しかしながら、各種の解像度に対応する画像信号規格や表示装置規格間におけるコンパチビリティをとるために表示画像の解像度を変換する等の際に、各フレームにおいて走査される走査線の本数が異なる場合が発生し得る。すると、フレームを複数含む所定期間において、正極性の駆動電圧が印加されるフレームの合計長さと、負極性の駆動電圧が印加されるフレームの合計長さとが相互に異なることから、直流電圧成分が発生してしまう。即ち、極性を反転させることによって、正極性と負極性とを相殺するという、反転駆動の本来の目的が達成できなくなってしまう。この直流電圧成分は、電気光学装置の動作時間が経過するに従って次第に増大し、表示パネルに焼き付きやフリッカが生じさせるリスクを増大してしまう。その結果、電気光学装置の使用寿命を短縮させてしまう原因となる。逆に、このような場合の発生を回避するためには、各フレーム間でデータ量を必ず一致させる必要があり、特に解像度を変換する装置仕様上で大きな制約が発生し、実践上大きな技術的な問題点となる。
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、極性の切り替えに伴うフリッカや焼き付きの発生リスクを低減しつつ、表示画像の高画質化が可能な電気光学装置の駆動装置及び方法、並びに、該駆動装置を備えた電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた電子機器を提供することを課題とする。
本発明の電気光学装置の駆動装置は上記課題を解決するために、複数の走査線及び該複数の走査線に交差する複数のデータ線並びに前記複数の走査線及び前記複数のデータ線の交点に対応して配列された複数の画素部を備える電気光学装置の駆動装置であって、少なくとも二つの相異なるフレーム周期を有する画像信号が入力される入力手段と、該入力される画像信号を、所定の極性を有する駆動電圧として前記データ線を介して前記画素部に供給しつつ、フレームを複数含む所定期間において、正極性を有する前記駆動電圧が供給される第1期間と、負極性を有する前記駆動電圧が供給される第2期間とが同一長さに近づくように、前記所定期間に含まれるフレームの少なくとも一部において、フレーム周期及び前記所定の極性のうち少なくとも一方を変更する駆動電圧供給手段とを備える。
本発明に係る駆動装置によれば、その動作時には、入力手段を介して、例えば電源信号、データ信号、制御信号等の各種信号が入出力される。すると、例えば基板上に作り込まれた走査線駆動回路等を含む走査信号供給手段によって、走査信号が複数の走査線を介して画素部に供給される。これと並行して、例えばデータ線駆動回路、サンプリング回路等を含む駆動電圧供給手段によって、画像信号が画素部に同時に又は逐次に供給される。ここに「画素部」は、例えば、画像表示領域にマトリクス状に配列され、一対の基板間に液晶等の電気光学物質を挟持してなり、画素スイッチング用TFTによってアクティブ駆動が実行される。また例えば、画素スイッチング用TFTのゲート端子に走査信号が印加されると、データ線から供給される画像信号が、画素スイッチング用TFTのソースドレインを介して、画素部を構成する画素電極に書き込まれる。このように、画素部を構成する画素電極と対向電極間との間に画像信号に対応する駆動電圧が印加されることによって、液晶の配向状態等の電気光学物質の動作状態を制御し、画像を表示する。
本発明における入力手段には、例えば外部の画像信号供給回路から、少なくとも二つの相異なるフレーム周期を有する画像信号が入力される。ここで「相異なるフレーム周期を有する」とは、例えば外部の画像信号供給回路において、各種の解像度に対応する画像信号規格や表示装置規格間におけるコンパチビリティをとるために表示画像の解像度を変換する等の際に、奇数フレーム及び偶数フレーム間でフレーム周期が異なる場合、例えば、1フレーム期間の総ライン数が、奇数フレームと偶数フレームとで1走査ライン分だけ異なる場合などが挙げられる。
尚、入力手段に入力される画像信号の極性は、特許文献1と同様に、画素部に印加される画像信号に基づく駆動電圧を交流化することによって、直流電圧成分を併殺し、極性に偏りが生じることを防ぐべく、一水平期間又はフレーム毎に反転されていてもよい。
駆動電圧供給手段は、該入力される画像信号を、所定の極性を有する駆動電圧として前記データ線を介して前記画素部に供給する。即ち、入力手段に入力された画像信号を、必要に応じて、画素部を駆動させるために好適な形式に変換等し、供給する。即ち、入力される画像信号自体が、すでに画素部を駆動させるために好適な形式になっている場合には、画像信号と駆動電圧とは同一の電圧信号であってもよく、駆動電圧供給手段は、必ずしも変換等を行わなくても足りる。
本発明では特に、駆動電圧供給手段は、前記フレーム周期を複数含む所定期間において、正極性を有する前記駆動電圧が供給される第1期間と、負極性を有する前記駆動電圧が供給される第2期間とが同一長さに近づくように、前記所定期間に含まれる少なくとも一部のフレームにおける、前記フレーム周期及び前記所定の極性のうち少なくとも一方を変更する。ここで、「近づくように」とは、第1期間と第2期間とが等しくなる場合のみを意味するのではなく、前記フレーム周期及び前記所定の極性のうち少なくとも一方の変更前に比べて少なくなる場合を広く含む趣旨である。
ここで、上述の通り、入力手段に入力される画像信号は相異なるフレーム周期を有するため、仮に特許文献1と同様に、単にフレーム毎に駆動電圧の極性を反転させただけでは、所定期間における正極性を有する駆動電圧が供給される期間と、正極性を有する駆動電圧が供給される期間とが相互に異なるので、夫々の極性を有する駆動電圧が印加される時間に差が生じ、その結果、直流電圧成分が発生してしまい、画素部に焼き付き等の不具合が発生してしまう。
このような不具合の発生を防ぐために、本発明では、駆動電圧供給手段によって、所定期間に含まれる少なくとも一部のフレームにおける、前記フレーム周期及び前記所定の極性のうち少なくとも一方を変更できるように構成している。例えば、フレーム周期を変更すると、所定期間に対する第1期間及び第2期間の割合を夫々調整することができるので、所定期間において生じ得る極性差が小さくすることができる。また、例えば、駆動電圧の極性を変更することによってもまた、同様に、所定期間に対する第1期間及び第2期間の割合を夫々調整することができるので、所定期間において生じ得る極性差を小さくすることができる。
尚、直流電圧成分を除去するという意義からは、所定期間における第1期間及び第2期間が完全に同一長さになるようにすることが最も好適ではあるが、第1期間及び第2期間における差を少なくするだけでも相対的に直流電圧成分を減少させることができ、表示パネルの焼き付きやフリッカが生じるリスクを減少させることができる。
「所定期間」は、2つ以上のフレームから成っていればよいが、なるべく短く設定した方が、直流電圧成分の印加による液晶等の電気光学物質への悪影響を低減する趣旨或いはフリッカを目立たなくする趣旨からは望ましい。逆に言えば、直流電圧成分の印加による液晶等の電気光学物質への悪影響が顕在化しない限りにおいて、或いは、フリッカが目立たない限りにおいて、「所定期間」は長くてもかまわない。
尚、駆動電圧の極性を反転させるタイミングは、フレーム毎に反転させる、所謂「フレーム反転駆動」であってもよいし、走査線毎に反転させる、所謂、「1H反転駆動」であってもよい。更には、複数の画素部が配列された画素領域の一面が複数に分割されてなる部分領域別に同一極性を有するように反転させる「領域走査駆動」の場合においても、本発明は適用可能である。
このように、駆動電圧のフレーム周期及び所定の極性のうち少なくとも一方を変更することによって、正極性と負極性とを相殺するという、極性の反転駆動における本来の目的を、入力される画像信号のフレーム周期が相異なる場合においても達成することが可能となる。その結果、電気光学装置等に組み込んでも、画素部に含まれる液晶等の電気光学物質に作用して表示画像に焼き付き等が発生しにくく、耐用期間の長い駆動装置を実現することができる。
本発明の電気光学装置の駆動装置の一態様では、前記駆動電圧供給手段は、前記所定期間において入力される画像信号のフレームのうち、相異なるフレーム周期を有する一対のフレームについて、前記フレーム周期及び前記所定の極性のうち少なくとも一方を互いに入れ替えることにより、前記第1期間と前記第2期間とが同一長さに近づくように変更する。
この態様によれば、互いにフレーム期間が異なる一組のフレームのフレーム期間及び極性のどちらか一方を入れ替えることによって、第1期間及び第2期間における極性差を軽減することができる。例えば、正極性を有する比較的長いフレーム(以下、前者という)と、負極性を有する比較的短いフレーム(以下、後者という)とを含んでおり、所定期間全体で見て正側に極性の偏りが生じている場合、駆動電圧供給手段によって、前者と後者とのフレーム周期を互いに入れ替えると、負極性を有する後者の方が、正極性を有する前者に比べて長くなるため、所定期間全体に対して負極性を強める、即ち、正極性への偏りを軽減することができる。また、前者と後者との極性を入れ替えることによっても(つまり、夫々のフレーム周期の長さはそのままに、前者を負極性、後者を正極性に変更した場合であっても)、同様に所定期間における極性の偏りを軽減することができる。
上述の態様では、前記所定期間は、前記一対のフレームを複数含んでもよい。
所定期間における極性の偏りが大きい場合、一対のフレームにおいてフレーム周期及び所定の極性のうち少なくとも一方を入れ替えるのみでは、幾分かの極性の偏りの修正が期待できるものの、残存している直流成分によって、依然として画素部に焼き付き等の不具合が生じるリスクがある。そこで、この場合では、所定期間内においてフレーム周期及び所定の極性のうち少なくとも一方を入れ替えるフレームの対を複数設けることによって、比較的大きな極性の偏りであっても解消可能なように構成されている。
本発明の電気光学装置の駆動装置の他の態様では、前記駆動電圧供給手段は、一水平走査ライン毎に前記駆動電圧の極性を反転させる。
この態様によれば、走査線毎に反転させる、所謂、「1H反転駆動」において、第1期間及び第2期間での極性差を軽減することによって、反転駆動における本来の目的を達成可能となる。
本発明の電気光学装置の駆動装置の他の態様では、前記駆動電圧供給手段は、フレーム毎に極性を反転される。
この態様によれば、フレーム毎に画像信号の極性を反転する、所謂「フレーム反転駆動」において、第1期間及び第2期間での極性差を軽減することによって、反転駆動における本来の目的を達成可能となる。
尚、既に述べたように「1H反転駆動」、「領域走査駆動」、「ドット反転駆動」等であっても、奇数フレーム及び偶数フレーム間での平均化を図ることによって正極性と負極性とを相殺するという、反転駆動における本来の目的を達成可能である。
本発明に係る電気光学装置は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置の駆動回路(但し、その各種態様を含む)を具備してなる。
本発明の電気光学装置によれば、上述した本発明の駆動装置を具備しているので、各画素部における応答特性変化によらずに、高品位の画像表示が可能となる。
本発明に係る電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置を具備してなる。
本発明に係る電子機器によれば、上述した本発明に係る液晶装置を具備してなるので、高品位の表示が可能な、投射型表示装置、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明に係る電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置等も実現することが可能である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
<液晶装置>
先ず、本発明に係る電気光学装置の駆動装置を適用した液晶装置の全体構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る液晶装置の概略構成を示すブロック図である。
図1において、液晶装置100は、主に、コントローラ部40と、本発明に係る「駆動電圧供給手段」の一例を部分的に構成するデータ線駆動回路101と、走査線駆動回路104と、表示パネル200とを備える。表示パネル200は、所定の画像信号及び制御信号等の電気信号を取得し、画像信号に対応する画像を表示する。具体的には、コントローラ部40は、本発明にかかる「入力手段」の一例を部分的に構成する振り分け回路41と、第1メモリ42と、第2メモリ43と、メモリ制御回路44と、選択回路45と、LCD制御回路46とを含んで構成されている。
表示パネル200は、液晶(LCD)等を含んでなる複数の画素部によって構成され、当該画素部に画像信号に対応する駆動電圧が印加されることによって画像を表示する表示部である。具体的には、走査線14aと、データ線14bと、走査線14a及びデータ線14bの交差に対応するようにマトリクス状に配列され、本発明にかかる「画素部」の一例である画素14cとを備えている。本実施形態では特に、表示パネル200には、n本の走査線14aが、図においてX(行)方向に延在して形成され、m本のデータ線14bがY(列)方向に沿って延在して形成されている。また、n本の走査線14aの夫々には、走査信号G(但し、各走査線に対応する走査信号をG1からGnと表す)が供給されることにより、対応する画素14cを書き込み可能な状態にすることができる。
画像信号DATAはコントローラ部40に入力され、振り分け回路41によって奇数フレームにおいて画像表示に寄与する奇数画像信号DATA1と、偶数フレームにおいて画像表示に寄与する偶数画像信号D2とに、フレーム期間毎に順番に振り分けられる。振り分け回路41から出力された奇数画像信号DATA1及び偶数画像信号DATA2は夫々、第1メモリ42及び第2メモリ43に格納される。選択回路45は、液晶装置の動作中において、奇数フレーム及び偶数フレームのどちらの期間であるかを判断し、フレーム毎に第1メモリ42及び第2メモリ43から対応する画像信号、即ち、奇数画像信号DATA1又は偶数画像信号DATA2のどちらか一方を選択する。尚、奇数フレーム及び偶数フレームのどちらの期間であるかの判断は、コントローラ部40に入力される垂直走査信号VSYNC、水平走査信号HSYNC及びクロック信号CLKに同期して動作するメモリ制御回路44に基づいて決定或いは規定される。
クロック信号CLK、垂直走査信号VSYNC(即ち、垂直走査用の同期信号)、及び水平走査信号HSYNC(即ち、水平走査用の同期信号)は、コントローラ部40内部のメモリ制御回路44及びLCD制御回路46に供給される。LCD制御回路46は、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104に、これらの取得した信号に基づいて、垂直同期信号VS、水平同期信号HS、走査側転送クロックCLY、及びデータ転送クロックCLXを、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104に供給する。垂直同期信号VSは、フレーム毎に走査側(Y側)に対する走査の開始タイミングで出力されるパルス信号である。走査側転送クロックCLYは、走査側(Y側)の水平走査を規定する信号である。水平同期信号HSは、は、水平期間毎にデータ線駆動回路101へデータ転送を開始するタイミングを決めるパルス信号であって、走査側転送クロックCLYのレベル遷移(即ち、立ち上がり及び立ち下がり)に同期して出力される。データ転送クロックCLXは、データ線駆動回路101へデータを転送するタイミングを規定する信号である。
データ線駆動回路101は、コントローラ部40から、水平同期信号HSと、データ転送クロックCLXと、画像データ信号Dとを取得し、表示パネル200のデータ線14bに対してデータ信号d1、d2、d3、…、dmを出力する。尚、本実施形態における画像データ信号Dは、表示パネル200に配列された画素14cの焼き付きを防止するために、画素14cに印加する駆動電圧の極性が後に詳述するように、適宜反転しながら印加されている。
次に、図2を参照して、液晶装置100の動作中における、各制御信号の入出力タイミングについて説明する。図2は、(a)垂直走査信号VSYNC、(b)水平走査信号HSYNC、(c)画像データ信号D、(d)垂直同期信号VS、(e)水平同期信号HS、(f)画像データ信号D、及び(g)走査側転送クロックCLYの入出力タイミングを示すタイミングチャート図である。
コントローラ部40に垂直走査信号VSYNCが入力されると、コントローラ部40は、1フィールド毎にパルス状の垂直同期信号VSを発生する。その後、走査側転送クロックCLYに同期して、走査信号Gが順次出力される。具体的には、走査線駆動回路104内にシフトレジスタが組み込まれており、走査側転送クロックCLYに同期するタイミングで走査信号Gがn本の走査線14aに順次供給される。そして、画像表示に寄与する走査線を一通り走査し終えると、帰線期間を経て、再び垂直同期信号VSが入力され、次のフレームに移行し、走査信号Gが再び順次出力される。
本実施形態では、各フレームにおいて5つの画像データ信号Dが画素14cに供給され、夫々の画素データ信号Dは各水平走査期間(図2において1Hで表示)において走査信号が供給されている画素14cに対応する画像データを含んでいる。
第1フレームでは、垂直同期信号VSが入力された後、水平同期信号HSが入力されるタイミングに同期して、5つの画像データ信号D(D1、D3、D5、D7及びD9)がデータ線駆動回路101に供給される。つまり、走査信号G1からG5が順に供給されている間に、駆動された走査線上に配置された画素14cに対して、画像データ信号D1、D3、D5、D7及びD9が供給される。具体的には、走査信号G1が供給されている間に画像データ信号D1が供給され、走査信号G2が供給されている間に画像データ信号D3が供給され、走査信号G3が供給されている間に画像データ信号D5が供給され、走査信号G4が供給されている間に画像データ信号D7が供給され、走査信号G5が供給されている間に画像データ信号D9が供給される。
画像データ信号D(D1、D3、D5、D7及びD9)は水平期間毎に、互いに極性が反転されながらデータ線駆動回路101に供給される。即ち、画像データ信号D1、D5及びD9は正極性を有し、画像データ信号D3及びD7は負極性を有する画像データ信号である。
ここで、一度画像データ信号Dが供給されることにより指定された画素14cの極性は、次の画像データ信号Dが供給されるまで保持される。そのため、第1フレームで画像データ信号D(D1、D3、D5、D7及びD9)が供給されることにより指定された画素14cの極性は、第2フレームにおいて再び画像データ信号Dが供給されるまでそのまま保持される。従って、第1フレームにおいて指定された各画素14cの極性は、帰線期間中も第1フレームで画像データ信号D(D1、D3、D5、D7及びD9)が供給されることにより指定された極性に保持されることとなる。
第2フレームでは、垂直同期信号VSが入力された後、水平同期信号HSが入力されるタイミングに同期して5つの画像データ信号D(D2、D4、D6、D8及びD10)がデータ線駆動回路101に供給される。つまり、走査信号G1からG5が順に供給されている間に、駆動された走査線上に配置された画素14cに対して、画像データ信号D2、D4、D6、D8及びD10が供給される。具体的には、走査信号G1が供給されている間に画像データ信号D2が供給され、走査信号G2が供給されている間に画像データ信号D4が供給され、走査信号G3が供給されている間に画像データ信号D6が供給され、走査信号G4が供給されている間に画像データ信号D8が供給され、走査信号G5が供給されている間に画像データ信号D10が供給される。
第2フレームにおいて供給される画像データDの極性もまた、互いに反転されながらデータ線駆動回路101に供給される。第1フレームの最初のラインに供給された画像データ信号D1の極性は正であるから、第2フレームにおいて最初のラインに供給される画像データ信号D2の極性は負に設定されている。従って、第2フレームにおいて供給される画像データ信号Dのうち画像データ信号D2、D6及びD10は正極性を有し、画像データ信号D4及びD8は負極性を有することとなる。
ここで、第1フレームにおいて最後に画像データ信号D9が供給された後、第2フレームにおいて最初に画像データ信号D2が供給されるまでの期間(以下、第1帰線期間という)は、第2フレームにおいて最後に画像データ信号D10が供給された後、第3フレームにおいて最初に画像データ信号D1が供給されるまでの期間(以下、第2帰線期間という)に比べて大きくなっている。このように第1帰線期間及び第2帰線期間が、互いに異なっているため、第1及び第2フレーム間を全体的に見た場合、画素14cに極性の偏りが生じてしまう。そのため、仮に第1及び第2フレームと同様のパターンで液晶装置を駆動し続けると、当該極性差は時間の経過と共に拡大し、画素14cに焼き付き等の不具合が発生してしまう。
本実施形態に係る液晶装置では、続く第3及び第4フレームにおける信号の入出力パターンを、上述の第1及び第2フレームと異なるように構成することによって、画素14cに焼き付き等の不具合が発生することを抑制又は解消する。具体的には、第3フレームにおいて最後に画像データ信号D9が供給された後、第4フレームにおいて最初に画像データ信号D2が供給されるまでの期間(以下、第3帰線期間という)は、第4フレームにおいて最後に画像データ信号D10が供給された後、第5フレーム(図2において省略)において最初に画像データ信号D1が供給されるまでの期間(以下、第4帰線期間という)に比べて、小さくなるように構成されている。その結果、第1フレーム及び第2フレームにおいて生じていた極性の偏りは、第3フレーム及び第4フレームにおいて生じる逆の極性の偏りによって軽減或いは殆ど相殺することができる。従って、第1から4フレーム間で見た場合、画素14cに印加される画像データ信号Dに生じる極性の偏りを軽減又は殆ど解消されるので、画素14cには、直流成分に起因する焼き付き等が発生することを効果的に防止することができる。
以上のように、本実施形態では、連続する4フレームにおいて前半と後半との信号の入出力パターンを変更することによって、画素14cに供給される駆動電圧の極性に偏りが生じることを防止することができる。その結果、画素14cに焼き付きが生じにくく、長寿命を有する液晶装置を実現することができる。
<変形例>
上述の実施形態では、画像データ信号Dの極性を水平走査期間毎に反転させる、所謂、1H反転駆動における例を説明したが(図2参照)、ここでは、画像データ信号Dの極性をフレーム毎に反転させる、所謂、フレーム反転駆動における例について説明する。図3は、本変形例における図2と同様の趣旨のタイミングチャート図である。
第1フレームにおいて最後に画像データ信号D9が供給された後、第2フレームにおいて最初に画像データ信号D2が供給されるまでの期間(即ち、第1帰線期間という)は、第2フレームにおいて最後に画像データ信号D10が供給された後、第3フレームにおいて最初に画像データ信号D1が供給されるまでの期間(即ち、第2帰線期間という)に比べて大きくなっている。本変形例では上述の実施形態(図2参照)とは異なり、第3フレーム及び第4フレームでは、第1フレーム及び第2フレームと同じパターンで表示データが画素14cに供給される。即ち、第3フレームにおいて最後に画像データ信号D9が供給された後、第4フレームにおいて最初に画像データ信号D2が供給されるまでの期間(即ち、第3帰線期間という)は、第4フレームにおいて最後に画像データ信号D10が供給された後、第5フレームにおいて最初に画像データ信号D1が供給されるまでの期間(即ち、第4帰線期間という)に比べて大きくなっている。従って、仮に、単純にフレーム毎に画素14cの極性を反転させると、第2及フレーム及び第4フレームの合計期間が、第1フレーム及び第3フレームの合計期間に比べて小さくなっていることから、第1フレームから第4フレーム間を全体的に見た場合に、極性の偏りが生じてしまう。その結果、液晶装置を駆動し続けると、当該極性差は時間の経過と共に拡大し、画素14cに焼き付き等の不具合が発生してしまい、画素14cに直流電圧成分が印加されていることと等価であり、画素に焼き付き等が生じる原因となってしまう。
そこで、本変形例では、フレーム毎に画素14cの極性を単純に反転させるのではなく、第1フレーム及び第4フレームにおいて供給される画像データ信号Dの極性を正、第2フレーム及び第3フレームにおいて供給される画像データ信号Dの極性を負に設定している。即ち、本変形例では、図3に示すように、第2フレーム及び第3フレームにおいて連続して負極性を有する画像データ信号Dを画素14cに供給することによって、第1から4フレーム間で見た場合に、画素14cに印加される画像データ信号Dの極性の正負を打ち消しあうことができる。
このように、フレーム反転駆動を採用する液晶装置においても、極性を切りかえるタイミングを適宜調整することによって、画素14cに印加される極性に偏りが生じることを軽減又は殆ど解消し、上述の実施形態と同様に、画素の焼き付き等を防止することができる。
<電気光学装置>
次に、上述した駆動装置が適用される電気光学装置の駆動装置100について、図4及び図5を参照して説明する。以下の実施形態では、本発明の電気光学装置の一例であるTFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
先ず、本実施形態に係る電気光学装置における電気光学パネルの構成について説明する。ここに図4は、本実施形態に係る電気光学パネルの構成を示す平面図であり、図5は、図4のH−H´線断面図である。
図4及び図5において、本実施形態に係る電気光学パネル500では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板や、シリコン基板等である。対向基板20は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が封入されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素電極が設けられた画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。尚、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通がとられている。
続いて、図5において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層構造の詳細な構成については図4では図示を省略してあるが、この積層構造の上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料からなる画素電極9aが、画素毎に所定のパターンで島状に形成され、その表面は配向膜によって覆われている。当該配向膜は液晶50と接している。
画素電極9aは、対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面する側の表面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成されている。
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上に、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮光膜23によって区切られた領域が、例えばプロジェクタ用のランプや直視用のバックライトから出射された光を透過させる開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
遮光膜23上には、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向するように形成されている。また遮光膜23上には、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図5には図示しないカラーフィルタが形成されるようにしてもよい。対向基板20の対向面上における、対向電極21上には、配向膜22が形成されている。
尚、図4及び図5に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号(即ち、データ信号)をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
液晶層50)を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。
ここで保持された画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極21)との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。蓄積容量70は、画像信号の供給に応じて各画素電極9aの電位を一時的に保持する保持容量として機能する容量素子である。蓄積容量70の一方の電極は、画素電極9aと並列してTFT30のドレインに接続され、他方の電極は、定電位となるように、電位固定の容量線300に接続されている。蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性が向上し、コントラスト向上やフリッカの低減といった表示特性の向上が可能となる。
<電子機器>
次に、上述した実施形態に係る電気光学装置500を適用可能な電子機器の具体例について図6及び図7を参照して説明する。
まず、上述した実施形態に係る電気光学装置500を、可搬型のパーソナルコンピュータ(いわゆるノート型パソコン)の表示部に適用した例について説明する。図6(a)は、このパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。同図に示すように、パーソナルコンピュータ710は、キーボード711を備えた本体部712と、本発明に係る液晶表示装置100を適用した表示部713とを備えている。
続いて、上述した実施形態に係る電気光学装置500を、携帯電話機の表示部に適用した例について説明する。図6(b)は、この携帯電話機の構成を示す斜視図である。同図に示すように、携帯電話機720は、複数の操作ボタン721のほか、受話口722、送話口723とともに、本発明に係る液晶表示装置100を適用した表示部724を備える。
次に、図7を参照して、上述した実施形態に係る電気光学装置500をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。
図7に示されるように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される。
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
尚、図6及び図7を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
また、本発明は上述の各実施形態で説明した液晶装置以外にも反射型液晶装置(LCOS)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置用基板及び電気光学装置、並びに該電気光学装置を備えた電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。