図8に、代表的な衛星放送受信システム70を示す。
LNB71は、上記衛星放送受信システム70の、アウトドアと呼ばれるアンテナ(図8では、アウトドアユニット72として設けられている)に取り付けられるものである。LNB71は、放送衛星73からの微弱な電波、すなわち衛星放送波74の低雑音増幅を行い、同軸ケーブル75を通じて、インドアユニット76に対して、低雑音かつ十分なレベルの信号を供給する。この衛星放送受信システム70のインドアユニット76に接続された、テレビジョン受信機(図示しない)等の端末を利用して、ユーザは、衛星放送受信のサービスを受けることができる。
衛星放送受信用のLNB71の一例として、図9には、いわゆる1出力のユニバーサルLNBであるLNB80の回路ブロック図を示した。
周波数が10.7〜12.75GHzであるLNB80への到来信号は、H(水平)偏波およびV(垂直)偏波の各信号の受信用に、入力導波管81内にそれぞれ設けられた、各偏波用のアンテナプローブ82によって受信される。LNA(Low Noise Amplifier:低雑音増幅器)83は、LNB80の後段に設けられたレシーバ(図示しない)からの信号により選択された各偏波に応じて、アンテナプローブ82によって受信された該到来信号に対して低雑音増幅を施す。この各偏波の選択は、電源およびスイッチコントロールIC(Integrated Circuit:集積回路)84が、LNA83内の前段にあるHEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)85aおよび85bを駆動する各駆動回路(図示しない)をスイッチングすることで行われる。これにより、具体的に、HEMT85aはV偏波の信号に対して、HEMT85bはH偏波の信号に対して、それぞれ低雑音増幅を施す。なお、HEMT85cは、V偏波の信号とH偏波の信号との両方を増幅する。
LNA83で低雑音増幅が施された信号は、所望の周波数帯域の周波数を有する信号を通過させ、イメージ周波数帯域の周波数を有する信号を除去する役目を持つ、BPF(Band Pass Filter:帯域通過フィルタ)86を通過する。
その後、局部発振器であるDRO(Dielectric resonator Oscillator:誘電体発振器)87aからの発振信号(周波数:9.75GHz)またはDRO87bからの発振信号(周波数:10.6GHz)が、混合回路88に注入される。またこのとき、混合回路88は、レシーバからの信号により選択された、LowバンドおよびHighバンドという2つのバンドのいずれかに対応した動作を行う。これにより、DRO87aからの発振信号が注入された場合、混合回路88は、BPF86を通過した信号を、周波数が950〜1950MHzであるIF(Intermediate Frequency:中間周波)信号に変換する(Lowバンド)。また、DRO87bからの発振信号が注入された場合、混合回路88は、BPF86を通過した信号を、周波数が1100〜2150MHzであるIF信号に変換する(Highバンド)。ここで、このときのLowバンドとHighバンドとの切換えは、電源およびスイッチコントロールIC84が、DRO87aおよび87bのそれぞれに供給される電源電圧をスイッチングすることで行われる。
混合回路88による周波数変換によって得られたIF信号は、適切な雑音特性および利得特性を有するIFアンプ89に伝達される。該IF信号は、IFアンプ89によって増幅され、コンデンサ90を介して、出力端子91から出力される。
また、LNB80の電源、偏波の切換え信号、およびバンドの切換え信号は、レシーバから信号線(図示しない)を介して、出力ポートである出力端子91に供給され、インダクタ92およびコンデンサ93を備えたローパスフィルタ94を通過する。なお、ローパスフィルタ94は、IF信号を除去する機能を有している。ローパスフィルタ94を通過した、LNB80の電源、偏波の切換え信号、およびバンドの切換え信号は、電源およびスイッチコントロールIC84に供給される。ここで、コンデンサ90は、レシーバからの電源電圧が、IFアンプ89、もしくは後述するMOP−IC101に設けられたIF信号IFOUTの出力端子に印加されないよう、該電源電圧を遮断する。すなわち、コンデンサ90は、DC(Direct Current:直流電流)のカットを目的として設けられている。
なお、図9には、入力導波管81内に設けられた、垂直偏波反射棒95をさらに図示している。
さらに、最近では、DRO87aおよび87bよりも動作の安定性に優れた、PLL(Phase Locked Loop)回路を局部発振器として備えた、1出力のユニバーサルLNBが開発されており、図10には、このようなLNB100の回路ブロック図を示した。
LNB100は、混合回路88の機能と、IFアンプ89の機能と、スイッチコントロールICの機能とを、アナログ回路およびデジタル回路を混載した1石の半導体集積回路に収めた、MOP−IC(Mixer・Oscillator・PLL-IC)101を備えている。MOP−IC101を使用したこのLNB100は、LNB80に対して、局部発振器を備えた局部発振回路の動作の安定化、ならびに部品数の大幅な削減をもたらす。
MOP−IC101は、BPF86の後段、かつコンデンサ90の前段に設けられている。MOP−IC101は、RF(Radio Frequency:無線周波)アンプ102、混合回路88の機能を有するミキサ103、IFアンプ89の機能を有するIFアンプ104、およびスイッチコントロールICの機能を有するHEMT制御回路105を備えている。
また、MOP−IC101は、VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)106、チャージポンプ107、位相比較器108、分周器109、プリスケーラ110、および交流電圧源111を備えている。これらは、MOP−IC101の外部に設けられており、かつ交流電圧源111に接続された水晶振動子112(例えば、発振周波数:25MHz)と共に、上記局部発振器(PLL回路)を構成している。また、MOP−IC101には、レギュレータ113が接続されており、レギュレータ113から、主電源電圧として、3.3Vの電圧が印加されている。
MOP−IC101がシリコンにより構成されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)であり、かつ主電源電圧が3.3VのICである場合を考える。この場合、MOP−IC101は、偏波の切換え信号として、主電源電圧よりも大きなレベルの電圧(最大19V程度)を、MOP−IC101に設けられた端子CNT_INより受ける。
例えば、ユニバーサルLNBの仕様によれば、端子CNT_INの端子電圧が11.5〜14Vであるとき、HEMT制御回路105は、Vertical path(垂直偏波の経路)上のプリアンプ、すなわちHEMT85aにバイアスを供給する(端子DVおよびGV)。なおこのとき、HEMT制御回路105は、端子DVから正の電圧を出力し、この正の電圧をHEMT85aのドレイン(図示しない)に供給すると共に、端子GVから負の電圧を出力し、この負の電圧をHEMT85aのゲート(図示しない)に供給する。
一方、ユニバーサルLNBの仕様によれば、端子CNT_INの端子電圧が16〜19Vであるとき、HEMT制御回路105は、Horizontal path(水平偏波の経路)上のプリアンプ、すなわちHEMT85bにバイアスを供給する(端子DHおよびGH)。なおこのとき、HEMT制御回路105は、端子DHから正の電圧を出力し、この正の電圧をHEMT85bのドレイン(図示しない)に供給すると共に、端子GHから負の電圧を出力し、この負の電圧をHEMT85bのゲート(図示しない)に供給する。
なお、2ndプリアンプ、すなわちHEMT85c用のバイアスは、常に供給されている。すなわち、HEMT制御回路105は、端子D2から正の電圧を出力し、この正の電圧をHEMT85cのドレイン(図示しない)に供給すると共に、端子G2から負の電圧を出力し、この負の電圧をHEMT85cのゲート(図示しない)に供給する。
従って、上記ユニバーサルLNBの仕様より、端子CNT_INには、最大で19V程度の電圧が印加される。
このため、MOP−IC101には、抵抗値の合計が例えば500kΩである、分圧用抵抗R1(420kΩ)およびR2(80kΩ)が内蔵されている。そして、分圧用抵抗R1およびR2は、端子CNT_INに接続されている。分圧用抵抗R1およびR2は、端子CNT_INから入力されて得られた、MOP−IC101内部の電圧を、約1/6に降下させるものであり、端子CNT_INに19Vの電圧が印加された場合、該MOP−IC101内部の電圧を約3.04Vに降下させる。
図11は、MOP−IC101における、端子CNT_IN、およびその周辺回路の構成例を示す回路図である。なお、図11に示す回路120は、端子CNT_INに発生するESDへの対策用の回路である。
図11に示す回路120は、以下の構成を有している。
ダイオードD1のアノードおよびダイオードD2のカソードは、電圧検出回路121に接続されている。ダイオードD1のカソードは、端子AVDD33を通じて、アナログ回路用の電源(図示しない)に接続されており、ダイオードD2のアノードは、端子AGNDを通じて、アナログ回路用のグランドに接続されている。図示していないが、HEMT制御回路105は、アナログ回路の電源およびグランドに接続されている。
ここで、図11に示す回路120は、端子CNT_INに入力された電圧を分圧するために設けられた2つの抵抗、すなわち分圧用抵抗R1およびR2を備えている。また、図11に示す回路120は、MOP−IC101に内蔵されており、かつ分圧用抵抗R1およびR2により分圧された電圧におけるノイズを低減させるための安定化容量C1を備えている。分圧用抵抗R1は、一端が端子CNT_INに接続されており、他端がダイオードD1のアノードとダイオードD2のカソードとの間に接続されている。分圧用抵抗R2は、一端が分圧用抵抗R1の他端に接続されており、他端がアナログ回路用のグランドに接続されている。安定化容量C1は、分圧用抵抗R1およびR2により分圧された電圧のレベルを検出する電圧検出回路121にその一端が接続されており、他端がアナログ回路用のグランドに接続されている。
さらに、図11に示す回路120は、ダイオードD3およびD4から成る2段のダイオード群を備えている。ダイオードD3のアノードは、ダイオードD4のカソードに接続されている。ダイオードD3のカソードは端子CNT_INに接続されており、ダイオードD4のアノードはアナログ回路用のグランドに接続されている。
端子CNT_INでの消費電流は、約40μAであるが、デザイン・マニュアルのオンチップPoly抵抗素子の電流制約として、300μA/μmなる記載が存在する。さらに、例えばESDの発生に起因して、600μA/μmを超える電流が分圧用抵抗R1およびR2に流れると、分圧用抵抗R1およびR2の破壊が起こり、絶対精度が大きく劣化してしまう虞がある。つまり、仮に抵抗値500kΩの抵抗を、チップ面積への影響を考慮し、幅W=1μmで設計する場合、この抵抗には、300μAを超える電流ICNT_INが流れてはいけない。
そこで、回路120では、端子CNT_INと、アナログ回路用のグランドとの間に、ダイオードD3およびD4から成る2段(複数段)のダイオード(ダイオード群)を接続している。
すなわち、ESDに起因して、端子CNT_INからMOP−IC101に入力された電圧において、過度な電位上昇が発生した場合、ダイオードD3およびD4は、逆方向バイアスが与えられることによって、ブレークダウンを起こす。これにより、アナログ回路用のグランドへと電流ΔICNT_INが流れ、分圧用抵抗R1およびR2には過度の電流が流れないので、分圧用抵抗R1およびR2の破壊を防ぐことが可能である。
図12の実測結果より、端子CNT_INの電位VCNT_INが、ダイオードD3およびD4のブレークダウン電圧(23V)以下である場合、ダイオードD3およびD4を流れる電流、すなわち電流ΔICNT_INは変化しない。一方、電位VCNT_INが23Vを超えると、徐々に逆方向バイアスが与えられたダイオードD3およびD4がブレークダウンを起こし、ダイオードD3およびD4から、逆方向電流として、電流ΔICNT_INが流れ始めることが分かる。
また、ESDに起因して、端子CNT_INからMOP−IC101に入力された電圧が、負電圧へと電圧降下する場合、図13に示すように、ダイオードD3およびD4は、順方向バイアスが与えられる。これにより、電流ΔICNT_INは、アナログ回路用のグランドから、ダイオードD3およびD4を介して、端子CNT_INへと流れる。これにより、分圧用抵抗R1およびR2には過度の電流が流れないので、分圧用抵抗R1およびR2の破壊を防ぐことが可能である。なお、図13に示す回路120は、図11に示す回路120と同じ構成である。
この、ダイオードD3およびD4はPN接合により構成されるものである。ダイオードD3およびD4による上記構成の詳細は、“特願2011−019959号(2011年2月1日出願)”に開示されている。
また、回路の過電流時において、ダイオードを用いて、グランドまたは入力端子へと電流を逃がす技術は、例えば特許文献1〜5に開示されている。
図11および13に示した回路120においては、端子CNT_INに発生するESDへの対策のために、MOP−IC101の内部にPN接合のダイオード(ダイオードD3およびD4)を形成する必要がある。このようなダイオードD3およびD4はいずれも、耐圧がそれほど高くなく、26.5V以上の電圧(過電圧)が印加されると、破壊されてしまうことが懸念される。
MOP−IC101が使用されるユニバーサルLNBであるLNB100は、その仕様上、端子CNT_INに印加される電圧の最大値が19Vと規定されているため、ダイオードD3およびD4が破壊されてしまう虞がないと考えられてきた。
しかしながら、図14に示すように、出力電圧Voutが11.5〜19Vである安定化電源131をオン状態として、ケーブル132により、LNB100の出力端子91に接続した瞬間、安定化電源131から出力された電圧に、オーバーシュート現象が発生することが分かった。なお、この現象は、安定化電源131の出力インピーダンスの急激な変化が原因で発生すると考えられる。
図15は、LNB100の出力端子91に、オン状態の安定化電源131を接続した前後における、時間(横軸)と、LNB100への入力電圧VINならびに端子CNT_INに印加される電圧VCNT_INのレベル(縦軸)との関係を示すグラフである。なお、図15中のTCが、該接続の直後に、オーバーシュートに起因して、電圧のレベルが最大となる瞬間を示している。また、本願明細書における「LNBへの入力電圧(VIN)」は、LNBの出力端子91に入力される電圧であるとする。
図15の実測結果より、LNB100への入力電圧VINを19Vにしようとした場合、上述した安定化電源131の出力電圧Voutのオーバーシュート現象に起因して、LNB100への入力電圧VINは、瞬間的に30.4Vにまで上昇した。また、図15の実測結果より、MOP−IC101の端子CNT_INの電位VCNT_INは、瞬間的に28.0Vにまで上昇した。これにより、LNB100では、ダイオードD3およびD4がショートモードで破壊されてしまい、MOP−IC101が正常動作しないという事態の発生が確認された。この現象は、生産工場での組立および検査工程、ならびにユーザでのインストール作業中に起こりうることであることから、上記安定化電源131から出力された電圧のオーバーシュート現象に対する対策が必須事項となった。
また、特許文献2の図1の場合、電源を誤って逆接続したときの過電流によるダイオードの破壊を防止するために、抵抗を挿入してダイオードに流れる電流を抑制することを目的としているに過ぎない。また、特許文献3の図1の場合、抵抗は、コンデンサのサージによる充電電荷を放電するための抵抗であって、コンデンサとセットで効果のあるものである。また、特許文献3の図1の場合、抵抗によりダイオードの降伏電流を制限して保護回路全体の破壊を防止しているに過ぎない。また、特許文献4の図3の場合、ICまたはモジュール内の最大電圧を制限しているのはダイオードであり、ダイオードのブレークダウン電圧に制限され、抵抗はモジュール内を流れる電流を制限するものに過ぎない。また、特許文献5の図6の場合、抵抗はダイオードの保護を目的としたものとは言えない。特許文献1に係る技術では、ダイオードを特に保護していない。以上の、特許文献1〜5に開示された各技術は、以下に説明する本発明の特徴点との関連が薄い。
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたものであり、その目的は、半導体集積回路に設けられた端子に発生するESDへの対策を施すために同半導体集積回路に設けられた、ダイオードが破壊されることを防止する、ダイオード保護回路、LNB、およびアンテナシステムを提供することにある。
本発明のダイオード保護回路は、上記の問題を解決するために、入力端子と、上記入力端子に印加された電圧を分圧する、複数の抵抗から成る分圧用抵抗と、一端が上記入力端子に接続されていると共に他端が接地されており、かつ、上記分圧用抵抗に流れる電流を所定値以下に抑制するための、1または複数のダイオードから成るダイオード群とを備えた半導体集積回路に接続される、上記ダイオード群を保護するダイオード保護回路であって、上記入力端子に接続される抵抗である保護抵抗を備え、上記保護抵抗は、上記ダイオード群を流れる電流に応じて、上記ダイオード群を構成するダイオードのいずれかが破壊される電圧未満にまで、上記保護抵抗に印加される電圧を降下させることによって、上記入力端子に印加される電圧を降下させ、上記分圧用抵抗が上記半導体集積回路に内蔵されており、上記保護抵抗が上記半導体集積回路の外部に設けられており、上記保護抵抗が炭素被膜抵抗または金属皮膜抵抗であることを特徴としている。
上記の構成によれば、入力端子に過電圧が発生したときに、ダイオード群を構成する各ダイオードのブレークダウンによって、電流がダイオード群を流れるが、保護抵抗は、このダイオード群を流れる電流によって、自身に印加された電圧を降下させる。換言すれば、保護抵抗に印加された電圧は、保護抵抗の抵抗値、およびダイオード群を流れる電流の電流値に応じて電圧降下され、その後、保護抵抗が接続されている入力端子に印加される。
ここで、具体的に保護抵抗は、上記の電圧降下により、自身に印加された電圧を、ダイオードのいずれかが破壊される電圧未満にまで降下させる。換言すれば、保護抵抗は、ダイオード群を流れる電流に応じた、自身に印加された電圧の降下によって、該印加された電圧を、各ダイオードが破壊しない電圧にまで降下させるような抵抗値となっている。
上記の構成によれば、ダイオード群を構成する各ダイオードのブレークダウン時において、入力端子から半導体集積回路に過電圧が印加される虞がなくなるので、同半導体集積回路に設けられた、ESD対策用のダイオードが破壊されることを防止することができる。
また、保護抵抗は、半導体集積回路の入力端子に接続されているが、半導体集積回路に接続されている。つまり、保護抵抗は、半導体集積回路の外部に設けられている。この理由は、以下にある。
半導体集積回路に内蔵された分圧用抵抗の、入力端子に発生するESDに対する耐性が低いことは上述した。半導体集積回路は、このような分圧用抵抗が、上記ESDに起因して破壊されてしまうことを防止するために、ダイオード群を内蔵している。
そして、仮に保護抵抗を半導体集積回路に内蔵した場合、保護抵抗は、上述した分圧用抵抗の場合と同様に、入力端子に発生するESDに起因して、破壊されてしまう虞がある。
一方、保護抵抗を半導体集積回路の外部に設けた場合、保護抵抗は、炭素被膜抵抗または金属皮膜抵抗といった、一般的な電気回路において使用されている抵抗を用いて構成することが可能となる。炭素被膜抵抗および金属皮膜抵抗は、半導体集積回路に内蔵した抵抗と比較して、ESDに対する耐性を高くすることができる。従って、保護抵抗を半導体集積回路の外部に設けることにより、保護抵抗におけるESDへの耐性を向上させることが可能となる。
また、本発明のダイオード保護回路の、上記保護抵抗の抵抗値は、上記分圧用抵抗を構成する抵抗の合成抵抗の値の0.2%未満であるのが好ましい。
分圧用抵抗の合成抵抗の値にとって無視できない程度に、保護抵抗の抵抗値が大きいと、合成抵抗の分圧比の、相対的なばらつきが大きくなってしまい、入力端子に印加される電圧のレベルが大きくばらつく要因となってしまう。これにより、入力端子に印加された電圧のレベルに応じた処理を行う必要がある半導体集積回路において、該処理を正常に行うことが困難となる虞がある。保護抵抗は、分圧用抵抗の合成抵抗に対して、相対的なばらつきを発生させる要因となる。従って、保護抵抗の抵抗値は、できるだけ小さいことが望ましい。
上記の構成によれば、保護抵抗の抵抗値は、分圧用抵抗の合成抵抗の値の0.2%未満と、非常に小さい。従って、保護抵抗を設けることに起因して、入力端子に印加される電圧のレベルが大きくばらつくことを抑制し、半導体集積回路における上記の処理を正常に行うことができる。
また、本発明のダイオード保護回路の、上記保護抵抗は、上記半導体集積回路の主電源電圧より大きい電圧、または上記半導体集積回路の定格電圧より大きい電圧が印加される、上記入力端子に接続されているのが好ましい。
上記の構成によれば、半導体集積回路に設けられた入力端子であって、該半導体集積回路の主電源電圧または定格電圧よりも大きなレベルの電圧を扱う入力端子に発生するESDへの対策を施す、ダイオード群の破壊を防止することができる。
また、本発明のLNBは、本発明のダイオード保護回路と、上記半導体集積回路とを備えたものであるのが好ましい。
上記の構成によれば、本発明のダイオード保護回路と同様の効果を、LNBにおいて得ることができる。
また、本発明のLNBの、上記半導体集積回路は、PLL回路と、無線周波数を有する信号と、上記PLL回路の出力信号とを混合することで、中間周波信号に変換する混合回路と、上記中間周波信号を増幅する中間周波増幅器とを備えるのが好ましい。
上記の構成によれば、半導体集積回路は、PLL回路を備えているため、動作が安定した局部発振器を実現することができる。
また、上記の構成によれば、LNBは、混合回路の機能と、中間周波増幅器の機能とを収めた、半導体集積回路を備えている。この半導体集積回路を使用したこのLNBは、局部発振器(PLL回路)を備えた局部発振回路の動作の安定化、ならびに部品数の大幅な削減をもたらす。
また、本発明のアンテナシステムは、本発明のLNBを備えたものであるのが好ましい。
上記の構成によれば、本発明のLNB、ひいては本発明のダイオード保護回路と同様の効果を、アンテナシステムにおいて得ることができる。
以上のとおり、本発明のダイオード保護回路は、入力端子と、上記入力端子に印加された電圧を分圧する、複数の抵抗から成る分圧用抵抗と、一端が上記入力端子に接続されていると共に他端が接地されており、かつ、上記分圧用抵抗に流れる電流を所定値以下に抑制するための、1または複数のダイオードから成るダイオード群とを備えた半導体集積回路に接続される、上記ダイオード群を保護するダイオード保護回路であって、上記入力端子に接続される抵抗である保護抵抗を備え、上記保護抵抗は、上記ダイオード群を流れる電流に応じて、上記ダイオード群を構成するダイオードのいずれかが破壊される電圧未満にまで、上記保護抵抗に印加される電圧を降下させることによって、上記入力端子に印加される電圧を降下させ、上記分圧用抵抗が上記半導体集積回路に内蔵されており、上記保護抵抗が上記半導体集積回路の外部に設けられており、上記保護抵抗が炭素被膜抵抗または金属皮膜抵抗である構成である。
従って、本発明は、半導体集積回路に設けられた端子に発生するESDへの対策を施すために同半導体集積回路に設けられた、ダイオードが破壊されることを防止するという効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
〔ダイオード保護回路の構成〕
図1は、本実施の形態に係るダイオード保護回路の構成を示す回路図である。
ダイオード保護回路の説明に先立って、本実施の形態に係るMOP−IC(半導体集積回路)101は、図11に示すMOP−IC101と同様の構成である。
すなわち、図1に示すとおり、MOP−IC101は、端子(入力端子)CNT_IN、および端子CNT_INに発生するESDへの対策用の回路である回路120を備えている。なお、端子CNT_INは、MOP−IC101の主電源電圧(3.3V)よりも大きなレベルの電圧(最大19V程度)が印加される端子である。また、端子CNT_INは、MOP−IC101の定格電圧(5V以下)よりも大きなレベルの電圧(最大19V程度)が印加される端子であるとも言える。
回路120は、ダイオードD1〜D4、分圧用抵抗R1およびR2、安定化容量C1、ならびに電圧検出回路121を備えている。分圧用抵抗R1の抵抗値は、420kΩとした。分圧用抵抗R2の抵抗値は、80kΩとした。また、分圧用抵抗R1およびR2が互いに直列に接続されているため、分圧用抵抗R1およびR2の抵抗値の合計(合成抵抗)は、500kΩである。
そして、ダイオード群を構成するダイオードD3およびD4は、以下の動作により、分圧用抵抗R1およびR2の破壊を防ぐ機能を有する。
すなわち、ESDに起因して、端子CNT_INからMOP−IC101に入力された電圧において、過度な電位上昇が発生した場合、ダイオードD3およびD4は、逆方向バイアスが与えられることによって、ブレークダウンを起こす。これにより、アナログ回路用のグランドへと電流ΔICNT_INが流れ、分圧用抵抗R1およびR2には過度の電流が流れないので、分圧用抵抗R1およびR2の破壊を防ぐことが可能である。
また、ESDに起因して、端子CNT_INからMOP−IC101に入力された電圧が、負電圧へと電圧降下する場合、ダイオードD3およびD4は、順方向バイアスが与えられる。これにより、電流ΔICNT_INは、アナログ回路用のグランドから、ダイオードD3およびD4を介して、端子CNT_INへと流れる(図13参照)。これにより、分圧用抵抗R1およびR2には過度の電流が流れないので、分圧用抵抗R1およびR2の破壊を防ぐことが可能である。
ここで、端子CNT_INには、ダイオード保護回路として、保護抵抗RCNT_INが接続されている。
保護抵抗RCNT_INは、一端が端子CNT_INに接続されており、他端がローパスフィルタ94に接続されている。保護抵抗RCNT_INには、LNB100´への入力電圧VIN(以下、単に「入力電圧VIN」と称する)が、ローパスフィルタ94を通過して得られた電圧が印加される(後述の図7参照)。
また、保護抵抗RCNT_INは、MOP−IC101の外部に設けられている、すなわち、MOP−IC101に外付けされている。ESDに対する耐性を高くするために、保護抵抗RCNT_INは例えば、一般的な電気回路において使用される、炭素被膜抵抗または金属皮膜抵抗であるのが好ましい。
さらに、保護抵抗RCNT_INの抵抗値は、ダイオードD3およびD4を流れる電流に応じて、ダイオードD3および/またはD4がショートモードで破壊される電圧未満にまで、保護抵抗RCNT_INに印加された電圧を降下させるような値である。保護抵抗RCNT_INの抵抗値の具体例については、後述する。
端子CNT_INにおけるESDの発生等に起因して、端子CNT_INに過電圧が発生したときに、ダイオードD3およびD4は、ブレークダウンを起こし、これによって、電流ΔICNT_INがダイオードD3およびD4を流れる。保護抵抗RCNT_INは、電流ΔICNT_INによって、保護抵抗RCNT_INに印加された電圧を降下させる。また、保護抵抗RCNT_INは、この降下させた電圧を、保護抵抗RCNT_INに接続された端子CNT_INに印加する。換言すれば、保護抵抗RCNT_INに印加された電圧は、保護抵抗RCNT_INの抵抗値、および電流ΔICNT_INの電流値に応じて電圧降下され、その後、端子CNT_INに印加される。図1には、電流ΔICNT_INがアナログ回路用のグランドへと流れる様子を図示しているが、このとき、保護抵抗RCNT_INには、電流ICNT_INが、端子CNT_INを通じて流れる(供給される)。
また、保護抵抗RCNT_INは、電流ΔICNT_INに応じた、保護抵抗RCNT_INに印加された電圧の降下によって、該電圧を、ダイオードD3および/またはD4がショートモードで破壊しない電圧にまで降下させるような抵抗値となっている。
従って、ダイオードD3およびD4のブレークダウン時において、端子CNT_INからMOP−IC101に過電圧が印加される虞がなくなる。結果、MOP−IC101に設けられた、ESD対策用のダイオードD3および/またはD4が破壊されることを防止することができる。
また、保護抵抗RCNT_INが、MOP−IC101の外部に設けられている理由は、以下にある。
分圧用抵抗R1およびR2の、端子CNT_INに発生するESDに対する耐性が低いことは上述した。MOP−IC101は、このような分圧用抵抗R1およびR2が、上記ESDに起因して破壊されてしまうことを防止するために、ダイオードD3およびD4を内蔵している。
そして、仮に保護抵抗RCNT_INをMOP−IC101に内蔵した場合、保護抵抗RCNT_INは、上述した分圧用抵抗R1およびR2の場合と同様に、端子CNT_INに発生するESDに起因して、破壊されてしまう虞がある。
一方、保護抵抗RCNT_INをMOP−IC101の外部に設けた場合、保護抵抗RCNT_INは、炭素被膜抵抗または金属皮膜抵抗といった、一般的な電気回路において使用されている抵抗を用いて構成することが可能となる。炭素被膜抵抗および金属皮膜抵抗は、MOP−IC101に内蔵した抵抗(例えば、分圧用抵抗R1およびR2)と比較して、ESDに対する耐性を高くすることができる。従って、保護抵抗RCNT_INをMOP−IC101の外部に設けることにより、保護抵抗RCNT_INにおけるESDへの耐性を向上させることが可能となる。
ところで、MOP−IC101は、Vertical path上のプリアンプ(HEMT85a)にバイアスを供給するV偏波信号の受信時と、Horizontal path上のプリアンプ(HEMT85b)にバイアスを供給するH偏波信号の受信時とを切換える。以下、このV偏波信号の受信時とH偏波信号の受信時との切換を、偏波切換と称する。
上記偏波切換は、上述したとおり、端子CNT_INに印加される電圧VCNT_INのレベル(端子電圧)に応じて行われる。具体的に、電圧VCNT_INは、分圧用抵抗R1およびR2によって分圧され、この分圧により生成された電圧は、電圧検出回路121に印加される。電圧検出回路121は、自身に印加された、分圧用抵抗R1およびR2により分圧された電圧のレベルを検出する。電圧検出回路121による電圧のレベルの検出結果に応じて、MOP−IC101は、上述したとおり、ユニバーサルLNBの仕様に準じて、HEMT制御回路105により、偏波切換を行う。
ここで、分圧用抵抗R1およびR2の抵抗値の合計にとって無視できない程度に、保護抵抗RCNT_INの抵抗値が大きいと、分圧用抵抗R1と分圧用抵抗R2とによる分圧比の、相対的なばらつきが大きくなってしまう。このばらつきは、電圧VCNT_INのレベルが大きくばらつく要因となってしまう。これにより、MOP−IC101において、上記偏波切換を正常に行うことが困難となる虞がある。
そこで、保護抵抗RCNT_INの抵抗値は、分圧用抵抗R1およびR2の抵抗値の合計(ここでは、500kΩ)の0.2%未満であるのが好ましい。これにより、保護抵抗RCNT_INは、保護抵抗RCNT_INを設けることに起因して、電圧VCNT_INのレベルのばらつきが大きくなることを抑制し、電圧VCNT_INが偏波切換電圧のスペック(14V〜16V)から逸脱することを抑制する。結果、MOP−IC101における上記偏波切換を正常に行うことができる。
保護抵抗RCNT_INを追加することで、偏波切換電圧自体の値が高くなるが、この現象に対しては、MOP−IC101の設計前に認識できていれば、MOP−IC101の内部の回路を、保護抵抗RCNT_INの値に合わせて設計すれば、対応可能である。本願発明者はさらに、保護抵抗RCNT_INを追加することで、分圧用抵抗R1と分圧用抵抗R2とによる分圧比のばらつきも、併せて大きくなるという問題が発生することを見出した。MOP−IC101の設計に関しては、MOP−IC101が正常に動作するように設計可能な、分圧比のばらつきの限度というものが当然存在する。分圧用抵抗R1と分圧用抵抗R2とによる分圧比のばらつきを、そのばらつき内に収めるために、保護抵抗RCNT_INの抵抗値は、分圧用抵抗R1およびR2の抵抗値の合計の0.2%以内とするのが好ましい。
〔LNBおよびアンテナシステムの構成〕
図7は、保護抵抗RCNT_INおよびMOP−IC101を備えたLNB100´の構成を示す回路ブロック図である。
図7に示すとおり、LNB100´は、図10に示すLNB100の構成に、端子CNT_INに接続された保護抵抗RCNT_INを追加した構成である。
周波数が10.7〜12.75GHzであるLNB100´への到来信号は、各偏波(H偏波およびV偏波)用のアンテナプローブ82によって受信され、LNA83によって低雑音増幅が施され、BPF86を通過する。BPF86およびその前段に設けられた各部材の詳細な説明については、LNB80の回路ブロック図(図9)を参照して、既に説明したので、ここでは省略する。
BPF86を通過した信号は、RF信号RFINとして、MOP−IC101に入力される。
MOP−IC101に入力されたRF信号RFINは、RFアンプ102によって増幅される。RFアンプ102によって増幅された信号(無線周波数を有する信号)は、ミキサ(混合回路)103にて、VCO106から供給される9.75GHzまたは10.6GHzの局部発振成分と混合され、950MHz〜2.15GHzの中間周波数にダウンコンバート(周波数変換)される。そして、該ダウンコンバートされた信号(中間周波信号)は、IFアンプ(中間周波増幅器)104によって増幅され、IF信号IFOUTとして、MOP−IC101から出力される。
また、VCO106に加え、チャージポンプ107、位相比較器108、分周器109、プリスケーラ110、交流電圧源111、および水晶振動子112は、PLL回路を構成している。該PLL回路は、周知の技術により上記局部発振成分を生成する、周知の回路であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
保護抵抗RCNT_INは、上述したとおり、一端がMOP−IC101の端子CNT_INに接続されており、他端がローパスフィルタ94に接続されている。
さらに、LNB100´を、図8に示す衛星放送受信システム70のLNB71として用いることにより、アンテナシステムを構成することが可能である。このとき、LNB100´は、入力導波管81をアウトドアユニット72に接続し、出力端子91を、同軸ケーブル75を通じてインドアユニット76に接続すればよい。
〔保護抵抗の抵抗値と、保護抵抗によるダイオード群の保護効果との関係の検証〕
本実施の形態では、図1に示すように、端子CNT_IN側にカソードを、グランド側にアノードを接続した2段接続ダイオードを、ESD対策回路として内蔵したMOP−IC101に対して、該端子CNT_INに保護抵抗RCNT_INを接続した。これにより、本実施の形態では、該2段接続ダイオードのブレークダウン領域での過電圧による、各ダイオードの破壊を防止することを実現している。
図2は、端子CNT_INに印加される電圧VCNT_INのレベルと、ダイオードD3およびD4を流れる電流ΔICNT_INの電流値との関係を示すグラフから、保護抵抗RCNT_INの抵抗値を決定するシミュレーションを示す図である。
まず、図2に示すように、ダイオードD3およびD4のブレークダウン時における、電圧VCNT_INのレベルと、逆方向電流(電流ΔICNT_IN)の電流値との実測値に基づいて、保護抵抗RCNT_INの抵抗値は、1V/23mA≒44Ωよりも若干高い、47Ωとした。
図3は、LNB100´の出力端子91に、オン状態の安定化電源131(図14参照)を接続する前後における、経過時間(横軸)と、入力電圧VINならびに電圧VCNT_INのレベル(縦軸)との関係を示すグラフである。図3に示すグラフは、上述したとおり、保護抵抗RCNT_INの抵抗値を47Ωとした場合の例である。なお、図3中のTCが、該接続の直後に、オーバーシュートに起因して、電圧のレベルが最大となる瞬間を示している。
図3によれば、保護抵抗RCNT_INの抵抗値を47Ωとした場合、オーバーシュートの発生時における、入力電圧VINの最大レベルは、31.3Vであった。そしてこの時、端子CNT_INに印加された電圧VCNT_INの最大レベルは、25.3Vに抑制され、ダイオードD3およびD4は、破壊されなかった。
しかしながら、保護抵抗RCNT_INの抵抗値を47Ωとした場合、1回きりの実験では、ダイオードD3およびD4が破壊されないという結果が出たものの、数回の接続実験を繰り返す中で、電圧VCNT_INが26.5V以上となったことがあった。そしてこの時、ダイオードD3および/またはD4は、破壊された。ダイオードD3および/またはD4の破壊時、オーバーシュートの発生による、入力電圧VINの最大レベルは、34Vであった。以上のことから、保護抵抗RCNT_INの抵抗値を、図2のシミュレーションにより決定した47Ωとすると、ダイオードD3および/またはD4の破壊を確実に防止するまでには至らないということが分かった。
そこで、続いては、オフ状態の安定化電源131を出力端子91に接続した後、安定化電源131の出力スイッチにより電源電圧を発生させることで、オーバーシュートがほとんど発生しないようにした。このとき、入力電圧VINは、オーバーシュートがほとんど発生していないため、定常状態となっている。
図4は、保護抵抗RCNT_INの抵抗値に応じた、保護抵抗RCNT_INによる効果の検証結果を示す表およびグラフである。具体的に、図4の表は、定常状態にある入力電圧VINのレベルに対する、電圧VCNT_INのレベルならびに電流ΔICNT_INの電流値を、保護抵抗RCNT_INの抵抗値が100Ω、200Ω、300Ω、および1kΩである場合の各々について測定した結果である。また、図4の「ESDダイオードのブレークダウン領域の電流増加」なるグラフは、図4の表から得られた、入力電圧VINのレベル(横軸)と、電流ΔICNT_INの電流値(縦軸)との関係を示したものである。また、図4の「ESDダイオード保護抵抗の効果」なるグラフは、図4の表から得られた、入力電圧VINのレベル(横軸)と、電圧VCNT_INのレベル(縦軸)との関係を示したものである。ここでは、ダイオードD3および/またはD4が破壊される電圧VCNT_INのレベルとして、26.5Vを定めた。
図4に示す測定結果によれば、保護抵抗RCNT_INの抵抗値が200Ω以上であれば、たとえオーバーシュートに起因して、入力電圧VINの最大レベルが40Vになったとしても、電圧VCNT_INの最大レベルは、26.5V未満に抑制されるという結果が得られた。
また、端子CNT_INは、入力された電圧値に応じた偏波切換を行うために、分圧用抵抗R1およびR2による分圧後の電圧を検出する、電圧検出回路121に接続されている。ここで、保護抵抗RCNT_INの抵抗値が、各分圧用抵抗の抵抗値(R1:420kΩ、R2:80kΩ、計:500kΩ)の比率に影響するほど大きいと、上記分圧後の電圧にばらつきが発生し、電圧検出回路121は、電圧の判定結果を誤ってしまう危険がある。
より具体的に、電圧検出回路121は、入力される上記分圧後の電圧が、所定の閾値を超えるか超えないかで、偏波切換を行うか否かを判定している。MOP−IC101は、保護抵抗RCNT_IN無しの状態における閾値が、約15Vであるように設計されている。従って、保護抵抗RCNT_INの追加に起因して、閾値と比較されるべき、上記分圧後の電圧が降下することで、相対的に、該閾値は高くなってしまう。該閾値が高くなると、電圧検出回路121は、誤判定を生じる可能性がある。具体的には、電圧VCNT_IN=16Vの時に、V偏波の受信時からH偏波の受信時へと切り替わらないというケースもあり得る。
そこで、保護抵抗RCNT_INの抵抗値に対する、V偏波信号の受信時からH偏波信号の受信時へと偏波を切換るための偏波切換電圧の変動、ならびに、H偏波信号の受信時からV偏波信号の受信時へと偏波を切換るための偏波切換電圧の変動を確認した。この確認の結果を、図5に示した。
図5は、保護抵抗RCNT_INの抵抗値と、MOP−IC101における偏波切換電圧のレベルとの関係を示す表およびグラフである。具体的に、図5の表は、
保護抵抗RCNT_INの抵抗値(ESDダイオード保護抵抗RCNT_IN)
オーバーシュート発生時における電圧VCNT_INの最大レベル(VCNT_INのオーバーシュート電圧)
偏波切換電圧のレベル(偏波切換電圧)
偏波切換電圧のレベルの変動値(保護抵抗RCNT_IN無しの状態に対する、偏波切換電圧の変動値)
を示している。さらに、偏波切換電圧のレベル、および偏波切換電圧のレベルの変動値については、
H偏波信号の受信時からV偏波信号の受信時への偏波切換時(H−Pol⇒V−Pol)
V偏波信号の受信時からH偏波信号の受信時への偏波切換時(V−Pol⇒H−Pol)
両偏波切換時における各変動値の平均(Ave:偏波切換電圧のレベルの変動値のみ)
を示している。
図5のグラフは、図5の表における、保護抵抗RCNT_INの抵抗値(横軸)と、両偏波切換時における各変動値の平均(縦軸)との関係を示したグラフである。
図5によれば、両偏波切換時における各変動値の平均で見ると、偏波切換電圧は、保護抵抗RCNT_INの抵抗値が1kΩ以上になると急激に高くなることがわかった。従って、保護抵抗RCNT_INの抵抗値は、1kΩ未満であるのが好ましいと考えられる。抵抗値1kΩ未満とは、すなわち、分圧用抵抗R1およびR2の抵抗値の合計(500kΩ)の0.2%未満に相当する。通常、仮にMOP―ICの外付けに分圧抵抗を設けた場合には、設計上、分圧用抵抗としてD公差の抵抗を使用する必要がある。D公差の抵抗は、公差0.5%であることからも、1kΩ未満という保護抵抗RCNT_INの抵抗値は、妥当な値であると考えられる。
〔実施例〕
以上の図2〜図5に示す検証結果に基づいて、保護抵抗RCNT_INの抵抗値は、300Ωとした。なおこのとき、両偏波切換時における各変動値の平均は、保護抵抗RCNT_INを設けない場合と比較して、約0.04V高くなるにとどまっている。
図6は、LNB100´の出力端子91に、オン状態の安定化電源131を接続する前後における、経過時間(横軸)と、入力電圧VINならびに電圧VCNT_INのレベル(縦軸)との関係を示すグラフである。図6に示すグラフは、上述したとおり、保護抵抗RCNT_INの抵抗値を300Ωとした場合の例である。なお、図6中のTCが、該接続の直後に、オーバーシュートに起因して、電圧のレベルが最大となる瞬間を示している。
図6によれば、保護抵抗RCNT_INの抵抗値を300Ωとした場合、オーバーシュートの発生時における、入力電圧VINの最大レベルは、31.9Vであった。そしてこの時、端子CNT_INに印加された電圧VCNT_INの最大レベルは、23.9Vに抑制され、ダイオードD3および/またはD4は、破壊されなかった。この接続実験は、100台のLNB100´に対して、それぞれ20回繰り返した。結果、100台のLNB100´の全てにおいて、ダイオードD3および/またはD4の破壊は見られず、ブレークダウン領域での過電圧によるダイオードD3および/またはD4の破壊を防止することが実現できた。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。