(第一実施形態)
以下、本発明をインクジェット式記録装置に適用した第一実施形態を、図1〜図10に従って説明する。図1は、外装ケースを取り外した状態のインクジェット式記録装置の斜視図を示す。図1に示すように、記録装置としてのインクジェット式記録装置(以下、プリンタ11と称す)は、上側が開口する略四角箱状の本体ケース12を備え、この本体ケース12内に架設されたガイド軸13にはキャリッジ14が主走査方向(図1におけるX方向)に案内されて往復動可能な状態で設けられている。キャリッジ14が背面側で固定された無端状のタイミングベルト15は、本体ケース12の背板内面上に配設された一対のプーリ16,17に巻き掛けられ、一方のプーリ16と駆動軸が連結されたキャリッジモータ(以下、「CRモータ18」という)が正逆転駆動されることにより、キャリッジ14は主走査方向Xに往復動する構成となっている。
キャリッジ14の下部には、インクを噴射する記録ヘッド19(記録手段)が設けられ、さらに本体ケース12内において記録ヘッド19と対向する下方位置には、記録ヘッド19と用紙P(記録媒体)との間隔を規定するプラテン20がX方向に延びる状態で配置されている。また、キャリッジ14の上部には、ブラック用およびカラー用の各インクカートリッジ21,22が着脱可能に装填されている。記録ヘッド19は、各インクカートリッジ21,22から供給された各色のインクを、色ごとのノズルから噴射(吐出)する。なお、インクカートリッジ21,22がキャリッジ14上に装填される図1に示すオンキャリッジタイプに限定されず、インクカートリッジがプリンタ本体側のカートリッジホルダ(図示せず)に装填されるオフキャリッジタイプも採用できる。
プリンタ11の背面側には、給紙トレイ23と、給紙トレイ23上に積重された多数枚の用紙Pのうち最上位の1枚のみを分離して副走査方向Y下流側へ供給する自動給紙装置(Auto Sheet Feeder)24とが設けられている。
また、本体ケース12の図1における右側下部に配設された紙送りモータ(以下、「PFモータ25」という)が駆動されることにより、紙送りローラ及び排紙ローラ(いずれも図示省略)が回転駆動されて、用紙Pが副走査方向Yへ搬送される。そして、キャリッジ14を主走査方向Xに往復動させながら記録ヘッド19のノズルから用紙Pに向けてインクを噴射する印字動作と、用紙Pを副走査方向Yに所定の搬送量で搬送する紙送り動作とを略交互に繰り返すことで、用紙Pに文字や画像等の印刷が施される。
また、プリンタ11には、キャリッジ14の移動距離に比例する数のパルスを出力するリニアエンコーダ26がガイド軸13に沿って延びるように架設されており、リニアエンコーダ26の出力パルスを用いて求められるキャリッジ14の移動位置、移動方向及び移動速度に基づいて、キャリッジ14の速度制御及び位置制御は行われる。なお、プリンタ11においてホームポジション(キャリッジ移動経路上の印刷領域外の一端部(図1における右端位置))に位置した際のキャリッジ14の直下には、記録ヘッド19のノズル目詰まり等を予防・解消するためのクリーニング等を行うメンテナンス装置28が配設されている。また、プラテン20の下側には、メンテナンス装置28が記録ヘッド19のノズルから吸引したインクが廃棄される廃液タンク29が設けられている。
図2は、記録ヘッドユニット(印字データ転送装置)の構成を示す。図2に示すように、記録ヘッドユニットは、記録ヘッド19と、本体ケース12内に配設された回路基板30と、記録ヘッド19と回路基板30とを電気的に接続するために回路基板30とキャリッジ14との間を接続するフレキシブルフラットケーブル(Flexible Flat Cable)(以下、「FFC31」という)とを備えている。このFFC31は、キャリッジ14の移動を妨げないように、長めのものが用いられている。例えば大判の用紙を印刷対象とするプリンタ11では、FFC31は例えば2〜3mのものが使用される。
回路基板30上には、印字データ及び駆動信号等の出力元となるASIC32(Application Specific IC)が実装されている。ASIC32は、記録ヘッド19内にノズル毎に設けられた吐出駆動素子34を吐出駆動制御するための印字データ及び駆動信号等を出力し、その出力された印字データ及び駆動信号等はFFC31内のデータ線DL及び信号線SL1〜SL4等を通じて記録ヘッド19内のヘッド駆動回路35に転送される。そして、ヘッド駆動回路35が印字データに応じた駆動パルスを各吐出駆動素子34に選択的に出力することにより、各吐出駆動素子34と対応する各ノズルからインク滴が選択的に吐出され、用紙Pに対して印刷データに基づく画像や文字等の印刷が行われる。なお、データ線DLを転送されるデータには、印字データSI及び制御パラメータSPがある。また、信号線SL1〜SL4には、駆動信号COM、ラッチ信号LAT、スイッチ信号CH、クロックCLKなどが送信される。これらのデータ及び各信号等の詳細については後述する。
図3は、記録ヘッドの底面(ノズル開口面)を示す。図3に示すように、記録ヘッド19の底面は複数個のノズルが開口するノズル開口面19Aとなっている。ノズル開口面19Aには、副走査方向(図3における上下方向)に一定のノズルピッチで一列に配列された計180個のノズル♯1〜♯180によりそれぞれ構成された、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の計4列のノズル列が形成されている。本例では、合計4列のノズル列を用いて、K,C,M,Yの4色の印刷を行う。なお、ノズル列毎のノズルは、1列状配列に限らず、千鳥配列としてもよい。
また、図3に示すように、記録ヘッド19には、各ノズル♯1〜♯180と対応する吐出駆動素子34がノズル数と同数内蔵されている(但し、図3では記録ヘッド19の外側に模式的に描いている)。吐出駆動素子34は、例えば圧電振動子又は静電駆動素子からなり、所定駆動波形の駆動パルス(電圧パルス)が印加されると、電歪作用又は静電駆動作用により、ノズルに連通するインク室の内壁部(振動板)を振動させて、インク室を膨張・圧縮させることによりノズルからインク滴を吐出させる。なお、吐出駆動素子34はノズルと対向する位置に配置され、その素子配列はノズル列と同様の配列パターンとなっている。本実施形態では、吐出駆動素子34が記録素子に相当する。
次に、プリンタ11の電気的構成について図4を用いて説明する。図4は、プリンタ11の電気的構成を示すブロック図である。
図4に示すように、このインクジェット式のプリンタ11は、コントローラ40を備えている。コントローラ40は、図示しないホスト装置(例えばパーソナルコンピュータ)からの印刷データを受信する外部インタフェース(以下、「外部I/F41」という)と、各種データを一時記憶するためのRAM42と、各種プログラム等を記憶したROM43と、CPU等からなる制御部45と、クロックCLKを発生する発振回路46と、記録ヘッド19へ供給する駆動信号COM等を生成する駆動信号生成手段としての駆動信号生成回路47と、印字データ等の転送を行う転送手段としての印字データ転送部48と、インタフェース(以下、内部I/Fという)49とを備えている。なお、コントローラ40を構成するCPU、ASIC32、RAM42、ROM43等は、回路基板30(図2参照)に実装されている。例えば発振回路46、駆動信号生成回路47及び印字データ転送部48は、ASIC32内に設けられている。また、制御部45は、モータ駆動回路51,52を介してCRモータ18及びPFモータ25それぞれ駆動制御する。
RAM42は、入力バッファ42A、ワークメモリ42B及び出力バッファ42Cとして利用される。入力バッファ42Aには、外部I/F41がホスト装置から受信した印刷データが一時記憶される。ワークメモリ42Bには、処理途中のデータ等が一時記憶される。出力バッファ42C(イメージバッファ)には、記録ヘッド19へシリアル転送される印刷用イメージデータとしての印字データSIが展開される。
制御部45は、入力バッファ42A内の印刷データを読み出して解析し、ROM43内のフォントデータやグラッフィック関数等を参照して複数ビットの印字データSIに展開する。この展開された印字データSIは出力バッファ42Cに記憶され、記録ヘッド19の1行分に相当する印字データSIが得られると、この1行分の印字データSIは、内部I/F49を介して記録ヘッド19にシリアル伝送される。
また、制御部45は、記録ヘッド19にラッチ信号LATやスイッチ信号CH(チャンネル信号)を供給する指示を駆動信号生成回路47に与える。ラッチ信号LAT及びスイッチ信号CHは、駆動信号COMを構成する第1駆動パルスDP1〜第4駆動パルスDP4の供給開始タイミングを規定する。
駆動信号生成回路47は、制御部45からの指示(トリガ信号)に基づき、駆動信号COM、ラッチ信号LAT、スイッチ信号CH(チャネル信号)を生成する。印字データ転送部48は、発振回路46からのクロックCLK、出力バッファ42Cからの印字データSI及びROM43からの制御パラメータSP(パターンデータ)を、所定のタイミングでノズル1列分ずつ転送する。
駆動信号生成回路47は、後述する図8(a)に示すように、大きな振幅の第1駆動パルスDP1、無ドット(インク滴吐出無し)の際にノズル内のインクを微振動させるための小さな振幅の第2駆動パルスDP2、中程度の振幅の第3駆動パルスDP3、大きな振幅の第4駆動パルスDP4を、時系列的に配置した駆動信号COMを印刷周期TA単位で繰り返し生成する。なお、本実施形態では、この印刷周期TAが、「一記録周期」に相当する。
記録ヘッド19は、図3に示したノズル列構造や、インク室(圧力発生室)、更にはインク流路系等を含む機械的構成の他、図4に示すヘッド駆動回路35を備えている。ヘッド駆動回路35は、第1シフトレジスタ(以下、「第1SR61」という)、第2シフトレジスタ(以下、「第2SR62」という)、第3シフトレジスタ(以下、「第3SR63」という)、第1ラッチ回路64、第2ラッチ回路65、制御ロジック66、デコーダ67、レベルシフタ68、及びスイッチ回路69を備えている。そして、第1〜第3SR61〜63、各ラッチ回路64,65、デコーダ67、レベルシフタ68及びスイッチ回路69は、記録ヘッド19のノズル毎の吐出駆動素子34に対応して複数設けられている。
図5は、ヘッド駆動回路の電気的構成を示すブロック図である。なお、図5では、ヘッド駆動回路35のうち、ノズル列一列分の吐出駆動制御を行う部分を示している。ノズル列一列分の吐出駆動制御を行う部分は、図5に示すように、第1SR62A〜62N、第2SR63A〜63N、第1ラッチ回路64A〜64N、第2ラッチ回路65A〜65N、デコーダ67A〜67N、スイッチ回路69A〜69N、及び吐出駆動素子34A〜34Nを、それぞれノズル列一列分のノズル数と同数(本例では180個ずつ)備えている。ここで、図5では、第3SR63、制御ロジック66及びレベルシフタ68(図4参照)は省略されている。
そして、記録ヘッド19は、コントローラ40からの印字データSIに基づいてインク滴を吐出する。すなわち、コントローラ40からの印字データSIは、発振回路46からのクロックCLKに同期して、内部I/F49からFFC31を介して第1SR61及び第2SR62にシリアル伝送される。この印字データSIは1ドット(1ノズル)当たり2ビットのデータであり、無ドット(非記録)、小ドット、中ドット、大ドットからなる4階調を表す階調情報によって構成される。
図8は、駆動信号、デコーダの翻訳ルール、印字データSI及び制御パラメータSPの構成を説明するものであり、図8(a)は駆動信号COMを構成する駆動パルス、図8(b)はデコーダによる翻訳ルールを示すテーブル、図8(c)は印字データSI及び制御パラメータSPを示す。本実施形態では、図8(b)に示すとおり、非記録(微振動)が「00」であり、小ドットが階調情報「01」であり、中ドットが階調情報「10」であり、大ドットが階調情報「11」である。
図8(c)に示すように、印字データSIは、180ノズル分(一ノズル列分)の階調情報「HL」のうち、180ノズル分の上位ビットだけからなる上位ビットデータ「H DATA」(180ビット)と、180ノズル分の下位ビットだけからなる下位ビットデータ「L DATA」(180ビット)とからなる。また、制御パラメータSPは、第4駆動パルスDP4の情報(4ビット)、第3駆動パルスDP3の情報(4ビット)、第2駆動パルスDP2の情報(4ビット)、及び第1駆動パルスDP1の情報(4ビット)を備える。印字データSIと制御パラメータSPは、転送路としてのデータ線DLを通じてノズル列毎(つまり各色の180ノズル分ずつ)シリアル転送される。
印字データSIのうち、図8に示す上位ビット(H DATA)のデータが第1SR61(61A〜61N)に入力され、下位ビット(L DATA)のデータが第2SR62(62A〜62N)に入力される。つまり、第1SR61A〜61Nには、印字データSIのうち上位ビットH DATAが1ビットずつ入力され、第2SR62A〜62Nには、下位ビットL DATAが1ビットずつ入力される。
図4に示すように、第1SR61には第1ラッチ回路64が電気的に接続され、第2SR62には第2ラッチ回路65が電気的に接続されている。そして、コントローラ40からのラッチ信号LATが各ラッチ回路64,65に入力されると、第1ラッチ回路64は、図8に示した印字データSIの上位ビット(H)のデータをラッチし、第2ラッチ回路65は、図8に示した印字データSIの下位ビット(L)のデータをラッチする。このような動作をする第1SR61及び第1ラッチ回路64の組と、第2SR62及び第2ラッチ回路65の組は、それぞれが記憶回路を構成し、デコーダ67に入力される前の印字データSIを一時的に記憶する。
図7は、駆動信号生成回路47及び印字データ転送部48からの出力データ及び出力信号のタイミングチャートである。
さて、制御部45は、ホスト装置からの印刷データを2ビットの階調情報からなる印字データSIに展開する。例えば、制御部45は、印刷データを、非印字の印字データ(階調情報00)、小ドットの印字データ(階調情報01)、中ドットの印字データ(階調情報10)、大ドットの印字データ(階調情報11)に展開する。展開された印字データは、1ノズル列分、すなわち、上位ビット180(H DATA)及び下位ビット180(L DATA)からなる印字データSIの後に16ビットの制御パラメータSPが続き、図4に示したように、FFC31内の印字データSIと共通のデータ線DLによりプリンタ本体内のコントローラ40から記録ヘッド19に転送される。
180ノズル分の印字データSIのうち上位ビットのみの180ビットが第1SR61にセットされ、下位ビットのみの180ビットが第2SR62に格納される。そして、印字データSIの後に続く16ビットの制御パラメータSPが第3SR63にセットされる。第1SR61及び第2SR62にセットされた後に、ラッチ信号LATのタイミングでラッチ回路64,65にラッチされる。一方、制御パラメータSPは、印字データSIと、選択される駆動パルスDP1〜DP4との関係を規定するデータであり、印字データSIに連続して記録ヘッド19にシリアル転送され、第3SR63にセットされた後にラッチ信号LATにより確定されて、制御ロジック66に入力される。この制御ロジック66は、例えば組み合わせ回路等と同様の公知の構成を用いることができる。
第1及び第2ラッチ回路64,65でラッチされた2ビットの印字データは、デコーダ67に入力される。このデコーダ67は翻訳手段として機能し、2ビットの印字データを翻訳してパルス選択情報(図8(b)参照)を生成する。本実施形態のデコーダ67には、制御ロジック66からパルス選択信号が入力されており、このパルス選択信号に基づいてパルス選択情報を生成する。
デコーダ67によって翻訳されたパルス選択情報は、上位ビット側から順に、タイミング信号によって規定されるタイミングが到来する毎にレベルシフタ68に入力される。例えば、印刷周期TAにおける最初のタイミング(期間T1の開始時)ではパルス選択情報の最上位ビットのデータがレベルシフタ68に入力され、2番目のタイミング(期間T2の開始時)ではパルス選択情報における2番目のビットのデータがレベルシフタ68に入力される。このレベルシフタ68は、電圧増幅器として機能し、パルス選択情報が「1」の場合には、スイッチ回路69を駆動できる電圧、たとえは数十ボルト程度の電圧に昇圧された電気信号を出力する。レベルシフタ68で昇圧された「1」のパルス選択情報は、スイッチ手段として機能するスイッチ回路69に供給される。このスイッチ回路69の入力側には、駆動信号生成回路47からの駆動信号COMが供給されており、スイッチ回路69の出力側には吐出駆動素子34が接続されている。
パルス選択情報に基づいてスイッチ回路69の動作が制御されることにより、吐出駆動素子34への第1〜第4駆動パルスDP1〜DP4の選択的な供給が行われる。例えば、スイッチ回路69に加わるパルス選択情報が「1」である期間中は、スイッチ回路69がオンしてそのときの駆動パルスが吐出駆動素子34に供給され、この駆動パルスに応じて吐出駆動素子34の電位レベルが変化する。一方、スイッチ回路69に加わるパルス選択情報が、「0」の期間中は、レベルシフタ68からはスイッチ回路69を作動させる電気信号が出力されない。このため、スイッチ回路69が切断状態になって吐出駆動素子34へは駆動パルスが供給されない。
図6は、駆動信号生成回路及び印字データ転送部の構成を示すブロック図である。図6に示すように、駆動信号生成回路47は、制御部45から波形トリガのパルスを入力する度に、駆動信号COM、ラッチ信号LAT及びスイッチ信号CHを、内部I/F49及びFFC31内の信号線を通じて記録ヘッド19側のヘッド駆動回路35に送信する。このとき、印字データ転送部48へは駆動信号生成回路47からデータトリガDT及びスイッチ信号CHが入力される。印字データ転送部48は、データトリガDTを入力すると、出力バッファ42Cから読み込んだ印字データSI(上位ビットと下位ビット)と、ROM43から読み込んだ制御パラメータSPとをこの順番でシリアル転送する。本実施形態では、印字データ転送部48は、転送制御手段としての印字データ停止制御部50を備えている。印字データ停止制御部50は、スイッチ信号CHのパルスの立ち上がりエッジを検出すると、印字データ転送部48によるデータSI,SPの転送を一時停止させる。印字データ停止制御部50は、スイッチ信号CHのパルスの立ち下がりを検出すると、一時停止していたデータSI,SPの転送を再開する。
図7は、駆動信号及びデータの転送に係るタイミングチャートを示す。なお、図7における最上段の駆動信号COMは比較例であり、その下側の本実施形態の駆動信号COMは、比較例のものに比べ、各駆動パルスの周期が振幅の割に短くなっており、印刷周期TAが短縮されている。
図7に示すように、駆動信号COMの出力が開始されると、1ドットの制御周期である印刷周期TAの間に、各期間T1〜T4に合わせて、4つの駆動パルスDP1〜DP4が順番に送られる。この駆動信号COMの開始タイミング(印刷周期TAの開始タイミング)で、ラッチ信号LATのパルスが発生する。スイッチ信号CHは、印刷周期TA内において、前の駆動パルスから次の駆動パルスへ切り替わるタイミングを示すパルスである。よって、駆動信号COMが4つの駆動パルスDP1〜DP4からなる本例では、第1駆動パルスDP1から第2駆動パルスDP2への切り替わり、第2駆動パルスDP2から第3駆動パルスDP3への切り替わり、第3駆動パルスDP3から第4駆動パルスDP4への切り替わりのタイミング毎に、スイッチ信号CHのパルスが発生する。なお、本例ではスイッチ信号CHのパルスの立ち上がりが、第2〜第4駆動パルスDP2〜DP4への切り替わりタイミングとなっている。また、ラッチ信号LATのパルスの立ち上がりが、印刷周期TA(つまり、第1駆動パルスDP1)の切り替わりタイミングとなっている。
印字データ転送部48は、データトリガDTのパルスに基づき、駆動信号生成回路47の出力タイミングに同期するように、データSI,SP及びクロックCLKの転送を行う。詳しくは、駆動信号生成回路47が波形トリガに基づき、ラッチ信号LATの出力タイミングに若干遅れて生成したデータトリガDTのパルスが、印字データ転送部48へ入力される。印字データ転送部48は、図7に示すデータトリガDTのパルスを検出すると、そのパルスをトリガとし、出力バッファ42Cから読み込んだ印字データSIと、ROM43から読み込んだ制御パラメータSPとを、記録ヘッド19内のヘッド駆動回路35へ転送するシリアル転送を開始する。このとき、データSI,SPの転送に同期してクロックCLKが出力される。こうしてFFC31の配線を通じて、図7に示すタイミングで、印刷周期TAの間に、駆動信号COM、ラッチ信号LAT、スイッチ信号CH、クロックCLKの送信、及びデータSI,SPの転送が行われる。
図6に示す印字データ停止制御部50は、スイッチ信号CHのパルス出力期間だけ印字データ転送部48によるデータSI,SPの転送を一時停止させる機能を有している。その結果、図7に示すように、スイッチ信号CHのパルスが発生する期間では、印字データ転送部48によるデータSI,SP及びクロックCLKの転送が一時的に停止される。
スイッチ信号CHのパルスがFFC31上を伝送後、一瞬(ナノ秒オーダー)の遅れを伴って、スイッチ回路69のオン・オフ動作による電圧変動に起因するノイズがFFC31上に発生する。本実施形態の場合、FFC31を転送されるデータSI,SPの転送時間は、数10マイクロ秒程度であり、スイッチ信号CHのパルスの立ち上がりから一瞬(ナノ秒オーダー)遅れてFFC31に発生するノイズが、データSI,SPに乗る虞があるので、ノイズ発生期間においてはデータSI,SPの転送を一時停止するようにしている。
ここで、駆動信号生成回路47が生成する駆動信号COMについて説明する。本実施形態における駆動信号生成回路47は、図7、図8に示すように、インク滴の量が異なる4つの駆動パルスDP1〜DP4を印刷周期TA内で配置した一連の駆動信号を生成する。
この駆動信号COMは、期間T1で発生する第1駆動パルスDP1と、期間T1の後の期間T2で発生する第2駆動パルスDP2と、期間T2の後の期間T3で発生する第3駆動パルスDP3と、期間T3の後の期間T4で発生する第4駆動パルスDP4とを有し、印刷周期TAで繰り返し発生される信号である。この駆動信号COMにおいて、第1駆動パルスDP1、第2駆動パルスDP2、第3駆動パルスDP3、及び第4駆動パルスDP4は、それぞれ図7及び図8に示す波形形状をもち、吐出駆動素子34に供給されることにより記録ヘッド19のノズルから所定量のインク滴を吐出させる。
次に、デコーダ67からスイッチ回路69に与えられる4ビットのパルス選択情報について、図8を参照しつつ説明する。
まず、ノズル毎の2ビットの印字データSI[H,L]は、記録ヘッド19内のデコーダ67によって、上述した4ビットのパルス選択情報(D1,D2,D3,D4)に翻訳される。ここで、D1は第1駆動パルスDP1の選択信号、D2は第2駆動パルスDP2の選択信号、D3は第3駆動パルスDP3の選択信号、D4は第4駆動パルスDP4の選択信号である。この4ビットのパルス選択情報(D1,D2,D3,D4)は、各ノズルに対応したスイッチ回路69に与えられる。このとき、図4に示すように、全ノズル(180ノズル)についての1ノズル当たり2ビットの印字データSIは、第1及び第2SR61,62にセットされ、次のラッチ信号LATによって各ラッチ回路64,65にラッチされる。そして、各ラッチ回路64,65からデコーダ67に入力された印字データSIは、デコーダ67によって、ラッチ信号LAT又はスイッチ信号CHに同期したタイミングで制御ロジック66から入力される選択信号を参照して、4ビットのパルス選択情報に翻訳される。そして、デコーダ67からは、駆動パルスと同期したタイミングで選択信号がスイッチ回路69に出力される。すなわち、ラッチ信号LATによって第1駆動パルスDP1の発生が検出された時には、ノズル毎にD1のデータを出力し、次のスイッチ信号CHによって第2駆動パルスDP2の発生が検出された時には、ノズル毎にD2のデータを出力する。
以上のように、4段階のドット階調を行う場合、真理値表に対応する制御パラメータSP(パターンデータ)を組み合わせ回路等よりなる制御ロジック66に入力することを介して印字データ(階調値)と駆動パルスとの組み合わせを自由に設定することが可能である。このとき、1ノズル列分の印字データSIを転送する度に、それに続いて16ビットの制御パラメータSPを送る。制御パラメータSPは、印字データSIと、選択される駆動パルスDP1〜DP4との関係を規定するデータであり、例えば図8(c)に示す例では、[1000011000011100]からなる16ビットのデータからなる。ここで、制御パラメータSPは、図8(c)に示すように、1駆動パルスにつき4ビットの情報からなり、第4駆動パルスDP4、第3駆動パルスDP3、第2駆動パルスDP2、第1駆動パルスDP1の4ビットの各情報が順に転送される。制御パラメータSPは、図8(b)のテーブルにおいて、印字データ「11」「10」「01」「00」の順番(つまり、大、中、小、微振動の順番)で上位ビット側から順に配列された1駆動パルス当たり4ビットの情報である。
従って、図8(c)示すように、制御パラメータSPは、第4駆動パルスの「1000」、第3駆動パルスの「0010」、第2駆動パルスの「0001」、第1駆動パルスの「1100」の順に送られ、[1000011000011100]の16ビットからなる情報となる。
そして、この制御パラメータSPに基づいて、図8(b)に示すテーブルを真理値表として、各印字データSI[H,L]に対応したパルス選択情報が得られる。すなわち、印字データ「00」には、パルス選択情報(0100)、印字データ「01」には、パルス選択情報(0010)、印字データ「10」には、パルス選択情報(1010)、印字データ「11」には、パルス選択情報(1001)が、それぞれ対応して得られる。パルス選択情報の最上位ビットが第1駆動パルスDP1に対応し、2番目のビットが第2駆動パルスDP2に対応し、3番目のビットが第3駆動パルスDP3に対応し、最下位ビットが第4駆動パルスDP4に対応している。
デコーダ67は、印字データに応じたパルス選択情報(D1,D2,D3,D4)を対応する4つの駆動パルスDP1〜DP4にそれぞれ同期させて出力する。スイッチ回路69は、デコーダ67からレベルシフタ68を介して昇圧された状態で入力された各ビットの値「0」又は「1」に応じて吐出駆動素子34に対する各駆動パルスの供給あるいは非供給を選択する。そして、パルス選択情報の最上位ビットが「1」の場合には、期間T1でスイッチ回路69が接続状態になり、2番目のビットが「1」の場合には、期間T2でスイッチ回路69が接続状態になる。さらに3番目のビットが「1」の場合には、期間T3でスイッチ回路69が接続状態になり、最下位ビットが「1」の場合には、期間T4でスイッチ回路69が接続状態になる。そして、ビット値が「0」の場合は、その期間においてスイッチ回路69が接続されない。
従って、小ドットの印字データ「01」に基づき、対応する吐出駆動素子34には、第3駆動パルスDP3が供給され、中ドットの印字データ「10」に基づいて、対応する吐出駆動素子34には、第1駆動パルスDP1及び第3駆動パルスDP3が供給され、大ドットの印字データ「11」に基づいて、対応する吐出駆動素子34には、第1駆動パルスDP1及び第4駆動パルスDP4が供給される。
よって、図8(b)に示すように、印字データ「11」の「大ドット」の場合は、第1駆動パルスDP1と第4駆動パルスDP4が選択され、大きなインク滴を2個吐出することで(図8(a)参照)、大ドットを形成する。また、図8(b)に示すように、印字データ「10」の「中ドット」の場合は、第1駆動パルスDP1と第3駆動パルスDP3が選択され、大小のインク滴を2個吐出することで(図8(a)参照)、中ドットを形成する。さらに、図8(b)に示すように、印字データ「01」の「小ドット」の場合は、第3駆動パルスDP3が選択され、小さなインク滴を1個吐出することで(図8(a)参照)、小ドットを形成する。また、図8(b)に示すように、印字データ「00」の「微振動」の場合は、第2駆動パルスDP2が選択され、インク滴を吐出させない無ドットのときにノズル内のインクを微振動させてインクの増粘を抑えてインク滴の吐出不良を防止する。
さて、印字データ転送部48は、データトリガDTを入力する度に、データSI,SPの転送を開始する。このデータSI,SPの転送途中において印字データ停止制御部50は、スイッチ信号CHのパルスの立ち上がりを検出すると、データSI,SPの転送を停止する。そして、印字データ停止制御部50は、スイッチ信号CHのパルスの立ち下がりを検出すると、データSI,SPの転送を再開する。このため、図7に示すように、スイッチ信号CHのパルス発生期間では、データSI,SP及びクロックCLKの転送が一時的に停止される。この転送の一時停止は、1ビット単位で行われる。
このとき、FFC31を通ってヘッド駆動回路35内へ伝送されたスイッチ信号CHのパルスに基づくタイミングで起こるスイッチ回路69のオン・オフ動作に起因して、FFC31にはその伝送から一瞬(ナノ秒オーダー)遅れてノイズが発生するが、データSI,SPの転送の一時停止により、データSI,SPはそのノズルの影響を受けない。
このようにノイズの発生期間は、スイッチ信号CHのパルス発生期間とほぼ同時でほとんど期間が重複するため、本実施形態では、スイッチ信号CHのパルスに基づき、このパルス発生期間においてデータSI,SPの転送の一時停止を行うことで、データSI,SPへのノイズの影響を回避させている。ノイズは発生から徐々に減衰してスイッチ信号CHのパルス発生期間を超えて減衰したノイズが残っていても、データSI,SPへの影響はほとんど無視できるので、特にノイズの大きな期間においてデータSI,SPを回避できればよい。もちろん、スイッチ信号CHのパルス幅をノイズ発生期間に合わせて設定することもできる。
ここで、スイッチ信号CH(チャネル信号)のタイミングでのデータ転送を回避する方法をとった場合、駆動パルスの周期(期間T)が上位ビットH DATA又は下位ビットL DATAの転送所要時間よりも長い駆動パルスを2つ確保する必要があった。しかし、本実施形態では、ノイズの発生期間にデータ転送を一時停止させる構成なので、図7に示すように、全ての駆動パルスDP1,DP2,DP3,DP4の周期を上位ビットH DATA又は下位ビットL DATAの転送所要時間よりも短く設定することができる。このため、比較例の駆動信号COMに比べ、印刷周期TAを短縮できる。印刷周期TAを短縮できれば、1ノズル列当たりのデータ転送時間を短縮でき、ひいては印刷スループットの向上に繋がる。
本実施形態の記録データ転送装置を採用すれば、駆動パルスの配列順序の変更や、駆動パルスの種類の選択の自由度が増すので、図9及び図10に示す駆動信号COMの採用も可能となる。
図9は、印刷周期TA内の4つの駆動パルスのうち、図7における第3駆動パルスと第4駆動パルスとを入れ替えた例における各種信号及びデータのタイミングチャートを示す。図9は、である。図9に示すように、第3駆動パルスDP3が振幅の大きな電圧波形となっており、第4駆動パルスDP4が、振幅が中程度の電圧波形となっている。本実施形態によれば、駆動パルスの配列順序に関係なく、印刷周期TAからスイッチ信号CHのパルス発生期間(つまり一時停止時間)を差し引いた時間が、データSI,SPの転送時期より長ければ、データ転送時間を印刷周期TA内に収めることができるので、駆動パルスの配列順序の設定の自由度が増す。例えば複数の駆動パルスを選択するドットサイズ(例えば大・中ドット)の場合、選択される2つの駆動パルスが隣接するもの同士となるように駆動パルスの配列順序を変更することにより、時間差で着弾する2つのインク滴の着弾位置が近くなり、より適切なドット形状(例えば円形)が得やすくなる。
図10は、駆動信号COMを構成する複数の駆動パルスDP1〜DP4を、振幅が中程度の駆動パルスで統一した例における各種信号及びデータのタイミングチャートである。但し、最後の駆動パルスDP5は、微振動用のものである。本実施形態によれば、このようにドット形成に使用される全ての駆動パルスDP1〜DP4を、比較的振幅の小さい短周期のものを選択することもできる。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)スイッチ回路69のオン・オフ動作に起因してFFC31の配線上に発生するノズルの影響を受ける期間においてデータSI,SPの転送を一時停止させる。このため、データSI,SPがノイズの影響を受けることを回避できる。よって、駆動信号COMを構成する駆動パルスの配列順序や駆動パルスの周期設定の自由度が増す。よって、複数の駆動パルスの配列順序の変更により良好なドット形成を実現できたり、駆動パルスの周期を短くする設計変更により、印刷スループットの向上を図ったりすることができる。
(2)ノイズ発生期間がスイッチ信号CHのパルス発生期間とほぼ重複することから、スイッチ信号CHに基づいてデータ転送停止開始時期を定めているので、スイッチ回路69のスイッチング動作に起因するノイズのデータSI,SPへの影響をタイミング良く回避できる。
(3)スイッチ信号CHのパルスの立ち上がりタイミングでデータSI,SPの転送を停止し、スイッチ信号CHのパルスの立ち下がりタイミングでデータSI,SPの転送を再開する。つまり、スイッチ信号CHのパルス発生期間を、データ転送停止期間としているので、スイッチ信号CHと同期して起こるスイッチ回路69のオン・オフ動作に起因するノイズのデータSI,SPへの影響をタイミング良く回避できる。
(4)データSI,SPの転送の一時停止のタイミングを決めるためにスイッチ信号CHのパルスを利用するので、転送の一時停止専用のパルスを別途生成する必要がないので、記録データ転送装置の構成を簡単に済ませることができる。
(第二実施形態)
次に第二実施形態を図11に基づいて説明する。この第二実施形態では、図11に示す印字データ転送部が、前記第一実施形態における図6に示したものと異なる。その他の構成については、前記第一実施形態と同様なので、特に異なる図11の構成について詳細に説明する。前記第一実施形態では、データ転送停止期間が、スイッチ信号CHのパルス発生期間に限定されていたが、データ転送期間を適宜設定変更できる点が、前記第一実施形態と異なる。
図11に示すように、本実施形態の印字データ転送部80は、停止期間制御部81、転送制御部82及びメモリ制御部83を備えている。停止期間制御部81は、設定手段を構成する停止期間格納部85と、停止期間カウンタ86と、停止パルス生成手段としての停止パルス生成部87とを備えている。停止期間格納部85には、外部I/F41を介してASIC32にアクセスすることで、必要な停止期間のデータを書き込むことができる。停止期間カウンタ86はスイッチ信号CHのパルス入力前にリセット信号(例えばラッチ信号又はデータトリガ)により予めリセットされる。停止パルス生成部87は、スイッチ信号CHのパルスの立ち上がりを検出すると、停止パルスを立ち上げる。そして、停止期間カウンタ86は、スイッチ信号CHのパルスの立ち上がりをトリガとしてクロックCLKのパルスを計数し、停止期間が経過して、その計数値が停止期間格納部85に設定された停止期間に対応する値に達すると、停止期間カウンタ86がタイムアップする。このタイムアップ信号に基づき停止パルス生成部87は、停止パルスを立ち下げる。よって、転送制御部82には停止期間をパルス幅とする停止パルスが入力される。
転送制御部82は、送信タイミング制御部91と、データ格納部92と、転送部93と、クロック制御部94とを備えている。転送制御部82は、次回転送分のデータSI,SPの読込み時期になると、メモリ制御部83にデータの読込みを指示する。メモリ制御部83は、指示に従って出力バッファ42C(図4参照)から印字データSIを読み込むとともに、ROM43から制御パラメータSPを読み込んで、データSI,SPをデータ格納部92に格納する。
送信タイミング制御部91は、転送部93とクロック制御部94を制御する。すなわち、送信タイミング制御部91は、データトリガDTを入力すると、転送部93に対してデータ格納部92から読み出したデータSI,SPの転送の開始を指示するとともに、クロック制御部94に対してクロックCLKの出力を指示する。
転送部93は、送信タイミング制御部91からの転送開始指示に基づいて、データ格納部92からデータSI,SPを読み出して、そのデータSI,SPの転送を開始する。そして、送信タイミング制御部91は、転送部93によるデータSI,SPの転送中に、停止パルスPPの立ち上がりエッジを検出すると、転送部93とクロック制御部94にデータSI,SP及びクロックCLKの転送の停止を指示する。その結果、転送部93はデータSI,SPの転送を停止し、クロック制御部94はクロックCLKの送信を停止する。
このデータSI,SP及びクロックCLKの送信停止後、送信タイミング制御部91は、停止パルスPPの立ち下がりエッジを検出すると、転送部93とクロック制御部94にデータSI,SP及びクロックCLKの送信の再開を指示する。その結果、転送部93はデータSI,SPの転送を再開し、クロック制御部94はクロックCLKの送信を再開する。このとき、データSI,SPの転送停止期間は、停止期間格納部85に設定された必要な停止期間となるので、FFC31のデータ線DLを転送されるデータSI,SPは、スイッチ信号CHのパルスと同じタイミングで起こるスイッチ回路69のオン・オフに起因してFFC31のデータ線DL等に発生するノイズの影響をより確実に回避できる。
例えば、ノイズがスイッチ信号CHのパルス発生期間よりも長く続く場合には、停止期間をスイッチ信号CHのパルス発生期間よりも長く設定することにより、データSI,SPへのノイズの影響を確実に回避できる。また、例えば、ノイズがスイッチ信号CHのパルス発生期間より短い場合には、停止期間をスイッチ信号CHのパルス発生期間よりも短く設定することにより、データSI,SPへのノイズの影響を確実に回避できる。
前記実施形態は上記に限定されず、以下の態様に変更することもできる。
(変形例1)第一実施形態では、データ転送停止開始時期が、スイッチ信号CHのパルス立ち上がり時点としたが、これより早いデータ転送停止開始時期としうるパルスを採用することもできる。例えば、駆動信号生成回路47は、トリガ波形を入力すると、まず直ちに停止パルスを生成し、この停止パルスに遅延してスイッチ信号CHのパルスを生成する構成とする。この停止パルスは、図6におけるスイッチ信号CHに替え、印字データ転送部48へ入力される。この構成によれば、スイッチ信号CHのパルス立ち上がり時点より早い停止パルスの立ち上がり時点で、データSI,SPの転送を早期に停止させることができる。例えば、転送の一時停止処理は1ビット単位で行われるため、パルス立ち上がり検出時点から、最大1ビット転送時間分の遅れ(例えば数ナノ秒)が発生する虞があるが、本例の構成であれば、一時停止開始前にこの種の遅れが発生しても、ノズルの発生期間で確実にデータSI,SPの転送を一時停止させることができる。
(変形例2)スイッチ信号CHのパルス立ち上がり時点より遅いデータ転送停止開始時期としうるパルスを採用することもできる。例えば、駆動信号生成回路47は、トリガ波形を入力すると、まず直ちにスイッチ信号CHのパルスを生成し、このパルスに遅延して停止パルスを生成する。この停止パルスは、図6におけるスイッチ信号CHに替え、印字データ転送部48へ入力される。この構成によれば、スイッチ信号CHのパルス立ち上がり時点より遅い停止パルスの立ち上がり時点で、データSI,SPの転送を停止させることができる。例えば、スイッチ回路のオン・オフに起因するノイズが、スイッチ信号CHのパルス発生タイミングに遅れてFFC31の配線上に発生する場合に効果が得られる。
(変形例3)スイッチ信号CHのパルス又は停止パルスPPの立ち上がり検出時点で、転送を停止させた後、データSI,SP及びクロックCLKの転送再開は、転送停止時点から計時したタイマの計時時間に基づいて行ってもよい。この構成によれば、スイッチ信号CHのパルス又は停止パルスのパルス幅をノイズ発生期間に合わせる調整が不要となる。
(変形例4)スイッチ回路69のオン・オフ動作に起因してFFC31の配線上に乗るノイズの影響を回避できるタイミングでデータSI,SPの転送を一時停止できれば、パルスに基づく以外の転送一時停止方法も採用できる。例えばデータトリガ検出時からのクロックCLKのパルスを計数するカウンタの計数値(計時時間)に基づき、ノズル発生期間に相当する計数値をとる区間の間、データSI,SPの転送を一時停止させる構成も採用できる。
(変形例5)1印刷周期の駆動信号に含まれる駆動パルスの個数(パルス数)は、1パルスであっても構わない。また、駆動パルスの個数は、4パルスや5パルス以外の複数パルスであってもよい。
(変形例6)第二実施形態では、スイッチ信号CHに基づいて停止パルスPPを生成したが、スイッチ信号CH以外の他の信号のパルスに基づいて停止パルスを生成しても構わない。
(変形例7)前記各実施形態では印字データ転送部48をハードウェアにより実現したが、CPUがプログラムを実行して実現されるソフトウェアにより構成してもよい。さらにソフトウェアとハードウェアとの協働により実現される構成でもよい。
(変形例8)記録装置はシリアルプリンタに限定されず、ラインプリンタあるいはページプリンタに適用してもよい。また、記録方式についても、インクジェット方式に限定されず、ドットインパクト式プリンタや感熱式プリンタ、レーザープリンタなども採用できる。また、これらのプリンタにおいて、回路基板と記録ヘッドとがFFCで接続されていない構成のものにも適用できる。これらの構成であっても、記録ヘッドへの転送過程における印字データへのノイズの影響を回避できる。
(変形例9)前記実施形態では、記録装置をインクジェット式プリンタとして具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体、流体として流して吐出できる固体を含む)を吐出したりするシリアル式の液体吐出装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を吐出する液状体吐出装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する液体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を吐出する液状体吐出装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体吐出装置(記録装置)に本発明を適用できる。このように本発明における記録装置が行う記録とは、印刷の域を超えて、液体や液状体の滴を媒体に吐出すること全般をも含む。
11…記録装置としてのプリンタ、13…プリンタ部、14…キャリッジ、18…CRモータ、19…記録ヘッド、21,22…インクカートリッジ、25…PFモータ、30…回路基板、31…FFC、32…ASIC、34…記録素子としての吐出駆動素子、35…ヘッド駆動回路、46…発振回路、47…駆動信号生成手段としての駆動信号生成回路、48…転送手段としての印字データ転送部、50…転送制御手段としての印字データ停止制御部、61…第1SR、62…第2SR、63…第3SR、64…第1ラッチ回路、65…第2ラッチ回路、66…制御ロジック、67…デコーダ、68…レベルシフタ、69…スイッチ回路、80…印字データ転送部、81…停止期間制御部、82…転送制御部、83…メモリ制御部、85…設定手段を構成する停止期間格納部、86…停止期間カウンタ、87…停止パルス生成手段としての停止パルス生成部、91…送信タイミング制御部、92…データ格納部、93…転送部、94…クロック制御部、COM…駆動信号、DP1…第1駆動パルス、DP2…第2駆動パルス、DP3…第3駆動パルス、DP4…第4駆動パルス、DP5…駆動パルス、LAT…ラッチ信号、CH…スイッチ信号、DT…データトリガ、SI…印字データ、SP…制御パラメータ(チャネル信号)、CLK…クロック、TA…印刷周期、T1〜T4…期間、PT…停止期間、PP…停止パルス、P…記録媒体としての用紙。