<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図9によって説明する。
図1は本実施形態のドアトリム10を車両室内側から見た正面図である。図1に示すように、本実施形態のドアトリム10は、合成樹脂などによって板状に形成されたトリムボード11と、トリムボード11に取り付けられるアームレスト13を備えている。さらに、ドアトリム10は、その車室内側にドアインサイドハンドル12やドアポケット15などを備えている。
トリムボード11は、ドアトリム10の本体部を構成する部材であり、合成樹脂により一体に成形されている。トリムボード11には、その裏面(車両外側の面)側からアームレスト13を取り付けるための開口部16が形成されている。アームレスト13を当該開口部16に取り付けた状態では、開口部16は閉塞され、アームレスト13の表面(車室内側の面)と、トリムボード11の表面(車室内側の面)とがほぼ面一となる。
トリムボード11の開口部16に取り付けられるアームレスト13は、車両前方側に窓の開閉等の操作を行う操作スイッチ部14を有し、車両後方側にアームレスト本体20を有している。アームレスト本体20は、車室内側に張り出すように形成されている。なお、図1の左側が車両前方側であり、右側が車両後方側である。
図2はアームレスト本体20を上側から見た斜視図である。本実施形態においては、アームレスト本体20の厚みが2.0〜2.5mmに設定され、通常の使用時における実用強度が確保されている。アームレスト本体20の周縁(トリムボード11の開口部16の開口縁17に配される縁部)のうち、上縁と下縁には、車室外側方向(図示右側方向)に張り出し形成されたフランジ部21が設けられている。フランジ部21の、アームレスト本体20の車内側に配される面と連なるフランジ面21Aには、フランジ部21の長さ方向に沿って、全体として凹凸状をなす部分22が設けられている。
凹凸状の部分22は、車室内側から車室外側方向(フランジ部21の幅方向)に延びる複数の側壁23と、隣り合う側壁23の車室内側の端部を連結する複数の第1の連結壁24と、隣り合う側壁23の車室外側の端部間を連結する複数の第2の連結壁25とから構成されている。複数の側壁23はフランジ部21の長さ方向に沿って間隔をあけて設けられており、第1の連結壁24と第2の連結壁25とが、交互に設けられている。
第1の連結壁24は、側壁23の車室内側の端部から連なって隣り合う側壁23の車室内側の端部に連なるとともに、トリムボード11の車室外側面に沿って配され、第2の連結壁25は、側壁23の車室外側の端部から連なって隣り合う側壁23の車室外側の端部に連なっている。
本実施形態においては、図2に示すように、第1の連結壁24として、トリムボード11の車室外側面に締結するためのボス(図示せず)を挿通させるボス挿通孔26(締結部26)が形成された第1の連結壁24Aと、ボス挿通孔26(締結部26)が形成されていない第1の連結壁24Bとが、交互に設けられている。
図2および図3に示すように、締結部26が形成された第1の連結壁24Aとフランジ面21Aとの間、ならびに、この締結部26が形成された第1の連結壁24Aに連なる側壁23(締結部側壁23Aという)とフランジ面21Aとの間にはそれぞれ隙間27が設けられている。締結部26が形成されていない第1の連結壁24B、この第1の連結壁24Bに連なる側壁23B、および、第2の連結壁25は、フランジ面21Aから立設されており、隙間27は設けられていない。
本実施形態において、締結部26が形成されていない第1の連結壁24Bと、この第1の連結壁24Bに連なる側壁23Bとから構成される凸状の部分は、トリムボード11に車両外側から当接し、アームレスト本体20のトリムボード11に対する幅方向の位置決めをする機能を有している。
次に、本実施形態において用いるアームレスト本体20の材料について説明する。アームレスト本体20の材料としては、熱可塑性樹脂(A)および、反応性官能基を有する樹脂(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物を用いる。
熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(A)としては、加熱溶融により成形可能な樹脂であれば特に制限されるものではないが、例えばポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂、ゴム質重合体、ポリアルキレンオキサイド樹脂等から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を好ましく挙げることができる。
上記に示した熱可塑性樹脂の中で好ましく用いられるのは、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン系樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂であり、とりわけポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂は末端基の反応性が高いため、最も好ましく用いられる。
ポリアミド樹脂とは、アミド結合を有する高分子からなる樹脂のことであり、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするものである。その原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本実施形態においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
特に有用なポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ポリアミドXD6)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
とりわけ好ましいものとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド6/66コポリマー、ポリアミド6/12コポリマーなどの例を挙げることができ、更にこれらのポリアミド樹脂を成形性、耐熱性、靱性、表面性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適であるが、これらの中でポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12が最も好ましい。
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がなく、1%の濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、1.5〜5.0の範囲、特に2.0〜4.0の範囲のものが好ましい。
また、本実施形態において、ポリエステル樹脂とは、主鎖にエステル結合を有する高分子からなる熱可塑性樹脂のことであり、ジカルボン酸(あるいは、そのエステル形成性誘導体)とジオール(あるいはそのエステル形成性誘導体)とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体、あるいはこれらの混合物が好ましく挙げられる。
上記ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。またジオール成分としては炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなど、あるいは分子量400〜6000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどおよびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
これらの重合体ないしは共重合体の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレ−ト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどが挙げられ、ポリエステル組成物の成形性からポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレ−ト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどが特に好ましく、ポリブチレンテレフタレート(ポリブチレンテレフタレート樹脂)が最も好ましい。
また、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、o−クロロフェノール溶媒を用いて25℃で測定した固有粘度が0.36〜1.60、特に0.52〜1.25の範囲にあるものが好適である。また、固有粘度の異なるポリブチレンテレフタレート樹脂を併用しても良く、固有粘度が0.36〜1.60の範囲にあることが好ましい。
更に、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、m−クレゾール溶液をアルカリ溶液で電位差滴定して求めたCOOH末端基量が1〜50eq/t(ポリマー1トン当りの末端基量)の範囲にあるものが耐久性、異方性抑制効果の点から好ましく使用できる。
また、ポリフェニレンオキシド樹脂の具体例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンオキシド)などを挙げることができ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノール)との共重合体のごとき共重合体が挙げられる。中でも、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、特に、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)が好ましい。
また、ポリフェニレンオキシド樹脂は、30℃で測定した還元粘度(0.5g/dlクロロホルム溶液)が、0.15〜0.70の範囲にあるものが好適である。
かかるポリフェニレンオキシド樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で得られるものを用いることができる。例えば、USP3306874号明細書記載のHayによる第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として、酸化重合することにより容易に製造できる。
反応性官能基を有する樹脂(B)とは、反応性官能基を分子鎖中に有する樹脂のことである。
本実施形態で用いる反応性官能基を有する樹脂(B)のベースとなる樹脂としては、前述の熱可塑性樹脂(A)とは異なる熱可塑性樹脂が用いられる。反応性官能基を有する樹脂(B)のベースとなる樹脂としては、特に制限されないが、好ましくはポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアセタール樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂、ゴム質重合体、ポリアルキレンオキサイド樹脂等から、前述の熱可塑性樹脂(A)とは異なるように選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いることができる。中でも反応性官能基を有する樹脂(B)のベースとなる樹脂は、反応性官能基の導入の容易さから、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチレン系樹脂、ゴム質重合体がより好ましく、さらに耐衝撃特性・靭性改良効果の観点から、ゴム質重合体がさらに好ましい。
本実施形態において、ゴム質重合体は、一般的にガラス転移温度が室温より低い重合体を含有し、分子間の一部が共有結合・イオン結合・ファンデルワールス力・絡み合い等により、互いに拘束されている重合体である。ゴム質重合体は、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、該ブロック共重合体の水素添加物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体などのジエン系ゴム、エチレン−プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン−ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン−アクリル酸、エチレン−メタクリル酸などのエチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル、エチレン−メタクリル酸エステルなどのエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、不飽和カルボン酸の一部が金属塩である、エチレン−アクリル酸−アクリル酸金属塩、エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸金属塩などのエチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸金属塩共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、例えばブチルアクリレート−ブタジエン共重合体などのアクリル系弾性重合体、エチレン−酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体などのエチレン−プロピレン非共役ジエン3元共重合体、ブチレン−イソプレン共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどが好ましい例として挙げられる。
熱可塑性樹脂(A)としてポリアミド樹脂を用いる場合には、これらの中でも相溶性の観点から、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸金属塩共重合体が好ましく用いられる。
エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体における不飽和カルボン酸エステルとは、(メタ)アクリル酸エステル好ましくは(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステルである。不飽和カルボン酸エステルの具体的な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
共重合体中のエチレン成分と不飽和カルボン酸エステル成分の重量比は特に制限は無いが、好ましくは90/10〜10/90、より好ましくは85/15〜15/85の範囲である。
エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体の数平均分子量は特に制限されないが、流動性、機械的特性の観点から1000〜70000の範囲が好ましい。
エチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸金属塩共重合体における不飽和カルボン酸の具体的な例としては、(メタ)アクリル酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸金属塩としては、(メタ)アクリル酸金属塩などが挙げられる。 不飽和カルボン酸金属塩の金属は、特に限定されないが、好ましくは、ナトリウムなどのアルカリ金属やマグネシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛などが挙げられる。
エチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸金属塩共重合体中の不飽和カルボン酸成分と不飽和カルボン酸金属塩成分の重量比は特に制限されないが、好ましくは95/5〜5/95、より好ましくは90/10〜10/90の範囲である。
エチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸金属塩共重合体の数平均分子量は特に制限されないが、流動性、機械的特性の観点から1000〜70000の範囲が好ましい。
反応性官能基を有する樹脂(B)に含まれる反応性官能基は、熱可塑性樹脂(A)中に存在する官能基と互いに反応するものであれば特に制限されないが、好ましくは、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル金属塩,水酸基、酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、オキサゾリン基、スルホン酸基等から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。この中でもアミノ基、カルボキシル基、カルボキシル金属塩、エポキシ基、酸無水物基、オキサゾリン基は反応性が高く、しかも分解、架橋などの副反応が少ないため、より好ましく用いられる。
酸無水物基をゴム質重合体に導入する場合、その方法としては、通常公知の技術で行うことができ、特に制限はないが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水エンディック酸、無水シトラコン酸、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物等の酸無水物とゴム質重合体の原料である単量体とを共重合する方法、酸無水物をゴム質重合体にグラフトさせる方法などを用いることが出来る。
また、エポキシ基をゴム質重合体に導入する場合、その方法としては、通常公知の技術で行うことができ、特に制限はないが、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどのα,β−不飽和酸のグリシジルエステル化合物等のエポキシ基を有するビニル系単量体を、ゴム質重合体の原料である単量体と共重合する方法、上記官能基を有する重合開始剤または連鎖移動剤を用いてゴム質重合体を重合する方法、エポキシ化合物をゴム質重合体にグラフトさせる方法などを用いることができる。
また、オキサゾリン基をゴム質重合体に導入する場合、その方法としては、通常公知の技術で行うことができ、特に制限はないが、例えば2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体をゴム質重合体の原料である単量体と共重合する方法などを用いることができる。
反応性官能基を有する樹脂(B)における、一分子鎖当りの官能基の数については、特に制限はないが通常1〜10個が好ましく、架橋等の副反応を少なくする為に1〜5個が好ましい。また、官能基を全く有さない分子が含まれていても構わないが、その割合は少ない程好ましい。
本実施形態における熱可塑性樹脂(A)と反応性官能基を有する樹脂(B)との配合比について、特に制限はないが、熱可塑性樹脂(A)の重量Awと反応性官能基を有する樹脂(B)の重量Bwとの比Aw/Bwは、5/95〜95/5の範囲が好ましく、10/90〜90/10の範囲がより好ましく、15/85〜85/15の範囲が最も好ましい。Aw/Bwが、5/95より低いと反応性官能基を有する樹脂(B)同士の反応が顕著となり、粘度の増大により成形加工が困難となる傾向があり、Aw/Bwが、95/5を越えると、熱可塑性樹脂(A)と反応する官能基の量が少なくなり、熱可塑性樹脂組成物の機械特性の向上効果および特異な粘弾性挙動の発現効果が小さくなる傾向があり、好ましくない。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物においては、透過型電子線トモグラフィー法(TEMT)により構造観察がなされる。TEMTとは、透過型電子顕微鏡法(TEM)に計算機トモグラフィー法(CT法)を応用することで、材料内部の構造をナノメートルスケールで3次可視化する顕微鏡法である。TEMが、電子線に対する試料の透過像を得る技術であることを利用し、試料を電子線に対して傾斜させ多数の透過像を撮影し、これら一連の傾斜透過像をCT法により再構成することで3次元画像を得る手法である。
TEMTにより3次元画像を得る実験手法として、特に制限はないが、代表的な一例を挙げる。2次元のTEMによる観察用試料の作成と同様、公知の技術により、熱可塑性樹脂組成物の薄切品(試料)を作成し、それを適当な染色剤で染色するあるいは染色した後、試料を作成する。その試料を、3次元電子顕微鏡(例えばJEOL社製JEM−2200FS)に供し、例えば−60°〜+60°の傾斜角度の範囲で、1°ずつのステップで、試料を傾斜させるとともに、透過像を撮影し、121枚の傾斜透過像を得る。画像撮影前に、試料表面に直径10nm程度の金粒子を蒔いておき、この金粒子の傾斜に伴う動きを追跡することで、透過像の傾斜軸補正を行う。傾斜軸に対する一連の傾斜透過像から、3次元データを再構成し、3次元透過画像を得る。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物においては、熱可塑性樹脂(A)または反応性官能基を有する樹脂(B)の一方が連続相、もう一方が分散相を形成する。連続相を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂(A)または反応性官能基を有する樹脂(B)のどちらかであり、特に限定されないが、熱可塑性樹脂(A)としての特性を主に要求するならば、連続相は熱可塑性樹脂(A)で構成されている方が好ましい。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物においては、分散相中に、連続相成分を含む3次元的な連結構造Csが形成される。ここでいう3次元的な連結構造とは、TEMTにより得られた3次元透過画像により確認される連結構造であり、粒子状ではなく、粒子が3次元的につながった構造であれば特に制限はないが、柱状、T字状、十字状、ネットワーク状などが挙げられる。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物において、分散相のうち、平均粒子径が1000nm以下の分散相Dpの断面に占める前記連結構造Csの面積の割合が、10%以上である。ここでいう平均粒子径とは、TEMTにおける傾斜角0°における透過画像の画像解析により算出することができる。画像解析としては、Scion Corporation社製画像解析ソフト「Scion Image」等の画像解析ソフトを使用して、前記透過画像中に存在する分散相の直径および短径の平均値を算出し、直径と短径の平均値として平均粒子径を算出する。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物において、分散相中の連続相成分を含む3次元的な連結構造Csは下記のようにして形成される。すなわち、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物を製造する際、熱可塑性樹脂(A)と反応性官能基を有する樹脂(B)の一方が連続相、もう一方が分散相を形成するが、熱可塑性樹脂(A)と反応性官能基を有する樹脂(B)は、連続相と分散相の界面で反応する。その界面での反応が進行することにより、反応物量は増大し、界面で生成したその反応物が分散相中に引き抜かれる。さらに反応が進行することにより、分散相中に引き抜かれる反応物量が増大し、その反応物同士が連結することにより、分散相中に3次元的な連結構造が形成される。また、界面での反応により生成した反応物は、界面活性剤として働くため、分散相が微細化し、その分散相の合体・粗大化を阻止して分散状態を安定させる。このように、熱可塑性樹脂(A)と反応性官能基を有する樹脂(B)の反応が進行し、分散相中に連続相成分を含む3次元的な連結構造Csが形成され、平均粒子径が1000nm以下の分散相Dpの断面に占める連結構造Csの面積の割合が、10%以上となるときに、この熱可塑性樹脂組成物の有する効果、すなわち、特異な粘弾性挙動が顕著に発現し、高速変形時における衝撃エネルギー吸収性能および振動エネルギー吸収性能が顕著に優れるという効果を発現する。
平均粒子径が1000nm以下の分散相Dpの断面に占める連結構造Csの面積の割合が、10%以上であるが、特異な粘弾性挙動のより顕著な発現のために、好ましくは、平均粒子径が800nm以下、さらに好ましくは500nm以下の分散相Dpの断面に占める連結構造Csの面積の割合が、好ましくは、15%以上、さらに好ましくは20%以上である。ここでいう分散相Dpの断面とは、TEMTにおける傾斜角0°における透過画像における断面を表す。分散相Dpの断面に占める連結構造Csの面積の割合の算出方法は、特に制限されないが、染色剤として、適当な染色剤を使用し、分散相および連続相のどちらか一方を染色し、透過画像において分散相および連続相に色のコントラストを付けることにより、分散相および連続相を区別することができる。そのため、連続相成分を含む連結構造Csについても、同様に、分散相との色のコントラストを付けることができる。分散相中Dpの断面の、分散相Dpとは色の異なる部分を、連続相成分を含む連結構造Csの断面と定義することができ、連続相成分を含む連結構造Csの断面積を、分散相Dpの断面積で除した値が、分散相Dpの断面に占める連結構造Csの面積の割合となる。面積の算出方法に特に制限はないが、例えば、前記Scion Corporation社製画像解析ソフト「Scion Image」等の画像解析ソフトを使用して、算出することができる。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物は、引張試験において、引張速度V1、V2のときの引張弾性率をE(V1)、E(V2)とすると、V1<V2のとき、E(V1)>E(V2)であることが好ましい。この場合の引張試験とは、規格に明記された方法に従って行われる。引張弾性率とは、応力−歪み曲線の初期直線部分の勾配を示す。
また、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物は、引張試験において、引張速度V1、V2のときの引張破断伸度をε(V1)、ε(V2)とすると、V1<V2のとき、ε(V1)<ε(V2)であることが好ましい。引張破断伸度とは、破壊の瞬間における伸びを示す。上記関係式は、引張速度10mm/min以上500mm/min以下の範囲内における、あらゆるV1、V2に対して成立することが好ましく、さらには1mm/min以上1000mm/min以下の範囲内における、あらゆるV1、V2に対して成立することが好ましい。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物を製造する方法としては、溶融状態での製造や溶液状態での製造等が使用できるが、反応性向上の点から、溶融状態での製造が好ましく使用できる。溶融状態での製造については、押出機による溶融混練やニーダーによる溶融混練等が使用できるが、生産性の点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましく使用できる。押出機による溶融混練については、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等の押出機を1台以上で使用できるが、混練性、反応性、生産性の向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく使用でき、二軸押出機を用いた溶融混練による方法が最も好ましい。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物を製造する際、二軸押出機を使用する場合、特に制限はないが、混練性、反応性の向上の点から、L/D0の値が50以上であることが好ましく、より好ましくは60〜200、中でも80〜200の範囲であればさらに好ましい。かかるL/D0とは、スクリュー長さLを、スクリュー直径Dで割った値のことである。スクリュー長さとは、スクリュー根元の原料が供給される位置(フィード口)にあるスクリューセグメントの上流側の端部から、スクリュー先端部までの長さである。ここで、二軸押出機のスクリューは、フルフライト、ニーディングディスクなどの長さや形状的特徴が異なるスクリューセグメントが組み合わされて構成されている。また、押出機において、原材料が供給される側を上流、溶融樹脂が吐出される側を下流ということがある。
なお、サンプリングバルブ等を有する押出機を使用して、押出機の途中部分からサンプリングする場合、スクリュー長さLが“スクリュー根元の原料が供給される位置(フィード口)にあるスクリューセグメントの上流側の端部から該サンプリング箇所までの長さ”に等しく、スクリュー直径D0がサンプリングバルブ等を有する押出機のスクリュー直径に等しい通常の押出機で混練したものと同様であるとみなすことができる。ここでいうサンプリング箇所とは、シリンダー内の樹脂が吐出される口に最も近く、かつ上流側のスクリュー軸上の位置を指すものとする。
また、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物を製造する際、二軸押出機を使用する場合、混練性、反応性の向上の点から、二軸押出機のスクリューが複数ヶ所のフルフライトゾーンおよびニーディングゾーンを有していることが好ましい。フルフライトゾーンは1個以上のフルフライトより構成され、ニーディングゾーンは1個以上のニーディングディスクより構成される。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物を製造する際、二軸押出機を使用する場合、複数ヶ所のニーディングゾーンに設置された樹脂圧力計が示す樹脂圧力のうち、最大となるニーディングゾーンの樹脂圧力をPkmax(MPa)、複数ヶ所のフルフライトゾーンに設置された樹脂圧力計が示す樹脂圧力のうち、最小となるフルフライトゾーンの樹脂圧力をPfmin(MPa)とすると、Pkmaxの値が、(Pfmin+0.3)以上の条件で、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物を製造することが好ましく、(Pfmin+0.4)以上の条件がより好ましく、(Pfmin+0.5)以上の条件で製造することがさらに好ましい。
1個以上のニーディングディスクから構成されるニーディングゾーンは、1個以上のフルフライトから構成されるフルフライトゾーンより、溶融樹脂の混練性および反応性に優れる。ニーディングゾーンに溶融樹脂を充満することにより、混練性および反応性が飛躍的に向上する。溶融樹脂の充満状態を示す一つの指標として、樹脂圧力の値があり、樹脂圧力が大きいほど、溶融樹脂が充満している一つの目安となる。すなわち、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物の製造において、二軸押出機を使用する場合、ニーディングゾーンの樹脂圧力を、フルフライトゾーンの樹脂圧力より、ある範囲で高めることにより、反応を効果的に促進させることが可能となり、それにより分散相中における、連続相成分を含む3次元的な連結構造Csの形成が促進され、特異な粘弾性挙動を顕著に発現させることが可能となる。
ニーディングゾーンにおける樹脂圧力を高める方法として、特に制限はないが、ニーディングゾーンの間やニーディングゾーンの下流側に、溶融樹脂を上流側に押し戻す効果のある逆スクリューゾーンや溶融樹脂を溜める効果のあるシールリングゾーン等を導入する方法など好ましく使用できる。逆スクリューゾーンやシールリングゾーンは、1個以上の逆スクリューや1個以上のシールリングからなり、それらを組み合わせることも可能である。
例えば、ニーディングゾーンの間やニーディングゾーンの下流側に逆スクリューゾーンを導入する場合、逆スクリューゾーンのそれぞれの長さをLrとすると、全ての逆スクリューゾーンが、Lr/D0=0.1〜10の長さを有していることが、混練性、反応性の観点から好ましい。各逆スクリューゾーンの長さLr/D0は、より好ましくは0.2〜8、さらに好ましくは0.3〜6である。なお、逆スクリューゾーンの長さLrは、その逆スクリューゾーンを構成する最も上流の逆スクリューの上流端部からスクリュー軸中心線への垂線と、最も下流の逆スクリューの下流端部からスクリュー軸中心線への垂線との間の距離とする。
また、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物を製造する際、二軸押出機を使用する場合、熱可塑性樹脂組成物の押出量が、スクリュー1rpm当たり0.01kg/h以上であることが好ましく、より好ましくは0.05kg/h〜1kg/h、さらに好ましくは0.08〜0.5kg/h、最も好ましくは、0.1〜0.3kg/hである。かかる押出量とは、押出機から吐出される熱可塑性樹脂組成物の押出速度のことであり、1時間当たりに押出される重量(kg)のことである。
なお、上記二軸押出機における押出量に関わる好ましい数値範囲は、スクリュー直径37mmの二軸押出機の押出量を基準とするものである。スクリュー直径が大幅に異なる場合、例えば直径30mm未満、または直径が50mmを超える二軸押出機を使用する場合、押出量は、スケールダウンあるいはスケールアップ前後のスクリュー直径比に対して、好ましくは2.5乗則あるいは3乗則、より好ましくは2.5乗則に従って、低下・増大するものとして、読み替えることができるものとする。
例えば、スクリュー直径が20mmの二軸押出機を使用する場合、押出量がスケールダウン前後のスクリュー直径比の2.5乗則に従うものとすると、熱可塑性樹脂組成物の押出量は、スクリュー回転数1rpm当たり、好ましくは0.002kg/h以上、より好ましくは0.01〜0.2kg/h、さらに好ましくは0.017〜0.11kg/h、最も好ましくは、0.02〜0.06kg/hである。
また、スクリュー直径が100mmの二軸押出機を使用する場合、押出量がスケールアップ前後のスクリュー直径比の2.5乗則に従うものとすると、熱可塑性樹脂組成物の押出量は、スクリュー1rpm当たり、好ましくは0.12kg/h以上、より好ましくは0.6〜12kg/h、さらに好ましくは0.96〜6kg/h、最も好ましくは1.2〜3.6kg/hである。
また、スクリューの回転速度としては、特に制限はないが、通常10rpm以上、好ましくは15rpm以上、さらに好ましくは20rpm以上である。また、押出量としては、特に制限はないが、通常0.1kg/h以上、好ましくは0.15kg/h以上、さらに好ましくは0.2kg/h以上である。
また、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物を製造する際、二軸押出機を使用する場合、熱可塑性樹脂組成物の二軸押出機中での滞留時間が1〜30分であることが好ましく、より好ましくは1.5〜28分、さらに好ましくは2〜25分である。かかる滞留時間とは、二軸押出機に原材料を供給してから吐出するまでの滞留時間の平均であり、無着色の熱可塑性樹脂組成物が所定の押出量に調節された定常的な溶融混練状態において、原料が供給されるスクリュー根本の位置から、原料と共に、着色剤を通常1g程度投入し、着色剤等を投入した時点から、熱可塑性樹脂組成物が押出機の吐出口より押出され、その押出物への着色剤による着色度が最大となる時点までの時間とする。
また、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物を製造する際、二軸押出機を使用する場合、二軸押出機のスクリューとしては、特に制限はなく、完全噛み合い型、不完全噛み合い型、非噛み合い型等のスクリューが使用できるが、混練性、反応性の観点から、完全噛み合い型スクリューが好ましい。また、スクリューの回転方向としては、同方向、異方向どちらでも良いが、混練性、反応性の観点から、同方向回転が好ましい。本実施形態において二軸押出機を使用する場合、スクリューとしては、同方向回転完全噛み合い型が最も好ましい。
また、本実施形態において、二軸押出機を使用する場合、二軸押出機のスクリュー構成としては、フルフライトおよび/またはニーディングディスクを組み合わせて使用するが、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物へ効果的に剪断場を付与するスクリュー構成が好ましい。そのため、前記の通り、二軸押出機のスクリューが、1個以上のニーディングディスクから構成されるニーディングゾーンを、長手方向に複数箇所所有していることが好ましく、これらのニーディングゾーンの合計長さが、スクリューの全長の好ましくは5〜50%、より好ましくは10〜40%、さらに好ましくは、15〜30%の範囲である。
また、本実施形態において、二軸押出機を使用する場合、二軸押出機のスクリューにおけるニーディングゾーンのそれぞれの長さをLkとすると、全てのニーディングゾーンが、Lk/D0=0.2〜10の長さを有していることが、混練性、反応性の観点から好ましい。各ニーディングゾーンの長さLk/D0は、より好ましくは0.3〜9、さらに好ましくは0.5〜8である。なお、ニーディングゾーンの長さLkは、そのニーディングゾーンを構成する最も上流のニーディングディスクの上流端部からスクリュー軸中心線への垂線と、最も下流のニーディングディスクの下流端部からスクリュー軸中心線への垂線との間の距離とする。
また、本実施形態において、二軸押出機を使用する場合、二軸押出機のニーディングゾーンは、スクリュー内の特定の位置に偏在することなく、全域に渡って配置されることが好ましい。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物中においては、必要に応じて、前記(A)および(B)以外のその他の成分を添加しても構わない。その他の成分として、充填剤、熱可塑性樹脂類、ゴム類、各種添加剤類を挙げることができる。
例えば、充填剤は、強度及び寸法安定性等を向上させるため、必要に応じて用いてもよい。充填材の形状としては繊維状であっても非繊維状であってもよく、繊維状の充填材と非繊維状充填材を組み合わせて用いてもよい。
かかる充填材としては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素および炭化珪素などの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状および/または非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
強度および寸法安定性等を向上させるため、かかる充填剤を用いる場合、その配合量は特に制限はないが、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して30〜400重量部配合することが好ましい。
さらに本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物中においては、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、他のゴム類、各種添加剤類を配合することができる。
かかるゴム類とは、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、該ブロック共重合体の水素添加物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体などのジエン系ゴム、エチレン−プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン−ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン−アクリル酸、エチレン−メタクリル酸などのエチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル、エチレン−メタクリル酸エステルなどのエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、不飽和カルボン酸の一部が金属塩である、エチレン−アクリル酸−アクリル酸金属塩、エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸金属塩などのエチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸金属塩共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、例えばブチルアクリレート−ブタジエン共重合体などのアクリル系弾性重合体、エチレン−酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体などのエチレン−プロピレン非共役ジエン3元共重合体、ブチレン−イソプレン共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマーおよびそれらの変性物などが好ましい例として挙げられる。かかるゴム類は2種類以上併用することも可能である。かかるゴム類を用いる場合、その配合量は、特に制限はないが、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、1〜400重量部配合されることが好ましい。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物に添加することが可能な各種添加剤類は、好ましくは、結晶核剤、着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンなどの酸化防止剤、エチレンビスステアリルアミドや高級脂肪酸エステルなどの離型剤、可塑剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などが挙げられる。
上記ゴム類、各種添加剤類は、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物を製造する任意の段階で配合することが可能であり、例えば、二軸押出機により本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物を製造する場合、樹脂を配合する際に同時に添加する方法や、樹脂を溶融混練中にサイドフィード等の手法により添加する方法や、予め樹脂を溶融混練した後に添加する方法や、始めに、熱可塑性樹脂組成物を構成する片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法が挙げられる。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物を二軸押出機により製造する場合、二軸押出機で溶融混練する際に、反応性の向上の観点から、超臨界流体を導入することもできる。かかる超臨界流体とは、気体と液体が共存できる限界点(臨界点)を越えた状態にあり、気体としての性質(拡散性)と液体としての性質(溶解性)を併せ持った流体のことである。かかる超臨界流体としては、超臨界二酸化炭素、超臨界窒素、超臨界水等が挙げられるが、好ましくは、超臨界二酸化炭素および超臨界窒素が使用でき、最も好ましくは超臨界二酸化炭素が使用できる。
上述の熱可塑性樹脂組成物を所定形状に成形することにより本実施形態で用いるアームレスト本体20が得られる。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物を成形したもの(成形体という)は、通常の使用時は一般的な熱可塑性樹脂の成形体と同様の剛性を有しているが、引張速度を変えた場合や温度が上昇した場合には、図4および図5に示す特性を有している。
図4に示すグラフは、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物の成形体の引張速度を変化させた場合(高速と低速の場合)に、成形体にかかる応力と伸び(引張破断伸度)との関係を示している。
一般的な熱可塑性樹脂を材料とする成形体では、引張速度が速いほど、引張弾性率が高くなり、引張伸度が低下する挙動を示す。これに対して、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物の成形体は、引張速度が速いほど、引張弾性率が低くなるという特異な粘弾性特性を示し、さらに、引張破断伸度(伸び)が増大するという全く逆の特性を示す。
この特性は、図4からも明らかであり、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物の成形体は、引張速度が高速の場合には、成形体にかかる応力が小さくても伸びやすくなる。
本実施形態において、アームレスト本体20の締結部26は、車両の側突時には、通常の使用時よりも、高速で引っ張られるので、本実施形態のドアトリム10を備える車両が側面衝突した場合には、締結部26に係る応力が小さくても締結部26および締結部側壁23Aが伸び易くなり、アームレスト本体20が変形しやすくなる。
図5は、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物の成形体の温度と、弾性率の低下率との関係を示したグラフである。図5のグラフから、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂がポリアミド樹脂の場合は、成形体の温度が40℃を超えると急激に成形体の弾性率が低下するということがわかる。
なお、図4および図5のグラフ作成のためのデータ測定は、オートグラフAG100kNG(島津製作所製)を用い、チャック間距離を50mmとし所定の速度で引張試験を実施することにより行った。図4では、引張速度100mm/min(低速)と1000mm/min(高速)で、引張試験を実施した。図5では引張速度1000mm/minで、引張弾性率を測定し、23℃における引張弾性率を基準として、40℃、50℃、60℃、80℃における弾性率の低下率を算出した。
本実施形態のドアトリム10を備える車両の側突時の二次衝突により、乗員とアームレスト本体20が干渉すると、アームレスト本体20のトリムボード11が締結される締結部に応力が集中する。このような事態が生じると、締結部に集中した応力が熱エネルギーに変換されて、締結部の温度は高温(40℃以上)になり易い。上述したように、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂がポリアミド樹脂の場合は、成形体の温度が40℃を超えると急激に成形体の弾性率が低下するという特性を有しているので、車両の側突時における二次衝突により締結部の弾性率が急激に低下し、アームレスト本体20が変形しやすくなる。
次に、本実施形態の作用・効果について説明する。
図6は、通常の使用時のアームレスト本体20の断面図であり、図7は通常の使用時のフランジ部21の上面図である。図8は側突時のアームレスト本体20の断面図であり、図9は側突時のフランジ部21の上面図である。
本実施形態のドアトリム10を備える車両が側突時の二次衝突により、乗員とアームレスト本体20が干渉すると、アームレスト本体20のトリムボード11が締結される締結部26に応力が集中して剪断力が働く。本実施形態では、締結部26とフランジ面21Aとの間および締結部側壁23Aとフランジ面21Aとの間に隙間27が形成されているので、締結部側壁23Aが伸縮しやすい状態となっている。その結果、本実施形態によれば、締結部側壁23Aが第1の連結壁24と第2の連結壁25との間で伸縮して衝撃を吸収することにより、容易にアームレスト本体20が変形する。
特に、本実施形態では、アームレスト本体20の材料として、通常の使用時は十分な剛性を有しているが、引張速度を高速にすると小さな応力でも伸びやすくなり、温度が上昇した場合に引張弾性率が急激に低下する特性を有する熱可塑性樹脂組成物を用いているから、図7および図9に示すように、側突時に締結部側壁23Aが容易に伸びて、アームレスト本体20がトリムボード11から離れる方向(図示右側方向)に移動し、アームレスト本体20が容易に変形する。
従って、本実施形態によれば、側突時にアームレスト本体20が容易に変形するので、アームレスト本体20のトリムボード11への取り付け部分の厚みを薄くする必要がない。その結果、本実施形態によれば、通常の使用時にはひじ掛けとしての剛性を確保しつつ、車両の側面衝突時には容易に変形して乗員への衝撃を低減させることができるアームレスト本体20(アームレスト13)を備えた車両用ドアトリム10を提供することができる。
また本実施形態によれば、トリムボード11を車両外側から補強し、かつ、トリムボード11を位置決めする機能を有する第1の連結壁24Bと、側突時の衝撃を吸収する締結部側壁23Aに連なる締結部26を形成した第1の連結壁24Aが交互に設けられているから、通常の使用時の強度を確保しつつ、側突時のアームレスト本体20の変形を速やかなものとすることができる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態においては、締結部を形成した第1の連結壁と、締結部を形成しない第1の連結壁とを交互に設けたものを示したが、全ての第1の連結壁に締結部を設けてもよいし、締結部を形成した第1の連結壁の数を少なくしてもよい。
(2)上記実施形態においては、アームレスト本体全体を構成する材料として、通常使用時は十分な剛性を有しているが、高速変形した際に引張弾性率が低下する特性を有する熱可塑性樹脂組成物を用いたが、当該熱可塑性樹脂組成物を、締結部と締結部側壁を構成するための材料として用いてもよい。