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JP5591044B2 - 水性塗料組成物 - Google Patents

水性塗料組成物 Download PDF

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JP5591044B2 JP2010216345A JP2010216345A JP5591044B2 JP 5591044 B2 JP5591044 B2 JP 5591044B2 JP 2010216345 A JP2010216345 A JP 2010216345A JP 2010216345 A JP2010216345 A JP 2010216345A JP 5591044 B2 JP5591044 B2 JP 5591044B2
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Description

本発明は、水性塗料組成物及び該水性塗料組成物を用いた塗膜形成方法に関する。
自動車、電気製品等の外板に塗装される上塗り塗料には、高級な意匠感をもつ上塗り塗膜を形成することができることが求められており、この要望に応えるものとして、アルミニウム顔料を含有する塗料が開発されている。
一般に、上記アルミニウム顔料は、薄板状なりん片状の形状を有しており、塗膜内で被塗物の面に平行になるように配向し、キラキラとした輝きを持つとともに、見る方向によって色調が変化し、独特の意匠性を呈する塗膜を形成する。
従来、アルミニウム顔料を含有する塗料としては、有機溶剤型塗料が多く用いられていたが、塗装塗膜焼付け時の有機溶剤の揮散による環境汚染のため、最近は、環境汚染の少ない水性塗料の採用が進んでいる。
しかしながら、アルミニウム顔料を含む水性塗料は、アルミニウム顔料が塗料中の多量の水と接触して腐食し、水素ガスが発生するという問題がある。
この問題を解決するために、上記アルミニウム顔料として、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料を使用することが提案されている。
例えば、特許文献1には、アルミニウムフレーク表面がアルミニウムに対してモリブデン金属換算量で0.1〜10重量%のモリブデン酸被膜で被覆した粒子構造を有する水性アルミニウム顔料が記載されている。
また、特許文献2には、アルミニウムフレーク表面上に、アルミニウムに対してモリブデン金属換算量で0.1〜10重量%のモリブデン酸被膜を有し、かつ該被膜の上にアルミニウムに対してリン元素換算量で0.05〜1重量%の無機燐酸もしくはその塩類又は燐酸基を1つ有する有機燐酸エステルもしくはその塩類からなる燐酸系被膜を有することを特徴とするアルミニウム顔料が記載されている。
また、特許文献3には、アルミニウム粒子と、前記アルミニウム粒子の表面を被覆するモリブデン酸化物及び/又はモリブデン水和物からなるモリブデン被膜と、前記モリブデン被膜をさらに被覆する非晶質シリカからなるシリカ被膜とを有するアルミニウム顔料が記載されている。
一般に、上記モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料を用いた水性塗料は、アルミニウム顔料表面に存在するモリブデン酸によって、アルミニウム顔料と水との反応が抑制されるため、塗料貯蔵中の水素ガスの発生が少なく、貯蔵安定性に優れる。
また、前記上塗り塗料は、多様なデザイン性を得るため、通常、さらに、着色顔料を含有する(例えば、特許文献4)。一般に、上塗り塗料に用いられる着色顔料は有機顔料が多い。これは、有機顔料が、無機顔料に比べて、色の種類が豊富であり、色相が鮮明で、着色力が大きいため、上塗り塗料に求められるデザイン性を確保するのに適しているからである。
有機顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等の縮合多環系顔料;縮合アゾ系顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料等のアゾ系顔料等が挙げられる。
これらの顔料のうち、フタロシアニン系顔料は、水性塗料において、前記モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料と併用した場合、一定期間貯蔵した後の塗料を塗装して得られる塗膜の色が、貯蔵前の塗料を塗装して得られる塗膜の色と相違する場合があった。
また、前記縮合多環系顔料は、分子中にケトン構造を有するものが多いが、なかでも、1分子中に2個以上のケトン構造を有する縮合多環系顔料は、水性塗料において、前記モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料と併用した場合、一定期間貯蔵した後の塗料を塗装して得られる塗膜の色が、貯蔵前の塗料を塗装して得られる塗膜の色と相違する場合があった。
特開平6−57171号公報 特開平7−70468号公報 国際公開WO2004/096921号パンフレット 特開2003−88801号公報
本発明の目的は、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料及び縮合多環系顔料を含有する水性塗料組成物であって、塗料を貯蔵した後に塗装して得られる塗膜の色と、貯蔵前の塗料を塗装して得られる塗膜の色との相違が小さく、かつ、水素ガスの発生が抑制された、貯蔵安定性に優れた水性塗料組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料、縮合多環系顔料、ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂及び被膜形成性樹脂を含有する水性塗料組成物が、塗料を貯蔵した後に塗装して得られる塗膜の色と、貯蔵前の塗料を塗装して得られる塗膜の色との相違が小さく、水素ガスの発生が抑制され、優れた貯蔵安定性を有することを見出した。
すなわち、本発明は、以下の水性塗料組成物、該水性塗料組成物を用いた複層塗膜形成方法及び該水性塗料組成物が塗装された物品を提供するものである。
項1.(A)モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料、
(B)縮合多環系顔料
(C)ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂及び
(D)被膜形成性樹脂
を含有し、縮合多環系顔料(B)がフタロシアニン系顔料(B1)又は1分子中に2個以上のケトン構造を有する縮合多環系顔料(B2)である、
水性塗料組成物。
項2.フタロシアニン系顔料(B1)がα型銅フタロシアニン顔料、β型銅フタロシアニン顔料、ε型銅フタロシアニン顔料及びコバルトフタロシアニン顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種のフタロシアニン系顔料である項1に記載の水性塗料組成物。
項3.1分子中に2個以上のケトン構造を有する縮合多環系顔料(B2)が、アントラキノン系顔料及び/又はペリレン系顔料である項1に記載の水性塗料組成物。
項4.ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)が、(a)下記一般式(1)
Figure 0005591044
[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはニトロ基が結合した芳香環を示す]
で示される重合性不飽和モノマー及び(b)その他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー成分を共重合することにより得られる共重合体である項1〜3のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
項5.重合性不飽和モノマー(a)が下記一般式(2)
Figure 0005591044
[式中、Rは水素原子又はメチル基を示す]
で示される重合性不飽和モノマーである項4に記載の水性塗料組成物。
項6.重合性不飽和モノマー(a)とその他の重合性不飽和モノマー(b)との質量比が、前者/後者の比で5/95〜60/40の範囲内にある項4又は5に記載の水性塗料組成物。
項7.その他の重合性不飽和モノマー(b)が、該モノマー(b)の一部として、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーを、重合性不飽和モノマー(a)及び該モノマー(b)の合計量を基準として、5〜50質量%含有する項4〜6のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
項8.被膜形成性樹脂(D)100質量部を基準として、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)が0.1〜80質量部、縮合多環系顔料(B)が0.01〜40質量部、ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)が0.1〜30質量部の範囲内である項1〜7のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
項9.さらに、硬化剤(E)を含有する項1〜8のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
項10.さらに、フタロシアニン系顔料誘導体(F)を含有する項1〜9のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
項11.項1〜10のいずれか1項に記載の水性塗料組成物が塗装された物品。
項12.(1)被塗物に、項1〜10のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装してベースコート塗膜を形成する工程、
(2)上記の未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
(3)上記の未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜の両塗膜を、加熱して同時に硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
項13.項12に記載の複層塗膜形成方法により形成された複層塗膜を有する物品。
本発明の水性塗料組成物は、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)、縮合多環系顔料(B)、ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)及び被膜形成性樹脂(D)を含有することにより、塗料を貯蔵した後に塗装して得られる塗膜の色と、貯蔵前の塗料を塗装して得られる塗膜の色との相違が小さく、かつ水素ガスの発生が抑制された、優れた貯蔵安定性を有する。
以下、本発明の水性塗料組成物について詳細に説明する。
本発明の水性塗料組成物は、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)、上記縮合多環系顔料(B)、ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)及び被膜形成性樹脂(D)を含有する水性塗料組成物である。
モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)
モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)は、通常、アルミニウム顔料を、モリブデン酸;モリブデン酸塩;モリブデン酸水和物;モリブデン酸又はモリブデン酸塩とアミン化合物との反応物;無水モリブデン酸又はその水和物とアミン化合物との反応物等によって表面処理することにより得ることができる。
上記モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)としては、例えば、アルミニウムに対してモリブデン金属換算量で0.1〜10重量%のモリブデン酸被膜で被覆した粒子構造を有するアルミニウム顔料(特開平6−57171号公報)、モリブデン酸被膜に加え、さらにリン酸系被膜を有するアルミニウム顔料(特開平7−70468号公報)、モリブデン酸被膜に加え、さらにリン酸エステル被膜を有するアルミニウム顔料(特開平7−133440号公報)、過酸化ポリモリブデン酸から誘導される皮膜が形成され、かつ特定のアミンを含有しているアルミニウム顔料(国際公開WO2002/031061号パンフレット)、モリブデン酸被膜に加え、さらにシリカ被膜を有するアルミニウム顔料(国際公開WO2004/096921号パンフレット)、三酸化モリブデン(無水モリブデン酸)又はその水和物、モリブデン酸又はそのアルカリ塩から選ばれる無機モリブデン化合物と、アミン化合物との反応生成物を含有するアルミニウム顔料(特開2007−169613号公報)、リン(タングスト)モリブデン酸アミン塩、リン(バナド)モリブデン酸アミン塩等で表面処理されたアルミニウム顔料(国際公開WO2008/059839号パンフレット)等公知のものを特に制限無く使用することができる。
また、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)としては市販品を使用できる。モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)の市販品としては、例えば、東洋アルミニウム社製のWJシリーズ、WLシリーズ等が挙げられる。
モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)は、通常、アルミニウム顔料の表面上にモリブデン酸が存在する。アルミニウム顔料の表面上のモリブデン酸は、水性塗料組成物中における水とアルミニウム顔料との反応による水素ガスの発生を抑制するため、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)を含有する本発明の水性塗料組成物は、優れた貯蔵安定性を有する。なお、アルミニウム顔料の表面上のモリブデン酸は、アルミニウム顔料の表面全体に存在していてもよく、アルミニウム顔料の表面上に点在していてもよい。
また、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)はりん片状であることが好ましい。りん片状のモリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)の形状としては、長手方向寸法が1〜100μm程度、特に5〜40μm程度で、厚さが0.001〜5μm程度、特に0.01〜2μm程度の範囲内にあるものが好ましい。
また、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)は、アルミニウム100質量部に対して、モリブデンを、金属モリブデン換算量で0.02〜15質量部、好ましくは0.05〜12質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部含有することが好適である。
縮合多環系顔料(B)
本発明の水性塗料組成物は、縮合多環系顔料(B)を含有する。縮合多環系顔料(B)としては、フタロシアニン系顔料(B1)又は1分子中に2個以上のケトン構造を有する縮合多環系顔料(B2)を用いることができる。本発明の水性塗料組成物には、フタロシアニン系顔料(B1)及び1分子中に2個以上のケトン構造を有する縮合多環系顔料(B2)の一方のみを含有する組成物も、これらの両方を含有する組成物も含まれる。
フタロシアニン系顔料(B1)
フタロシアニン系顔料(B1)は、フタロシアニン骨格を有する顔料であって、従来公知のものを特に制限なく使用することができる。該フタロシアニン系顔料(B1)は、金属フタロシアニン顔料であってもよく、無金属フタロシアニン顔料であってもよい。
上記金属フタロシアニン顔料は、フタロシアニン骨格の中心に金属を有するフタロシアニン顔料である。該フタロシアニン骨格の中心金属としては、例えば、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛、鉄、銀、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、インジウム、ナトリウム、リチウム、チタン、錫、鉛、バナジウム、クロム、マンガン等を挙げることができる。なかでも、フタロシアニン系顔料(B1)が、フタロシアニン骨格の中心金属として銅を有する銅フタロシアニン顔料及び/又はフタロシアニン骨格の中心金属としてコバルトを有するコバルトフタロシアニン顔料であることが好ましく、銅フタロシアニン顔料であることがさらに好ましい。
また、上記フタロシアニン系顔料(B1)は、分子の一部が置換されていてもよい。具体的には、塩素、臭素等のハロゲン化合物で置換されたハロゲン化銅フタロシアニン顔料;スルホン化された銅フタロシアニン顔料を、アルミナホワイト、硫酸バリウム等の体質顔料に染め付け、塩化バリウムでレーキ化したファストスカイブルー等を使用することができる。
また、上記フタロシアニン系顔料(B1)は結晶多型を示し、具体的には、例えば、α、β、γ、δ、ε、π、ρ、τ、χ等の結晶形が知られている。本発明において、フタロシアニン系顔料(B1)の結晶形は特に制限されないが、本発明の水性塗料組成物において、貯蔵安定性向上の効果が大きいことから、フタロシアニン系顔料(B1)が、α型、β型、γ型、ε型のいずれかの結晶形を有することが好ましい。なかでも、該フタロシアニン系顔料(B1)が、α型、β型又はε型の結晶形を有することが好ましく、α型の結晶形を有することがさらに好ましい。より具体的には、フタロシアニン系顔料(B1)が、α型銅フタロシアニン顔料、β型銅フタロシアニン顔料及びε型銅フタロシアニン顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種のフタロシアニン系顔料であることが好ましく、α型銅フタロシアニン顔料であることがさらに好ましい。
フタロシアニン系顔料(B1)としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー15(C.I.番号74160)、C.I.ピグメントブルー15:1(C.I.番号74160)、C.I.ピグメントブルー15:2(C.I.番号74160)、C.I.ピグメントブルー15:3(C.I.番号74160)、C.I.ピグメントブルー15:4(C.I.番号74160)、C.I.ピグメントブルー15:5(C.I.番号74160)、C.I.ピグメントブルー15:6(C.I.番号74160)、C.I.ピグメントブルー17:1(C.I.番号74180:1)、C.I.ピグメントグリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメントグリーン36(C.I.番号74265)、C.I.ピグメントグリーン37(C.I.番号74255)、C.I.ピグメントグリーン42(C.I.番号76260)等の銅フタロシアニン顔料が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、上記銅フタロシアニン顔料以外のフタロシアニン系顔料(B1)として、例えば、C.I.ピグメントブルー75(C.I.番号74160:2)等のコバルトフタロシアニン顔料;C.I.ピグメントブルー79(C.I.番号761300)等のアルミニウムフタロシアニン顔料;C.I.ピグメントブルー16(C.I.番号74100)等の無金属フタロシアニン顔料等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
1分子中に2個以上のケトン構造を有する縮合多環系顔料(B2)
1分子中に2個以上のケトン構造を有する縮合多環系顔料(B2)としては、例えば、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、塗料を貯蔵した後に塗装して得られる塗膜の色と、貯蔵前の塗料を塗装して得られる塗膜の色との相違を抑制する効果が大きいため、アントラキノン系顔料及び/又はペリレン系顔料が好ましい。
上記1分子中に2個以上のケトン構造を有する縮合多環系顔料(B2)としては、1分子中に2〜6個、好ましくは2〜4個、さらに特に好ましくは4個のケトン構造を有する縮合多環系顔料を好適に使用することができる。
前記アントラキノン系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー24(C.I.番号70600)、C.I.ピグメントイエロー108(C.I.番号68420)、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントレッド168(C.I.番号59300)、C.I.ピグメントレッド177(C.I.番号65300)、C.I.ピグメントブルー60(C.I.番号69800)等が挙げられ、これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、塗料を貯蔵した後に塗装して得られる塗膜の色と、貯蔵前の塗料を塗装して得られる塗膜の色との相違を抑制する効果が大きいため、C.I.ピグメントブルー60(C.I.番号69800)を使用することが好ましい。
キナクリドン系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメントレッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメントレッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメントレッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメントレッド207(C.I.番号73900/73906)、C.I.ピグメントレッド209(C.I.番号73905)、C.I.ピグメントオレンジ48(C.I.番号73900/73920)等が挙げられ、これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
インジゴ系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー66(C.I.番号73000)、C.I.ピグメントブルー63(C.I.番号73015:1)、C.I.ピグメントレッド88(C.I.番号73312)、C.I.ピグメントレッド181(C.I.番号73360)、C.I.ピグメントブラウン27(C.I.番号73410)等が挙げられ、これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ペリレン系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド123(C.I.番号71145)、C.I.ピグメントレッド149(C.I.番号71137)、C.I.ピグメントレッド178(C.I.番号71155)、C.I.ピグメントレッド179(C.I.番号71130)、C.I.ピグメントレッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメントレッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメントバイオレット29(C.I.番号71129)、C.I.ピグメントブラック31(C.I.番号71132)、C.I.ピグメントブラック32(C.I.番号71133)等が挙げられ、これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、塗料を貯蔵した後に塗装して得られる塗膜の色と、貯蔵前の塗料を塗装して得られる塗膜の色との相違を抑制する効果が大きいため、C.I.ピグメントレッド179(C.I.番号71130)を使用することが好ましい。
ペリノン系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.番号71105)、C.I.ピグメントレッド194(C.I.番号71100)等が挙げられ、これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
イソインドリノン系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー109(C.I.番号56284)、C.I.ピグメントイエロー110(C.I.番号56280)、C.I.ピグメントイエロー173、C.I.ピグメントオレンジ61(C.I.番号11265)等が挙げられ、これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
イソインドリン系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメントイエロー185(C.I.番号56290)、C.I.ピグメントオレンジ66(C.I.番号48210)、C.I.ピグメントオレンジ69(C.I.番号56292)、C.I.ピグメントレッド260(C.I.番号56295)等が挙げられ、これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ジケトピロロピロール系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73、C.I.ピグメントレッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド272等が挙げられ、これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)
ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)としては、具体的には、ニトロ基が結合した芳香環を有するアクリル樹脂を好適に使用することができる。該ニトロ基が結合した芳香環を有するアクリル樹脂は、例えば、ニトロ基が結合した芳香環を有する重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを(共)重合することによって得ることができる。
上記ニトロ基が結合した芳香環を有する重合性不飽和モノマーは、例えば、グリシジル基を有する重合性不飽和モノマーとニトロ基を有する芳香族カルボン酸とを反応させることによって得ることができる。上記グリシジル基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートが好ましく、グリシジルメタクリレートが特に好ましい。
上記ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)としては、水性塗料組成物の貯蔵安定性に優れる観点から、下記一般式(1)
Figure 0005591044
[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはニトロ基が結合した芳香環を示す]
で示される重合性不飽和モノマー(a)及びその他の重合性不飽和モノマー(b)からなるモノマー成分を共重合することにより得られる共重合体を好適に使用することができる。
上記一般式(1)におけるRとしては、例えば、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−ヒドロキシ−4−ニトロフェニル基、2−メチル−4−ニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基等が挙げられる。なかでも、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基又は4−ニトロフェニル基が好ましく、4−ニトロフェニル基がさらに好ましい。
重合性不飽和モノマー(a)
重合性不飽和モノマー(a)は、上記一般式(1)で表される重合性不飽和モノマーであれば特に制限されない。
上記重合性不飽和モノマー(a)は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートとニトロ基を有する芳香族カルボン酸とを反応させることによって得ることができる。上記ニトロ基を有する芳香族カルボン酸としては、例えば、2−ニトロ安息香酸、3−ニトロ安息香酸、4−ニトロ安息香酸、2−ヒドロキシ−4−ニトロ安息香酸、2−メチル−4−ニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸等を使用することができる。
前記グリシジル(メタ)アクリレートとニトロ基を有する芳香族カルボン酸との反応は、例えば、3級アミン及び/又は4級アンモニウム塩の存在下で、90〜160℃程度で2〜10時間程度加熱することによって、行なうことができる。
上記3級アミンとしては、例えば、トリブチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等を使用することができる。また、上記4級アンモニウム塩としては、例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイド等を使用することができる。
前記重合性不飽和モノマー(a)としては、水性塗料組成物の貯蔵安定性に優れる観点から、下記一般式(2)
Figure 0005591044
[式中、Rは水素原子又はメチル基を示す]
で示される重合性不飽和モノマーを使用することが好ましく、なかでも、下記一般式(3)
Figure 0005591044
[式中、Rは水素原子又はメチル基を示す]
で示される重合性不飽和モノマーを使用することがさらに好ましい。
上記一般式(2)で示される重合性不飽和モノマーは、通常、グリシジル(メタ)アクリレートと、2−ニトロ安息香酸、3−ニトロ安息香酸又は4−ニトロ安息香酸のいずれかを反応させることによって得ることができる。また、上記一般式(3)で示される重合性不飽和モノマーは、通常、グリシジル(メタ)アクリレートと4−ニトロ安息香酸とを反応させることによって得ることができる。
なお、上記重合性不飽和モノマー(a)は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
その他の重合性不飽和モノマー(b)
その他の重合性不飽和モノマー(b)は、上記重合性不飽和モノマー(a)と共重合し得る当該モノマー(a)以外の重合性不飽和モノマーである。該モノマーの具体例を、(i)〜(xx)に列挙する。これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー:ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix)ビニル化合物:N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x)水酸基含有重合性不飽和モノマー:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該モノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等。
(xi)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等。
(xii)前記重合性不飽和モノマー(a)以外の含窒素重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等。
(xiii)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiv)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xv)分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xvi)スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
(xvii)リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等。
(xviii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2' −ヒドロキシ−5' −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。
(xix)紫外線安定性重合性不飽和モノマー:4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
(xx)カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
本明細書において、重合性不飽和基とは、ラジカル重合し得る不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル又はメタクリロイル」を意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
その他の重合性不飽和モノマー(b)としては、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性を向上させる観点から、その成分の少なくとも一部として、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
上記ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーは、1分子中にポリオキシアルキレン鎖と重合性不飽和基を含有するモノマーであって、形成される上記樹脂(C)に親水性を付与することができる。
上記ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレンブロックとポリオキシプロピレンブロックとからなる鎖、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとがランダムに結合してなる鎖等を挙げることができ、これらのポリオキシアルキレン鎖は一般に200〜5,000程度、好ましくは500〜4,000程度、さらに好ましくは800〜3,000程度の範囲内の分子量を有することが好適である。
上記ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーの代表例としては、例えば、下記一般式(4)
Figure 0005591044
[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは炭素数2〜4、好ましくは炭素数2又は3、さらに好ましくは炭素数2のアルキレン基を示し、mは3〜150、好ましくは10〜80、さらに好ましくは25〜50の整数を示し、m個のオキシアルキレン単位(R−O)は互いに同じであっても又は互いに異なっていてもよい]
で示される重合性不飽和モノマーを挙げることができる。
上記一般式(4)で示される重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラピロプレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合せて使用することができる。なかでも、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが特に好ましい。
また、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーは、一般に300〜6,000程度、好ましくは600〜5,000程度、さらに好ましくは900〜3,500程度の範囲内の分子量を有することが好適である。
また、上記ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーの使用量は、重合性不飽和モノマー(a)及びその他の重合性不飽和モノマー(b)の合計量を基準にして、5〜50質量%程度、好ましくは10〜40質量%程度、さらに好ましくは15〜30質量%程度の範囲内であることが好適である。
前記その他の重合性不飽和モノマー(b)としては、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性向上の観点から、その成分の少なくとも一部として、芳香環含有重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
芳香環含有重合性不飽和モノマーの具体例は、前記(v)で挙げた通りである。芳香環含有重合性不飽和モノマーとしては、スチレンを使用することが好ましい。
芳香環含有重合性不飽和モノマーの使用量は、重合性不飽和モノマー(a)及びその他の重合性不飽和モノマー(b)の合計量を基準にして、1〜50質量%程度であるのが好ましく、3〜40質量%程度であるのがより好ましく、5〜30質量%程度であるのが更に好ましい。
また、ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)は、後記の被膜形成性樹脂(D)及び/又は硬化剤(E)、例えば、アミノ樹脂、ブロック化されてもよいポリイソシアネート化合物、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等と反応し、架橋硬化塗膜中にとりこまれることが、本発明の水性塗料組成物を用いて形成される塗膜の耐水性等の塗膜性能上望ましい。従って、その他の重合性不飽和モノマー(b)としては、その少なくとも一部として水酸基含有重合性不飽和モノマー及び/又はカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有することが好ましく、水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有することがさらに好ましい。
水酸基含有重合性不飽和モノマーの具体例は、前記(x)で挙げた通りである。水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体等を使用することが好ましく、なかでも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを使用することがさらに好ましい。
水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用量は、重合性不飽和モノマー(a)及びその他の重合性不飽和モノマー(b)の合計量を基準にして、1〜40質量%程度であるのが好ましく、3〜30質量%程度であるのがより好ましく、5〜20質量%程度であるのが更に好ましい。
また、その他の重合性性不飽和モノマー(b)は、少なくともその一部として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有することができる。
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの具体例は、前記(xi)で挙げた通りである。カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、特に、(メタ)アクリル酸等を使用することが好ましい。
その他の重合性性不飽和モノマー(b)の一部として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合、該カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの使用量は、重合性不飽和モノマー(a)及びその他の重合性不飽和モノマー(b)の合計量を基準にして、1〜20質量%程度であるのが好ましく、2〜15質量%程度であるのがより好ましく、3〜10質量%程度であるのが更に好ましい。
また、その他の重合性性不飽和モノマー(b)は、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性向上の観点から、少なくともその一部として、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、上記炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーとしては、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性を向上させる観点から、メチルメタクリレートを用いるのが好ましい。
また、上記炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーの使用量は、重合性不飽和モノマー(a)及びその他の重合性不飽和モノマー(b)の合計量を基準にして、5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜50質量%の範囲内であることが好適である。
ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)は、例えば、重合性不飽和モノマー(a)とその他の重合性不飽和モノマー(b)とを共重合することによって得られる。共重合に際しての重合性不飽和モノマー(a)及びその他の重合性不飽和モノマー(b)の使用割合は、得られる塗膜の光輝性(フリップフロップ性)を向上させる観点から、重合性不飽和モノマー(a)/その他の重合性不飽和モノマー(b)の質量比が5/95〜60/40程度であるのが好ましく、10/90〜40/60程度であるのがより好ましく、15/85〜30/70程度であるのが更に好ましい。
なお、光輝性が高い塗膜とは、一般に、角度を変えて塗膜を観察した際に、観察の角度によるメタリック感の変化が顕著であり、さらに、光輝性顔料が塗膜中に比較的均一に存在して、メタリックムラがほとんど見られない塗膜をいう。また、上記のように、観察の角度によるメタリック感の変化が顕著であることは、一般に、フリップフロップ性が高いといわれる。
上記重合性不飽和モノマー(a)とその他の重合性不飽和モノマー(b)との共重合は、例えば、有機溶剤中、又は有機溶媒−水混合溶液での溶液重合法、水性媒体中でのエマルション重合法等の公知の方法により行なうことができる。これらのうち、溶液重合法が好適である。
溶液重合法による場合は、例えば、前記重合性不飽和モノマー(a)、その他の重合性不飽和モノマー(b)及びラジカル重合開始剤を、有機溶媒、又は有機溶媒に水を溶解してなる有機溶媒−水混合溶液に溶解又は分散させた後、通常、80〜180℃程度の温度で2〜10時間程度撹拌しながら加熱して共重合させる方法を挙げることができる。
上記共重合反応において使用し得る有機溶媒としては、例えば、ヘプタン、トルエン、キシレン、オクタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド等のアミド系溶剤;1,3−ジメチル−2−イミダゾーリジノン等のウレア系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;テトラメチレンスルホン等のスルホン系溶剤;「スワゾール310」、「スワゾール1000」、「スワゾール1500」(以上、丸善石油化学社製の商品名)等の芳香族石油系溶剤等を挙げることができる。これらの有機溶剤は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。溶液重合における有機溶剤の使用量は、通常、モノマー(a)及び(b)の合計量100質量部に対して、20〜400質量部程度、好ましくは30〜200質量部程度が好適である。
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド化合物;1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール化合物;クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド化合物;1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド化合物;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド化合物;ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート化合物;tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル化合物等の有機過酸化物系重合開始剤;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)(別名:ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン−2,2'−アゾビスメチルバレロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系重合開始剤等を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、モノマー(a)及び(b)の合計量100質量部あたり0.1〜15質量部程度が好ましく、0.3〜10質量部程度がより好ましい。
上記重合反応において、モノマー成分及び重合開始剤の添加方法は、特に制約されない。例えば、重合開始剤は重合初期に一括仕込みするよりも重合初期から重合後期にわたって数回に分けて分割滴下する方が、重合反応における温度制御の容易性、不良な架橋ゲル化物の生成抑制等の点から好ましい。
また、ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)は、例えば、グリシジル基含有重合性不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーとを上述のような溶液重合法で共重合させて共重合体を得た後、該共重合体中のグリシジル基と、ニトロ基を有する芳香族カルボン酸とを、前記3級アミン及び/又は4級アンモニウム塩の存在下で、90〜160℃程度で2〜10時間程度反応させることによって、製造してもよい。
かくして得られるニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)は、本発明の水性塗料組成物を用いて形成される塗膜の耐水性向上の観点から、水酸基価が、5〜180mgKOH/g程度であるのが好ましく、20〜140mgKOH/g程度であるのがより好ましく、40〜100mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。該樹脂(C)の酸価は0〜150mgKOH/g程度であるのが好ましく、0〜120mgKOH/g程度であるのが好ましく、0〜80mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。また、該樹脂(C)の重量平均分子量は、3,000〜500,000程度であるのが好ましく、5,000〜200,000程度であるのがより好ましく、10,000〜100,000程度であるのが更に好ましい。
本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いて測定した数平均分子量及び重量平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。
被膜形成性樹脂(D)
被膜形成性樹脂(D)としては、従来から水性塗料のバインダー成分として使用されているそれ自体既知の水溶性又は水分散性の被膜形成性樹脂を使用することができる。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。被膜形成性樹脂(D)は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基を有していることが好ましく、水酸基含有樹脂であることが特に好ましい。
なお、前記ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)は、被膜形成性樹脂(D)に含まないものとする。したがって、被膜形成性樹脂(D)は、前記ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)以外の被膜形成性樹脂である。
本発明の水性塗料組成物は、さらに、後記の硬化剤(E)を含有してもよい。本発明の水性塗料組成物が硬化剤(E)を含有する場合、上記被膜形成性樹脂(D)としては、通常、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基を有し、該硬化剤(E)と反応することにより、硬化被膜を形成することができる樹脂(基体樹脂)が用いられる。上記基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。なかでも、上記基体樹脂は、水酸基含有樹脂であることが好ましく、水酸基含有アクリル樹脂(D1)及び/又は水酸基含有ポリエステル樹脂(D2)であることがさらに好ましい。また、水酸基含有アクリル樹脂(D1)と水酸基含有ポリエステル樹脂(D2)とを、併用することが、塗膜の平滑性及び光輝性(フリップフロップ性)の向上の観点から、より好ましい。また、併用する場合の割合としては、水酸基含有アクリル樹脂(D1)と水酸基含有ポリエステル樹脂(D2)との合計量に基づいて、前者が20〜80質量%程度、特に30〜70質量%程度で、後者が80〜20質量%程度、特に70〜30質量%程度であるのが好ましい。
また、被膜形成性樹脂(D)は、カルボキシル基等の酸基を有する場合、酸価が1〜150mgKOH/g程度であるのが好ましく、5〜100mgKOH/g程度であるのがより好ましく、10〜80mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
また、該樹脂(D)は、水酸基を有する場合、水酸基価が1〜200mgKOH/g程度であるのが好ましく、2〜180mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜170mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(D1)
水酸基含有アクリル樹脂(D1)としては、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により、共重合せしめることによって製造することができる。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、前記ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)の説明において、その他の重合性不飽和モノマー(b)として例示した重合性不飽和モノマーのうち、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーであるモノマー(i)〜(ix)及び(xi)〜(xx)等を使用することができる。これらの重合性不飽和モノマーは単独でもしくは2種以上で組み合わせて使用することができる。
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(D1)は、アミド基を有することが好ましい。前記のアミド基を有する水酸基含有アクリル樹脂は、例えば、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーの1種として、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有重合性不飽和モノマーを用いることにより、製造することができる。
上記水酸基含有アクリル樹脂(D1)を製造する際の前記水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、1〜50質量%程度が好ましく、2〜40質量%程度がより好ましく、3〜30質量%程度がさらに好ましい。
上記水酸基含有アクリル樹脂(D1)は、塗料の貯蔵安定性、得られる塗膜の耐水性等の観点から、酸価が、1〜150mgKOH/g程度であることが好ましく、5〜100mgKOH/g程度であることがより好ましく、10〜80mgKOH/g程度であることがさらに好ましい。
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(D1)は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、水酸基価が、1〜200mgKOH/g程度であることが好ましく、2〜150mgKOH/g程度であることがより好ましく、5〜100mgKOH/g程度であることがさらに好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(D1)としては、形成される塗膜の平滑性及び光輝性が向上する観点から、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂を単独使用するか、又はコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂と水溶性アクリル樹脂とを併用することが好ましい。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂としては、形成される塗膜の平滑性及び光輝性が向上する観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%程度及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%程度を共重合成分とする共重合体(I)であるコア部と、水酸基含有重合性不飽和モノマー1〜40重量%程度、疎水性重合性不飽和モノマー5〜50質量%程度及びその他の重合性不飽和モノマー10〜94質量%程度を共重合成分とする共重合体(II)であるシェル部とからなるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)が好ましい。
コア部共重合体(I)用モノマーとして用いる重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーは、コア部共重合体(I)に架橋構造を付与する機能を有する。重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア部共重合体(I)の架橋の程度に応じて適宜決定し得るが、通常、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、0.1〜30質量%程度であるのが好ましく、0.5〜10質量%程度であるのがより好ましく、1〜7質量%程度であるのが更に好ましい。
また、上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜のメタリックムラ抑制の観点から、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマーを使用することが好ましい。このアミド基含有モノマーを使用する場合の使用量としては、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、0.1〜25質量%程度であるのが好ましく、0.5〜8質量%程度であるのがより好ましく、1〜4質量%程度であるのが更に好ましい。
コア部共重合体(I)用モノマーとして用いる重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーは、上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーと共重合可能な重合性不飽和モノマーである。
重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等のトリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)に要求される性能に応じて、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いられる水酸基含有重合性不飽和モノマーは、得られる水分散性アクリル樹脂に、硬化剤(E)と架橋反応する水酸基を導入せしめることによって塗膜の耐水性等を向上させると共に、該水分散性アクリル樹脂の水性媒体中における安定性を向上せしめる機能を有する。水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を用いるのが好ましい。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、1〜40質量%程度であるのが好ましく、4〜25質量%程度であるのがより好ましく、7〜19質量%程度であるのが更に好ましい。
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いられる疎水性重合性不飽和モノマーは、炭素数が6以上、好ましくは6〜18の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーであり、水酸基含有重合性不飽和モノマー等の親水性基を有するモノマーは除外される。該モノマーとしては、例えば、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和化合物;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマーを挙げることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、得られる塗膜の平滑性及び光輝性を向上させる観点から、上記疎水性重合性不飽和モノマーとして、炭素数6〜18のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー及び/又は芳香環含有重合性不飽和モノマーを用いるのが好ましい。特に、スチレンを用いるのがより好ましい。
上記疎水性重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、5〜50質量%程度であるのが好ましく、7〜40質量%程度であるのがより好ましく、9〜30質量%程度であるのが更に好ましい。
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いるその他の重合性不飽和モノマーは、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び疎水性重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーである。当該モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの具体例は、前記コア部共重合体(I)用モノマーとして例示したものと同じである。カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、特に、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いることが好ましい。その他の重合性不飽和モノマーとして、上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含むことにより、得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)の水性媒体中における安定性を確保できる。
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合の使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、1〜30質量%程度であるのが好ましく、5〜25質量%程度であるのがより好ましく、7〜19質量%程度であるのが更に好ましい。
また、シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いるその他の重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜の光輝性向上の観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーを使用せず、該共重合体(II)を未架橋型とすることが好ましい。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)における共重合体(I)/共重合体(II)の割合は、塗膜の外観向上の観点から、固形分質量比で10/90〜90/10程度であるのが好ましく、50/50〜85/15程度であるのがより好ましく、65/35〜80/20程度であるのが更に好ましい。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)は、得られる塗膜の耐水性等に優れる観点から、水酸基価が1〜70mgKOH/g程度であるのが好ましく、2〜50mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜30mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
また、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)は、塗料組成物の貯蔵安定性及び得られる塗膜の耐水性等に優れる観点から、酸価が5〜90mgKOH/g程度であるのが好ましく、8〜50mgKOH/g程度であるのがより好ましく、10〜35mgKOH/g程度あるのが更に好ましい。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%程度、及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%程度からなるモノマー混合物を乳化重合してコア部共重合体(I)のエマルションを得た後、このエマルション中に、水酸基含有重合性不飽和モノマー1〜40質量%程度、疎水性重合性不飽和モノマー5〜50質量%程度、及びその他の重合性不飽和モノマー10〜94質量%程度からなるモノマー混合物を添加し、さらに乳化重合させてシェル部共重合体(II)を調製することによって得られる。
コア部共重合体(I)のエマルションを調製する乳化重合は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、乳化剤の存在下で、重合開始剤を使用してモノマー混合物を乳化重合することにより、行うことができる。
上記乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤が好適である。該アニオン性乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等のナトリウム塩又はアンモニウム塩が挙げられる。また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基とを有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤;1分子中にアニオン性基とラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤を使用することもできる。これらのうち、反応性アニオン性乳化剤を使用することが好ましい。
上記反応性アニオン性乳化剤としては、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩、該スルホン酸化合物のアンモニウム塩等を挙げることができる。これらのうち、ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩が、得られる塗膜の耐水性に優れるため、好ましい。該スルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「ラテムルS−180A」(商品名、花王社製)等を挙げることができる。
また、上記ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の中でも、ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩がより好ましい。上記ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬社製)、「ラテムルPD−104」(商品名、花王社製)、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA社製)等を挙げることができる。
上記乳化剤の使用量は、使用される全モノマーの合計量を基準にして、0.1〜15質量%程度が好ましく、0.5〜10質量%程度がより好ましく、1〜5質量%程度が更に好ましい。
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤は、一種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用して、レドックス開始剤としてもよい。
上記重合開始剤の使用量は、一般に、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、0.1〜5質量%程度が好ましく、0.2〜3質量%程度がより好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量等に応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)は、上記で得られるコア部共重合体(I)のエマルションに、水酸基含有重合性不飽和モノマー、疎水性重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物を添加し、さらに重合させてシェル部共重合体(II)を形成することによって、得ることができる。
上記シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物は、必要に応じて、前記重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、乳化剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物の重合方法としては、例えば、該モノマー混合物又はその乳化物を、一括で又は徐々に滴下して、上記コア部共重合体(I)のエマルションに、添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法が挙げられる。
かくして得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物の共重合体(I)をコア部とし、水酸基含有重合性不飽和モノマー、疎水性重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物の共重合体(II)をシェル部とする複層構造を有する。
かくして得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)は、一般に10〜1,000nm程度、特に20〜500nm程度の範囲内の平均粒子径を有することができる。
本明細書において、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)の粒子の機械的安定性を向上させるために、該水分散性アクリル樹脂が有するカルボキシル基等の酸基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水等が挙げられる。これらの中和剤は、中和後の該水分散性アクリル樹脂の水分散液のpHが6.5〜9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
水酸基含有ポリエステル樹脂(D2)
本発明の水性塗料組成物において、被膜形成性樹脂(D)として、水酸基含有ポリエステル樹脂(D2)を使用することによって、得られる塗膜の平滑性等を向上させることができる。
水酸基含有ポリエステル樹脂(D2)は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。かかる酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物を用いることが特に好ましい。
前記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4〜6員環構造である。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記脂環族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を用いることが好ましく、なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を用いることがより好ましい。
前記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記芳香族多塩基酸としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸を使用することが好ましい。
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することもできる。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
前記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物等が挙げられる。
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することも出来る。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
水酸基含有ポリエステル樹脂(D2)の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、150〜250℃程度で、5〜10時間程度加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、水酸基含有ポリエステル樹脂を製造することができる。
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらを一度に添加してもよいし、一方又は両者を、数回に分けて添加してもよい。また、まず、水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られた水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化させてカルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。また、まず、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させて水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(D2)は、該樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独でもしくは2種以上混合して使用することができる。
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(D2)としては、得られる塗膜の平滑性及び耐水性に優れる観点から、原料の酸成分中の脂環族多塩基酸の含有量が、該酸成分の合計量を基準として20〜100モル%程度であるものが好ましく、25〜95モル%程度であるものがより好ましく、30〜90モル%程度であるものが更に好ましい。特に、上記脂環族多塩基酸が、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物であることが、得られる塗膜の平滑性に優れる観点から、好ましい。
水酸基含有ポリエステル樹脂(D2)は、水酸基価が1〜200mgKOH/g程度であるのが好ましく、2〜180mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜170mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(D2)が、更にカルボキシル基を有する場合は、その酸価が5〜150mgKOH/g程度であるのが好ましく、10〜100mgKOH/g程度であるのがより好ましく、15〜80mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(D2)の数平均分子量は、500〜50,000程度であるのが好ましく、1,000〜30,000程度であるのがより好ましく、1,200〜10,000程度であるのが更に好ましい。
硬化剤(E)
硬化剤(E)は、被膜形成性樹脂(D)中の水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基と反応して、本発明の水性塗料組成物を硬化し得る化合物である。硬化剤(E)としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物、カルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましく、アミノ樹脂が特に好ましい。硬化剤(E)は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。
また、上記メラミン樹脂は、重量平均分子量が400〜6,000程度であるのが好ましく、800〜5,000程度であるのがより好ましく、1,000〜4,000程度であるのが更に好ましく、1,200〜3,000程度であるのが最も好ましい。
メラミン樹脂としては市販品を使用できる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
また、本発明の水性塗料組成物としては、被膜形成性樹脂(D)として、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)等の水酸基含有アクリル樹脂(D1)を使用し、且つ硬化剤(E)として、重量平均分子量が1,000〜4,000程度、特に1,200〜3,000程度のメラミン樹脂を使用することが、得られる塗膜の光輝性(フリップフロップ性)及び耐水性に優れる観点から、好ましい。
また、硬化剤(E)として、メラミン樹脂を使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸;モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、モノ2−エチルヘキシルリン酸、ジ2−エチルヘキシルリン酸等のアルキルリン酸エステル;これらの酸とアミン化合物との塩等を触媒として使用することができる。
前記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物である。ブロック剤としては、例えば、オキシム化合物、フェノール化合物、アルコール化合物、ラクタム化合物、メルカプタン化合物等を挙げることができる。
上記1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、3−イソシアナトメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(通称、トリアミノノナントリイソシアネート)等の3価以上の有機ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の2量体又は3量体;これらのポリイソシアネート化合物と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマー等が挙げられる。
前記カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめたものを使用することができる。該カルボジイミド基含有化合物としては、1分子中に少なくとも2個のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。
上記ポリカルボジイミド化合物としては、得られる塗膜の平滑性等の観点から、水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。該水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物としては、水性媒体中に安定に溶解又は分散し得るポリカルボジイミド化合物であれば、特に制限なく使用することができる。
上記水溶性ポリカルボジイミド化合物としては、具体的には、例えば、「カルボジライトSV−02」、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」「カルボジライトV−04」(いずれも日清紡社製、商品名)等を使用することができる。また、上記水分散性ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも日清紡社製、商品名)等を使用することができる。
上記ポリカルボジイミド化合物は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明に係る水性塗料組成物における前記被膜形成性樹脂(D)と上記硬化剤(E)との配合割合は、塗膜の平滑性及び耐水性向上の観点から、両者の合計量に基づいて、前者が30〜95質量%程度、好ましくは50〜90質量%程度、さらに好ましくは60〜80質量%程度で、後者が5〜70質量%程度、好ましくは10〜50質量%程度、さらに好ましくは20〜40質量%程度であることが好適である。
本発明に係る水性塗料組成物が水酸基含有アクリル樹脂(D1)を含有する場合、水酸基含有アクリル樹脂(D1)の配合量は、水性塗料組成物中の固形分を基準として、2〜70質量%程度であるのが好ましく、10〜55質量%程度であるのがより好ましく、20〜45質量%程度であるのが更に好ましい。
本発明に係る水性塗料組成物が水酸基含有ポリエステル樹脂(D2)を含有する場合、該水酸基含有ポリエステル樹脂(D2)の配合量は、水性塗料組成物中の固形分を基準として、2〜70質量%程度であるのが好ましく、10〜55質量%程度であるのがより好ましく、20〜45質量%程度であるのが更に好ましい。
水性塗料組成物
本発明に係る水性塗料組成物は、例えば、前記モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)、前記縮合多環系顔料(B)、ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)及び被膜形成性樹脂(D)を、公知の方法により、水性媒体中に混合し、溶解又は分散せしめることによって調整することができる。
上記混合の方法としては、例えば、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)の顔料分散液と、前記縮合多環系顔料(B)の顔料分散液とをあらかじめ調整しておき、これらの顔料分散液をニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)、被膜形成性樹脂(D)等と共に水性媒体中で混合、分散せしめる方法;モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)とニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)とをあらかじめ混合して顔料分散液を調製しておき、その顔料分散液を、縮合多環系顔料(B)、被膜形成性樹脂(D)等と共に水性媒体中で混合、分散せしめる方法;前記縮合多環系顔料(B)とニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)とをあらかじめ混合して顔料分散液を調製しておき、その顔料分散液を、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)、被膜形成性樹脂(D)等と共に水性媒体中で混合、分散せしめる方法等を用いることができる。
前記水性媒体としては、水、又は水に親水性有機溶媒を溶解してなる水−有機溶媒混合溶液等を挙げることができる。上記親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上混合して使用することができる。上記水−有機溶媒混合溶液において、水と有機溶媒との混合割合は特に制限はないが、有機溶媒の含有量が、混合溶液の1〜50質量%程度、好ましくは5〜35質量%程度であることが好適である。
本発明に係る水性塗料組成物において、前記モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)、前記縮合多環系顔料(B)、ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)及び被膜形成性樹脂(D)の配合割合は、特に制限されるものではないが、水性塗料組成物の貯蔵安定性、形成される塗膜の外観(平滑性、鮮映性、光輝性等)、塗膜性能(耐水性等)等の観点から、被膜形成性樹脂(D)100質量部を基準として、下記の範囲内とすることが好ましい。
モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A):0.1〜80質量部程度、好ましくは0.5〜40質量部程度、さらに好ましくは1〜20質量部程度、
前記縮合多環系顔料(B):0.01〜40質量部程度、好ましくは0.05〜20質量部程度、さらに好ましくは0.1〜15質量部程度、
ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C):0.1〜30質量部程度、好ましくは0.2〜20質量部程度、さらに好ましくは0.3〜10質量部程度(縮合多環系顔料(B)としてフタロシアニン系顔料(B1)を用いる場合);0.1〜30質量部程度、好ましくは0.5〜15質量部程度、さらに好ましくは1〜10質量部程度(縮合多環系顔料(B)として1分子中に2個以上のケトン構造を有する縮合多環系顔料(B2)を用いる場合)。
本発明の水性塗料組成物が、貯蔵安定性に優れる理由は明確ではないが、以下のように推察される。すなわち、従来の水性塗料においては、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)の存在によって、貯蔵中に、縮合多環系顔料(B)の化学構造に何らかの変化が生じ、貯蔵による色の変化が生じていた。これに対し、本発明の水性塗料組成物においては、ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)によって、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)と縮合多環系顔料(B)との相互作用が抑制され、縮合多環系顔料(B)の化学構造が変化しにくくなるため、貯蔵による色の変化が生じにくくなると推察される。
本発明に係る水性塗料組成物は、形成される塗膜のフリップフロップ性及び鮮映性の観点から、さらに、フタロシアニン系顔料誘導体(F)を含有することが好ましい。なかでも、本発明に係る水性塗料組成物が、前記縮合多環系顔料(B)の少なくとも1種として、前記フタロシアニン系顔料(B1)を含有する場合に、上記フタロシアニン系顔料誘導体(F)を含有することがさらに好ましい。
該フタロシアニン系顔料誘導体(F)としては、例えば、前記フタロシアニン系顔料(B1)に、アルキルアミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、フタルイミド基等の置換基が導入された化合物を使用することができる。
該フタロシアニン系顔料誘導体(F)の市販品としては、例えば、「SOLSPERSE 5000」、「SOLSPERSE 12000」(商品名、以上、LUBRISOL社製)、「EFKA6745」(商品名、EFKA社製)等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明に係る水性塗料組成物が、上記フタロシアニン系顔料誘導体(F)を含有する場合、該フタロシアニン系顔料誘導体(F)の配合量は、縮合多環系顔料(B)の固形分100質量部を基準として、1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜15質量部の範囲内であることが好適である。
また、上記フタロシアニン系顔料誘導体(F)は、顔料を製造する工程において添加されてもよく、塗料製造時の顔料分散工程において添加されてもよい。
本発明の水性塗料組成物は、必要に応じて、さらに、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)以外の光輝性顔料、縮合多環系顔料(B)以外の着色顔料、体質顔料、疎水性有機溶媒、増粘剤、硬化触媒、前記顔料分散用樹脂、前記塩基性中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤等を含有することができる。
前記モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)以外の光輝性顔料としては、例えば、モリブデン酸処理されていないアルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母等を挙げることができる。これらの光輝性顔料は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの光輝性顔料はりん片状であることが好ましい。
りん片状の光輝性顔料としては、長手方向寸法が通常1〜100μm程度、好ましくは5〜40μm程度であり、厚さが通常0.001〜5μm程度、好ましくは0.01〜2μm程度のものを好適に用いることができる。
本発明の水性塗料組成物が、上記モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)以外の光輝性顔料を含有する場合、該モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)以外の光輝性顔料の配合量は、固形分として、被膜形成性樹脂(D)100質量部に対して、通常1〜50質量部程度であることが好ましく、5〜40質量部程度であることがより好ましく、10〜30質量部程度であることが更に好ましい。
また、本発明の水性塗料組成物は、前記ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)及び被膜形成性樹脂(D)以外に、樹脂成分として、さらにリン酸基含有樹脂を含有することができる。特に、本発明の水性塗料組成物が、上記光輝性顔料、特にアルミニウム顔料を含有する場合、本発明の水性塗料組成物は、得られる塗膜の平滑性、メタリックムラ、及び耐水性の観点から、該リン酸基含有樹脂を含有することが好ましい。
上記リン酸基含有樹脂は、例えば、リン酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを、溶液重合法等の既知の方法で共重合することによって製造することができる。上記リン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアルキルリン酸の反応生成物等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記リン酸基含有樹脂において、上記リン酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを共重合させる際の使用割合は、前者/後者の質量比で、1/99〜40/60程度が好ましく、5/95〜35/65程度がより好ましく、10/90〜30/70程度がさらに好ましい。
本発明の水性塗料組成物が、上記リン酸基含有樹脂を含有する場合、該リン酸基含有樹脂の配合量は、被膜形成性樹脂(D)100質量部に対して、通常0.5〜15質量部程度が好ましく、0.75〜10質量部程度がより好ましく、1〜5質量部程度が更に好ましい。
前記縮合多環系顔料(B)以外の着色顔料としては、例えば、酸化チタン;酸化亜鉛;カーボンブラック;コバルトブルー;パーマネントレッド、ジスアゾイエロー等のアゾ系顔料;カルバゾールバイオレット等のジオキサジン系顔料等が挙げられる。これらの着色顔料は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
前記体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。
前記疎水性有機溶媒としては、20℃において、100gの水に溶解する質量が10g以下、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下の有機溶媒を使用することができる。かかる有機溶媒としては、例えば、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶媒;1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル等のエステル系溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn−アミルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒を挙げることができる。これらは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記疎水性有機溶媒としては、得られる塗膜の光輝性に優れる観点から、アルコール系疎水性有機溶媒が好ましく、炭素数7〜14のアルコール系疎水性有機溶媒がより好ましい。なかでも、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルコール系疎水性有機溶媒が好ましく、2−エチル−1−ヘキサノール及び/又はエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルがより好ましい。
本発明に係る水性塗料組成物が、上記疎水性有機溶媒を含有する場合、該疎水性有機溶媒の配合量は、水性塗料組成物中の固形分100質量部を基準として、10〜100質量部程度であるのが好ましく、15〜80質量部程度であるのがより好ましく、20〜60質量部程度であるのが更に好ましい。
また、増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、該疎水性部分が塗料中の顔料、エマルション粒子等の表面に吸着したり、該疎水性部分同士が会合したりすることにより効果的に増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等が挙げられる。これらの増粘剤は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、ポリアクリル酸系増粘剤及び/又は会合型増粘剤を用いることが好ましい。
上記ポリアクリル酸系増粘剤としては、市販品を使用できる。市販品の商品名として、例えば、ロームアンドハース社製の「プライマルASE−60」、「プライマルTT−615」、「プライマルRM−5」;サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」等が挙げられる。また、上記会合型増粘剤としては、市販品を使用できる。市販品の商品名として、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−450」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」;ロームアンドハース社製の「プライマルRM−8W」、「プライマルRM−825」、「プライマルRM−2020NPR」、「プライマルRM−12W」、「プライマルSCT−275」;サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」等が挙げられる。
また、本発明に係る水性塗料組成物が、上記増粘剤を含有する場合、該増粘剤の配合量は、水性塗料組成物中の固形分100質量部を基準として、0.005〜10質量部程度であるのが好ましく、0.01〜3質量部程度であるのがより好ましく、0.05〜2質量部程度であるのが更に好ましい。
本発明の水性塗料組成物の固形分は、通常、5〜50質量%程度であるのが好ましく、15〜40質量%程度であるのがより好ましく、20〜30質量%程度であるのが更に好ましい。
塗膜形成方法
本発明の水性塗料組成物は、種々の被塗物に、塗装することにより、優れた外観の塗膜を形成することができる。
被塗物
本発明の水性塗料組成物を適用する被塗物は、特に限定されない。該被塗物としては、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができる。これらのうち、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
これらの被塗物の材質としては、特に限定されるものではない。例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(DBS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂、各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;紙、布等の繊維材料等を挙げることができる。これらのうち、金属材料及びプラスチック材料が好ましい。
上記被塗物は、上記金属材料及びそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。
塗膜形成を施した被塗物としては、基材に必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜を形成したもの、該下塗り塗膜の上に中塗り塗膜を形成したもの等を挙げることができる。
塗装方法
本発明の水性塗料組成物を被塗物に塗装することによりウェット塗膜(未硬化の塗膜)を形成した後、該ウェット塗膜を硬化させることにより、目的の塗膜を形成できる。
本発明の水性塗料組成物の塗装方法としては、特に限定されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられ、これらの塗装方法でウェット塗膜を形成することができる。これらのうち、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が好ましい。塗装に際して、必要に応じて、静電印加してもよい。
本発明の水性塗料組成物の塗布量は、硬化膜厚として、通常、5〜50μm程度、好ましくは5〜35μm程度、より好ましくは8〜25μm程度となる量であることが好ましい。
ウェット塗膜の硬化は、被塗物に本発明の水性塗料組成物を塗装後、加熱することにより行うことができる。加熱は、公知の加熱手段により行なうことができる。例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。加熱温度は、80〜180℃程度が好ましく、100〜170℃程度がより好ましく、120〜160℃程度が更に好ましい。加熱時間は、特に制限されるものではないが、通常、10〜60分間程度が好ましく、20〜40分間程度がより好ましい。
本発明の水性塗料組成物の塗装後は、上記加熱硬化を行なう前に、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート、エアブロー等を行なうことが好ましい。プレヒートの温度は、40〜100℃程度が好ましく、50〜90℃程度がより好ましく、60〜80℃程度が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間程度が好ましく、1〜10分間程度がより好ましく、2〜5分間程度が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25℃〜80℃程度の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間程度吹き付けることにより行なうことができる。
本発明の水性塗料組成物は、ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜からなる複層塗膜を、2コート1ベーク方式で自動車車体等の被塗物に形成する場合に、該ベースコート形成用として、好適に用いることができる。この場合の塗膜形成方法は、下記方法Iに従って、行なうことが出来る。
方法I
(1)被塗物に、本発明の水性塗料組成物を塗装してベースコート塗膜を形成する工程、
(2)上記の未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
(3)上記の未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜の両塗膜を、加熱して同時に硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
上記方法Iにおける被塗物は、下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成されている自動車車体等が好ましい。本発明において、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1(2004)に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600−1−1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態を含むものである。
本発明の水性塗料組成物を、上記方法Iの2コート1ベーク方式で塗装する場合、その塗装膜厚は、硬化膜厚として、5〜30μm程度が好ましく、7〜18μm程度がより好ましく、10〜15μm程度が更に好ましい。また、上記クリヤー塗料組成物の塗装膜厚は、硬化膜厚として、10〜80μm程度が好ましく、15〜60μm程度がより好ましい。
また、方法Iにおいて、上記水性塗料組成物の塗装後は、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、40〜100℃程度が好ましく、50〜90℃程度がより好ましく、60〜80℃程度が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間程度が好ましく、1〜10分間程度がより好ましく、2〜5分間程度が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25℃〜80℃程度の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間程度吹き付けることにより行なうことができる。また、上記クリヤー塗料組成物の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、40〜80℃程度で1〜60分間程度プレヒートすることができる。
上記水性塗料組成物及びクリヤー塗料組成物の硬化は、前述した公知の加熱手段により行うことができる。加熱温度は、80〜180℃程度が好ましく、100〜170℃程度がより好ましく、120〜160℃程度が更に好ましい。また、加熱時間は、10〜60分間程度が好ましく、20〜40分間程度がより好ましい。この加熱により、ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜の両塗膜を同時に硬化させることができる。
また、本発明の水性塗料組成物は、自動車車体等の被塗物に、中塗り塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜からなる複層塗膜を、3コート1ベーク方式で形成する場合に、ベースコート形成用として、好適に用いることができる。この場合の塗膜形成方法は、下記方法IIに従って、行うことが出来る。
方法II
(1)被塗物に、中塗り塗料組成物を塗装して中塗り塗膜を形成する工程、
(2)上記の未硬化の中塗り塗面上に、本発明の水性塗料組成物を塗装してベースコート塗膜を形成する工程、
(3)上記の未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
(4)上記の未硬化の中塗り塗膜、未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜を、同時に加熱硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
上記方法IIは、未硬化中塗り塗膜上に、前記方法Iの塗膜形成方法を行うものである。方法IIにおける被塗物としては、下塗り塗膜を形成した自動車車体等が好ましい。上記下塗り塗膜は電着塗料によって形成されることが好ましく、カチオン電着塗料によって形成されることがさらに好ましい。
方法IIにおいて、中塗り塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で5〜60μm程度が好ましく、10〜40μm程度がより好ましく、15〜30μm程度が更に好ましい。また、本発明の水性塗料組成物の塗装膜厚は、硬化膜厚として、5〜30μm程度が好ましく、7〜18μm程度がより好ましく、10〜15μm程度が更に好ましい。また、クリヤー塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で10〜80μm程度が好ましく、15〜60μm程度とするのがより好ましい。
また、方法IIにおいて、中塗り塗料組成物として水性中塗り塗料組成物を用いた場合、該水性中塗り塗料組成物の塗装後は、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、40〜100℃程度が好ましく、50〜90℃程度がより好ましく、60〜80℃程度が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間程度が好ましく、1〜10分間程度がより好ましく、2〜5分間程度が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25℃〜80℃程度の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間程度吹き付けることにより行うことができる。
また、方法IIにおいて、前記水性塗料組成物塗装後は、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、40〜100℃程度が好ましく、50〜90℃程度がより好ましく、60〜80℃程度が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間程度が好ましく、1〜10分間程度がより好ましく、2〜5分間程度が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25℃〜80℃程度の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間程度吹き付けることにより行うことができる。また、前記クリヤー塗料組成物の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、40〜80℃程度で1〜60分間程度プレヒートすることができる。
未硬化中塗り塗膜、未硬化ベースコート塗膜及び未硬化クリヤーコート塗膜の3層塗膜の加熱硬化は、前述した公知の加熱手段により行うことができる。加熱温度は、80〜180℃程度が好ましく、100〜170℃程度がより好ましく、120〜160℃程度が更に好ましい。また、加熱時間は、10〜60分間程度が好ましく、20〜40分間程度がより好ましい。この加熱により、中塗り塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜の三層塗膜を同時に硬化させることできる。
上記方法I及びIIで用いられるクリヤー塗料組成物としては、自動車車体等の塗装用として公知の熱硬化性クリヤー塗料組成物をいずれも使用できる。例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等を挙げることができる。
また、上記クリヤー塗料としては、一液型塗料であってもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等の多液型塗料であってもよい。
また、上記クリヤー塗料組成物には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有させることができ、さらに体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
クリヤー塗料組成物の基体樹脂/架橋剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等が好ましい。
上記方法IIで用いられる中塗り塗料組成物としては、公知の熱硬化性中塗り塗料組成物をいずれも使用できる。例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂、架橋剤、着色顔料及び体質顔料を含有する熱硬化性塗料組成物を、好適に使用できる。
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
中塗り塗料組成物としては、有機溶剤型塗料組成物、水性塗料組成物、粉体塗料組成物のいずれを用いてもよい。これらのうち、水性塗料組成物を用いるのが好ましい。
上記方法I及びIIにおいて、中塗り塗料組成物及びクリヤー塗料組成物の塗装は、公知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法によって塗装することができる。
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を一層具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより限定されない。各例において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
ニトロ基が結合した芳香環を有する重合性不飽和モノマー(a)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、空気導入管及び滴下装置を備えた4つ口反応容器に、4−ニトロ安息香酸167部、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル170部、ハイドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)1.5部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド1.5部を加えた。次いで、反応容器中に乾燥空気を通気し、攪拌しながら130℃に昇温した。130℃に達したらグリシジルメタクリレート149部を1.5時間かけて滴下した。その後、反応液中に乾燥空気をバブリングさせながら130℃で2時間熟成した後、室温まで冷却して、固形分65%の重合性不飽和モノマー溶液(a−1)を得た(下記構造式(a−1))。
Figure 0005591044
製造例2
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、空気導入管及び滴下装置を備えた4つ口反応容器に、3−ニトロ安息香酸167部、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル170部、ハイドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)1.5部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド1.5部を加えた。次いで、反応容器中に乾燥空気を通気し、攪拌しながら130℃に昇温した。130℃に達したらグリシジルメタクリレート149部を1.5時間かけて滴下した。その後、反応液中に乾燥空気をバブリングさせながら130℃で2時間熟成した後、室温まで冷却して、固形分65%の重合性不飽和モノマー溶液(a−2)を得た(下記構造式(a−2))。
Figure 0005591044
その他の重合性不飽和モノマー(b)の製造
製造例3
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、空気導入管及び滴下装置を備えた4つ口反応容器に、安息香酸122部、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル146部、ハイドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)1.5部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド1.5部を加えた。次いで、反応容器中に乾燥空気を通気し、攪拌しながら130℃に昇温した。130℃に達したらグリシジルメタクリレート149部を1.5時間かけて滴下した。その後、反応液中に乾燥空気をバブリングさせながら130℃で1.5時間熟成した後、室温まで冷却して、固形分65%の重合性不飽和モノマー溶液(b−1)を得た。
樹脂組成物の製造
製造例4
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にエチレングリコールモノn−ブチルエーテル35部を仕込み95℃に昇温した。次いで、製造例1で得た重合性不飽和モノマー溶液(a−1)31部(固形分20部)、スチレン10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、メチルメタクリレート40部及びジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート4部からなるモノマー混合物(1)並びに「NFバイソマーS20W」(商品名、第一工業製薬社製、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、前記一般式(4)におけるRがメチル基、Rがメチル基、Rがエチレン基、mが45であり、分子量が約2,000であるメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートの50%水希釈品)40部(固形分20部)及びエチレングリコールモノn−ブチルエーテル20部からなるモノマー混合物(2)を3時間かけて並行滴下した。滴下終了後1時間熟成し、その後さらにエチレングリコールモノn−ブチルエーテル10部及びジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート1部からなる混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後1時間熟成し、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル4部を加えた後、減圧下95℃で反応溶媒25部を回収した。次いで、エチレングリコールモノメチルエーテル25部を添加して希釈し、固形分50%の樹脂組成物(C−1)を得た。得られた樹脂の水酸基価は84mgKOH/g、重量平均分子量は27,000であった。
製造例5
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にエチレングリコールモノn−ブチルエーテル35部を仕込み95℃に昇温した。次いで、製造例1で得た重合性不飽和モノマー溶液(a−1)31部(固形分20部)、スチレン4部、2−ヒドロキシエチルアクリレート4部、メチルメタクリレート42部及びジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート4部からなるモノマー混合物(1)並びに「NFバイソマーS10W」(商品名、第一工業製薬社製、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、前記一般式(4)におけるRがメチル基、Rがメチル基、Rがエチレン基、mが21であり、分子量が約1,000であるメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートの50%水希釈品)60部(固形分30部)及びエチレングリコールモノn−ブチルエーテル20部からなるモノマー混合物(2)を3時間かけて並行滴下した。滴下終了後1時間熟成し、その後さらにエチレングリコールモノn−ブチルエーテル10部及びジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート1部からなる混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後1時間熟成し、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル4部を加えた後、減圧下95℃で反応溶媒35部を回収した。次いで、エチレングリコールモノメチルエーテル25部を添加して希釈し、固形分50%の樹脂組成物(C−2)を得た。得られた樹脂は水酸基価が55mgKOH/g、重量平均分子量が22,000であった。
製造例6
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にエチレングリコールモノn−ブチルエーテル37部を仕込み115℃に昇温した。次いで、製造例1で得た重合性不飽和モノマー溶液(a−1)38部(固形分25部)、スチレン10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5部、「プラクセルFM−3」(商品名、ダイセル化学工業社製、2−ヒドロキシエチルメタクリレート1molにε−カプロラクトン3molを付加したモノマー)15部、メチルメタクリレート38部、メタクリル酸7部、エチレングリコールモノメチルエーテル20部及びジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート4部の混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後1時間熟成し、その後さらにエチレングリコールモノn−ブチルエーテル10部及びジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.5部の混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後1時間熟成し、エチレングリコールモノメチルエーテル15部を添加して希釈し、固形分50%の樹脂組成物(C−3)を得た。得られた樹脂は水酸基価が87mgKOH/g、酸価が46mgKOH/g、重量平均分子量が34,000であった。
製造例7〜8、10〜14
下記第1表に示す配合とする以外、製造例4と同様にして合成し、樹脂組成物(C−4)〜(C−5)、(C−7)〜(C−11)を得た。
製造例9
下記第1表に示す配合とし、回収する反応溶媒の量を30部とする以外、製造例4と同様にして合成し、樹脂組成物(C−6)を得た。
第1表に、樹脂組成物(C−1)〜(C−11)の原料組成(部)、固形分(%)、水酸基価(mgKOH/g)、酸価(mgKOH/g)及び重量平均分子量を示す。
Figure 0005591044
第1表において、樹脂組成物(C−1)〜(C−11)のうち、樹脂組成物(C−1)〜(C−10)は、ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)に該当する。
水酸基含有アクリル樹脂(D1)の製造
製造例15
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水128部、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、固形分30%の水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(D1−1)を得た。得られた水分散性水酸基含有アクリル樹脂は、酸価33mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/gであった。
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープSR−1025」2.8部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17部、「アデカリアソープSR−1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、スチレン3部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、メタクリル酸5.1部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
また、上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1−1)は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)に該当する。
製造例16
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、n−ブチルアクリレート29部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂溶液(D1−2)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/gであった。
水酸基含有ポリエステル樹脂(D2)の製造
製造例17
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃から230℃迄3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物に、カルボキシル基を導入するために、無水トリメリット酸38.3部を加えて、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノール(20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)で希釈し、固形分70%の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(D2−1)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1,400であった。原料組成において、酸成分中の脂環族多塩基酸の合計含有量は、該酸成分の合計量を基準として46モル%であった。
アルミニウム顔料分散液の製造
製造例18
攪拌混合容器内において、「アルペーストWL−7640」(商品名、東洋アルミニウム社製、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料のペースト、アルミニウム含有量59%)17部(固形分10部)、下記リン酸基含有樹脂溶液8部(固形分4部)、2−エチル−1−ヘキサノール(20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)35部、及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.5部を均一に混合して、アルミニウム顔料分散液(PA−1)を得た。
リン酸基含有樹脂溶液:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部及びイソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱した後、110℃に保持しつつ、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、分岐高級アルキルアクリレート(商品名「イソステアリルアクリレート」、大阪有機化学工業社製)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、下記リン酸基含有重合性モノマー15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部及びtert−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に滴下し、さらにtert−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部とからなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。リン酸基含有樹脂は、酸価が83mgKOH/g、水酸基価が29mgKOH/g、重量平均分子量が10,000であった。
リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部及びイソブタノール41部を入れ、90℃に昇温させた。その後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。次いで、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーの酸価は285mgKOH/gであった。
製造例19〜27
下記第2表に示す配合とする以外、製造例18と同様にして配合し、アルミニウム顔料分散液(PA−2)〜(PA−10)を得た。
Figure 0005591044
(注1−1)「アルペーストWJP−U75C」:商品名、東洋アルミニウム社製、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料のペースト、アルミニウム含有量51%
(注1−2)「アルペーストTCR−2060」:商品名、東洋アルミニウム社製、モリブデン酸処理されていないアルミニウム顔料のペースト、アルミニウム含有量74%。
(注1−3)「アルペースト7640NS」:商品名、東洋アルミニウム社製、モリブデン酸処理されていないアルミニウム顔料のペースト、アルミニウム含有量64%
(注2−1)エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル:20℃において100gの水に溶解する質量は0.5g
(注2−2)エチレングリコールモノn−ブチルエーテル:20℃において100gの水に溶解する質量は無限。
顔料分散液の製造
製造例28
撹拌混合容器に、製造例16で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(D1−2)33部(固形分18部)、「CYANINE BLUE G−314」(商品名、山陽色素社製、α型銅フタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー15:1)18部、「SOLSPERSE 12000」(商品名、LUBRISOL社製、フタロシアニン系顔料誘導体)1.4部及び脱イオン水54部を入れ、均一に混合し、更に、2−(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH7.5に調整した。次いで、得られた混合液を容量225mLの広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して顔料分散液(PB−1)を得た。
製造例29〜35
配合組成を下記第3表に示す通りとする以外は、製造例28と同様にして、顔料分散液(PB−2)〜(PB−8)を得た。
Figure 0005591044
(注3)「LIONOL BLUE 7185−PM」(商品名、東洋インキ製造社製、α型銅フタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー15:1)
(注4)「HELIOGEN BLUE L 7085」(商品名、BASF社製、β型銅フタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー15:3)
(注5)「HELIOGEN BLUE L 6700 F」(商品名、BASF社製、ε型銅フタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー15:6)
(注6)「CYANINE BLUE 5000P」(商品名、大日精化工業社製、コバルトフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー75)
(注7)「SOLSPERSE 5000」(商品名、LUBRISOL社製、フタロシアニン系顔料誘導体)。
水性塗料組成物の製造
実施例1
撹拌混合容器に、製造例15で得た水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(D1−1)100部、製造例17で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(D2−1)44部、メラミン樹脂(E−1)(メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分60%、重量平均分子量2,000)50部、製造例18で得たアルミニウム顔料分散液(PA−1)60部、製造例28で得た顔料分散液(PB−1)29部及び製造例4で得た樹脂組成物(C−1)1.0部を入れ、均一に混合し、更に、「プライマルASE−60」(商品名、ロームアンドハース社製、ポリアクリル酸系増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分24%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度50秒の水性塗料組成物(X−1)を得た。
実施例2〜20及び比較例1〜5
配合組成を下記第4表に示す通りとする以外は、実施例1と同様にして、pH8.0、固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度50秒である水性塗料組成物(X−2)〜(X−25)を得た。
Figure 0005591044
Figure 0005591044
Figure 0005591044
被塗物の作製
製造例36
30cm×45cmのリン酸亜鉛処理された冷延鋼板に、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料組成物(商品名「エレクロンGT−10」、関西ペイント社製)を膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させた。次いで、この電着塗膜上に中塗り塗料組成物(商品名「TP−65−2」、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂・アミノ樹脂系有機溶剤型塗料組成物)を膜厚35μmになるように塗装し、140℃で30分間加熱して硬化させた。かくして、鋼板上に電着塗膜及び中塗り塗膜を形成してなる被塗物を作製した。
塗膜形成方法
実施例21
実施例1で得られた水性塗料組成物(X−1)を、前記塗膜形成方法Iの2コート1ベーク方式におけるベースコート形成用塗料として使用して、被塗物上にベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜からなる複層塗膜を形成した。
すなわち、製造例36で得た被塗物に、製造直後の水性塗料組成物(X−1)を、回転霧化型のベル型塗装機を用いて、膜厚15μmとなるように塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、その未硬化塗面上にアクリル樹脂系有機溶剤型上塗りクリヤー塗料組成物(商品名「マジクロンKINO−1210」、関西ペイント社製)を膜厚40μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱してこの両塗膜を同時に硬化させた。かくして、被塗物上にベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜からなる複層塗膜が形成された試験板を得た。
また、製造直後の水性塗料組成物(X−1)に代えて、製造後40℃で10日間貯蔵した後の水性塗料組成物(X−1)を用いる以外は、上記と同様にして、貯蔵後の水性塗料組成物(X−1)を塗装した試験板を得た。
実施例22〜40及び比較例6〜10
水性塗料組成物(X−1)に代えて、第5表に示した水性塗料組成物を用いる以外は、実施例21と同様にして、実施例22〜40及び比較例6〜10の試験板を得た。
評価試験1
<塗料性能試験>
貯蔵安定性(色差):実施例21〜40及び比較例6〜10で得られた、製造直後の水性塗料組成物を塗装した試験板及び製造後40℃で10日間貯蔵した後の塗料組成物を塗装した試験板について、それぞれマルチアングル分光測色計「CM−512m3」(コニカミノルタ社製)を用いて、塗膜面に垂直な軸に対し75°の角度から光を照射し、反射した光のうち塗膜面に垂直な方向の光についてL、a、bを測色し、該試験板間の色差ΔE(JIS K 5600−4−6(1999))を算出した。ΔEが小さいほど、貯蔵による色の変化が小さく、塗料の貯蔵安定性が優れていることを示す。例えば、実用上、ΔEは1.5以下が好ましく、1以下がより好ましい。
貯蔵安定性(ガス発生量):実施例1〜20及び比較例1〜5で得た水性塗料組成物(X−1)〜(X−25)150gを容量300mLの三角フラスコの底部に入れ、40℃の恒温室にて温度が一定になるまで約1時間放置した。次いで、この三角フラスコの中央部にメスピペットをほぼ垂直方向に差し込み、メスピペットの下端部が水性塗料組成物中に没し且つ該メスピペットの下端部と該フラスコ底部との間に約5mmの隙間がある状態を保持した。そして、メスピペットの外側と三角フラスコの蓋部内側をコルク栓等で密閉し、外部から遮断しておき、メスピペットの内側は外部と連通させておいた。これを40℃で10日間貯蔵し、貯蔵中に発生したガスの圧力で押し上げられたメスピペット内部の水性塗料組成物の体積をメスピペットの目盛りから読み取った。その結果を第5表に示す。
<塗膜性能試験>
上記実施例21〜40及び比較例6〜10で得られた各試験板のうち、製造直後の水性塗料組成物を塗装した試験板について、平滑性、鮮映性、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性の評価を行なった。試験方法は、下記の通りである。
平滑性:各試験板について、「Wave Scan」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるLong Wave(LW)値に基づいて、平滑性を評価した。LW値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示す。
鮮映性:各試験板について、「Wave Scan」によって測定されるShort Wave(SW)値に基づいて、鮮映性を評価した。SW値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。
フリップフロップ性:角度を変えて各試験板を目視し、下記基準でフリップフロップ性を評価した;
A:目視の角度によるメタリック感の変化が顕著である(極めて優れたフリップフロップ性を有する)、
B:目視の角度によるメタリック感の変化が大きい(フリップフロップ性に優れる)、
C:目視の角度によるメタリック感の変化がやや小さい(フリップフロップ性がやや劣る)、
D:目視の角度によるメタリック感の変化が小さい(フリップフロップ性が劣る)。
メタリックムラ:各試験板を目視にて観察し、メタリックムラの発生程度を下記基準で評価した;
A:メタリックムラがほとんど認められず、極めて優れた塗膜外観を有する、
B:メタリックムラがわずかに認められるが、優れた塗膜外観を有する、
C:メタリックムラが認められ、塗膜外観がやや劣る、
D:メタリックムラが多く認められ、塗膜外観が劣る。
耐水性:試験板を、40℃の温水に240時間浸漬後引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板上の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べた。耐水性の評価基準は、次の通りである;
A:ゴバン目塗膜が100個残存し、且つフチカケが生じていない、
B:ゴバン目塗膜が100個残存しているが、フチカケが生じている、
C:ゴバン目塗膜が90〜99個残存している、
D:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
総合評価:本発明の属する水性塗料組成物の分野においては、貯蔵安定性、平滑性、鮮映性、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性の全てが優れていることが求められる。従って、下記の基準にて、総合評価を行った;
A:貯蔵安定性(ΔE)が1.5以下であり、貯蔵安定性(ガス発生量)が5(mL)以下であり、平滑性(LW値)が20以下であり、鮮映性(SW値)が12以下であり、かつフリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性が全てAである、
B:貯蔵安定性(ΔE)が1.5以下であり、貯蔵安定性(ガス発生量)が5(mL)以下であり、平滑性(LW値)が20以下であり、鮮映性(SW値)が12以下であり、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性が全てA又はBであり、かつ少なくとも1つがBである、
C:貯蔵安定性(ΔE)が1.5以下であり、貯蔵安定性(ガス発生量)が5(mL)以下であり、平滑性(LW値)が20以下であり、鮮映性(SW値)が12以下であり、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性が全てA、B又はCであり、かつ少なくとも1つがCである、
D:貯蔵安定性(ΔE)が1.5を超えるか、貯蔵安定性(ガス発生量)が5(mL)を超えるか、平滑性(LW値)が20を超えるか、鮮映性(SW値)が12を超えるか、又はフリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性のうち少なくとも1つがDである。
第5表に、評価試験の結果を示す。
Figure 0005591044
製造例37〜40
下記第6表に示す配合とする以外、製造例15と同様にして合成し、水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(D1−3)〜(D1−6)を得た。
第6表に、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1−3)〜(D1−6)水分散液の原料組成(部)、固形分(%)、酸価(mgKOH/g)及び水酸基価(mgKOH/g)を示す。
第6表において、コア部用モノマー乳化物中のメチレンビスアクリルアミド及びアリルメタクリレートは、重合性不飽和基を1分子中に2個有する重合性不飽和モノマーである。また、シェル部用モノマー乳化物中のスチレン及び2−エチルヘキシルアクリレートは、疎水性重合性不飽和モノマーである。
Figure 0005591044
また、第6表において、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1−3)〜(D1−6)のうち、(D1−3)〜(D1−4)は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(D1’)に該当する。
製造例41
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン113部、ネオペンチルグリコール131部、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物80部、イソフタル酸93部及びアジピン酸91部を仕込み、160℃から230℃迄3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を導入するために、さらに無水トリメリット酸33.5部を加え、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノール(20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)で希釈し、固形分70%の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(D2−2)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は,酸価が40mgKOH/g、水酸基価が161mgKOH/g、数平均分子量が1,300であった。原料組成において、酸成分中の脂環族多塩基酸の合計含有量は、該酸成分の合計量を基準として28モル%であった。
製造例42
希釈溶剤の2−エチル−1−ヘキサノールを、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル(20℃において100gの水に溶解する質量:無限大)とする以外は、製造例17と同様にして、水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(D2−3)を得た。
顔料分散液の製造
製造例43
撹拌混合容器に、製造例16で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(D1−2)22部(固形分12部)、「HOSTAPERM RED P2GL−WD」(商品名、CLARIANT社製、ペリレン系顔料、C.I.ピグメントレッド179)18部及び脱イオン水54部を入れ、均一に混合し、更に、2−(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH7.5に調整した。次いで、得られた混合液を容量225ccの広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して顔料分散液(PB−9)を得た。
製造例44〜49
配合組成を下記第7表に示す通りとする以外は、製造例43と同様にして、顔料分散液(PB−10)〜(PB−15)を得た。
Figure 0005591044
(注8)「PALIOGEN RED L3885」(商品名、BASF社製、ペリレン系顔料、C.I.ピグメントレッド179)
(注9)「PERRINDO MAROON 179 229−6438」(商品名、SunChemical社製、ペリレン系顔料、C.I.ピグメントレッド179)
(注10)「PALIOGEN BLUE L−6480」(商品名、BASF社製、スレン系顔料、C.I.ピグメントブルー60)
(注11)「MONOLITE BLUE 3R」(商品名、HEUBACH社製、スレン系顔料、C.I.ピグメントブルー60)
(注12)「CROMOPHTAL BLUE A3R」(商品名、Ciba社製、スレン系顔料、C.I.ピグメントブルー60)
水性塗料組成物の製造
実施例41
撹拌混合容器に、製造例15で得た水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(D1−1)100部、製造例17で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(D2−1)40部、メラミン樹脂(E−1)(メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分60%、重量平均分子量2,000)50部、製造例18で得たアルミニウム顔料分散液(PA−1)60部、製造例43で得た顔料分散液(PB−9)26部及び製造例4で得た樹脂組成物(C−1)10部を入れ、均一に混合し、更に、「プライマルASE−60」(商品名、ロームアンドハース社製、ポリアクリル酸系増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分24%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度50秒の水性塗料組成物(X−26)を得た。
実施例42〜75及び比較例11〜16
配合組成を下記第8表に示す通りとする以外は、実施例41と同様にして、pH8.0、固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度50秒である水性塗料組成物(X−27)〜(X−60)及び(X−63)〜(X−68)を得た。
実施例76
撹拌混合容器に、製造例15で得た水分散性水酸基含有アクリル樹脂分散液(D1−1)100部、製造例17で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(D2−1)40部、メラミン樹脂(E−1)(メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分60%、重量平均分子量2,000)50部、製造例26で得たアルミニウム顔料分散液(PA−9)60部、製造例43で得た顔料分散液(PB−9)26部及び製造例4で得た樹脂組成物(C−1)10部を入れ、均一に混合し、更に、「UH−752」(商品名、ADEKA社製、会合型増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分24%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度50秒の水性塗料組成物(X−61)を得た。
実施例77
撹拌混合容器に、製造例15で得た水分散性水酸基含有アクリル樹脂分散液(D1−1)100部、製造例17で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(D2−1)40部、メラミン樹脂(E−1)(メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分60%、重量平均分子量2,000)50部、製造例18で得たアルミニウム顔料分散液(PA−1)60部、製造例43で得た顔料分散液(PB−9)26部及び製造例4で得た樹脂組成物(C−1)10部を入れ、均一に混合し、更に、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度50秒の水性塗料組成物(X−62)を得た。
Figure 0005591044
Figure 0005591044
Figure 0005591044
Figure 0005591044
(注13)メラミン樹脂(E−2):メチルエーテル化メラミン樹脂、固形分80%、重量平均分子量800)。
(注14)「バイヒジュールVPLS2310」:商品名、住化バイエルウレタン社製、ブロック化ポリイソシアネート化合物、固形分38%。
塗膜形成方法
実施例78
実施例41で得られた水性塗料組成物(X−26)を、前記塗膜形成方法Iの2コート1ベーク方式におけるベースコート形成用塗料として使用して、被塗物上にベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜からなる複層塗膜を形成した。
即ち、製造例36で得た被塗物に、製造直後の水性塗料組成物(X−26)を、回転霧化型のベル型塗装機を用いて、膜厚15μmとなるように塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、その未硬化塗面上にアクリル樹脂系有機溶剤型上塗りクリヤー塗料組成物(商品名「マジクロンKINO−1210」、関西ペイント社製)を膜厚40μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱してこの両塗膜を同時に硬化させた。かくして、被塗物上にベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜からなる複層塗膜が形成された試験板を得た。
また、製造直後の水性塗料組成物(X−26)に代えて、製造後40℃で10日間貯蔵した後の水性塗料組成物(X−26)を用いる以外は、上記と同様にして、貯蔵後の水性塗料組成物(X−26)を塗装した試験板を得た。
実施例79〜114及び比較例17〜22
水性塗料組成物(X−26)に代えて、第9表に示した水性塗料組成物を用いる以外は、実施例78と同様にして、実施例79〜114及び比較例17〜22の試験板を得た。
評価試験2
水性塗料組成物として(X−26)〜(X−68)を用いる以外、前述の「評価試験1」と同様にして、貯蔵安定性、平滑性、鮮映性、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性の試験、ならびに総合評価を行った。
第9表に、評価試験の結果を示す。
Figure 0005591044

Claims (13)

  1. (A)モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料、
    (B)縮合多環系顔料
    (C)ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂及び
    (D)被膜形成性樹脂
    を含有し、縮合多環系顔料(B)がフタロシアニン系顔料(B1)又は1分子中に2個以上のケトン構造を有する縮合多環系顔料(B2)である、
    水性塗料組成物。
  2. フタロシアニン系顔料(B1)がα型銅フタロシアニン顔料、β型銅フタロシアニン顔料、ε型銅フタロシアニン顔料及びコバルトフタロシアニン顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種のフタロシアニン系顔料である請求項1に記載の水性塗料組成物。
  3. 1分子中に2個以上のケトン構造を有する縮合多環系顔料(B2)が、アントラキノン系顔料及び/又はペリレン系顔料である請求項1に記載の水性塗料組成物。
  4. ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)が、(a)下記一般式(1)
    Figure 0005591044
    [式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはニトロ基が結合した芳香環を示す]
    で示される重合性不飽和モノマー及び(b)その他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー成分を共重合することにより得られる共重合体である請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
  5. 重合性不飽和モノマー(a)が下記一般式(2)
    Figure 0005591044
    [式中、Rは水素原子又はメチル基を示す]
    で示される重合性不飽和モノマーである請求項4に記載の水性塗料組成物。
  6. 重合性不飽和モノマー(a)とその他の重合性不飽和モノマー(b)との質量比が、前者/後者の比で5/95〜60/40の範囲内にある請求項4又は5に記載の水性塗料組成物。
  7. その他の重合性不飽和モノマー(b)が、該モノマー(b)の一部として、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーを、重合性不飽和モノマー(a)及び該モノマー(b)の合計量を基準として、5〜50質量%含有する請求項4〜6のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
  8. 被膜形成性樹脂(D)100質量部を基準として、モリブデン酸処理されたアルミニウム顔料(A)が0.1〜80質量部、縮合多環系顔料(B)が0.01〜40質量部、ニトロ基が結合した芳香環を有する樹脂(C)が0.1〜30質量部の範囲内である請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
  9. さらに、硬化剤(E)を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
  10. さらに、フタロシアニン系顔料誘導体(F)を含有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の水性塗料組成物が塗装された物品。
  12. (1)被塗物に、請求項1〜10のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装してベースコート塗膜を形成する工程、
    (2)上記の未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
    (3)上記の未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜の両塗膜を、加熱して同時に硬化させる工程
    を含む複層塗膜形成方法。
  13. 請求項12に記載の複層塗膜形成方法により形成された複層塗膜を有する物品。
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