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JP5562170B2 - 車両用内接歯車型オイルポンプ - Google Patents

車両用内接歯車型オイルポンプ Download PDF

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JP5562170B2 JP2010178992A JP2010178992A JP5562170B2 JP 5562170 B2 JP5562170 B2 JP 5562170B2 JP 2010178992 A JP2010178992 A JP 2010178992A JP 2010178992 A JP2010178992 A JP 2010178992A JP 5562170 B2 JP5562170 B2 JP 5562170B2
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Description

本発明は、2つの吐出油路を備える車両用内接歯車型オイルポンプに関し、特に、ポンプ駆動トルクを低減するための技術に関するものである。
外周歯を有し、一軸心まわりに回転可能に設けられたドライブギヤと、そのドライブギヤの外周歯に噛み合わされた内周歯を有して前記一軸心から偏心した偏心軸心まわりに回転可能に設けられ、前記ドライブギヤにより回転駆動される円環状のドリブンギヤと、そのドリブンギヤおよび前記ドライブギヤが収容させられたポンプ室と、そのポンプ室内から油を吐出するためにそのポンプ室の側面に周方向の所定の間隔を隔ててそれぞれ開口させられ、前記内周歯と前記外周歯との噛合隙間によって周方向に形成された複数の油圧室が前記ドライブギヤおよび前記ドリブンギヤの回転に伴って所定の回転方向に移動させられるときにおいて、前記油圧室の容積が減少させられる過程でその油圧室に順に連通させられる回転方向前方側の第1吐出油路および回転方向後方側の第2吐出油路を有するハウジングとを、備えた車両用内接歯車型オイルポンプが知られている。たとえば、特許文献1乃至5に記載されたものがそれである。
上記のようなオイルポンプでは、その吐出側に設けられる油圧回路において、相対的に高油圧の作動油の消費量が上記第1吐出油路および第2吐出油路のうちの一方の吐出油路からの吐出量だけで充足される場合には、他方の吐出油路内の作動油が上記一方の吐出油路内の作動油よりも所定圧低い低油圧に維持されて、例えば潤滑や冷却のために用いられる。これによれば、上記他方の吐出油路内の作動油が上記低油圧に維持されることでポンプ駆動トルクが低減し、車両燃費が向上される。
また、特許文献5のオイルポンプは、所定の油圧室が第1吐出油路と第2吐出油路との間に位置させられてそれら吐出油路と直接的に連通していないときに、上記所定の油圧室と前記他方の吐出油路とを連通させるために、ポンプ室の側面に形成された一対の油逃がし溝を備えている。これら油逃がし溝は、ポンプ室の側面に形成された上記他方の吐出油路の開口縁の一部から上記一方の吐出油路側へそれぞれ延設された一対の周方向溝から成る。これによれば、上記所定の油圧室が第1吐出油路と第2吐出油路との間の閉じ込み位置を通過するときに昇圧しようとするその所定の油圧室内の作動油が、上記油逃がし溝を通じて上記他方の吐出油路へ逃がされるので、閉じ込み状態とされた所定の油圧室内の作動油の圧力値が急激に上昇することを抑制し、その油圧急上昇に起因してポンプ駆動トルクが増大することを抑制することができる。
特開2001−123967号公報 実開平7−42442号公報 特開平5−240166号公報 特開平1−96485号公報 特開2009−127569号公報
ところで、上記油逃がし溝を備える従来の車両用内接歯車型オイルポンプでは、前記他方の吐出油路内の作動油が前記一方の吐出油路内の作動油よりも所定圧低い低油圧に維持されている場合において、ドリブンギヤおよびドライブギヤの偏心、変形や、油逃がし溝の加工ばらつきで油逃がし溝が長く設定されると、所定の油圧室が第1吐出油路と第2吐出油路との間を通過するときに、その所定の油圧室が上記一方の吐出油路と直接的に連通させられている状態でその所定の油圧室と上記他方の吐出油路とが油逃がし溝を介して連通させられる。そうすると、上記一方の吐出油路内の作動油が所定の油圧室および油逃がし溝を通じて上記他方の吐出油路へ流出し、上記一方の吐出油路側すなわち高圧吐出側の容積効率が低下する。そのため、上記容積効率の低下を抑制するためには、設計上、油逃がし溝を必要以上に上記一方の吐出油路側に長く設定しないことが求められる。
これに対して、ドリブンギヤおよびドライブギヤは、ポンプ室または駆動軸に対して微少ながらも径方向に所定の隙間を隔てて設けられており、それらギヤが回転中に偏心または変形することにより、閉じ込み位置に位置する所定の油圧室が油逃がし溝から遠ざかる側へ相対的に移動すると、所定の油圧室が閉じ込み位置に位置するときにおいて、油逃がし溝がドリブンギヤまたはドライブギヤにより塞がれる場合がある。また、油逃がし溝を加工するための加工基準位置が油逃がし溝毎にばらつく可能性があり、それに起因して油逃がし溝が、閉じ込み位置に位置する所定の油圧室から遠ざかる側へ短く加工されると、所定の油圧室が閉じ込み位置に位置するときにおいて、上記短く加工された油逃がし溝がドリブンギヤまたはドライブギヤにより塞がれる場合がある。そのため、油圧室が第1吐出油路と第2吐出油路との間の閉じ込み位置を通過するときにおいて、その油圧室内の作動油が油逃がし溝を通じて上記他方の吐出油路へ逃がされない場合があり、その場合に閉じ込み状態とされた油圧室内の作動油の圧力値が急激に上昇することに起因してポンプ駆動トルクが増大するという問題があった。
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、高圧吐出側の容積効率の低下を抑制しつつ、ポンプ駆動トルクを低減することができる車両用内接歯車型オイルポンプを提供することにある。
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a-1) 外周歯を有し、一軸心まわりに回転可能に設けられたドライブギヤと、(a-2) そのドライブギヤの外周歯に噛み合わされた内周歯を有して前記一軸心から偏心した偏心軸心まわりに回転可能に設けられ、前記ドライブギヤにより回転駆動される円環状のドリブンギヤと、(a-3) そのドリブンギヤおよび前記ドライブギヤが収容させられたポンプ室と、(a-4) そのポンプ室内から油を吐出するためにそのポンプ室の側面に周方向の所定の間隔を隔ててそれぞれ開口させられ、前記内周歯と前記外周歯との噛合隙間によって周方向に形成された複数の油圧室が前記ドライブギヤおよび前記ドリブンギヤの回転に伴って所定の回転方向に移動させられるときにおいて、前記油圧室の容積が減少させられる過程でその油圧室に順に連通させられる回転方向後方側の第1吐出油路および回転方向前方側の第2吐出油路を有するハウジングとを、備えた車両用内接歯車型オイルポンプであって、(b) 前記複数の油圧室のうちの所定の油圧室が前記第1吐出油路の開口と前記第2吐出油路の開口との間に位置させられてそれら吐出油路と直接的に連通していないときにおいて、(b-1) 前記所定の油圧室と前記第1吐出油路とを連通させるために、前記ポンプ室の側面に形成された第1吐出油路の開口縁の一部から前記回転方向の前方側の前記第2吐出油路へ向けて周方向に延設された第1油逃がし油路と、(b-2) 前記所定の油圧室と前記第2吐出油路とを連通させるために、前記ポンプ室の側面に形成された第2吐出油路の開口縁の一部から前記回転方向の後方側の前記第1吐出油路へ向けて周方向に延設された第2油逃がし油路とを、含むことにある。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、(a) 前記第1油逃がし油路は、前記第1吐出油路の開口縁のうちの前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向外側の一部から前記回転方向の前方側へ周方向に延設された外側周方向溝から成り、(b) 前記第2油逃がし油路は、前記第2吐出油路の開口縁のうちの前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向内側の一部から前記回転方向の後方側へ周方向に延設された内側周方向溝から成ることにある。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、(a) 前記第1油逃がし油路は、前記第1吐出油路の開口縁のうちの前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向内側の一部から前記回転方向の前方側へ周方向に延設された内側周方向溝から成り、(b) 前記第2油逃がし油路は、前記第2吐出油路の開口縁のうちの前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向外側の一部から前記回転方向の後方側へ周方向に延設された外側周方向溝から成ることにある。
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、(a) 前記第1油逃がし油路は、前記ポンプ室の一方の側面に形成された前記第1吐出油路の開口縁のうち、前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向外側の一部および径方向内側の一部から、それぞれ前記回転方向の前方側へ周方向に延設された外側周方向溝および内側周方向溝から成り、(b) 前記第2油逃がし油路は、前記ポンプ室の他方の側面に形成された前記第2吐出油路の開口縁のうち、前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向外側の一部および径方向内側の一部から、それぞれ前記回転方向の後方側へ周方向に延設された外側周方向溝および内側周方向溝から成る
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1にかかる発明において、前記第1油逃がし油路および前記第2油逃がし油路は、共通の加工位置基準を用いてそれぞれ溝加工されていることにある。
請求項1にかかる発明の車両用内接歯車型オイルポンプによれば、複数の油圧室のうちの所定の油圧室が第1吐出油路の開口と第2吐出油路の開口との間に位置させられてそれら吐出油路と直接的に連通していないときにおいて、前記所定の油圧室と前記第1吐出油路とを連通させるために、ポンプ室の側面に形成された第1吐出油路の開口縁の一部から所定の回転方向の前方側の第2吐出油路へ向けて周方向に延設された第1油逃がし油路と、前記所定の油圧室と前記第2吐出油路とを連通させるために、ポンプ室の側面に形成された第2吐出油路の開口縁の一部から前記回転方向の後方側の第1吐出油路へ向けて周方向に延設された第2油逃がし油路とを、含むことから、ドリブンギヤおよびドライブギヤが回転中に偏心または変形することにより、閉じ込み位置に位置する所定の油圧室が油逃がし油路の一方から遠ざかる側へ移動しても、他方の油逃がし油路へ近づく側へ移動することになるので、所定の油圧室が閉じ込み位置に位置するときにおいて、上記一方の油逃がし油路がドリブンギヤまたはドライブギヤにより塞がれても他方の油逃がし油路が塞がれることなく、上記所定の油圧室が吐出油路と連通される。また、各油逃がし油路を加工するための加工基準位置が油逃がし溝毎にばらついて、それに起因して油逃がし油路の一方が、閉じ込み位置に位置する所定の油圧室から遠ざかる側へ短く加工されても、その一方の油逃がし油路に周方向に対向して設けられる他方の油逃がし油路は、上記閉じ込み位置に位置する所定の油圧室から遠ざかる側へ加工されるわけではないので、所定の油圧室が閉じ込み位置に位置するときにおいて、上記短く加工された一方の油逃がし油路がドリブンギヤまたはドライブギヤにより塞がれても他方の油逃がし油路が塞がれることなく、上記所定の油圧室が吐出油路と連通される。そのため、高圧吐出側の容積効率の低下を抑制するために油逃がし油路を必要以上に長く設定しないことが求められるなかで各油逃がし油路を可及的に短く設定した場合であって、ドリブンギヤおよびドライブギヤが回転中に偏心または変形するとき又はそれら各油逃がし油路の加工にばらつきが生じるときであっても、上記所定の油圧室が第1吐出油路と第2吐出油路との間の閉じ込み位置を通過する際には、その所定の油圧室内の作動油が複数の油逃がし油路のうちの少なくとも1つを通じて吐出油路へ逃がされるので、閉じ込み状態とされた所定の油圧室内の作動油の圧力値が急激に上昇することが抑制され、その油圧室内の油圧上昇に起因してポンプ駆動トルクが増大することを抑制することができる。すなわち、高圧吐出側の容積効率の低下を抑制しつつ、ポンプ駆動トルクを低減することができる。また、ドリブンギヤおよびドライブギヤの偏心、変形や、油逃がし溝の加工ばらつきで油逃がし溝が長く設定されたとしても、閉じ込み位置に位置する所定の油圧室が吐出油路と直接的に連通せず、その吐出油路と比べて流通断面積が十分に小さい油逃がし溝を介して連通するので、容積効率低下の影響が少ない。
また、請求項2にかかる発明の車両用内接歯車型オイルポンプによれば、前記第1油逃がし油路は、前記第1吐出油路の開口縁のうちの前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向外側の一部から前記回転方向の前方側へ周方向に延設された外側周方向溝から成り、前記第2油逃がし油路は、前記第2吐出油路の開口縁のうちの前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向内側の一部から前記回転方向の後方側へ周方向に延設された内側周方向溝から成ることから、第1油逃がし油路を上記最近接点の軌跡の径方向内側に形成する場合よりもその第1油逃がし油路の周長が短くなり、また、第2油逃がし油路を上記最近接点の軌跡の径方向外側に形成する場合よりもその第2油逃がし油路の周長が短くなるので、各油逃がし油路を形成するための加工時間が短縮されると共にその際に用いられる加工工具の寿命が長くなる。
また、請求項3にかかる発明の車両用内接歯車型オイルポンプによれば、前記第1油逃がし油路は、前記第1吐出油路の開口縁のうちの前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向内側の一部から前記回転方向の前方側へ周方向に延設された内側周方向溝から成り、前記第2油逃がし油路は、前記第2吐出油路の開口縁のうちの前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向外側の一部から前記回転方向の後方側へ周方向に延設された外側周方向溝から成ることから、ドリブンギヤおよびドライブギヤが回転中に偏心または変形するとき又はそれら各油逃がし油路の加工にばらつきが生じるときであっても、閉じ込み位置に位置する所定の油圧室内の作動油が内側周方向溝および外側周方向溝の少なくとも一方を通じて吐出油路へ逃がされるので、閉じ込み状態とされた所定の油圧室内の作動油の圧力値が急激に上昇することが抑制され、その油圧室内の油圧上昇に起因してポンプ駆動トルクが増大することを抑制することができる。
また、請求項4にかかる発明の車両用内接歯車型オイルポンプによれば、前記第1油逃がし油路は、前記ポンプ室の一方の側面に形成された前記第1吐出油路の開口縁のうち、前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向外側の一部および径方向内側の一部から、それぞれ前記回転方向の前方側へ周方向に延設された外側周方向溝および内側周方向溝から成り、前記第2油逃がし油路は、前記ポンプ室の他方の側面に形成された前記第2吐出油路の開口縁のうち、前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向外側の一部および径方向内側の一部から、それぞれ前記回転方向の後方側へ周方向に延設された外側周方向溝および内側周方向溝から成ることから、1つの側面に形成される2つの周方向溝は、その側面に開口された1つの吐出油路に対して加工が施されて形成されるので、各油逃がし油路の加工時間が比較的短くなるという利点がある。また、ドリブンギヤおよびドライブギヤの偏心、変形に対してはロバスト性があるという利点がある。因みに、例えば、ポンプ室の一方の側面に第1油逃がし油路および第2油逃がし油路を1つずつ形成し、ポンプ室の他方の側面に第1油逃がし油路および第2油逃がし油路を1つずつ形成する場合においては、1つの側面に形成される2つの周方向溝は、その側面に開口された2つの吐出油路に対してそれぞれ加工を施して形成する必要があり、各油逃がし溝の加工時間が比較的長くなるという欠点がある。
また、請求項5にかかる発明の車両用内接歯車型オイルポンプによれば、第1油逃がし油路および第2油逃がし油路は、共通の加工位置基準を用いてそれぞれ溝加工されたものであることから、上記加工基準位置が個体毎にばらついても、第1油逃がし油路および第2油逃がし油路の先端同士の周方向間隔が略一定に保たれるので、上記ばらつきに起因して油逃がし油路の一方が、閉じ込み位置に位置する所定の油圧室から遠ざかる側へ短く加工されても、他方の油逃がし油路が、上記所定の油圧室に近づく側へ長く加工される。そのため、高圧吐出側の容積効率の低下を抑制するために油逃がし油路を必要以上に長く設定しないことが求められるなかで、各油逃がし油路を可及的に短く設定した場合であって、それら各油逃がし油路の加工位置基準が個体毎にばらついたときであっても、油圧室が第1吐出油路と第2吐出油路との間の閉じ込み位置を通過する際には、その油圧室内の作動油が複数の油逃がし油路のうちの少なくとも1つを通じて吐出油路へ確実に逃がされる。したがって、油逃がし溝の加工ばらつきで一方の油逃がし溝が長く加工されても他方の油逃がし溝が短くされて、一方および他方の油逃がし溝の先端間隔が精度良く保たれるので、油逃がし溝の加工のばらつきに起因するポンプ駆動トルクの増大や高圧吐出油路の容積効率低下が一層抑制される。
本発明の一実施例の車両用内接歯車型オイルポンプを示す断面図である。 図1のII-II矢視部断面を示す断面図である。 図1のIII-III矢視部断面を示す断面図である。 油圧室の軸心まわりの回転角度とその油圧室の容積との関係を示す図である。 図2のポンプボデーだけを示す図であって、各周方向溝の加工について説明するための図である。 オイルポンプの各吐出油路から油圧が供給される油圧制御回路の構成の一例を模式的に示す図である。 ドライブギヤの回転速度と、各吐出油路の油圧値および吐出量との関係を示す図である。 図2のA矢視部に相当する部分を拡大して示す図であって、第1内側周方向溝が、閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室から遠ざかる周方向へ約1度短く形成された場合を示す図である。 図2のA矢視部に相当する部分を拡大して示す図であって、ドライブギヤおよびドリブンギヤが回転中に上方へ偏心させられた場合を示す図である。 本発明の他の実施例のオイルポンプの断面図であって、実施例1における図2に相当する図である。 本発明の他の実施例のオイルポンプの断面図であって、実施例1における図3に相当する図である。 図11のポンプカバーだけを示す図であって、各周方向溝の加工について説明するための図である。 図10のB矢視部に相当する部分を拡大して示す図であって、第2油逃がし油路の各周方向溝が、閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室から遠ざかる周方向へ約1度短く形成された場合を示す図である。 図11のC矢視部に相当する部分を拡大して示す図であって、第2油逃がし油路の各周方向溝が、閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室から遠ざかる周方向へ約1度短く形成された場合を示す図である。 図10のB矢視部に相当する部分を拡大して示す図であって、ドライブギヤおよびドリブンギヤが回転中に上方へ偏心させられた場合を示す図である。 図11のC矢視部に相当する部分を拡大して示す図であって、ドライブギヤおよびドリブンギヤが回転中に上方へ偏心させられた場合を示す図である。 従来のオイルポンプの断面図であって、実施例1における図2に相当する図である。 図17のポンプボデーだけを示す図であって、各周方向溝の加工について説明するための図である。 図17のD矢視部に相当する部分を拡大して示す図であって、第1低圧吐出油路の各周方向溝が、閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室から遠ざかる周方向へ約1度短く形成された場合を示す図である。 図17のD矢視部に相当する部分を拡大して示す図であって、ドライブギヤおよびドリブンギヤが回転中に上方へ偏心させられた場合を示す図である。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ(以下、オイルポンプと記載する)10を示す断面図である。図1に示すオイルポンプ10は、たとえば良く知られたトルクコンバータを備え、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に用いられる自動変速機に備えられている。具体的には、主として上記トルクコンバータ等を収容するトランスアクスルハウジング12と、主として変速機構等を収容するトランスアクスルケース14との間に設けられている。
図2は、図1のII-II矢視部断面を示す断面図であり、図3は、図1のIII-III矢視部断面を示す断面図である。オイルポンプ10は、図1に示すように、トランスアクスルハウジング12に複数のボルト16により固設されたハウジング18と、図2および図3に示すように、複数個(本実施例では9個)の外周歯20を有し、図1に示すように、前記トルクコンバータのポンプ翼車の内周端部から軸心(一軸心)C1方向に突設された円筒状のポンプ軸22の先端部の複数(本実施例では2つ)の爪部22aに係合され、そのポンプ軸22と共に軸心C1まわりに回転可能にハウジング18内に収容されたドライブギヤ24と、上記外周歯20に噛み合わされた複数個(本実施例では10個)の内周歯26を有して、軸心C1から偏心した偏心軸心C2まわりに回転可能にハウジング18内に収容され、上記ドライブギヤ24により回転駆動される円環状のドリブンギヤ28とを、備える所謂内接歯車型のものである。上記ドリブンギヤ28は、ハウジング18のギヤ収容部の内周面に対して微少ながらも径方向に所定の隙間を隔てて設けられており、上記ドライブギヤ24は、ポンプ軸22の外周面に対して微少ながらも径方向に所定の隙間を隔てて設けられている。
上記ドライブギヤ24およびドリブンギヤ28は、図2に示すように、外周歯20および内周歯26が下方で互いに噛み合わされている。そして、ドライブギヤ24は、ポンプ軸22により軸心C1まわりの図2に矢印aで示す所定の回転方向に回転駆動され、ドリブンギヤ28は、そのドライブギヤ24により偏心軸心C2まわりの図2に矢印aで示す所定の回転方向に回転駆動されるようになっている。
図2に示すように外周歯20と内周歯26との噛合隙間によって周方向に形成された複数個(本実施例では9個)の油圧室30は、ドライブギヤ24およびドリブンギヤ28の回転に伴ってその容積V[cm3]が変化させられつつ前記回転方向へ移動させられる。図4は、上記油圧室30の軸心C1まわりの回転角度θ[度]とその油圧室30の容積Vとの関係を示す図である。図4において、横軸に示す油圧室30の回転角度θの0°(360°)は、図2の下方に位置する外周歯20と内周歯26とが噛み合う周方向位置を表している。図4に示すように、油圧室容積Vは、油圧室30が回転角度θ=0°の周方向位置から前記回転方向に移動させられるに従って増加させられ、油圧室30が回転角度θ=180°の周方向位置に位置させられたときに最大とさせられる。そして、油圧室容積Vは、油圧室30が回転角度θ=180°の周方向位置から前記回転方向に移動させられるに従って減少させられ、油圧室30が回転角度θ=360°の周方向位置に位置させられたときに最小とさせられる。
前記ハウジング18は、図1に示すように、トランスアクスルケース14の円筒状内周面に嵌合された状態で複数のボルト16により締着されたポンプカバー32と、そのポンプカバー32のトランスアクスルハウジング12側に隣接して配設された状態で複数のボルト34により締着されたポンプボデー36とから構成されている。上記ポンプカバー32の内周面には、一端部が図示しない前記トルクコンバータのステータ翼車に連結された円筒状のステータシャフト38の他端部が、一体的に嵌め着けられている。
また、ハウジング18は、ポンプボデー36のポンプカバー32側の壁面に形成された有底円筒穴の内周側の空間から成り、ドリブンギヤ28およびドライブギヤ24が収容させられたポンプ室40と、そのポンプ室40内に油を吸入するためにそのポンプ室40のポンプボデー36側の側面42およびポンプカバー32側の側面44にそれぞれ開口させられた第1吸入油路46および第2吸入油路48と、図2に示すように、ポンプ室40内から油を吐出するためにポンプ室40の側面42に周方向の所定の間隔を隔ててそれぞれ開口させられた第1高圧吐出油路50および第1低圧吐出油路52と、図3に示すように、ポンプ室40内から油を吐出するためにポンプ室40の側面44に周方向の所定の間隔を隔ててそれぞれ開口させられた第2高圧吐出油路54および第2低圧吐出油路56とを、備えている。図2および図3にそれら油路の開口縁が破線で示されている。なお、本実施例の第1高圧吐出油路50および第2高圧吐出油路54は、本発明における第1吐出油路に相当し、また、本実施例の第1低圧吐出油路52および第2低圧吐出油路56は、本発明における第2吐出油路に相当するものである。
上記第1吸入油路46および第2吸入油路48は、前記油圧室30が前記回転方向に移動させられるに従ってその油圧室30の容積Vが増加する周方向範囲、すなわち図4に示すように油圧室30の回転角度θが0°〜180°である吸入区間のうち、例えば回転角度θが12°〜178°である所定の吸入区間でポンプ室40に開口させられている。これにより、油圧室30がドライブギヤ24およびドリブンギヤ28の回転に伴って前記回転方向へ移動させられるときにおいて、油圧室30の容積Vが増加させられる過程でその油圧室30が第1吸入油路46および第2吸入油路48に連通させられるようになっている。
前記第1高圧吐出油路50および第2高圧吐出油路54は、前記油圧室30が前記回転方向に移動させられるに従ってその油圧室30の容積Vが減少する周方向範囲、すなわち図4に示すように油圧室30の回転角度θが180°〜360°である吐出区間のうち、例えば回転角度θが212°〜250°である第1吐出区間でポンプ室40に開口させられている。これにより、油圧室30がドライブギヤ24およびドリブンギヤ28の回転に伴って前記回転方向へ移動させられるときにおいて、油圧室30の容積Vが減少させられる過程の前半でその油圧室30が第1高圧吐出油路50および第2高圧吐出油路54に連通させられるようになっている。
前記第1低圧吐出油路52および第2低圧吐出油路56は、前記油圧室30が前記回転方向に移動させられるに従ってその油圧室30の容積Vが減少する周方向範囲、すなわち図4に示すように油圧室30の回転角度θが180°〜360°である吐出区間のうち、例えば回転角度θが289°〜351°である第2吐出区間でポンプ室40に開口させられている。これにより、油圧室30がドライブギヤ24およびドリブンギヤ28の回転に伴って前記回転方向へ移動させられるときにおいて、油圧室30の容積Vが減少させられる過程の後半でその油圧室30が第1低圧吐出油路52および第2低圧吐出油路56に連通させられるようになっている。
図2および図3に示すように、第1高圧吐出油路50および第2高圧吐出油路54は、第1低圧吐出油路52および第2低圧吐出油路56に対して前記回転方向の後方側に設けられている。そのため、油圧室30がドライブギヤ24およびドリブンギヤ28の回転に伴って前記回転方向へ移動させられるときにおいて、その油圧室30は、第1高圧吐出油路50および第1低圧吐出油路52に順次連通させられると共に、第2高圧吐出油路54および第2低圧吐出油路56に順次連通させられるようになっている。ここで、各吐出油路は、油圧室30が高圧吐出油路と低圧吐出油路との間を通過するときにおいて、低圧吐出油路と直接的に連通させられた油圧室30に対して高圧吐出油路が直接的に連通させられることでその高圧吐出油路内の作動油が低圧吐出油路へ洩れて高圧吐出側の容積効率が低下することのないように設けられている。具体的には、第1高圧吐出油路50および第1低圧吐出油路52は、油圧室30が前記回転方向へ移動させられるときにおいて、油圧室30と第1高圧吐出油路50とが連通させられた状態から、油圧室30と第1高圧吐出油路50および第1低圧吐出油路52とがそれぞれ遮断させられた状態を経て、油圧室30と第1低圧吐出油路52とが連通させられた状態に至るように設けられている。上記のことは、第2高圧吐出油路54および第2低圧吐出油路56についても同様である。
また、ハウジング18は、図2および図3に示すように、複数の油圧室30のうちの所定の油圧室30aが第1高圧吐出油路50の開口縁と第1低圧吐出油路52の開口縁との間に位置させられると共に、第2高圧吐出油路54の開口縁と第2低圧吐出油路56の開口縁との間に位置させられて、それら吐出油路と直接的に連通していないときにおいて、上記所定の油圧室30aと第1高圧吐出油路50および第2高圧吐出油路54とをそれぞれ連通させるために、ポンプ室40の側面42および側面44にそれぞれ形成された第1油逃がし油路58と、上記所定の油圧室30aと第1低圧吐出油路52および第2低圧吐出油路56とをそれぞれ連通させるために、ポンプ室40の側面42および側面44にそれぞれ形成された第2油逃がし油路60を備えている。なお、上記所定の油圧室30aは、複数の油圧室30のうち、第1高圧吐出油路50の開口縁と第1低圧吐出油路52の開口縁との間の第1壁面62(図2参照)と、第2高圧吐出油路54の開口縁と第2低圧吐出油路56の開口縁との間の第2壁面64(図3参照)とによって軸心C1方向から挟まれて油密とされた瞬間のものを指す。
上記第1油逃がし油路58は、図2に示すように、第1高圧吐出油路50の開口縁のうちの内周歯26と外周歯20との最近接点Xの軌跡Kよりも径方向外側の一部から、前記回転方向の前方側の第1低圧吐出油路52へ向けて周方向に延設された第1外側周方向溝66と、図3に示すように、第2高圧吐出油路54の開口縁のうちの内周歯26と外周歯20との最近接点Xの軌跡Kよりも径方向外側の一部から、前記回転方向の前方側の第2低圧吐出油路56へ向けて周方向に延設された第2外側周方向溝68とから成る。上記第1外側周方向溝66および第2外側周方向溝68は、高圧吐出油路50、54と低圧吐出油路52、56との間の閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室30aに先端部が連通する程度に周方向長さが設定され、また、各吐出油路と比べて十分に浅く設定される。
図2および図3に示すように、各高圧吐出油路(第1高圧吐出油路50および第2高圧吐出油路54)から、その各高圧吐出油路と各低圧吐出油路(第1低圧吐出油路52および第2低圧吐出油路56)との間に位置させられた所定の油圧室30aまでの周方向長さは、最近接点Xの軌跡Kよりも径方向内側に比べて径方向外側の方が短い。したがって、各高圧吐出油路と各低圧吐出油路との間の閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室30aと高圧吐出油路とを連通させるための第1油逃がし油路58が、本実施例のように最近接点Xの軌跡Kよりも径方向外側の第1外側周方向溝66および第2外側周方向溝68から構成される場合には、最近接点Xの軌跡Kよりも径方向内側の周方向溝から構成される場合と比較して、溝の周方向長さが短くなる。
前記第2油逃がし油路60は、図2に示すように、第1低圧吐出油路52の開口縁のうちの内周歯26と外周歯20との最近接点Xの軌跡Kよりも径方向内側の一部から、前記回転方向の後方側の第1高圧吐出油路50へ向けて周方向に延設された第1内側周方向溝70と、図3に示すように、第2低圧吐出油路56の開口縁のうちの内周歯26と外周歯20との最近接点Xの軌跡Kよりも径方向内側の一部から、前記回転方向の後方側の第2高圧吐出油路54へ向けて周方向に延設された第2内側周方向溝72とから成る。上記第1内側周方向溝70および第2内側周方向溝72は、高圧吐出油路50、54と低圧吐出油路52、56との間の閉じ込み位置に位置する所定の油圧室30aに先端部が連通する程度に周方向長さが設定され、また、各吐出油路と比べて十分に浅く設定される。
図2および図3に示すように、各低圧吐出油路から、その各低圧吐出油路と各高圧吐出油路との間に位置させられた所定の油圧室30aまでの周方向長さは、最近接点Xの軌跡Kよりも径方向外側に比べて径方向内側の方が短い。したがって、各高圧吐出油路と各低圧吐出油路との間の閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室30aと低圧吐出油路とを連通させるための第2油逃がし油路60が、本実施例のように最近接点Xの軌跡Kよりも径方向内側の第1内側周方向溝70および第2内側周方向溝72から構成される場合には、最近接点Xの軌跡Kよりも径方向外側の周方向溝から構成される場合と比較して、溝の周方向長さが短くなる。
第1外側周方向溝66および第1内側周方向溝70は共にポンプ室40の側面42に形成されつつ、周方向において対向して設けられている。また、第2外側周方向溝68および第2内側周方向溝72は共にポンプ室40の側面44に形成されつつ、周方向において対向して設けられている。
次に、各周方向溝の加工について説明する。なお、以下では、外側周方向溝および内側周方向溝を代表して、第1外側周方向溝66および第1内側周方向溝70の加工について説明する。図5は、図1のII-II矢視方向から見たポンプボデー36だけを示す図である。図5において、第1外側周方向溝66および第1内側周方向溝70は、たとえば、第1低圧吐出油路52の開口縁のうち、矢印aで示す前記回転方向の後方側の側縁74が共通の加工位置基準すなわち被加工物の固定(チャック)位置基準として用いられ、例えばエンドミル等の切削工具が使用されてフライス盤等の工作機械により溝加工されて形成される。ここで、上記第1外側周方向溝66および第1内側周方向溝70は、上記のように共通の加工位置基準を用いて加工されているため、例えば、第1低圧吐出油路52の側縁74の周方向位置が個体毎に周方向にばらついたり或いは加工のばらつきが発生したとしても、それら周方向溝の先端同士の周方向間隔L[mm]が略一定に保たれる。
図6は、オイルポンプ10の各吐出油路の下流側に設けられた油圧制御回路76の一例を模式的に示した図である。図6において、オイルポンプ10の第1吸入油路46および第2吸入油路48は、互いに接続され、例えば前記トランスアクスルケース14等に形成された第1油路78とストレーナ80とをそれぞれ介して、トランスアクスルケース14の下部に固定されたオイルパン82内の油貯溜空間に連通されている。また、オイルポンプ10の第1高圧吐出油路50および第2高圧吐出油路54は、互いに接続され、例えば前記トランスアクスルケース14等に形成された第2油路84を介して、油圧制御回路76内に設けられた例えば良く知られたリリーフ形のレギュレータ86の第1入力ポート88に接続されると共に、例えば、前記自動変速機の変速機構に設けられた複数の油圧式摩擦係合装置を制御するための変速制御用バルブや、前記トルクコンバータに設けられたロックアップクラッチを制御するためのロックアップコントロールバルブ等を含むバルブ装置90に接続されている。また、オイルポンプ10の第1低圧吐出油路52および第2低圧吐出油路56は、互いに接続され、例えば前記トランスアクスルケース14等に形成された第3油路92を介して油圧制御回路76のレギュレータ86の第2入力ポート94に接続されている。
上記バルブ装置90に供給される作動油は、レギュレータ86によって作動油のリリーフ量が調節されてその油圧値が調圧されるようになっている。具体的には、各高圧吐出油路からバルブ装置90に供給される作動油は、図7の下段に示すように、ドライブギヤ24の回転速度N[rpm]が予め定められた所定の回転速度N1[rpm]以下であって、各高圧吐出油路から吐出される作動油の油圧値すなわち高圧ポート油圧値Pp1[MPa]が予め定められた所定の高油圧値Pphigh[MPa]以下である場合には、その油圧値のままで用いられる。また、各高圧吐出油路からバルブ装置90に供給される作動油は、回転速度Nが所定の回転速度N1を超えるときであって高圧ポート油圧値Pp1が上記高油圧値Pphighを超えようとする場合には、レギュレータ86により上記高油圧値Pphighに調圧されて用いられる。なお、図7の上段に示すのは、オイルポンプ10の各吐出油路からの作動油の吐出量Q[L/min]である。図7に示すように、各高圧吐出油路から吐出される作動油の総吐出量すなわち高圧ポート吐出量Q1[L/min]は、ドライブギヤ24の回転速度Nに比例する。
そして、各低圧吐出油路から第3油路92に供給される作動油は、図7の下段に示すように、ドライブギヤ24の回転速度Nが予め定められた所定の回転速度N2[rpm]を下回る場合には、レギュレータ86の第2入力ポート94が塞がれて昇圧させられて第2油路84内の油圧値よりも大きくなることに応じて、第3油路92と第2油路84との間に設けられた一方向弁96を介して第2油路84へ流出させられる。上記所定の回転速度N2は、バルブ装置90で消費される相対的に高油圧の作動油の必要消費量Q’[L/min]が高圧吐出油路からの高圧ポート吐出量Q1[L/min]だけで充足される回転速度範囲の最小の回転速度である。また、各低圧吐出油路から第3油路92に供給される作動油は、ドライブギヤ24の回転速度Nが所定の回転速度N2以上となる場合には、その油圧値すなわち低圧ポート油圧値Pp2がレギュレータ86により予め定められた所定の低油圧値Pplow[MPa]に維持される。なお、図7の上段に示すように、各低圧吐出油路から吐出される作動油の総吐出量すなわち低圧ポート吐出量Q2[L/min]は、ドライブギヤ24の回転速度Nに比例する。そして、各吐出油路50乃至56から吐出される作動油の総吐出量Q(=Q1+Q2)[L/min]は、ドライブギヤ24の回転速度Nに比例する。
以上のように構成されたオイルポンプ10では、ドライブギヤ24およびドリブンギヤ28が前記回転方向に回転させられると、容量Vが増加する周方向範囲を移動させられる油圧室30には、オイルパン82に貯溜された油がストレーナ80および第1油路78を通じて吸入される。そして、容量Vが減少する周方向範囲のうちの第1高圧吐出油路50および第2高圧吐出油路54が開口する周方向範囲を移動させられる油圧室30からは、加圧された油が吐出されて第2油路84を通じて油圧制御回路76へ圧送される。そして、容量Vが減少する周方向範囲のうちの第1低圧吐出油路52および第2低圧吐出油路56が開口する周方向範囲を移動させられる油圧室30からは、加圧された油が吐出されて第3油路92を通じて油圧制御回路76へ圧送される。そして、複数の油圧室30が前記回転方向へ移動させられて高圧吐出油路と低圧吐出油路との間の閉じ込み位置を通過する際には、図2および図3に示すように、所定の油圧室30aが高圧吐出油路と低圧吐出油路との間に位置させられるときに、その所定の油圧室30a内の作動油が各周方向溝を通じて各高圧吐出油路および各低圧吐出油路の少なくともいずれか一方へ逃がされるようになっている。
ここで、図2のA矢視部に相当する部分を拡大して示す図8に示すように、例えば、第1内側周方向溝70が、閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室30aから遠ざかる周方向へ約1[度]短く形成された場合には、その第1内側周方向溝70は、ドライブギヤ24により塞がれることとなる。しかし、このような場合であっても、閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室30aは、第1外側周方向溝66を介して第1高圧吐出油路50と連通状態とされ、その油圧室30a内の作動油が第1高圧吐出油路50へ逃がされ得るようになっている。
また、図2のA矢視部に相当する部分を拡大して示す図9に示すように、例えば、ドライブギヤ24およびドリブンギヤ28が回転中に上方へ偏心させられた場合には、第1内側周方向溝70は、ドライブギヤ24により塞がれることとなる。しかし、このような場合であっても、閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室30aは、第1外側周方向溝66を介して第1高圧吐出油路50と連通状態とされ、その油圧室30a内の作動油が第1高圧吐出油路50へ逃がされ得るようになっている。
因みに、図17に示すように、従来のオイルポンプ100は、所定の油圧室30aが第1高圧吐出油路50と第1低圧吐出油路52との間に位置させられて、それら吐出油路と直接的に連通していないときにおいて、その所定の油圧室30aと第1低圧吐出油路52とを連通させるために、第1低圧吐出油路52の開口縁の径方向外側の一部および径方向内側の一部から第1高圧吐出油路50へ向けて周方向にそれぞれ延設された外側周方向溝102および内側周方向溝104を備えている。これら油逃がし溝は、図18に示すように、第1低圧吐出油路52の開口縁の側縁74が加工位置基準として用いられて、例えばエンドミル等の切削工具が使用されてフライス盤等の工作機械により溝加工されて形成される。上記外側周方向溝102および内側周方向溝104は、図17に示すように、閉じ込み位置に位置された所定の油圧室30aに対して先端部が僅かに連通させられるように設計される。
ここで、図17のD矢視部に相当する部分を拡大して示す図19に示すように、例えば、加工位置基準が閉じ込み位置に位置させられた油圧室30aから遠ざかる周方向へずれた場合であって、各周方向溝102および104が、その油圧室30aから遠ざかる周方向へ約1[度]短く形成された場合には、それら周方向溝102および104は、ドライブギヤ24により塞がれることとなる。そのため、油圧室30が第1高圧吐出油路50と第1低圧吐出油路52との間の閉じ込み位置を通過するときに昇圧しようとするその油圧室30内の作動油が、吐出油路へ逃がされず、その油圧室30内の作動油の圧力値が急激に上昇することに起因してポンプ駆動トルクが増大するという問題があった。
また、図17のD矢視部に相当する部分を拡大して示す図20に示すように、例えば、ドライブギヤ24およびドリブンギヤ28が回転中に上方へ偏心させられた場合には、周方向溝102および104がドライブギヤ24により塞がれることとなる。そのため、上記の場合と同様に、油圧室30が第1高圧吐出油路50と第1低圧吐出油路52との間の閉じ込み位置を通過するときに昇圧しようとするその油圧室30内の作動油が、吐出油路へ逃がされず、その油圧室30内の作動油の圧力値が急激に上昇することに起因してポンプ駆動トルクが増大するという問題があった。
なお、閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室30aを吐出油路に連通させる周方向溝(油逃がし油路)が設けられない従来のオイルポンプにおいては、油圧室30が高圧吐出油路と低圧吐出油路との間を通過する際に、その油圧室30が閉じ込み状態とされて、図4に破線で示すようにその油圧室30内の油圧値P2が急激に上昇し、オイルポンプの駆動トルクが増加してしまうという問題があった。これに対して、本実施例のオイルポンプ10では、油圧室30の回転角度θが第1吐出区間と第2吐出区間との間であるときには、その大部分において、油圧室30と各吐出油路の少なくとも1つとが各周方向溝の少なくとも1つを介して連通させられるため、図4に実線で示すように、油圧室油圧値P1が略一定に維持される。本実施例の第1油逃がし油路58および第2油逃がし油路60は、油圧室30が各高圧吐出油路と各低圧吐出油路との間を移動させられるときにその油圧室30内の急激な昇圧を防止する昇圧抑制溝として機能するものである。
上述のように、本実施例のオイルポンプ10は、複数の油圧室30のうちの所定の油圧室30aが高圧吐出油路(第1高圧吐出油路50および第2高圧吐出油路54)の開口と低圧吐出油路(第1低圧吐出油路52および第2低圧吐出油路56)の開口との間に位置させられてそれら吐出油路と直接的に連通していないときにおいて、上記所定の油圧室30aと高圧吐出油路とを連通させるために、ポンプ室40の側面42の第1高圧吐出油路50の開口縁の一部から所定の回転方向の前方側の第1低圧吐出油路52へ向けて周方向に延設された第1外側周方向溝66と、ポンプ室40の側面44の第2高圧吐出油路54の開口縁の一部から前記回転方向の前方側の第2低圧吐出油路56へ向けて周方向に延設された第2外側周方向溝68とから成る第1油逃がし油路58と、上記所定の油圧室30aと低圧吐出油路とを連通させるために、ポンプ室40の側面42の第1低圧吐出油路52の開口縁の一部から前記回転方向の後方側の第1高圧吐出油路50へ向けて周方向に延設された第1内側周方向溝70と、ポンプ室40の側面44の第2低圧吐出油路56の開口縁の一部から前記回転方向の後方側の第2高圧吐出油路54へ向けて周方向に延設された第2内側周方向溝72とから成る第2油逃がし油路60とを含むものである。そのため、各周方向溝を加工するための加工基準位置が周方向溝毎にばらついて、それに起因して高圧吐出油路および低圧吐出油路の一方に形成される周方向溝が、高圧吐出油路および低圧吐出油路の他方から遠ざかる側へ、すなわちそれら吐出油路間の閉じ込み位置に位置する所定の油圧室30aから遠ざかる側へ短く加工されても、上記周方向溝に周方向に対向して設けられる、高圧吐出油路および低圧吐出油路の他方に形成される周方向溝は、上記閉じ込み位置に位置する所定の油圧室30aから遠ざかる側へ加工されるわけではないので、所定の油圧室30aが閉じ込み位置に位置するときにおいて、上記短く加工された周方向溝がドリブンギヤ28またはドライブギヤ24により塞がれても他方の周方向溝が塞がれることなく、上記所定の油圧室30aが吐出油路と連通される。また、ドリブンギヤ28およびドライブギヤ24が回転中に偏心または変形することにより、閉じ込み位置に位置する所定の油圧室30aが、高圧吐出油路および低圧吐出油路の一方に形成される周方向溝から遠ざかる側へ移動しても、高圧吐出油路および低圧吐出油路の他方に形成される周方向溝へ近づく側へ移動することになるので、所定の油圧室30aが閉じ込み位置に位置するときにおいて、上記一方の周方向溝がドリブンギヤ28およびドライブギヤ24により塞がれても他方の周方向溝が塞がれることなく、上記所定の油圧室30aが吐出油路と連通される。それ故に、高圧吐出側の容積効率の低下を抑制するために各周方向溝を必要以上に長く設定しないことが求められるなかで、各周方向溝を可及的に短く設定した場合であって、それら各周方向溝の加工にばらつきが生じ又はドリブンギヤ28およびドライブギヤ24が回転中に偏心または変形するときであっても、上記所定の油圧室30aが高圧吐出油路と低圧吐出油路との間の閉じ込み位置を通過する際には、その所定の油圧室30a内の作動油が複数の周方向溝のうちの少なくとも1つを通じて吐出油路へ逃がされるので、閉じ込み状態とされた所定の油圧室30a内の作動油の圧力値が急激に上昇することが抑制され、その油圧室30a内の油圧上昇に起因してポンプ駆動トルクが増大することを抑制することができる。また、ドリブンギヤ28およびドライブギヤ24の偏心、変形や、周方向溝(油逃がし溝)の加工ばらつきでその周方向溝が長く設定されたとしても、閉じ込み位置に位置する所定の油圧室30aが各吐出油路と直接的に連通せず、その各吐出油路と比べて流通断面積が十分に小さい周方向溝を介して連通するので、容積効率低下の影響が少ない。
また、本実施例のオイルポンプ10において、第1外側周方向溝66は、第1高圧吐出油路50の開口縁のうちの内周歯26と外周歯20との最近接点Xの軌跡Kよりも径方向外側の一部から、前記回転方向の前方側の第1低圧吐出油路52へ向けて周方向に延設されたものであり、第2外側周方向溝68は、第2高圧吐出油路54の開口縁のうちの最近接点Xの軌跡Kよりも径方向外側の一部から、前記回転方向の前方側の第2低圧吐出油路56へ向けて周方向に延設されたものであり、第1内側周方向溝70は、第1低圧吐出油路52の開口縁のうちの最近接点Xの軌跡Kよりも径方向内側の一部から、前記回転方向の後方側の第1高圧吐出油路50へ向けて周方向に延設されたものであり、第2内側周方向溝72は、第2低圧吐出油路56の開口縁のうちの最近接点Xの軌跡Kよりも径方向内側の一部から、前記回転方向の後方側の第2高圧吐出油路54へ向けて周方向に延設されたものである。そのため、各高圧吐出油路と各低圧吐出油路との間の閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室30aと高圧吐出油路とを連通させるための第1油逃がし油路58が、本実施例のように最近接点Xの軌跡Kよりも径方向外側の第1外側周方向溝66および第2外側周方向溝68から構成される場合には、最近接点Xの軌跡Kよりも径方向内側の周方向溝から構成される場合と比較して、溝の周方向長さが短くなる。そして、上記閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室30aと低圧吐出油路とを連通させるための第2油逃がし油路60が、本実施例のように最近接点Xの軌跡Kよりも径方向内側の第1内側周方向溝70および第2内側周方向溝72から構成される場合には、最近接点Xの軌跡Kよりも径方向外側の周方向溝から構成される場合と比較して、溝の周方向長さが短くなる。それ故に、各油逃がし油路を形成するための加工時間が短縮されると共にその際に用いられる加工工具の寿命が長くなる。
また、本実施例のオイルポンプ10によれば、第1油逃がし油路58の第1外側周方向溝66および第2油逃がし油路60の第1内側周方向溝70は、第1低圧吐出油路52の開口縁のうちの前記回転方向の後方側の側縁74が共通の加工位置基準として用いられて溝加工されて形成され、第1油逃がし油路58の第2外側周方向溝68および第2油逃がし油路60の第2内側周方向溝72も同様に共通の加工位置基準が用いられて溝加工により形成されることから、上記各加工位置基準の周方向位置が個体毎に周方向にばらついたり加工誤差が発生しても、外側周方向溝および内側周方向溝の先端同士の周方向間隔L[mm]が略一定に保たれるので、上記ばらつきに起因して外側周方向溝および内側周方向溝の一方が、閉じ込み位置に位置する所定の油圧室30aから遠ざかる側へ短く加工されても、他方が、上記所定の油圧室30aに近づく側へ長く加工される。それ故に、高圧吐出側の容積効率の低下を抑制するために各周方向溝を必要以上に長く設定しないことが求められるなかで、各周方向溝を可及的に短く設定した場合であって、それら各周方向溝の加工にばらつきが生じたときであっても、油圧室30aが高圧吐出油路と低圧吐出油路との間の閉じ込み位置を通過する際には、その油圧室30a内の作動油が複数の周方向溝のうちの少なくとも1つを通じて吐出油路へ逃がされる。したがって、油逃がし溝の加工ばらつきで例えば第1外側周方向溝66および第1内側周方向溝70の一方が長く加工されても他方が短くされて、一方および他方の先端間隔が精度良く保たれるので、油逃がし溝の加工のばらつきに起因するポンプ駆動トルクの増大や高圧吐出油路の容積効率低下が一層抑制される。
次に、本発明の他の実施例について説明する。なお、以下の実施例の説明において、実施例相互に重複する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図10および図11は、本発明の他の実施例のオイルポンプ110をそれぞれ示す図であって、実施例1の図1のII-II矢視部断面およびIII-III矢視部断面に相当する部分をそれぞれ拡大して示す断面図である。オイルポンプ110のハウジング112は、複数の油圧室30のうちの所定の油圧室30aが第1高圧吐出油路50の開口縁と第1低圧吐出油路52の開口縁との間に位置させられると共に、第2高圧吐出油路54の開口縁と第2低圧吐出油路56の開口縁との間に位置させられて、それら吐出油路と直接的に連通していないときにおいて、図11に示すように、上記所定の油圧室30aと第2高圧吐出油路54とを連通させるために、ポンプ室40の側面44に形成された第1油逃がし油路114と、図10に示すように、上記所定の油圧室30aと第1低圧吐出油路52とを連通させるために、ポンプ室40の側面42に形成された第2油逃がし油路116とを備えている。なお、本実施例の第2高圧吐出油路54は、本発明における第1吐出油路に相当し、また、本実施例の第1低圧吐出油路52は、本発明における第2吐出油路に相当するものである。
上記第1油逃がし油路114は、図11に示すように、第2高圧吐出油路54の開口縁のうち、内周歯26と外周歯20との最近接点Xの軌跡Kよりも径方向外側の一部および径方向内側の一部から、それぞれ矢印aで示す所定の回転方向の前方側の第2低圧吐出油路56へ向けて周方向に延設された第1外側周方向溝118および第1内側周方向溝120から成る。また、上記第2油逃がし油路116は、図10に示すように、第1低圧吐出油路52の開口縁のうち、内周歯26と外周歯20との最近接点Xの軌跡Kよりも径方向外側の一部および径方向内側の一部から、それぞれ矢印aで示す所定の回転方向の後方側の第1高圧吐出油路50へ向けて周方向に延設された第2外側周方向溝122および第2内側周方向溝124から成る。上記各外側周方向溝および各内側周方向溝は、前記所定の油圧室30aが各吐出油路間に位置してそれら吐出油路と直接的に連通していないときにおいて、先端部がその所定の油圧室30aに僅かに連通させられるように設計される。
次に、各周方向溝の加工について説明する。なお、以下では、外側周方向溝および内側周方向溝を代表して、第1外側周方向溝118および第1内側周方向溝120の加工について説明する。図12は、図11のポンプカバー32だけを示す図である。図12において、第1外側周方向溝118および第1内側周方向溝120は、第2高圧吐出油路54の開口縁のうち、矢印aで示す前記回転方向の前方側の側縁126が共通の加工位置基準として用いられて、例えばエンドミル等の切削工具が使用されてフライス盤等の工作機械により溝加工されて形成される。
以上のように構成されたオイルポンプ110では、ドライブギヤ24およびドリブンギヤ28が前記回転方向に回転させられると、容量Vが増加する周方向範囲を移動させられる油圧室30には油が吸入される。そして、容量Vが減少する周方向範囲のうちの第1高圧吐出油路50および第2高圧吐出油路54が開口する周方向範囲を移動させられる油圧室30からは、加圧された油が吐出される。そして、容量Vが減少する周方向範囲のうちの第1低圧吐出油路52および第2低圧吐出油路56が開口する周方向範囲を移動させられる油圧室30からは、加圧された油が吐出される。そして、複数の油圧室30が前記回転方向へ移動させられて高圧吐出油路と低圧吐出油路との間の閉じ込み位置を通過する際には、図10および図11に示すように、所定の油圧室30aが高圧吐出油路と低圧吐出油路との間に位置させられるときに、その所定の油圧室30a内の作動油が各周方向溝を通じて各高圧吐出油路および各低圧吐出油路の少なくともいずれか一方へ逃がされるようになっている。
ここで、図10のB矢視部に相当する部分を拡大して示す図13に示すように、例えば、第2油逃がし油路116を構成する第2外側周方向溝122および第2内側周方向溝124が、閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室30aから遠ざかる周方向へ約1[度]短く形成された場合には、それら各周方向溝はドライブギヤ24により塞がれることとなる。しかし、このような場合であっても、図11のC矢視部に相当する部分を拡大して示す図14に示すように、閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室30aは、第1外側周方向溝118および第1内側周方向溝120を介して第2高圧吐出油路54と連通状態とされ、その油圧室30a内の作動油が第2高圧吐出油路54へ逃がされ得るようになっている。
また、図10のB矢視部に相当する部分を拡大して示す図15に示すように、例えば、ドライブギヤ24およびドリブンギヤ28が回転中に上方へ偏心させられた場合には、第2外側周方向溝122および第2内側周方向溝124は、ドライブギヤ24により塞がれることとなる。しかし、このような場合であっても、図11のC矢視部に相当する部分を拡大して示す図16に示すように、閉じ込み位置に位置させられた所定の油圧室30aは、第1外側周方向溝118および第1内側周方向溝120を介して第2高圧吐出油路54と連通状態とされ、その油圧室30a内の作動油が第2高圧吐出油路54へ逃がされ得るようになっている。
上述のように、本実施例のオイルポンプ10は、複数の油圧室30のうちの所定の油圧室30aが高圧吐出油路(第1高圧吐出油路50および第2高圧吐出油路54)の開口と低圧吐出油路(第1低圧吐出油路52および第2低圧吐出油路56)の開口との間に位置させられてそれら吐出油路と直接的に連通していないときにおいて、上記所定の油圧室30aと高圧吐出油路とを連通させるために、第2高圧吐出油路54の開口縁のうち、内周歯26と外周歯20との最近接点Xの軌跡Kよりも径方向外側の一部および径方向内側の一部から、それぞれ矢印aで示す所定の回転方向の前方側の第2低圧吐出油路56へ向けて周方向に延設された第1外側周方向溝118および第1内側周方向溝120から成る第1油逃がし油路114と、第1低圧吐出油路52の開口縁のうち、内周歯26と外周歯20との最近接点Xの軌跡Kよりも径方向外側の一部および径方向内側の一部から、それぞれ矢印aで示す所定の回転方向の後方側の第1高圧吐出油路50へ向けて周方向に延設された第2外側周方向溝122および第2内側周方向溝124から成る第2油逃がし油路116とを含むものである。そのため、高圧吐出側の容積効率の低下を抑制するために各周方向溝を必要以上に長く設定しないことが求められるなかで、各周方向溝を可及的に短く設定した場合であって、ドリブンギヤ28およびドライブギヤ24が回転中に偏心または変形するとき又は各周方向溝の加工にばらつきが生じたときであっても、上記所定の油圧室30aが高圧吐出油路と低圧吐出油路との間の閉じ込み位置を通過する際には、その所定の油圧室30a内の作動油が複数の周方向溝のうちの少なくとも1つを通じて吐出油路へ逃がされるので、実施例1と同様に、閉じ込み状態とされた所定の油圧室30a内の作動油の圧力値が急激に上昇することが抑制され、その油圧室30a内の油圧上昇に起因してポンプ駆動トルクが増大することを抑制することができる。
また、本実施例のオイルポンプ110によれば、第1油逃がし油路114は、ポンプ室40の一方の側面44に形成された第2高圧吐出油路54の開口縁のうちの径方向外側の一部および径方向内側の一部から、それぞれ前記回転方向の前方側の第2低圧吐出油路56へ向けて周方向に延設された第1外側周方向溝118および第1内側周方向溝120から成り、第2油逃がし油路116は、ポンプ室40の他方の側面42に形成された第1低圧吐出油路52の開口縁のうちの径方向外側の一部および径方向内側の一部から、それぞれ前記回転方向の後方側の第1高圧吐出油路50へ向けて周方向に延設された第2外側周方向溝122および第2内側周方向溝124から成ることから、1つの側面に形成される2つの周方向溝は、その側面に開口された1つの吐出油路に対して加工が施されて形成されるので、各油逃がし油路の加工時間が比較的短くなるという利点がある。具体的には、一方の側面44に形成される2つの第1外側周方向溝118および第1内側周方向溝120は、その側面44に開口された1つの第2高圧吐出油路54に対して加工が施されて形成され、また、他方の側面42に形成される2つの第2外側周方向溝122および第2内側周方向溝124は、その側面42に開口された1つの第1低圧吐出油路52に対して加工が施されて形成される。ここで、例えば、ポンプ室40の一方の側面44に第1油逃がし油路および第2油逃がし油路を1つずつ形成し、ポンプ室40の他方の側面42に第1油逃がし油路および第2油逃がし油路を1つずつ形成する場合においては、1つの側面に形成される2つの周方向溝は、その側面に開口された2つの吐出油路に対してそれぞれ加工を施して形成する必要があり、各油逃がし溝の加工時間が比較的長くなるという欠点がある。
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
たとえば、高圧吐出油路50、52は、前記回転方向の前方側に設けられ、低圧吐出油路54、56は、前記回転方向の後方側に設けられていたが、これに限らず、例えば、高圧吐出油路50、52が前記回転方向の後方側に設けられ、低圧吐出油路54、56が前記回転方向の前方側に設けられてもよい。
また、実施例1において、第1高圧吐出油路50および第2高圧吐出油路54は、少なくとも一方が設けられればよく、また、第1低圧吐出油路52および第2低圧吐出油路56は、少なくとも一方が設けられればよい。
また、実施例1において、第1油逃がし油路58は、第1外側周方向溝66および第2外側周方向溝68の少なくとも一方を備えていればよく、また、第2油逃がし油路60は、第1内側周方向溝70および第2内側周方向溝72の少なくとも一方を備えていればよい。
また、実施例2において、第1高圧吐出油路50および第2低圧吐出油路56は、必ずしも設けられなくてもよい。
また、実施例2において、第1油逃がし油路114は、第1外側周方向溝118および第1内側周方向溝120の少なくとも一方を備えていればよく、また、第2油逃がし油路116は、第2外側周方向溝122および第2内側周方向溝124の少なくとも一方を備えていればよい。
また、オイルポンプ10(110)は、トルクコンバータを備え、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に用いられる自動変速機に備えられていたが、これに限らず、たとえば、トルクコンバータを備えず又はFR型車両等の他の駆動型式の車両に好適に用いられる変速機等、車両に備えられるオイルポンプであればよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10,110:車両用内接歯車型オイルポンプ
18,112:ハウジング
20:外周歯
24:ドライブギヤ
26:内周歯
28:ドリブンギヤ
30:油圧室
30a:所定の油圧室
40:ポンプ室
42:側面
44:側面
50:第1高圧吐出油路(第1吐出油路)
52:第1低圧吐出油路(第2吐出油路)
54:第2高圧吐出油路(第1吐出油路)
56:第2低圧吐出油路(第2吐出油路)
58,114:第1油逃がし油路
60,116:第2油逃がし油路
66,118:第1外側周方向溝(外側周方向溝)
68,122:第2外側周方向溝(外側周方向溝)
70,120:第1内側周方向溝(内側周方向溝)
72,124:第2内側周方向溝(内側周方向溝)
74,126:側縁(加工位置基準)
C1:軸心(一軸心)
C2:偏心軸心
K:最近接点の軌跡
V:容積
X:最近接点
a:回転方向

Claims (5)

  1. 外周歯を有し、一軸心まわりに回転可能に設けられたドライブギヤと、該ドライブギヤの外周歯に噛み合わされた内周歯を有して前記一軸心から偏心した偏心軸心まわりに回転可能に設けられ、該ドライブギヤにより回転駆動される円環状のドリブンギヤと、該ドリブンギヤおよび前記ドライブギヤが収容させられたポンプ室と、該ポンプ室内から油を吐出するために該ポンプ室の側面に周方向の所定の間隔を隔ててそれぞれ開口させられ、前記内周歯と前記外周歯との噛合隙間によって周方向に形成された複数の油圧室が前記ドライブギヤおよび前記ドリブンギヤの回転に伴って所定の回転方向に移動させられるときにおいて、該油圧室の容積が減少させられる過程で該油圧室に順に連通させられる第1吐出油路および第2吐出油路を有するハウジングとを、備えた車両用内接歯車型オイルポンプであって、
    前記複数の油圧室のうちの所定の油圧室が前記第1吐出油路の開口と前記第2吐出油路の開口との間に位置させられてそれら吐出油路と直接的に連通していないときにおいて、該所定の油圧室と該第1吐出油路とを連通させるために、前記ポンプ室の側面に形成された該第1吐出油路の開口縁の一部から前記回転方向の前方側の該第2吐出油路へ向けて周方向に延設された第1油逃がし油路と、前記所定の油圧室と前記第2吐出油路とを連通させるために、前記ポンプ室の側面に形成された該第2吐出油路の開口縁の一部から前記回転方向の後方側の該第1吐出油路へ向けて周方向に延設された第2油逃がし油路とを、含むことを特徴とする車両用内接歯車型オイルポンプ。
  2. 前記第1油逃がし油路は、前記第1吐出油路の開口縁のうちの前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向外側の一部から前記回転方向の前方側へ周方向に延設された外側周方向溝から成り、
    前記第2油逃がし油路は、前記第2吐出油路の開口縁のうちの前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向内側の一部から前記回転方向の後方側へ周方向に延設された内側周方向溝から成る
    ことを特徴とする請求項1の車両用内接歯車型オイルポンプ。
  3. 前記第1油逃がし油路は、前記第1吐出油路の開口縁のうちの前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向内側の一部から前記回転方向の前方側へ周方向に延設された内側周方向溝から成り、
    前記第2油逃がし油路は、前記第2吐出油路の開口縁のうちの前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向外側の一部から前記回転方向の後方側へ周方向に延設された外側周方向溝から成る
    ことを特徴とする請求項1の車両用内接歯車型オイルポンプ。
  4. 前記第1油逃がし油路は、前記ポンプ室の一方の側面に形成された前記第1吐出油路の開口縁のうち、前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向外側の一部および径方向内側の一部から、それぞれ前記回転方向の前方側へ周方向に延設された外側周方向溝および内側周方向溝から成り、
    前記第2油逃がし油路は、前記ポンプ室の他方の側面に形成された前記第2吐出油路の開口縁のうち、前記内周歯と前記外周歯との最近接点の軌跡よりも径方向外側の一部および径方向内側の一部から、それぞれ前記回転方向の後方側へ周方向に延設された外側周方向溝および内側周方向溝から成る
    ことを特徴とする請求項1の車両用内接歯車型オイルポンプ。
  5. 前記第1油逃がし油路および前記第2油逃がし油路は、共通の加工位置基準を用いてそれぞれ溝加工されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1の車両用内接歯車型オイルポンプ。
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