広帯域のインターネット接続サービスを提供するために光回線の普及が進んでいる。しかし、光回線の敷設には大きなコストがかかり、ある程度まとまったユーザ数を見込めなければ敷設が難しい。そこで、設備コストを抑えて広帯域のインターネット接続サービスを提供するために、ユーザに一番近いところ(ラスト1ホップ)で無線回線を利用する方法が検討されている。
このラスト1ホップの無線回線としては、ネットワーク側の基地局とユーザ宅側の端末局間で見通しがなくても通信可能なマイクロ波帯を用いることが理想である。しかし、周波数資源が枯渇しつつある現状では、マイクロ波帯においてひとつの事業者が多数の周波数チャネルを独占することは難しい。一方、広域のサービスエリアをひとつの基地局でカバーすることは困難であるため、面的にサービスエリアを広げる場合には、ひとつの基地局が円形状のセルと呼ばれるサービスエリアを構成し、そのセルを連続的に敷き詰めることで対処してきた。この際、隣接するセルが同一周波数チャネルを用いると、一般的にはセル間干渉が発生し、特性が大幅に劣化する。通常、このような問題を解決するためには、複数の周波数チャネルを用い、周波数の繰り返し割り当てを行うことで、同一周波数チャネルのセルの間隔を隔離していた。
このように、複数の周波数チャネルの繰り返し割り当てにより、同一周波数チャネルのセル間の相互干渉を抑圧することは可能であるが、利用可能な周波数チャネルが少ない場合には、必ずしも十分なレベルまで干渉を抑圧することはできない。このような問題を解決するための方法としては、非特許文献1に記載されているような、セル間の相互の干渉を抑圧するためのセル間干渉キャンセラを利用する方法が提案されている。
図8は、従来技術におけるセル間干渉キャンセラを用いた無線通信システムの構成例を示す。
図8において、101 は制御局、102-1 〜102-5 は遠隔基地局、103-1 〜103-5 は端末局、104-1 〜104-5 は同一周波数チャネルを用いるセル、105 は有線伝送路を表す。同一周波数を用いるセル104-1 〜104-5 は、これらのセルの間に存在するセルにおいて複数周波数チャネルの繰り返し利用などをすることにより、それぞれのセル104-1 〜104-5 はある程度の距離で隔離されている。すなわち、ここには着目した周波数チャネルのセル以外は記載していないが、実際にはその他の周波数チャネルを利用するセルが存在する。各セル104-1 〜104-5 に設置される遠隔基地局102-1 〜102-5 は、有線伝送路105 を介して制御局101 と接続される。制御局101 は、各遠隔基地局102-1 〜102-5 とその配下の端末局103-1 〜103-5 との無線通信を一括して管理し、各種信号処理を行う。
遠隔基地局102-1 〜102-5 および端末局103-1 〜103-5 は、図中では複数のアンテナを備え、各セル104-1 〜104-5 毎にMIMOチャネルを構成するように図示しているが、それぞれがアンテナ1本ずつのSISOチャネルを構成しても構わない。さらに、セル内にそれぞれ複数の遠隔基地局を備え、全体として複数本のアンテナを備える構成でもよい。さらに、端末局103-1 〜103-5 もセル内に複数局存在し、同時刻に同一周波数チャネルを用いて同時並行的に通信を行うマルチユーザMIMO通信を実現する構成でもよい。
制御局101 は、各遠隔基地局102-1 〜102-5 および各端末局103-1 〜103-5 との間のMIMOチャネルのチャネル情報を何らかの方法で取得可能であるとする。このチャネル情報の取得方法は、様々な文献で議論されている一般的な技術なので、ここではチャネル情報が既知であるとして詳細は省略する。
次に、無線通信システムにおける全体のチャネル行列H
all を以下のように定義する。
ここで、Nは無線通信システムを構成する同一周波数チャネルを用いるセルの総数を表す。さらに、チャネル行列Hall を構成する各成分Hi,j は、それ自体が行列を構成している。例えば、図8の例であれば5つのセルにより構成されているのでN=5であり、対角成分であるH1,1 、H2,2 、…、H5,5 はそれぞれ、セル104-1 〜104-5 の中の各基地局102-1 〜102-5 と各端末局103-1 〜103-5 との間のMIMOチャネルを表している。また、非対角成分であるi≠jに対するHi,j は、第jセル内の基地局102-j から第iセルの端末局103-i への干渉に相当するチャネル行列を表す。なお、この行列Hi,j は通信相手となる端末局毎に異なるので、その端末局に相当する添え字を付与して標記すべきであるが、ある瞬間に通信を行う対象となる端末のみに着目し、ここでは説明の都合上、端末局に相当する添え字を省略している。
ここで、非対角項の行列のノルムが対角項の行列のノルムよりも十分に小さい場合、すなわち以下の条件が成り立つとき、干渉キャンセラが有効に機能する。
以下の説明を進めるにあたり、チャネル行列H
all の対角項のみを抜き出して他をゼロ挿入した行列H
d と、非対角項のみを抜き出して対角項をゼロ挿入した行列H
ndとを以下のように定義する。
さらに、第iセルにおいて必要に応じて遠隔基地局が送信信号に乗算する送信ウエイトをW
i,i としたとき、この部分行列を対角項に配置した全体の送信ウエイト行列を以下のように定義する。
同様に、第iセルでの遠隔基地局からの送信情報をS
i 、第iセルの端末局において受信される信号をR
i 、第iセルの端末局における雑音信号をn
i とおくと、全体としては以下のように表すことができる。
式(10)の信号Tとは、送信情報に対して送信ウエイトを乗算した信号で、送信側から実際に送信されるプリコーディングされた信号と位置づけられる。ここで、送信ウエイト行列W
i,i は、自分のセル以外のセルからの干渉を無視して算出した送信ウエイトとなっているので、式(6) ではセル間干渉信号が混在した状態になっている。非特許文献1に記載の干渉キャンセラでは、この他セルからの干渉信号の総和が端末局においてどのように受信されるかを推定し、この推定した信号の逆符号の信号のレプリカを遠隔基地局において生成し、これをもとの信号に加算して送信することとしている。干渉レプリカ信号を考慮した具体的な送信信号T′は以下の式で与えられる。
ここで、式(11)は、先の送信ウエイトWの代わりに以下の換算送信ウエイトW′を算出し、送信情報Sに対しW′を乗算することで送信信号を求めることと理解できる。
図9は、従来の無線通信方法におけるダウンリンクの送信信号算出処理手順を示す。図9(a) は遠隔基地局と各端末局間で定期的に行うチャネル情報の取得処理、図9(b) は実際の送信処理を行う前段の送信準備処理、図9(c) は各ビット列を送信する際のシンボル単位での送信信号算出処理をそれぞれ表す。
図9(a) において、遠隔基地局と各端末局との間の伝搬チャネルは、時間と共に変化しているのが一般的である。そこで、所定の周期でそれぞれのチャネル情報を定期的に取得する。具体的には、処理を開始すると(S101)、チャネル情報を取得し(S102)、それを式(3) および式(4) の部分チャネル行列Hi,j として記録し(S103)、処理を終了する(S104)。本来、部分チャネル行列Hi,j は端末局毎に異なるので、その端末局に相当する添え字を付与すべきであるが、ここでは説明の都合上、省略している。
図9(b) において、送信機会を得て処理を開始すると(S111)、通信相手の端末局を選択し(S112)、メモリに記憶された当該端末局に関連した部分チャネル行列Hi,j を読み出す(S113)。さらに、対角成分の部分チャネル行列Hi,iに対する送信ウエイトWi,iを算出する(S114)。ここでの送信ウエイトは、例えばMIMO伝送における固有モード伝送のための送信ウエイトであったり、マルチユーザMIMOにおける端末局間干渉抑圧のためのヌル形成用の送信ウエイトであったり、如何なるものであっても構わない。また、特に送信ウエイトを定めずに、単なる単位行列を用いても構わない。この場合、送信ウエイトの算出処理(S114)は実効的には意味を持たない。次に、この送信ウエイトWi,i を対角成分とした送信ウエイトWに対して式(12)で示す換算送信ウエイトW′を算出し(S115) 、処理を終了する(S116)。
図9(c) において、実際にビット列に基づいたプリコーディングを行った送信信号の算出処理として処理を開始すると(S121)、送信情報Sを入力し(S122)、式(11)に従い送信情報Sに換算送信ウエイトW′を乗算し、送信信号T′を算出し(S123)、処理を終了して送信信号T′を決定する(S124)。なお、送信情報Sは、各セル毎の成分を式(7) により合成した信号ベクトルとして処理を行う。
ここで、この干渉キャンセラが有効に機能するためには式(2) の条件を満たさなければならず、もともと少ない周波数チャネルで繰り返しを行っていた場合には、十分にセル間干渉を抑圧することができなかった。
そこで、式(2) の条件を十分に満たさない環境では、さらに干渉レプリカ信号の推定精度を高めることが有効である。まず、先の式(11)で示した干渉信号をキャンセルするためのレプリカ信号は、このレプリカ信号を求める対象のセルにおいて干渉源となりうる隣接セルからの干渉信号を考慮しない場合の送信ウエイトが付加された送信信号を前提として求めていた。次に、これを拡張し、隣接する干渉源となりうるセルから式(11)で与えられる信号が送信されたことを前提に、その信号をキャンセルするためのレプリカ信号を再度算出し、その信号を減算することで近似の精度を高めることが可能となる。この場合の干渉レプリカ信号を考慮した具体的な送信信号T″は以下の式で与えられる。
なお、一般的に、N×Nの行列同士の乗算には、N3 の乗算回数が必要となる。非特許文献1にも記載されているように、全体としてのサービスエリアが広域になり、エリア全体での遠隔基地局のアンテナ数が増えるに従い、N3 に比例して乗算回数が膨大化する。すなわち、近似の精度を高めることは可能であるが、全体の行列Hall のサイズが増大した環境での適用は、回路規模が増大し、また演算の負荷が増大するために非現実的であった。
以上のダウンリンクでの信号処理に対し、アップリンクでの信号処理を簡単に説明する。アップリンクでは、各端末局側では周辺セルの遠隔基地局との間のチャネル情報も十分に把握できておらず、さらには複数のセルに存在する各端末局はそれぞれ協調して通信を行うことが困難であるため、各遠隔基地局において相互のセル間の与/被干渉を抑圧するような協調伝送は不可能である。
したがって、アップリンクにおける各セルの送信情報を式(7) と同様に定義するならば、特殊な送信ウエイトを乗算することなしに全ての端末局が信号を送信することになるために、制御局(または遠隔基地局)におけるRについて、式(6) は以下のように書き直すことができる。
ここで、H'allとは、アップリンクに相当する全体のチャネル行列である。この行列のサイズが非常に大きいことを考慮すれば、通常のMIMO通信において良好な特性を示す最大尤度検出(MLD:Maximum Likelihood Detection)法の適用は不可能である。したがって、ZF(Zero Forcing)法、最小自乗誤差(MMSE:Minimum Mean Square Error )法などを利用した信号処理が前提となる。この中で最も簡単なZF法の場合の処理内容を以下に説明する。
まず、行列H'
allがサイズN×Mの行列とすると、送信信号系統数Mよりも受信アンテナの総数Nの方が大きくないと信号分離ができないため、必然的にN≧Mの関係が成り立つ。N=Mであれば、式(14)に対し行列H'
allの逆行列を左側より乗算することにより信号検出処理が可能である。しかし、一般にはN=Mとは限らないので、行列H'
allそのものには逆行列が存在するとは限らない。この場合、行列H'allの擬似逆行列である行列
(H'
all H H'
all)
-1H'
all H
を用いる。ここで、行列H'
all H H'
allはサイズM×Mの正方行列であり、行列H'
allのランクがMであれば、行列H'
all H H'
allには逆行列が一般的に存在する。そこで式(14)に対し、擬似逆行列を左側より乗算すると、以下の式が得られる。
右辺の第2項は雑音ベクトルnの各成分を擬似逆行列のウエイトで合成した信号になっており、一般的には送信情報Sの大きさよりも十分に小さく、この結果に対して硬判定ないしは軟判定(誤り訂正処理を伴う)処理を行って求めた信号をもとに、端末局側にて送信した送信情報の推定(受信信号の検出)処理を行うことになる。
図10は、従来の無線通信のアップリンクにおける制御局および遠隔基地局の構成例を示す。
図10において、61は制御局、13は受信信号生成手段、2aはチャネル情報取得・管理手段、4aは復調部、6aは受信データ出力手段、10a 〜10i は遠隔基地局、12a 〜12c は端末局を示す。端末局12a 〜12c から制御局61への情報伝送であるアップリンクについて説明すると、端末局12a 〜12c が送信した信号を遠隔基地局10a 〜10i が受信し、それらが接続されている制御局61へ信号を転送する。制御局61は、遠隔基地局10a 〜10i が受信した信号に対し、その信号がトレーニング信号の場合にはチャネル情報取得・管理手段2aにおいて、遠隔基地局と端末局間のチャネル情報を取得し、受信ウェイトを算出して保存する。一方、受信した信号がデータ信号の場合には受信信号生成手段13において、チャネル情報取得・管理手段2aにて生成された受信ウェイトを乗算して受信信号を生成する。受信信号は復調部4aへ出力され、復調処理を行った後に受信データ出力手段6aへと出力される。
図11は、従来の無線通信方法におけるアップリンクの信号推定処理手順を示す。図11(a) は遠隔基地局と各端末局間で定期的に行うチャネル情報の取得処理、図11(b) は信号推定処理の前段の受信準備処理、図11(c) はデータの各ビット列を受信した際のシンボル単位での信号推定処理をそれぞれ表す。
図11(a) において、遠隔基地局10a 〜10i と各端末局12a 〜12c との間の伝搬チャネルは、時間と共に変化しているのが一般的である。そこで、チャネル情報取得・管理手段2aにおいて所定の周期でそれぞれのチャネル情報を定期的に取得する。具体的には、処理を開始すると(S131)、チャネル情報を取得し(S132)、それを部分チャネル行列H'i,jとして記録し(S133)、処理を終了する(S134)。本来、部分チャネル行列H'i,jは端末局毎に異なるので、その端末局に相当する添え字を付与すべきであるが、ここでは説明の都合上、省略している。なお、チャネル情報取得・管理手段2aで取得するチャネル情報は、遠隔基地局と端末局間で推定されたチャネル情報がチャネル情報取得・管理手段2aに対して定期的に出力されたものである。チャネル情報は、遠隔基地局10a 〜10i または端末局12a 〜12c により算出されて、制御局61に通知する。
次に、図11(b) において、データ受信により処理を開始すると(S141)、各セルにて遠隔基地局と端末間との間のチャネル情報を取得し(S142)、さらに図10(a) で取得した他のセルからの干渉信号に対応するチャネル情報であるセル間の部分行列H'i,jを読み出し(S143)、それらを合成して全体の行列H'allを作成する(S144)。この全体のチャネル行列に対し、式(15)により擬似逆行列を算出し(S145)、処理を終了し(S146)、受信したデータに後続する情報(ビット列)の受信信号推定処理を引き続き行う。
一般的に、受信するデータの先頭領域にはチャネル推定用のプリアンブル信号が付与されているため、処理S142において部分チャネル行列の対角項に相当するところの、着目したセル内の端末から送信され、このセル内の基地局にて受信される際の部分チャネル行列H'i,iは取得可能である。しかし、処理S143において非対角項に相当する部分チャネル行列H'i,jについてはそのシステムに依存し、必ずしも取得できるとは限らない。図11(b) の説明では、非対角項に相当する部分チャネル行列H'i,jについては、図11(a) にて説明したように実際のデータ受信とは別の機会に取得し、図11(a) の処理S133で記録した情報を処理S143で読み出して用いる場合を例にとって説明した。ただし、もしデータ受信時に非対角項に相当する部分チャネル行列H'i,jも取得可能であれば、図11(a) に記載の一連の処理は省略可能であり、処理S142の中で対角項、非対角項の全てを取得し、処理S143は省略することになる。
次に、図11(c) において、データのビット列をシンボル単位で信号推定処理を開始すると(S151)、シンボル単位の第iセルの受信信号をRi を全セルで取得し(S152)、受信信号生成手段13において式(15)に従い擬似逆行列を全体の受信信号ベクトルRの左側より乗算し、推定信号Sを算出し(S153)、信号推定処理を終了する (S154) 。
なお、雑音成分等による推定誤差を抑圧するために、処理S153には復調部4aにおける復調処理及び信号の硬判定処理、誤り訂正を含む軟判定処理などが含まれるが、これらは一般的な技術であるためここでは説明を省略する。
始めに、本発明の背景となる関連技術(特願2010−233263)について説明する。
まず、アップリンクに関するチャネル行列を再定義する。
ここで、式(19)のW’の各項におけるW'
i,iは、式(17)のH'
i,iに対する受信ウエイトであり、例えばZF法であれば
W'
i,i=H'
i,i -1
または
W'
i,i=(H'
i,i H H'
i,i)
-1H'
i,i H
で与えられる。また、最小自乗平均誤差(MMSE)基準のウエイトなど、他の如何なる方法により算出して構わない。この行列を式(14)の両辺の左側より乗算する。
ここで式(20)の右辺第3項の雑音項を無視すれば、以下のような関係式が求まる。
これを各行毎に分けて記述すれば、第i行は以下の関係式となる。
ここで、左辺のS
i に乗算されているW'
i,iH'
i,iは対角行列である。これは、受信信号に受信ウエイトを乗算したW'
i,iR
i から干渉成分である信号を推定して減算することで、セル間干渉のない場合の信号に関する情報(式(24)の左辺)が求まることを意味している。全てのi,jに対し式(24)が成立する送信情報S
i を求めることができれば、それは送信情報Sの近似解とみなすことができる。そこで、以下の処理を行う。
式(27)は送信情報Si [a]に関する漸化式となっており、初期値を式(25)で与えた後、繰り返し演算を行えば、式(2) の条件式が満たされている場合には収束解をもつことになる。以下に、関連技術について図を参照して説明する。
図5は、関連技術における制御局および遠隔基地局の構成例を示す。
図5において、1a〜1cは制御局、2a〜2cはチャネル情報取得・管理手段、3a〜3cは受信信号生成・保存手段、4a〜4cは復調部、5a〜5cは干渉除去手段、6a〜6cは受信データ出力手段、7a〜7cは周辺セル情報取得手段、8a〜8cは干渉信号レプリカ生成手段、9a〜9cは情報伝達手段、10a 〜10i は遠隔基地局、12a 〜12c は端末局を示す。
本技術の特徴は、制御局1a〜1cは、受信信号生成・保存手段3a〜3c、干渉除去手段5a〜5c、周辺セル情報取得手段7a〜7c、干渉信号レプリカ生成手段8a〜8c、情報伝達手段9a〜9cを備え、情報伝達手段9a〜9cから情報取得手段7a〜7cに有線伝送路等を介して通知される周辺セルの情報(受信信号)をもとに、干渉信号レプリカ生成手段8a〜8cにおいて干渉信号レプリカを生成し、干渉除去手段5a〜5cにおいて他セルからの干渉をキャンセルする処理を繰り返し実施するところにある。
端末局12a 〜12c から制御局1a〜1cまたは基地局への情報伝送であるアップリンクについて説明する。端末局12a 〜12c が送信した信号は遠隔基地局10a 〜10i が受信し、それぞれが接続されている制御局1a〜1cへ信号を転送する。制御局1a〜1cは、遠隔基地局10a 〜10i が受信した信号に対し、その信号がトレーニング信号の場合にはチャネル情報取得・管理手段2a〜2cに入力され、遠隔基地局と端末局間のチャネル情報を取得し、受信ウェイト等を生成して保存する。一方、受信した信号がデータ信号の場合には受信信号生成・保存手段3a〜3cに入力され、チャネル情報取得・管理手段2a〜2cにて算出されたウェイトを用いて式(25)により0次の受信信号を生成し、保存する。
干渉除去の処理を実施する際は、干渉除去手段5a〜5cを通して制御局1a〜1cが保有しているa=0を含むa次の受信信号を情報伝達手段9a〜9cによって他の制御局に向けて伝送し、同時に、該伝送された情報を周辺セル情報取得手段7a〜7cによって取得する。次に、干渉信号レプリカ生成手段8a〜8cが、取得した周辺セルの受信信号と、チャネル情報取得・管理手段2a〜2cにて保存されているチャネル情報を用いて干渉信号レプリカを生成し、干渉除去手段5a〜5cは該干渉信号レプリカと受信信号生成・保存手段3a〜3cにて保存されている0次の受信信号を用いて式(27)によりa+1次の受信信号を生成する。上記一連の処理を繰り返し実施することで、高次の推定信号を生成する。繰り返し処理を終えると、干渉除去手段5a〜5cは推定信号を復調部4a〜4cへ出力し、復調処理を行って受信データ出力手段6a〜6cへ出力する。
図6は、本発明の関連技術における干渉キャンセルを実現する信号推定処理手順を示す。図6(a) は遠隔基地局と各端末局間で定期的に行うチャネル情報の取得処理、図6(b) は信号推定処理を行う前段の受信準備処理、図6(c) はデータの各ビット列を受信した際のシンボル単位での信号推定処理をそれぞれ表す。
図6(a) において、遠隔基地局10a 〜10i と各端末局12a 〜12c との間の伝搬チャネルは、時間と共に変化しているのが一般的である。そこで、所定の周期でそれぞれのチャネル情報を定期的に取得する。具体的には、処理を開始すると(S1)、チャネル情報を取得し(S2)、それを式(16)の部分チャネル行列H'i,jとして記録し(S3)、処理を終了する(S4)。本来、部分チャネル行列H'i,jは端末局毎に異なるので、その端末局に相当する添え字を付与すべきであるが、ここでは説明の都合上、省略している。
図6(b) において、データを受信して処理を開始すると(S11)、着目したセル内の通信相手とする端末局とのチャネル情報を取得し(S12)、部分チャネル行列H'i,iとして管理する(S13)。さらに、同一セル内の基地局と端末局間での受信ウエイト行列W'i,iを部分チャネル行列H'i,iに基づいて取得し、式(26)に従って行列Gi,j を算出し(S14)、処理を終了する(S15)。そして、受信したデータに後続する情報(ビット列)の信号推定処理を引き続き行う。
ここで、図9における従来技術でも同様の説明をしたが、受信するデータの先頭領域にはチャネル推定用のプリアンブル信号が付与されているため、処理S12 において部分チャネル行列の対角項に相当するところの、着目したセル内の端末から送信されこのセル内の基地局にて受信される際の部分チャネル行列H'i,iは取得可能である。しかし、非対角項に相当する部分チャネル行列H'i,jについてはそのシステムに依存し、必ずしも取得できるとは限らない。図6(b) での説明では、非対角項に相当する部分チャネル行列H'i,jについては、図6(a) にて説明したように実際のデータ受信とは別の機会に取得し、図6(a) の処理S3で記録した情報を処理S13 で読み出して用いる場合を例にとって説明した。ただし、もしデータ受信時に非対角項に相当する部分チャネル行列H'i,jも取得可能であれば、図6(a) に記載の一連の処理は省略可能であり、処理S12 の中で対角項、非対角項の全てを取得し、処理S13 は省略することになる。
図6(c) において、データのビット列をシンボル単位で受信し、信号推定処理を開始すると(S101) 、シンボル単位の第iセルの受信信号をRi とし(S102) 、式(25)に従って着目したセルの0次の信号検出処理によりSj [0]を算出する(S103) 。次にカウンタ値aをゼロにリセットし(S104) 、周辺セルの信号Si [a]を取得し(S105) 、式(27)に従いa+1の着目したセルの推定信号Si [a+1]を算出する(S106) 。さらに、カウンタ値aに1加算し(S107) 、所定のしきい値bを超えるか否かを判断する(S108) 。ステップS108にてYes の場合、処理を終了してb次の推定信号Si [b]を決定し、復調処理へ進む(S109) 。一方、ステップS108にてNoの場合はステップS105に戻り、ステップS105からステップS108の処理を繰り返し実行する。
なお、処理S109では信号の推定処理が完了としているが、当然ながら復調処理および雑音成分等による推定誤差を抑圧するための信号の硬判定処理、誤り訂正を含む軟判定処理などが含まれることがあるが、これらの処理は一般的な技術であるためここでは説明を省略する。
ここで、ステップS105について補足すると、ここでいう周辺のセルとは、式(27)のΣで総和をとる対象のセルであり、具体的には相互の与/被干渉が無視できない所定のレベル以上のセルである。この条件は、通常は置局設計において決まるため、固定的に設定されていることが一般的であるが、逐次干渉の度合いを調査し、その時点で干渉が無視できないセルを動的に管理しても構わない。たとえば、受信電力が閾値以上のものを対象とする。また、a次の近似解として得られた推定信号Si [a]のみを近接セル同士で情報交換すればよいので、相互に通知する情報量は限定的である。
また、ステップS105からステップS108の処理をハードウエア上に回路を構成して繰り返し実行する際には、同一の回路を繰り返し利用することになるため、演算回数という意味では演算量は多少増加するが、回路規模はステップS105からステップS108の処理の繰り返し回数には依存せず、一定の回路規模のままとすることができる。
図7は、本発明の関連技術におけるセル間干渉キャンセラを用いた無線通信システムの構成例を示す。
図7において、201-1 〜201-2 は制御局、202-1 〜202-5 は遠隔基地局、203-1 〜203-5 は端末局、204-1 〜204-5 は同一周波数チャネルを用いるセル、205-1 〜205-3 は有線伝送路を表す。
本構成と図8に示す従来構成が異なるところは、全てのセル204-1 〜204-5 内の遠隔基地局202-1 〜202-5 が単一の制御局に接続されているのではなく、分散した複数の制御局201-1 〜201-2 のいずれかひとつに有線伝送路205-1 〜205-2 を介して接続され、さらに分散した複数の制御局201-1 〜201-2 の間も有線伝送路205-3 を介して接続されている点である。
例えば、着目するセル204-1 において、相互に与/被干渉が無視できないセルがセル204-2 とセル204-5 であったとする。この場合、セル204-1 内の遠隔基地局202-1 が接続された制御局201-1 では、セル204-1 内およびセル204-1 とセル204-2 /セル204-5 との間のチャネル情報を取得し、式(26)に示した行列Gi,j を算出する。さらに、実際に信号を受信する際には、式(28)におけるSi [a]を、セル204-2 の遠隔基地局202-2 が接続された制御局1-1 (実際は同一の制御局であるので、情報の伝送は不要)およびセル204-5 の遠隔基地局202-5 が接続された制御局201-2 から取得する(図6(c) のステップS105)。図6(c) のステップS105〜S108の処理を繰り返しながらこの情報交換を繰り返し、最終的にセル204-1 の推定信号Si [a]を決定する。
例えば、着目するセル204-4 において、相互に与/被干渉が無視できないセルがセル204-3 とセル204-5 であったとする。この場合、これらのセルは全て共通の制御局201-2 に接続しているので、制御局201-1 と制御局201-2 の間の有線伝送路205-3 にて情報交換は不要のように見えるが、実際には、全てのセルにおける送信信号の算出処理は同時並行的に行われるため、いずれかのセルにおいて必要となる情報は有線伝送路205-3 を介して交換し、それらを共有する。
なお、以上の関連技術では制御局が複数存在する場合について説明を行ったが、式(26)および式(27)の処理を実施すれば、必ずしも制御局は複数である必要はない。図8に示すようなひとつの制御局で集中的に信号処理を行う従来方式のような構成をとってもよい。あくまでも、本技術によれば必要な情報交換のみを行えば、分散的に複数の制御局に信号処理を分散させることが可能になり、かつ、その制御局毎の演算量を少なく抑えることが可能になるため、結果的に実現可能な回路規模に抑えることが可能となる。
また、図6(c) におけるステップS105からステップS108の処理について、ループを繰り返すことになるが、ハードウエア的にはループ毎に個別の回路を実装しても、同一回路を繰り返し利用してもどちらでも構わない。
さらに、以上の説明の中で部分チャネル行列H'i,jは行列として説明を行っていたが、単なるスカラー量も1×1の行列として理解すれば、必ずしも行列である必要はなく、部分チャネル行列H'i,jがスカラー量である場合にも拡張可能である。またこの場合、受信ウエイトWi,i も1×1の行列とみなすことが可能であり、この場合の受信ウエイト
W'i,iの算出処理とは、伝搬路上で発生する信号の減衰と位相の回転量に相当するスカラー量のH'i,iの逆数をW'i,iに設定する処理とみなすことができる。また、部分チャネル行列H'i,jはベクトルであっても、これを1×m(mは2以上の整数)の行列と理解すれば、同様の拡張は可能である。
しかし、ここに説明した関連技術は、受信信号に干渉波の成分が含まれている場合、干渉成分を含めた状態で干渉信号レプリカを生成するため、干渉をキャンセルする際にレプリカにもともと含まれている干渉成分により受信品質が劣化し、さらにはその受信品質の劣化が他のセルへと伝播してしまう問題があった。推定精度の高い受信信号を得るためには、精度の高い干渉信号レプリカを生成する必要がある。以下、本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明の実施例1における制御局および遠隔基地局の構成例を示す。本実施例1における無線通信システムの構成は図7と同様である。
図1において、1a〜1cは制御局、2a〜2cはチャネル情報取得・管理手段、3a〜3cは受信信号生成・保存手段、4a〜4cは復調部、5a〜5cは干渉除去手段、6a〜6cは受信データ出力手段、7a〜7cは周辺セル情報取得手段、8a〜8cは干渉信号レプリカ生成手段、9a〜9cは信号伝達手段、11a 〜11c は処理情報記録手段、10a 〜10i は遠隔基地局、12a 〜12c は端末局を示す。
本実施例1の特徴は、制御局1a〜1cに処理情報記録手段11a 〜11c を備え、トレーニング信号のような基地局と端末局間にて共有している既知の信号を用いて信号品質を測定し、品質の良い受信信号を優先的に用いて干渉キャンセルの処理を実施するところにある。
本実施例1では、
(1)「トレーニング信号」による干渉キャンセルの処理手順(干渉キャンセルを繰り返す回数およびそれぞれの干渉キャンセル処理でレプリカ生成のために信号を取得する対象となるセル)を定める事前処理、
(2)定められた処理手順に従って「データ信号」の干渉キャンセルを実施する処理、
の2つのステップに分けられる。
端末局12a 〜12c から制御局1a〜1cまたは基地局への情報伝送であるアップリンクの説明において、まず、(1) における信号の流れを説明する。端末局12a 〜12c が送信したトレーニング信号を遠隔基地局10a 〜10i が受信し、それぞれが接続されている制御局1a〜1cへ信号を転送する。制御局1a〜1cは、遠隔基地局10a 〜10i が受信した信号に対し、まずチャネル情報取得・管理手段2a〜2cにて遠隔基地局と端末局間のチャネル情報を取得し、受信ウェイト等を生成して保存する。次に、受信信号生成・保存手段3a〜3cにおいて、チャネル情報取得・管理手段2a〜2cにて算出されたウェイトを用いて式(25)により0次の受信信号を生成し、保存する。干渉除去手段5a〜5cはトレーニング信号の品質を測定し、品質が条件を満たす場合には信号伝達手段9a〜9cに対して他セルへの該信号伝送を指示し、これまでの処理における情報(他セルへの信号伝送を実施したか、干渉除去処理を実施したか、など)を処理情報記録手段11a 〜11c に記録し、処理を終了する。
一方、品質が条件を満たさない場合には信号伝達手段9a〜9cに対して他セルへの該信号伝送を中止するよう指示し、同時に、他セルから伝送された情報を周辺セル情報取得手段7a〜7cによって取得する。次に干渉信号レプリカ生成手段8a〜8cが、取得した周辺セルの受信信号と、チャネル情報取得・管理手段2a〜2cにて保存されているチャネル情報を用いて干渉信号レプリカを生成し、干渉除去手段5a〜5cは該干渉信号レプリカと受信信号生成・保存手段3a〜3cにて保存されている0次の受信信号を用いて式(27)によりa+1次の受信信号を生成する。そしてこれまでの処理情報を処理情報記録手段11a 〜11c に記録する。上記一連の処理を、トレーニング信号の品質が条件を満たすか、もしくは所定の繰り返し回数に達するまで繰り返し実施し、データ信号における干渉キャンセル処理の手順を処理情報記録手段11a 〜11c に記録していく。
次に、(2) におけるデータ信号に対する干渉キャンセル処理について説明する。端末局12a 〜12c が送信したデータ信号を遠隔基地局10a 〜10i が受信し、それぞれが接続されている制御局1a〜1cへ信号を転送する。制御局1a〜1cは遠隔基地局10a 〜10i が受信した信号に対し、受信信号生成・保存手段3a〜3cにおいて、チャネル情報取得・管理手段2a〜2cにて算出されたウェイトを用いて式(25)により0次の受信信号を生成し、保存する。次に、処理情報記録手段11a 〜11c を参照し、a+1次の推定信号を生成するか否かの繰り返し処理の判断を行う。繰り返し処理を実施しない場合、すなわち信号の品質が条件を満たす場合には、信号伝達手段9a〜9cに対して他セルへの該信号伝送を指示し、推定信号を復調部4a〜4cへ出力し、復調処理を行い、受信データ出力手段6a〜6cへ出力することで処理を終了する。
一方、繰り返し処理を実施する場合、すなわち信号の品質が条件を満たさない場合には、信号伝達手段9a〜9cに対して他セルへの該信号伝送を中止するよう指示し、同時に、他セルから伝送された情報を周辺セル情報取得手段7a〜7cによって取得する。次に、干渉信号レプリカ生成手段8a〜8cが、取得した周辺セルの受信信号と、チャネル情報取得・管理手段2a〜2cにて保存されているチャネル情報を用いて干渉信号レプリカを生成し、干渉除去手段5a〜5cは該干渉信号レプリカと受信信号生成・保存手段3a〜3cにて保存されている0次の受信信号を用いて式(27)によりa+1次の推定信号を生成する。このように、上記一連の処理を、処理情報記録手段11a 〜11c を参照しながら繰り返し実施し、繰り返し処理を終えると、干渉除去手段5a〜5cは推定信号を復調部4a〜4cへ出力し、復調処理を行い、受信データ出力手段6a〜6cへ出力することで処理を終了する。
図2は、本発明の実施例1における信号品質を考慮した干渉キャンセルを実現する信号推定処理フローを示す。図2(a) は遠隔基地局と各端末局間で定期的に行うチャネル情報の取得処理、図2(b) は信号推定処理の前段の受信準備処理、図2(c) はトレーニング信号を用いてデータ信号に対する干渉キャンセルの処理手順を決定する準備処理をそれぞれ表す。図2(a) および(b) における処理は、図6に示すフローと同様であるため、ここでは説明を省略する。
図2(c) において、トレーニング信号を受信し、シンボル単位として処理を開始すると(S21)、第iセルの受信トレーニング信号をRi とし(S22)、式(25)に従い自セルの0次の信号検出処理によりSi [0] を算出し(S23) 、カウンタ値a をゼロにリセットし(S24)、繰り返し処理を開始する。
次にSi [a]の信号品質を測定し(S25)、測定した信号品質が条件を満たすかを判別する(S26)。ここで、信号品質とは、たとえばEVM(Error Vector Magnitude)を用いる。EVMとは、受信シンボルの基準点との差を示す値である。条件としてある値を閾値として定め、トレーニングシンボルの基準点との差からEVMを測定し、測定したEVMが閾値よりも小さい場合には条件を満たすこととすればよい。その他、SNR(Signal to Noise Power Ratio )やSINR(Signal to Interference and Noise Power Ratio)、BER(Bit Error Rate)など、いかなる手段を信号品質の指標として用いて構わない。ステップS26 にてYes の場合、Si [a]を周辺のセルへ伝送し(S27)、a次の干渉キャンセル処理においてSi [a]を利用可能であることを情報として記録し(S28)、干渉キャンセルの準備処理を完了する(S36)。一方、ステップS26 にてNoの場合にはSi [a]の周辺セルへの情報伝送を停止し(S29)、周辺セルjの信号Sj [a]を取得する(S30)。このとき、周辺セルjにおいてもステップS26 を実施し、測定した信号品質に応じて信号の伝送/停止を実施しているため、セルiが取得する周辺セルjの信号Sj [a]はそれらの信号品質が条件を満たすもののみとなっている。
次に、取得した周辺セルの信号から干渉信号レプリカを生成する(S31)。そして式(27)に従いa+1次の自セルの推定信号Si [a+1]を算出し(S32)、a次の干渉キャンセル処理における処理情報を記録する(S33)。さらにカウンタ値aに1加算し(S34)、所定のしきい値bを超えるか否かを判断する(S35)。ステップS35 にてYes の場合、a次の推定信号Si [a]を決定して干渉キャンセルの準備処理を完了する(S36)。一方、ステップS35 にてNoの場合、ステップS25 に戻り、ステップS25 からステップS35 の処理を繰り返し実行する。
上記の動作により、トレーニング信号を用いてその品質を測定しながら干渉キャンセルに用いる信号を取捨選択し、干渉キャンセルの処理手順を記録する。ここで、図6(a) における関連技術でも同様の説明をしたが、受信するデータの先頭領域にはチャネル推定用のプリアンブル信号が付与されているため、それを用いて上記の動作を実施しても構わないし、別の機会を用いてトレーニング信号を送受信して実施しても構わない。
本動作の後、データ信号に対して干渉キャンセル処理を実施するが、図6(c) に示す処理フローにおいて、ステップS28 もしくはステップS33 にて記録した処理ないしは情報に従い、周辺セルに対して情報を伝送、もしくは周辺セルの情報を取得し、干渉キャンセル処理を実施する。
また、ここで選択された干渉キャンセル処理に用いる周辺セルの信号は、ステップS26 において十分に品質が良く、条件を満たすものとして判別されているため、当該信号から干渉信号レプリカを生成したとしても干渉の成分は小さい。すなわち、干渉成分の小さい信号から優先的に干渉キャンセル処理を実施することになる。これにより干渉成分が支配的である受信信号から新たに干渉信号レプリカを生成することによる干渉の伝播を抑制することが可能になる。
さらに、以降の繰り返し処理において当該セルからの信号を取得する必要がなくなるため、基地局ないしは制御局において交換する情報量を削減することが可能となる。
図3は、本発明の実施例2における制御局および遠隔基地局の構成例を示す。本実施例2における無線通信システムの構成は図7と同様である。
図3において、1a〜1cは制御局、2a〜2cはチャネル情報取得・管理手段、3a〜3cは受信信号生成・保存手段、4a〜4cは復調部、5a〜5cは干渉除去手段、6a〜6cは受信データ出力手段、7a〜7cは周辺セル情報取得手段、8a〜8cは干渉信号レプリカ生成手段、9a〜9cは信号伝達手段、13a 〜13c はビット誤り検出手段、10a 〜10i は遠隔基地局、12a 〜12c は端末局を示す。
本実施例2の特徴は、制御局1a〜1cにビット誤り検出手段13a 〜13c を備え、復調されたデータの誤りを検出し、誤りが検出されなかった場合には周辺セルに対し情報伝送するとともに干渉キャンセルの繰り返し処理を終了し、また誤りが検出された場合には周辺セルへの情報伝送を停止し、誤りの無い周辺セルの信号を用いて干渉キャンセルの処理を実施するところにある。
端末局12a 〜12c が送信したデータ信号を遠隔基地局10a 〜10i が受信し、それぞれが接続されている制御局1a〜1cへ信号を転送する。制御局1a〜1cは、遠隔基地局10a 〜10i が受信した信号において、トレーニング部に対してはチャネル情報取得・管理手段2a〜2cにて遠隔基地局と端末局間のチャネル情報を取得し、受信ウェイト等を生成して保存する。次に、トレーニング部およびデータ部を含む受信信号に対して、シンボル毎に受信信号生成・保存手段3a〜3cにおいて、チャネル情報取得・管理手段2a〜2cにて算出されたウェイトを用いて式(25)により0次の受信信号を生成し、保存する。干渉除去手段5a〜5cは、受信信号のシンボルをあるビット列単位分をまとめて復調部4a〜4cへ出力して復調処理を行い、復調されたデータビット列をビット誤り検出手段13a 〜13c へと出力する。ビット誤り検出手段13a 〜13c はデータビット列に対して誤り検出演算を行い、誤りがなければ信号伝達手段9a〜9cに対して他セルへの該信号伝送を指示し、受信データ出力手段6a〜6cへ出力した後に受信データ出力手段6a〜6cへ出力し、処理を終了する。
一方、誤りがあれば信号伝達手段9a〜9cに対して他セルへの該信号伝送を中止するよう指示し、同時に、その結果を干渉除去手段5a〜5cへフィードバックし、干渉除去の処理を実施する。干渉除去の処理を実施する際は、干渉除去手段5a〜5cを通して制御局が保有しているa=0を含むa次の受信信号を信号伝達手段9a〜9cによって他の制御局に向けて伝送し、同時に、該伝送された情報を周辺セル情報取得手段7a〜7cによって取得する。次に干渉信号レプリカ生成手段8a〜8cが、取得した周辺セルの受信信号と、チャネル情報取得・管理手段2a〜2cにて保存されているチャネル情報を用いて干渉信号レプリカを生成し、干渉除去手段5a〜5cは該干渉信号レプリカと受信信号生成・保存手段3a〜3cにて保存されている0次の受信信号を用いて式(27)によりa+1次の受信信号を生成する。
上記干渉除去の処理はデータビット列を構成するシンボル群毎に行い、一連の処理を繰り返し実施することで、高次の推定信号を生成する。繰り返し処理を終えると、干渉除去手段5a〜5cは推定信号を復調部4a〜4cへ出力して復調処理を行い、ビット誤り検出手段13a 〜13c による誤り検出を行い受信データ出力手段6a〜6cへ出力する。
図4は、本発明の第2の実施例における信号品質を考慮した干渉キャンセルを実現する受信信号検出処理フローを示す。図4(a) は遠隔基地局と各端末局間で定期的に行うチャネル情報の取得処理、図4(b) は信号推定処理の前段の受信準備処理、図4(c) はデータを受信後の各ビット列を受信した際の受信信号検出処理をそれぞれ表す。図4(a) および(b) における処理は、図6に示すフローと同様であるため、ここでは説明を省略する。
図4(c) において、データをあるビット列単位で受信し信号検出処理を開始すると(S41)、一定のビット列長を構成する複数の第iセルの受信信号(受信シンボル)をRi(u)とし(S42)、式(25)に従い自セルの0次の信号検出処理により推定信号Si [0]をシンボル数分算出し、推定信号Ti [0]を構成する(S43) 。そしてカウンタ値aをゼロにリセットし(S44)、繰り返し処理を開始する。
まず、Ti [a]を復調し、データビット列として出力し、その出力データに対しビット誤り検出演算を行い、誤り検出を行う(S45)。ここで、ビット誤り検出にはCRC(巡回冗長検査)や、パリティチェック、チェックサム方式など、さまざまな手法がある。また、Ti [a]の復調処理は、受信信号に対し誤り訂正符号化が行われている場合にはその復号処理も伴う。次に、ビット誤り検出の結果に誤りが検出されたかどうかを判断し(S46)、ステップS46 にてNoの場合、周辺セルに対してTi [a]を構成する信号Si [a]を伝送し(S47)、復調したデータビット列を出力し、信号検出処理を完了する(S56)。
一方、ステップS46 にてYes の場合には、周辺セルへの信号伝送を停止し(S48) 、周辺セルjの信号Sj [a]を取得し(S49)、干渉信号レプリカを生成する(S50)。そして式(27)に従い、a+1次の自セルの推定信号Si [a+1]をシンボル数分算出し(S51)、Si [a+1]からTi [a+1]を再構成する(S52) 。次に、カウンタ値aに1加算し(S53)、所定のしきい値bを超えるか否かを判断する(S54)。ステップS54 にてYes の場合、b次の推定信号Ti [b] を決定して復調を行い受信データビット列として出力し(S55)、信号検出処理を完了する(S56)。一方、ステップS54 にてNoの場合、ステップS45 に戻り、ステップS45 からステップS53 の処理を繰り返し実行する。
上記の動作により、繰り返し処理の途中に受信信号に誤りが無いと判定された場合にはその処理を中断するため、演算量を削減することが可能になる。
また、繰り返し処理の途中に受信信号に誤りがあると判定された場合には周辺セルへの情報伝送を停止するため、誤り、すなわち干渉成分を含まない信号から優先的に干渉キャンセル処理を実施することになる。これにより、干渉成分を含む受信信号から新たに干渉信号レプリカを生成することによる干渉の伝播を抑制することが可能になる。
さらに、以降の繰り返し処理において当該セルからの信号を取得する必要がなくなるため、基地局ないしは制御局において交換する情報量を削減することが可能となる。