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JP5581606B2 - 成形性の優れた樹脂組成物、及びその成形体 - Google Patents

成形性の優れた樹脂組成物、及びその成形体 Download PDF

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JP5581606B2 JP2009103057A JP2009103057A JP5581606B2 JP 5581606 B2 JP5581606 B2 JP 5581606B2 JP 2009103057 A JP2009103057 A JP 2009103057A JP 2009103057 A JP2009103057 A JP 2009103057A JP 5581606 B2 JP5581606 B2 JP 5581606B2
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Description

本発明は、樹脂組成物と、その樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。
従来、ポリカーボネート樹脂は、エンジニアリングプラスチックの中でも最高の耐衝撃性を有し、耐熱性も良好な樹脂として知られており、これらの特徴を生かして種々の分野に使用されているが、耐薬品性、成形加工性がよくなく、衝撃強度の厚さ依存性を有するなどの欠点を有している。
一方、熱可塑性ポリエステルは、耐薬品性、成形加工性に優れているが、耐衝撃性、寸法安定性等に劣る欠点を有している。
このようなそれぞれの材料の特徴を生かし、欠点を補完することを目的として種々の樹脂組成物が開示されているが、自動車部品等に要求される寸法安定性、耐衝撃性、耐熱性、成形性等を同時に満足させる観点からは十分ではない。
また、ポリカーボネート樹脂と、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリーコール等で変性されたポリエステルとからなる樹脂組成物も提案されているが、成形性は改善されるものの、耐熱性、寸法安定性が自動車外装部品には不十分である。
さらに、ポリカーボネート樹脂、及びビスフェノール類のポリアルキレングリコール付加物をブロック単位として含有するポリエステル−ポリエーテル共重合体と、からなる樹脂組成が提案されており、例えば、特許文献1は、分子量1000のビスフェノールAポリエチレンオキシド付加物を30%含有するポリエチレンテレフタレートブロック共重合体5部、及びポリカーボネート95部からなる組成物の透明性、耐溶剤性に優れた成形体を開示している。
またさらに、特許文献2には、寸法安定性(低線膨張性)、塗装性を改良した自動車パネル部品を得る方法として、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、及び耐衝撃性改良剤から成る熱可塑性樹脂組成物100重量部と、平均粒径0.1〜10μmのマイカ粒子5〜15重量部からなる合成樹脂組成物を射出成形により厚さ2〜5mm、長さ700〜2500mm、幅50〜250mmの薄板細長形状に成形して成る自動車用サイドプロテクターが記載されており、4.6×10-5/℃の線膨張率を実現している。
特公平5−77704号公報 特開平4−224920号公報
現在、携帯電話、パソコンハウジングなどの電化製品や、自動車のフェンダー、ドアパネル、バックドアパネルなどの車両用部材には、軽量化が求められており、成形品形状の薄肉化が進められている。このような複雑樹脂組成物に対して、寸法安定性、成形性、耐衝撃性の更なる向上が望まれている。
従来、ポリカーボネート樹脂、及び熱可塑性ポリエステルを含む樹脂組成物において耐衝撃性改良剤の配合により耐衝撃性が改良される事、また、特定の無機フィラーの配合によって寸法安定性が改良されることが知られている。
しかし、薄肉軽量化が求められている携帯電話、パソコン、ディスプレイ、白物家電等のハウジング、また、自動車フェンダー、ドアパネル、バックドアパネル等の車両用大型部品に、例えば、特許文献1の組成物を用いた場合には、寸法安定性、成形加工性が十分でなく、その結果成形品外観が悪くなり、付随して、耐衝撃性が低下する結果となった。
また、特許文献2の組成物では、ある程度の寸法安定性、成形加工性についてある程度の改良効果は得られるものの、近年要求高まる軽量薄肉化が進む中でその効果は十分なものでなく、さらなる軽量薄肉化を実現しつつ、十分な寸法安定性、成形加工性を確保するための技術が求められている。
このようなことから、本発明の目的は、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル、及び無機フィラーを含む樹脂組成物において、要求高まる軽量薄肉化を実現しつつ、十分な寸法安定性を有する成形体となりうる成形加工性に優れた樹脂組成物を提供することである。
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、特許文献1の組成物の成形性が十分でないのは、組成物中のポリエステル−ポリエーテル共重合体のポリアルキレングリコール付加物の重合度が低く、成形性の改善効果が不十分であること、及び、ポリエステル−ポリエーテル共重合体を得るために使用していた触媒であるアンチモン化合物が、成形時に組成物中のポリカーボネート樹脂に悪影響を与えていること、が原因であることを見出した。
また、本発明者らは、特許文献2の課題である、軽量薄肉化を実現しつつ、十分な寸法安定性、成形加工性を確保することが、本発明の組成物を用いれば、その特異的な成形体中での各成分の分散状態という新たに発見した現象により可能となることを見出した。
本発明者らは、上述の究明された原因に対処し、また、そこで得られた知見を無機フィラー添加系に適用することで得られた上述の新たに発見した現象を適用することで、ポリカーボネート樹脂、特定のポリエステル系樹脂、及び特定の板状フィラーを主成分とする樹脂組成物とすることで、軽量薄肉化を実現しつつ、十分な寸法安定性を有する成形体となりうる成形加工性に優れた樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂45重量部以上、95重量部未満、ポリエステル系樹脂5重量部以上、55重量部未満、及び数平均長径が0.1〜40μmの板状フィラー5〜100重量部を含む樹脂組成物であって、前記ポリエステル系樹脂が、芳香族ポリエステル単位及び一般式2で表される変性ポリエーテル単位からなりゲルマニウム化合物の触媒を用いて重合されたポリエステル−ポリエーテル共重合体を20〜100重量%含有し、ゲルマニウム原子を5重量ppm以上、2000重量ppm以下含む樹脂組成物である。
(式中、m、及びnはオキシアルキレン単位の繰り返し単位数を示し、18≦m+n≦50である。)
好ましい実施態様は、前記ポリエステル−ポリエーテル共重合体が、芳香族ポリエステル単位95〜45重量%、及び前記変性ポリエーテル単位5〜55重量%からなる、樹脂組成物とすることである。
好ましい実施態様は、前記芳香族ポリエステル単位を、ポリエチレンテレフタレート単位、ポリブチレンテレフタレート単位、及びポリプロピレンテレフタレート単位よりなる群から選ばれる1種以上とすることである。
また、本発明は、本発明の樹脂組成物を成形してなる成形体であって、その成形体中において、前記板状フィラー全体が、前記ポリエステル系樹脂で覆われてなることを特徴とする成形体に関するとする。
好ましい実施態様は、前記成形体を、投影面積が400cm2を超え、平均肉厚が2.5mm以下、かつ、測定温度−30℃と+80℃との間で測定した面内の熱線膨張係数が5×10-5/℃以下である成形体とすることである。
本発明の成形体は、自動車外装パネル部品として好適に用いられる。
本発明の樹脂組成物は、軽量薄肉化を実現しつつ、十分な寸法安定性を有する成形体となりうる成形加工性に優れた樹脂組成物である。
本発明の実施例7の成形体のサンプルの電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例7の成形体のサンプルの電子顕微鏡写真の模式図である。 比較例7の成形体のサンプルの電子顕微鏡写真である。 比較例10の成形体のサンプルの電子顕微鏡写真である。
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂40重量部以上、95重量部未満、ポリエステル系樹脂5重量部以上、60重量部未満(基材樹脂分として合計100重量部)、及び数平均長径が0.1〜40μmの板状フィラー5〜35重量部を含む樹脂組成物であって、ゲルマニウム原子を5重量ppm以上、2000重量ppm以下含む樹脂組成物である。
前記ゲルマニウム原子は、前記ポリエステル系樹脂の重合に使用される触媒であるゲルマニウム化合物に由来し、その重合速度、及びコストのバランスの観点から、好ましくは10重量ppm以上、1000重量ppm以下であり、より好ましくは20重量ppm以上、500重量ppm以下、さらに好ましくは、50重量ppm以上、300重量ppm以下である。
ここで、前記ゲルマニウム原子濃度は、樹脂組成物中の重量平均のゲルマニウム原子濃度である。
本発明の樹脂組成物は、耐衝撃性を更に向上させるために、耐衝撃改良剤をさらに0.5〜40重量部含むことが好ましく、耐熱性、剛性、成形性等の観点からより好ましくは1〜20重量部であり、本発明の樹脂組成物の成形体を好ましい用途である車両用部材として用いる場合に、必要な耐衝撃強度と耐熱性と得る観点からは、2〜10重量部がさらに好ましい。
前記耐衝撃改良剤としては、コア/シェル型グラフト重合体、ポリオレフィン系重合体、オレフィン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、及び熱可塑性ポリエステル系エラストマーからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、成型加工時の熱劣化を防止するために、安定材をさらに0.01〜4重量部含むことが好ましく、より好ましくは0.1〜2重量部含むことである。
前記安定材としては、フェノール系安定材、リン系安定材、硫黄系安定材からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、難燃性に優れることから、これらの安定材を組み合わせて使用することがより好ましい。
前記リン系安定材としては、より好ましくはホスファイト系安定材であり、例えば、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)フォスファイト(例えば、旭電化株式会社製アデカブスタPEP36(登録商標))である。
前記フェノール系安定材としては、より好ましくはヒンダードフェノール系安定材であり、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート(例えば、チバスペシャルティケミカルズ製イルガノックス1010(登録商標))である。
(添加剤)
本発明の樹脂組成物には、光安定剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料・染料、無機充填剤、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを配合しうる。
(混練)
本発明の樹脂組成物の製造は任意の方法で行なうことができる。たとえば、ブレンダー、スーパーミキサーなどを用いての混合、単軸または多軸のスクリュー押出機などでの混練により製造される。
(用途)
このようにして得られた樹脂組成物は、既知の種々の方法、たとえば射出成形法、押出し成形法等により、自動車部品、電気・電子部品、雑貨等に成形され、成形品は、耐熱性や耐衝撃性、剛性、寸法安定性、耐薬品性、成形加工性、耐候性、熱安定性に優れ、成形品の表面光沢、外観に優れたものとなる。
(成形体)
本発明の樹脂組成物の成形体は、後述するように、その成形体中において、前記板状フィラー全体が、前記ポリエステル系樹脂で覆われてなることを特徴とする成形体であり、即ちこれが、前記特異的な成形体中での各成分の分散状態という新たに発見した現象である。
この分散状態では、ポリカーボネート樹脂が板状フィラーに直接接していないので、板状フィラーの影響によるポリカーボネート樹脂の加水分解が、これらの間に存在するポリエステル系樹脂により防止されること、即ち、ポリエステル系樹脂介在効果により、熱安定性に優れる。また、このような本発明の成形体となる本発明の樹脂組成物は、前記加水分解が問題となる加熱成形時に樹脂分解を抑制しつつ、高い流動性を示す優れた成形加工性の樹脂組成物であり、その成形体は、耐熱性や耐衝撃性、剛性、寸法安定性、耐薬品性、耐候性、熱安定性に優れ、また表面光沢、外観に優れる。
本発明の樹脂組成物の前記ポリエステル系樹脂介在効果は、メカニズムは不明であるが、化学的なもののようで非常に強力であり、前記本発明の成形性効果が特に発揮されるのは、薄肉、かつ、大型の成形体の成形加工時であり、それに伴う成形加工時に発生する大きな剪断速度にたいしても前記効果は得られる。このような成形体の大きさの程度としては、成形体の投影面積を尺度とすると、好ましくは400cm2を越え、より好ましくは600cm2以上、さらに好ましくは800cm2以上であり、平均肉厚を尺度とすると、好ましくは2.5mm以下であり、より好ましくは2.3mm以下、さらに好ましくは2.0以下である。
本発明の樹脂組成物は、成形加工性において上述のように各々独自の機能を発揮しているだけでなく、寸法安定性においてもバランス良く配合されているので、その成形体の測定温度−30℃と+80℃との間で測定した面内の線膨張係数は、好ましくは5×10-5/℃以下、より好ましくは4×10-5/℃以下、さらに好ましくは3.5×10-5/℃以下である。また、その成形体の線膨張係数の面内での異方性が小さいことも本発明の樹脂組成物の成形体の特徴であり、例えば、射出成形時の流動(MD)方向の線膨張係数に対する、流動に対して直角(TD)方向の線膨張係数は、80〜120%で一致し、好ましくは、90〜110%で、さらに好ましくは95〜105%で一致する。
上述のような優れた性質を有する本発明の樹脂組成物を成形してなる成形体は、自動車外装パネル部品として特に好適である。
(基材樹脂)
前記基材樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性、及び成形加工性のバランスの観点から、より好ましくは、ポリカーボネート樹脂50重量部以上、90重量部未満、及びポリエステル系樹脂10重量部以上、50重量部未満からなるポリカーボネート系樹脂であり、さらに好ましくは、ポリカーボネート樹脂60重量部以上、80重量部未満、及びポリエステル系樹脂20重量部以上、40重量部未満である。
本発明に係るポリエステル系樹脂は、本発明の成形性効果を得るために、ゲルマニウム化合物の触媒を用いて重合された、芳香族ポリエステル単位、及び一般式1で表される変性ポリエーテル単位からなるポリエステル−ポリエーテル共重合体を20〜100重量%含有することが好ましく、より好ましくは30〜100重量%、さらに好ましくは50〜100重量%とすることである。
本発明に係る板状フィラーは、本発明の低線膨張性効果を得るために、数平均長径が0.1〜40μmであること、及び、前記基材樹脂100重量部に対してその含有量が5〜100重量部であることを要すが、前記粒径は、より好ましくは0.1〜30μm、さらに好ましくは0.1〜25μm、また、前記含有量は、より好ましくは10〜70重量部、さらに好ましくは25〜50重量部である。
本発明の組成物は、上述の如きポリカーボネート樹脂、及び特定のポリエステル樹脂を基材樹脂とする樹脂組成物なので、特に大型の射出成型品につき優れた外観の成形体が得られ、さらに、前記特定のフィラーが添加されているので、軽量薄肉化を実現しつつ、十分な寸法安定性を有する成形体となりうる成形加工性に優れた樹脂組成物となり、特に大型薄肉、かつ、寸法安定性、及び外観に優れた成形体が得られる樹脂組成物として使用される。なお、前記基材樹脂は、フィラーを添加しない場合でも、流動性や熱安定性に優れるという効果がある。
(ポリカーボネート樹脂)
本発明に用いるポリカーボネート樹脂とは、フェノール性水酸基を2個有する化合物(以下、2価フェノールという)より誘導されるポリカーボネート樹脂であり、通常2価フェノールとホスゲン、あるいは2価フェノールと炭酸ジエステルとの反応により得られる樹脂のことであり優れた成形加工性を有し、また、その成形体は、優れた耐熱性や耐衝撃性、剛性、寸法安定性、耐候性、透明性、表面光沢、外観を示すものの、反面、耐薬品性、熱安定性は若干劣り、アルカリ性のフィラー等の影響で特に加熱時に加水分解し、前記の成形体の優れた特徴にも悪影響がでることが知られている。
前記2価フェノールとしては、とくにビスフェノールAが好適であるが、これに限定されるものではない。
前記ポリカーボネート樹脂の分子量としては、耐衝撃性、耐薬品性、成形加工性等の観点から、粘度平均分子量で10,000〜60,000範囲のものが好ましい。
(ポリエステル系樹脂)
前記本発明に係るポリエステル系樹脂は、前記基材樹脂の従成分として、主成分のポリカーボネート樹脂に添加することにより、本発明の樹脂組成物の成形体の耐薬品性をその結晶性により向上させるための成分であるが、反面、耐衝撃性や剛性は若干ることが知られている。
前記本発明に係るポリエステル系樹脂は、後述する本発明に係るポリエステル−ポリエーテル共重合体と同様に、ゲルマニウム化合物の触媒により重合されてなるものであることが、後述する理由と同じ理由で好ましい。
このようなポリエステル系樹脂とは、ジカルボン酸、或いはジカルボン酸のアルキルエステルのような誘導体と、ジオールとの重縮合物によって得られる単位、一分子中にカルボン酸、或いはカルボン酸のアルキルエステルのような誘導体と水酸基とを共に有する単量体を重縮合した単位、又は一分子中に環状エステル構造を有する単量体を開環重合した単位、を主成分として含む樹脂であり、本発明に係るポリエステル−ポリエーテル共重合体自体も、ポリエステル単位を含むので、ポリエステル系樹脂である。
前記ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。前記ジオールとしては、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。前記一分子中にカルボン酸、又はカルボン酸のアルキルエステルのような誘導体と水酸基とを共に有する単量体としては乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシヘキサン酸等のヒドロキシアルカン酸が挙げられる。前記一分子中に環状エステル構造を有する単量体としてはεカプロラクトン等が挙げられる。
このようなポリエステル系樹脂としては、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(ヒドロキシ酪酸−ヒドロキシヘキサン酸)、ポリコハク酸エチレン、ポリコハク酸ブチレン、ポリアジピン酸ブチレン、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ(α−オキシ酸)、及びこれらの共重合体、並びにこれらのブレンド物が例示され、本発明において本発明に係るポリエステル−ポリエーテル共重合体と共に使用される。
このような本発明に係るポリエステル−ポリエーテル共重合体と共に使用する成分としては、好ましくはポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンテレフタレートから選ばれる1種以上である。
(板状フィラー)
本発明に係る板状フィラーは、本発明の樹脂組成物の成形体の線膨張性を小さくするための成分であり、シリカやアルミナをその材料の主成分とするアルカリ性の無機物であり、形状としては平板状、薄片状、鱗片状等が挙げられ、その数平均のフィラーの長径(フィラーに含まれる最長の直線の長さ)が0.1〜40μmであることを要し、成形品の低線膨張性、表面外観の観点から、好ましくは0.1〜25μmであり、その数平均のアスペクト比、即ち、フィラーの長径/フィラーの厚さ(フィラーに含まれる、前記直線を含む最大の平面に垂直な、直線の長さ)は、低線膨張性、衝撃強度の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは15以上である。なお、前記数平均長径、及び数平均アスペクト比は、実体顕微鏡により測定して平均した各粒の値の数平均値である。
本発明に係る板状フィラーとしては、後で詳述する本発明に係る特異的な成形体中での各成分の分散状態を実現させる観点から、シリカやアルミナをその材料の主成分とする、マイカ、タルク、モンモリロナイト、セリサイト、カオリン、ガラスフレーク、板状アルミナ、合成ハイドロタルサイトからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、本発明の寸法安定性向上効果の観点から、マイカ、タルク、モンモリロナイト、セリサイト、カオリン、ガラスフレークがより好ましく、耐衝撃性、流動性、製品外観のバランスの観点から、マイカ、タルク、ガラスフレークがさらに好ましく、特に好ましくはマイカである。
前記マイカとしては、天然、合成のどちらでもよく、また、白雲母、黒雲母、金雲母のいずれでも良い。
(ポリエステル−ポリエーテル共重合体)
本発明に係るポリエステル−ポリエーテル共重合体は、成形性の改善効果の観点、及び耐熱性維持の観点から、芳香族ポリエステル単位95〜45重量%、及び前記一般式1で表される変性ポリエーテル単位5〜55重量%からなる重合体であることが好ましく、より好ましくは芳香族ポリエステル単位90〜50重量%、及び前記変性ポリエーテル単位10〜50重量%からなる重合体である。
前記ポリエステル−ポリエーテル共重合体の分子量にはとくに限定はないが、通常テトラクロロエタン/フェノール=50/50(重量比)の混合溶剤中、25℃、0.5g/dlでの対数粘度(IV)が0.3〜2.0の範囲にあるような分子量であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5の範囲である。
ポリエステル−ポリエーテル共重合体の製造方法は、ゲルマニウム化合物の触媒を用いて、(1)芳香族ジカルボン酸、ジオール、変性ポリエーテルの三者の直接エステル化法、(2)芳香族ジカルボン酸ジアルキル、ジオール、変性ポリエーテル、及び/又は、変性ポリエーテルのエステルの三者のエステル交換法、(3)芳香族ジカルボン酸ジアルキル、ジオールのエステル交換中、又は、エステル交換後に変性ポリエーテルを加えて、重縮合する方法、(4)高分子の芳香族ポリエステルを用い、変性ポリエーテルと混合後、溶融減圧下でエステル交換する方法等が挙げられ、これらに限定されるものではないが、組成コントロール性の観点から、前記(4)の製造法が好ましい。
後述する比較例で示すように、ポリエステル−ポリエーテル共重合体を製造するための触媒をアンチモン化合物とした場合には、組成物中に残存し成形等の加熱時に、アンチモン化合物によりポリカーボネート樹脂が炭酸ガスを放出しながら加水分解され、その結果、得られた成形体の外観に、銀条や発泡が発生する。
ポリエステル−ポリエーテル共重合体を製造するための触媒として、アンチモン化合物と同程度以上の活性を有し、アンチモン化合物で発生するポリカーボネート樹脂の加水分解の問題を起きない触媒として本発明者らが選定した触媒が、ゲルマニウム化合物である。
このような本発明に係る触媒として用いられるゲルマニウム系化合物としては、二酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム酸化物、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトライソプロポキシド等のゲルマニウムアルコキシド、水酸化ゲルマニウム及びそのアルカリ金属塩、ゲルマニウムグリコレート、塩化ゲルマニウム、酢酸ゲルマニウム等が挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。これらのゲルマニウム系化合物の中では、二酸化ゲルマニウムが特に好ましい。重合時に投入する二酸化ゲルマニウム触媒量は、反応速度の観点、及び経済的観点から、樹脂量の50〜2000重量ppmとするのが好ましく、より好ましくは100〜1000重量ppmとすることである。
前記芳香族ジカルボン酸は、特にテレフタル酸が好ましく、その他イソフタル酸、ジフエニルジカルボン酸、ジフエノキシエタンジカルボン酸等が例示される。これら芳香族ジカルボン酸の他に、少ない割合(15%以下)のオキシ安息香酸等の他の芳香族オキシカルボン酸、あるいは、アジピン酸、セバチン酸、シクロヘキサン1・4−ジカルボン酸等の脂肪族、又は肪環族ジカルボン酸を併用してもよい。
前記ジオールは、エステル単位を形成する低分子量グリコール成分であり、炭素数2〜10の低分子量グリコール、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール等である。特にエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールが、入手のし易さの点から好ましい。
前記芳香族ジカルボン酸ジアルキルのアルキル基としては、メチル基がエステル交換反応性の観点から好ましい。
前記高分子の芳香族ポリエステルの溶液粘度としては、得られる成形品の耐衝撃性、耐薬品性や成形加工性の観点から、フェノール/テトラクロロエタン=1/1(重量比)混合溶媒中、25℃で濃度0.5g/dlにおける対数粘度(IV)が0.3〜2.0、さらには0.5〜1.5の範囲のものが好ましい。
(変性ポリエーテル単位)
本発明に係る変性ポリエーテル単位は、前記一般式1で表される単位であり、一般式1中のオキシアルキレン単位の繰り返し単位数m、nにつき、(m+n)の数平均が18未満では、衝撃性の改善が少なく、(m+n)の数平均が50を越えると、成形性が悪くなるので、18以上、50以下であることを要し、更に、好ましくは25以上、40以下である。
前記変性ポリエーテル単位は、入手のし易さの観点から、好ましくは前記一般式2で表される単位であり、(m+n)が18の場合の式量は1018、(m+n)が50の場合の式量は2426である。従って、一般式2で表される単位を分子として本発明に係るポリエステル−ポリエーテル共重合体に導入する場合の好ましい分子量は1020以上、2430以下であり、さらに好ましくは、1330以上、2000以下である。
(芳香族ポリエステル単位)
本発明に用いる芳香族ポリエステルの単位は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とからえられる重合体ないし共重合体であって、通常、交互重縮合体である。
前記芳香族ポリエステル単位の好ましい具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート共重合体、ポリトリメチレンテレフタレート、あるいはポリトリメチレンテレフタレート共重合体が挙げられ、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート単位、ポリブチレンテレフタレート、及びポリプロピレンテレフタレート単位よりなる群から選ばれる1種以上である。
(コア/シェル型グラフト重合体)
前記コア/シェル型グラフト重合体とは、ゴム状弾性体にビニル系化合物をグラフト重合させたものである。
前記ゴム状弾性体としては、ガラス転移温度が0℃以下のものが好ましく、より好ましくは−40℃以下のものである。
このようなゴム状弾性体の具体例としては、たとえばポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリル酸エステル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などのジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸2−エチルヘキシル、ジメチルシロキサン−アクリル酸ブチルゴム、シリコン系/アクリル酸ブチル複合ゴムなどのアクリル系ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などのオレフィン系ゴム、が例示され、ブタジエン−アクリル酸エステル共重合体の具体的なゴムとしてブタジエン−アクリル酸ブチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸2エチルヘキシル共重合体が例示出来る。耐衝撃性の面より、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリル酸ブチル共重合体が好ましく使用される。
前記ブタジエン−アクリル酸ブチル共重合体のうちでも、アクリル酸ブチル50〜70重量%とブタジエン30〜50重量%との共重合体が耐候性、耐衝撃性から好ましい。
ゴム状弾性体の平均粒子径にもとくに限定はないが、0.05〜2.00μmの範囲のものが好ましく、小粒子ゴムを肥大して0.1〜2μmにして使用しても良い。また、ゲル含有量についてもとくに限定はないが、10〜90重量%、さらには40〜90重量%の範囲のものが好ましく使用される。
前記コア/シェル型グラフト重合体の製造に使用されるビニル系化合物としては、たとえば芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。前記芳香族ビニル化合物の例としてはスチレン、αメチルスチレン、シアン化ビニル化合物の例としてはアクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸エステルの例としてはブチルアクリレート、2エチルヘキシルアクリレート、メタクリル酸エステルの例としてはメチルメタクリレートがとくに好ましいものとしてあげられる。
コア型/シェル型グラフトポリマーを調製する際のゴム状弾性体とビニル系化合物との使用割合はゴム状弾性体10〜90重量%、さらには30〜85重量%に対して、ビニル系化合物90〜10重量%、さらには15〜70重量%が好ましい。ゴム状弾性体の割合が10重量%未満では耐衝撃性が低下しやすくなり、一方、90重量%をこえると耐熱性が低下する傾向が生ずる。
(ポリオレフィン系重合体)
前記ポリオレフィン系重合体の具体例としては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられ、好適に使用されうるが、これらに限定されるものではない。該ポリオレフィン系重合体はホモポリマーでも、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−4−メチルペンテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等のコポリマーでもよく、また、該ポリオレフィン系重合体の重合度についてもとくに制限はなく、通常メルトインデックスが0.05〜50g/10分の範囲のものであれば任意に選択・使用しうる。特にエチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体が衝撃強度の発現から好ましい。
(オレフィン−不飽和カルボン酸エステル共重合体)
前記オレフィン−不飽和カルボン酸エステル共重合体におけるオレフィンとして、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。これらのオレフィンは単独であるいは、2種以上を組み合わせて使用され得る。とくに好ましいオレフィンはエチレンである。
前記オレフィン−不飽和カルボン酸エステル共重合体における不飽和カルボン酸エステルとしての具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸グリシジル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。これらは、単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて使用され得る。特に好ましい(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メチルアクリレートおよびエチルアクリレート、メタクリル酸グリシジルである。
前記オレフィン−不飽和カルボン酸エステル共重合体中における、上記オレフィン単位と上記不飽和カルボン酸エステル単位との共重合比は、重量比で、好ましくは40/60〜95/5、より好ましくは50/50〜90/10である。共重合体中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の重量比が5未満では、耐薬品性改良効果が不十分である場合が多い。共重合体中の不飽和カルボン酸エステル単位の重量比が60を超えると、溶融時(例えば、成形加工時)の熱安定性が不十分である場合が多い。
前記オレフィン−不飽和カルボン酸エステル共重合体に更に酢酸ビニル、スチレン等を共重合することも出来る。
前記オレフィン−不飽和カルボン酸エステル共重合体の具体例として、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸プロピル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸ヘキシル共重合体、エチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ヘキシル共重合体、エチレン−メタクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。特にエチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−アクリル酸メチル共重合体が衝撃強度の発現から好ましい。
(熱可塑性ポリエステル系エラストマー)
前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーとは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体および数平均分子量700〜3000のポリエーテルとからなる共重合体であり、ポリエーテルに由来する成分の割合が5〜80重量%、さらには10〜70重量%の範囲のものが好ましい。ポリエーテルに由来する成分の割合が5重量%未満では耐衝撃性が低下する傾向が生じ、80重量%をこえると耐熱性が低下しやすくなる。
前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーの溶液粘度はフェノール/テトラクロロエタン=1/1(重量比)混合溶媒中、25℃で濃度0.5g/dlにおける対数粘度(IV)が0.3〜2.0、さらには0.4〜1.5の範囲のものが好ましい。該対数粘度が0.3未満では耐衝撃性、耐薬品性などが低下しやすくなり、一方、2.0をこえると成形加工性などが低下する傾向が生ずる。
前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーの製造に使用される芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体の具体例としては、たとえばテレフタル酸、イソフタル酸、それらのエステル形成性誘導体などが例示される。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。一方、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体の具体例としては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、それらのエステル形成性誘導体などが例示される。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。さらに、前記ポリエーテルの具体例としては、たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体などが例示される。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。前記ポリエーテルの数平均分子量としては、前述のごとく700〜3000の範囲が好ましい。該分子量が700未満では耐熱性が低下し、一方、3000をこえると熱安定性が低下する傾向が生じる。
以下、本発明の樹脂組成物を実施例に基づき具体的に説明する。
下記測定条件や実施例などにおける「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を、また表1中の「ppm」は「重量ppm」を表す。
まず、使用した材料、及び測定条件につき以下説明する。
(ポリカーボネート樹脂)
ポリカーボネート樹脂としては、粘度平均分子量22,000である出光興産(株)製のタフロンA2200(登録商標)を用いた。表2、及び表3中では、PC(A−1)と表記している。
(ポリエステル−ポリエーテル共重合体:B11〜B17)
攪拌機、ガス排出出口を備えた反応器に、ゲルマニウム系触媒で製造されたポリエチレンテレフタレート(IV=0.65)、二酸化ゲルマニウム、安定材(チバ・スペシャリティーケミカルズ製のイルガノックス1010)と、表1に示す変性ポリエーテル、又はポリエーテルとを仕込み270℃で2時間保持した後、真空ポンプで減圧し、1torrで3時間保持した後、製造されたポリエステル−ポリエーテル共重合体B11〜B17を取り出し、更に、水槽で冷却したストランドを粉砕器に投入してペレット化する事で、ペレット状態のポリエステル−ポリエーテル共重合体B11〜B17を得た。
表1中の、
PET−1は、ゲルマニウム系触媒で重合されたIV=0.65のポリエチレンテレフタレートであり、残触媒量は、ゲルマニウム金属濃度で40重量ppmであった。
PET−2は、アンチモン系触媒で重合されたIV=0.66のポリエチレンテレフタレートであり、残触媒量は、アンチモン金属濃度で200重量ppmであった。
ビスオール18ENは、一般式2の構造における(m+n)の数平均が18のものである。
ビスオール30ENは、一般式2の構造における(m+n)の数平均が30のものである。
ビスオール10ENは、一般式2の構造における(m+n)の数平均が10のものである。
PEGは、分子量1000のポリエチレングリコールである。
また、表1中の重合時に投入した触媒量は、重合時に用いた触媒の添加量である。重合後の残触媒量は、製造されたポリエステル−ポリエーテル共重合体B11〜B17中の触媒に用いた金属の濃度であり、プラズマ発光分析(ICP分析)、具体的には、島津製作所製ICP発光分析装置ICPS−8100を用いて、定量することにより測定した。
(無機フィラー)
無機フィラーとしては下記のものを使用した。
(C−1)数平均、長径27μm、アスペクト比90のマスコバイトマイカSYA−21R:山口雲母社製
(C−2)数平均、長径36μm、マスコバイトマイカA−31S:山口雲母社製
(C−3)数平均、長径8μm、タルクK−1:日本タルク社製
(C−4)数平均、長径1.7μm、炭酸カルシウム非板状フィラー:日本粉化工業社製
(C−5)数平均、長径52μm、アスペクト比85のマスコバイトマイカA−51S:山口雲母社製
(耐衝撃性改良剤)
下記D−1〜D−5の耐衝撃性改良剤を以下の実施例、及び比較例で使用した。
D−1:乳化重合法により、ブチルアクリレート67%およびブタジエン33%からなる平均粒子径0.15μmのゴム状弾性体60部に、アクリロニトリル20%、メチルメタクリレート30%およびスチレン50%からなる混合物40部をグラフト共重合させたコア/シェル型グラフト重合体
D−2:乳化重合法により、ブタジエン98%及ジビニルスチレン2%からなる平均粒子径0.2μmのゴム状弾性体70部に、アクリロニトリル15%、メチルメタクリレート35%およびスチレン50%からなる混合物30部をグラフト共重合させたコア/シェル型グラフト重合体
D−3:線状低密度ポリエチレン(出光興産株式会社製モアテック0168)
D−4:エチレン−エチルアクリレート共重合体(日本ユニカー株式会社製、NUC6570:エチルアクリレート含有量=35重量%)
D−5:エチレン−メタクリル酸グリシジル−アクリル酸メチル共重合体(住友化学株式会社製、ボンドファースト 7M:メタクリル酸グリシジル含有量=6重量%、アクリル酸メチル含有量=27重量%)
(安定剤)
旭電化工業株式会社製のPEP−36(ホスファイト系安定剤)
チバ・スペシャリティーケミカルズ製のイルガノックス1010(ヒンダードフェノール)
(アイゾット衝撃値)
ASTM D−256、1/4インチ、ノッチ付、23℃で測定した。
(耐熱性)
ASTM D−648で測定した。
(成形加工性の評価1:熱安定性の評価)
日精樹脂工業株式会社製射出成形機FE−360S100ASEを用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で300×200mm大 厚み2mmの平板を成形し、肉眼で観察して、つぎの基準にしたがって評価した。成形加工性の一つ目安である熱安定性を確認する為、冷却時間を20秒(成形サイクル60秒)、冷却時間を80秒(成形サイクル120秒)、冷却時間を140秒(成形サイクル180秒)として成形を実施した。成形サイクルが長いほど成形機シリンダー内にてより樹脂が熱分解することになることから、本評価では、より長い成形サイクルで成形品外観に不具合を生じないものが、より熱安定性に優れていると言える。
○:表面のフラッシュ等の外観異常はなく、良好なもの。
△:表面のフラッシュ等が成形品表面の一部分に認められる、外観が悪いもの。
×:表面のフラッシュ等が成形品表面の半分以上に認められ、著しく外観が悪いもの。
(成形加工性の評価2:薄肉成形性の評価)
日精樹脂工業株式会社製射出成形機FE−360S100ASEを用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で300×200mm大、 厚み2.0mm、2.5mm、3.0mmの平板を成形し、肉眼で観察して、つぎの基準にしたがって評価した。成形加工性の一つ目安である薄肉成形性を確認する為、冷却時間を20秒(成形サイクル60秒)で各厚みの成形品を得た。より厚みが薄い平板成形品の表面外観が良好であるほど薄肉成形性に優れた材料であると言える。
○:表面のフラッシュ等の外観異常はなく、良好なもの。
△:表面のフラッシュ等が成形品表面の一部分に認められる、外観が悪いもの。
×:表面のフラッシュ等が成形品表面の半分以上に認められ、著しく外観が悪いもの。
(塗装性の評価)
先述の方法で得た300×200mm大、 厚み2.0mm、2.5mm、3.0mmの平板を塗装しつぎの基準にしたがって評価した。塗膜密着が不十分とは、碁盤目ハクリ試験にて塗膜ハクリが5/100を超え生じたものを塗膜密着が不十分であると判断した。
○:塗膜面の表面外観性が良好であり、塗膜密着性の問題もないもの。
△:塗膜面の表面外観性は良好であるが、塗膜密着が不十分であるもの。
×:塗膜面の表面外観が不均一であり不良であり、かつ、塗膜密着が不十分であるもの。
(線膨張性評価)
先述の方法で得た成形品の中央部分を切り出して得た試験片について流動(MD)方向と流動に対して直角(TD)方向について、それぞれJIS K7197に準じて、測定温度−30℃と+80℃との間で試験を実施し、線膨張係数を評価した。
(実施例1〜11、及び比較例1〜10)
乾燥した上記のポリカーボネート樹脂、及び乾燥したポリエステル系樹脂(但し、表2、及び表3中の(B18)PETは、ゲルマニウム系触媒で重合されたIV=0.65のポリエチレンテレフタレート樹脂で、残触媒量は、ゲルマニウム金属濃度で50重量ppmある。)、無機フィラー、耐衝撃性改良剤、強化剤、ホスファイト系安定剤、及びヒンダードフェノール系安定剤を、表2、及び表3に示す組成で予備混合し、それぞれ280℃で2軸押出機を用いて溶融混練し、ペレットを製造した。得られたペレットを用いて日精樹脂工業株式会社製射出成形機FN−1000を用いシリンダー温度280℃、金型温度80℃にて試験片を作製し、上記方法により評価した。結果を表2、及び表3に示す。また、実施例7と、比較例7、及び比較例10と、の成形体サンプルを電子顕微鏡で観察した電子顕微鏡写真を図1と、図3、及び図4とに示す。さらに、表2,及び表3中の樹脂組成物中のゲルマニウム原子濃度(重量ppm)は、製造された樹脂組成物中の平均のゲルマニウム原子濃度あり、プラズマ発光分析(ICP分析)、具体的には、島津製作所製ICP発光分析装置ICPS−8100を用いて、定量することにより測定した。
表2、及び表3に示されるとおり、本発明の樹脂組成物によれば、成形性・耐熱性・耐衝撃性のバランスが優れた樹脂組成物を提供することができる。
図1に示す実施例7の成形体のサンプルの電子顕微鏡写真では、図2の模式図で示すように、ポリカーボネート樹脂の海に、ポリエステル系樹脂が島として分散する海島構造を形成しており、全ての板状フィラーの周囲全体がポリエステル系樹脂で覆われており、板状フィラーがポリカーボネート樹脂と直接接触する事を防いでいる。なお、この電子顕微鏡写真中で直径0.2μm程度の黒色円形の部分は、成形体中に分散しているコア/シェル型グラフト共重合体である。
図3に示す比較例7の成形体のサンプルの電子顕微鏡写真では、ポリカーボネート樹脂の海に、ポリエステル系樹脂が島として分散する海島構造を形成しているものの、板状フィラーの周囲にはポリエステル系樹脂で覆われていない部分が存在し、その部分で、板状フィラーがポリカーボネート樹脂と直接接触している。これは、前記一般式1で表される変性ポリエーテル単位中のオキシアルキレン単位の繰り返し単位数m、nが、18≦m+n≦50の範囲から外れていることが原因であると考えられる。
図4に示す比較例10の成形体のサンプルの電子顕微鏡写真では、ポリカーボネート樹脂の海に、ポリエステル系樹脂が島として分散する海島構造を形成しているものの、板状フィラーの周囲にはポリエステル系樹脂で覆われていない部分が存在し、その部分で、板状フィラーがポリカーボネート樹脂と直接接触している。この写真において、ポリエステル系樹脂は、ポリカーボネート樹脂の海に、1μm以下程度の大きさの島として分散しており、このように小さい島を形成することが安定なことが、板状フィラーがポリカーボネート樹脂に直接接触する分散状態となってしまう一因であると考えられる。このように板状フィラーがポリカーボネート樹脂に直接接触しているので、比較例10の成形体では、加熱成形時に加水分解が発生し、その為、熱安定性が悪く、他の特性も悪影響を受けていると考えられる。
(実施例12、及び比較例10)
実施例6、及び比較例5で得られたペレットを用いて、三菱製大型射出成形機850−MG160を用いシリンダー温度280℃、金型温度80℃にて試験片として、800×100×2.5mmの大型射出成型品である自動車のパネル部品を作製し、上記方法により評価した。その結果、実施例6のペレットを用いた実施例12のバックドアパネルは、表面のフラッシュがほとんど認められず良好な外観を有していたのに対して、比較例5のペレットを用いた比較例10のパネル部品は、ゲート周辺部に著しいフラッシュが発生し、外観不良であった。
1.ポリカーカーボネート樹脂
2.ポリエステル系樹脂
3.板状フィラー

Claims (6)

  1. ポリカーボネート樹脂45重量部以上、95重量部未満、ポリエステル系樹脂5重量部以上、55重量部未満、及び数平均長径が0.1〜40μmの板状フィラー5〜100重量部を含む樹脂組成物であって、前記ポリエステル系樹脂が、芳香族ポリエステル単位及び下記一般式2で表される変性ポリエーテル単位からなりゲルマニウム化合物の触媒を用いて重合されたポリエステル−ポリエーテル共重合体を20〜100重量%含有し、ゲルマニウム原子を5重量ppm以上、2000重量ppm以下含む樹脂組成物。
    (式中、m、及びnはオキシアルキレン単位の繰り返し単位数を示し、18≦m+n≦50である。)
  2. 前記ポリエステル−ポリエーテル共重合体が、芳香族ポリエステル単位95〜45重量%、及び前記変性ポリエーテル単位5〜55重量%からなる請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記芳香族ポリエステル単位が、ポリエチレンテレフタレート単位、ポリブチレンテレフタレート単位、及びポリプロピレンテレフタレート単位よりなる群から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体であって、
    該成形体中において、前記板状フィラー全体が、前記ポリエステル系樹脂で覆われてなることを特徴とする成形体。
  5. 請求項4に記載の成形体であって、
    該成形体の、投影面積が400cm2を超え、平均肉厚が2.5mm以下、かつ、測定温度−30℃と+80℃との間で測定した面内の熱線膨張係数が5×10-5/℃以下である成形体。
  6. 請求項4又は5に記載の成形体からなる自動車外装パネル部品。
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