑が接触することによりベラーグが生成しやすい状態にある。
さらに、切刃4における最表層14の厚みが逃げ面3の中央部における最表層14の厚みよりも薄いか、または切刃4において最表層14が存在しないものであってもよく、かかる構成であれば、鋳鉄加工特有の湯口の切削などの衝撃がかかる不連続切削において、切刃4つまりホーニング加工を施されている部分やランド部付近の最表層14に起因する
膜の破壊が起こる頻度を低減するという効果がある。
また、最表層14は白紫色から灰紫色を示すため、切削工具1の表面が有色となり切削工具1を使用したときに最表層14が摩耗して使用済みかどうかの判別がつきやすく、また、摩耗の進行を容易に確認できる。
一方、切削工具1の基体6は、炭化タングステン(WC)と、所望により周期表第4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種と、からなる硬質相を、コバルト(Co)やニッケル(Ni)等の鉄属金属からなる結合相にて結合させた超硬合金やTi基サーメット、またはSi、Al、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN)等のセラミックスのいずれかが好適に使用できる。中でも、切削工具1を切削工具として用いる場合には、基体6は、超硬合金またはサーメットからなることが耐欠損性および耐摩耗性の点で望ましい。また、用途によっては、基体6は炭素鋼、高速度鋼、合金鋼等の金属からなるものであっても良い。
(製造方法)
本実施形態のスローアウェイチップ1の製造方法の一実施形態について説明する。
まず、上述した硬質合金を焼成によって形成しうる金属炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物等の無機物粉末に、金属粉末、カーボン粉末等を適宜添加、混合し、プレス成形、鋳込成形、押出成形、冷間静水圧プレス成形等の公知の成形方法によって所定の工具形状に成形する。その後、得られた成形体を真空中または非酸化性雰囲気中にて焼成することによって上述した硬質合金からなる基体6を作製する。そして、上記基体の表面に所望によって両頭加工や外周加工等の研磨加工を施した後、切刃部のホーニング加工を施す。切刃部のホーニング加工の際、加工の最後のタイミングで砥粒の番手を上げて細かい砥粒で切刃のみを局所的に加工することにより、切刃に成長する筋状結晶の平均結晶幅をすくい面に成長する筋状結晶の平均結晶幅よりも小さくすることができる。
次に、得られた基体6の表面に化学気相蒸着(CVD)法によって被覆層を形成する。始めに、基体をCVD装置のチャンバ内にセットする。このとき、中央にネジ孔の空いた基体を串刺しにし、また、隣接する基体との間隔を近づけて基体間の間隔を調整することにより、すくい面、逃げ面および切刃に成膜される被覆層の厚みを変化させることができる。また、成膜途中または成膜終了後にチップを取り出して研磨する等により、各被覆層の厚みを調整することができる。
成膜に際しては、まず、基体の直上に1層目としてTiN層を形成する。TiN層の成膜条件としては、混合ガス組成として四塩化チタン(TiCl)ガスを0.5〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜60体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を800〜940℃(チャンバ(炉内)温度)、圧力を8〜50kPaにて成膜される。
次に、2層目としてTiCN層を形成する。ここでは、TiCN層が、平均結晶幅が小さい微粒筋状結晶層と、この層よりも平均結晶幅が大きい粗粒筋状結晶層とのMT−TiCN層と、HT−TiCN層との3層にて構成する場合の成膜条件について説明する。
MT−TiCN層のうちの微粒筋状結晶層の成膜条件は、四塩化チタン(TiCl)ガスを0.5〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜60体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.1〜0.4体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を780〜900℃、圧力を5〜25kPaとする。MT−TiCN層のうちの粗筋状結晶層の成膜条件は、四塩化チタン(TiCl)ガスを0.5〜4.0体積%、窒素(N)ガスを0〜40体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.4〜2.0体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を780〜900℃、圧力を5〜25kPaとする。
HT−TiCN層の成膜条件は、四塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜3体積%、メタン(CH)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを0〜15体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を950〜1100℃、圧力を5〜40kPaとして成膜する。そして、チャンバ内を950〜1100℃、5〜40kPaとし、四塩化チタン(TiCl)ガスを1〜5体積%、メタン(CH)ガスを4〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜30体積%、一酸化炭素(CO)ガスを4〜8体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に10〜60分導入して成膜した後、続いて体積%で二酸化炭素(CO)ガスを0.5〜4.0体積%、残りが窒素(N)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、成膜温度を950〜1100℃、5〜40kPaにて、二酸化炭素(CO)ガスを0.5〜10体積%、残りが窒素(N)ガスからなる混合ガスを反応チャンバ内に10〜60分導入することによって、HT−TiCN層を酸化させてTiCNO層に変化させながら中間層を成膜する。なお、このCOガスを含む混合ガスを流す工程を経ることなく中間層を形成することもできるが、α型Al層を構成する結晶を微細なものとするためには、COガスを含む混合ガスを流す工程を経ることが望ましい。
続いて体積%で二酸化炭素(CO)ガスを0.3〜4.0体積%、残りが窒素(N)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、成膜温度を1000〜1100℃、5〜40kPaにて、反応チャンバ内に5〜30分導入することによって、被覆層表面の表面粗さを粗くする。そして、引き続き、α型Al層を形成する。α型Al層の成膜条件としては、三塩化アルミニウム(AlCl)ガスを0.5〜5.0体積%、塩化水素(HCl)ガスを0.5〜3.5体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.5〜5.0体積%、硫化水素(HS)ガスを0〜0.5体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスをチャンバ内に導入し、成膜温度を950〜1100℃、圧力を5〜10kPaとして成膜することが望ましい。
さらに、α型Al層の上層に最表層を形成する。四塩化チタン(TiCl)ガスを1〜10体積%、メタン(CH)ガスを4〜10体積%、窒素(N)ガスを0〜60体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを反応チャンバ内に導入し、チャンバの温度を960〜1100℃、圧力を10〜85kPaとして、成膜時間を1分〜10分の間で成膜することで膜厚みを調整した後、続いて体積%で二酸化炭素
(CO)ガスを0.5〜4.0体積%、残りが窒素(N)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、成膜温度を950〜1100℃、5〜40kPaにて、反応チャンバ内に5〜30分導入することによって、HT−TiCN層を酸化させてTiCNO層に変化させながら最表層を成膜する。Tiに対する酸素の比率は、二酸化炭素(CO)ガスの濃度や酸化時間により調整する。
そして、所望により形成した被覆層の表面の少なくとも切刃部、望ましくは切刃部とすくい面を研磨加工する。この研磨加工により、切刃部およびすくい面が平滑に加工され、被削材の溶着を抑制して、さらに耐欠損性に優れた切削工具となる。
平均粒径1.5μmの炭化タングステン(WC)粉末に対して、平均粒径1.2μmの金属コバルト(Co)粉末を6質量%の割合で添加、混合して、プレス成形により切削工具形状(CNMG120412)に成形した。得られた成形体について、脱バインダ処理を施し、0.5〜100Paの真空中、1400℃で1時間焼成して超硬合金を作製した。さらに、作製した超硬合金に対して、ブラシ加工にてすくい面側について刃先処理(Rホーニング)を施した。
次に、上記超硬合金に対して、CVD法により各種の被覆層を表1に示す成膜条件、および表2に示す層構成にて形成した。そして、被覆層の表面をすくい面側から30秒間ブラシ加工して試料No.1〜7の表面被覆切削工具を作製した。
得られた工具について、走査型電子顕微鏡観察を行い、各層を構成する結晶の形状、平均粒径(または平均結晶幅)、厚みを見積もった。結果は表2に示した。また、被覆層の総厚みについては表3に示し、接触式表面粗さ計を用いて被覆層の表面粗さを測定した。さらに、被覆層の表面粗さと最表層厚みとの関係については表3に示した。
次に、このスローアウェイチップを用いて以下の切削条件にて切削試験を行った。結果は表3に示した。
(条件1)
切削方法:端面加工(旋削加工)
被削材 :FC250
切削速度:450m/分
送り :0.35mm/rev
切り込み:3.0mm
切削状態:乾式
評価方法:フランク摩耗が0.3mm以上となる時間(表中、工具寿命と記載。)とそのときの切刃の状態
(条件2)
切削方法:平面削り(フライス加工)
被削材 :FC250
切削速度:300m/分
送り :0.3mm/tooth
切り込み:2.0mm
切削状態:湿式
評価方法:チッピング等の異常損傷が起きたときの衝撃回数。とそのときの切れ刃の状態
表1〜3に示される結果から、筋状TiCN結晶の基体側より1μm高さにおける平均結晶幅がすくい面と切刃で同じである試料No.7、および筋状TiCN結晶の基体側より1μm高さにおける平均結晶幅がすくい面より切刃で太い資料No.5,6では、旋削加工およびフライス加工のどちらにおいても耐欠損性が悪いものであった。
これに対し、筋状TiCN結晶の基体側より1μm高さにおける平均結晶幅がすくい面より切刃で細い試料No.1、2、4では、耐欠損性が高く工具寿命が延びた。試料No.3は参考例を示す。
1 切削工具
2 すくい面
3 逃げ面
4 切刃
6 基体
7 TiN層
8 TiCN層
8a 微粒MT−TiCN層
8b 粗粒MT−TiCN層
8c HT−TiCN層
11 中間層
12 Al
14 最表層

Claims (3)

  1. 基体の表面にTiCN層を含む多層からなる被覆層を形成しており、前記TiCN層は筋状結晶からなるとともに、前記TiCN層のうちの前記基体側において、該基体側より1μm高さにおける平均結晶幅が、切刃においてすくい面よりも細いとともに、前記被覆層が前記TiCN層の上層としてAl 層を含み、前記TiCN層の厚みと前記Al 層の厚みとの比率(Al 層/TiCN層)をRとしたとき、前記切刃における比率Rcが前記すくい面における比率Rrよりも小さい切削工具。
  2. 前記切刃における前記被覆層の総厚みが前記すくい面における前記被覆層の総厚みと同じである請求項記載の切削工具。
  3. 前記被覆層の最表層がTi(C(x+y+z=1、0≦x≦0.6、0≦y≦0.6、0.2≦z≦0.8、1.0≦a≦1.7)層からなる請求項1または2記載の切削工具。
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