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JP5557484B2 - 色素、これを用いた光電変換素子及び光電気化学電池 - Google Patents

色素、これを用いた光電変換素子及び光電気化学電池 Download PDF

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Description

本発明は色素、色素によって増感された光電変換素子、及びそれを用いた光電気化学電池(色素増感型太陽電池)に関する。
光電変換素子は各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。この光電変換素子には金属を用いたもの、半導体を用いたもの、有機顔料や色素を用いたもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどの様々な方式が実用化されている。中でも、非枯渇性の太陽エネルギーを利用した太陽電池は燃料が不要であり、無尽蔵なクリーンエネルギーとして、その本格的な実用化が大いに期待されている。この点、シリコン系太陽電池は古くから研究開発が進められてきた。各国の政策的な配慮もあって普及が進んではいるが、シリコンは無機材料であり、スループット及び分子修飾には自ずと限界がある。
上記のような課題を解決する次世代の技術として色素増感型太陽電池の研究が精力的に行われている。とくに、スイスのローザンヌ工科大学のGreatzel等がポーラス酸化チタン薄膜の表面にルテニウム錯体からなる色素を固定した色素増感型太陽電池を開発し、アモルファスシリコン並の変換効率を実現したことにより、一躍世界の研究者から注目を集めるようになった。
特許文献1〜3には、この技術を応用した、色素によって増感された半導体微粒子を用いた色素増感光電変換素子が開示されている。これにより比較的簡単な工程で素子を製造することができるという利点を有する。しかしながら、増感色素に用いられるルテニウム錯体色素は極めて高価である。またルテニウムは供給性に懸念があり、次世代のクリーンエネルギーを支える技術として本格的に対応するにはまだ十分といえず、むしろ実用化に向けた研究開発はその緒に就いたばかりである。このような理由から、廉価かつ資源的制約の小さい有機材料によって増感され、かつ十分な変換効率を有する光電変換素子の開発が望まれており、有機色素を増感剤として用いたものが報告され始めている(特許文献4参照)。
米国特許第5463057号明細書 米国特許第5525440号明細書 特開平7−249790号公報 特開2008−135197号公報
本発明の目的は、廉価な色素を用いて、変換効率の高い光電気化学電池を提供することである。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定の色素が、変換効率に影響する因子である太陽光を広い波長領域で吸収する能力と、受光電極への高い電子注入効率のいずれか、あるいは両方を満たすこと、そしてこれを増感色素として用いることで変換効率の高い光電気化学電池を提供することができることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされるに至ったものである。
本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
<1>分子内に下記一般式()で表される構造を有することを特徴とする色素、
Figure 0005557484
一般式(2)中、Xはベンゼン環と連結して六員環又は七員環の含窒素複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Lはチオフェン環、セレノフェン環及びこれらが縮環した複素環の中から選ばれた少なくとも1種の複素環を含む電子伝達性連結基を表す。R は水素原子、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表す。R は水素原子を表す。 はアルキル基を表す。ロダニン骨格の複素環酸性核、またはカルボン酸基とシアノ基で置換されたメチレン基を表し、Bは少なくとも一つのカルボン酸基を有する。n1は1〜の整数を表す。R〜R は水素原子を表す。n2は1又は2の整数を示す。]
>前記Xベンゼン環と連結して七員環の含窒素複素環を形成する非金属原子群であることを特徴とする<記載の色素、
前記下記一般式(3)または=C(CN)(COOH)で表されることを特徴とする<1>または2>に記載の色素、
Figure 0005557484
[一般式(3)においてR、Rは、それぞれ独立に、アルキル基を表す(少なくとも1つの官能基はカルボン酸基を有していてもよい)。mは0又は1を示す。一般式(3)における炭素−炭素二重結合は、E型又はZ型のいずれであってもよい。一般式(3)中のRは硫黄原子または=C(CN)(COOH)を表し、該=C(CN)(COOH)における炭素−炭素二重結合は、E型又はZ型のいずれであってもよい。]
>前記 が、下記一般式(6)で表されることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の色素、
Figure 0005557484
[一般式(6)において はアルキル基を表す該アルキル基はカルボン酸基を有していてもよい)。]
>前記B下記一般式(7)で表されることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の色素、
Figure 0005557484
[一般式(7)において はアルキル基を表す該アルキル基はカルボン酸基を有していてもよい)。]
>前記B、=C(CN)(COOH)であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の色素、
>受光電極が、<1>〜<>のいずれか1項に記載の色素によって増感され半導体微粒子を含有することを特徴とする光電変換素子、
前記受光電極と対極との間に絶縁性の多孔体を有することを特徴とする<記載の光電変換素子、
>γ−ブチロラクトンを電解液中に含むことを特徴とする<7>または<8>に記載の光電変換素子、及び
10前記>〜<>のいずれか1項に記載の光電変換素子を用いた光電気化学電池。
本発明の色素は、光電変換素子ないし光電気化学電池の増感色素として用いたときの光電変換効率が高く、良好な特性を有し、しかも増感色素にルテニウムを使用する必要がない。
本発明の光電変換素子の一実施態様について模式的に示した断面図である。
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、以下の設計コンセプトを導入することで、光電変換効率が高く耐久性に優れた色素(色素化合物)を得ることができることを見出し、鋭意検討の結果、その色素によって増感される半導体微粒子を含有する光電変換素子及びその光電変換素子を備えて構成された光電気化学電池が、高い光電変換効率を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
<設計コンセプト1>カチオンラジカルの非局在化を進めるために共役系の広がったドナー部位を導入することにより、色素の一電子酸化状態を安定化させた。
<設計コンセプト2>色素の吸収域を拡げ、色素からの酸化チタンへの電子注入効率を向上させることで、高い変換効率を得ることができると考えられる。そのために、吸収域拡大効果の高いアクセプター構造、電子注入効率の高いアクセプター構造のいずれか一方、または両構造を組み合わせたものを用いた。
<設計コンセプト3>従来色素は酸化チタン全表面積の1/3程度しか被覆していない可能性があり、吸着状態での色素配列を制御することにより吸着量を向上することが可能であると考えられる。そこで本発明者等は、色素のJ会合を積極的に促進する構造を導入した。J会合を積極的に促進する構造とは、COOH基などのアンカー部と反対側の位置に長鎖アルキル基やアリール基などの疎水性で電解質と親和性の高い基を配置する分子構造であることに加えて、色素分子の平面性が高く、分子共役平面の中央に立体的に平面から飛び出るような置換基を持つこと、もしくは分子のねじれなどによってこれと同様の効果をもたせることで、Brickstone構造、Staircase構造、もしくはLadder構造の配列を促進する構造を意味する。
以下、本発明の色素について説明する。
最初に、本発明の一般式(2)で表される色素を含む一般式(1)で表される色素について説明する。
Figure 0005557484
記一般式(1)中、Aは、ベンゼン環と連結して形成される六員環又は七員環の含窒素複素環を表す。Aで表される六員環又は七員環の含窒素複素環を形成する原子として、好ましくは窒素原子のほかに炭素原子、硫黄原子、および酸素原子から選ばれた少なくとも1種で形成される、六員環又は七員環の含窒素複素環を挙げることができる。さらに好ましくは、窒素原子のほかに炭素原子及び硫黄原子から選ばれた少なくとも1種で形成される六員環又は七員環の含窒素複素環を挙げることができる。特に好ましくは窒素原子のほかには炭素原子のみによって形成される7員環含窒素複素環を挙げることができる。Aは縮環していてもよく、置換されていてもよい。さらに置換基を有していてもよい。縮環されている例としてベンゼン環、ピリジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環等が挙げられる。
上記一般式(1)では、はチオフェン環、フラン環、ピロール環、セレノフェン環及びこれらが縮環した複素環の中から選ばれた少なくとも1種の複素環を含む電子伝達性連結基が挙である。好ましくは、チオフェン環、ピロール環もしくはこれらが縮環した複素環の中から選ばれた少なくとも1種の複素環を含む電子伝達性連結基であり、さらに好ましくは、チオフェン環もしくはこれら縮環した複素環の中から選ばれた少なくとも1種の複素環を含む電子伝達性連結基である。
ただし、本発明におけるL はチオフェン環、セレノフェン環及びこれらが縮環した複素環の中から選ばれた少なくとも1種の複素環を含む電子伝達性連結基である。
縮環の例としてベンゼン環、ピリジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環等が挙げられる。
前記一般式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。好ましくは、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基及びアリール基から選ばれた少なくとも1種の置換基を表す。さらに好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、及びアリール基から選ばれた少なくとも1種である。特に好ましくは、アルキル基、及びアリール基から選ばれた少なくとも1種であり、さらに好ましくは、アルキル基である。
がアルキル基を表すとき、好ましいアルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を挙げることができる。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。さらに好ましいアルキル基としては、炭素数1から30のアルキル基、(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、又は、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)であり、特に好ましくは、炭素数1から20のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシルが挙げられる。
、Rがアリール基を表すとき、好ましいアリール基としては、フェニル、ナフチル、チエニル、フリル、ピリルもしくはこれらが縮環した基が挙げられ、特に好ましくは、フェニル、チエニルもしくはこれらが縮環した基が挙げられる。縮環の例としてベンゼン環、ピリジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環等が挙げられる。
、Rがアルコキシ基を表すとき、好ましいアルコキシ基としては、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシが挙げられ、更に好ましくは、炭素数1から20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシが挙げられ、特に好ましくは、炭素数1から10の置換もしくは無置換のアルコキシ基が挙げられる。
ただし、本発明においては、R は水素原子、アルキル基、アルコキシ基及びアリール基から選ばれた少なくとも1種の置換基であり、R はアルキル基である。
前記一般式(1)中、は水素原子又は置換基を表す。好ましくは、水素原子である。Rが置換基を表すとき、置換基としては、後述の置換基Wで表される基が挙げられるが、置換基として好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基)、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基(アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基であり、更に好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基であり、特に好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基である。
ただし、本発明では、R は水素原子である。
前記一般式(1)中、は複素環酸性核、または電子求引性基で置換されたメチレン基を表し、Bは少なくとも一つの酸性基を有する。複素環酸性核として、T.H.James著「The Theory of the photografic process. forth edition.」Macmillan publishing社、1977年刊の199ページに記載のものが挙げられる。複素環酸性核として好ましくは、ロダニン、ヒダントイン、チオヒダントイン、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ピラゾリジンジオン、ピラゾロン、インダンジオン、イソオキサゾロン、さらに好ましくは、ロダニン、ヒダントイン、チオヒダントイン、バルビツール酸、チオバルビツール酸、特に好ましくはロダニンである。
このため、本発明では、B が複素環酸性核の場合、ロダニン骨格の複素環酸性核である。
前記一般式(1)中、が電子吸引基で置換されたメチレン基の場合、電子吸引基としては以下の効果を持つ置換基が挙げられる。
一般に、電子吸引基は分子の特定の位置について電子密度を減弱させる。電子求引性あるいは電子供与性は単に電気陰性度の差だけでは説明できない。すなわち、誘起効果やメソメリー効果などが複合的に作用するので、芳香性や共役系の存在やトポロジー的な位置関係によって現れ方が変わってくる。これらの効果を、パラ及びメタ置換安息香酸の酸解離定数をもとに定量的に評価、予測する経験則としてハメット則が知られる。誘起効果の場合、電子求引性のものを−I効果、電子供与性のものを+I効果と表すが、炭素よりも電気陰性度の高い原子は−I効果を示す。また、アニオンは+I効果を、カチオンは−I効果を示す。メソメリー効果の場合は、電子求引性のものを−M効果、電子供与性のものを+M効果と表す。電子求引基の例として例えば以下のものが挙げられる。
誘起効果
(−I効果)
・−O > −N
・−N > −P > …
・−O > −S > …
・−N > −NO > −SOR > −SOR
・−SOR > −SO
・−N > −NR
・−O > −OR
・−S > −SR
・−F > −Cl > −Br > −I
・=O > =NR > =CR
・=O > −OR
・≡N > ≡CR
・≡N > =NR > −NR
・−C≡CR > −CR=CR > −CRCR
メソメリー効果
(−M効果)
・=N > =NR
・=O > =NR > =CR・=S > =O > ≡N
電子吸引基として、好ましくはシアノ基、ニトロ基、スルフォニル基、スルフォキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、さらに好ましくはシアノ基、ニトロ基、スルフォニル基、特に好ましくはシアノ基である。
本発明において前記一般式(1)中、Bで表される、複素環酸性核又は電子吸引基で置換されたメチレン基には、少なくとも一つの酸性基を有する。酸性基とは、基を構成する最も酸性の水素原子のpKaが13以下の基である。酸性基の例として、例えばカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基、アルキルスルフォニルカルバモイル基、リン酸基が挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基、さらに好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基、特に好ましくはカルボン酸基であり、本発明では、酸性基はカルボン酸基である
このため、本発明では、B が電子吸引基で置換されたメチレン基である場合、カルボン酸基とシアノ基が置換したメチレン基である。
前記一般式(1)中、n1は1〜12の整数を示す。n1として好ましくは、1〜10の整数、さらに好ましくは、2〜8の整数、特に好ましくは、2〜6の整数を表す。
ただし、本発明のn1は1〜6である。
前記一般式(1)は、一般式(2)で表されるときがより好ましく、本発明の色素は、前記一般式(2)で表される色素である。
前記一般式(2)中、Xはベンゼン環と連結して六員環又は七員環の含窒素を形成するのに必要な非金属原子群を表す。ここで非金属原子群とは、炭素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれた少なくとも1種が結合した原子群をいう。
Xで表される六員環又は七員環の含窒素複素環を形成する原子として、好ましくは窒素原子のほかに炭素原子、硫黄原子、及び酸素原子からなる群から選ばれた少なくとも1種で形成される六員環又は七員環の含窒素複素環を挙げることができる。さらに好ましくは、窒素原子のほかに炭素原子及び硫黄原子から選ばれた少なくとも1種の原子によって形成される六員環又は七員環の含窒素複素環を挙げることができる。特に好ましくは、窒素原子のほかに炭素原子及び硫黄原子から選ばれた少なくとも1種の原子によって形成される七員環の含窒素複素環を挙げることができる。さらに好ましくは窒素原子のほかに炭素原子及び硫黄原子で形成される七員環の含窒素複素環を挙げることができる。
Xは縮環していてもよく、置換されていてもよい。さらに置換基を有していてもよい。縮環の例としてベンゼン環、ピリジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環等が挙げられる。
前記一般式(2)中、R〜Rは水素原子を表す
記一般式(2)中、n2は1又は2の整数を示す。好ましくは、2である。
前記一般式(2)において、B は前記一般式(3)又は=C(CN)(COOH)で表される基である。
前記一般式(3)中、R、Rは、それぞれ独立に、アルキル基(少なくとも1つの官能基は前記のカルボン酸基を有していてもよい)を表す
アルキル基として例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシルが挙げられる。好ましいアルキル基として、炭素数1から30の、更に好ましくは炭素数1から25の、特に好ましくは炭素数1から20のアルキル基であり、置換基を有していても良い
前記一般式(3)中、mは0又は1を示す。好ましくは1である。
一般式(3)における炭素−炭素二重結合は、E型又はZ型のいずれであってもよい。一般式(3)中のRは硫黄原子または=C(CN)(COOH)を表す。=C(CN)(COOH)が置換して形成される炭素−炭素二重結合は、E型又はZ型のいずれであってもよい。
前記一般式(3)は前記一般式(6)で表されることが好ましい。一般式(6)においてRは、アルキル基(カルボン酸基を有していてもよい)を表す
前記一般式(2)において、Bは前記一般式(7)で表されることが好ましい。一般式(7)においてRは、アルキル基(カルボン酸基を有していてもよい)を表す
また前記一般式(2)において、Bは前記一般式(8)で表されることが好ましい。
本発明における置換基(以下、置換基Wとする。)とは例えば下記に示すものを表すことができる。
・ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、
・アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、
・アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。
・アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基
アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、
・芳香族基(例えば、ベンゼン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリミジン環、ピラジン環もしくはこれらが縮環した環)
ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、
・シアノ基、・ヒドロキシル基、・ニトロ基、・カルボキシル基、
・アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、
・アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、
・シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、
・ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、
・アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、
・カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、
・アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、
・アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
・アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、
・アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、
・アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、
・アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、
・アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、
・スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、
・アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、
・メルカプト基、
・アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、
・アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、
・ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
・スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、
・スルホ基、
・アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、
・アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、
・アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、
・アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、
・アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、
・カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、
・アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、
・イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、
・ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、
・ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、
・ホスフィニルオキシ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、
・ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、
・シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)。
た、置換基は更に置換されていても良い。その際、置換基の例としては、上述の置換基Wを挙げることができる。
以下に、本発明の色素(色素化合物)の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
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本発明の色素は、溶液における最大吸収波長が、好ましくは350〜1000nmの範囲であり、より好ましくは370〜700nmの範囲であり、特に好ましくは390〜650nmの範囲である。
図1に示すように、本発明の光電変換素子の好ましい実施態様を、図面を参照して説明する。光電変換素子10は、導電性支持体1、導電性支持体上、に設置される色素により増感した半導体膜(感光層)2、正孔輸送層3及び対極4からなる。半導体膜(区別して図示せず)を設置した導電性支持体1は光電変換素子10において作用電極として機能する。この光電変換素子10を外部回路6で仕事をさせる電池用途に使用できるようにして、光電気化学電池(図示しない)として作動させることができる。
受光電極5は、導電性支持体1および導電性支持体上に塗設される色素21の吸着した半導体微粒子22の層(感光層)2よりなる電極である。本実施形態においては受光電極5に電解質23を含むものとして示しているが、これを含まないものとしてみてもよい。感光層2は目的に応じて設計され、単層構成でも多層構成でもよい。一層の感光層中の色素は一種類でも多種の混合でもよいが、そのうちの少なくとも1種は、本発明の色素を用いる。感光層2に入射した光は色素を励起する。励起色素はエネルギーの高い電子を有しており、この電子が色素21から半導体微粒子22の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体1に到達する。このとき色素21の分子は酸化体となっているが、電極上の電子が外部回路で仕事をしながら色素酸化体に戻るのが光電気化学電池であり、受光電極5はこの電池の負極として働く。
本発明において光電変換素子及び光電気化学電池に用いられる材料及び各部材の作製方法については、この種のものにおける通常のものを採用すればよく、例えば米国特許第5463057号明細書、米国特許第5525440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。以下、主たる部材について概略を説明する。
次に、本発明の光電気化学電池について詳しく説明する。
本発明の光電気化学電池の構成は、透明基板及び対向基板を最外層とし、両基板の間に、透明基板の側から、透明導電膜、受光電極、電荷移動層、対極、導電層が配置されたものである。受光電極と対極との間の空間部分には、絶縁性の多孔体が充填されていることが好ましい。特に、受光電極と電荷移動層との間に絶縁性の多孔体で充填された層が設けられることが好ましい。Andreaus Key,Michael Greatzel著“Low cost photovoltaic modules based on dye sensitized nanocrystalline titanium dioxide and carbon powder”,Solar Energy Materials and Solar Cells,vol.44,Elsevier Science,1996,p.99−117.中で開示されている3層のモジュールでは、この絶縁性の多孔体で充填された層をセパレータと呼んでいる。
この空間充填剤もしくはセパレータとして用いられる絶縁性の多孔体は、例えばガラスビーズ、二酸化ケイ素(シリカ)などの粒子を用いることができる。好ましくは二酸化ケイ素粒子を焼結したものが好ましい。この絶縁性の多孔体は、コスト削減の観点から塗布及び焼結によって形成することが可能なものが好ましく、具体的には、シリカ粒子を焼結した絶縁性の多孔体が好ましい。シリカ粒子を焼結した多孔体が好ましい理由は、当該多孔体は屈折率が低く光散乱が小さいため、良好な透明性を有するためである。また、当該多孔体は、良好な透明性を確保するため、平均粒径が5〜150nmであることが好ましい。
受光電極は、導電性支持体、および導電性支持体上に塗設される色素の吸着した半導体微粒子の層(感光層)よりなる電極である。感光層は目的に応じて設計され、単層構成でも多層構成でもよい。一層の感光層中の色素は一種類でも多種の混合でもよいが、そのうちの少なくとも1種は、前記一般式(2)で表される構造を少なくとも1つ有する色素である。感光層に入射した光は色素を励起する。励起色素はエネルギーの高い電子を有しており、この電子が色素から半導体微粒子の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体に到達する。このとき色素分子は酸化体となっているが、電極上の電子が外部回路で仕事をしながら色素酸化体に戻るのが光電気化学電池であり、色素増感光電変換素子はこの電池の負極として働く。
導電性支持体は、金属のように支持体そのものに導電性があるものか、または表面に導電膜層を有するガラスもしくはプラスチックの支持体である。支持体としては、ガラス及びプラスチックの他、セラミック(特開2005−135902)、導電性樹脂(特開2001−160425)を用いても良い。支持体上には、表面に光マネージメント機能を施しても良く、例えば、特開2003−123859記載の高屈折膜及び低屈性率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜、特開2002−260746記載のライトガイド機能が上げられる。
支持体上には、紫外光を遮断する機能を持たせることが好ましい。例えば、特開2001−185242に記載の紫外光を可視光に変えることが出来る蛍光材料を透明支持体中または、透明支持体表面に存在させる方法が挙げられる。また、別の好ましい方法して、紫外線吸収剤を用いる方法も挙げられる。好ましい態様として例えば、特開平11−345991、特開2002−25634、特開2003−21769、特開2004−227843、特開2004−349129、特開2002−134178、及び特開2003−100358に開示のものが挙げられる。
支持体上には、特開平11−250944、特開2003−308892、及び特開2003−282163に記載の機能を付与しても良い。
好ましい導電膜としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、もしくは導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。好ましい導電膜の態様及び製法としては、特開2003−151355、特開2004−311174、特開2004−311175、特開2004−311176、特開2005−85699、特開2005−85670、特開2005−116391、特開2003−323818、特開2004−165080、及び特開2005141981に記載のものが挙げられる。
導電膜層の厚さは0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることが更に好ましく、特に好ましくは0.05〜20μmである。
導電性支持体は表面抵抗が低い程よい。好ましい表面抵抗の範囲としては50Ω/cm以下であり、さらに好ましくは10Ω/cm以下である。この下限に特に制限はないが、通常0.1Ω/cm程度である。
導電膜の抵抗値はセル面積が大きくなると大きくなる為、集電電極を配置しても良い。好ましい集電電極の形状及び材質としては、特開平11−266028、特開2005−108467、特開2003−203681、特開2004−146425、特開2004−128267、特開2004−164970、特開2004−327226、特開2004−164950、特開2005−78857、特開2005−197176、特開2004−164950、特開2000−285977、特開2002−314108、及び特開2003−123858が挙げられる。
特開2000−285974に記載のように、支持体と透明導電膜の間にガスバリヤー膜及び/又はイオン拡散防止膜を配置しても良い。ガスバリヤ層としては、樹脂膜(例えば、特開2000−282163、特開2005−142086)または、無機膜(特開2005−142086)のどちらでもよい。
また、特開2005−142084または2005−142085のように透明電極と多孔質半導体電極光触媒含有層を設けても良い。
透明導電層は積層構造でも良く、好ましい方法としてたとえば、ITO上にFTOを積層する特開2003−323818に記載の方法の他、特開2005−44544、特開2005−142088、特開2005−19205、特開2004−241228、特開2004−319872が挙げられる。
導電性支持体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上が特に好ましい。透明導電性支持体としては、ガラスもしくはプラスチックに導電性の金属酸化物を塗設したものが好ましい。このときの導電性の金属酸化物の塗布量は、ガラスもしくはプラスチックの支持体1m当たりの0.1〜100gが好ましい。透明導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。
半導体微粒子は、好ましくは金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)またはペロブスカイトの微粒子である。金属のカルコゲニドとしては、好ましくはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、もしくはタンタルの酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。ペロブスカイトとしては、好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが特に好ましい。
半導体微粒子の製造方法として、例えば、チタニアナノ粒子の製造方法として好ましくは、四塩化チタンの火炎加水分解による方法(特表平06−511113)、四塩化チタンの燃焼法(特開2003−327432)、安定なカルコゲナイド錯体の加水分解(特開2001−85076)、オルトチタン酸の加水分解(特開2004−161589、特開2004−238213)、可溶部と不溶部から半導体微粒子を形成後可溶部を溶解除去する方法(特開2002−246620)、過酸化物水溶液の水熱合成(特開2003−92154)、またはゾルゲル法によるコア/シェル構造の酸化チタン微粒子の製造方法(特開2004−10403)が挙げられる。
チタニアの結晶構造としては、アナターゼ型、ブルッカイト型、または、ルチル型があげられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。好ましい例として、特開平11−339867、特開2001−43907、特開2001−43907に記載の例が挙げられる。また、好ましい酸化チタンの物性としては、EP1338563、US2004/0161380、US6075203、US6444189、US6720202、CN1540772、特開2001−283942、及び特開2001−212457に記載の例などが挙げられる。
チタニアナノチューブ・ナノワイヤー・ナノロッドをチタニア微粒子に混合するか、または半導体電極として用いても良く、好ましい例としては、特開2003−168495、特開2003−251194、特開2004−175586、特開2004−175587、特開2004−175588、特開2004−311354、特開2004−311355、特開2004−319661、及び特開2005−162584に記載の例が挙げられる。
チタニアは、非金属元素などによりドーピングされていても良い。好ましい例としては、特開2000−235874、特開2003−252624、特開2002−25637、特開2003−187881、特開2003−187882、特開2003−179244、特開2004−87148、特開2004−119279、特開2005−93944、特開2005−64493、特開2003−257507、及び特開2003−323920に記載の例などが挙げられる。チタニアへの添加剤としてド―パント以外に、ネッキングを改善する為のバインダーや逆電子移動防止の為に表面へ添加剤を用いても良い。好ましい添加剤の例としては、ITO、SnO粒子(特開平11−283682、特開2001−345125)、ウイスカー(特開2003−163037)、繊維状グラファイト・カーボンナノチューブ(特開2003−163037)、酸化亜鉛ネッキング結合子(特開2003−273381)、セルロース等の繊維状物質(特開2003−123861)、金属(特開2000−285975、特開2001−35551)、有機シリコン(特開2000−294304)、ドデシルベンゼンスルホン酸(特開2000−260493)、シラン化合物等の電荷移動結合分子(特開2000−323192、特開2001−102103)、及び電位傾斜型デンドリマー(特開2004−213908)などが挙げられる。
チタニア上の表面欠陥を除去するなどの目的で、色素吸着前にチタニアを酸塩基又は酸化還元処理しても良い。酸塩基処理の例としては、例えば特開2000−101106、特開2002−293541、特開2003−297441、特開2003−297442、特開2004−235240などがあげらられる。また、特開平08−81222、特開2000−285980、特開2004−158243、及び特開2004−247104等に記載のようにエッチング、酸化処理、過酸化水素処理、脱水素処理、UV−オゾン、酸素プラズマなどで処理しても良い。
半導体電極は酸化チタンと酸化スズ(TiO2/SnO2)などの複合電極を用いても良く、チタニアの混合電極として例えば、特開2000−113913、特開2004−95387、特開2001−155791、特開2003−272723、特開平05−504023、特開2000−114563、特開2002−75476、特開2002−8741、CN1350334 、特開2003−272724、特開2003−308891、特開2005−174934、特開2001−358348、特開2003−123862、特開2004−103420、特開2005−39013及び特開2003−317815が挙げられる。チタニア以外の混合電極として例えば、特開2001−185243、特開2003−282164、特開2003−289151、特開2003−321299、特開2002−93471、特開2002−141115、特開2002−184476、特開2002−356400、特開2002−246623、特開2002−246624、特開2002−261303、特開2003−243053、特開2004−6235、特開2003−323920、特開2004−277197、特開2004−210605、特開2005−135798、特開2005−135799、特開2001−196105、特開2002−100418、特開2002−100419、特開2002−280084、特開2003−272724、特開2004−124124、特開平09−237641、特開平11−273755、特開2004−247105が挙げられる。
半導体電極は、入射光の利用率を高めるなどのためにタンデム型にしても良い。好ましいタンデム型の構成例ととしては、特開2002−90989、特開2002−222971、特開2003−168496、特開2003−249275、2005−166313、特開平11−273753、特開2002−167808、特開2005−129259、特開2002−231324、特開2005−158620、特開2005−158621、特開2005−191137、特開2003−333757記載り例が挙げられる。
これらの半導体微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で1次粒子として0.001〜1μm、分散物の平均粒径として0.01〜100μmであることが好ましい。
半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法としては、半導体微粒子の分散液またはコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法、特許2664194に記載の半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し空気中の水分によって加水分解して半導体微粒子膜を得る方法などの(1)湿式法が一般的な方法として挙げられる。湿式法の製造方法としては、半導体微粒子の分散液を作成する方法としては乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、あるいは半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられるが、好ましくは、特開平11−144772、特開2005−100792、EP1300897、特開2002−324591、特開2002−145615、特開2003−176130、及び特開2004−79610が挙げられる。(1)湿式法の塗布液の分散媒としては水または各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、t−ブタノール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が挙げられるが、好ましくは、特表平06−511113、CN144292、特開平11−11912、特開2000−294814、特開2000−319018、特開2000−319018、特開2000−319018、特開2002−145614、特開2002−75477、特開2004−193321、WO02/067357、特開2004−207205、特開2004−111348、特開2004−186144、特開2003−282162、特開2005−142011、特開2005−174695、特開2005−85500、特開平11−343118、特開平11−354169、特開2000−106222、特開2003−246621、特開2003−51345、特開2004−158551、特開2001−358348、特開2003−217693などが挙げられる。。分散の際、必要に応じてポリマー、界面活性剤、酸、もしくはキレート剤などを分散助剤として用いてもよい。
半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法として、(1) 湿式法の他、(2)乾式法、(3)その他の方法が挙げられる。
(2)乾式法として好ましくは、特開2000−231943、特開2002−170602、特開2001−345124、特開2003−197280、特開2003−123854、特開2003−123852、特開2003−123853、特開2005−39013、特開2004−39286、特開2005−104760が挙げられる。
(3)その他の方法として、好ましくは、特開2002−134435、US2004/0123896、特開2004−327265、特開342397、特公表2003−500857、特開2005−85491、特開2003−98977、特開2002−299665、特開2003−243053、特開2004−253331、特開平11−310898、特開2003−257507、特開2003−323920、US2004/0084080、US2004/0121068、特開2004−319873、特開平10−112337、特開平11−6098、特開2000−178791、特開2000−178792、特開2004−103420、及び特開2003−301283が挙げられる。
半導体電極層内部で光散乱。反射を効率的に行う光マネージメント機能を設けても良い。好ましくは、特開2002−93476、特開2004−296373、特開2002−352868、特開2003−142170、特開2003−59549、特開2002−289274、特開2002−222968、特開2003−217688、特開2004−172110、特開2003−303629、特開2004−343071、特開2005−116302、特開平09−259943、特開平10−255863、特開2003−142171、特開2002−110261、及び特開2004−311197が挙げられる。
透明導電膜と酸化物半導体層の間には、電解液と電極が直接接触することによる逆電流を防止する為、短絡防止層を形成することが好ましい。好ましい例としては、特開平06−507999、特開平06−51113、特開2000−178792、特開平11−312541、特開2000−285974、特開2000−285979、特開2001−143771、特開2001156314、特開2001−307785、特開2002−151168、特開2002−75471、特開2003−163359、特開2003−163360、特開2003−123856、WO03/038909、特開2002−289270、特開2002−319439、特開2003−297443、特開2004−87622、特開2003−331934、特開2003−243054、特開2004−319130、特開2004−363069、特開2005−71956、特開2005−108807、特開2005−108836、特開2005−142087が挙げられる。
光電極と対極の接触を防ぐ為に、スペーサーやセパレータを用いることが好ましい。好ましい例としては、特開2001−283941、特開2003−187883、特開2000−294306、特開2002−175844、特開2002367686、特開2004−253333が挙げられる。
半導体微粒子は多くの色素を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。例えば半導体微粒子を支持体上に塗設した状態で、その表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。好ましい半導体微粒子の構造としては、特開2001−93591、特開2001−257012、特開2001−196106、特開2001−273936、及びEP1207572が挙げられる。
一般に、半導体微粒子の層の厚みが大きいほど単位面積当たりに担持できる色素の量が増えるため光の吸収効率が高くなるが、発生した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。半導体微粒子層の好ましい厚みは素子の用途によって異なるが、典型的には0.1〜100μmである。光電気化学電池として用いる場合は1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることがより好ましい。半導体微粒子は、支持体に塗布した後に粒子同士を密着させるために、100〜800℃の温度で10分〜10時間焼成してもよい。支持体としてガラスを用いる場合、製膜温度は400〜600℃が好ましい。
支持体としてプラスティックを用いる場合、300℃以下で製膜することが好ましく、200℃以下が更に好ましい。200℃以下で製膜する方法としては、(1)湿式法、(2)乾式法、(3)電気泳動法(電析法を含む)の何れでも良く、好ましくは、(1)湿式法、又は(2)乾式であり、更に好ましくは、(1)湿式法である。
湿式法とは、半導体層又はその前駆体を湿式で塗布するなどして、プラスティックフイルム上に膜を形成しそれを更に活性化する方法であり、例えば、特開平10−290018に開示の半導体と導電性化合物の混合物を低温で加熱する方法、前駆体を用いる方法(前駆体として例えば、特開2001−110462開示の(NH TiF 、特開2001−247314開示の過酸化チタン、特開平11−219734開示の金属アルコキシド・金属錯体・金属有機酸塩が挙げられる。)、特表2005−520314開示の金属有機酸化物(アルコキシドなど)を共存させたスラリーを塗布し加熱処理、光処理などで半導体膜を形成する方法、特開2003−2819847開示の無機系前駆体を共存させたスラリー、及び特開2005−056627開示のスラリーのpHと分散させたチタニア粒子の性状を特定した方法が挙げられる。
これらスラリーには、バインダーを添加しても良く、バインダーとしては、例えば、特開2003−109678、または特開2003−123861開示のセルロース、特開2003−272722開示のフッ素ポリマー、特開2004−47261開示の架橋ゴム、特表2005−516365開示のポリブチルチタネート、及び特開2005−135798開示のカルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
半導体又はその前駆体層の形成に関する技術としては、特開2003−308890開示のコロナ放電、プラズマ、UVなどの物理的な方法で親水化する方法、アルカリ(特開2004−119120)やポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸(特開2005−169228)などによる化学処理、特開2003−297443開示のポリアニリンなどの接合用中間膜の形成などが挙げられる。
また、塗布後に処理する方法をとっても良く、好ましい方法として例えば、UV照射、加熱、プラズマ、マイクロ派、通電、赤外線照射、化学的処理などが挙げられる。塗布後に処圧力をかけても良く、圧力をかける方法としては、特表2003−500857、特開2002−93475、特開2003−282160、及び特開2004−214129が挙げられる。光照射の例としては、特開2001−357896、特開平11−219734、特開2004−314313、特開2005−142446、特開2001−247314が挙げられる。プラズマ・マイクロ派・通電の例としては、特開2002−353453、特開2003−308893、特開2004−265662、特開2004−327369、特開2004−342319、特開2005−116415、特開2005−139498、及び特開2004−273770が挙げられる。化学的処理としては、例えば特開2001−357896、特開2002−280327、特開2003−281947、特表2005−520314、特開2003−297442が挙げられる。
乾式法としては、蒸着やスパッタリング、エアロゾルデポジション法などがあげられ、好ましくは、特開2005−39013、特開2004−074609、特許3265481、特開2003−100359、及び特開2004−39286開示の方法が挙げられる。
また、特開2002−100146、及び特開2004−311354開示の電気泳動法・電析法を用いても良い。
また、耐熱基盤上でDSCをいったん作成した後、プラスティックフイルムに転写する方法を用いても良い。好ましくは、特開2002−184475開示のEVAを介して転写する方法、特開2003−98977開示の紫外線、水系溶媒で除去可能な無機塩を含む犠牲基盤上に半導体層・導電層を形成後、有機基盤に転写後、犠牲基盤を除去する方法などが挙げられる。
なお、半導体微粒子の支持体1m当たりの塗布量は0.5〜500g、さらには5〜100gが好ましい。
半導体微粒子に色素を吸着させるには、色素溶液の中に、よく乾燥した半導体微粒子を長時間浸漬する方法が一般的である。色素溶液は必要に応じて50℃ないし100℃に加熱してもよい。色素の吸着は半導体微粒子の塗布前に行っても塗布後に行ってもよい。また、半導体微粒子と色素を同時に塗布して吸着させても良い。未吸着の色素は洗浄によって除去する。塗布膜の焼成を行う場合は色素の吸着は焼成後に行うことが好ましい。焼成後、塗布膜表面に水が吸着する前にすばやく色素を吸着させるのが特に好ましい。吸着する色素は1種類でもよいし、数種混合して用いてもよい。混合する場合、本発明の色素を混合してもよいし、米国特許4927721号、同4684537号、同5084365号、同5350644号、同5463057号、同5525440号の各明細書、および特開平7−249790号公報に記載の錯体色素と本発明の色素を混合してもよい。光電変換の波長域をできるだけ広くするように、混合する色素が選ばれる。
色素の使用量は、全体で、支持体1m当たり0.01〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜10ミリモルである。この場合、本発明の色素の使用量は5モル%以上とすることが好ましい。
また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1gに対して0.001〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。
このような色素量とすることによって、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。
また、会合など色素同士の相互作用を低減する目的で無色の化合物を共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としてはカルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばコール酸、ピバロイル酸)等が挙げられる。
色素を吸着した後に、アミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類としては4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらは液体の場合はそのまま用いてもよいし有機溶媒に溶解して用いてもよい。
以下、電荷移動層および対向電極について詳しく説明する。電荷移動層は、色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層であり、受光電極と対極との間に設けられる。代表的な例としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリクスに含浸したいわゆるゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩などが挙げられる。
酸化還元対としては、例えばヨウ素とヨウ化物(例えばヨウ化リチウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム等)との組み合わせ、アルキルビオローゲン(例えばメチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲンテトラフルオロボレート)とその還元体との組み合わせ、ポリヒドロキシベンゼン類(例えばハイドロキノン、ナフトハイドロキノン等)とその酸化体との組み合わせ、2価と3価の鉄錯体(例えば赤血塩と黄血塩)の組み合わせ等が挙げられる。これらのうちヨウ素とヨウ化物との組み合わせが好ましい。これらを溶かす有機溶媒としては、非プロトン性の極性溶媒(例えばアセトニトリル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチルイミダゾリノン、3−メチルオキサゾリジノン等)、特開2002−110262開示の含水電解液、特開2000−36332、特開2000−243134、及び再公表WO/00−54361開示の電解質溶媒などが挙げられるが、アセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンが好ましい。
電解質への添加物として、前述の4−tert−ブチルピリジンのほか、特開2003−331986開示のピリジン及びピリジン系化合物、特開2004−47229、特開2004−171821などに記載のアミノピリジン系化合物、特開2004−273272のベンズイミダゾール系化合物、特開2005−38711開示のアミノトリアゾール系化合物及びアミノチアゾール系化合物、特開2005−108663開示のイミダゾール系化合物、キノリン系化合物(特開2005−135782)、アミノトリアジン系化合物(特開2005−183166)、尿素誘導体(特開2003−168493)、アミド化合物(特開2004−103404)、ピリミジン系化合物(特開2004−247158)、及び窒素を含まない複素環(特開2005−166612、特開2005−166613、及び特開2005−16615)が挙げられる。
また、効率を向上する為に、電解液の水分を制御する方法をとっても良い。水分を制御する好ましい方法としては、濃度を制御する方法(特開2000−323189、特開2001−76774)、脱水剤を共存させる方法(特開2002−237335、特開2002−237335)などが挙げられる。
特開2004−235011に開示のごとくヨウ素の毒性軽減のために、ヨウ素とシクロデキストリンの包摂化合物の使用してもよく、特開2003−25709開示のように逆に水分を常時補給する方法を用いても良い。特許3462115開示のように環状アミジンを用いても良く、酸化防止剤(特開2004−39292)、加水分解防止剤(特開2004−111276)、分解防止剤(特開2004−111277)、及びヨウ化亜鉛(特開2004−152613)
電解質として溶融塩を用いても良く、好ましい溶融塩としては、イミダゾリウム又はトリアゾリウム型陽イオンを含むイオン性液体(特表平09−507334、特開平08−259543、特開2003−031270、特開2005−112733、特開2005−116367、特開2005−112733、特開2003−68374、特開2003−92153、特開2004−241378、特開2005−85587、特開2004−87387)、オキサゾリウム系(特開2000−53662)、ピリジニウム系(特開2000−58891、特開2001−23705、特開2001−167630、特開2001−256828、特開2001−266962)、グアニジウム系(特開2001−35253)、およびこれらの組み合わせ(特開2000−90991、特開2001−35552)が挙げられる。これらカチオン系に対して特定のアニオンと組み合わせても良く、例えば、特開2002−75442、特開2001−75443、特開2002−170426、特開2002−298913、特開2002−367426、特開2003−017148などが挙げられる。これらの溶融塩に対しては添加物を加えても良く好ましい添加物としては、特開2001−67931、特開2001−160427、特開2002−289267、特開2002−289268、特開2000−90991、特開2000−100485、特開2001−283943)などに記載のものなどが挙げられる。特開2002−319314又は特開2002−343440のごとく液晶性の置換基を持っていてもよい。また、特開2005−104845、特開2005−104846、特開2005−179254などに記載の四級アンモニウム塩系の溶融塩を用いても良い。
これら以外の溶融塩としては、例えば特開2005−139100、特開2005−145927、及びヨウ化リチウムと他の少なくとも1種類のリチウム塩(例えば酢酸リチウム、過塩素酸リチウム等)にポリエチレンオキシドを混合することにより、室温での流動性を付与したもの等が挙げられる。この場合のポリマーの添加量は1〜50質量%である。また、γ−ブチロラクトンを電解液に含んでいてもよく、これによりヨウ化物イオンの拡散効率が高くなり変換効率が向上する。
電解質と溶媒からなる電解液にゲル化剤を添加してゲル化させることにより、電解質を擬固体化しても良い。ゲル化剤としては、分子量1000以下の有機化合物(特開平11−185836、特開2000−36608、特開2000−58140)、分子量500−5000の範囲のSi含有化合物(特開2003−203520)、特定の酸性化合物と塩基性化合物から出来る有機塩(特開2003−203520)、ソルビトール誘導体(特開2003−346928)、ポリビニルピリジン(特開2004−227920、特開2005−093370)が挙げられる。
また、マトリックス高分子、架橋型高分子化合物又はモノマー、架橋剤、電解質及び溶媒を高分子中に閉じ込める方法を用いても良い。
マトリックス高分子として好ましくは、含窒素複素環を主鎖あるいは側鎖の繰り返し単位中に持つ高分子及びこれらを求電子性化合物と反応させた架橋体(特開平11−126917、及び特開2000−86724など)、トリアジン構造を持つ高分子、ウレイド構造をもつ高分子(特開2000−251532)、液晶性化合物を含むもの(特開2000−319260、特開2002−246066)、エーテル結合を有する高分子(特開2000−150006、特開2002−63813、特開2001−338700、特開2002−75480)、ポリフッ化ビニリデン系(2003−303628)、メタクリレート・アクリレート系(特開2001−28276、特開2001−210390)、熱硬化性樹脂(特開2002−363414、特開2002−305041)、架橋ポリシロキサン(特開2002−216861)、PVA(特開2002−175841)、ポリアルキレングリールとデキストリンなどの包摂化合物(特開2004−327271)、含酸素または含硫黄高分子(特開2005−108845)を添加した系、天然高分子(特開2005−71688)などが挙げられる。これらにアルカリ膨潤型高分子(特開2002−175482)、一つの高分子内にカチオン部位とヨウ素との電荷移動錯体を形成できる化合物を持った高分子(特開2005−63791)などを添加しても良い。
マトリックスポリマーとして2官能以上のイソシアネートを一方の成分として、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基などの官能基と反応させた架橋ポリマーを含む系を用いても良い。この例として例えば、特開2000−228234、特開2002−184478、特開2002−289271、及び特開2003−303630)が挙げられる。また、ヒドロシリル基と二重結合性化合物による架橋高分子(特開2003−59548)、ポリスルホン酸又はポリカルボン酸などを2価以上の金属イオン化合物と反応させる架橋方法(特開2003−86258)などを用いても良い。
上記擬固体の電解質との組み合わせで好ましく用いることが出来る溶媒としては、特定のりん酸エステル(特開2000−100486、特開2003−16833)、エチレンカーボネートを含む混合溶媒(特開2004−87202)、特定の比誘電率を持つ溶媒(特開2004−335366)、及び特開2003−16833及び特開2003−264011に記載の溶媒などが挙げられる。
固体電解質膜あるいはあるいは細孔に液体電解質溶液を保持させても良く、その方法として好ましくは、導電性高分子膜(特開平11−339866)、繊維状固体(特開2000−357544)、フィルタなどの布上固体(特開2001−345125)が挙げられる。
特開2003−157914開示のゲル電解質と導電性樹脂対極の特定の組み合わせを用いても良い。
以上の液体電解質及び擬固体電解質の代わりにp型半導体あるいはホール輸送材料などの固体電荷輸送系を用いても良い。P型半導体として好ましくは、CuI(特開2001−156314、特開2001−185743、特開2001−185743、特開2001−230434、特開2003−273381、特開2003−234485、特開2003−243681、特開2003−234486)、CuSCN、及びp−SbAl(特開2003−258284)が挙げられる。これらホール輸送材料の製造方法としてこのましくは、特開2003−331938、特開2001−168359、特開2001−196612、特開2001−257370、特開2002−246623、特開2002−246624、及び特開2003−289151が挙げられる。
固体電荷輸送層として有機ホール輸送材料を用いても良い。ホール輸送層として好ましくは、ポリチオフェン(特開2000−106223、特開2003−364304)、ポリアニリン(特開2003−264304)、ポリピロール(特開2000−106224、特開2003−264304)、及びポリシラン(特開2001−53555、特開2001−203377)などの導電性高分子、及び2個の環がC、Siなど四面体構造をとる中心元素を共有するスピロ化合物(特表平11−513522、特表2001−525108)、トリアリールアミンなどの芳香族アミン誘導体(特開平11−144773、特開平11−339868、特開2003−123856、特開2003−197942、特開2004−356281)、トリフェニレン誘導体(特開平11−176489)、含窒素複素環誘導体(特開2001−85077、特開2001−85713)、液晶性シアノ誘導体(特許3505381)が挙げられる。
酸化還元対は、電子のキャリアになるので、ある程度の濃度が必要である。好ましい濃度としては合計で0.01モル/l以上であり、より好ましくは0.1モル/lであり、特に好ましくは0.3モル/l以上である。この場合の上限には特に制限はないが、通常5モル/l程度である。
対向電極は、光電気化学電池の正極として働くものである。対向電極は、通常前述の導電性支持体と同義であるが、強度が十分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必要でない。ただし、支持体を有する方が密閉性の点で有利である。対向電極の材料としては、白金、カーボン、導電性ポリマー、などがあげられる。好ましい例としては、白金(特開2001−102102)、カーボン(特開2002−298936、特開2003−297446、特開2004−127849、特開2004−152747、特開2004−165015、特開2004−111216、特開2004−241228、特開2004−319872)、導電性ポリマー(特開2003−317814、特開2004−319131、特開2005−116301)が挙げられるが、特開2001−43908、特開2003−142168、特開2004−127849、特開2004−152747の例で示されるものを用いても良い。
対極の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。好ましい例としては、特開平10−505192、特開2004−296669、特開2005−11609、特開2005−141996、特開2005−142090、特開2005−158470、特開2000−348784、特開2005−158379、特開2000−294305、特開2001−243995、特開2004−241228、特開2004−296203、特開2004−319872、特開2005−197097の例などが挙げられる。
導電性支持体は、金属のように支持体そのものに導電性があるものか、または表面に導電膜層を有するガラスもしくはプラスチックの支持体である。支持体としては、ガラス及びプラスティックの他、セラミック(特開2005―135902)、導電性樹脂(特開2001―160425)を用いてもよい。支持体上には、表面に光マネージメント機能を施してもよく、例えば、特開2003―123859記載の高屈折膜及び低屈性率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜、特開2002―260746記載のライトガイド機能が上げられる。
導電性支持体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上が特に好ましい。透明導電性支持体としては、ガラスもしくはプラスチックに導電性の金属酸化物を塗設したものが好ましい。このときの導電性の金属酸化物の塗布量は、ガラスもしくはプラスチックの支持体1m当たりの0.1〜100gが好ましい。透明導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。
支持体と透明導電膜の間に、ガスバリヤー膜及び/又はイオン拡散防止膜を配置してもよい(特開2000−285974)。また、透明電極と多孔質半導体電極光触媒含有層を設けてもよい(特開2005−142084)。また透明導電層は積層構造でもよく、好ましい方法として例えば、特開2003−323818記載のITO(インジウム・スズ・オキサイド)膜上にFTO(フッ素ドープ酸化スズ)膜を積層してもよい。
導電性支持体上には、紫外光を遮断する機能を持たせることが好ましい。例えば、特開2001−185242記載の紫外光を可視光に変えることが出来る蛍光材料を透明支持体中または、透明支持体表面に存在させる方法などを採用することができる。好ましい導電膜としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、もしくは導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。好ましい導電膜の態様及び製法としては、特開2003−151355記載のものを挙げることができる。
導電膜層の厚さは0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることが更に好ましく、特に好ましくは0.05〜20μmである。
導電性支持体は表面抵抗が低い程よい。好ましい表面抵抗の範囲としては50Ω/cm以下であり、さらに好ましくは10Ω/cm以下である。この下限に特に制限はないが、通常0.1Ω/cm程度である。
導電膜の抵抗値は電極面積が大きくなると大きくなる為、特開平11−266028記載の集電電極等を配置してもよい。
半導体微粒子は、好ましくは金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)またはペロブスカイトの微粒子である。金属のカルコゲニドとしては、好ましくはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、もしくはタンタルの酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。ペロブスカイトとしては、好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが特に好ましい。
半導体微粒子の製造方法として、例えば、チタニアナノ粒子の製造方法として好ましくは、四塩化チタンの火炎加水分解による方法、四塩化チタンの燃焼法、安定なカルコゲナイド錯体の加水分解、オルトチタン酸の加水分解、可溶部と不溶部から半導体微粒子を形成後可溶部を溶解除去する方法、過酸化物水溶液の水熱合成、またはゾルゲル法によるコア/シェル構造の酸化チタン微粒子を製造する方法を挙げることができる。
チタニアの結晶構造としては、アナターゼ型、ブルッカイト型、または、ルチル型があげられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。好ましい例として、特開平11−339867記載の例を挙げることができる。チタニアナノチューブ・ナノワイヤー・ナノロッドをチタニア微粒子に混合するか、半導体電極として用いてもよい(特開2003−168495)。半導体電極は酸化チタンと酸化スズなどの複合電極を用いてもよく、チタニアの混合電極として例えば、特開2000−113913記載のものを挙げることができる。チタニア以外の混合電極として例えば、特開2001−185243記載のものを挙げることができる。半導体電極は、入射光の利用率を高めるなどのためにタンデム型にしてもよい。
チタニアは、非金属元素などによりドーピングされていてもよい。またチタニアへの添加剤としてド―パント以外に、ネッキングを改善する為のバインダーや逆電子移動防止のために、表面へ、ITO粒子や、SnO粒子、ウイスカー、繊維状グラファイト・カーボンナノチューブ、セルロース等の繊維状物質、金属、有機シリコン、ドデシルベンゼンスルホン酸等を加えることができる。
チタニア上の表面欠陥を除去するなどの目的で、色素吸着前にチタニアを酸塩基又は酸化還元処理してもよい(特開2000−101106)。また、エッチング、酸化処理、過酸化水素処理、脱水素処理、UV−オゾン、酸素プラズマなどで処理してもよい。
半導体微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で1次粒子として0.001〜1μm、分散物の平均粒径として0.01〜100μmであることが好ましい。
半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法としては、半導体微粒子の分散液またはコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法、半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し空気中の水分によって加水分解して半導体微粒子膜を得る方法などの湿式法が挙げられる。半導体微粒子の分散液を作成する方法としては乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、あるいは半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられる。分散媒としては水または各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が挙げられる。分散の際、必要に応じてポリマー、界面活性剤、酸、もしくはキレート剤などを分散助剤として用いてもよい。
半導体微粒子を導電性支持体上に塗設後、さらに例えば、紫外線照射、加熱、プラズマ照射、マイクロ波照射、通電、赤外線照射、通電、化学的処理などを行うことができる。 また乾式法として、蒸着やスパッタリング、エアロゾルデポジション法などを挙げることができる。その他、電気泳動法や電析法を用いてもよい。
また、耐熱基板上で半導体微粒子層をいったん作成した後、プラスチックフイルムに転写する方法(特開2002−184475)により、半導体微粒子を導電性支持体上に塗設することができる。また紫外線や水系溶媒で除去可能な無機塩を含む犠牲基板上に半導体微粒子層を形成後、有機基板に転写し、その後犠牲基板を除去する方法などが挙げられる(特開2003−98977)。
透明導電膜と酸化物半導体層の間には、電解液と電極が直接接触することによる逆電流を防止するため、短絡防止層を形成することが好ましい。光電極と対極との接触を防ぐために、セパレータを用いることが好ましい。セパレータとしては、絶縁性の多孔体を使用することが好ましい。例えば、ガラスビーズ、二酸化ケイ素(シリカ)などの粒子を用いることができる。好ましくは二酸化ケイ素粒子を焼結したものが好ましい。この絶縁性の多孔体は、コスト削減の観点から塗布及び焼結によって形成することが可能なものが好ましく、具体的には、シリカ粒子を焼結した絶縁性の多孔体が好ましい。シリカ粒子を焼結した多孔体が好ましい理由は、当該多孔体は屈折率が低く光散乱が小さいため、良好な透明性を有するためである。また、当該多孔体は、良好な透明性を確保するため、平均粒径が5〜150nmであることが好ましい。
半導体微粒子は多くの色素を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。例えば半導体微粒子を支持体上に塗設した状態で、その表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。一般に、半導体微粒子の層の厚みが大きいほど単位面積当たりに担持できる色素の量が増えるため光の吸収効率が高くなるが、発生した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。半導体微粒子層の好ましい厚みは素子の用途によって異なるが、典型的には0.1〜100μmである。光電気化学電池として用いる場合は1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることがより好ましい。半導体微粒子は、支持体に塗布した後に粒子同士を密着させるために、100〜800℃の温度で10分〜10時間焼成してもよい。
半導体微粒子の支持体1m当たりの塗布量は0.5〜500g、さらには5〜100gが好ましい。
支持体としてガラスを用いる場合、製膜温度は400〜600℃が好ましい。支持体としてプラスチックを用いる場合、300℃以下で製膜することが好ましく、200℃以下が更に好ましい。200℃以下で製膜する方法としては、前述の湿式法、乾式法、電気泳動法(電析法を含む)の何れでもよいが、好ましくは、湿式法により行うことができる。
半導体微粒子に色素を吸着させるには、色素溶液の中に、よく乾燥した半導体微粒子を長時間浸漬する方法が一般的である。色素溶液は必要に応じて50℃ないし100℃に加熱してもよい。色素の吸着は半導体微粒子の塗布前に行っても塗布後に行ってもよい。また、半導体微粒子と色素を同時に塗布して吸着させても良い。未吸着の色素は洗浄によって除去する。塗布膜の焼成を行う場合は色素の吸着は焼成後に行うことが好ましい。焼成後、塗布膜表面に水が吸着する前にすばやく色素を吸着させるのが特に好ましい。吸着する色素は1種類でもよいし、数種混合して用いてもよい。混合する場合、前記一般式(1)で表される構造を少なくとも1つ有する色素同士を混合してもよいし、米国特許4927721号、同4684537号の各明細書、および特開平7−249790号公報に記載の錯体色素と本発明の色素を混合してもよい。光電変換の波長域をできるだけ広くするように、混合する色素が選ばれる。
色素の使用量は、全体で、支持体1m当たり0.01〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜10ミリモルである。この場合、本発明の色素の使用量は5モル%以上とすることが好ましい。また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1gに対して0.001〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。このような色素量とすることによって、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。また、会合など色素同士の相互作用を低減する目的で無色の化合物を共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としてはカルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばコール酸、ピバロイル酸)等が挙げられる。
色素を吸着した後に、アミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類としては4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらは液体の場合はそのまま用いてもよいし有機溶媒に溶解して用いてもよい。電荷移動層は、色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層であり、受光電極と対極との間に設けられる。代表的な例としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリクスに含浸したいわゆるゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩などが挙げられる。
酸化還元対としては、例えばヨウ素とヨウ化物(例えばヨウ化リチウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム等)との組み合わせ、アルキルビオローゲン(例えばメチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲンテトラフルオロボレート)とその還元体との組み合わせ、ポリヒドロキシベンゼン類(例えばハイドロキノン、ナフトハイドロキノン等)とその酸化体との組み合わせ、2価と3価の鉄錯体(例えば赤血塩と黄血塩)の組み合わせ等が挙げられる。これらのうちヨウ素とヨウ化物との組み合わせが好ましい。これらを溶かす有機溶媒としては、非プロトン性の極性溶媒(例えばアセトニトリル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチルイミダゾリノン、3−メチルオキサゾリジノン等)が好ましい。ゲル電解質のマトリクスに使用されるポリマーとしては、例えばポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオリド等が挙げられる。溶融塩としては、例えばヨウ化リチウムと他の少なくとも1種類のリチウム塩(例えば酢酸リチウム、過塩素酸リチウム等)にポリエチレンオキシドを混合することにより、室温での流動性を付与したもの等が挙げられる。この場合のポリマーの添加量は1〜50質量%である。また、γ−ブチロラクトンを電解液に含んでいてもよく、これによりヨウ化物イオンの拡散効率が高くなり変換効率が向上する。
電解質への添加物として、前述の4−tert−ブチルピリジンのほか、アミノピリジン系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、アミノトリアゾール系化合物及びアミノチアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、アミノトリアジン系化合物、尿素誘導体、アミド化合物、ピリミジン系化合物及び窒素を含まない複素環を加えることができる。
また、効率を向上する為に、電解液の水分を制御する方法をとってもよい。水分を制御する好ましい方法としては、濃度を制御する方法や脱水剤を共存させる方法を挙げることができる。ヨウ素の毒性軽減のために、ヨウ素とシクロデキストリンの包摂化合物の使用してもよく、逆に水分を常時補給する方法を用いてもよい。また環状アミジンを用いてもよく、酸化防止剤、加水分解防止剤、分解防止剤、ヨウ化亜鉛を加えてもよい。
電解質として溶融塩を用いてもよく、好ましい溶融塩としては、イミダゾリウム又はトリアゾリウム型陽イオンを含むイオン性液体、オキサゾリウム系、ピリジニウム系、グアニジウム系およびこれらの組み合わせが挙げられる。これらカチオン系に対して特定のアニオンと組み合わせてもよい。これらの溶融塩に対しては添加物を加えてもよい。液晶性の置換基を持っていてもよい。また、四級アンモニウム塩系の溶融塩を用いてもよい。
これら以外の溶融塩としては、例えば、ヨウ化リチウムと他の少なくとも1種類のリチウム塩(例えば酢酸リチウム、過塩素酸リチウム等)にポリエチレンオキシドを混合することにより、室温での流動性を付与したもの等が挙げられる。
電解質と溶媒からなる電解液にゲル化剤を添加してゲル化させることにより、電解質を擬固体化してもよい。ゲル化剤としては、分子量1000以下の有機化合物、分子量500−5000の範囲のSi含有化合物、特定の酸性化合物と塩基性化合物から出来る有機塩、ソルビトール誘導体、ポリビニルピリジンが挙げられる。
また、マトリックス高分子、架橋型高分子化合物又はモノマー、架橋剤、電解質及び溶媒を高分子中に閉じ込める方法を用いても良い。
マトリックス高分子として好ましくは、含窒素複素環を主鎖あるいは側鎖の繰り返し単位中に持つ高分子及びこれらを求電子性化合物と反応させた架橋体、トリアジン構造を持つ高分子、ウレイド構造をもつ高分子、液晶性化合物を含むもの、エーテル結合を有する高分子、ポリフッ化ビニリデン系、メタクリレート・アクリレート系、熱硬化性樹脂、架橋ポリシロキサン、PVA、ポリアルキレングリールとデキストリンなどの包摂化合物、含酸素または含硫黄高分子を添加した系、天然高分子などが挙げられる。これらにアルカリ膨潤型高分子、一つの高分子内にカチオン部位とヨウ素との電荷移動錯体を形成できる化合物を持った高分子などを添加しても良い。
マトリックスポリマーとして2官能以上のイソシアネートを一方の成分として、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基などの官能基と反応させた架橋ポリマーを含む系を用いても良い。また、ヒドロシリル基と二重結合性化合物による架橋高分子、ポリスルホン酸又はポリカルボン酸などを2価以上の金属イオン化合物と反応させる架橋方法などを用いても良い。
上記擬固体の電解質との組み合わせで好ましく用いることが出来る溶媒としては、特定のりん酸エステル、エチレンカーボネートを含む混合溶媒、特定の比誘電率を持つ溶媒などが挙げられる。固体電解質膜あるいは細孔に液体電解質溶液を保持させても良く、その方法として好ましくは、導電性高分子膜、繊維状固体、フィルタなどの布状固体が挙げられる。
以上の液体電解質及び擬固体電解質の代わりにp型半導体あるいはホール輸送材料などの固体電荷輸送層を用いてもよい。固体電荷輸送層として有機ホール輸送材料を用いても良い。ホール輸送層として好ましくは、ポリチオフェン、ポリアニリン(特開2003−264304)、ポリピロール、及びポリシランなどの導電性高分子、及び2個の環がC、Siなど四面体構造をとる中心元素を共有するスピロ化合物、トリアリールアミンなどの芳香族アミン誘導体、トリフェニレン誘導体、含窒素複素環誘導体、液晶性シアノ誘導体が挙げられる。
酸化還元対は、電子のキャリアになるので、ある程度の濃度が必要である。好ましい濃度としては合計で0.01モル/l以上であり、より好ましくは0.1モル/lであり、特に好ましくは0.3モル/l以上である。この場合の上限には特に制限はないが、通常5モル/l程度である。
対向電極は、光電気化学電池の正極として働くものである。対向電極は、通常前述の導電性支持体と同義であるが、強度が十分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必要でない。対向電極の材料としては、白金、カーボン、導電性ポリマー、などが挙げられる。対極の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。
感光層に光が到達するためには、前述の導電性支持体と対向電極との少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の光電気化学電池においては、導電性支持体が透明であって太陽光を支持体側から入射させるのが好ましい。この場合、対向電極は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。光電気化学電池の対向電極としては、金属もしくは導電性の酸化物を蒸着したガラス、またはプラスチックが好ましく、白金を蒸着したガラスが特に好ましい。光電気化学電池では、構成物の蒸散を防止するために、電池の側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。このようにして得られる本発明の光電気化学電池の特性は、一般的にはAM1.5Gで100mW/cmのとき、開放電圧0.01〜1.5V、短絡電流密度0.001〜20mA/cm、形状因子0.1〜0.9、変換効率0.001〜25%である。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(合成例)
(例示色素A−1の調製)
下記のスキームの方法に従って例示色素A−1を調製した。
Figure 0005557484
(1)化合物A−1aの調製
10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ[b,f]アゼピン50.0gをDMF130mlに室温で攪拌溶解した後に氷冷し、50〜70%水素化ナトリウム18.4gを4分割添加して内温5℃以下で0.5時間攪拌した。そこへ1−ヨードエタン70.3gを20分かけて滴下し、DMF20mlで残量を洗い入れた。その後室温まで昇温し、2.5時間反応を行った。 反応終了後、反応液に水を滴下し、酢酸エチルを加えて抽出を行った。分液後、酢酸エチル層を1N塩酸、重曹水、水の順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで予備乾燥を行った。硫酸マグネシウムを除去後、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン)で精製することで化合物A−1a
41.7gを得た。
(2)化合物A−1bの調製
化合物A−1a 10.0gをDMF180mlに室温で攪拌溶解した後に氷冷した。この溶液へN−ブロモスクシンイミド10.1gを4分割添加し、そのまま1時間攪拌を行った。反応終了後、反応液へチオ硫酸ナトリウム水溶液および酢酸エチルを加えて抽出、分液を行った後、酢酸エチル層へ水を加えて洗浄した。分液後、酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで予備乾燥して、濾過および濃縮を行った。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン)で粗精製後、さらに液体クロマトグラフィーにより精製し、A−1b
6.5gを得た。
(3)化合物A−1cの調製
化合物A−1b 1.21gおよび4−ヘキシル−2−ボロン酸エステル2.25g、炭酸ナトリウム10wt%溶液6mlをDME40mlへ溶解し、系内を窒素置換した。この溶液へテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム234mgを添加し、3.5時間加熱還流を行った。室温に冷却後、酢酸エチルで希釈し、有機層を水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去して粗生成物を得た。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/15)により精製し、A−1c 1.54gを得た。
(4)化合物A−1dの調製
化合物A−1c 0.39gをDMF10mlに溶解し、氷冷した。この溶液へ、DMF1.32mlとオキシ塩化リン0.34mlより予め調整したVilsmeier試薬を滴下し、室温で1時間攪拌した。その後70℃へ昇温し、さらに1時間20分攪拌した。
反応終了後、反応液を14wt%酢酸ナトリウム水溶液中へ添加し、室温で30分攪拌した。この溶液を酢酸エチルで2回抽出し、酢酸エチル抽出液を併せて、水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去し組成生物を得た。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/10)で粗精製後、さらに液体クロマトグラフィーにより精製し、A−1d 0.28gを得た。
(5)化合物A−1の調製
化合物A−1d 0.20gをアセトニトリル3.5mlおよびトルエン3mlに溶解した。この溶液へシアノ酢酸81.5mg、ピペリジン2mlを添加し、70℃で8.5時間加熱攪拌した。冷却後、反応液へジクロロメタンを加え、有機層を希塩酸および水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去して粗生成物を得た。粗生成物をメタノール/ジクロロメタンで再結晶し、粗精製を行った後、カラムクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロメタン→ジクロロメタン/メタノール=10/1)により精製し、A−1
0.12gを得た。
この化合物のUV・VISスペクトルをエタノール溶液として測定したところ、最大吸収波長は437.5nmであった。
(例示色素A−4の調製)
下記のスキームの方法に従って例示色素A−4を調製した。
Figure 0005557484
(6)化合物A−4aの調製
化合物A−1d 0.7gをDMF10mlに室温で攪拌溶解した後に氷冷した。この溶液へN−ブロモスクシンイミド0.265gを分割添加し、そのまま1時間攪拌を行った。反応終了後、反応液へチオ硫酸ナトリウム水溶液および酢酸エチルを加えて抽出、分液を行った後、酢酸エチル層へ水を加えて洗浄した。分液後、酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで予備乾燥して、濾過および濃縮を行った。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン)で粗精製後、さらに液体クロマトグラフィーにより精製し、A−4d
0.51gを得た。
前記段落(0076)で示される鈴木カップリング反応及び前記段落(0079)で示される臭素化反応を繰り返すことにより、A−4bで表されるヘキシル置換チオフェン環が2個結合したアゼピン誘導体、A−4dで表されるヘキシル置換チオフェン環が3個結合したアゼピン誘導体、A−4fで表されるヘキシル置換チオフェン環が4個結合したアゼピン誘導体を合成することができる。
(7)化合物A−4の調製
化合物A−4g 0.21gをアセトニトリル3.5mlおよびベンゼン3ml、DMF0.2mlに溶解した。この溶液へシアノ酢酸42.1mg、ピペリジン0.6ml、酢酸アンモニウム42.5mgを添加し、Dean−Stark装置を付けて33時間加熱還流を行った。冷却後、反応液へジクロロメタンを加え、有機層を希塩酸および水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロメタン→ジクロロメタン/メタノール=20/1)により粗精製した後、液体クロマトグラフィーにより精製し、A−4
0.11gを得た。
この化合物のUV・VISスペクトルをエタノール/THF混合溶液(3:2、体積比)として測定したところ、最大吸収波長は450.5nmであった。
その他の化合物についても同様に調製した。
(実施例1)
(光電変換素子の作製)
図1に示す光電変換素子を以下のようにして作製した。
ガラス基板上に、透明導電膜としてフッ素をドープした酸化スズをスパッタリングにより形成し、これをレーザーでスクライブして、透明導電膜を2つの部分に分割した。このうち一方の導電膜上にアナターゼ型酸化チタン粒子を焼結して受光電極を作製した。その後、受光電極上にシリカ粒子とルチルとを40:60(質量比)で含有する分散液を塗布及び焼結して絶縁性多孔体を形成した。次いで対極として炭素電極を形成させた。
次に、下記表1に記載された増感色素のエタノール溶液(3×10−4モル/l)に48時間浸漬した。増感色素の染着したガラスを4−tert−ブチルピリジンの10%エタノール溶液に30分間浸漬した後、エタノールで洗浄し自然乾燥させた。このようにして得られる感光層の厚さは10μmであり、半導体微粒子の塗布量は20g/mとした。増感色素の塗布量は、増感色素の種類に応じ、適宜0.1〜10ミリモル/mの範囲から選択した。
電解液は、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム(0.5モル/l)、ヨウ素(0.1モル/l)のメトキシプロピオニトリル溶液を用いた。
(増感色素の最大吸収波長の測定)
用いた増感色素の最大吸収波長を測定した。分光光度計(U−4100,日立ハイテク製)によって行い、溶液はエタノールを用いた。
(光電変換効率の測定)
500Wのキセノンランプ(ウシオ製)の光をAM1.5Gフィルター(Oriel社製)およびシャープカットフィルター(KenkoL−42、商品名)を通すことにより紫外線を含まない模擬太陽光を発生させた。この光の強度は89mW/cmであった。作製した光電変換素子にこの光を照射し、発生した電気を電流電圧測定装置(ケースレー238型、商品名)にて測定した。これにより求められた光電気化学電池の変換効率を測定した結果を下記表1〜3に示した。結果は、変換効率が5%以上のものを◎、2%以上5%未満のものを○、0.5%以上2%未満のものを△、0.5%未満のものを×として評価した。
Figure 0005557484
Figure 0005557484
Figure 0005557484
試料番号92として、WO2007/119525に記載の下記の増感色素Aを用いた。
Figure 0005557484
本発明の色素を用いて作製された電気化学電池は、表1に示されているように、特に色素としてA3〜A6、B2〜B6、C3〜C6、D3〜D6、F1、F2、G1、M2〜M4、N1〜N4、O1、P1、Q1、R1〜R4、S1、S2、T2、T3、U1〜U3、V1、Z2〜Z4、α2〜α4、β2〜β4、γ2、γ3を使用した場合は、変換効率は5%以上と高い値を示した。色素としてその他の開示構造のものを使用した場合でも、変換効率は2%以上5%未満と、使用できるレベルであった。
それに対して、試料番号92の比較例は、変換効率は0.5%以上2%未満と、電気化学電池に使用するには不十分であった。
(実施例2)
ガラス基板上にITO膜を作製し、その上にFTO膜を積層することにより、透明導電膜を作製した。その後透明導電膜上に酸化物半導体多孔質膜を形成することにより、透明電極板を得た。そしてその透明電極板を使用して光電気化学電池を作製し、変換効率を測定した。その方法は以下の(1)〜(5)の通りである。
(1)ITO(インジウム・スズ・オキサイド)膜用原料化合物溶液の調製
塩化インジウム(III)四水和物5.58gと塩化スズ(II)二水和物0.23gとをエタノール100mlに溶解して、ITO膜用原料化合物溶液とした。
(2)FTO(フッ素ドープ酸化スズ)膜用原料化合物溶液の調製
塩化スズ(IV)五水和物0.701gをエタノール10mlに溶解し、これにフッ化アンモニウム0.592gの飽和水溶液を加え、この混合物を超音波洗浄機に約20分間かけ、完全に溶解して、FTO膜用原料化合物溶液とした。
(3)ITO/FTO透明導電膜の作製
厚さ2mmの耐熱ガラス板の表面を化学洗浄し、乾燥した後、このガラス板を反応器内に置き、ヒータで加熱した。ヒータの加熱温度が450℃になったところで、(1)で得られたITO膜用原料化合物溶液を、口径0.3mmのノズルから圧力0.06MPaで、ガラス板までの距離を400mmとして、25分間噴霧した。
このITO膜用原料化合物溶液の噴霧後、2分間(この間ガラス基板表面にエタノールを噴霧し続け、基板表面温度の上昇を抑えるようにした。)経過し、ヒータの加熱温度が530℃になった時に、(2)で得られたFTO膜用原料化合物溶液を同様の条件で2分30秒間噴霧した。これにより、耐熱ガラス板上に厚さ530nmのITO膜、厚さ170nmのFTO膜が順次形成された透明電極板が得られた。
比較のために、厚さ2mmの耐熱ガラス板上に同様に、厚さ530nmのITO膜のみを成膜した透明電極板と、同じく厚さ180nmのFTO膜のみを成膜した透明電極板とをそれぞれ作製した。
これら3種の透明電極板を加熱炉にて、450℃で2時間加熱した。
(4)光電気化学電池の作製
次に、上記3種の透明電極板を用いて、特許第4260494号中の図2に示した構造の光電気化学電池を作製した。酸化物半導体多孔質膜15の形成は、平均粒径約230nmの酸化チタン微粒子をアセトニトリルに分散してペーストとし、これを透明電極11上にバーコート法により厚さ15μmに塗布し、乾燥後450℃で1時間焼成して行い、この酸化物半導体多孔質膜15に表2記載の色素を担持した。
さらに、対極16には、ガラス板上にITO膜とFTO膜とを積層した導電性基板を使用し、電解質層17には、ヨウ素/ヨウ化物の非水溶液からなる電解液を用いた。光電気化学電池の平面寸法は25mm×25mmとした。
(5)光電気化学電池の評価
この光電気化学電池について、人工太陽光(AM1.5)を照射し、その発電効率を求めた。その結果を表4に示す。結果は、変換効率が5%以上のものを◎、2%以上5%未満のものを○、0.5%以上2%未満のものを△、0.5%未満のものを×として表示した。
増感色素Aを用いた試料No.11〜13では変換効率が低いのに対し、本発明の例示色素を使用した試料No.1〜9では良好な結果を示すことがわかった。透明電極板として、ITO膜とFTO膜とを積層したものを用いた光電気化学電池では、ITO膜のみもしくはFTO膜のみを成膜したものを用いた場合に比べ特に変換効率が高く、本発明の色素でその効果が高いことがわかった。
Figure 0005557484
(実施例3)
FTO膜上に集電電極を配し、光電気化学電池を作製し、変換効率を評価した。評価は以下の通り、試験セル(i)と試験セル(iv)の2種類とした。
(試験セル(i))
100mm×100mm×2mmの耐熱ガラス板の表面を化学洗浄し、乾燥した後、このガラス板を反応器内に置き、ヒータで加熱した後、実施例2で使用したFTO(フッ素ドープ酸化スズ)膜用原料化合物溶液を、口径0.3mmのノズルから圧力0.06MPaで、ガラス板までの距離を400mmとして、25分間噴霧し、FTO膜付きガラス基板を用意した。その表面に、エッチング法により深さ5μmの溝を格子回路パターン状に形成した。フォトリソグラフでパターン形成した後に、フッ酸を用いてエッチングを行った。これに、めっき形成を可能とするためにスパッタ法により金属導電層(シード層)を形成し、更にアディティブめっきにより金属配線層3を形成した。金属配線層3は、透明基板2表面から凸レンズ状に3μm高さまで形成した。回路幅は60μmとした。この上から、遮蔽層5としてFTO膜を400nmの厚さでSPD法により形成して、電極基板(i)とした。なお、電極基板(i)の断面形状は、特開2004−146425中の図2に示すものとなっていた。
電極基板(i)上に平均粒径25nmの酸化チタン分散液を塗布・乾燥し、450℃で1時間加熱・焼結した。これを表3に示す色素のエタノール溶液中に40分間浸漬して色素担持した。50μm厚の熱可塑性ポリオレフィン樹脂シートを介して白金スパッタFTO基板と対向して配置し、樹脂シート部を熱溶融させて両極板を固定した。
なおあらかじめ白金スパッタ極側に開けておいた電解液の注液口から、0.5Mのヨウ化塩と0.05Mのヨウ素とを主成分に含むメトキシアセトニトリル溶液を注液し、電極間に満たした。さらに周辺部及び電解液注液口をエポキシ系封止樹脂を用いて本封止し、集電端子部に銀ペーストを塗布して試験セル(i)とした。AM1.5の疑似太陽光により、試験セル(i)の光電変換特性を評価した。その結果を表3に示した。
(試験セル(iv))
試験セル(i)と同様の方法で100×100mmのFTO膜付きガラス基板を用意した。そのFTOガラス基板上に、アディティブめっき法により金属配線層3(金回路)を形成した。金属配線層3(金回路)は基板表面に格子状に形成し、回路幅50μm、回路厚5μmとした。この表面に厚さ300nmのFTO膜を遮蔽層5としてSPD法により形成して試験セル(iv)とした。電極基板(iv)の断面をSEM−EDXを用いて確認したところ、配線底部でめっきレジストの裾引きに起因すると思われる潜り込みがあり、影部分にはFTOが被覆されていなかった。
電極基板(iv)を用い、試験セル(i)と同様に、試験セル(iv)を作製した。AM1.5の疑似太陽光により試験セル(iv)の光電変換特性を評価し、結果を表5に示した。結果は、変換効率が5%以上のものを◎、2%以上5%未満のものを○、0.5%以上2%未満のものを△、0.5%未満のものを×として表示した。
Figure 0005557484
表5より、本発明の色素を用いた場合は、試験セル(i)の場合の変換効率は5%以上と、高い値を示した。試験セル(iv)を用いた場合でも、増感色素Aを用いて試験セル(i)を用いた場合とほぼ同等の値を示した。
(実施例4)
ペルオキソチタン酸及び酸化チタン微粒子を生成する方法、並びにそれを用いて酸化物半導体膜を作製する方法について試験を行い、光電気化学電池を作製し、評価した。
(光電池セル(A))
(1)酸化物半導体膜形成用塗布液(A)の調製
5gの水素化チタンを1リットルの純水に懸濁し、5質量%の過酸化水素液400gを30分かけて添加し、ついで80℃に加熱して溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液の全量から90容積%を分取し、濃アンモニア水を添加してpH9に調整し、オートクレーブに入れ、250℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行ってチタニアコロイド粒子(A)を調製した。得られたチタニアコロイド粒子は、X線回折により結晶性の高いアナターゼ型酸化チタンであった。
次に、上記で得られたチタニアコロイド粒子(A)を10質量%まで濃縮し、前記ペルオキソチタン酸溶液を混合し、この混合液中のチタンをTiO換算し、TiO質量の30質量%となるように膜形成助剤としてヒドロキシプロピルセルロースを添加して半導体膜形成用塗布液を調製した。
(2)酸化物半導体膜(A)の作製
次いで、フッ素ドープした酸化スズが電極層として形成された透明ガラス基板上に前記塗布液を塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cmの紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、塗膜を硬化させた。塗膜を300℃で30分間加熱してヒドロキシプロピルセルロースの分解およびアニーリングを行って酸化物半導体膜(A)をガラス基板に形成した。
(3)酸化物半導体膜(A)への色素の吸着
次に、分光増感色素として本発明の色素の濃度3×10−4モル/リットルのエタノール溶液を調製した。この色素溶液を100rpmスピナーで、金属酸化物半導体膜(A)上へ塗布して乾燥した。この塗布および乾燥工程を5回行った。
(4)電解質溶液の調製
アセトニトリルと炭酸エチレンとの体積比が1:5の混合溶媒に、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドを0.46モル/リットル、ヨウ素を0.07モル/リットルの濃度となるように溶解して電解質溶液を調製した。
(5)光電気セル(A)の作製
(2)で作製した、色素を吸着させた酸化物半導体膜(A)が形成されたガラス基板を一方の電極とし、他方の電極として、フッ素ドープした酸化スズを電極として形成しその上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に(4)の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(A)を作製した。
(6)光電気セル(A)の評価
光電気セル(A)は、ソーラーシュミレーターで100W/mの強度の光を照射して、η(変換効率)を測定し、その結果を表6に示した。
(光電池セル(B))
紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、膜を硬化させた後、Arガスのイオン照射(日新電気製:イオン注入装置、200eVで10時間照射)を行った以外は酸化物半導体膜(A)と同様にして酸化物半導体膜(B)を形成した。
酸化物半導体膜(A)と同様に、酸化物半導体膜(B)に色素の吸着を行った。
その後実施例1と同様の方法で光電気セル(B)を作成し、ηを測定した。その結果を表6に示した。
(光電池セル(C))
18.3gの4塩化チタンを純水で希釈して、TiO換算で1.0質量%含有する水溶液を得た。この水溶液を撹拌しながら、15質量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄し、TiO換算で、10.2質量%の水和酸化チタンゲルのケーキを得た。このケーキと5質量%過酸化水素液400gを混合し、ついで80℃に加熱して溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液全量から90体積%を分取し、これに濃アンモニア水を添加してpH9に調整し、オートクレーブに入れ、250℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行ってチタニアコロイド粒子(C)を調製した。
次に、上記で得られたペルオキソチタン酸溶液とチタニアコロイド粒子(C)を使用して酸化物半導体膜(A)と同様にして酸化物半導体膜(C)を形成し、金属酸化物半導体膜(A)と同様にして、分光増感色素として本発明の色素の吸着を行った。
その後光電気セル(A)と同様の方法で光電気セル(C)を作成し、ηを測定した。その結果を表6に示した。
(光電池セル(D))
18.3gの4塩化チタンを純水で希釈してTiO換算で1.0質量%含有する水溶液を得た。これを撹拌しながら、15質量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄した後、純水に懸濁してTiOとして0.6質量%の水和酸化チタンゲルのスラリーとし、これに塩酸を加えてpH2とした後、オートクレーブに入れ、180℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行ってチタニアコロイド粒子(D)を調製した。
次に、チタニアコロイド粒子(D)を10質量%まで濃縮し、これに、TiOに換算して、30質量%となるように膜形成助剤としてヒドロキシプロピルセルロースを添加して、半導体膜形成用塗布液を調製した。次いで、フッ素ドープした酸化スズが電極層として形成された透明ガラス基板上に、前記塗布液を塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cmの紫外線を照射し、膜を硬化させた。さらに、300℃で30分間加熱してヒドロキシプロピルセルロースの分解およびアニーリングを行い、酸化物半導体膜(D)を形成した。
次に、酸化物半導体膜(A)と同様にして分光増感色素として、本発明の色素の吸着を行った。 その後、光電気セル(A)と同様の方法で光電気セル(D)を作成し、ηを測定した。結果を表6に示した。結果は、変換効率が5%以上のものを◎、2%以上5%未満のものを○、0.5%以上2%未満のものを△、0.5%未満のものを×として表示した。
Figure 0005557484
表6より、本発明の色素の場合には、試験セル(A)〜(C)を使用した場合には特に変換効率が高いことがわかった。また試験セル(D)を使用した場合でも、本発明の色素を用いると、比較例の場合より高い変換効率を示した。
(実施例5)
方法を変えて酸化チタンの調製又は合成を行い、得られた酸化チタンから酸化物半導体膜を作製し、光電気化学電池とし、その評価を行った。
(1)熱処理法による酸化チタンの調製
市販のアナターゼ型酸化チタン(石原産業(株)製、商品名ST−01)を用い、これを約900℃に加熱してブルーカイト型の酸化チタンに変換し、さらに約1,200℃に加熱してルチル型の酸化チタンとした。得られたブルーカイト型酸化チタンを酸化チタン1とした。
(2)湿式法による酸化チタンの合成
(酸化チタン2(ブルーカイト型))
蒸留水954mlを還流冷却器付きの反応槽に装入し、95℃に加温する。撹拌速度を約200rpmに保ちながら、この蒸留水に四塩化チタン(Ti含有量:16.3質量%、比重1.59、純度99.9%)水溶液46mlを約5.0ml/minの速度で反応槽に滴下した。このとき、反応液の温度が下がらないように注意した。その結果、四塩化チタン濃度が0.25mol/リットル(酸化チタン換算2質量%)であった。反応槽中では反応液が滴下直後から、白濁し始めたがそのままの温度で保持を続け、滴下終了後さらに昇温し沸点付近(104℃)まで加熱し、この状態で60分間保持して完全に反応を終了した。
反応により、得られたゾルを濾過し、次いで60℃の真空乾燥器を用いて粉末とした。この粉末をX線回折法により定量分析した結果、(ブルーカイト型121面のピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0.38、(ルチル型のメインピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0.05であった。これらから求めると酸化チタンは、ブルーカイト型が約70.0質量%、ルチル型が約1.2質量%、アナターゼ型が約28.8質量%の結晶性であった。また、透過型電子顕微鏡でこの微粒子を観察したところ、1次粒子の平均粒径は0.015μmであった。
(酸化チタン3(ブルーカイト型))
三塩化チタン水溶液(Ti含有量:28質量%、比重1.5、純度99.9%)を蒸留水で希釈し、チタン濃度換算で0.25モル/Lの溶液とした。このとき、液温が上昇しないよう氷冷して、50℃以下に保った。次に、この溶液を還流冷却器付きの反応槽に500ml投入し、85℃に加温しながらオゾンガス発生装置から純度80%のオゾンガスを1L/minでバブリングし、酸化反応を行なった。この状態で2時間保持し、完全に反応を終了した。得られたゾルをろ過、真空乾燥し、粉末とした。この粉末をX線回折法により定量分析した結果、(ブルーカイト型121面のピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0.85、(ルチル型のメインピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0であった。これらから求めると二酸化チタンは、ブルーカイト型が約98質量%、ルチル型が0質量%、アナターゼ型が0質量%であり、約2%は無定形であった。また、透過型電子顕微鏡でこの微粒子を観察したところ、1次粒子の平均粒径は0.05μmであった。
(色素増感型光電変換素子の作製および評価)
上記の酸化チタン1〜3を半導体として特開2000−340269の図1に示す構成を有する光電変換素子を次のように作製した。
ガラス基板上にフッ素ドープの酸化スズをコートし、導電性透明電極とした。電極面上にそれぞれの酸化チタン粒子を原料としたペーストを作成し、バーコート法で厚さ50μmに塗布した後、500℃で焼成して膜厚約20μmの薄層を形成した。次にルテニウム錯体であるRuL (SCN) (L=2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシレート)の3×10−4モル濃度のエタノール溶液を調製し、これに上記の酸化チタンの薄層を形成したガラス基板を浸漬し、12時間室温で保持した。その結果、酸化チタンの薄層上に上記錯体が付着された。
電解液としてテトラプロピルアンモニウムのヨウ素塩とヨウ化リチウムのアセトニトリル溶液を用い、白金を対極として特開2000−340269の図1に示す構成を有する光電変換素子を作製した。光電変換は160wの高圧水銀ランプの光(フィルターで赤外線部をカット)を上記の素子に照射し、その際の変換効率を測定した。結果を表7に示す。結果は、変換効率が5%以上のものを◎、2%以上5%未満のものを○、0.5%以上2%未満のものを△、0.5%未満のものを×として表示した。
Figure 0005557484
表7より、本発明の色素は酸化チタンを変更しても変換効率が高いことがわかった。
(実施例6)
粒径の異なる酸化チタンを用いて半導体電極として、光電気化学電池を作製し、その特性を評価した。
[ペーストの調製]
まず光電極を構成する半導体電極の半導体層又は光散乱層を形成するためのペーストを以下の手順で調製した。
(ペースト1)
球形のTiO粒子(アナターゼ型、平均粒径;25nm、以下、球形TiO粒子1という)とを硝酸溶液に入れて撹拌することによりチタニアスラリーを調製した。次に、チタニアスラリーに増粘剤としてセルロース系バインダーを加え、混練してペーストを調製した。
(ペースト2)
球形TiO粒子1と、球形のTiO粒子(アナターゼ型、平均粒径;200nm、以下、球形TiO粒子2という)とを硝酸溶液に入れて撹拌することによりチタニアスラリーを調製した。次に、チタニアスラリーに増粘剤としてセルロース系バインダーを加え、混練してペースト(TiO粒子1の質量:TiO粒子2の質量=30:70)を調製した。
(ペースト3)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ型、直径;100nm、アスペクト比;5、以下、棒状TiO粒子1という)を混合し、棒状TiO粒子1の質量:ペースト1の質量=10:90のペーストを調製した。
(ペースト4)
ペースト1に、棒状TiO粒子1を混合し、棒状TiO粒子1の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト5)
ペースト1に、棒状TiO粒子1を混合し、棒状TiO粒子1の質量:ペースト1の質量=50:50のペーストを調製した。
(ペースト6)
ペースト1に、板状のマイカ粒子(直径;100nm、アスペクト比;6、以下、板状マイカ粒子1という)を混合し、板状マイカ粒子1の質量:ペースト1の質量=20:80のペーストを調製した。
(ペースト7)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;30nm、アスペクト比;6.3、以下、棒状TiO粒子2という)を混合し、棒状TiO2粒子2の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト8)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;50nm、アスペクト比;6.1、以下、棒状TiO粒子3という)を混合し、棒状TiO粒子3の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト9)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;75nm、アスペクト比;5.8、以下、棒状TiO粒子4という)を混合し、棒状TiO粒子4の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト10)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;130nm、アスペクト比;5.2、以下、棒状TiO粒子5という)を混合し、棒状TiO粒子5の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト11)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;180nm、アスペクト比;5、以下、棒状TiO粒子6という)を混合し、棒状TiO粒子6の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト12)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;240nm、アスペクト比;5、以下、棒状TiO粒子7という)を混合し、棒状TiO粒子7の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト13)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;110nm、アスペクト比;4.1、以下、棒状TiO粒子8という)を混合し、棒状TiO粒子8の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト14)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;105nm、アスペクト比;3.4、以下、棒状TiO粒子9という)を混合し、棒状TiO粒子9の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(光電気化学電池1)
以下に示す手順により、特開2002−289274記載の図5に示した光電極12と同様の構成を有する光電極を作製し、更に、光電極を用いて、当該光電極以外は色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する10×10mmのスケールの色素増感型太陽電池1を作製した。
ガラス基板上にフッ素ドープされたSnO導電膜(膜厚;500nm)を形成した透明電極を準備した。そして、このSnO導電膜上に、上記のペースト2をスクリーン印刷し、次いで乾燥させた。その後、空気中、450℃の条件のもとで焼成した。更に、ペースト4を用いてこのスクリーン印刷と焼成とを繰り返すことにより、SnO導電膜上に図5に示す半導体電極2と同様の構成の半導体電極(受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;6μm、光散乱層の層厚;4μm、光散乱層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;30質量%)を形成し、増感色素を含有していない光電極を作製した。
次に、半導体電極に色素を以下のようにして吸着させた。まずマグネシウムエトキシドで脱水した無水エタノールを溶媒として、これに本発明の色素を、その濃度が3×10−4mol/Lとなるように溶解し、色素溶液を調製した。次に、この溶液に半導体電極を浸漬し、これにより、半導体電極に色素が約1.5×10−7mol/cm吸着し、光電極10を完成させた。
次に、対極として上記の光電極と同様の形状と大きさを有する白金電極(Pt薄膜の厚さ;100nm)、電解質Eとして、ヨウ素及びヨウ化リチウムを含むヨウ素系レドックス溶液を調製した。更に、半導体電極の大きさに合わせた形状を有するデュポン社製のスペーサーS(商品名:「サーリン」)を準備し、特開2002−289274記載の図3に示すように、光電極10と対極CEとスペーサーSを介して対向させ、内部に上記の電解質を充填して光電気化学電池1を完成させた。
(光電気化学電池2)
半導体電極の製造を以下のようにして行ったこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により特開2002−289274記載の図1に示した光電極10及び特開2002−289274記載の図3に示した色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する光電極及び光電気化学電池2を作製した。
ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用した。そして、SnO導電膜上に、ペースト2をスクリーン印刷し、次いで乾燥させた。その後、空気中、450℃の条件のもとで焼成し、半導体層を形成した。
ペースト3を光散乱層の最内部の層形成用ペーストとして使用した。また、ペースト5を光散乱層の最外部の層形成用ペーストとして使用した。そして、色素増感太陽電池1と同様にして半導体層上に光散乱層を形成した。
そして、SnO導電膜上に、特開2002−289274記載の図1に示す半導体電極2と同様の構成の半導体電極(受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;3μm、最内部の層の層厚;4μm、最内部の層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;10質量%、最外部の層の層厚;3μm、最内部の層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;50質量%)を形成し、増感色素を含有していない光電極を作製した。光電気化学電池1と同様に、光電極と対極CEとスペーサーSを介して対向させ、内部に上記の電解質を充填して光電気化学電池2を完成させた。
(光電気化学電池3)
半導体電極の製造に際して、ペースト1を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト4を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により図5に示した光電極10及び特開2002−289274記載の図3に示した光電気化学電池20と同様の構成を有する光電極及び光電気化学電池3を作製した。なお、半導体電極は、受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;5μm、光散乱層の層厚;5μm、光散乱層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;30質量%であった。
(光電気化学電池4)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト6を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により図5に示した光電極10及び特開2002−289274記載の図3に示した光電気化学電池20と同様の構成を有する光電極及び光電気化学電池4を作製した。なお、半導体電極は、受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;6.5μm、光散乱層の層厚;3.5μm、光散乱層に含有される板状マイカ粒子1の含有率;20質量%であった。
(光電気化学電池5)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト8を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により光電極及び光電気化学電池5を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子3の含有率;30質量%であった。
(光電気化学電池6)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト9を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により光電極及び光電気化学電池6を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子4の含有率;30質量%であった。
(光電気化学電池7)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト10を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により光電極及び光電気化学電池7を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子5の含有率;30質量%であった。
(光電気化学電池8)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト11を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により光電極及び光電気化学電池8を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子6の含有率;30質量%であった。
(光電気化学電池9)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト13を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により光電極及び光電気化学電池9を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子8の含有率;30質量%であった。
(光電気化学電池10)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト14を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により光電極及び光電気化学電池10を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子9の含有率;30質量%であった。
(光電気化学電池11)
半導体電極の製造に際して、ペースト2のみを用いて半導体層のみからなる半導体電極(受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、)を作製したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により光電極及び比較光電気化学電池1を作製した。
(電気化学電池12)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト7を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により光電極及び比較光電気化学電池2を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子2の含有率;30質量%であった。
[電池特性試験]
電池特性試験を行ない、光電気化学電池1〜12について変換効率ηを測定した。電池特性試験は、ソーラーシミュレータ(WACOM製、WXS−85H)を用い、AM1.5フィルターを通したキセノンランプから1000W/mの疑似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、エネルギー変換効率(η/%)を求めた。その結果を表8に示す。結果は、変換効率が5%以上のものを◎、2%以上5%未満のものを○、0.5%以上2%未満のものを△、0.5%未満のものを×として表示した。
Figure 0005557484
表8の通り、本発明の色素は変換効率が高いことがわかった。
(実施例7)
金属酸化物微粒子に金属アルコキシドを加えスラリー状としたものを導電性基板に塗布し、その後、UVオゾン照射、UV照射又は乾燥を行い、電極を作製した。その後、光電気化学電池を作製し、変換効率を測定した。
(金属酸化物微粒子)
金属酸化物微粒子としては、酸化チタンを用いた。酸化チタンは、質量比で、30%ルチル型及び70%アナターゼ型、平均粒径25nmのP25粉末(Degussa社製、商品名)を用いた。
(金属酸化物微粒子粉末の前処理)
金属酸化物微粒子をあらかじめ熱処理することで表面の有機物と水分を除去した。酸化チタン微粒子の場合は450℃のオーブンで大気下、30分間加熱した。
(金属酸化物微粒子に含まれる水分量の測定)
温度26℃、湿度72%の環境に保存しておいた酸化チタン、P25粉末(Degussa社製、商品名)に含まれる水分量を、熱重量測定における重量減少、及び300℃に加熱したときに脱着した水分量のカールフィッシャー滴定により定量した。
酸化チタン、P25粉末(Degussa社製、商品名)を300℃で加熱したときに脱着する水分量をカールフィッシャー滴定によって定量したところ、0.1033gの酸化チタン微粉末中に0.253mgの水が含まれていた。すなわち、酸化チタン微粉末は約2.5wt%の水分を含んでいたため、金属酸化物微粒子粉末は金属アルコキシドとの混合前に450℃のオーブンで30分間熱処理し、冷却後デシケーター中に保存して用いた。
(金属アルコキシドペーストの調製)
金属酸化物微粒子を結合する役割をする金属アルコキシドとしては、チタン原料としてはチタン(IV)テトライソプロポキシド(TTIP)、ジルコニウム原料としてはジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシド、ニオブ原料としてはニオブ(V)ペンタエトキシド(全てAldrich社製)をそれぞれ用いた。
金属酸化物微粒子と金属アルコキシドのモル濃度比は、金属アルコキシドの加水分解によって生じるアモルファス層が過度に厚くならず、かつ粒子同士の結合が十分行えるように、金属酸化物微粒子径に応じて適宜調節した。なお、金属アルコキシドはすべて、0.1Mのエタノール溶液とした。酸化チタン微粒子とチタン(IV)テトライソプロポキシド(TTIP)とを混合する場合には、酸化チタン微粒子1gに対し、3.55gの0.1M TTIP溶液を混合した。このとき、得られたペースト中の酸化チタン濃度は約22質量%となり、塗布に適当な粘度となった。また、このときの酸化チタンとTTIPとエタノールは、質量比で1:0.127:3.42、モル比で1:0.036:5.92であった。
同様に、酸化チタン微粒子とTTIP以外のアルコキシドの混合ペーストについても微粒子濃度が22質量%となるように調製した。酸化亜鉛及び酸化スズ微粒子を用いたペーストでは16質量%とした。酸化亜鉛及び酸化スズの場合は、金属酸化物微粒子1gに対して、金属アルコキシド溶液5.25gの比で混合した。
金属酸化物微粒子と金属アルコキシド溶液は、密閉容器中においてマグネチックスターラーによって2時間攪拌して均一なペーストを得た。導電性基板へのペーストの塗布方法は、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法などを用いることが可能であり、適当なペースト粘度は塗布方法によって適宜選択した。ここでは簡便にガラス棒で塗布する方法(ドクターブレード法に類似)を用いた。この場合、適当なペースト粘度を与える金属酸化物微粒子の濃度は概ね5〜30質量%の範囲となった。
金属アルコキシドの分解によって生成するアモルファス金属酸化物のレイヤー厚さは本実施例では0.1〜0.6nm程度の範囲にある。概ね0.05〜1.3nm程度が本手法による室温製膜に適切な範囲となっていた。
(導電性基板上へのペーストの塗布と風乾処理)
スズドープ酸化インジウム(ITO)導電膜付きポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基板(20Ω/cm)又はフッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電膜付きガラス基板(10Ω/cm)に、スペーサーとして粘着テープ2枚を一定間隔で平行に貼り付け、上記の方法に従って調製した各ペーストを、ガラス棒を用いて均一に塗布した。
ペーストを塗布後、色素吸着前に、UVオゾン処理、UV照射処理、又は乾燥処理の有無について条件を変えて多孔質膜を作製した。
(乾燥処理)
導電性基板へ塗布した後の膜を大気中室温で2分程度で風乾した。この過程でペースト中の金属アルコキシドが大気中の水分によって加水分解を受け、Tiアルコキシド、Zrアルコキシド、Nbアルコキシドからそれぞれアモルファスの酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブが形成された。
生成したアモルファス金属酸化物が、金属酸化物微粒子同士及び膜と導電性基板を接着する役割を果たすため、風乾するのみで機械的強度と付着性に優れた多孔質膜が得られた。
(UVオゾン処理)
UVオゾン処理には日本レーザー電子社製のNL−UV253 UVオゾンクリーナーを用いた。UV光源には185nmと254nmに輝線を持つ4.5W水銀ランプ3個を備えており、試料を光源から約6.5センチの距離に水平に配置した。チャンバー中に酸素気流を導入することでオゾンが発生する。本実施例においてはこのUVオゾン処理を2時間行なった。なお、このUVオゾン処理によるITO膜及びFTO膜の導電性の低下は全く見られなかった。
(UV処理)
チャンバー中を窒素置換して処理を行う以外は同様に、前記UVオゾン処理と同様に、2時間処理を行った。このUV処理によるITO膜及びFTO膜の導電性の低下はまったく見られなかった。
(色素吸着)
増感色素には本発明の色素を用い、0.5mMのエタノール溶液を調製した。本実施例では上記のプロセスで作製した多孔質膜を100℃のオーブンで1時間乾燥した後に増感色素の溶液に浸漬し、そのまま室温で50分間放置して酸化チタン表面に増感色素を吸着した。増感色素吸着後の試料はエタノールで洗浄し、風乾した。
(光電気化学電池の作製と電池特性評価)
色素吸着後の多孔質膜が形成された導電性基板を光電極とし、これと白金微粒子をスパッタリングにより修飾したITO/PETフィルム又はFTO/ガラス対極を対向させて、光電気化学電池を試作した。上記光電極の実効面積は約0.2cmとした。電解質溶液には0.5MのLiI,0.05MのI,0.5Mのt−ブチルピリジンを含む3−メトキシプロピオニトリルを用い、毛管現象によって両電極間のギャップに導入した。
電池性能の評価は、一定フォトン数(1016cm−2)照射下での光電流作用スペクトル測定及びAM1.5擬似太陽光(100mW/cm)照射下でのI−V測定により行なった。これらの測定には分光計器社製のCEP−2000型分光感度測定装置を用いた。
得られた出力特性値を表9にまとめた。結果は、変換効率が3%以上のものを◎、2%以上5%未満のものを○、0.5%以上2%未満のものを△、0.5%未満のものを×として表示した。
Figure 0005557484
表9において、「UVオゾン」、「UV」、「乾燥」の欄はそれぞれ、多孔質膜の形成後、増感色素吸着前における、UVオゾン処理、UV照射処理、乾燥処理の有無を表す。処理したものが「○」であり、処理なしのものが「×」である。
表9の「TiOの前処理の欄は、酸化チタン微粒子の前処理(450℃のオーブンで30分間熱処理)の有無を示す。試料6、14、22は、高TTIP濃度(酸化チタン:TTIPのモル比が1:0.356)のペーストを用いた試料を表す。他の試料(試料1〜5,7〜13,23,24)は全て酸化チタン:TTIP=1:0.0356のペーストを用いている。
表9に示す結果から、本発明の色素を使用した場合には、多孔質膜の形成後、増感色素吸着前における、UVオゾン処理、UV照射処理、乾燥処理の有無にかかわらず、光電気化学電池の変換効率が高いことがわかった。
(実施例8)
溶媒としてアセトニトリルを用い、ヨウ化リチウム0.1mol/l、ヨウ素0.05mol/l、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム0.62mol/lを溶解した電解質溶液を調製した。ここに下記に示すNo.1〜No.8のベンズイミダゾール系化合物をそれぞれ濃度0.5mol/lになるように別々に添加し、溶解した。
Figure 0005557484
No.1〜No.8のベンズイミダゾール系化合物電解液を、導電性ガラスに本発明の色素を担持した多孔質酸化チタン半導体薄膜(厚さ15μm)に滴下した。ここにポリエチレンフィルム製のフレーム型スペーサー(厚さ25μm)をのせ、白金対電極でこれを覆い、光電変換素子を作製した。
得られた光電変換素子に、Xeランプを光源として強度100mW/cmの光を照射した。表10に得られた開放電圧と光電変換効率を示した。開放電圧は、7.0V以上のものを◎、6.5V以上7.0V未満のものを○、6.0V以上6.5V未満のものを△、6.0V未満のものを×として表示した。変換効率が3%以上のものを◎、2%以上5%未満のものを○、0.5%以上2%未満のものを△、0.5%未満のものを×として表示した。
なお、表10には、ベンズイミダゾール系化合物を加えていない電解液を用いた光電変換素子の結果も示した。
Figure 0005557484
表10の結果から、本発明の色素は変換効率が高いことがわかる。
(実施例9)
(光電気化学電池1)
以下に示す手順により、特開2004−152613記載の図1に示した光電極10と同様の構成を有する光電極(ただし、半導体電極2を2層構造とした。)を作製し、更に、この光電極を用いた以外は特開2004−152613記載の図1に示した色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する光電気化学電池(半導体電極2の受光面F2の面積:1cm)を作製した。なお、2層構造を有する半導体電極2の各層について、透明電極1に近い側に配置される層を「第1の層」、多孔体層PSに近い側に配置される層を「第2の層」という。
まず、平均粒子径25nmP25粉末(Degussa社製、商品名)と、これと粒子径の異なる酸化チタン粒子、P200粉末(平均粒子径:200nm、Degussa社製、商品名)とを用い、P25とP200の合計の含有量が15質量%で、P25とP200との質量比が、P25:P200=30:70となるように、これらにアセチルアセトン、イオン交換水、界面活性剤(東京化成社製、商品名;「Triton−X」)を加え、混練して第2の層形成用のスラリー(以下、「スラリー1」とする)を調製した。
次に、P200を使用せず、P25のみを使用したこと以外は前述のスラリー1と同様の調製手順により第1の層形成用のスラリー(P1の含有量;15質量%、以下、「スラリー2」とする)を調製した。
一方、ガラス基板(透明導電性ガラス)上にフッ素ドープされたSnO導電膜(膜厚:700nm)を形成した透明電極(厚さ:1.1mm)を準備した。そして、このSnO導電膜上に、上述のスラリー2をバーコーダで塗布し、次いで乾燥させた。その後、大気中、450℃で30分間焼成した。このようにして、透明電極上に、半導体電極2の第1の層を形成した。
更に、スラリー1を用いて、上述と同様の塗布と焼成とを繰り返すことにより、第1の層上に、第2の層を形成した。このようにして、SnO導電膜上に半導体電極2(受光面の面積;1.0cm、第1層と第2層の合計厚さ:10μm(第1の層の厚さ:3μm、第2の層の厚さ:7μm))を形成し、増感色素を含有していない状態の光電極10を作製した。
次に、増感色素として本発明の色素のエタノール溶液(増感色素の濃度;3×10−4mol/L)を調製した。この溶液に前記光電極10を浸漬し、80℃の温度条件のもとで20時間放置した。これにより、半導体電極の内部に増感色素を約1.0×10−7mol/cm吸着させた。その後、開放電圧Vocを向上させるために、ルテニウム錯体吸着後の半導体電極を4−tert−ブチルピリジンのアセトニトリル溶液に15分浸漬した後、25℃に保持した窒素気流中において乾燥させ、上記光電極10を完成させた。
次に、上記の光電極と同様の形状と大きさを有する対極CEを作製した。先ず、透明導電性ガラス上に、塩化白金酸六水和物のイソプロパノール溶液を滴下し、大気中で乾燥した後に450℃で30分焼成処理することにより、白金焼結対極CEを得た。なお、この対極CEには予め電解質Eの注入用の孔(直径1mm)を設けておいた。
次に、溶媒となるメトキシアセトニトリルに、ヨウ化亜鉛と、ヨウ化−1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムと、ヨウ素と、4−tert−ブチルピリジンとを溶解させて液状電解質(ヨウ化亜鉛の濃度:10mmol/L、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウムの濃度:0.6mol/L、ヨウ素の濃度:0.05mol/L、4−tert−ブチルピリジン濃度:1mol/L)を調製した。
次に、半導体電極の大きさに合わせた形状を有する三井デュポンポリケミカル社製のスペーサS(商品名:「ハイミラン」,エチレン/メタクリル酸ランダム共重合体アイオノマーフィルム)を準備し、特開2004−152613記載の図1に示すように、光電極と対極とをスペーサを介して対向させ、それぞれを熱溶着により張り合わせて電池の筐体(電解質未充填)を得た。
次に、液状電解質を対極の孔から筐体内に注入した後、孔をスペーサと同素材の部材で塞ぎ、更に対極の孔にこの部材を熱溶着させて孔を封止し、光電気化学電池1を完成させた。
(光電気化学電池2)
液状電解質におけるヨウ化亜鉛の濃度を50mmol/Lとしたこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順及び条件で光電気化学電池2を作製した。
(光電気化学電池3)
液状電解質におけるヨウ化亜鉛の代わりにヨウ化リチウムを添加し、液状電解質におけるヨウ化リチウムの濃度を20mmol/Lとしたこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順及び条件で光電気化学電池3を作製した。
(電気化学電池4)
液状電解質におけるヨウ化亜鉛の代わりにヨウ化リチウムを添加し、液状電解質におけるヨウ化リチウムの濃度を100mmol/Lとしたこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順及び条件で光電気化学電池4を作製した。
(電池特性評価試験)
以下の手順により、光電気化学電池1〜4について、光電変換効率(η(%))を測定した。
電池特性評価試験は、ソーラーシミュレータ(ワコム製、商品名;「WXS−85−H型」)を用い、AMフィルター(AM1.5)を通したキセノンランプ光源からの疑似太陽光の照射条件を、100mW/cmとする(いわゆる「1Sun」の照射条件)測定条件の下で行った。
各光電気化学電池について、I−Vテスターを用いて室温にて電流−電圧特性を測定し、これらから光電変換効率η[%]を求めた。得られた結果を表11(1Sunの照射条件)の「fresh」として示す。また、60℃、1Sun照射で、10Ω負荷での作動条件で色素増感型太陽電池1〜4の光電変換効率η[%]の300時間経時後に調べた耐久性評価試験の結果も表11に示した。
Figure 0005557484
表11に示した結果から明らかなように、本発明の色素は電解質にヨウ化亜鉛を添加した場合でも優れたものであることがわかった。
(実施例10)
1.二酸化チタン分散液の調製
内側をフッ素樹脂コーティングした内容積200mlのステンレス製容器に二酸化チタン微粒子(日本アエロジル(株)製,Degussa P−25)15g、水45g、分散剤(アルドリッチ社製、Triron X−100)1g、直径0.5mmのジルコニアビーズ(ニッカトー社製)30gを入れ、サンドグラインダーミル(アイメックス社製)を用いて1500rpmで2時間分散処理した。得られた分散液からジルコニアビーズを濾別した。得られた分散液中の二酸化チタン微粒子の平均粒径は2.5μmであった。なお粒径はMALVERN社製のマスターサイザーにより測定した。
2.色素を吸着した酸化チタン微粒子層(電極A)の作製
フッ素をドープした酸化スズを被覆した20mm×20mmの導電性ガラス板(旭ガラス(株)製,TCOガラス−U,表面抵抗:約30Ω/m)を準備し、その導電層側の両端(端から3mmの幅の部分)にスペーサー用粘着テープを張った後で、導電層上にガラス棒を用いて上記分散液を塗布した。分散液の塗布後、粘着テープを剥離し、室温で1日間風乾した。次にこの半導体塗布ガラス板を電気炉(ヤマト科学(株)製マッフル炉FP−32型)に入れ、450℃で30分間焼成した。半導体塗布ガラス板を取り出し冷却した後、表10に示す色素のエタノール溶液(濃度:3×10−4mol/L)に3時間浸漬した。色素が吸着した半導体塗布ガラス板を4−tert−ブチルピリジンに15分間浸漬した後、エタノールで洗浄し、自然乾燥させた。このようにして得られた色素増感酸化チタン微粒子層の厚さは10μmであり、酸化チタン微粒子の塗布量は20g/mであった。また色素の吸着量は、その種類に応じて0.1〜10mmol/mの範囲内であった。
3.光電気化学電池1の作製
溶媒としては、アセトニトリルと3−メチル−2−オキサゾリジノンとの体積比90/10の混合物を用いた。この溶媒に、ヨウ素と電解質塩として1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムのヨウ素塩を加えて、0.5mol/Lの電解質塩および0.05mol/Lのヨウ素を含んだ溶液を調製した。この溶液に、(溶媒+窒素含有高分子化合物+電解質塩)を100質量%として、表10記載の窒素含有高分子化合物(1−1)10%を加えた。さらに窒素含有高分子化合物の反応性窒素原子に対する求電子部位の1モルに対して、求電子剤(2−6)を0.1モル混合し、均一な反応溶液とした。
一方、導電性ガラス板上に形成された色素増感酸化チタン微粒子層の上にスペーサーを介して白金を蒸着したガラス板からなる対極の白金薄膜側を載置し、導電性ガラス板と白金蒸着ガラス板とを固定した。得られた組立体の開放端を上記電解質溶液に浸漬し、毛細管現象により色素増感酸化チタン微粒子層中に反応溶液を浸透させた。
次いで80℃で30分間加熱して、架橋反応を行った。このようにして、特開2000−323190号記載の図2に示す通り、導電性ガラス板10の導電層12上に、色素増感酸化チタン微粒子層20、電解質層30、および白金薄膜42およびガラス板41からなる対極40が順に積層された本発明の光電気化学電池1−1(サンプルNo.1)を得た。
また色素と電解質組成物の組成の組み合わせを表10に示すように変更した以外上記工程を繰り返すことにより、異なる感光層20および/または電荷移動層30を有する光電気化学電池1−2、1−3を得た。
4.光電気化学電池A、Bの作製
(1)光電気化学電池A
前述のようにして本発明の色素により色素増感された酸化チタン微粒子層からなる電極A(20mm×20mm)を同じ大きさの白金蒸着ガラス板にスペーサーを介して重ねあわせた。次に両ガラス板の隙間に毛細管現象を利用して電解液(アセトニトリルと3−メチル−2−オキサゾリジノンとの体積比90/10の混合物を溶媒としたヨウ素0.05mol/L、ヨウ化リチウム0.5mol/Lの溶液)を浸透させて、光電気化学電池A−1を作製した。また色素を表10に示すように変更した以外上記工程を繰り返すことにより、光電気化学電池A−2、A−3を得た。
(2)光電気化学電池B(特開平9−27352号に記載の電解質)
前述のようにして本発明の色素により色素増感された酸化チタン微粒子層からなる電極A(20mm×20mm)上に、電解液を塗布し、含浸させた。なお電解液は、ヘキサエチレングリコールメタクリル酸エステル(日本油脂化学(株)製,ブレンマーPE−350)1gと、エチレングリコール1gと、重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロバン−1−オン(日本チバガイギー(株)製,ダロキュア1173)20mgを含有した混合液に、ヨウ化リチウム500mgを溶解し10分間真空脱気することにより得た。次に前記混合溶液を含浸させた多孔性酸化チタン層を減圧下に置くことにより、多孔性酸化チタン層中の気泡を除き、モノマーの浸透を促した後、紫外光照射により重合して高分子化合物の均一なゲルを多孔性酸化チタン層の微細空孔内に充填した。このようにして得られたものをヨウ素雰囲気に30分間曝して、高分子化合物中にヨウ素を拡散させた後、白金蒸着ガラス板を重ね合わせ、光電気化学電池B−1を得た。また色素を表10に示すように変更した以外上記工程を繰り返すことにより、光電気化学電池B−2、B−3を得た。
5.光電変換効率の測定
500Wのキセノンランプ(ウシオ電機(株)製)の光をAM1.5フィルター(Oriel社製)およびシャープカットフィルター(Kenko L−42)を通すことにより、紫外線を含まない模擬太陽光とした。光強度は89mW/cmとした。
前述の光電気化学電池の導電性ガラス板10と白金蒸着ガラス板40にそれぞれワニ口クリップを接続し、各ワニ口クリップを電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型)に接続した。これに導電性ガラス板10側から模擬太陽光を照射し、発生した電気を電流電圧測定装置により測定した。これにより求められた光電気化学電池の変換効率(η)の初期値(fresh)と、300時間連続照射時の変換効率の低下率をまとめて表12に示す。
Figure 0005557484
(備考)
(1)色素の記号は本文中に記載の通りである。
(2)窒素含有高分子1−1は以下の化合物を示す。
Figure 0005557484
(3)電解質塩
MHIm:1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムのヨウ素塩
MBIm:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムのヨウ素塩
(4)溶媒
AN:アセトニトリル。
PC:プロピレンカーボネート。
NMO:3−メチル−2−オキサゾリジノン。
(5)求電子剤
Figure 0005557484
表10に示した結果から明らかなように、本発明の色素はこの場合でも変換効率が高く、耐久性も高く優れたものであることがわかった。
1 導電性支持体
2 感光層
21 色素化合物
22 半導体微粒子
23 電解質
3 正孔輸送層
4 対極
5 受光電極
6 回路
10 光電変換素子

Claims (10)

  1. 分子内に下記一般式()で表される構造を有することを特徴とする色素。
    Figure 0005557484
    [一般式(2)中、Xはベンゼン環と連結して六員環又は七員環の含窒素複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Lはチオフェン環、セレノフェン環及びこれらが縮環した複素環の中から選ばれた少なくとも1種の複素環を含む電子伝達性連結基を表す。R は水素原子、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表す。R は水素原子を表す。 はアルキル基を表す。ロダニン骨格の複素環酸性核、またはカルボン酸基とシアノ基で置換されたメチレン基を表し、Bは少なくとも一つのカルボン酸基を有する。n1は1〜の整数を表す。R〜R は水素原子を表す。n2は1又は2の整数を示す。]
  2. 記Xベンゼン環と連結して七員環の含窒素複素環を形成する非金属原子群であることを特徴とする請求項1に記載の色素。
  3. 前記下記一般式(3)または=C(CN)(COOH)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の色素。
    Figure 0005557484
    [一般式(3)においてR、Rは、それぞれ独立に、アルキル基を表す(少なくとも1つの官能基はカルボン酸基を有していてもよい)。mは0又は1を示す。一般式(3)における炭素−炭素二重結合は、E型又はZ型のいずれであってもよい。一般式(3)中のRは硫黄原子または=C(CN)(COOH)を表し、該=C(CN)(COOH)における炭素−炭素二重結合は、E型又はZ型のいずれであってもよい。]
  4. 前記 が、下記一般式(6)で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の色素。
    Figure 0005557484
    [一般式(6)において はアルキル基を表す該アルキル基はカルボン酸基を有していてもよい)。]
  5. 前記B下記一般式(7)で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の色素。
    Figure 0005557484
    [一般式(7)において はアルキル基を表す該アルキル基はカルボン酸基を有していてもよい)。]
  6. 前記B、=C(CN)(COOH)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の色素。
  7. 受光電極が、請求項1〜のいずれか1項に記載の色素によって増感され半導体微粒子を含有することを特徴とする光電変換素子。
  8. 前記受光電極と対極との間に絶縁性の多孔体を有することを特徴とする請求項7に記載の光電変換素子。
  9. γ−ブチロラクトンを電解液中に含むことを特徴とする請求項7また8に記載の光電変換素子。
  10. 請求項のいずれか1項に記載の光電変換素子を用いた光電気化学電池。
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