JP5591278B2 - 複数段を備えた遊星歯車型の増減速機 - Google Patents
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Description
この遊星歯車式増減速機は、各歯車や各構成部品等を動力伝達の入出力要素として自由に選定することが可能であって、変速比の設定の自由度が大きい。また、入力軸と出力軸が同心状に配置されるので、動力伝達装置の配置設計が容易であり、多段にして変速比を増大することも容易である。
図8の遊星歯車式増減速機は、太陽歯車SGを設けた入力軸ISと、リング歯車RGが設けられた固定のハウジングHGとを備えており、A−A断面矢視図に示すとおり、太陽歯車SGとリング歯車RGとの間には、両方の歯車と噛み合う3個の遊星歯車PGが配置される。遊星歯車PGの各々は、キャリアCRに一体的に立設された支持軸SSに嵌め込まれ、回転可能に軸支される。キャリアCRの支持軸SSの反対側には、入力軸ISの太陽歯車SGと同一形状の太陽歯車が形成され、入力軸ISの太陽歯車SGとキャリアCRとにより1段目の減速機が構成される。同様の構成がB−B断面図の左方に向けて順次繰り返され、最終段(3段目)の減速機のキャリアには、出力軸OSが設けられている。なお、リング歯車RGは、全ての段の遊星歯車が噛み合う共通の歯車であって、ハウジングHGの軸方向のほぼ全長に亘って延びる内歯歯車となっている。
太陽歯車回転数/キャリア回転数=1+(リング歯車の歯数/太陽歯車の歯数)
によって決定される。キャリアCRには次の段の太陽歯車が設けられていて次の段でも同様な減速が行われ、出力軸OSの最終的な変速比(減速比)は、単段の変速比を段の数だけ乗じたものとなる。
しかし、この構造では、遊星歯車を担持するキャリアが出力軸となって回転する。回転するキャリアが振れたり傾いたりすると、遊星歯車とこれを嵌め込む支持軸との間や遊星歯車と噛み合う歯車同士の間の摩擦による抵抗が増加し、入出力軸間における動力伝達損失の増大を招く。
本発明の課題は、遊星歯車機構を複数段組み合わせた小型の変速装置において、回転軸の搖動等を防止して各歯車の摩擦を低減し、特に、増速機としての作動を円滑化することにある。
「中心に設置された太陽歯車と、その周囲に設けられた内歯歯車からなるリング歯車と、前記太陽歯車及び前記リング歯車に噛み合う遊星歯車とにより遊星歯車機構を構成し、この遊星歯車機構をハウジングの内部に複数段組み合わせた増減速機であって、
前記遊星歯車機構には、前記遊星歯車を軸支する支持軸が設けられ、前記ハウジングに固定された円板状のキャリアと、前記リング歯車及び前記太陽歯車が設けられた円板状の回転作動子とが隣接して配置されており、さらに、
複数段の前記遊星歯車機構において、前記キャリアが、外周に突起を有する同一形状に形成されるとともに、前記ハウジングの内面には前記突起を嵌め込む溝が軸方向に延びるよう形成され、
前記リング歯車が前記回転作動子の一方の面の周縁部に設けられるとともに、前記太陽歯車が他方の面に形成された作動子中心軸に設けられ、
前記回転作動子は、その他方の面が全面的に前記キャリアの支持軸と反対側の面に当接してスラスト方向に軸受され、かつ、作動子中心軸が前記キャリアに形成された中心孔に嵌め込まれてラジアル方向に軸受されており、
前記増減速機の一端に置かれた前記遊星歯車機構の前記太陽歯車には太陽歯車連結軸が設けられ、他端に置かれた前記遊星歯車機構の前記リング歯車にはリング歯車連結軸が設けられている」
ことを特徴とする増減速機となっている。
また、ヒンジ式の回転ドア等の開閉速度を低下させる作動速度低減装置にも適用することができる。この場合には、請求項4に記載のように、「前記リング歯車連結軸に作動対象の部材が連結されるとともに、前記ハウジングが固定され、かつ、前記太陽歯車連結軸には、その軸の回転に抵抗を付与する抵抗付与手段が設置されている作動速度低減装置」として構成される。この作動速度低減装置においては、請求項5に記載のように、前記太陽歯車連結軸の回転数が所定値を超えたときに抵抗を付与する構成とすることもできる。
太陽歯車回転数/リング歯車回転数=−(リング歯車の歯数/太陽歯車の歯数)
そして、増減速機の一端に置かれた遊星歯車機構の太陽歯車には太陽歯車連結軸が設けられ、他端に置かれた遊星歯車機構のリング歯車にはリング歯車連結軸が設けられる。太陽歯車連結軸とリング歯車連結軸とは、本発明の増減速機の入出力軸となるものであり、その間の変速比は、上記の単段の変速比を段の数だけ乗じたものとなり、また、その間のトルク比は変速比の逆数となる。
このように、本発明の遊星歯車機構における各歯車等の回転部材は、安定的に回転し摩擦抵抗が非常に小さなものとなる。そのため、増減速機における動力伝達損失が低減すると同時に、リング歯車連結軸を入力軸とし太陽歯車連結軸を出力軸として、増減速機を増速機として作動させるときも円滑な増速が実現される。
こうした構成において駆動側から従動側へ動力を伝動する場合、伝動されるトルクが小さいときには、リング歯車連結軸が回転すると、永久磁石と磁性材料との吸引力などによって太陽歯車連結軸とハウジングとが連れ回ることとなり、ハウジングは実質的にリング歯車連結軸と一体化されて従動側に動力を伝動する。これに対し、伝動されるトルクが大きく、ハウジングと太陽歯車連結軸との間の伝達トルクが所定値を超える場合には、永久磁石の吸引力などによる連れ回りが不能となって、太陽歯車連結軸がハウジングに対し空回りを起こし動力の伝動が遮断される。このトルクリミッタでは、本発明の増減速機が増速機として用いられるため、トルク制限手段が設置される太陽歯車連結軸のトルクは、リング歯車連結軸のトルクよりも大幅に減少している。したがって、トルク制限手段が小型なものであっても、大きなトルクを伝動する動力伝達系に使用することが可能である。
請求項5の発明は、請求項4の作動速度低減装置において、太陽歯車連結軸の回転数が所定値を超えたとき(つまり、作動対象の部材の速度が一定値を超えたとき)に抵抗を付与する構成としたものである。このような作動は、太陽歯車連結軸の回転数に応じて外方に広がる遠心式錘等を使用して実現できる。
請求項6の遠心クラッチでは、遠心式クラッチ手段が小型なものであっても、大きなトルクを伝動する動力伝達系に使用することが可能である。また、入力軸の回転数が増速された個所でクラッチの断・接が行われるため、遠心クラッチにおいて、動力が断・接される回転数の精度が向上する。
図1のB−B断面図に示すように、本発明の増減速機は、ハウジング1内に前方から後方にかけて(便宜上、図の右方を前方、左方を後方とする)遊星歯車機構を複数段(この実施例では3段)組み合わせて収容した変速装置である。各段の遊星歯車機構は、A−A断面矢視図に示すとおり、中心に設置された太陽歯車SGと、その周囲に設けられた内歯歯車からなるリング歯車RGと、これらの歯車に噛み合う3個の遊星歯車PGとを備えている。増減速機の前端には、1段目の遊星歯車機構の太陽歯車SGを形成した太陽歯車連結軸2が設置され、この軸は、ハウジング1の前端壁部の中央孔11(図2参照)に嵌め込まれ、ラジアル方向に軸受されるとともに、外周に設けられたフランジ部がハウジング1の前端壁部に当接してスラスト方向にも軸受される。
増減速機の後端には、最終段の遊星歯車機構のリング歯車RGが配置され、これは、後端に配置されるリング歯車連結軸5(図1参照)に形成される。リング歯車連結軸5は、太陽歯車が形成されていない点を除いて、ほぼ回転作動子4と同様な構造を備え、周縁部にリング歯車RGが形成された円板状の部分を有している。リング歯車連結軸5は、円板状の部分の背面が、ハウジング1の後端に嵌め込まれて開口部をシールドする円板状の蓋体6に当接し、かつ、中心の軸部分が蓋体6の中央孔に挿入されてスラスト方向とラジアル方向に軸受けされる。
増減速機の前端の太陽歯車連結軸2が回転し、これに形成された1段目の遊星歯車機構の太陽歯車SGが回転すると、キャリア3の支持軸31に嵌め込まれた遊星歯車PGがアイドラ歯車となって、リング歯車RGを回転駆動する。この実施例では、リング歯車RGの歯数が太陽歯車SGの歯数の3倍に設定されていて、リング歯車RGの回転数は、減速されて太陽歯車の回転数の1/3となり、これが単段の遊星歯車機構の変速比となる。増減速機には3段の遊星歯車機構が組み合わされているので、後端のリング歯車連結軸5の回転数は、太陽歯車連結軸2の回転数の1/27に減速される。
ちなみに、この実施例の各歯車は、サイクロイド歯型曲線を基本とする、歯の強度の高いサイクロイド歯車となっている。遊星歯車機構のリング歯車RGの回転方向は、太陽歯車SGと逆方向になるが、2個の歯車を組み合わせたいわゆる二重遊星歯車を各遊星歯車に採用して、同一方向としてもよい。
特に、リング歯車連結軸5を入力軸とし太陽歯車連結軸2を出力軸として、増減速機を増速機として作動するときは、入力軸には出力軸のトルクが増幅されて作用するが、本発明の増減速機では、各回転部材が搖動等を生じることなく安定的に回転する結果、円滑な動力伝達と増速作動を実現できる。
図5のトルクリミッタでは、本発明の増減速機のハウジング1にフランジ部1Fが設けてあり、フランジ部1Fは、伝動歯車TGにネジにより固着される。伝動歯車TGは、負荷側に動力を伝動する従動歯車DGに噛み合っており、リング歯車連結軸5は、負荷を駆動するモーター(図示せず)に連結される。そして、ハウジング1と太陽歯車連結軸2との間には、マグネット式トルク制限手段TLが設置され、これは、太陽歯車連結軸2に固定された永久磁石とハウジング1に固定した磁性材料とを対向させたものとなっている。
このトルクリミッタ装置においては本発明の増減速機が増速機として用いられ、トルク制限手段TLが設置される太陽歯車連結軸2のトルクは、リング歯車連結軸5のトルクよりも大幅に減少している。したがって、トルク制限手段TLが小型なものであっても、大きなトルクを伝達する動力伝達系に使用することが可能である。なお、この実施例では、トルク制限手段としてマグネット式のものを用いているが、ハウジングと太陽歯車連結軸との間にばねを介在させるなど、別のトルク制限手段を採用してもよい。
図6の作動速度低減装置では、ヒンジ式回転ドア等の作動対象部材をリング歯車連結軸5に連結するとともに、ハウジング1を固定して、太陽歯車連結軸2には、回転速度が所定値に達すると軸の回転に抵抗を付与する遠心式抵抗付与手段CLを設置する。遠心式抵抗付与手段CLは、A−A断面矢視図に示すように、アームAMの先端に断面円形のゴム体RBを固定するとともに、アームAMの根元を太陽歯車連結軸2に固定のボス部に枢着し、かつ、アームAMとボス部との間に引張りばねSPを設置したものである。
図6の作動速度低減装置は、所定の回転速度を超えたときに摩擦抵抗が働き速度を低減させるものであるが、その他の抵抗付与手段(図5のトルク制限手段と同様なものでもよい)を設けて、常時抵抗トルクを付与することもできる。そして、作動速度低減装置に本発明の増減速機を利用することにより、抵抗付与手段が小型なものであっても、作動対象の部材に大きな抵抗トルクを与えることが可能となる。
図7に示すとおり、この遠心クラッチでは、図の左方の、リング歯車連結軸5が入力軸となり増速機として作動する一方の増減速機と、図の右方の、リング歯車連結軸5´が出力軸となり減速機として作動する他方の増減速機とをいわば背中合わせに配置し、両方の増減速機のハウジング1、1´に形成したフランジ部を突き合わせて組み合わせている。中央部には、増速機の太陽歯車連結軸2と減速機の太陽歯車連結軸2´との間を接続又は遮断する遠心式クラッチ手段CCが設けてある。
この遠心クラッチでは、遠心式クラッチ手段CCが小型なものであっても、大きなトルクを伝動する動力伝達系に使用することが可能であると同時に、クラッチの断・接が、入力軸であるリング歯車連結軸5の回転数が増速された太陽歯車連結軸2において行われるため、動力伝達が断・接される回転数の精度が向上することとなる。
12 溝
2 太陽歯車連結軸
3 キャリア
31 支持軸(遊星歯車の)
32 突起
33 中心孔
4 回転作動子
41 作動子中心軸
SG 太陽歯車
PG 遊星歯車
RG リング歯車
Claims (6)
- 中心に設置された太陽歯車と、その周囲に設けられた内歯歯車からなるリング歯車と、前記太陽歯車及び前記リング歯車に噛み合う遊星歯車とにより遊星歯車機構を構成し、この遊星歯車機構をハウジングの内部に複数段組み合わせた増減速機であって、
前記遊星歯車機構には、前記遊星歯車を軸支する支持軸が設けられ、前記ハウジングに固定された円板状のキャリアと、前記リング歯車及び前記太陽歯車が設けられた円板状の回転作動子とが隣接して配置されており、さらに、
複数段の前記遊星歯車機構において、前記キャリアが、外周に突起を有する同一形状に形成されるとともに、前記ハウジングの内面には前記突起を嵌め込む溝が軸方向に延びるよう形成され、
前記リング歯車が前記回転作動子の一方の面の周縁部に設けられるとともに、前記太陽歯車が他方の面に形成された作動子中心軸に設けられ、
前記回転作動子は、その他方の面が全面的に前記キャリアの支持軸と反対側の面に当接してスラスト方向に軸受され、かつ、作動子中心軸が前記キャリアに形成された中心孔に嵌め込まれてラジアル方向に軸受されており、
前記増減速機の一端に置かれた前記遊星歯車機構の前記太陽歯車には太陽歯車連結軸が設けられ、他端に置かれた前記遊星歯車機構の前記リング歯車にはリング歯車連結軸が設けられていることを特徴とする増減速機。 - 前記太陽歯車連結軸が、前記ハウジングの軸方向の一端に形成した壁部にラジアル方向に軸受され、かつ、前記リング歯車連結軸が、前記ハウジングの軸方向の他端に嵌め込んだ蓋体に、スラスト方向及びラジアル方向に軸受される請求項1に記載の増減速機。
- 請求項1又は請求項2に記載の増減速機を備えたトルクリミッタであって、
前記リング歯車連結軸に動力伝達系の駆動側が連結されるとともに、前記ハウジングに動力伝達系の従動側が連結され、かつ、前記ハウジングと前記太陽歯車連結軸との間には、伝達トルクが所定値以下のときに動力伝達を可能とするトルク制限手段が設置されるトルクリミッタ。 - 請求項1又は請求項2に記載の増減速機を備えた作動速度低減装置であって、
前記リング歯車連結軸に作動対象の部材が連結されるとともに、前記ハウジングが固定され、かつ、前記太陽歯車連結軸には、その軸の回転に抵抗を付与する抵抗付与手段が設置されている作動速度低減装置。 - 前記抵抗付与手段は、前記太陽歯車連結軸の回転数が所定値を超えたときに抵抗を付与する請求項4に記載の作動速度低減装置。
- 請求項1又は請求項2に記載の増減速機を備え、入力軸の回転数が所定値を超えたときに出力軸に動力を伝達する遠心クラッチであって、
前記遠心クラッチは、入力軸となる前記リング歯車連結軸から前記太陽歯車連結軸を増速して回転させる一方の前記増減速機と、出力軸となる前記リング歯車連結軸を前記太陽歯車連結軸から減速して回転させる他方の前記増減速機とを有しており、
一方の前記増減速機の前記太陽歯車連結軸と他方の前記増減速機の前記太陽歯車連結軸とが中央部に対向して配置され、かつ、両方の前記太陽歯車連結軸の間には、一方の前記増減速機における前記太陽歯車連結軸の回転数が所定値を超えたときに、他方の前記増減速機における前記太陽歯車連結軸に動力伝達を可能とする遠心式クラッチ手段が設置されている遠心クラッチ。
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