JP5552510B2 - 酸化触媒及び酸化反応生成物の製造方法 - Google Patents
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Description
このような生体内でのsp3C−H結合の酸化反応のメカニズムを元に、sp3C−H結合の酸化を触媒する金属錯体触媒の設計が種々試みられている(例えば、特許文献1参照)。
また、本発明者らは、アルカンC−H結合を過酸化水素で選択的に水酸化するための金属錯体触媒として、2−[ビス(ピリジン−2−イルメチル)]アミノ−N−キノリン−8−イル−アセトアミダートの鉄(III)錯体が優れていることについて報告している(非特許文献1参照)。
また、選択性のほかに、触媒回転数を向上させることも重要である。
また、本発明にかかる酸化反応生成物の製造方法は、sp 3 C−H結合を酸化し得る酸化剤によってsp 3 C−H結合を有する化合物を酸化してsp 3 C−H結合が酸化された酸化反応生成物を製造する方法において、前記酸化を、酸化触媒として下記一般式(1)で表される金属錯体触媒を用い、かつ、カルボン酸の共存下で行うことを特徴とする。
なお、以下では、上記本発明にかかる酸化触媒を用いてカルボン酸の共存下でsp 3 C−H結合を酸化することを、「本発明にかかるsp 3 C−H結合の酸化方法」又は「本発明の酸化方法」と称することがある。
本発明の酸化反応で用いる金属錯体触媒は、下記一般式(1)で表される。
Mは鉄、マンガン又はコバルトであり、好ましくは鉄である。
Lは、四座配位子である複素環化合物の他にMに配位する任意の配位子であり、例えば、アセトニトリル、ヒドロキソ、クロライド、トリフラート、アクアなどが挙げられる。
Xは対イオンであり、好ましくはClO4 -である。
nは0、1又は2である。
上記金属錯体触媒について、好ましい製造方法の一例を挙げるが、本発明で用いる金属錯体触媒は、下記の製造方法で得られるものに限定されるものではない。
反応(2)はアミノ基のアミド化反応であり、反応(3)はハロゲン化アルキルによるアミンのN−アルキル化反応である。
具体的には、例えば、下記反応(4)、(5)によって合成することができる。
本発明の酸化方法は、上記金属錯体触媒を酸化触媒として用いて、カルボン酸の共存下でsp3C−H結合を酸化する。
本発明の酸化方法によれば、sp3C−H結合を選択的に酸化することができるが、ここで、選択的とは、具体的には、特定のsp3C−H結合が他のsp3C−H結合に優先して酸化されることを意味する。このとき、複数のsp3C−H結合のうち、いずれのsp3C−H結合が酸化されるかは、通常、各sp3C−H結合における結合解離エネルギーの大きさによって決まる。すなわち、通常、結合解離エネルギーが小さいsp3C−H結合が優先して酸化される。
例えば、酸化条件や原料の種類にもよるが、モル基準で、金属錯体触媒:基質(酸化対象となる物質)=1:200程度とすることができる。
特に、アルコールは、その水酸基を反応基点としてエステルやエーテルなどの誘導体を容易に製造することができ、さらに、ビニル基を有する酸でエステル化するなどすれば、モノマーとしての展開も可能であり、多様な応用展開が期待できる。このように、アルカンからアルコールを直接かつ高選択的に合成することの意義は極めて大きい。
下記反応(6)により、N−((ピリジン−2−イル)メチル)ホルムアミドを合成した。
得られた茶褐色の油状物質は、収量3.15g、収率56.7%であり、下記の同定結果からN−((ピリジン−2−イル)メチル)ホルムアミドであることが確認できた。
1H NMR(500MHz,CDCl3,δ):8.54(d,J=4.6Hz,1H),8.33(s,1H),7.68(dt,J=7.7,1.7Hz,1H),7.28(d,J=7.5Hz,1H),7.22(dd,J=7.5,5.2Hz,1H),7.03(br,1H),4.62(d,J=5.2Hz,2H).
13C NMR(125.8MHz,CDCl3,δ):161.5(s),156.2(s),149.0(s),137.0(s),122.5(s),122.1(s),43.1(s).
上記合成例1で得られたN−((ピリジン−2−イル)メチル)ホルムアミドを用いて、下記反応(7)により、N−メチル(ピリジン−2−イル)メタンアミンを合成した。
得られた褐色油状物質は、収量2.29g、収率80.8%であり、下記の同定結果からN−メチル(ピリジン−2−イル)メタンアミンであることが確認できた。
1HNMR(500MHz,CDCl3,δ):8.56(d,J=5.2Hz,1H),7.65(dt,J=7.6,1.9Hz,1H),7.31(d,J=7.5Hz,1H),7.16(dd,J=7.7,4.9Hz,1H),3.88(s,1H),2.49(s,1H),1.97(br,1H).
上記合成例2で得られたN−メチル(ピリジン−2−イル)メタンアミンを用いて、下記反応(8)、(9)により、2−(N−メチル−N−((ピリジン−2−イル)メチル)アミノ)−N−(キノリン−8−イル)アセトアミド(以下、単に「H−mpaq」という)を合成した。
具体的には、まず、300ml二口ナスフラスコに、8−アミノキノリン(2.70g、18.7mmol)、炭酸ナトリウム(2.79g、26.2mmol)を加え、窒素置換した後に脱水アセトニトリルを100ml加えた。氷浴した後、ブロモアセチルブロミド(2.0ml,22.5mmol)をゆっくりと加えると、溶液は黄色に変化し、固体が生成した。その後、徐々に赤色に変化した。3時間後、TLC(シリカ、酢酸エチル:ヘキサン=1:3)により反応終了を確認し、固体生成物をセライトろ過で取り除き、濃縮したところ、赤色の針状固体を得た。
300ml三口ナスフラスコに炭酸ナトリウム(2.79g,26.2mmol)と上記合成例2で得られたN−メチル(ピリジン−2−イル)メタンアミン(18.7g,2.29mmol)を加え、窒素置換を行った。その後、脱水アセトニトリル100ml加え、氷浴した。ここに、上記合成例3−1で合成した赤色の針状固体4.99gをゆっくり加え、一晩撹拌した。その後、TLC(Al2O3,酢酸エチル:ヘキサン=10:1)により反応終了を確認した後、固体生成物をセライトろ過で取り除き、濃縮したところ、赤色油状物質を得た。この生成物をカラムクロマトグラフィー(Al2O3,酢酸エチル:ヘキサン=2:1)にて精製した。不純物を含む溶液と、含まない溶液に分けられたので、それらを別々に濃縮し、得られた固体をアセトニトリルで再結晶し、淡黄色の固体を得た。
1H NMR(500MHz,CDCl3,δ):11.5(s,1H),8.90(dd,J=4.0,1.7Hz,1H),8.81(dd,J=6.9,1.7Hz,1H),8.55(dd,J=4.3,1.4Hz,1H),8.18(dd,J=8.0,1.7Hz,1H),8.07(d,J=8.0Hz,1H),7.73(dd,J=7.7,1.7Hz,1H),7.54(m,2H),7.48(dd,J=8.3,4.3Hz,1H),7.19(dd,J=6.9,5.2Hz,1H),3.95(s,2H),3.42(s,2H),2.50(s,3H).
13C NMR(125.8MHz,CDCl3δ):169.6(s),158.9(s),149.1(s),148.4(s),139.1(s),136.7(s),136.4(s),134.4(s),128.2(s),127.5(s),123.2(s),122.4(s),121.8(s),121.6(s),116.7(s),64.3(s),62.6(s),43.6(s).
上記合成例3で得られたH−mpaqを用い、下記反応(10)により、H−mpaqの鉄錯体(以下、単に「Fe(III)−mpaq」という)を合成した。
ESI−MSの分析結果は以下のとおりである。
ESI−MS:ポジティブモード:m/z391.98[Fe(III)−mpaq(CH3O)]+
下式(11)で表される化合物(以下、単に「H−dpaq」という)を、下記反応(12)により合成した。
得られた桃色固体3.54gと炭酸ナトリウム(2.06g、19.4mmol)を反応容器に入れ、アルゴン雰囲気下にした後、脱水アセトニトリル40mLを加えた。氷浴にて0℃にした後、撹拌下、2,2’−ジピコリルアミン(3.31mL、16.6mmol)を20分かけて加えた。一晩撹拌させた後、セライトを用いて白色固体を吸引濾過によって除去し、濾液をエバポレーターによって濃縮後、真空乾燥した。粗生成物はアルミナカラム(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)にて精製し、白色固体を得た。
1HNMR(500MHz,CDCl3)による同定結果は以下のとおりである。
δ3.53(s,2H),4.01(s,4H),7.14(dd,J=4.9Hz,J=7.2Hz,2H),7.55−7.50(m,3H),7.64(ddd,J=1.5Hz,J=7.5Hz,2H),7.97(d,J=8.0Hz,2H),8.19(dd,J=1.2Hz,J=8.6Hz,1H),8.51(d,J=5.1Hz,2H),8.76(dd,J=2.6Hz,J=6.0Hz,1H),8.93(dd,J=1.4Hz,J=4.3Hz,1H),11.6(s,1H)
13CNMR(125.8MHz,CDCl3)による同定結果は以下のとおりである。
δ59.6(s),61.3(s),116.8(s),121.8(s),121.9(s),122.6(s),123.6(s),127.7(s),128.3(s),134.7(s),136.6(s),136.8(s),139.1(s),148.3(s),149.4(s),158.5(s),169.8(s)
元素分析による同定結果は以下のとおりである。
計算値(C23H21N5O):C,72.04;H,5.52;N,18.26
測定値:C,72.25;H,5.45;N,18.36
比較用合成例1で合成したH−dpaqを用いて、下式(13)で表されるH−dpaqの鉄錯体(以下、単に「Fe(III)−dpaq」という)を合成した。
合成例4で得たFe(III)−mpaqを酸化触媒として用いて、下記反応(14)により、アダマンタンの酸化反応を行った。
機器:ガスクロマトグラフ「GC2014」(島津製作所製)
カラム:キャピラリーカラム「InertCap」(60m×0.25mm)(ジーエルサイエンス社製)
測定条件:初期温度100℃で5分間保持、その後220℃まで10℃/minで昇温、220℃に到達後11分間保持
酢酸の添加量を5000当量としたこと以外は、実施例1と同様にしてアダマンタンの酸化反応を行った。
酢酸の添加量を20000当量としたこと以外は、実施例1と同様にしてアダマンタンの酸化反応を行った。
酢酸を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてアダマンタンの酸化反応を行った。
Fe(III)−mpaqのアセトニトリル溶液1ml(0.5mM,0.5μmol)に代えて、比較用合成例2で得たFe(III)−dpaqのアセトニトリル溶液1ml(0.5mM,0.5μmol)を用いたこと、酢酸を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてアダマンタンの酸化反応を行った。
上記各実施例1〜3、比較例1,2における各酸化反応について、第3級炭素のC−H結合が酸化されて生成した1−アダマンタノール(目的生成物)、第2級炭素のC−H結合が酸化されて生成した2−アダマンタノール及び2−アダマンタノン(副生成物)の各生成モル量とそれらの値から算出される選択性(3°/2°)、1−アダマンタノールの生成率、及び、触媒回転数(TON)を下表に示す。
3°/2°=3×{[1−アダマンタノール]/([2−アダマンタノール]+[2−アダマンタノン])}
また、1−アダマンタノールの生成率(%)は、1−アダマンタノール、過酸化水素の各モル量から、下式で算出される値である。
生成率(%)=100×[1−アダマンタノール]/[過酸化水素]
触媒回転数(TON)は、アダマンタンの酸化生成物と触媒の各モル比から、下式で算出される値である。
触媒回転数(TON)=[アダマンタンの酸化生成物]/[触媒]
さらに、本発明所定の金属錯体触媒ではないFe(III)−dpaqを用いた比較例2との対比から、実施例1〜3では、高い選択性が発揮されていることも分かる。
Claims (5)
- Rがメチル基であり、Mが鉄であり、XがClO4 -であり、nが2である、請求項1に記載の酸化触媒。
- 前記酸化剤が、過酸化水素、オゾン、m−クロロ過安息香酸、2−ヨードキシ安息香酸エステル、t−ブチルヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシドから選ばれるものである、請求項3に記載の酸化反応生成物の製造方法。
- Rがメチル基であり、Mが鉄であり、XがClO 4 - であり、nが2である、請求項3又は4に記載の酸化反応生成物の製造方法。
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