JP5556090B2 - ボロンドープp型シリコン中の鉄濃度分析における定量分析限界決定方法 - Google Patents
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Description
拡散長Lの変化、δL/Lはシリコン中の再結合中心濃度の測定値ばらつきに相当し、対応する再結合中心の変化は、δN=(2D/(σνL2))・(δL/L)と表すことができる。再結合中心をp型シリコン中のFeとすると、σν=6×10-7cm3/s、少数キャリア(電子)の拡散定数D=40cm2/sとなり、非特許文献1では、少数キャリアの拡散長の測定値LとそのばらつきδL/Lを調べることにより、FeのばらつきδNを算出し、これをシリコン中のFeの検出限界としている。
先に説明したように、現在の技術では、実際の測定シーケンスを繰り返し実施し、得られたFeブランク試料のFe濃度測定値データのばらつき情報を評価し、シリコン中のFe濃度の検出限界を決定することは困難である。
ところでボロンドープp型シリコン中のFeは、前述のようにボロン(B)と結合してペア(Fe−Bペア)を形成しており、強い光を照射することや200℃程度の熱処理により、格子間Feと格子位置のBに乖離し、その後時間経過と共に、ペアが再形成されていくことが判っている。この現象は、例えば"Formation rates of iron-acceptor pairs in crystalline silicon", JAP 98, 083509 (2005)に詳しく解説されている。非特許文献1、特許文献2に記載されているSPV法では、このFe−Bペアの乖離現象を利用し、ボロンドープp型シリコンを対象とし、Fe−B乖離前後の少数キャリアの拡散長の測定値から、以下の式(1)によりFe濃度を算出する。
Fe濃度=C・{(1/L1 2)−(1/L2 2)} …(1)
ここでL1はFe−Bペア乖離後の少数キャリアの拡散長測定値、L2はFe−Bペア乖離前の少数キャリアの拡散長測定値、Cは換算係数であり他の測定手法により定量されたものとの比較により求められる。
また、特許文献1に記載されている光導電減衰法では、Fe−Bペア乖離前後のライフタイムの測定値から、以下の式(2)によりFe濃度を算出する。
Fe濃度=α・{(1/τ0)−(1/τ1)} …(2)
ここでτ0はFe−Bペア乖離前のライフタイムの測定値、τ1はFe−B乖離後のライフタイムの測定値、αは換算係数であり他の測定手法により定量されたものとの比較により求められる。
ここで本願発明者らは、Fe−Bペア乖離中、即ちFe−Bペア乖離操作後であってFe−Bペアがリペアリングを起こす迄の間、ボロンドープp型シリコンにはFe−Bペアは存在せず(または無視可能な程の量しか存在せず)、実質的にFe濃度を0とみなすことができる状態となることに着目した。即ち、Fe−Bペア乖離操作により、Fe濃度が実質的に0のボロンドープp型シリコンを擬似的に作り出すことができる。そこでFe−Bペア乖離中に、上記式(1)または(2)に従った、バルクFe濃度測定を行うことにより得られる測定値は、実際のバルクFe濃度測定時のシーケンスのばらつき因子の影響を受けたFe濃度の測定値(ブランク)のばらつき情報を含み、この結果に基づき決定されるFe濃度の定量分析限界は、分析方法の検出感度をより正確に表すものと考えられる。
本願発明者らは、以上の知見に基づき更に検討を重ね、本発明を完成するに至った。
[1] ボロンドープp型シリコン中の鉄濃度の定量に用いられる測定装置の鉄濃度定量分析限界決定方法であって、
前記定量は、前記測定装置により求められるFe−Bペア乖離中の少数キャリア拡散長測定値とFe−Bペア形成中の少数キャリア拡散長測定値を、下記式(1):
Fe濃度=C・{(1/L 1 2 )−(1/L 2 2 )} …(1)
(式(1)中、L 1 はFe−Bペア乖離中の少数キャリア拡散長測定値であり、L 2 はFe−Bペア形成中の少数キャリア拡散長測定値であり、Cは換算係数である。)
に代入することによりボロンドープp型シリコン中の鉄濃度を求めることにより行われるものであり、
前記定量分析限界を、ボロンドープp型シリコン中のFe−Bペア乖離中に2回の測定を行い得られた2つの少数キャリア拡散長測定値を、下記式(1)’:
Fe濃度=C・{(1/L 1 ’ 2 )−(1/L 2 ’ 2 )} …(1)’:
(式(1)中、L 1 ’は前記2回の測定で得られた少数キャリア拡散長測定値の一方であり、L 2 ’は他方であり、Cは式(1)と同義である。)
に代入することにより鉄濃度を算出することを複数回行い、得られた複数の鉄濃度の平均値および標準偏差に基づき決定することを特徴とする、前記定量分析限界決定方法。
[2]ボロンドープp型シリコン中の鉄濃度の定量に用いられる測定装置の鉄濃度定量分析限界決定方法であって、
前記定量は、前記測定装置により求められるFe−Bペア乖離中の再結合ライフタイム測定値とFe−Bペア形成中の再結合ライフタイム測定値を下記式(2):
Fe濃度=α・{(1/τ0)−(1/τ1)} …(2)
(式(2)中、τ0はFe−Bペア形成中の再結合ライフタイム測定値であり、τ1はFe−B乖離中の再結合ライフタイム測定値であり、αは換算係数である。)
に代入することによりボロンドープp型シリコン中の鉄濃度を求めることにより行われるものであり、
前記定量分析限界を、ボロンドープp型シリコン中のFe−Bペア乖離中に2回の測定を行い得られた2つの再結合ライフタイム測定値を、下記式(2)’:
Fe濃度=α・{(1/τ0’)−(1/τ1’)} …(2)’
(式(2)中、τ0’は前記2回の測定で得られた再結合ライフタイム測定値の一方であり、τ1’は他方であり、αは式(2)と同義である。)
に代入することにより鉄濃度を算出することを複数回行い、得られた複数の鉄濃度の平均値および標準偏差に基づき決定することを特徴とする、前記定量分析限界決定方法。
[3]前記平均値および標準偏差を、下記式(3):
定量分析限界 = 前記平均値+ 2・t(m;α)・前記標準偏差 …(3)
(式(3)中、t(m;α)は自由度mのスチューデントのt分布のαパーセント点である。)
に代入することにより、前記定量分析限界を決定する[1]または[2]に記載の定量分析限界決定方法。
先に説明したように、ボロンドープp型シリコン中のFe−Bペアを乖離させている間、該シリコンはFeを含まないブランク試料とみなし得る状態となる。したがって、この状態で実シーケンスと同じく測定を行いFe濃度の分析を行うことにより、少数キャリア拡散長やライフタイムの測定値ばらつきとともに、前記した各種操作誤差に起因するばらつき因子の影響も含むFe濃度の定量値のばらつき情報を得ることができ、この結果、より高い信頼性をもって定量分析限界を決定することができる。
以下、本発明の決定方法について、更に詳細に説明する。
以上の測定方法および算出方法の詳細については、例えば特開平6−69301号公報、特開2005−64054号公報等を参照することができる。
定量分析限界 = ブランクの平均 + 2・t(m;α)・ブランクの標準偏差 …(3)
ここで、t(m;α)は自由度mのスチューデントのt分布のαパーセント点である。
上記平均値および標準偏差を求めるための測定回数は、2回以上であり、好ましくは3回以上、精度を高めるうえでは5回以上行うことが好ましい。測定回数の上限は特に限定されるものではないが、例えば20回程度である。
ボロンドープp型、直径300mm、厚み775μmの半導体デバイス作製用の単結晶シリコンウェーハ(ボロンドープ量:1.3E15atoms/cm3)を用意した。
少数キャリア拡散長測定装置として、表面光電圧測定装置(SDI社製FAaST330−SPV)を用いた。測定前に、5質量%のHF溶液にシリコンウェーハを5分間浸漬し自然酸化膜を除去し、その後10分間の超純水リンスを行い、乾燥後、クリーンルーム内雰囲気に24時間放置し、測定の前処理とした。以下において、Fe−Bペアの乖離処理には、装置組み込みの光照射機構を使用し、少数キャリア拡散長の測定は、SEMI準拠のスタンダードモードで実施した。
上記前処理後、Fe−Bペア乖離前後の少数キャリア拡散長の測定値の差分から前記式(1)により面内9点のFe濃度を算出したところ、1×109atoms/cm3〜4×109/cm3の範囲であった。
別途、上記前処理後にFe−Bペア乖離処理後 2分以内に上記と同様の方法で面内9点においてFe濃度測定を開始し、各測定における乖離までの時間間隔をFe−Bペア乖離処理後2分以内にして10回繰り返した。上記時間内であれば、Fe−Bペアのリペアリングは生じないため、得られた結果はブランク試料の結果とみなすことができる。各点の平均値(ブランクの平均)および標準偏差(ブランクの標準偏差)は、それぞれ−7×107atoms/cm3〜1×109atoms/cm3、7×108atoms/cm3〜1.2×109atoms/cm3となった。得られた平均値および標準偏差を前記式(3)に適用し、各点について定量分析限界を算出した。
実施例1と同様のシリコンウェーハについて、実施例1と同様の装置を使用し面内9点で少数キャリア拡散長の測定を10回行った。得られた測定値を、前述の非特許文献1で提案されている下記式に適用し、定量分析限界を算出した。
定量分析限界=δN=(2D/(σνL2))・(δL/L)
上記において、σν=6×10-7cm3/s、D=40cm2/sとし、Lには少数キャリアの拡散長の平均値、δLには少数キャリア拡散長測定値の標準偏差に2・t(9;0.05)をかけたものを適用した。
図1に、各測定点における実施例1で得られた定量分析限界と比較例1で得られた定量分析限界を示す。図1に示すように、実施例1で得られた定量分析限界は2.7×109atoms/cm3〜6.1×109atoms/cm3の範囲であったのに対し、比較例1で得られた定量分析限界は5×108atoms/cm3〜1.2××109atoms/cm3となった。以上の結果から、非特許文献1に記載の方法によると、本発明の決定方法と比べ定量分析限界を1/2から1/3ほど低く見積もることが判明した。非特許文献1に記載の方法は、少数キャリアの拡散長の測定ばらつき情報は含むが、各種操作誤差に起因するばらつきは考慮されていない。これに対し本発明の決定方法は、実シーケンス同じく測定を行い、そのばらつきから定量分析限界を求めるものであるため、得られる定量分析限界は、より信頼性が高いものである。
Claims (3)
- ボロンドープp型シリコン中の鉄濃度の定量に用いられる測定装置の鉄濃度定量分析限界決定方法であって、
前記定量は、前記測定装置により求められるFe−Bペア乖離中の少数キャリア拡散長測定値とFe−Bペア形成中の少数キャリア拡散長測定値を、下記式(1):
Fe濃度=C・{(1/L 1 2 )−(1/L 2 2 )} …(1)
(式(1)中、L 1 はFe−Bペア乖離中の少数キャリア拡散長測定値であり、L 2 はFe−Bペア形成中の少数キャリア拡散長測定値であり、Cは換算係数である。)
に代入することによりボロンドープp型シリコン中の鉄濃度を求めることにより行われるものであり、
前記定量分析限界を、ボロンドープp型シリコン中のFe−Bペア乖離中に2回の測定を行い得られた2つの少数キャリア拡散長測定値を、下記式(1)’:
Fe濃度=C・{(1/L 1 ’ 2 )−(1/L 2 ’ 2 )} …(1)’:
(式(1)中、L 1 ’は前記2回の測定で得られた少数キャリア拡散長測定値の一方であり、L 2 ’は他方であり、Cは式(1)と同義である。)
に代入することにより鉄濃度を算出することを複数回行い、得られた複数の鉄濃度の平均値および標準偏差に基づき決定することを特徴とする、前記定量分析限界決定方法。 - ボロンドープp型シリコン中の鉄濃度の定量に用いられる測定装置の鉄濃度定量分析限界決定方法であって、
前記定量は、前記測定装置により求められるFe−Bペア乖離中の再結合ライフタイム測定値とFe−Bペア形成中の再結合ライフタイム測定値を下記式(2):
Fe濃度=α・{(1/τ0)−(1/τ1)} …(2)
(式(2)中、τ0はFe−Bペア形成中の再結合ライフタイム測定値であり、τ1はFe−B乖離中の再結合ライフタイム測定値であり、αは換算係数である。)
に代入することによりボロンドープp型シリコン中の鉄濃度を求めることにより行われるものであり、
前記定量分析限界を、ボロンドープp型シリコン中のFe−Bペア乖離中に2回の測定を行い得られた2つの再結合ライフタイム測定値を、下記式(2)’:
Fe濃度=α・{(1/τ0’)−(1/τ1’)} …(2)’
(式(2)中、τ0’は前記2回の測定で得られた再結合ライフタイム測定値の一方であり、τ1’は他方であり、αは式(2)と同義である。)
に代入することにより鉄濃度を算出することを複数回行い、得られた複数の鉄濃度の平均値および標準偏差に基づき決定することを特徴とする、前記定量分析限界決定方法。 - 前記平均値および標準偏差を、下記式(3):
定量分析限界 = 前記平均値+ 2・t(m;α)・前記標準偏差 …(3)
(式(3)中、t(m;α)は自由度mのスチューデントのt分布のαパーセント点である。)
に代入することにより、前記定量分析限界を決定する請求項1または2に記載の定量分析限界決定方法。
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