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JP5576687B2 - 可溶性共重合ポリエステル樹脂 - Google Patents

可溶性共重合ポリエステル樹脂 Download PDF

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Description

本発明は、耐熱性に優れた可溶性共重合ポリエステル樹脂に関するものである。
共重合ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度と分子量を自由にコントロールできることから、コーティング用途や接着剤用途をはじめ様々な用途で使用されている。しかしながら、耐熱性向上のためにガラス転移温度が高くなるように設計すると、汎用溶剤への溶解性が低下し、溶解性向上のために結晶性を下げるように設計すると、耐熱性が低下する。そのため、良好な溶剤溶解性を有し、同時にガラス転移温度が100℃以上の共重合ポリエステルを作製することは非常に難しい。
一方、光学材料へのプラスチックの応用が盛んにおこなわれており、中でも、ビスフェノキシエタノールフルオレン(以下、BPEFと略称することがある。)を用いたポリエステルは、耐熱性、光学特性および成形性に優れることから、注目されている。
特許文献1〜5では、成形材料としてBPEFを共重合したポリエステル、特に光学材料用のポリエステルが提案されているが、塩化メチレンなどの含ハロゲン溶媒には溶解するものの、トルエンや2−ブタノンのような汎用溶剤には溶解せず、コーティング用途や接着剤用途では使用が困難であった。また、特許文献6では、粉体塗料用としてBPEFを共重合したポリエステルが提案されているが、ガラス転移温度が低く、また、汎用溶剤にも溶解しないため、コーティング用途や接着剤用途では使用が困難であった。また、特許文献7では、塗料および接着剤用としてBPEFを共重合したポリエステルが提案されているが、ガラス転移温度が100℃以下のため水蒸気に暴露されると塗膜が溶融する問題があった。また、特許文献8では、水性分散体用樹脂として、BPEF、ナフタレンジカルボン酸メチル、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム、エチレングリコールを含んだポリエステルが提案されているが、樹脂の固有粘度が0.53dL/g以下と比較的低いため加工性が悪く、コーティング用途や接着剤用途では使用が困難であった。
特開平06−49186号公報 特開平06−184288号公報 特開平08−109249号公報 特開平08−269178号公報 特開平11−060706号公報 特開平11−217520号公報 特開2001−2905号公報 特開2009−242461号公報
本発明の課題は、前記問題点を解決し、ガラス転移温度が100℃以上の耐熱性を有し、汎用溶剤に可溶な共重合ポリエステルを提供することである。
本発明者は、鋭意研究した結果、特定のグリコール成分を特定量使用すれば、前記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)ジカルボン酸成分(A)とグリコール成分(B)からなり、以下の条件を満たす共重合ポリエステル樹脂。
(i)(A)成分において、芳香族ジカルボン酸の共重合割合が80モル%以上である。
(ii)(B)成分において、ビスフェノキシエタノールフルオレンの共重合割合が30〜80モル%、一般式(1)で示されるグリコールの共重合割合が20〜70モル%、イソソルビドおよび/またはトリシクロデカンジメタノールの共重合割合が10〜40モル%である。
(iii)数平均分子量が8000以上である。
(iv)ガラス転移温度が100℃以上である。
(式中、Rは炭素数1〜2のアルキル基を表し、Rは水素および炭素数1〜2のアルキル基から選択されたものを表し、m、nはm+n=1、2を満たす0〜2の整数を表す。)
)()に記載の共重合ポリエステル樹脂を10質量%以上含有するポリエステル溶液であって、前記溶液の溶媒がシクロヘキサノン、2−ブタノン、トルエンからなる群より選ばれた1種以上の溶媒であるポリエステル溶液。
)()記載のポリエステル溶液を用いた塗料またはコーティング剤。
本発明によれば、ガラス転移温度が100℃以上の耐熱性を有し、汎用溶剤に可溶な共重合ポリエステルが提供される。この共重合ポリエステルを溶解した溶液はコーティング用途や接着剤用途で利用することができ、産業上の利用価値は極めて高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、主としてジカルボン酸成分(A)とグリコール成分(B)から構成されるものである。
ジカルボン酸成分(A)としては、芳香族カルボン酸を共重合する必要がある。芳香族カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ジカルボキシビフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。中でも、汎用性が高いテレフタル酸とイソフタル酸が好ましい。
ジカルボン酸成分(A)に対する芳香族カルボン酸の共重合量は、80モル%以上とすることが必要で、90モル%以上が好ましい。芳香族カルボン酸の共重合量が80モル%未満であると、共重合ポリエステル樹脂の耐熱性が低くなり、また、加工性が悪くなるので好ましくない。
ジカルボン酸成分(A)を構成する他のジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、アイコサン二酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸の脂環族ジカルボン等が挙げられる。これらは無水物であってもよい。
グリコール成分(B)としては、式(2)で示されるBPEFを共重合する必要がある。BPEFは、JFEケミカル社または大阪ガスケミカル社等から入手することができる。
グリコール成分(B)に対するBPEFの共重合量は30〜80モル%とすることが必要で、40〜75モル%が好ましく、40〜70モル%がより好ましい。BPEFの共重合量が30モル%未満であるとガラス転移温度が100℃よりも低くなる。一方、BPEFの共重合量が80モル%を超えると、溶融粘度が高くなるため高分子量のポリマーを得ることが困難となり、また、汎用溶剤にも溶解しにくくなるので好ましくない。
グリコール成分(B)として、さらに、一般式(1)で示されるモノマー(以下、「モノマー(1)」と略称する。)を共重合する必要がある。
(式中、Rは炭素数1〜2のアルキル基を表し、Rは独立して水素および炭素数1〜2のアルキル基から選択されたものを表し、m、nはm+n=1、2を満たす0〜2の整数を表す。)
モノマー(1)としては、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,2−ブタンジオール、2−エチル−1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、3−エチル−1,3−ペンタンジオール等が挙げられる。中でも、汎用性と溶剤溶解性の点から、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコールが好ましい。
グリコール成分(B)に対するモノマー(1)の共重合量は、20〜70モル%が必要で、25〜50モル%が好ましく、30〜50モル%がより好ましい。モノマー(1)の共重合量が20モル%未満であると、溶解性が悪くなり、一方、モノマー(1)の共重合量が70モル%を超えると、ガラス転移温度が100℃よりも低くなるので好ましくない。
また、グリコール成分(B)として、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール(以下、「イソソルビド」と略称することがある。)および/またはトリシクロデカンジメタノールを共重合すると、可溶性を維持しながら、さらにガラス転移温度を向上させることができるので好ましい。
イソソルビドは式(3)で示される。
イソソルビドは糖類およびでんぷんから容易に得ることができる。例えば、D−グルコースを水添し、脱水反応をすればイソソルビドを得ることができる。イソソルビドは、ロケット社から入手することができる。
トリシクロデカンジメタノールは一般式(4)で示される。
トリシクロデカンジメタノールとしては、3(4)、8(9)−ビス(ヒドロキシメチル)−トリシクロ(5.2.1.02.6)デカン(以下、「TCDアルコール」と略称する)等が挙げられる。TCDアルコールは、OXEA社から入手することができる。
イソソルビドとトリシクロデカンジメタノールの共重合量は、グリコール成分(B)に対する両者の合計を、10〜40モル%とすることが必要であり、10〜30モル%とすることが好ましい。
グリコール成分(B)を構成する他のジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、ビスフェノールAP、4,4′−ビフェノールのエチレンオキサイド付加体またはプロピレンオキサイド付加体、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが挙げられる。
本発明の共重合ポリエステル樹脂には、適度な柔軟性付与、ガラス転移温度の調整などの目的に応じて、ヒドロキシカルボン酸を共重合してもよい。
ヒドロキシカルボン酸成分としては、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、乳酸、オキシラン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、10−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられ、これらの中でも、汎用性があるε−カプロラクトンが好ましい。
全カルボン酸成分に対するヒドロキシカルボン酸の共重合量は、30モル%以下が好ましい。ヒドロキシカルボン酸成分の割合が30モル%を超えると、ガラス転移温度が100℃よりも低くなる場合がある。なお、「全カルボン酸成分」とは、本発明の共重合ポリエステル樹脂の構成成分とすることのできるジカルボン酸成分(A)、ヒドロキシカルボン酸成分、モノカルボン酸成分、3価以上のカルボン成分の総和を意味する。
共重合ポリエステル樹脂には、少量であれば、3官能以上のカルボン酸成分やアルコール成分を共重合成分として添加してもよい。
3官能以上のカルボン酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水べンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸等の芳香族カルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族カルボン酸等が挙げられる。
3官能以上のアルコール成分としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコース、マニトール、ソルビトール等が挙げられる。
これらは必ずしも1種類で用いる必要はなく、樹脂に対し付与したい特性に応じて複数種以上添加して用いることが可能である。3官能以上のモノマーの共重合量としては、全カルボン酸成分または全アルコール成分に対して0.2〜5モル%程度が適当である。3官能以上のモノマーの共重合量が0.2モル%未満であると、添加した効果が発現せず、共重合量が5モル%を超える場合、重合時にゲル化点を超えゲル化が問題になる場合がある。なお、「全アルコール成分」とは、本発明のポリエステルの構成成分とすることのできるグリコール成分(B)、ヒドロキシカルボン酸成分、モノアルコール成分、3価以上のアルコール成分の総和を意味する。
共重合ポリエステルには、全カルボン酸成分に対して1モル%を超えない範囲で、モノカルボン酸が共重合されていてもよく、また、全アルコール成分に対して1モル%を超えない範囲で、モノアルコールが共重合されていてもよい。モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等、モノアルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等が挙げられる。
共重合ポリエステル樹脂は、前記のモノマーを組み合わせて、公知の方法で製造することができる。例えば、エステル化反応および重縮合反応からなる方法が挙げられる。
エステル化反応では、全モノマー成分および/またはその低重合体を不活性雰囲気下、加熱溶融して反応させる。反応時間は2.5〜10時間が好ましく、4時間〜6時間がより好ましい。
重縮合反応は、減圧下、エステル化反応で得られたエステル化物から、グリコール成分を留去させ、所望の分子量に達するまでおこなう。重縮合の反応温度は、250〜300℃が好ましく、270〜300℃がより好ましい。反応温度がこの範囲の場合、溶融粘度が高い本発明の共重合ポリエステルを十分に攪拌でき重合時間を短くすることができる。減圧度は、130Pa以下であることが好ましい。減圧度が低いと、重縮合時間が長くなる場合がある。大気圧から130Pa以下に達するまで、60〜180分かけて徐々に減圧することが好ましい。
エステル化反応および重縮合反応の際には、必要に応じて、触媒を用いる。触媒としては、テトラブチルチタネートなどの有機チタン酸化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の酢酸塩、三酸化アンチモン、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズ等の有機錫化合物等が挙げられる。触媒の使用量は、生成する樹脂質量に対し、1.0質量%以下とすることが好ましい。
共重合ポリエステル樹脂に所望の酸価や水酸基価を付与する場合には、前記の重縮合反応に引き続き、多塩基酸成分や多価グリコール成分をさらに添加し、不活性雰囲気下、解重合をおこなうことができる。
共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量は8,000以上とすることが必要で、10,000以上であることが好ましい。数平均分子量が8,000未満では、加工性が悪く、コーティングした際に塗膜が割れてしまうので好ましくない。
共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、100℃以上であることが必要で、110℃以上がより好ましい。ガラス転移温度が100℃よりも低いと、水蒸気にさらした際、塗膜が溶融するので好ましくない。
共重合ポリエステルの数平均分子量は、重合時間や解重合量を制御することにより上記範囲に調整することができる。また、ガラス転移温度は、共重合するモノマーの組み合わせを適宜選択することにより、上記範囲に調整することができる。トリシクロデカンジメタノール、イソソルビド、BPEFを共重合すると、ガラス転移温度は高くなり、モノマー(1)を共重合すると、ガラス転移温度は低くなる傾向にある。
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、溶剤への溶解性に優れるため、様々な汎用溶媒に溶解させてポリエステル溶液として利用することができる。25℃において、溶液濃度は10質量%以上が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、25〜40質量%がさらに好ましい。ポリエステルの溶液濃度が10質量%未満であると、塗料やコーティング剤として使用する際の作業性が低下する。溶液濃度の上限は特にないが、溶液の粘性が高くなりすぎないためには50質量%以下が好ましい。用いる溶媒としては、シクロヘキサノン、2−ブタノン、トルエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。中でも、溶解性が高いことから、シクロヘキサノンと、2−ブタノンとトルエンの併用が好ましい。2−ブタノンとトルエンを併用する場合、両者の質量比は特に限定されないが、80/20〜20/80の範囲とすることが好ましい。
本発明の共重合ポリエステル樹脂には、必要に応じて、硬化剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、各種添加剤、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料、顔料分散剤、染料、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、セルロース誘導体等を配合することができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、共重合ポリエステル樹脂の物性測定は以下の方法によりおこなった。
(1)樹脂組成
H−NMR分析(日本電子データム製、500MHz)により求めた。
(2)数平均分子量
数平均分子量は、GPC分析(島津製作所製の送液ユニットLC−10ADvp型および紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:クロロホルム、ポリスチレン換算)により求めた。
(3)ガラス転移温度
共重合ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定をおこない、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値を求め、これをガラス転移温度(Tg)とした。
(4)溶解性能
ガラス製容器に、樹脂ペレット10g、2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)90gを入れ、ペイントシェーカーを用いて25℃で6時間振盪させ、溶解状態を観察した。溶解したものを「○」、溶解しなかったものを「×」とした。また、溶媒としてシクロヘキサノンを用いて同様の試験をおこなった。いずれかの溶媒で「○」になった場合、溶解性能があるとした。
(5)加工性
卓上型コーティング装置(安田精機製、フィルムアプリケーターNo.542−AB型、バーコータ装着)を用いて、PETフィルム(50μm、ユニチカ社製)基材上に(4)で作製したトルエン/2−ブタノン混合溶媒溶液をコーティングし、続いて100℃に設定されたオーブン中で1分間加熱し、基材上に厚み約10μmの塗膜を形成させたコートフィルムを作製した。(4)でトルエン/2−ブタノン混合溶媒に溶解せず、シクロヘキサノンに溶解した場合は、オーブンの温度設定を150℃とした以外は、トルエン/2−ブタノン混合溶媒を用いた場合と同様にコートフィルムを作製した。得られたコートフィルムを180°方向に折り曲げ、塗膜が割れなければ「○」とし、塗膜が割れた場合「×」とした。
(6)耐水蒸気性
(5)で作製した塗膜を、100℃に加熱した蒸気に30秒間暴露し、塗膜の様子を観察した。塗膜が溶融しなかった場合、耐水蒸気性は「○」とし、塗膜が溶融した場合、耐水蒸気性は「×」とした。
参考例1
テレフタル酸1661質量部、BPEF2193質量部、ネオペンチルグリコール885質量部、トリメリロールプロパン2.7質量部(テレフタル酸:BPEF:ネオペンチルグリコール:トリメチロールプロパン=100:50:85:0.2(モル比))からなる混合物を、攪拌しながら、オートクレーブ中、3時間、0.3MPa、260℃で制御し、そのあと、放圧したのち3時間、常圧、260℃でエステル化反応をおこなった。次いで、270℃に昇温し、触媒としてテトラブチルチタネート6.8質量部(テレフタル酸1モルあたり20×10−4モル)を投入し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、重縮合反応をおこなった。適当な粘度になるまで重縮合をおこない、ストランドカッターを用いて、ペレット状の共重合ポリエステルを得た。
参考例2〜4、実施例1〜、比較例1〜5
使用するモノマーと仕込組成を変更した以外は、参考例1と同様の操作をおこなって、共重合ポリエステル樹脂を得た。
表1と表2に、樹脂の仕込樹脂組成、最終樹脂組成および特性値を示す。
実施例1〜においては、いずれもガラス転移温度が100℃以上、かつ、汎用溶剤に溶解し、耐熱性、溶解性能が良好であった。その溶液を用いて作製した塗膜は、いずれも加工性に優れており、また、水蒸気に曝しても塗膜は溶融せず耐水蒸気性は良好であった。
それに対して、比較例1は、BPEFの共重合量が少なく、モノマー(1)の共重合量が多かったため、ガラス転移温度が100℃に達せず耐熱性、耐水蒸気性が低いものであった。
比較例2は、BPEFの共重合量が多かったため、溶解性能が悪く塗膜を作製することができなかった。
比較例3は、芳香族カルボン酸の共重合量が少なかったため、ガラス転移温度が100℃に達せず耐熱性、耐水蒸気性が低いものであった。
比較例4は、モノマー(1)の共重合量が少なかったため、溶解性能が悪く塗膜を作製することができなかった。
比較例5は、分子量が8000よりも低かったため、塗膜は作製できたものの、加工性が悪かった。

Claims (3)

  1. ジカルボン酸成分(A)とグリコール成分(B)からなり、以下の条件を満たす共重合ポリエステル樹脂。
    (i)(A)成分において、芳香族ジカルボン酸の共重合割合が80モル%以上である。
    (ii)(B)成分において、ビスフェノキシエタノールフルオレンの共重合割合が30〜80モル%、一般式(1)で示されるグリコールの共重合割合が20〜70モル%、イソソルビドおよび/またはトリシクロデカンジメタノールの共重合割合が10〜40モル%である。
    (iii)数平均分子量が8000以上である。
    (iv)ガラス転移温度が100℃以上である。
    (式中、Rは炭素数1〜2のアルキル基を表し、Rは水素および炭素数1〜2のアルキル基から選択されたものを表し、m、nはm+n=1、2を満たす0〜2の整数を表す。)
  2. 請求項に記載の共重合ポリエステル樹脂を10質量%以上含有するポリエステル溶液であって、前記溶液の溶媒がシクロヘキサノン、2−ブタノン、トルエンからなる群より選ばれた1種以上の溶媒であるポリエステル溶液。
  3. 請求項記載のポリエステル溶液を用いた塗料またはコーティング剤。
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