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JP5577366B2 - 固形石鹸 - Google Patents

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JP5577366B2 JP2012059682A JP2012059682A JP5577366B2 JP 5577366 B2 JP5577366 B2 JP 5577366B2 JP 2012059682 A JP2012059682 A JP 2012059682A JP 2012059682 A JP2012059682 A JP 2012059682A JP 5577366 B2 JP5577366 B2 JP 5577366B2
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Description

本発明は固形石鹸、特にミリスチン酸石鹸を主成分とする固形石鹸の固化性改良に関する。
一般的な固形石鹸は、脂肪酸石鹸を基剤とし、必要に応じてショ糖、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールなどの糖類またはポリオール類を添加、枠ねり法あるいは機械ねり法により製造しているのが通例である。
脂肪酸の組成は、石鹸の物性に大きな影響を与え、通常は炭素数の多い飽和高級脂肪酸(C18ステアリン酸など)を用いると凝固点、硬度が上昇し、固形石鹸としての形態を整えやすくなるが、一方で冷水に対する溶解性、泡立ち性が低下し、洗浄力、使用感の低下につながりやすい。これに対し、脂肪酸としてC12,C14のラウリン酸、ミリスチン酸等(以下、中級脂肪酸という)を大量に用いると、冷水に対する溶解性、泡立ち性が大きく向上するが、凝固点、硬度が著しく低下し、固形石鹸としての製造適性、保形性が悪化する。特にC14のミリスチン酸は、洗浄性、低刺激性に優れ、固形石鹸の主成分として用いることが望まれるが、総脂肪酸中で50質量%を超えると顕著に凝固点、硬度が低下する傾向にあり、ミリスチン酸を固形石鹸に用いる際は、50%程度が事実上の限界であった。
特に透明石鹸にあっては、透明性を得るために糖類、ポリオール類を相当量添加する必要があり、凝固点の低下が大きく、中級脂肪酸の大量使用はより難しい傾向にあった。
すなわち、透明石鹸の透明化の構造的メカニズムは、可視光線に対して光学的に不連続な大きさである不透明石鹸の繊維状微結晶群が、前記糖類、ポリオール類の添加により主として繊維軸に対して直角に分断されて、それが可視光線の波長以下に微細化されて石鹸が透明化しているものと考えられる。このため、糖、ポリオール類を添加しない石鹸に比較し、硬度、凝固点が低下しやすい。
特に糖、ポリオール類などの溶剤としてエタノールを使用しない透明石鹸を枠練り法にて製造する際には、枠抜き後、直ちに切断、成形、包装を行うことが多く、凝固点低下、硬度低下はそのまま製造適性の悪化にもつながる。
このため、硬度、凝固点を低下させる傾向にあるミリスチン酸の大量使用は困難であった。
これに対し、アミノ酸、トリメチルグリシンを配合した石鹸は公知(特許文献1,2)であるが、ミリスチン酸を大量配合した場合の凝固点、硬度低下の調整作用があることは全く知られていない。
特開2001−40390 WO2004/029190
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は脂肪酸として中級脂肪酸を大量に用いたとしても、その冷水溶解性、使用感等の特性を発揮しつつ、凝固点、硬度を向上させることのできる固形石鹸を提供することにある。
前記目的を達成するために本発明者らは、脂肪酸石鹸の凝固点を上昇させる手段について検討を進めた結果、ベタイン、特にトリメチルグリシンに優れた凝固点上昇作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。
前記目的を達成するために本発明に係る固形石鹸は、総脂肪酸中、C14のミリスチン酸を50質量%以上を含む固形石鹸であって、ベタインを1〜8質量%含むことを特徴とする。
また、前記固形石鹸において、ベタインとしてトリメチルグリシンが1〜5質量%配合されていることが好適である。
また、前記固形石鹸は、脂肪酸石鹸部を20〜70質量%と、糖・ポリオール部を30〜70質量%と、を含み、エタノールを実質的に含まない透明固形石鹸であることが好適である。
以下、本発明の構成について詳述する。
[脂肪酸石鹸部]
本発明の石鹸で使用される、脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩における脂肪酸としては、炭素原子数が好ましくは8〜20、より好ましくは12〜18の、飽和または不飽和の脂肪酸であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。具体例としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等や、それらの混合物である牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸等が挙げられる。本発明においては、これらの脂肪酸のうち、C12,C14の中級脂肪酸、具体的にはミリスチン酸が、脂肪酸中50質量%以上含まれる。より好ましくはミリスチン酸が70質量%以上の場合に、本発明の効果が顕著に得られる。50質量%以下である場合には、ミリスチン酸の添加効果である泡量、泡質の点で顕著な改善が認められない場合がある。
脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩の具体例としては、ラウリン酸ナトリウム/カリウム、ミリスチン酸ナトリウム/カリウム、パルミチン酸ナトリウム/カリウム、ステアリン酸ナトリウム/カリウム、オレイン酸ナトリウム/カリウム、イソステアリン酸ナトリウム/カリウム、牛脂脂肪酸ナトリウム/カリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム/カリウム、パーム核油脂肪酸ナトリウム/カリウム等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2つ以上を混合して使用してもよい。上記の脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩の中でも、ミリスチン酸ナトリウム/カリウムが好適に使用できる。
本発明の石鹸における、脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩の含有量は、透明石鹸の場合、20〜70質量%であることが好ましい。この含有量が20質量%未満であると、透明性が低下したり、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。逆に、70質量%を超えると、やはり透明性が低下したり、使用後につっぱり感が生じるおそれがある。
また、脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩においては、その塩を構成するナトリウムとカリウムとのモル比(ナトリウム/カリウム比)が、100/0〜40/60、特に80/20〜60/40であることが好ましい。このナトリウム/カリウム比が40/60を超えてカリウムの割合が多くなると、ベタインの添加によっても十分な凝固点が得られず、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。また、硬度が低下したり、使用時の溶け減りが大きくなったり、高温多湿の条件下で発汗が生じたり、使用途中に表面が白濁化するおそれがある。
[糖・ポリオール部]
本発明を透明固形石鹸に用いる際に好適に用いられる糖・ポリオールとしては、マルチトール、ソルビトール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、砂糖、ピロリドンカルボン酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ポリオキシエチレンアルキルグルコシドエーテル等が例示され、組成物中30〜70質量%配合することが好適である。
特に、透明性とともに良好な使用性を得るため、糖・ポリオール部中、糖及び糖アルコールと、ポリオールの比は、40〜60:60〜40であることが好ましい。
[両性界面活性剤]
本発明にかかる固形石鹸は、以下の両性界面活性剤を含むことが好適である。
本発明の固形石鹸で使用され得る両性界面活性剤としては、下記化学式(A)〜(C)で表される両性界面活性剤が挙げられる。
[式中、R1は、炭素原子数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、nおよびmは、同一または相異なって、1〜3の整数を表し、Zは、水素原子または(CH2pCOOY(ここで、pは1〜3の整数であり、Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。)を表す。]、
[式中、R2は、炭素原子数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、R3およびR4は、同一または相異なって、低級アルキル基を表し、Aは、低級アルキレン基を表す。]、および
[式中、R5は、炭素原子数8〜22のアルキル基またはアルケニル基を表し、R6およびR7は、同一または相異なって、低級アルキル基を表す。]。
化学式(A)において、R1の「炭素原子数7〜21のアルキル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは7〜17である。また、R1の「炭素原子数7〜21のアルケニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは7〜17である。また、Yの「アルカリ金属」としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、「アルカリ土類金属」としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられ、「有機アミン」としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
化学式(A)で表される両性界面活性剤の具体例としては、イミダゾリニウムベタイン型、例えば、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(ラウリン酸より合成されたもの、以下、便宜上「ラウロイルイミダゾリニウムベタイン」ともいう)、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(ステアリン酸より合成されたもの)、ヤシ油脂肪酸より合成された2−アルキルまたはアルケニル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(R1がC7〜C17の混合物、以下、便宜上、「ココイルイミダゾリニウムベタイン」ともいう)等が挙げられる。
化学式(B)において、R2の「炭素原子数7〜21のアルキル基」および「炭素原子数7〜21のアルケニル基」は、化学式(A)のR1と同様である。また、R3、R4の「低級アルキル基」は、直鎖状または分岐鎖状の、好ましくは炭素原子数が1〜3のアルキル基である。さらに、Aの「低級アルキレン基」は、直鎖状または分岐鎖状の、好ましくは炭素原子数が3〜5のアルキレン基である。
化学式(B)で表される両性界面活性剤(アミドアルキルベタイン型)の具体例としては、アミドプロピルベタイン型、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(R2がC7〜C17の混合物)等が挙げられる。
化学式(C)において、R5の「炭素原子数8〜22のアルキル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは8〜18である。また、R5の「炭素原子数8〜22のアルケニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは8〜18である。さらに、R6、R7の「低級アルキル基」は、化学式(B)のR3、R4と同様である。
化学式(C)で表される両性界面活性剤(アルキルベタイン型)の具体例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸より合成されたアルキルまたはアルケニルジメチルアミノ酢酸ベタイン(R5がC8〜C18の混合物)等が挙げられる。
本発明においては、上記化学式(A)〜(C)で表される両性界面活性剤からなる群より少なくとも1つが選択されて使用される。これら(A)〜(C)のうち、特に好適には化学式(C)で示されるアルキルベタイン型両性界面活性剤である。複数使用する場合、上記化学式(A)で表される両性界面活性剤を複数使用しても、上記化学式(B)で表される両性界面活性剤を複数使用しても、上記化学式(A)で表される両性界面活性剤を複数使用してもよいが、イミダゾリニウムベタイン型両性界面活性剤を必須とすることが好ましい。
本発明の固形石鹸においては、上記の両性界面活性剤を配合することにより、肪酸石鹸(脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩)と両性界面活性剤が複合塩を形成し、「きしみ感」改善等の使用性が向上し、また硬度が向上して溶け減り度合いが低くなる等の作用が発揮される。
本発明の固形石鹸における上記の両性界面活性剤の含有量は、1〜15質量%、特に4〜8質量%が好ましい。この含有量が1質量%未満であると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。また、硬度が低下したり、使用時の溶け減りが大きくなるおそれがある。さらに、透明性も低下するおそれがある。逆に、15質量%を超えると、使用後にベタツキ感を生じ、また、長期保存すると表面が褐色に変質して商品価値を損なうおそれがある。

[ノニオン界面活性剤]
本発明の固形石鹸には、さらにノニオン界面活性剤を配合することが好適である。使用され得るノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POEともいう)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン2−オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、プロピレンオキシドエチレンオキシド共重合ブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン変性シリコン(例えば、ポリオキシエチレンアルキル変性ジメチルシリコン)、ポリオキシエチレングリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレンアルキルグルコシド等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2つ以上を混合して使用してもよい。上記のノニオン界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、プロピレンオキシドエチレンオキシド共重合ブロックポリマーが好適に使用できる。
本発明の固形石鹸においては、ノニオン界面活性剤を配合することにより、使用性が一層向上する作用が発揮される。
本発明の固形石鹸におけるノニオン界面活性剤の含有量は、1〜15質量%、特に6〜12質量%が好ましい。この含有量が1質量%未満であると、むしろ使用後につっぱり感が生じるおそれがある。逆に、15質量%を超えると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。また、硬度が低下したり、使用時の溶け減りが大きくなるおそれがある。さらに、使用後にベタツキ感が生じるおそれがある。
[ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤]
本発明にかかる固形石鹸にはヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤を添加することが好適であり、泡立ちの改善が認められる。
本発明において好適なヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤は下記構造(D)を有する。
(式中、Rは炭素原子数4〜34の飽和又は不飽和の炭化水素基を表し;X、Xのいずれか一方は−CHCOOMを表し、他方は水素原子を表し;Mは水素原子、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウム、低級アルカノールアミンカチオン、低級アルキルアミンカチオン、又は塩基性アミノ酸カチオンを表す。)
式中、Rは芳香族炭化水素、直鎖状又は分岐状脂肪族炭化水素のいずれでもよいが、脂肪族炭化水素、特にアルキル基、アルケニル基が好ましい。例えば、ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルウンデシル基、2−デシルテトラデシル基、2−ウンデシルヘキサデシル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基等が好ましい例として挙げられ、中でもデシル基、ドデシル基が界面活性能力の面で優れている。
また、式中、X、Xのいずれか一方は−CHCOOMで表されるが、Mとしては、水素原子、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
具体的には、上記(A)ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤のうち、ドデカン−1,2−ジオールのいずれかのOH基のHが−CHCOONaで置換されたドデカン−1,2−ジオール・酢酸エーテルナトリウムが本発明で最も好ましい。
なお、本発明においてヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤は、泡立ちを改善する観点から1〜15質量%、好ましくは5〜10質量%配合することができる。
本発明において、前記以外の添加材として、上記した作用を損なわない範囲内で、次のような成分を任意に配合することができる。この任意成分としては、トリクロロカルバニリド、ヒノキチオール等の殺菌剤;油分;香料;色素;エデト酸3ナトリウム2水和物等のキレート剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;グリチルリチン酸ジカリウム、オオバコエキス、レシチン、サポニン、アロエ、オオバク、カミツレ等の天然抽出物;非イオン性、カチオン性あるいはアニオン性の水溶性高分子;乳酸エステル等の使用性向上剤等である。
また、本発明にかかる洗浄組成物にキレート剤を用いる場合には、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩が好適に例示され、さらに好ましくは、ヒドロキシエタンジホスホン酸である。配合量としては、0.001〜1.0質量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%である。ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩の配合量が0.001質量%より少ない場合は、キレート効果が不十分となり、経時で黄変等の不都合を生じ、1.0質量%より多いと皮膚への刺激が強くなり、好ましくない。
本発明の石鹸の製造方法については、上記した各成分の混合物に枠練り法、機械練り法等の一般的な方法を適用することができる。
また、本発明の固形石鹸を透明石鹸とする場合、顔料等の配合により透明性が低下したものも含まれる。
以上説明したように本発明にかかる石鹸によれば、ベタインの添加により、前脂肪酸中、中級脂肪酸を50質量%以上とし冷水に対する溶解性、泡立ち性を発揮しつつ、適正な成形性、保形性を得ることができる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明者らは脂肪酸石鹸系透明石鹸の泡立ち性改善を検討するため、次のような基本処方を用いて検討を行った。なお、配合量は質量%で示す。
まず、本発明者らは、下記石鹸部、糖・糖・ポリオール部、およびその他からなる基本処方の石鹸を用いて透明固形石鹸の製造を試みた。
基本処方
脂肪酸石鹸部 30.0%
高級脂肪酸(ステアリン酸) X部
中級脂肪酸(ラウリン酸:ミリスチン酸=1:3) Y部
水酸化ナトリウム:水酸化カリウム=7:3(モル比)で中和
糖・ポリオール部 40.0%
1,3−BG 15.0部
PEG1500 2.5部
ソルビトール 20.0部
ショ糖 23.0部
グリセリン 30.0部
その他 30.0%
トリメチルグリシン X%
ドデカン−1,2−ジオール酢酸エーテルナトリウム 5.0%
N−ラウロイル−N'−カルボキシメチル−N’
−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム 2.0%
PEG−60水添ヒマシ油 5.0%
キレート剤 0.1%
イオン交換水 残部
なお、以下の試験において、起泡力は、ミキサー法泡立て機を用いて測定した。すなわち石鹸濃度1%水溶液(人口硬水70ppm、温度25℃)を作成し、20秒間攪拌後の泡の高さを測定する。
また、摩擦溶解度は、JISK−3304に準じて測定した。すなわち、40℃に調整した水道水で濡らしたフィルム面上に一定重量の試料片(断面15mm×20mm)を載せ、このフィルムを回転し10分間摩擦溶解させる。摩擦溶解前後の重量より、次式により一定面積当たりの摩擦溶解度を求めた。
摩擦溶解度(%)=(前重量−後重量)×100/3
また、硬度は、レオメーター(不動工業社製)にて石鹸表面より深度10mmまで針を圧入した際の最大応力にて示した。
他の評価は、定法による。
なお、総合評価は、おもに凝固点、硬度に基づき評価を行った。
凝固点については、×(40℃以下)、△(40〜45℃)、○(45〜50℃)、◎(50℃以上)
硬度については、×(400以下)、△(400〜450)、○(450〜500)、◎(500以上)
他の評価項目についても劣る場合にはその評価も加味した。
まず、本発明者らは、前記基本処方の脂肪酸石鹸部、糖・ポリオール部及びその他の比率を固定し、高級脂肪酸と中級脂肪酸の割合を順次変更して、トリメチルグリシンの添加効果について検証を行った。
結果を表1,2に示す。
前記表1はトリメチルグリシンを配合することなく、全脂肪酸中の中級脂肪酸の割合を変化させた結果を示している。同表より明らかなように、中級脂肪酸の割合が0ないし0.2程度であると、製品硬度は非常に高いが、泡量、泡質の点で劣り、しかも製造時の石鹸溶融液の粘度が極めて高く、製造適性に劣る。一方、中級脂肪酸の割合が0.5〜0.7程度では、泡質、泡量は改善されたが、凝固点は低く、且つ硬度も低下する傾向が顕著に認められた。特に0.7を超えると、凝固点の降下に伴い石鹸溶融液の冷却・固化に時間を要するようになり、事実上製品化が困難であった。
そこで本発明者らは、特に全脂肪酸中の中級脂肪酸を1(100%)とした場合のトリメチルグリシンの添加効果について検討を行った。
結果を次の表2に示す。
表2はミリスチン酸とラウリン酸のみで石鹸を製造しており、しかもNa/K=70/30と凝固点、硬度が低下しやすい条件となっているが、トリメチルグリシンを1〜5質量%添加することにより凝固点、硬度が顕著に改善された。
そして、トリメチルグリシンを7質量%配合した例では、凝固点、硬度は上昇し、泡質の改善も認められるが、結晶を生じ、石鹸としての基本的な機能には影響がないものの、透明石鹸としての外観が悪化する。
更に本発明者らは、C12,C14の各種脂肪酸を主体として各種の固型石鹸を調整し、その評価を行った。結果を表3〜5に示す。
脂肪酸石鹸部 表記載のとおり
水酸化ナトリウム:水酸化カリウムを用い、所定モル数で中和
糖・ポリオール部 40.0%
1,3−BG 6.0部
ポリオキシプロピレン(7)グリセリルエーテル 4.0部
PEG1500 1.0部
ソルビトール 14.5部
ショ糖 2.0部
グリセリン 12.5部
その他 30.0%
トリメチルグリシン X%
ドデカン−1,2−ジオール酢酸エーテルナトリウム 5.0%
N−ラウロイル−N'−カルボキシメチル−N’
−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム 2.0%
PEG−60水添ヒマシ油 5.0%
キレート剤 0.1%
イオン交換水 残部
前記表3〜表5より明らかなように、ミリスチン酸単独の場合は無論、更に脂肪鎖の短いラウリン酸を共存させた場合にも、凝固点及び硬度の改善が認められた。
さらに、本発明において特徴的なトリメチルグリシンの添加効果は、Na/K=80/20〜50/50、トリメチルグリシン1〜8%の範囲で認められ、特にNa/K=70/30〜50/50、トリメチルグリシン1〜5質量%の領域で顕著に認められる。
また、前記表1〜5に示す透明固形石鹸は、製造時にエチルアルコールを実質的に用いずに製造する、いわゆるノンアルコールタイプであり、特にトリメチルグリシンの添加の利点が大きい。
すなわち、製造時にエチルアルコールを10ないし20%以上用いる、いわゆるアルコールタイプの透明固形石鹸を枠練り法にて製造する場合には、溶融石鹸液を長尺円筒状の冷却枠に流し込み、冷却を行い、冷却枠より石鹸素地棒を取り出した後に切断を行う。そして、製造時に用いたエチルアルコールの除去を行うため長時間(数日〜数週間)にわたるエージングを行う。このようなアルコールタイプの枠練り石鹸は、石鹸素地棒の冷却枠からの取り出し及び切断が可能な程度の硬度を有していれば、その後のエージング期間中に硬度の上昇が認められ、必要に応じエージング後に成形を行うことが可能となる。
しかしながら、前記ノンアルコールタイプは、エチルアルコールを実質的に用いない(多くても5%以下)ため、エージングが必要ないという利点を有するが、一方で石鹸素地棒の取り出し、切断、及び成形が連続的に行われることになり、冷却時間の短縮(凝固点の上昇)、硬度(切断、成形性)が極めて重要となる。
この点で本発明におけるトリメチルグリシンの添加効果(凝固点上昇、硬度上昇)は特に有用である。
更に本発明者らはトリメチルグリシンの類縁物質であるグリシンについて、効果の検証を行った。
この結果、グリシンについても、低濃度で硬化作用がある程度認められたが、外観色が黄変し、しかも保存により変臭を生じる場合があった。
このため、トリメチルグリシンによる石鹸の特性改善作用は、他のアミノ酸には見られない特異な作用であることが理解される。

Claims (3)

  1. 脂肪酸石鹸の総脂肪酸中、ミリスチン酸が50質量%以上である固形石鹸であって、トリメチルグリシンを1〜8質量%含むことを特徴とする固形石鹸。
  2. 請求項1記載の固形石鹸において、Na/K=80/20〜50/50であり、またトリメチルグリシンが1〜5質量%配合されていることを特徴とする固形石鹸。
  3. 請求項1または2記載の固形石鹸において、脂肪酸石鹸部を20〜70質量%と、糖・ポリオール部を30〜70質量%と、を含み、エタノールを実質的に含まないことを特徴とする透明固形石鹸。
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