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JP5597457B2 - 歯科用組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、歯科用組成物の製造方法に関し、特に、フィラーの分散性を向上させることでフィラーの沈降を抑制させた、低粘度の歯科用組成物の製造方法に関する。
重合性単量体及び揮発性有機溶媒を含有する組成物が、歯科用途に用いられており、主として歯科用プライマー、歯科用接着剤、歯科用コーティング材等の歯科材料として使用されている。
上記歯科材料の使用方法としては、いずれも筆又はブラシにより歯質又は歯科修復材の表面に塗布され、エアーブローによって揮発性有機溶媒の大部分が除去された後に、当該歯科材料内や併用する他の歯科材料に含有される重合開始剤による重合反応により硬化される。そして、最終的には1mm以下の薄膜として形成される。したがって、上記歯科材料に用いられる組成物は、筆又はブラシでの塗布及びエアーブローによる揮発性有機溶媒の除去が容易となるために、低粘度であることが望まれる。
近年、上述の重合性単量体と揮発性有機溶媒とを含有する組成物にフィラーを配合した歯科用組成物が提案されている。フィラーを配合する目的は用途によっても異なるが、以下のような効果が挙げられている。例えば、歯科用プライマーでは、フィラーによって歯髄へと繋がる象牙細管が閉塞されるため、辺縁封鎖性を向上させる効果がある(特許文献1参照)。また、歯科用接着剤では、硬化物の機械的強度が向上することにより歯質に対する接着強さを向上させる効果がある(特許文献2及び3参照)。そして、コーティング材では、表面の耐磨耗性を向上させる効果がある(特許文献4参照)。
このような、重合性単量体、フィラー及び揮発性有機溶媒を含む組成物を調製する方法としては、全ての成分を混合した後に、攪拌羽根を備えたモーター、プラネタリーミキサー、ボールミル、アトライター、らいかい機等によりフィラーを分散させる方法が一般的である(特許文献1参照)。しかし、これらのフィラー分散方法では、保存中にフィラーの沈降が生じることがある。一般的な対策としてフィラー量を増加させることにより沈降自体は抑制されることがあるものの、劇的な粘度の上昇を伴う。その場合、筆又はブラシでの塗布が困難となり、かつ揮発成分の除去性も低下するために、臨床使用上大きな不具合が生じる。
この課題に対しては、大別して2つの対策が提案されている。1つはフィラーに別途化学的表面処理を施すことでマトリックスとフィラーとの極性を適合させる方法(例えば、特許文献2参照)であり、もう1つは特殊な手段にてフィラーを分散させる方法である。特殊な分散方法としては、例えば、フィラーを音波処理によって分散させる方法(特許文献2参照)及びフィラーを単分散状態で含有したゾルを使用する方法(特許文献4参照)などが提案されている。
特開平9−175921号公報 特表2001−511189号公報 国際公開第2005/060920号パンフレット 特開2005−154312号公報
上述の対策をとることによって、確かにフィラーの沈降抑制に効果が認められることはあるが、実際に組成物を製造すること考慮すると、それぞれ以下のような問題があった。すなわち、フィラーに化学的表面処理を施す方法は、フィラー表面状態の変化が組成物自体の特性変化を招くとともに、表面処理工程を別途製造工程に追加する必要があるため、生産性が低下してしまうという問題があった。また、特殊な分散方法を採用する場合にも同様に、別途音波処理や溶媒置換といった工程を追加する必要があるため、生産性が低下してしまうことが問題であった。更に用いる装置によっては、分散時の発熱により溶媒が蒸散するために組成変化が生じることや、製造可能となる組成物の特性、例えば粘度及びpHの範囲が限定されるといった問題もあった。
そこで本発明は、低粘度の歯科用組成物を製造するにあたり、フィラーの化学的表面処理及び特殊な分散方法を採用することなく、一般的な分散方法によってフィラーの分散性を向上させ、沈降を抑制することができる製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成した本発明は、重合性単量体(A)を含む液状成分にフィラー(B)を混合して、当該フィラー(B)が分散した中間組成物を得る工程(1)、及び
当該中間組成物に、揮発性有機溶媒(C)を混合する工程(2)
を含む歯科用組成物の製造方法である。
前記工程(1)及び/又は前記工程(2)において、重合開始剤(D)をさらに混合することが好ましい。前記工程(1)及び/又は前記工程(2)において、水(E)をさらに混合してもよい。
前記重合性単量体(A)は、酸性基含有重合性単量体を含むことが好ましい。前記フィラー(B)の平均一次粒子径は、0.001〜1μmであることが好ましい。
前記工程(1)においては、攪拌羽根を備えたモーターにより混合を行い、前記フィラー(B)を分散させることが好ましい。
前記重合性単量体(A)を含む液状成分の粘度は、30℃において0.02Pa・s以上であることが好ましい。
得られる歯科用組成物の粘度は、30℃において、0.01〜0.6Pa・sであることが好ましい。
得られる歯科用組成物の特に好適な用途は、1液型歯科用接着剤である。
本発明の製造方法によれば、低粘度の歯科用組成物を製造するにあたり、フィラーの化学的表面処理及び特殊な分散方法を採用することなく、一般的な分散方法によってフィラーの分散性を向上させ、沈降を抑制することができる。
本発明においては、フィラー(B)が分散した中間組成物をまず調製し、この中間組成物に揮発性有機溶媒(C)を混合する。揮発性有機溶媒(C)は、重合性単量体(A)を含む液状成分よりも低粘度である。したがって、本発明の製造方法では、中間組成物を調製する段階で、フィラー(B)を比較的粘度の高い液状成分に分散させる。このため、フィラー(B)を分散させる際に高い剪断力が加わり、フィラー(B)の分散性を向上させることができる。また、フィラー(B)の分散前に揮発性有機溶媒(C)を添加しなくてよいので、温度が上昇しても、揮発性成分(特に、揮発性有機溶媒(C))が蒸散するために組成変化が起こるという従来の問題が起こりにくい。以下、本発明の製造方法の各工程について詳細に説明する。
工程(1)では、重合性単量体(A)を含む液状成分にフィラー(B)を混合して、当該フィラー(B)が分散した中間組成物を得る。
本発明で用いられる重合性単量体(A)の種類には特に限定がなく、一般に歯科用途に用いられているものを用いることができ、具体的には、ラジカル重合性単量体、カチオン重合性単量体などが用いられる。
重合性単量体(A)におけるラジカル重合性単量体の具体例としては、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸から誘導されるエステル類、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体などが挙げられる。これらの中で(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく使用される。
(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体の例を以下に示す。
(1)一官能性
イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライドなどが挙げられる。
(2)二官能性
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート(2,2−ビス[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、通称BisGMA)、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、[N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート(1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−2−プロパノール)、エリスリトールジ(メタ)アクリレート(1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−2、3−ブタンジオール)などが挙げられる。
(3)三官能性以上
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、[N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボニルオキシ)プロパン−1,3−ジオール〕]テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキサヘプタンなどが挙げられる。
重合性単量体(A)におけるカチオン重合性単量体の具体例としては、カチオン重合性ビニル化合物、ラクトン類、環状エーテル類などが挙げられる。
カチオン重合性ビニル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、4−ビニルエーテルスチレン、アリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類やスチレン誘導体が挙げられる。
ラクトン類としては、γ−プロピオラクトン、ε−カプロラクトンなどの環状ラクトンが挙げられる。
環状エーテル類としては、例えば、脂環式エポキシ化合物、オキセタン化合物、スピロオルソエステル類、ビシクロオルソエステル類、環状カーボナート類などが挙げられる。
脂環式エポキシ化合物の例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート〔ユニオンカーバイド社製、商品名:UVR6105(低粘度品)及びUVR6110(低粘度品);ダイセル化学工業(株)製、商品名:CELLOXIDE2021など〕、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート〔ユニオンカーバイド社製、商品名:UVR6128〕、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド〔ダイセル化学工業(株)製、商品名:CELLOXIDE2000〕、ε−カプロラクトン変性−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート〔ダイセル化学工業(株)製、商品名:CELLOXIDE2081〕、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン〔ダイセル化学工業(株)製、商品名:CELLOXIDE3000〕などが挙げられる。
オキセタン化合物の例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテルなどが挙げられる。これらの化合物は、例えば、東亞合成化学(株)から容易に入手することができる。
また、歯質、金属、セラミックスなどの基材に対する歯科用組成物の接着性を向上させる場合、これらの基材に対する接着性を付与する機能性の重合性単量体を重合性単量体(A)に含有させることが好ましい場合がある。
機能性の重合性単量体として、酸性基含有重合性単量体は、歯質や卑金属に対して優れた接着性を呈するので好ましい。その中でも、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェートなどのリン酸基含重合性単量体、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルホスホノアセテートなどのホスホン酸基含有重合性単量体、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸などのカルボン酸基含有重合性単量体、及び2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸基含有重合性単量体がより好ましい。
機能性の重合性単量体として、硫黄原子含有重合性単量体は、貴金属に対して優れた接着性を呈するので好ましい。その中でも10−メルカプトデシル(メタ)アクリレート、6−[3−(4−ビニルベンジル)プロピルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオンがより好ましい。
さらに、機能性の重合性単量体として、例えば、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤は、セラミックス、陶材、歯科用コンポジットレジンへの接着に効果的である。
重合性単量体(A)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明の製造方法において、歯科用組成物中の重合性単量体(A)の配合量は、特に限定されない。一般的には歯科用組成物の全重量に基づいて、5〜90重量%の範囲が好ましく、7〜85重量%の範囲がより好ましく、10〜80重量%の範囲が最も好ましい。
フィラー(B)としては、無機系フィラー、有機系フィラー、及び無機系フィラーと有機系フィラーとの複合体フィラーが挙げられる。
無機系フィラーとしては、シリカ;カオリン、クレー、雲母、マイカ等のシリカを基材とする鉱物;シリカを基材とし、Al23、B23、TiO2、ZrO2、BaO、La23、SrO、ZnO、CaO、P25、Li2O、Na2Oなどを含有する、セラミックス及びガラス類が例示される。ガラス類としては、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ソーダガラス、リチウムボロシリケートガラス、亜鉛ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、バイオガラスが好適に用いられる。結晶石英、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、酸化チタン、酸化イットリウム、ジルコニア、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化イッテルビウムも好適に用いられる。
有機系フィラーとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、多官能メタクリレートの重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムが例示される。
無機系フィラーと有機系フィラーとの複合体フィラーとしては、有機系フィラーに無機系フィラーを分散させたもの、無機系フィラーを種々の重合体にてコーティングした無機/有機複合フィラーが例示される。
フィラー(B)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
フィラー(B)をシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。表面処理剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランが例示される。
組成物の塗布性及びフィラー(B)の沈降抑制の観点から、フィラー(B)の平均一次粒子径としては、0.001〜1μmであることが好ましく、0.001〜0.1μmであることがより好ましい。なお、当該平均一次粒子径は、例えば、フィラー(B)の透過電子顕微鏡(例、日立製作所製、H−800NA型)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される一次粒子(200個以上)の粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(例、マウンテック社製、Macview)を用いて解析して求めることができる。このとき、粒子の粒子径は、粒子の最長の長さと最短の長さの算術平均値として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均粒子径が算出される。
市販されている、平均一次粒子径が0.001〜0.1μmの微粒子フィラーとしては、「アエロジルOX50」、「アエロジル50」、「アエロジル200」、「アエロジル380」、「アエロジルR972」、「アエロジル130」(以上、いずれも日本アエロジル社製、商品名)などが挙げられる。
本発明の製造方法において、フィラー(B)の配合量は、歯科用組成物としての最終粘度が後述の好ましい範囲内になるように選択するのがよく、一般的には歯科用組成物の全重量に基づいて、0.1〜30重量%の範囲が好ましく、0.5〜20重量%の範囲がより好ましく、1〜10重量%の範囲が最も好ましい。
工程(1)では、フィラー(B)が分散するように、重合性単量体(A)を含む液状成分とフィラー(B)とを混合する。この分散混合は、一般的に使用されている混合装置等を用いて行えばよく、当該装置の具体例としては、攪拌羽根を備えたモーター、プラネタリーミキサー、ボールミル、アトライター、らいかい機等が挙げられ、これらのうち、簡便であることから、攪拌羽根を備えたモーターが好ましい。
分散混合時の温度としては、重合性単量体(A)を含む液状成分の融点以上沸点未満の温度であればよく、重合性単量体(A)の重合を抑制する観点から、10〜60℃が好ましい。
混合装置の操作条件(例、撹拌羽根の回転数)及び操作時間については、重合性単量体(A)を含む液状成分中にフィラー(B)が分散する限り特に制限はない。
フィラー(B)を添加する前の重合性単量体(A)を含む液状成分の粘度は、混合装置が問題なく稼動できる範囲であればよく、より高い方が分散時に高い剪断力がかかるため好ましい。具体的には、重合性単量体(A)を含む液状成分の30℃における粘度が、0.02Pa・s以上が好ましく、0.04Pa・s以上がより好ましい。当該粘度の上限は、混合装置に過度の負荷をかけない観点から、好ましくは3.0Pa・s以下であり、より好ましくは2.0Pa・s以下である。なお、当該粘度は、例えば、E型粘度計を用いて測定することができる。
工程(1)において、フィラー(B)が分散した中間組成物が得られる。工程(2)では、当該中間組成物に、揮発性有機溶媒(C)を混合する。
ここで、揮発性有機溶媒(C)とは、常圧での沸点が120℃以下であり、25℃で液体である有機溶媒のことをいい、例として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、酢酸エチル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等が挙げられる。中でも安全性及び揮発性を考慮すると、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、アセトン、メチルメタクリレートが好適に使用される。
揮発性有機溶媒(C)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明の製造方法において、歯科用組成物中の揮発性有機溶媒(C)の配合量は、歯科用組成物としての最終粘度が後述の好ましい範囲内になるように選択するのがよく、一般的には、歯科用組成物の全重量に基づいて、5〜90重量%の範囲が好ましく、7〜80重量%の範囲がより好ましく、10〜60重量%の範囲が最も好ましい。
中間組成物と揮発性有機溶媒(C)の混合は、一般的に使用されている混合装置等を用いて行えばよく、当該装置の具体例としては、攪拌羽根を備えたモーター、プラネタリーミキサー、ボールミル、アトライター、らいかい機等が挙げられ、これらのうち、簡便であることから、攪拌羽根を備えたモーターが好ましい。
したがって、工程(1)で、中間組成物を作製した容器に、揮発性有機溶媒(C)を添加し、工程(1)で用いた混合装置をそのまま用いて工程(2)を行ってよい。
混合温度としては、重合性単量体(A)を含む液状成分の融点以上沸点未満かつ揮発性有機溶媒(C)の融点以上沸点未満であればよいが、重合性単量体(A)の重合を抑制する観点から、また、揮発性有機溶媒(C)が多量に揮発することによる組成変化を防止する観点から、10〜35℃が好ましい。
混合装置の操作条件(例、撹拌羽根の回転数)及び操作時間については、中間組成物と揮発性有機溶媒(C)が混合される限り特に制限はない。
本発明の製造方法においては、工程(1)及び/又は工程(2)において、重合開始剤(D)をさらに混合してよい。このとき、得られる歯科用組成物は、重合開始剤(D)を含み、硬化性が向上する。
重合開始剤(D)としては、加熱重合開始剤、常温重合開始剤、光重合開始剤などの公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤を用いることができる。
具体的な化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、カンファーキノン、及びWO2006/016649に開示されている化合物などが挙げられる。重合開始剤(D)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
重合開始剤(D)の混合時期は、特に限定されない。したがって、工程(1)においては、液状成分とフィラー(B)の混合前に、液状成分に重合開始剤(D)を混合して、液状成分に重合開始剤(D)を含有させてもよい。また、液状成分とフィラー(B)を混合する際に、重合開始剤(D)を添加して、液状成分とフィラー(B)と重合開始剤(D)を同時に混合してもよい。また、フィラー(B)が分散した中間組成物と、重合開始剤(D)を混合してもよい。工程(2)においても、中間組成物と揮発性有機溶媒(C)を混合する際に、重合開始剤(D)を添加して、中間組成物と揮発性有機溶媒(C)と重合開始剤(D)を同時に混合してもよい。また、中間組成物と揮発性有機溶媒(C)の混合物と、重合開始剤(D)とを混合してもよい。重合開始剤(D)の混合は、段階的に行ってもよく、工程(1)及び工程(2)の両方で行ってもよい。
重合開始剤(D)は、歯科用組成物の粘度に大きく影響を与える成分ではないため、その配合量は特に限定されない。一般的には歯科用組成物の全重量に基づいて、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、0.1〜7重量%の範囲がより好ましく、0.5〜5重量%の範囲が最も好ましい。
重合開始剤(D)を混合する際の、混合装置及び混合条件については上記と同様である。
なお、歯科用組成物に重合開始剤(D)を用いる場合、硬化性を促進させるために、重合開始剤と重合促進剤とを併用することができる。したがって、工程(1)及び/又は工程(2)において、重合促進剤をさらに混合してよい。
重合促進剤としては、例えば、アミン類、スルフィン酸及びその塩、ボレート化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、銅化合物、スズ化合物、バナジウム化合物、ハロゲン化合物、アルデヒド類、チオール化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ尿素化合物などが挙げられる。
具体的な化合物としては、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、p−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、及びWO2006/016649に開示されている化合物などが挙げられる。重合促進剤は、単独で又は2種以上を混合して用いるこ とができる。
本発明の製造方法においては、工程(1)及び/又は工程(2)において、水(E)をさらに混合してよい。このとき、得られる歯科用組成物は、水(E)を含み、接着性及び接着耐久性が向上する。
水(E)としては、悪影響を及ぼすような不純物を含有していないことが好ましく、蒸留水又はイオン交換水が好ましい。
水(E)の混合時期は、特に限定されない。したがって、工程(1)においては、液状成分とフィラー(B)の混合前に、液状成分に水(E)を混合して、液状成分に水(E)を含有させてもよい。また、液状成分とフィラー(B)を混合する際に、水(E)を添加して、液状成分とフィラー(B)と水(E)を同時に混合してもよい。また、フィラー(B)が分散した中間組成物と、水(E)を混合してもよい。工程(2)においても、中間組成物と揮発性有機溶媒(C)を混合する際に、水(E)を添加して、中間組成物と揮発性有機溶媒(C)と水(E)を同時に混合してもよい。また、中間組成物と混合する前に揮発性有機溶媒(C)と水(E)を混合してもよい。また、中間組成物と揮発性有機溶媒(C)の混合物と、水(E)とを混合してもよい。水(E)の混合は、段階的に行ってもよく、工程(1)及び工程(2)の両方で行ってもよい。
本発明の製造方法において、歯科用組成物中の水(E)の配合量は、歯科用組成物としての最終粘度が後述の好ましい範囲内になるように選択するのがよく、例えば、1液型歯科用接着剤として使用する場合は、歯科用組成物の全重量に基づいて、1〜50重量%の範囲が好ましく、5〜30重量%の範囲がより好ましく、10〜20重量%の範囲が最も好ましい。
水(E)を混合する際の、混合装置及び混合条件については上記と同様である。
本発明の製造方法においては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、着色剤、抗菌剤、X線造影剤、増粘剤、蛍光剤などを必要に応じ混合してもよい。
得られる歯科用組成物の粘度(最終粘度)は、低すぎるとフィラー(B)の沈降が生じやすく、高すぎると臨床使用時における塗布性が低下して揮発性有機溶媒の蒸散が困難となるため、30℃において、0.01〜0.6Pa・sの範囲が好ましく、0.02〜0.2Pa・sの範囲がより好ましい。なお、当該粘度は、例えば、E型粘度計を用いて測定することができる。
本発明の製造方法によれば、低粘度の歯科用組成物を製造するにあたり、フィラーの化学的表面処理及び特殊な分散方法を採用することなく、一般的な分散方法によってフィラーの分散性を向上させ、沈降を抑制することができる。また、製造の際の組成変化も抑制されおり、幅広い特性の歯科用組成物を製造することができる。
本発明の製造方法にて得られる歯科組成物の用途の好適な例としては、矯正用接着剤、窩洞塗布用接着剤、歯牙裂溝封鎖材などの歯科用接着剤、歯科用接着剤や歯科用セメントの前処理に使用する歯科用プライマー、及び各種のコーティング用途、例えば、フィッシャーシーラント、歯面や歯科用補綴物への歯科用コーティング材や表面ステインや表面滑沢剤、知覚過敏抑制剤、歯科用マニキュアなどが挙げられる。これらのうち、特に好適な用途は1液型歯科用接着剤である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、略称及び略号については次の通りである。
(A)重合性単量体
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
Bis−GMA:2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
UDMA:2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
(B)フィラー(いずれも日本アエロジル社製)
無機フィラー1:アエロジルR972(平均一次粒子径:0.016μm)
無機フィラー2:アエロジル130(平均一次粒子径:0.016μm)
無機フィラー3:アエロジルOX50(平均一次粒子径:0.040μm)
(D)重合開始剤
TMDPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
(実施例1)
HEMA(40重量部)とBis−GMA(40重量部)とを混和して得た均一な液状組成物80gを300mlのビーカーに入れ、10gの無機フィラー1と混合した。攪拌羽根を備えたモーター(SMT社製、HIGH−FLEX DISPENSER HG−92)の攪拌羽根(SMT社製、丸羽根型 KO−01)を上記混合物に投入し、ビーカーの周囲を氷浴で冷却しながら、3000rpmにて3時間攪拌した(以上、工程(1))。このビーカー内にエタノール20gを添加し、100rpmにて10分攪拌し(以上、工程(2))、歯科用組成物を調製した。
(実施例2〜19)
実施例1から工程(1)及び工程(2)における攪拌条件は変更せずに、配合する成分のみを変更して、各歯科用組成物を調製した。
(比較例1)
MDP(10重量部)、HEMA(30重量部)、Bis−GMA(40重量部)及びエタノール(20重量部)を混和して得た均一な組成物100gを300mlのビーカーに入れ、10gの無機フィラー1と混合した。攪拌羽根のついたモーターの攪拌羽根を上記混合物に投入した。ビーカーの周囲を氷浴で冷却しながら、3000rpmにて3時間攪拌して歯科用組成物を得た。
(比較例2)
TMDPOを添加したこと及びフィラーの添加量を変更したことを除いて、比較例1と同様の方法にて歯科用組成物を調製した。
実施例1〜19ならびに比較例1及び2で調製した歯科用組成物の粘度及びフィラーの沈降を、それぞれ下記の粘度測定方法及び沈降評価方法により調べた。表1及び2にその結果を示す。
〔粘度測定方法〕
歯科用組成物を0.6cc採取し、その30℃における粘度を、E型粘度計(東京計器製、VISCONIC ED)を用いて測定した。
〔沈降評価方法〕
歯科用組成物を透明なサンプル管に採取して密閉し、25℃遮光下にて10日間静置する。サンプル管をゆっくりと90傾けた際に底面に沈殿物が認められた場合を×、認められなかった場合を○とする。
表1に示すように、実施例1〜19で得られた歯科用組成物は、最終粘度が0.6Pa・s以下であり、かつ10日静置後においても沈降が認められなかった。このことから、本発明の製造方法により得られた歯科用組成物は、低粘度でありながら沈降が抑制されていることがわかる。一方で、表2に示すように、比較例1で得られた歯科用組成物は、組成成分としては実施例2で得られた組成物と等しいにもかかわらず、最終粘度が高く、更に10日静置後において沈降が認められた。これは、溶媒を含んだ粘度の低い状態でフィラーを分散させたために、フィラーの分散が不十分であったことによる。また、比較例2で得られた歯科用組成物は、組成成分としては実施例3で得られた組成物と等しい。比較例2で得られた組成物は、最終粘度が高いために10日静置後における沈降は認められなかった。しかし、粘度が高いことにより塗布性が低下するため臨床使用上問題である。
Figure 0005597457
Figure 0005597457

Claims (4)

  1. 酸性基含有重合性単量体を含む重合性単量体(A)を含む液状成分にフィラー(B)を混合して、当該フィラー(B)が分散した中間組成物を得る工程(1)、及び
    当該中間組成物に、揮発性有機溶媒(C)を混合する工程(2)
    を含む1液型歯科用接着剤の製造方法であって、
    前記フィラー(B)の平均一次粒子径が、0.001〜1μmであり、
    前記工程(1)及び工程(2)の混合を、攪拌羽根を備えたモーターにより行い、
    得られる1液型歯科用接着剤の粘度が、30℃において、0.02〜0.2Pa・sである、
    製造方法
  2. 前記工程(1)及び/又は前記工程(2)において、重合開始剤(D)をさらに混合する請求項1に記載の1液型歯科用接着剤の製造方法。
  3. 前記工程(1)及び/又は前記工程(2)において、水(E)をさらに混合する請求項1又は2に記載の1液型歯科用接着剤の製造方法。
  4. 前記重合性単量体(A)を含む液状成分の粘度が、30℃において0.02Pa・s以上である請求項1〜のいずれか1項に記載の1液型歯科用接着剤の製造方法。
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