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JP5562118B2 - 超音波非破壊計測方法、超音波非破壊計測装置、及びプログラム - Google Patents

超音波非破壊計測方法、超音波非破壊計測装置、及びプログラム Download PDF

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JP5562118B2 JP2010116484A JP2010116484A JP5562118B2 JP 5562118 B2 JP5562118 B2 JP 5562118B2 JP 2010116484 A JP2010116484 A JP 2010116484A JP 2010116484 A JP2010116484 A JP 2010116484A JP 5562118 B2 JP5562118 B2 JP 5562118B2
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Description

本発明は、コンクリート構造物の超音波伝搬速度の計測技法に関し、特に、反射波法によりコンクリート構造物の超音波伝搬速度を計測する超音波非破壊計測方法、超音波非破壊計測装置、及びプログラムに関する。
橋、トンネル、擁壁などのコンクリート構造物において、施工品質管理や劣化変状に対する健全度診断を目的として、超音波を用いた非破壊検査装置が用いられている。一般的な検査項目としては、ひび割れ深さ(コンクリート構造物の表面から内部に向かうひび割れの深さ)、内部割れ深さ(コンクリート構造物の表面からコンクリート構造物の内部に存在するひび割れ等の欠陥までの深さ)、コンクリート構造物の厚さの計測が知られている。
また、日本建築学会の「コンクリート強度推定のための非破壊試験方法マニュアル(1983.2)」において、コンクリート構造物中の超音波伝搬速度と圧縮強度との間には相関があると示されており(例えば、非特許文献1参照)、例えば図16に示すように、コンクリート中の超音波の音速(超音波伝搬速度)を計測することにより圧縮強度の推定も可能となる。
超音波伝搬速度の計測として、図14(a)に示す送信探触子4と図14(b)に示す受信探触子5が用いられる。送信探触子4は、内部に電圧発生機41を備え、電圧発生機41は、外部から与えられる制御信号によって超音波を生じさせるための電圧を発生させる。受信探触子5は、内部に受信機51を備え、受信機51は、振動を電圧波形としての受信信号として変換し、外部に送出する。また、接触媒質42,52は、振動子とコンクリート構造物1との間に介在する例えばグリセリンペーストやグリスからなる。
非特許文献1における超音波伝搬速度による圧縮強度の推定では、図15(a)に示すような「透過法」が用いられる。透過法では、受信探触子5からの受信信号から超音波伝搬速度を求めるにあたり、コンクリート構造物1を挟んで送信探触子4及び受信探触子5が配置されているため、コンクリート構造物1中で超音波を伝搬させて到達した時間を計測することにより、コンクリート構造物1の厚さから超音波伝搬速度(以下、「透過音速」と称する)を計算することができる。
一方、図15(b)に示すような「表面法」では、コンクリート構造物1の表面に送信探触子4及び受信探触子5が配置され、コンクリート構造物1の表面で超音波を伝搬させて到達した時間を特定することにより、超音波伝搬速度(以下、「表面音速」と称する)を計算することができる。
これらの透過法及び表面法は、代表的なコンクリート構造物の超音波伝搬速度の計測法であるが、表面音速は表面性状を表すものであり、コンクリート構造物の内部性状を表している透過音速とは性質が異なる。つまり、コンクリート構造物自体について超音波を用いて非破壊検査を行うにあたり、一般的に、コンクリート構造物の圧縮強度だけでなく、ひび割れ深さ、内部割れ深さ、コンクリート構造物1の厚さを計測するのに透過法を用いることが推奨される。
上記の透過法及び表面法とは別に、コンクリート構造物1の表面に送信探触子4及び受信探触子5を所定間隔に配置させ、送信探触子4からコンクリート構造物の表面から底面に向かう超音波がコンクリート構造物の底面で反射した成分を受信信号として受信探触子5で検出し、この受信信号の電圧波形からコンクリート構造物1における超音波の反射波到達時間を計測して超音波伝搬速度を計算する技法(以下、「反射波法」と称する)が知られている(例えば、特許文献1参照)。特に、特許文献1の技術は、超音波受信信号のピーク時間位置の平滑度から交点座標時間を求める「重畳波フィルタリング処理」によってコンクリート構造物内の反射波到達時間を計測し、計測対象のコンクリート構造物の超音波伝搬速度(以下、「反射音速」とも称する)を決定する。ただし、本手法については構造物の厚さが既値であることが前提となる。
特許第4308719号公報
社団法人 日本建築学会編集、「コンクリート強度推定のための非破壊試験方法マニュアル」、社団法人 日本建築学会発行、丸善株式会社、1983年6月25日(第1版第2刷)、P.29,39
(第1課題)計測対象構造物の構造依存性
透過法により透過音速を計測する場合、送信探触子と受信探触子の2つの探触子を用いて、コンクリート構造物を挟んで配置する必要があるが、トンネルやマンホールなどの地中構造物の計測では、地山側に探触子を配置することが不可能である。また透過法の場合、コンクリート構造物の厚さが既知であることが前提となるため、コンクリート構造物の厚さが実測できない場合は、透過音速の計測は不可能である。
表面法により表面音速を計測する場合、コンクリート構造物の表面を伝搬する超音波を計測するため、透過法のようなコンクリート構造物の内部を伝搬する透過音速とは異なる。既設のコンクリート構造物の表面は、微細なひび割れが入っている場合が多く、また粗骨材(砂利)が若干少なくなるため、透過音速より表面音速が低下し、表面音速が安定せず計測精度が著しく低下する。
また、特許文献1の技術における反射波法においても、既設のコンクリート構造物の表面は、微細なひび割れが入っていると計測対象のコンクリート構造物内の反射波到達時間を誤って計測する可能性があり、計測対象のコンクリート構造物の一部をコア抜きして、採取コアの透過音速を計測する必要性が生じることもあった。
(第2課題)コンクリート構造物のコンクリート材料依存性
コンクリート材料は、作製時にセメント・水・骨材・砂利の量を決定するものであるが、厳密に言うと、コンクリート材料内の組成は不均一である。このコンクリート材料内の組成の不均一は、上記の透過法、表面法、及び特許文献1の技術における反射波法のいずれにおいても計測対象のコンクリート構造物における超音波の伝搬時間を誤って計測する可能性がある。
代表的に、特許文献1の技術における反射波法について計測対象のコンクリート構造物内の反射波到達時間を誤って計測する例を図17に示す。図17(a),(b)は、骨材等を含むコンクリート構造物1における超音波の伝搬時間を計測する例を示している。図17(a)は、骨材の影響を受けることなく、送信探触子4からの超音波がコンクリート構造物1の底面で反射した成分を受信信号として受信探触子5で検出した場合(図17(a)の左側図示)、シンプルな反射波形として受信信号を得ることができ、超音波伝搬時間Taを正しく得る様子を示している(図17(a)の右側図示)。図17(b)は、骨材の影響を受けてしまい、送信探触子4からの超音波がコンクリート構造物1の底面で反射した成分(正規成分)と骨材で反射した成分(ノイズ)とを重畳した受信信号を受信探触子5で検出した場合(図17(b)の左側図示)、ノイズが重畳した反射波形として、超音波伝搬時間Taを正しく得られず、誤差ΔTを有する超音波伝搬時間Ta’を得る様子を示している(図17(b)の右側図示)。
図17(b)に示すように、微細な反射波が重畳すると反射波スペクトルは粗雑なものとなり、この重畳する微細な反射波がノイズとなる。このノイズ量が多いほど、反射波スペクトルは粗雑となり、またコンクリート構造物1の厚さからの反射波が不明瞭なものとなる。このため、粗雑な反射波スペクトルにおいては、コンクリート構造物1の厚さからの反射波及び到達時間T(正規の超音波伝搬時間Ta)を誤認するおそれがある。そして、誤差を持った到達時間T(誤検知の超音波伝搬時間Ta’)を用いて、コンクリート構造物1の厚さやコンクリート構造物1内の音速を算出した場合、当然これらも誤差を持った値となる。
従って、この場合においても、計測対象のコンクリート構造物の一部をコア抜きして、採取コアの透過音速を計測する必要性が生じることもあった。
本発明の目的は、上記課題を鑑みて為されたものであり、反射波法によりコンクリート構造物の超音波伝搬速度を高精度に計測する超音波非破壊計測方法、超音波非破壊計測装置、及びプログラムを提供することにある。
本発明は、概要として、一対の送信探触子及び受信探触子(以下、単に「探触子」とも称する)の設置距離及び設置位置を可変にして波形解析を行い、コンクリート構造物の底面からの反射波の計測誤差が最小となるように反射波到達時間を算出し、コンクリート構造物内部の超音波伝搬速度を決定する。
即ち、本発明の超音波非破壊計測装置は、コンクリート構造物の表面に所定間隔に配置された送信探触子及び受信探触子にて、反射波法によりコンクリート構造物の超音波伝搬速度を計測する超音波非破壊計測装置であって、前記送信探触子から、超音波を発生するよう制御する超音波発生手段と、前記受信探触子から、前記コンクリート構造物の底面で反射した受信信号を、前記超音波の発生時刻を起点とした受信信号波形として取得するよう制御する受信信号処理手段と、前記受信信号波形について周波数解析を行い、単一周波数の信号であるか否かを判別してノイズが重畳した受信信号であるか否かを判断する周波数解析手段と、前記受信信号波形から、受信信号波形の振幅に基づく受信信号波形の中間点を算出する受信信号波形中間点決定手段と、前記周波数解析手段によってノイズが重畳していないと判断される受信信号波形の前記単一周波数及び前記中間点から算出される反射波到達時間を前記コンクリート構造物における正規の反射波到達時間として決定する反射波到達時間決定手段と、異なる探触子間隔にそれぞれ対応する算出した反射波到達時間から、所定の反射音速演算を実行し、超音波伝搬速度を決定する反射音速演算手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の超音波非破壊計測装置において、前記受信信号波形中間点決定手段は、前記受信信号波形における振幅が最大となる点と二番目に大きい点の間に存在する振幅が0となる点を前記中間点として算出することを特徴とする。
また、本発明の超音波非破壊計測装置において、前記周波数解析手段は、前記受信信号波形にノイズが重畳していると判断される場合に、探触子の設置距離及び設置位置を変更して再測定するよう指令を発生する手段を有することを特徴とする。
また、本発明の超音波非破壊計測装置において、前記探触子の設置距離及び設置位置を変更するために、前記送信探触子及び前記受信探触子の設置位置を、前記コンクリート構造物における測定ポイントを軸に所定の回転速度で変化させる手段を更に備えることを特徴とする。
また、本発明の超音波非破壊計測装置において、前記送信探触子及び前記受信探触子は、設置距離及び設置位置がそれぞれ異なる複数組から構成され該複数組を自動的に切替えて再測定するための計測位置切替信号を発生する計測位置切替信号発生手段を更に備えることを特徴とする。
更に、本発明の超音波非破壊計測方法は、コンクリート構造物の表面に所定間隔に配置された送信探触子及び受信探触子にて、反射波法によりコンクリート構造物の超音波伝搬速度を計測する超音波非破壊計測方法であって、(a)前記送信探触子から、超音波を発生するよう制御するステップと、(b)前記受信探触子から、前記コンクリート構造物の底面で反射した受信信号を、前記超音波の発生時刻を起点とした受信信号波形として取得するよう制御するステップと、(c)前記受信信号波形について周波数解析を行い、単一周波数の信号であるか否かを判別してノイズが重畳した受信信号であるか否かを判断するステップと、(d)前記受信信号波形から、受信信号波形の振幅に基づく受信信号波形の中間点を算出するステップと、(e)前記ステップ(c)によってノイズが重畳していないと判断される受信信号波形の前記単一周波数及び前記中間点から算出される反射波到達時間を前記コンクリート構造物における正規の反射波到達時間として決定するステップと、(f)異なる探触子間隔にそれぞれ対応する算出した反射波到達時間から、所定の反射音速演算を実行し、超音波伝搬速度を決定するステップと、を含むことを特徴とする。
また、本発明の超音波非破壊計測方法において、前記ステップ(d)は、前記受信信号波形における振幅が最大となる点と二番目に大きい点の間に存在する振幅が0となる点を前記中間点として算出することを特徴とする。
また、本発明の超音波非破壊計測方法において、前記ステップ(c)は、前記受信信号波形にノイズが重畳していると判断される場合に、探触子の設置距離及び設置位置を変更して再測定するよう指令を発生するステップを含むことを特徴とする。
また、本発明の超音波非破壊計測方法において、前記探触子の設置距離及び設置位置を変更するために、前記送信探触子及び前記受信探触子の設置位置を、前記コンクリート構造物における測定ポイントを軸に所定の回転速度で変化させるステップを更に含むことを特徴とする。
また、本発明は、コンクリート構造物の表面に所定間隔に配置された送信探触子及び受信探触子にて、反射波法によりコンクリート構造物の超音波伝搬速度を計測する超音波非破壊計測装置として構成するコンピュータに、(a)前記送信探触子から、超音波を発生するよう制御するステップと、(b)前記受信探触子から、前記コンクリート構造物の底面で反射した受信信号を、前記超音波の発生時刻を起点とした受信信号波形として取得するよう制御するステップと、(c)前記受信信号波形について周波数解析を行い、単一周波数の信号であるか否かを判別してノイズが重畳した受信信号であるか否かを判断するステップと、(d)前記受信信号波形から、受信信号波形の振幅に基づく受信信号波形の中間点を算出するステップと、(e)前記ステップ(c)によってノイズが重畳していないと判断される受信信号波形の前記単一周波数及び前記中間点から算出される反射波到達時間を前記コンクリート構造物における正規の反射波到達時間として決定するステップと、(f)異なる探触子間隔にそれぞれ対応する算出した反射波到達時間から、所定の反射音速演算を実行し、超音波伝搬速度を決定するステップと、を実行させるためのプログラムとしても構成可能である。
本発明により基本情報(コンクリート構造物の厚さの情報)が無くとも、更には、コンクリート構造物の一部をコア抜きする必要性を生じさせることなく、高精度で正規の超音波伝搬時間を計測できるので、地中構造物においても、非破壊でコンクリート内部の超音波伝搬速度を計測することが可能となり、これにより、ひび割れ深さ、内部割れ深さ、コンクリート構造物の厚さ、コンクリート構造物の圧縮強度を高精度で推定することができるようになる。
本発明による一実施例の超音波非破壊計測装置を適用する概略図である。 本発明による一実施例の超音波非破壊計測装置の概略図である。 本発明による一実施例の超音波非破壊計測装置における受信信号波形解析部の詳細を示すブロック図である。 本発明による一実施例の超音波非破壊計測装置の動作を示すフロー図である。 (a)は、コンクリート構造物の表面上に探触子間隔Laで配置する送信探触子及び受信探触子と、探触子間隔Lbで配置する送信探触子及び受信探触子とを併記した平面図であり、(b)は、その正面図である。 (a),(b)は、地山に設けられた所定の厚さを有するコンクリート構造物について、本発明による一実施例の超音波非破壊計測装置によって、探触子間隔La,Lbにそれぞれ対応する反射波到達時間Ta,Tbを算出して反射音速Vの値を求める説明図である。 (a),(b)は、地山に設けられた所定の厚さHを有するコンクリート構造物1について、本発明による一実施例の超音波非破壊計測装置によって、探触子間隔La,Lbにそれぞれ対応する受信信号波形例Fa(t),Fb(t)及び最終的に決定される反射波到達時間Ta,Tbの説明図である。 本発明による一実施例の超音波非破壊計測装置によって、超音波反射点Oを基準に探触子間隔La,Lbにそれぞれ対応する反射波到達時間Ta,Tbを算出して反射音速Vの値を求める説明図である。 (a)は、本発明による一実施例の超音波非破壊計測装置によって、受信信号波形が単一周波数の信号であると判断する場合の例を示し、(b)は、本発明による一実施例の超音波非破壊計測装置によって、受信信号波形が単一周波数の信号でないと判断する場合の例を示す図である。 (a),(b)は、本発明による一実施例の超音波非破壊計測装置によって、反射波到達時間の決定処理における受信信号波形の一例を示す図である。 実施例2の超音波非破壊計測装置によって探触子間隔La,Lbの設置距離を自動変更するべく、複数組の送信探触子及び受信探触子をそれぞれ異なる所定間隔で固定する探触子固定器と、探触子切替器からなる計測補助装置の説明図である。 実施例3の超音波非破壊計測装置によって探触子間隔La,Lbの設置距離及び設置位置を自動変更するべく、複数組の送信探触子及び受信探触子をそれぞれ異なる所定間隔で固定する探触子固定器と、探触子切替器と、所定間隔で固定する探触子間隔中央を回転軸として探触子固定器を回転させる回転機構からなる計測補助装置の説明図である。 実施例4の超音波非破壊計測装置によって予め可変にする設置距離及び設置位置に、それぞれの組を構成する探触子間隔La,Lbの複数組の送信探触子及び受信探触子を固定する探触子固定器を備える計測補助装置の説明図である。 (a)は、送信探触子の概略図であり、(b)は、受信探触子の概略図である。 (a)は、送信探触子及び受信探触子を用いた透過法による計測技法の説明図であり、(b)は、送信探触子及び受信探触子を用いた表面法による計測技法の説明図である。 コンクリート中の超音波の音速(超音波伝搬速度)とコンクリート構造物の圧縮強度の関係を示す図である。 (a),(b)計測対象のコンクリート構造物内の反射波到達時間を誤って計測する例を示す図である。
まず、本発明による実施例1の超音波非破壊計測装置を説明する。本発明に係る超音波非破壊計測方法及びプログラムは、本発明による実施例1の超音波非破壊計測装置の説明から明らかになる。
〔装置構成〕
図1は、本発明による一実施例の超音波非破壊計測装置を適用する概略図である。本実施例の超音波非破壊計測装置6は、反射波法によりコンクリート構造物の超音波伝搬速度を計測する装置であり、コンクリート構造物1の表面に送信探触子4及び受信探触子5を所定間隔に配置させ、送信探触子4からコンクリート構造物1の表面から底面に向かう超音波9がコンクリート構造物1の底面で反射した成分を受信信号として受信探触子5で検出するにあたり、探触子の設置距離及び設置位置を可変にしてノイズの無い受信信号を検出し、この受信信号の電圧波形からコンクリート構造物1における超音波9の伝搬時間を計測して超音波伝搬速度を計算し、求めた伝搬速度を表示装置7に表示する。実施例1では、所定間隔の探触子における受信信号波形を計測する度に表示装置7に表示させ、計測者によってノイズを含んでいるか否かを判断させ、受信信号波形にノイズが含んでいる場合には、所定間隔の探触子における受信信号波形を別の設置位置に設置させるように構成することができるが、以下の説明では、受信信号波形がノイズを含んでいるか否かの判断を超音波非破壊計測装置6で自動的に行う場合を説明する。
尚、図1に示すように、図14に示す送信探触子4及び受信探触子5を用いてコンクリート構造物1の伝搬速度を計算するにあたり、従来では計測の困難であった地山2上にコンクリート構造物1が設けられている例について説明する。本実施例の超音波非破壊計測装置6は、従来技術とは相違して、探触子の設置距離及び設置位置を可変にして波形解析を行い、コンクリート構造物1の底面からの反射波の計測誤差が最小となるように反射波到達時間を算出し、コンクリート構造物1内部の超音波伝搬速度を決定するように構成したものである。以下、詳細に説明する。
図2は、本発明による一実施例の超音波非破壊計測装置の概略図である。超音波非破壊計測装置6は、ユーザインターフェース61と、制御部62と、記憶部63と、制御信号発生部64と、受信信号処理部65と、表示制御部66と、計測位置切替信号発生部67とを備える。制御部62は、制御信号開始設定部621と、受信信号波形記録部622と、スペクトラム演算として代表的なFFT演算部623と、受信信号波形解析部624とを有する。尚、これらの機能は、従来とは相違する機能を特に示したものであり、他の機能を排除することを意図したものでない。また、超音波非破壊計測装置6は、好適に、コンピュータで構成することができ、ユーザインターフェース61を、計測パラメータを入力する任意のマン‐マシン・インターフェースで構成することができ、制御部62の各機能を中央演算処理装置(CPU)で実現するために、記憶部63の所定の領域にCPUで実行させるためのプログラムを格納することができる。また、各機能を実現させるために必要とされるデータを、記憶部63に一時的、又は恒久的に格納することもできる。このような記憶部63は、適宜コンピュータ内部のROM、RAM又はハードディスクなどで構成させることができ、或いは又、外部記憶装置(例えば、外付けハードディスク)を用いて構成させることもできる。
制御信号発生部64は、制御信号開始設定部621からの指令に応じた電圧の制御信号を送信探触子4に与える機能を有する。
受信信号処理部65は、受信探触子5−1を介して、コンクリート構造物1内で反射した超音波の受信信号を得て、制御信号発生部64が制御信号を発した時刻を起点(超音波の発生時刻を起点)とした受信信号波形に処理して受信信号波形記録部622に送出する機能を有する。
表示制御部66は、受信信号波形解析部624の解析結果を表示装置7に表示する機能を有する。
計測位置切替信号発生部67は、受信信号波形解析部624の解析結果に応じて、探触子間隔La,Lbの設置距離及び設置位置を変更するべく外部に計測位置切替信号を発生する機能を有する(実施例2乃至実施例4で詳述される)。
制御信号開始設定部621は、所定の電圧で送信探触子4−1から超音波を発するよう制御信号発生部64に指令を与える機能を有する。
受信信号波形記録部622は、受信信号処理部65から制御信号を発した時刻を起点とした受信信号波形を収録する機能を有する。
FFT演算部623は、収録した受信信号波形についてフーリエ変換処理を施し、フーリエ変換処理を施した波形データと対応する受信信号波形を受信信号波形解析部624に送出する機能する。
受信信号波形解析部624は、FFT演算部623から得られるフーリエ変換処理を施した波形データから単一周波数の信号であるか否かを判別する周波数解析を行い、受信信号波形が単一周波数の信号であると判断した場合に、その単一周波数の値fpに対応する受信信号波形から受信信号波形の振幅に基づく受信信号波形の中間点を判別して反射波到達時間を決定し、異なる探触子間隔で得られる反射波到達時間から超音波伝搬速度(反射音速)を演算して決定する機能を有する。受信信号波形解析部624は、受信信号波形が単一周波数の信号でない(ノイズが重畳している)と判断した場合には、探触子の設置距離及び設置位置を変更して再測定するよう指令を発生させ、表示制御部66を介して計測エラーの旨を表示装置7に表示させ計測者に知らせるよう機能する。
尚、受信信号波形解析部624の詳細を図3に示す。受信信号波形解析部624は、卓越周波数決定部6241と、受信信号波形中間点決定部6242と、反射波到達時間決定部6243と、反射音速演算部6244とを有する。
卓越周波数決定部6241は、FFT演算部623から得られるフーリエ変換処理を施した波形データから単一周波数(卓越周波数fp)の信号であるか否かを判別する周波数解析を行う機能を有する。
受信信号波形中間点決定部6242は、受信信号波形記録部622に収録した受信信号波形から、受信信号波形における最大波形ピーク時間Pn(最大ピーク時間をP1、二番目に大きいピーク時間をP2)を検知して、P1及びP2間における音響振幅値が0の際の時間T0(中間点)を算出する機能を有する。
反射波到達時間決定部6243は、卓越周波数決定部6241によって決定した卓越周波数fpに基づいて、受信信号波形中間点決定部6242によって決定した中間点から卓越する1/fpの半波長分を引算し反射波到達時間を算出する機能を有する。
反射音速演算部6244は、異なる探触子間隔にそれぞれ算出した対応する反射波到達時間から、後述する式(3)に基づく反射音速演算を実行し、反射音速(超音波伝搬速度)Vを算出する機能を有する。
以下、図4を参照して本実施例の超音波非破壊計測装置6の動作について説明する。
ステップS1で、計測準備として、計測者がユーザインターフェース61を経て計測パラメータを超音波非破壊計測装置6に設定する。計測パラメータは、送信探触子4と受信探触子5の探触子間隔(La,Lb等)、及び送信探触子4に与える電圧であり、計測を開始する前に設定する。以下の説明では、送信探触子4と受信探触子5の探触子間隔Laで超音波伝搬時間Taの計測を実施した後(必要に応じて探触子の設置位置を可変にする)、送信探触子4と受信探触子5の探触子間隔Lbで超音波伝搬時間Tbの計測を実施する(必要に応じて探触子の設置位置を可変にする)例を説明する。そこで、探触子間隔Laで配置する送信探触子4及び受信探触子5を、それぞれ送信探触子4−1及び受信探触子5−1で表し、探触子間隔Lbで配置する送信探触子4及び受信探触子5を、それぞれ送信探触子4−2及び受信探触子5−2で表すことにする。実際の実現例では、La=60mm,Lb=120mmとした。
尚、探触子の設置に際しては、送信探触子4−1及び受信探触子5−1における振動子とコンクリート構造物1の表面との間でのエネルギ損失が大きくなりやすいため、振動子とコンクリート構造物1との間にグリスなどを塗布し、接触面に介在する空気を追い出して振動子をコンクリート構造物1の表面に密着させるのが好適である。また、対象とするコンクリート構造物1が鉄筋コンクリート構造物である際には、本発明のやり方に従って複数個所を計測した後の統計学的観点から鉄筋による影響の有無を判別してもよいが、鉄筋位置を電磁波レーダ法、電磁誘導法等で計測して、鉄筋の影響を極力受けないような点を予め決定した後に探触子を設置するのが好適である。また、コンクリート構造物1の表面に大きな凹凸がある場合には研磨等で表面を平滑にする必要がある。
ステップS2及びS3で、超音波非破壊計測装置6は、送信探触子4−1と受信探触子5−1の探触子間隔Laで超音波伝搬時間Taの計測を実施する。より具体的には、探触子間間隔Laで送信探触子4−1と受信探触子5−1を設置し、制御信号開始設定部621により所定の電圧で送信探触子4−1から超音波を発するよう制御信号発生部64に指令を与え、制御信号発生部64は、制御信号発生部64からの指令に応じた電圧の制御信号を送信探触子4−1に与える。一方、受信信号処理部65は、受信探触子5−1を介して、コンクリート構造物1内で反射した超音波の受信信号を得て、制御信号発生部64が制御信号を発した時刻(超音波を発生開始した時刻をゼロ)を起点とした受信信号波形に処理して受信信号波形記録部622に送出する。受信信号波形記録部622は、受信信号処理部65から制御信号を発した時刻を起点(超音波を発生開始した時刻をゼロ)とした受信信号波形を収録する。
次に、超音波非破壊計測装置6は、FFT演算部623によって、受信信号波形記録部622に収録した受信信号波形を読み出し、この受信信号波形についてフーリエ変換処理を施し、フーリエ変換処理を施した波形データと対応する受信信号波形を受信信号波形解析部624に送出する。
受信信号波形解析部624は、FFT演算部623から得られるフーリエ変換処理を施した波形データから単一周波数の信号であるか否かを判別する周波数解析を行い、受信信号波形が単一周波数の信号であると判断した場合には、その単一周波数の値fpに対応する受信信号波形から受信信号波形の振幅に基づく受信信号波形の中間点を判別して反射波到達時間決定Taを決定する。一方、受信信号波形解析部624は、受信信号波形が単一周波数の信号でない(ノイズが重畳している)と判断した場合には、表示制御部66を介して計測エラーの旨を表示装置7に表示させ計測者に知らせる。計測者は、計測エラーの旨を知ると、受信信号波形が単一周波数の値fpとなるまで、送信探触子4−1と受信探触子5−1の探触子間隔Laで各探触子の設置位置を変更して、送信探触子4−1と受信探触子5−1の探触子間隔Laで超音波伝搬時間Taの計測を実施する。尚、送信探触子4と受信探触子5の探触子間隔Laで各探触子の設置位置を360度変更しても受信信号波形が単一周波数の値fpとなる結果が得られない場合には、測定ポイントを変更すればよい。
図9(a),(b)は、受信信号波形解析部624による周波数解析の動作例を示す図である。図9(a)は、受信信号波形解析部624によって受信信号波形が単一周波数の信号であると判断する場合の例であり、ノイズが重畳していない場合であるので、受信信号波形は制御信号を発した時刻を起点とした超音波伝搬時間Ta後にシンプルな反射波形として得られ、フーリエ変換による周波数解析を実行すると単一周波数の値fpを得ることができる。一方、図9(b)は、受信信号波形解析部624によって受信信号波形が単一周波数の信号でないと判断する場合の例であり、ノイズが重畳している場合であるので、受信信号波形は制御信号を発した時刻を起点とした超音波伝搬時間Ta’にノイズが重畳した反射波形として得られ、フーリエ変換による周波数解析を実行すると単一周波数の値fpを得ることができず、ノイズ成分(fn)を1つ以上含んだ結果が得られる。即ち、ノイズの重畳が無く、コンクリート構造物の厚さからの反射波のみ計測されたシンプルな反射波スペクトルについては、ある一定域の周波数帯に集約されるが、ノイズが多大に重畳した粗雑な反射波スペクトルについては、広域の周波数帯域に分布する様子が見られる。従って、受信信号波形解析部624の周波数解析により単一周波数の値fpを得ることで、骨材等の影響を受けていないと想定される受信信号波形の信号成分を特定することができるようになる。
続いて、図5(a),(b)を参照して、受信信号波形が単一周波数の値fpとなるまで、送信探触子4と受信探触子5の探触子間隔Laで各探触子の設置位置を変更する例を説明する。図5(a)は、コンクリート構造物1の表面上に探触子間隔Laで配置する送信探触子4−1及び受信探触子5−1と、探触子間隔Lbで配置する送信探触子4−2及び受信探触子5−2とを併記した平面図であり、それぞれの各探触子の設置位置を変更する際の測定する線(測線1及び測線2)を破線で示している。図5(b)は、コンクリート構造物1の表面上に探触子間隔Laで配置する送信探触子4−1及び受信探触子5−1と、探触子間隔Lbで配置する送信探触子4−2及び受信探触子5−2とを併記した正面図である。超音波反射点は、コンクリート構造物1の底面上にあり、図5(b)を参照するに、超音波伝搬経路上に、骨材等の反射要因がなければFFT演算部623によって受信信号波形が単一周波数の信号であると判断することができる。一方、超音波伝搬経路上に、骨材等の反射要因がある場合、受信信号波形解析部624によって受信信号波形が単一周波数の信号ではないと判断することができるので、図5(a)に示すように、測線1に沿って送信探触子4−1と受信探触子5−1の探触子間隔Laで各探触子の設置位置を測線1に沿って変更する。尚、測定にあたって、受信信号波形をほぼリアルタイムで取得して受信信号波形が単一周波数の信号であるか否かを知ることができるので、超音波反射点を中心に円周方向に等速で移動させながら受信信号波形が単一周波数の信号となる探触子の設置位置を探索するのが好適であり、受信信号波形が単一周波数の信号となる探触子の設置位置が見つかり次第、反射波到達時間の決定処理に移行する。
反射波到達時間の決定処理について図10を参照しながら説明する。図10(a),(b)は、反射波到達時間の決定処理における受信信号波形の一例を示す図である。超音波非破壊計測装置6は、探触子間隔Laで配置する送信探触子4−1及び受信探触子5−1における反射波到達時間Taを決定するにあたり、まず、受信信号波形中間点決定部6242によって、コンクリート構造物1の底面からの反射波(1〜1.5波)から、計測誤差が最小となる中間点を選定すべく、受信信号波形における最大波形ピーク時間Pn(最大ピーク時間をP1、二番目に大きいピーク時間をP2)を検知して、P1及びP2間における音響振幅値が0の際の時間T0(中間点)を算出する。続いて、反射波到達時間決定部6243によって、式(1)に示すように、卓越周波数決定部6241によって決定した卓越周波数fpに基づいて、中間点から卓越する1/fpの半波長分を引算し反射波到達時間Taを自動算出する。
コンクリート構造物1の底面からの反射波とは、音響振幅(音圧)が最も大きい波の集合(1〜1.5波)である。最大振幅点P1は、音響振幅が最大のときの時間として与えられる。二番目に大きい振幅点P2は、音響振幅が二番目に大きいときの時間として与えられる。中間点T0は、コンクリート反射波における最大振幅点と二番目に大きい振幅点との間で音響振幅が0となるときの時間として与えられる。反射波到達時間は、コンクリート底面の反射波を受信したときの時間として与えられる。探触子間隔Laの場合、中間点T0aと卓越周波数fpから、式(1)のように反射波到達時間Taが得られる。
Figure 0005562118
ここに、Ta:探触子間隔Laにおける反射波到達時間、T0a:探触子間隔Laにおける受信信号波形の中間点、fp:卓越周波数である。
尚、受信信号波形中間点決定部6242によって、ノイズの存在によって受信信号波形における最大波形ピーク時間Pn(最大ピーク時間をP1、二番目に大きいピーク時間をP2)を検知することができない場合には、受信信号波形中間点決定部6242は表示制御部66を介して計測エラーの旨を表示装置7に表示させ計測者に知らせるよう機能する。この場合にも、図5(a)に示すように、測線1に沿って送信探触子4−1と受信探触子5−1の探触子間隔Laで各探触子の設置位置を変更する。
尚、測定にあたって、受信信号波形をほぼリアルタイムで取得して受信信号波形がノイズを含んでいるか否かを知ることができるので、図5(a)に示すように、超音波反射点を中心に円周方向に等速で移動させながら受信信号波形がノイズを含んでいない信号となる探触子の設置位置を探索することもできる。また、卓越周波数fpの決定と、最大波形ピーク時間Pn(最大ピーク時間をP1、二番目に大きいピーク時間をP2)を検知することができる受信信号波形の決定に際し、これらの決定に伴う各探触子の設置位置は一致している必要はないので、受信信号波形の決定の後に卓越周波数fpの決定を行うように構成することもでき、即ち個別に探触子の設置位置を探索することができる。更に、受信信号波形の決定と卓越周波数fpの決定を同時に行うべく、探触子を固定して探触子間の中点を中心として円弧上に移動させながら反射波形を収録した後、収録した受信信号波形にノイズが重畳しているか否かを判別して反射波到達時間を決定するように構成することもできる。例えば、探触子を回転走査しながら(超音波進行方向を変更しながら)受信信号波形を収録し、収録した受信信号波形にノイズが重畳しているか否かを、探触子を回転走査しながら判断する手段を設けてもよく、ノイズが重畳していると判断する場合は、探触子間隔又は計測箇所を変更して同様の操作を行うことでリアルタイム性に優れた計測が可能となる。
また、実際の実現例では、探触子間の中点を中心として円弧上に移動させながら反射波形を収録するにあたり、鉄筋の影響を極力受けないような箇所を予め定めておくことが、探触子の回転走査による設置位置の探索にとって好適である。実現例では、探触子の回転走査速度を6mm/sec程度とした。
ステップS4及びS5で、超音波非破壊計測装置6は、超音波伝搬時間Taの計測と同様のやり方で、探触子間隔Lbにおける超音波伝搬時間Tbの計測を実施する。この場合にも、図5(a)に示すように、測線2に沿って送信探触子4−2と受信探触子5−2の探触子間隔Lbで各探触子の設置位置を変更することができる。反射波到達時間Tbは、式(2)から得られる。測定対象の箇所を同じくする場合、卓越周波数fpを必ずしも改めて測定しなおす必要がないが、信号処理の都合上、卓越周波数fpの決定及び最大波形ピーク時間Pn(最大ピーク時間をP1、二番目に大きいピーク時間をP2)を検知することができる受信信号波形の決定を一連の処理として実行する場合、卓越周波数fpを各測定結果の平均値とすることができる。
Figure 0005562118
ここに、Tb:探触子間隔Lbにおける反射波到達時間、T0b:探触子間隔Lbにおける中間点、fp:卓越周波数である。
ステップS6で、超音波非破壊計測装置6は、反射音速演算部6244によって、探触子間隔La,Lbにそれぞれ対応する算出した反射波到達時間Ta,Tbから、後述する式(3)に基づく反射音速演算を実行し、反射音速(超音波伝搬速度)Vを自動算出し、ステップS7で、超音波非破壊計測装置6は、算出した反射音速Vの値を表示制御部66の制御によって表示装置7に表示する。
反射音速Vの算出について、図6乃至図8を参照して詳細に説明する。図6(a),(b)は、地山2上に設けられた所定の厚さHを有するコンクリート構造物1について、超音波非破壊計測装置6によって、探触子間隔La,Lbにそれぞれ対応する算出した反射波到達時間Ta,Tbから反射音速Vの値を求める説明図である。図7(a),(b)は、地山2上に設けられた所定の厚さHを有するコンクリート構造物1について、超音波非破壊計測装置6によって、探触子間隔La,Lbにそれぞれ対応する受信信号波形例Fa(t),Fb(t)及び最終的に決定される反射波到達時間Ta,Tbの説明図である。図8は、超音波反射点Oを基準に探触子間隔La,Lbにそれぞれ対応する算出した反射波到達時間Ta,Tbから反射音速Vの値を求める説明図である。
図8を参照するに、
OP=(OC)−(PC)=(OD)−(PD
となるから、
(V×Ta/2)−(La/2)=(V×Tb/2)−(Lb/2)
であり、Vについて展開することで、式(3)が得られる。
Figure 0005562118
ここで、V:反射音速、La,Lb:探触子間間隔、Ta,Tb:反射波到達時間である。
従って、得られた探触子間隔La,Lb、及びその時の反射波到達時間Ta,Tbの各値を以下の式(3)に代入して演算を行うことで、コンクリート構造物1内を伝搬する超音波伝搬速度(反射音速)を算出することができる。探触子間隔La,Lbのときのコンクリート構造物1の厚さHからの反射音速が同一であると定めることができるので、コンクリート構造物1中の超音波伝搬速度(反射音速)を高精度で求めることができる。
換言すれば、式(3)に基づいて超音波伝搬速度(反射音速)を高精度で求めるには、反射波到達時間Ta,Tbの計測精度の高低によって決まることとなる。従来からの反射波到達時間Ta,Tbの計測技法では複数回の計測においてばらつきが生じうるところ、「計測対象構造物の構造依存性」及び「コンクリート構造物のコンクリート材料依存性」に起因するノイズの影響であると着目したことで、本発明による実施例1の超音波非破壊計測装置6によれば、反射波到達時間Ta,Tbを正確に計測できるようになる。
これにより、トンネルやマンホールなどの地中構造物においても、非破壊で、コンクリート内部性状を表す超音波音速を計測することが可能である。
また、精密に計測された超音波音速を用いてひび割れ深さ、内部割れ深さ、コンクリート構造物の厚さ、圧縮強度を非破壊で推定することが可能である。
圧縮強度を推定することにより、コンクリート構造物の健全度を非破壊で評価することが可能である。
上述した実施例1では、計測者によって、ノイズが確認された場合には探触子間隔La,Lbの設置距離及び設置位置を可変にして、表示装置7で受信信号波形やその周波数分布をそれぞれ比較して確認しながら多数回の計測を実施する例を説明した。この実施例1によれば、収録された各受信信号波形の比較及び確認により、一定点であるコンクリート構造物1の厚さHからの反射波の周波数域がある一定の領域に存在していることは容易にわかり得ることから、この周波数解析により、周波数分布が広域に及んでいると確認された場合は、その反射波スペクトルはノイズを多分に含んでいると判断することができ、使用するデータとしてふさわしくないと判断することもできる。そして、周波数分布が一定域に収束している反射波スペクトルをノイズの影響の低位なデータとして判断することができる。
このように、図9に示す周波数解析を実施することによって、ノイズ量の多少を識別することが可能となるが、コンクリート材料内には骨材・砂利・気泡等の超音波散乱源が不均一に分布しているため、個体差を完全に消去することが難しいのも事実である。そこで、周波数解析だけでなく、図10に示すとおり、コンクリート構造物1の底面からの反射波の振幅が最大となる点と音響振幅が二番目に大きい点の間に存在する音響振幅が0となる中間点を算出することは、コンクリート材料内の骨材・砂利・気泡等の超音波散乱減の影響による反射波到達時間のバラツキを更に低減させることができる。また、精度の高い反射波が1〜1.5波程度であることが分かっているから、前述した中間点から卓越する波長1/fpの半波長分を引算するだけで、反射波到達時間を高精度に算出することができる。
また、特許文献1の技術における超音波受信信号のピーク時間位置の平滑度から交点座標時間を求める「重畳波フィルタリング処理」を受信信号波形解析部624による受信信号波形の解析に適用することで、更にノイズを低減させることができ、より高精度に反射波到達時間を算出することができるようになる。
本実施例の超音波非破壊計測装置6により、透過音速とほぼ同程度の反射波音速を計測することができ、圧縮強度、ひび割れ深さ、内部割れ深さ、コンクリート構造物の厚さを高精度に推定することが可能となる。
また、本実施例の超音波非破壊計測装置6により、精密に計測された超音波音速を用いてひび割れ深さ、内部割れ深さ、コンクリート構造物の厚さ、圧縮強度を非破壊で推定することが可能である。
また、本実施例の超音波非破壊計測装置6によって圧縮強度を推定することにより、コンクリート構造物の健全度を非破壊で評価することが可能である。
上述した実施例1では、計測者によって、ノイズが確認された場合には探触子間隔La,Lbの設置距離及び設置位置を可変にして、表示装置7で受信信号波形やその周波数分布をそれぞれ比較して確認しながら多数回の計測を実施する例を説明した。以下の実施例では、探触子間隔La,Lbの設置距離及び設置位置を自動可変にした構成例を説明する。
以下、本発明による実施例2の超音波非破壊計測装置の応用例を説明する。図11は、実施例2の超音波非破壊計測装置によって探触子間隔La,Lbの設置距離を自動変更するべく、複数組の送信探触子及び受信探触子をそれぞれ異なる所定間隔で固定する探触子固定器14と、探触子の切替を行う探触子切替器12,13からなる計測補助装置の説明図である。実施例2の超音波非破壊計測装置6は、図2と同様であるが、計測位置切替信号発生部67からの計測位置切替信号を用いて探触子間隔La,Lbの設置距離を自動変更する点で相違する。
図11に示す計測補助装置は、例示的に3つの組からなる送信探触子4−1及び受信探触子5−1、送信探触子4−2及び受信探触子5−2、及び送信探触子4−3及び受信探触子5−3をそれぞれ異なる所定間隔(例えば、それぞれ60mm,120mm,180mm)で固定する探触子固定器14を備えており、各組の探触子について、超音波非破壊計測装置6からの計測位置切替信号によって切替を行う例を示している。
実施例1では、探触子間隔La,Lbの各々における受信信号波形を得るにあたり、受信信号波形にノイズが含んでいる場合には、計測者によって間隔を変更する例を説明したが、実施例2では図11に示す計測補助装置が具備されるため、自動的に探触子間隔La,Lbの各々における受信信号波形を得ることができる。これは、複数の反射波到達時間の測定に際し、測定ポイントのずれが全く生じなくなるという利点を有する。
そこで、実施例2の超音波非破壊計測装置6における受信信号波形解析部624は、2つの探触子間隔の各々における受信信号波形を得る場合に、送信探触子4−1及び受信探触子5−1、送信探触子4−2及び受信探触子5−2、及び送信探触子4−3及び受信探触子5−3のうちのいずれか1つから測定を開始して反射波到達時間を算出することができた場合、算出した反射波到達時間の組とは別の送信探触子4−1及び受信探触子5−1、送信探触子4−2及び受信探触子5−2、及び送信探触子4−3及び受信探触子5−3のうちのいずれかで測定を開始すべく、計測位置切替信号発生部67を介して計測位置切替信号を探触子切替器12,13に送出する。探触子切替器12,13は、送信探触子4−1及び受信探触子5−1、送信探触子4−2及び受信探触子5−2、及び送信探触子4−3及び受信探触子5−3のうちのいずれかを計測者の配置変更作業を要することなく切替えるため、異なる探触子間隔の受信信号波形を自動的に得ることができる。
尚、図11に示す計測補助装置は、例示的に3つの組からなる送信探触子及び受信探触子を示しているが、これは仮にこのうちの1つの組の送信探触子及び受信探触子から所望の反射波到達時間が算出できないほどのノイズが含まれていた場合にも、更に自動的に切替えることができるよう例示するためである。従って、実施例2において、探触子固定器14は、2組の送信探触子及び受信探触子を固定するものでもよいし、4組以上の送信探触子及び受信探触子を固定するものでもよい。更に、測定ポイントを同一にするものであれば、各組の送信探触子及び受信探触子の設置位置は、同一軸上でなくともよい。
次に、上述した実施例2の応用例から、更に、探触子間隔La,Lbの設置距離及び設置位置を自動可変にした構成例を説明する。
以下、本発明による実施例3の超音波非破壊計測装置の応用例を説明する。図12は、実施例3の超音波非破壊計測装置によって探触子間隔La,Lbの設置距離及び設置位置を自動変更するべく、複数組の送信探触子及び受信探触子をそれぞれ異なる所定間隔で固定する探触子固定器14と、探触子切替器12,13と、所定間隔で固定する探触子間隔中央を回転軸21として探触子固定器14を回転させる回転機構(例えば、モータ)20からなる計測補助装置の説明図である。実施例3の超音波非破壊計測装置6は、図2と同様であるが、計測位置切替信号発生部67からの計測位置切替信号を用いて探触子間隔La,Lbの設置距離及び設置位置を自動変更する点で相違する。回転の都度、送信探触子及び受信探触子とコンクリート構造物1との間にグリス等を補充するのが好適である。探触子固定器14は、金属又はアクリル等の任意の材料で形成することができる。
そこで、実施例3の超音波非破壊計測装置6における受信信号波形解析部624は、2つの探触子間隔の各々における受信信号波形を得る場合に、送信探触子4−1及び受信探触子5−1、送信探触子4−2及び受信探触子5−2、及び送信探触子4−3及び受信探触子5−3のうちのいずれか1つから測定を開始して反射波到達時間を算出するにあたり、図5で説明した回転動作をも自動的に行うべく、計測位置切替信号発生部67を介して計測位置切替信号を回転機構20に送出する。これにより、測定ポイントのずれを完全に抑制することができるので、異なる探触子間隔の受信信号波形をより高精度で自動的に得ることができる。従って、実施例3の超音波非破壊計測装置6における受信信号波形解析部624は、回転機構20とともに、コンクリート構造物1における超音波進行方向を変更するために、各送信探触子4及び受信探触子5の設置位置を、コンクリート構造物1における測定ポイントを軸に所定の回転速度で変化させる手段として構成される。
次に、上述した実施例3の応用例から、更に、探触子間隔La,Lbの設置距離及び設置位置を自動可変にした別の構成例を説明する。
以下、本発明による実施例4の超音波非破壊計測装置の応用例を説明する。図13は、実施例4の超音波非破壊計測装置によって予め可変にする設置距離及び設置位置に、それぞれの組を構成する探触子間隔La,Lbの複数組の送信探触子及び受信探触子を固定する探触子固定器を備える計測補助装置の説明図である。実施例4の超音波非破壊計測装置6は、図2と同様であるが、実施例3では、回転機構20を利用していたのに対し、実施例4では、計測位置切替信号発生部67からの計測位置切替信号を用いて探触子間隔La,Lbの設置距離及び設置位置を自動変更するにあたり、予め可変にする設置距離及び設置位置に、それぞれの組を構成する探触子間隔La,Lbの複数組の送信探触子及び受信探触子(送信探触子4−1及び受信探触子5−1乃至送信探触子4−6及び受信探触子5−6)を固定する探触子固定器15を備える計測補助装置を利用する点で相違する。送信探触子及び受信探触子とコンクリート構造物1との間にグリス等を補充するのも1回でよく、瞬時に2つの探触子間隔の各々における受信信号波形を得るとともに、測定ポイントのずれを完全に抑制することができるので、異なる探触子間隔の受信信号波形をより高精度で高速に得ることができる。尚、図17で示したノイズの影響を受けたものであるか否かの判別精度を向上させるためには、図13に示すように、実施例3の送信探触子及び受信探触子の各々を、円周方向に交互の送受信関係となるように配置するのが好適である。探触子固定器15は、金属又はアクリル等の任意の材料で形成することができる。
前述した実施例では、特定の形態について説明したが、本発明は、前述した実施例に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、実施例4の利点を鑑みて、実施例1の送信探触子及び受信探触子の各々を、円周方向に交互の送受信関係となるように配置して測定することもできる。従って、本発明は、上述の実施例にて制限されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
本発明によれば、様々なコンクリート構造物1に対して、高精度で超音波の正規の伝搬時間を計測できるので、コンクリート構造物のひび割れ深さ、内部割れ深さ、コンクリート構造物の厚さ、コンクリート構造物の圧縮強度を高精度で推定する用途に有用である。
1 コンクリート構造物
2 地山
4,4−1,4−2,4−3,4−4,4−5,4−6 送信探触子
5,5−1,5−2,5−3,5−4,5−5,5−6 受信探触子
6 超音波非破壊計測装置
7 表示装置
9 超音波
12,13 探触子切替器
14,15 探触子固定器
20 回転機構
21 回転軸
41 電圧発生機
42 接触媒質
51 受信機
52 接触媒質
61 ユーザインターフェース
62 制御部
63 記憶部
64 制御信号発生部
65 受信信号処理部
66 表示制御部
67 計測位置切替信号発生部
621 制御信号開始設定部
622 受信信号波形記録部
623 FFT演算部
624 受信信号波形解析部
6241 卓越周波数決定部
6242 受信信号波形中間点決定部
6243 反射波到達時間決定部
6244 反射音速演算部

Claims (10)

  1. コンクリート構造物の表面に所定間隔に配置された送信探触子及び受信探触子にて、反射波法によりコンクリート構造物の超音波伝搬速度を計測する超音波非破壊計測装置であって、
    前記送信探触子から、超音波を発生するよう制御する超音波発生手段と、
    前記受信探触子から、前記コンクリート構造物の底面で反射した受信信号を、前記超音波の発生時刻を起点とした受信信号波形として取得するよう制御する受信信号処理手段と、
    前記受信信号波形について周波数解析を行い、単一周波数の信号であるか否かを判別してノイズが重畳した受信信号であるか否かを判断する周波数解析手段と、
    前記受信信号波形から、受信信号波形の振幅に基づく受信信号波形の中間点を算出する受信信号波形中間点決定手段と、
    前記周波数解析手段によってノイズが重畳していないと判断される受信信号波形の前記単一周波数及び前記中間点から算出される反射波到達時間を前記コンクリート構造物における正規の反射波到達時間として決定する反射波到達時間決定手段と、
    異なる探触子間隔にそれぞれ対応する算出した反射波到達時間から、所定の反射音速演算を実行し、超音波伝搬速度を決定する反射音速演算手段と、
    を備えることを特徴とする超音波非破壊計測装置。
  2. 前記受信信号波形中間点決定手段は、前記受信信号波形における振幅が最大となる点と二番目に大きい点の間に存在する振幅が0となる点を前記中間点として算出することを特徴とする、請求項1に記載の超音波非破壊計測装置。
  3. 前記周波数解析手段は、前記受信信号波形にノイズが重畳していると判断される場合に、探触子の設置距離及び設置位置を変更して再測定するよう指令を発生する手段を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の超音波非破壊計測装置。
  4. 前記探触子の設置距離及び設置位置を変更するために、前記送信探触子及び前記受信探触子の設置位置を、前記コンクリート構造物における測定ポイントを軸に所定の回転速度で変化させる手段を更に備えることを特徴とする、請求項3に記載の超音波非破壊計測装置。
  5. 前記送信探触子及び前記受信探触子は、設置距離及び設置位置がそれぞれ異なる複数組から構成され該複数組を自動的に切替えて再測定するための計測位置切替信号を発生する計測位置切替信号発生手段を更に備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波非破壊計測装置。
  6. コンクリート構造物の表面に所定間隔に配置された送信探触子及び受信探触子にて、反射波法によりコンクリート構造物の超音波伝搬速度を計測する超音波非破壊計測方法であって、
    (a)前記送信探触子から、超音波を発生するよう制御するステップと、
    (b)前記受信探触子から、前記コンクリート構造物の底面で反射した受信信号を、前記超音波の発生時刻を起点とした受信信号波形として取得するよう制御するステップと、
    (c)前記受信信号波形について周波数解析を行い、単一周波数の信号であるか否かを判別してノイズが重畳した受信信号であるか否かを判断するステップと、
    (d)前記受信信号波形から、受信信号波形の振幅に基づく受信信号波形の中間点を算出するステップと、
    (e)前記ステップ(c)によってノイズが重畳していないと判断される受信信号波形の前記単一周波数及び前記中間点から算出される反射波到達時間を前記コンクリート構造物における正規の反射波到達時間として決定するステップと、
    (f)異なる探触子間隔にそれぞれ対応する算出した反射波到達時間から、所定の反射音速演算を実行し、超音波伝搬速度を決定するステップと、
    を含むことを特徴とする超音波非破壊計測方法。
  7. 前記ステップ(d)は、前記受信信号波形における振幅が最大となる点と二番目に大きい点の間に存在する振幅が0となる点を前記中間点として算出することを特徴とする、請求項6に記載の超音波非破壊計測方法。
  8. 前記ステップ(c)は、前記受信信号波形にノイズが重畳していると判断される場合に、探触子の設置距離及び設置位置を変更して再測定するよう指令を発生するステップを含むことを特徴とする、請求項6又は7に記載の超音波非破壊計測方法。
  9. 前記探触子の設置距離及び設置位置を変更するために、前記送信探触子及び前記受信探触子の設置位置を、前記コンクリート構造物における測定ポイントを軸に所定の回転速度で変化させるステップを更に含むことを特徴とする、請求項8に記載の超音波非破壊計測方法。
  10. コンクリート構造物の表面に所定間隔に配置された送信探触子及び受信探触子にて、反射波法によりコンクリート構造物の超音波伝搬速度を計測する超音波非破壊計測装置として構成するコンピュータに、
    (a)前記送信探触子から、超音波を発生するよう制御するステップと、
    (b)前記受信探触子から、前記コンクリート構造物の底面で反射した受信信号を、前記超音波の発生時刻を起点とした受信信号波形として取得するよう制御するステップと、
    (c)前記受信信号波形について周波数解析を行い、単一周波数の信号であるか否かを判別してノイズが重畳した受信信号であるか否かを判断するステップと、
    (d)前記受信信号波形から、受信信号波形の振幅に基づく受信信号波形の中間点を算出するステップと、
    (e)前記ステップ(c)によってノイズが重畳していないと判断される受信信号波形の前記単一周波数及び前記中間点から算出される反射波到達時間を前記コンクリート構造物における正規の反射波到達時間として決定するステップと、
    (f)異なる探触子間隔にそれぞれ対応する算出した反射波到達時間から、所定の反射音速演算を実行し、超音波伝搬速度を決定するステップと、
    を実行させるためのプログラム。
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