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JP5545975B2 - 鉛蓄電池用正極活物質及びそれを充填して成る鉛蓄電池用正極板 - Google Patents

鉛蓄電池用正極活物質及びそれを充填して成る鉛蓄電池用正極板 Download PDF

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Description

本発明は、鉛蓄電池の正極板に使用する正極活物質及び該正極活物質を充填して成る鉛蓄電池用正極板に関する。
鉛蓄電池は、ニッケル−カドミウム電池と共に長い歴史を持ち、その安価さもさることながら安定した性能から来る信頼性の故に、現在でも蓄電池の主流を占めている。例えば、自動車用のSLI用電源、小型電子機器及び電動車に使用される移動用電源、又はコンピューター等の電源の停止時に作動するバックアップ用据え置き電源として広く使用されている。
近年、これらの電源等に使用される鉛蓄電池は、高出力、大容量化への要望が高まり、容積及び重量を低減することと共に、特性を改善した鉛蓄電池が必要になってきている。そこで、鉛蓄電池の特性改善のために種々の検討がなされており、その一つとして、例えば、鉛蓄電池の正極板における活物質の利用率を向上させる取り組みがなされている。
鉛蓄電池の正極板の製造は、通常、金属鉛と鉛酸化物とを主原料とする鉛粉を水及び希硫酸で攪拌しながら混練することによって鉛ペーストを調製し、次いで、該鉛ペーストを鉛又は鉛合金から成る格子体に充填した後、熟成、乾燥工程を経て未化成板を製造することにより行われる。該正極板における活物質の利用率は、その粒子間に生ずる細孔の多さ、即ち、多孔度によって左右され、多孔度が大きいほど高い利用率が得られる。その理由は、放電時に生成する硫酸塩によって活物質の細孔が閉塞され、放電反応に必要な硫酸が拡散し難くなるため、多孔度が大きいほど硫酸の拡散がより一層確保されるためであると考えられている。
そこで、鉛ペースト中に膨張黒鉛を添加し、化成中に黒鉛を膨張させて細孔を増やすという技術が従来から提案されている。しかし、黒鉛を膨張させると活物質を構成している粒子間の結合力が低下し、活物質構造体として弱くなる。その結果、特に深い充放電を繰り返した時に、活物質の正極板からの脱落、活物質と格子体との密着性の低下、集電効率の低下、活物質間の導電性の低下等が起こり、蓄電池としての寿命が短くなってしまうと言う問題があった。同様の技術として、ペースト混練時にアルカリ金属及びアルカリ土類金属の硫酸塩を添加するとともに、混練時の最高温度を40℃以下にし、かつ混練終了時のペースト水分量を12〜14.5重量%の範囲にする方法(特許文献1)、及び、Sn、Pb、Ge、Cr、Os、Mn又はRuから選択される金属酸化物MOを正極活物質中に添加する鉛蓄電池(特許文献2)が知られている。しかし、これらの試みにおいても、未だ、十分な鉛蓄電池は得られていない。
特開平7−122270号公報 特開2000−182615号公報
本発明は、鉛蓄電池の正極板に使用した際に、活物質粒子間の結合力の低下が生ぜず、かつ、最適な径の空孔を形成することから、著しく良好な利用率を発揮し得る鉛蓄電池用正極活物質及びそれを充填して成る鉛蓄電池用正極板を提供するものである。
本発明者らは、鉛蓄電池の利用率を高めるという観点から、鉛蓄電池の正極板に使用する活物質中に如何にすれば空孔を増やすことができるかについて、種々の検討を試みた。その結果、本発明者らは、金属鉛と鉛酸化物とを主成分とする鉛粉に、希硫酸及び水を加えて混練して作製した正極活物質ペーストがアルカリ性を示すと言うことに着目して、該正極活物質ペーストに金属粉末、例えば、アルミニウム粉末を添加すれば、該アルミニウム粉末が正極活物質ペーストと反応して溶解し、活物質中に空孔を生ずること、かつ、この時点で完全に溶解しない金属粉末があっても、電解液である希硫酸を注液した際に反応して完全に溶解し、更に、空孔が形成されることを見出し、加えて、該空孔は、例えば、従来の黒鉛添加に見られるような電池寿命の低下を生じないことをも見出して、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
(1)金属鉛粉末及び鉛酸化物粉末を含む鉛蓄電池用正極活物質において、更に、金属粉末を含み、上記金属粉末の平均粒子径が、10〜500μmであり、かつ、上記金属粉末の含有量が、上記鉛酸化物粉末に対して、アルミニウム体積換算質量で0.5〜2.0質量%であることを特徴とする鉛蓄電池用正極活物質(ここで、アルミニウム体積換算質量とは、金属粉末の質量を同体積のアルミニウムの質量で置き換えた値を言う)である。
好ましい態様として、
(2)上記金属粉末が、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛及びスズより成る群から選ばれる1種以上である、上記(1)記載の鉛蓄電池用正極活物質、
(3)上記金属粉末が、アルミニウムである、上記(1)記載の鉛蓄電池用正極活物質、
)上記金属粉末の平均粒子径が、10〜300μmである、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の鉛蓄電池用正極活物質、
)上記金属粉末の含有量が、上記鉛酸化物粉末に対して、アルミニウム体積換算質量で0.5〜1.5質量%である、上記(1)〜()のいずれか一つに記載の鉛蓄電池用正極活物質(ここで、アルミニウム体積換算質量とは、金属粉末の質量を同体積のアルミニウムの質量で置き換えた値を言う)、
)化成後の多孔度が、55%以上60%未満である、上記(1)〜()のいずれか一つに記載の鉛蓄電池用正極活物質、
)化成後の多孔度が、56.5〜58.0%である、上記(1)〜()のいずれか一つに記載の鉛蓄電池用正極活物質、
)上記(1)〜()のいずれか一つに記載の鉛蓄電池用正極活物質に希硫酸及び水を加えて混練して作製したペーストを充填してなる鉛蓄電池用正極板
を挙げることができる。
本発明の鉛蓄電池用正極活物質は、鉛蓄電池の正極板に使用した際に、活物質粒子間の結合力の低下が生ぜず、かつ、最適な径の空孔を形成することから、著しく良好な利用率を発揮し得る。
本発明の鉛蓄電池用正極活物質は、従来の金属鉛粉末及び鉛酸化物粉末を含む鉛蓄電池用正極活物質に、更に、金属粉末を含むことを特徴とするものである。前記正極活物質と金属粉末は希硫酸と水等を用いて混練し、正極活物質ペーストを作成する。金属粉末の種類は、正極活物質ペーストとした後、化成の際に希硫酸と反応し金属粉末を溶解して空孔を形成することが可能な材料であれば特に制限はない。好ましくは、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛及びスズより成る群から選ばれる1種以上が使用される。但し、鉛は除くものとする。
上記金属粉末の平均粒子径の下限は、好ましくは10μmである。上記下限未満では、本発明の鉛蓄電池用正極活物質を希硫酸及び水と混練する際に、反応が迅速に進行して金属粉末が溶解して、空孔が形成され難くなるため好ましくない。通常、鉛蓄電池においては、放電が進むにつれて活物質である二酸化鉛が硫酸鉛へと変化して体積膨張して、これにより細孔径が小さくなり、活物質内部への電解液の拡散が不足して放電が終止してしまうと言う現象が生ずる。しかし、金属粉末の平均粒子径が上記下限以上であると、二酸化鉛が硫酸鉛へと変化する体積膨張が生じても、金属粉末により形成される細孔径が十分に大きければ、電解液の拡散を妨げることがない。とりわけ、大型極板のように極板の厚さが、厚ければ厚いほど、金属粉末の平均粒子径が上記下限以上であることの効果が大であり、活物質利用率を大幅に改善し得る。
一方、上記金属粉末の平均粒子径の上限は、好ましくは500μm、より好ましくは300μmである。上記上限を超えると、基板表面が露出し易く基板の腐食が生じやすくなり、それにより、基板の伸びによる短絡及び活物質の剥離等の問題が発生し、また、基板にクラックが発生して活物質と基板との密着性が悪化して、活物質の剥離による容量低下の問題が発生する。
上記金属粉末の含有量の下限は、本発明の鉛蓄電池用正極活物質に含まれる鉛酸化物粉末に対して、アルミニウム体積換算質量で、好ましくは0.2質量%であり、上限は、同じく本発明の鉛蓄電池用正極活物質に含まれる鉛酸化物粉末に対して、アルミニウム体積換算質量で、好ましくは2.0質量%、より好ましくは1.5質量%である。上記下限未満では、鉛蓄電池用正極活物質中の多孔度を十分に高めることができず、初期容量を高めることができない。一方、上記上限を超えては、多孔度が不要に増加して、活物質同士の結合力の低下及び活物質と基板格子との結合力の低下を生じ、かつ、空孔の増加により基板表面が露出し易くなって電解液と反応し腐食を助長することがある。ここで、本発明の鉛蓄電池用正極活物質に含まれる鉛酸化物とは、PbOである。また、アルミニウム体積換算質量とは、金属粉末の質量を同体積のアルミニウムの質量で置き換えた値を言う。即ち、金属粉末がいかなる種類の金属である場合にも、体積1.0cmの質量は、アルミニウムの体積1.0cmの質量と同じく2.700グラムとするものである。例えば、マグネシウムをアルミニウム体積換算した場合、マグネシウムの質量1.738グラムを1.0cmとして算出するものである。
本発明の鉛蓄電池用正極活物質の化成後の多孔度の下限は、好ましくは55%、より好ましくは56.5%であり、上限は、好ましくは60%未満、好ましくは58.0%である。上記下限未満では、鉛蓄電池の高容量化の効果に乏しく、上記上限を超えては、空間体積が大きいことから、活物質同士の密着性が悪くなり、早期容量低下等の原因となる恐れある。ここで、本発明における鉛蓄電池用正極活物質の化成後の多孔度とは、下記の実施例に示したように、該活物質を水及び希硫酸で混練して得たペーストを、正極基板に充填した後、熟成、乾燥工程を経て未化成板を製造し、次いで、化成を実施した後に形成される活物質内の空孔の割合を言う。
上記本発明の鉛蓄電池用正極活物質には、従来公知の方法に従い、希硫酸及び水が加えられて混練されペースト化され、該ペーストを正極板用格子体に充填することにより鉛蓄電池用正極板とされる。かかる鉛蓄電池用正極板の製造方法及び該正極板を使用した鉛蓄電池の製造方法に特に制限はなく、従来公知の方法を使用することができる。
以下の実施例において、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
(実施例)
実施例及び比較例で使用した電池材料及び試験方法は下記の通りである。
電池材料
<基板>
正極基板及び負極基板共に、略正四角形の活物質充填用空間を有しているものを使用した。正四角形の穴の部分は直径6〜12mmである。正極板の寸法は、電極部が40.0×73.0mmであり、耳部が4.0×12.0mmであり、電極部の厚さが2.0mmであり、かつ耳部の厚さが2.0mmである。一方、負極基板の寸法は、電極部が40.0×75.0mmであり、耳部が4×12.0mmであり、電極部及び耳部の厚さがいずれも2.0mmである。正極基板及び負極基板の材質は、いずれも鉛‐カルシウム合金である。
<リテーナーマットセパレーター>
日本板硝子株式会社製の平均直径1μm以下の微細なガラス短繊維を抄紙してマット状にしたものである。該リテーナーマットセパレーターは、40kPa加圧時の厚さが1.5mmである。
<電槽>
ABS樹脂製であり、寸法は25.0mm×45.0mm×120.0mmである。
試験方法
<フロート寿命試験>
各制御弁式鉛蓄電池を、恒温槽にて雰囲気温度60℃一定となるようにして、2.23Vの定電圧充電を行った。そして、試験開始時から1ヶ月毎に0.1CAにおける容量確認試験(雰囲気温度25℃)を実施し、該試験開始時から、放電容量が初期放電容量の70%以下になった時点までの月数を電池寿命とした。
<初期容量試験>
各制御弁式鉛蓄電池を、恒温槽にて雰囲気温度25℃一定となるようにして、0.5Aの放電電流にて電池電圧が1.8Vに達するまで放電した時の容量を測定し初期放電容量値とした。
<多孔度>
自動ポロシメータ(株式会社島津製作所製オートボアIV9500シリーズ)を使用し、水銀圧入法にて測定した。
<平均粒子径>
レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業製LMS−24型)を用いて測定した。そして、全粒子体積に対する累積値で50%に相当する粒子径を平均粒子径(Dp50)と規定した。
評価方法
<初期容量比(%)>
実施例1の初期放電容量値を100%として、各実施例及び比較例の値を算出した。
<総合評価>
初期容量比が95%未満のとき評価1とし、95%以上100未満のとき評価2とし、100%以上のとき評価3とした。また、電池寿命が10ヶ月未満のとき評価1とし、10ヶ月以上13ヶ月未満のとき評価2とし、13ヶ月以上のとき評価3とした。そして、初期容量比の評価値と電池寿命の評価値との積を総合評価として示した。
(実施例1)
金属鉛粉末30質量%及び活物質としての鉛酸化物粉末(PbO)70質量%から成る鉛粉100質量部、水10質量部及び希硫酸(比重:1.27)20質量部に、金属粉末としてのアルミニウム粉末(平均粒子径100μm)を鉛酸化物に対して1.0質量%添加して十分に混練し、正極活物質ペーストを調製した。次いで、該ペーストを正極基板に充填し、次いで、40℃、湿度80%で24時間熟成した後、乾燥して未化成の正極板を製造した。
一方、公知の方法により負極活物質ペーストを調製した。次いで、該ペーストを負極基板に充填し、次いで、40℃、湿度80%で24時間熟成した後、乾燥して未化成の負極板を製造した。
このようにして製造された未化成の正極板3枚と未化成の負極板4枚とを、リテーナーマットセパレーターを介して交互に積層し、かつ同極性の耳列を溶接して極板群を製造した。該極板群をABS樹脂製の電槽内に収納して、電槽と蓋とを樹脂で接着して密閉し、次いで、蓋の液口から電槽内に硫酸電解液(硫酸ナトリウム20グラムを水1リットルに溶解して製造したもので、比重は1.21at 20℃である)を極板群が十分に含浸するまで注入した。これを25℃において、理論容量の200%過充電して電槽化成を実施し、2V−5Ahの制御弁式鉛蓄電池を製造した。化成後の正極活物質の多孔度は57%であった。
製造した制御弁式鉛蓄電池について、フロート寿命試験を実施した。
(実施例2〜4)
金属粉末としてのアルミニウム粉末を、夫々、実施例1で添加したアルミニウム粉末量と同体積のマグネシウム粉末、亜鉛粉末及びスズ粉末に代えた以外は、実施例1と同一に実施した。電槽化成により、2V−5Ahの制御弁式鉛蓄電池が得られた。化成後の正極活物質の多孔度は57%であった。
(比較例1)
金属粉末を添加しなかった以外は、実施例1と同一に実施した。電槽化成により、2V−5Ahの制御弁式鉛蓄電池が得られた。化成後の正極活物質の多孔度は50%であった。
実施例1〜4及び比較例1の結果を表1に示す。
Figure 0005545975
実施例1〜4は、添加した金属粉末の種類を変えたものである。ここで、実施例2〜4のマグネシウム、亜鉛及びスズの配合量は、実施例1において配合したアルミニウムの体積と同一にした。初期容量比及び電池寿命共にいずれも同程度かつ良好であり、総合評価もいずれも9と高かった。一方、金属粉末を添加しなかった比較例1においては、初期容量比が著しく低く、総合評価は著しく低くなった。比較例1では、金属粉末を添加していないことから、正極活物質中に空孔が形成されなかったためと考えられる。
(実施例5〜14)
表2に示す量で2種類以上の金属粉末の混合物を添加した以外は、上記の実施例1と同一に実施した。いずれも、電槽化成により、2V−5Ahの制御弁式鉛蓄電池が得られ、かつ化成後の正極活物質の多孔度は57%であった。各実施例における金属粉末の添加量の合計は、実施例1で添加したアルミニウム粉末の量と同体積となるようにした。そして、実施例5〜10では、2種類の金属粉末の配合量が体積で同量になるように、実施例11〜13では、3種類の金属粉末の配合量が体積で同量になるように、かつ実施例14では、4種類の金属粉末の配合量が体積で同量になるように、夫々、配合した。
実施例5〜14の結果を表2に示す。
Figure 0005545975
実施例5〜9は、夫々、異なる2種類の金属粉末の混合物を使用したものであり、実施例10〜13は、夫々、異なる3種類の金属粉末の混合物を使用したものであり、かつ実施例14は、異なる4種類の金属粉末の混合物を使用したものである。複数の金属粉末を組み合わせても、また、いずれの金属粉末を使用しても、実施例1と同様にいずれも著しく高い総合評価を示した。
(実施例15〜20)
表3に示すように添加するアルミニウム粉末の平均粒子径を種々変化させた以外は、上記の実施例1と同一に実施した。いずれも、電槽化成により、2V−5Ahの制御弁式鉛蓄電池が得られ、かつ化成後の正極活物質の多孔度は57%であった。
(実施例21〜26)
表3に示すようにアルミニウム及びマグネシウムの2種類の金属粉末の混合物を使用し、かつこれら金属粉末混合物の平均粒子径を種々変化させた以外は、上記の実施例1と同一に実施した。いずれも、電槽化成により、2V−5Ahの制御弁式鉛蓄電池が得られ、かつ化成後の正極活物質の多孔度は57%であった。ここで、添加したアルミニウム及びマグネシウムの2種類の金属粉末の合計量が、実施例1で添加したアルミニウムと同体積量となるようにし、かつアルミニウムとマグネシウムの量が同体積量となるようにした。
実施例15〜26の結果を表3に示す。また、平均粒子径が100μmの金属粉末を使用した結果である実施例1及び5も併せて示した。
Figure 0005545975
実施例1及び15〜20は、アルミニウム粉末の平均粒子径を5μmから600μmまで変化させたものであり、実施例5及び21〜26は、アルミニウム粉末とマグネシウム粉末との混合物の平均粒子径を5μmから600μmまで変化させたものである。いずれの場合においても、平均粒子径が5μm及び600μmの金属粉末を使用した際、総合評価は多少悪くなった。しかし、本発明の効果を損なうものではなかった。
平均粒子径が5μmの小さな粒子径の金属を使用した実施例15及び21では、電池寿命は良好であったが、初期容量比が低い値を示した。これは、化成後に出来た空孔の径が非常に小さく、放電が進むにつれて起きる二酸化鉛から硫酸鉛への体積膨張により、空孔が閉塞して活物質内部への電解液の拡散不足が生じたことによる。一方、平均粒子径が600μmの大きな粒子径の金属を使用した実施例20及び26では、初期容量比は良好であったが、電池寿命は短かった。これは、600μmと言う大きな粒度により比較的大きな細孔が形成され、従って、部分的に基板表面が露出され、該基板部分が細孔に存在している硫酸と反応して格子腐食が進行したためであると考えられる。
また、上記金属及び金属混合物以外にも、マグネシウム、亜鉛及びスズ粉末単独、並びにアルミニウム、マグネシウム、亜鉛及びスズ粉末の種々の混合物を使用して同一の実験を実施したところ上記と同様の結果が得られた。
(実施例27〜32)
表4に示すようにアルミニウム粉末の添加量を種々変化させた以外は、上記の実施例1と同一に実施した。いずれも、電槽化成により、2V−5Ahの制御弁式鉛蓄電池が得られた。化成後の正極活物質の多孔度は54.0〜60.5%であった。
(実施例33〜39)
表4に示すように、実施例33〜37においては、アルミニウム及びマグネシウムの2種類の金属粉末を体積比で1:1とし、実施列38及び39においては、これら2種類の金属粉末を体積比で夫々1.0:0.5及び0.5:1.0とし、かつこれら金属粉末混合物の添加量を種々変化させた以外は、上記の実施例1と同一に実施した。いずれも、電槽化成により、2V−5Ahの制御弁式鉛蓄電池が得られた。化成後の正極活物質の多孔度は54.5〜61.5%であった。
実施例27〜39の結果を表4に示す。また、アルミニウム粉末添加量が1.00質量%である実施例1、並びに、アルミニウム粉末とマグネシウム粉末との体積比で1:1の混合物であり、かつ該混合物を実施例1で添加したアルミニウム粉末の体積と同一の体積量で添加した実施例5も併せて示した。
Figure 0005545975
実施例1及び27〜32は、アルミニウム粉末の添加量を0.10質量%から2.50質量%まで変化させたものである。添加量が少ない実施例27並びに添加量の多い実施例32では総合評価値が多少悪かったが、いずれも本発明の効果を損なうものではなかった。実施例27においては、多孔度が55%未満と多少低いことから初期容量比が多少低下したものと考えられる。一方、実施例32においては、多孔度が60%以上であり空間体積が大きいことから、活物質同士の密着性が悪くなる傾向があり、多少の初期容量比の低下及び寿命の低下が生じた。また、実施例5及び33〜39は、アルミニウム粉末とマグネシウム粉末との混合物の添加量を0.12質量%から3.00質量%まで変化させたものである。アルミニウム粉末単独の場合と同様の傾向を示した。
また、上記金属及び金属混合物以外にも、マグネシウム、亜鉛及びスズ粉末単独、並びにアルミニウム、マグネシウム、亜鉛及びスズ粉末の種々の混合物を使用して同一の実験を実施したところ上記と同様の結果が得られた。
本発明の鉛蓄電池用正極活物質は、著しく良好な利用率を発揮し得る。従って、該鉛蓄電池用正極活物質を充填してなる鉛蓄電池用正極板及びそれを使用した鉛蓄電池も同様に著しく良好な利用率を発揮し得ることから、今後、鉛蓄電池の分野での多くの利用を期待できる。

Claims (4)

  1. 金属鉛粉末及び鉛酸化物粉末を含む鉛蓄電池用正極活物質において、更に、金属粉末を含み、上記金属粉末の平均粒子径が、10〜500μmであり、かつ、上記金属粉末の含有量が、上記鉛酸化物粉末に対して、アルミニウム体積換算質量で0.5〜2.0質量%であることを特徴とする鉛蓄電池用正極活物質(ここで、アルミニウム体積換算質量とは、金属粉末の質量を同体積のアルミニウムの質量で置き換えた値を言う)
  2. 上記金属粉末が、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛及びスズより成る群から選ばれる1種以上である、請求項1記載の鉛蓄電池用正極活物質。
  3. 化成後の多孔度が、55%以上60%未満である、請求項1又は2記載の鉛蓄電池用正極活物質。
  4. 請求項1〜のいずれか一つに記載の鉛蓄電池用正極活物質に希硫酸及び水を加えて混練して作製したペーストを充填して成る鉛蓄電池用正極板。
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