OFDM方式を用いると、周波数利用効率及びマルチパス耐性を向上させることができる。そのため、無線通信システム(例えば、無線LAN)や有線通信システム(例えば、ADSL)で広く用いられている。可視光通信においても、OFDM方式を適用することで通信品質の向上が期待される。しかし、OFDM方式には、PAPR(Peak to Average Power Ratio)が大きくなる問題がある。つまり、送信機及び受信機に大きなダイナミックレンジが要求される。
そのため、OFDM方式を可視光通信に適用する場合、可視光通信の送信手段であるLEDには、非常に大きな電流が流れることになる。例えば、LEDには、数100mA〜数A程度の電流が流れる。そのため、送信側に非常に広いダイナミックレンジの信号を扱うことが可能なドライブ回路を設けることが必要になる。しかし、通常、LEDは一定光量の発光を目的としているため、ダイナミックレンジの大きな信号を扱うには特別な素子が必要になり、現実的ではない。そのため、本件発明者は、発光手段に対して大きなダイナミックレンジへの性能要求を課さずにOFDM方式により得られる通信品質の向上効果を享受できる新たな方式を開発した。
OFDM方式を可視光通信に適用する場合、送信側では、直並列変換でキャリア数分の送信データが生成され、各送信データがキャリア信号に割り当てられた後で加算され、当該加算後の信号振幅に応じた発光強度で1つのLEDが発光制御される。しかし、上記の新たな方式の場合、各送信データがキャリア信号に割り当てられた後、加算処理が実行されることなしに、キャリア毎の信号振幅に応じた発光強度で各キャリアに対応するLEDが発光制御される。その結果、各LED及びLED駆動回路に課されるダイナミックレンジの性能要求が緩和される。また、発光手段として互いに異なる色のLEDを用い、受光手段として互いに異なる色のPD(Photo Diode)を用いることで、受光手段に課されるダイナミックレンジの性能要求も緩和することができる。
また、互いに発光色(光周波数)の異なる複数のLEDを用いる場合、LED及びPD等の周波数特性に起因して発生する色間干渉の影響が懸念されるが、上記のようにキャリア間で直交性があるため、色間干渉による影響が抑制される。そのため、多重化数(色数)をある程度増大させることが可能になり、伝送速度を向上させることができる。しかしながら、多重化数の増加に伴って色間の周波数が近接して色間干渉の影響が増大するため、多重化数の増加による伝送速度の向上効果には限界がある。こうした理由から、伝送速度をより向上させるために、同じ多重化数で、より多くのデータを伝送する技術が求められている。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、発光手段に対して大きなダイナミックレンジへの性能要求を課さずにOFDM方式により得られる通信品質の向上を図ると共に、同じ多重化数で、より多くのデータを伝送することが可能な、新規かつ改良された送信装置、受信装置、信号送信方法、及び信号受信方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、可視光通信を遂行する送信装置であって、互いに異なる色の光を発光する複数の発光素子と、送信データを直並列変換してキャリア数分(N個)の第1データ列、及び第2データ列を出力する直並列変換部と、前記直並列変換部から出力されたN個の第1データ列をそれぞれ所定の多値数で変調してN個の変調信号を生成する変調部と、前記変調部で生成されたN個の変調信号に対し、互いに直交するキャリア周波数を持つN個の正弦波信号を各々乗算してN個のキャリア信号を生成する正弦波信号乗算部と、前記正弦波信号乗算部で生成された前記N個のキャリア信号を前記第2データ列に基づいて前記複数の発光素子に割り当て、同じ発光素子に割り当てられたキャリア信号を加算して前記発光素子の数だけ送信信号を生成するキャリア割り当て部と、前記キャリア割り当て部で生成された各送信信号の信号振幅に応じた発光強度で、当該各送信信号に対応する発光素子を発光させる発光制御部と、を含む、送信装置が提供される。
前記キャリア割り当て部は、前記各キャリア信号が入力される入力端子、及び前記複数の発光素子に各々対応する複数の出力端子を持ち、前記入力端子に入力された各キャリア信号の出力先をいずれかの前記出力端子に切り替えるN個のスイッチと、前記第2データ列に基づいて前記各スイッチを制御し、前記各スイッチに入力されたキャリア信号の出力先を制御するスイッチ制御部と、前記N個のスイッチについて、同じ前記発光素子に対応する出力端子から出力されたキャリア信号を加算する前記発光素子と同数の加算部と、を含むものであっても良い。
前記キャリア割り当て部は、1つの前記キャリア信号が複数の前記発光素子に割り当てられないように前記各キャリア信号の割り当て処理を実行するものであっても良い。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、可視光通信を遂行する受信装置であって、互いに色の異なる光を受光して各色の受信信号を出力する複数の受光素子と、前記各受光素子から出力された受信信号に対し、相互に直交するキャリア周波数を有するN個の正弦波信号を用いてFFT処理を施すことにより前記各色の受信信号に対応する変調信号を抽出するFFT部と、前記FFT部で抽出された変調信号を復調して第1データ列を復元する復調部と、前記FFT部で抽出された変調信号に基づいて前記各色の受信信号に対応する前記各キャリア信号と前記各色の発光素子との間の対応関係を検出し、当該検出結果に基づいて第2データ列を復元する第2データ列復元部と、前記復調部及び前記第2データ列復元部で復元された第1及び第2データ列を並直列変換して元の送信データを復元する並直列変換部と、を含み、前記N個は、前記送信データに適用されたキャリア個数である、受信装置が提供される。
前記第2データ列復元部は、前記N個のキャリア信号のそれぞれについて、前記各色の受信信号に含まれるか否かを判定する信号判定部と、前記信号判定部による判定結果に基づいて前記各色と前記各キャリア信号との組み合わせを検出し、当該組み合わせから前記第2データ列を復元するデータ復元部と、を含むものであっても良い。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、可視光通信を遂行し、互いに異なる色の光を発光する複数の発光素子を有する送信装置が、送信データを直並列変換してキャリア数分(N個)の第1データ列、及び第2データ列を出力する直並列変換ステップと、前記直並列変換ステップで出力されたN個の第1データ列をそれぞれ所定の多値数で変調してN個の変調信号を生成する変調ステップと、前記変調ステップで生成されたN個の変調信号に対し、互いに直交するキャリア周波数を持つN個の正弦波信号を各々乗算する正弦波信号乗算ステップと、前記正弦波信号乗算ステップの乗算処理で生成されたN個のキャリア信号を前記第2データ列に基づいて前記複数の発光素子に割り当てるキャリア割り当てステップと、前記割り当てるステップで同じ発光素子に割り当てられたキャリア信号を加算して前記発光素子の数だけ送信信号を生成するステップと、前記送信信号を生成するステップで生成された各送信信号の信号振幅に応じた発光強度で、当該各送信信号に対応する発光素子を発光させる発光制御ステップと、を含む、信号送信方法が提供される。
前記キャリア割り当てステップは、前記各キャリア信号が入力される入力端子、及び前記複数の発光素子に各々対応する複数の出力端子を持ち、前記入力端子に入力された各キャリア信号の出力先をいずれかの前記出力端子に切り替えるN個のスイッチを、前記第2データ列に基づいて制御し、前記各スイッチに入力されたキャリア信号の出力先を制御するステップと、前記N個のスイッチについて、前記発光素子に対応する出力端子から出力されたキャリア信号を加算するステップと、を含むものであっても良い。
前記キャリア割り当てステップは、1つの前記キャリア信号が複数の前記発光素子に割り当てられないように前記各キャリア信号の割り当て処理を実行するものであっても良い。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、可視光通信を遂行し、互いに色の異なる光を受光して各色の受信信号を出力する複数の受光素子を有する受信装置が、前記各受光素子から出力された受信信号に対し、相互に直交するキャリア周波数を有するN個の正弦波信号を用いてFFT処理を施すことにより前記各色の受信信号に対応する変調信号を抽出するFFTステップと、前記FFTステップで抽出された変調信号を復調して第1データ列を復元する復調ステップと、前記FFTステップで抽出された変調信号に基づいて前記各色の受信信号に対応する各キャリア信号と前記各色の発光素子との間の対応関係を検出し、当該検出結果に基づいて第2データ列を復元する第2データ列復元ステップと、前記復調ステップ及び前記第2データ列復元ステップで復元された第1及び第2データ列を並直列変換して元の送信データを復元する並直列変換ステップと、を含み、前記N個は、前記送信データに適用されたキャリア個数である、信号受信方法が提供される。
前記第2データ列復元ステップは、前記N個のキャリア信号のそれぞれについて、前記各色の受信信号に含まれるか否かを判定する信号判定ステップと、前記信号判定ステップによる判定結果に基づいて前記各色と前記各キャリア信号との組み合わせを検出し、当該組み合わせから前記第2データ列を復元するデータ復元ステップと、をさらに含むものであっても良い。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、次のような送信装置及び受信装置を含む可視光通信システムが提供される。
上記の送信装置は、互いに異なる色の光を発光する複数の発光素子と、送信データを直並列変換してキャリア数分(N個)の第1データ列、及び第2データ列を出力する直並列変換部と、前記直並列変換部から出力されたN個の第1データ列をそれぞれ所定の多値数で変調してN個の変調信号を生成する変調部と、前記変調部で生成されたN個の変調信号に対し、互いに直交するキャリア周波数を持つN個の正弦波信号を各々乗算する正弦波信号乗算部と、前記正弦波信号乗算部の乗算処理で生成されたN個のキャリア信号を前記第2データ列に基づいて前記複数の発光素子に割り当て、同じ発光素子に割り当てられたキャリア信号を加算して前記発光素子の数だけ送信信号を生成するキャリア割り当て部と、前記キャリア割り当て部で生成された各送信信号の信号振幅に応じた発光強度で、当該各送信信号に対応する発光素子を発光させる発光制御部と、を有するものである。
このように、上記の送信装置は、異なる色で発光する複数の発光素子を用いて可視光通信を実現するものである。また、上記の送信装置は、送信データを複数のキャリア信号に変調して送信すると共に、各キャリア信号と各色(各発光素子)との対応関係に第2データ列を割り付けて送信する。そのため、第2データ列の分だけ、通常のWDM方式に比べて多くのデータを伝送することが可能になり、伝送速度の向上効果が得られる。さらに、直交するキャリア周波数に第1データ列を割り当てて送信するため、OFDM方式に特有の優れた通信性能が得られる。特に、キャリア周波数の直交性から、通常のWDM方式で問題となる色間干渉の影響が除去され、通常のWDM方式に比べて大きく伝送品質を向上させることができる。
また、上記の受信装置は、互いに色の異なる光を受光して各色の受信信号を出力する複数の受光素子と、前記各受光素子から出力された受信信号に対し、前記N個の正弦波信号を用いてFFT処理を施すことにより前記変調信号を色毎に抽出するFFT部と、前記FFT部で抽出された変調信号を復調して前記第1データ列を復元する復調部と、前記FFT部で抽出された変調信号に基づいて前記各キャリア信号と前記各発光素子との間の対応関係を検出し、当該検出結果に基づいて前記第2データ列を復元する第2データ列復元部と、前記復調部及び前記第2データ列復元部で復元された第1及び第2データ列を並直列変換して元の送信データを復元する並直列変換部と、を有するものである。
このように、上記の受信装置は、異なる色の光を受光する複数の受光素子を用いて可視光通信を実現するものである。また、上記の受信装置は、各色の受信信号に対してFFT処理を施し、各色の送信信号に含まれるキャリア信号を抽出する。そのため、色毎に実行されるFFT処理の出力結果に基づいて、各キャリア信号がどの発光素子(色)に割り当てられたかを検出することができる。そこで、上記の受信装置は、各色の受信信号に対して施されるFFT処理の出力結果に基づいて第2データ列を復元する。また、上記の受信装置は、各キャリア信号から第1データ列を復元する。さらに、このようにして復元された第1及び第2データ列から元の送信データが復元される。このように、第2データ列の分だけ多くのデータ量が伝送される。その結果、WDM方式に比べて伝送速度を向上させることができるのである。
なお、前記キャリア割り当て部は、前記各キャリア信号が入力される入力端子、及び前記複数の発光素子に各々対応する複数の出力端子を持ち、前記入力端子に入力された各キャリア信号の出力先をいずれかの前記出力端子に切り替えるN個のスイッチと、前記第2データ列に基づいて前記各スイッチを制御し、前記各スイッチに入力されたキャリア信号の出力先を制御するスイッチ制御部と、前記N個のスイッチについて、同じ前記発光素子に対応する出力端子から出力されたキャリア信号を加算する前記発光素子と同数の加算部とで構成されていてもよい。さらに、前記キャリア割り当て部は、1つの前記キャリア信号が複数の前記発光素子に割り当てられないように前記各キャリア信号の割り当て処理を実行するように構成されていてもよい。このような構成にすることで、異なる色に同じキャリア周波数のキャリア信号を含む送信信号が割り当てられることがなくなり、色間干渉の影響が発生するのを回避することができる。
また、前記第2データ列復元部は、前記N個のキャリア信号のそれぞれについて、前記各色の受信信号に含まれるか否かを判定する信号判定部と、前記信号判定部による判定結果に基づいて、前記各色と前記各キャリア信号との組み合わせを検出し、当該組み合わせから前記第2データ列を復元するデータ復元部と、を含むように構成することが可能である。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、互いに異なる色の光を発光する複数の発光素子を有する送信装置が、送信データを直並列変換してキャリア数分(N個)の第1データ列、及び第2データ列を出力する直並列変換ステップと、前記直並列変換ステップで出力されたN個の第1データ列をそれぞれ所定の多値数で変調してN個の変調信号を生成する変調ステップと、前記変調ステップで生成されたN個の変調信号に対し、互いに直交するキャリア周波数を持つN個の正弦波信号を各々乗算する正弦波信号乗算ステップと、前記正弦波信号乗算ステップの乗算処理で生成されたN個のキャリア信号を前記第2データ列に基づいて前記複数の発光素子に割り当てるステップと、前記割り当てるステップで同じ発光素子に割り当てられたキャリア信号を加算して前記発光素子の数だけ送信信号を生成するステップと、前記送信信号を生成するステップで生成された各送信信号の信号振幅に応じた発光強度で、当該各送信信号に対応する発光素子を発光させる発光制御ステップと、を含む、信号伝送方法が提供される。
さらに、上記の信号伝送方法には、互いに色の異なる光を受光して各色の受信信号を出力する複数の受光素子を有する受信装置が、前記各受光素子から出力された受信信号に対し、前記N個の正弦波信号を用いてFFT処理を施すことにより前記変調信号を色毎に抽出するFFTステップと、前記FFTステップで抽出された変調信号を復調して前記第1データ列を復元する復調ステップと、前記FFTステップで抽出された変調信号に基づいて前記各キャリア信号と前記各色の発光素子との間の対応関係を検出し、当該検出結果に基づいて前記第2データ列を復元する第2データ列復元ステップと、前記復調ステップ及び前記第2データ列復元ステップで復元された第1及び第2データ列を並直列変換して元の送信データを復元する並直列変換ステップと、が含まれる。
このように、上記の送信装置は、異なる色で発光する複数の発光素子を用いて可視光通信を実現するものである。また、上記の送信装置は、送信データを複数のキャリア信号に変調して送信すると共に、各キャリア信号と各色(各発光素子)との対応関係に第2データ列を割り付けて送信する。そのため、第2データ列の分だけ、通常のWDM方式に比べて多くのデータを伝送することが可能になり、伝送速度の向上効果が得られる。さらに、直交するキャリア周波数に第1データ列を割り当てて送信するため、OFDM方式に特有の優れた通信性能が得られる。特に、キャリア周波数の直交性から、通常のWDM方式で問題となる色間干渉の影響が除去され、通常のWDM方式に比べて大きく伝送品質を向上させることができる。また、上記の受信装置は、異なる色の光を受光する複数の受光素子を用いて可視光通信を実現するものである。さらに、上記の受信装置は、各色の受信信号に対してFFT処理を施し、各色の送信信号に含まれるキャリア信号を抽出する。そのため、色毎に実行されるFFT処理の出力結果に基づいて、各キャリア信号がどの発光素子(色)に割り当てられたかを検出することができる。そこで、上記の受信装置は、各色の受信信号に対して施されるFFT処理の出力結果に基づいて第2データ列を復元する。また、上記の受信装置は、各キャリア信号から第1データ列を復元する。さらに、このようにして復元された第1及び第2データ列から元の送信データが復元される。このように、第2データ列の分だけ多くのデータ量が伝送される。その結果、WDM方式に比べて伝送速度を向上させることができるのである。
以上説明したように本発明によれば、発光手段に対して大きなダイナミックレンジへの性能要求を課さずにOFDM方式により得られる通信品質の向上を図ると共に、同じ多重化数で、より多くのデータを伝送することが可能になる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[説明の流れについて]
ここで、以下に記載する本発明の実施形態に関する説明の流れについて簡単に述べる。まず、図1を参照しながら、WDM(Wave Length Malutiplex)方式を採用した可視光通信システムLS1の構成について説明し、WDM方式が抱える問題点について述べる。この中で、同実施形態が解決しようとする課題について簡単に整理する。次いで、図2〜図4を参照しながら、同実施形態に係る可視光通信システムLS2の構成について説明する。次いで、図6を参照しながら、同実施形態の技術を適用することにより得られる効果について説明する。
[課題の整理]
まず、本発明の一実施形態に係る技術について詳細な説明をするに先立ち、同実施形態が解決しようとする課題について簡単に纏める。
従来より、LEDを光源とする可視光通信システムには、白色LEDを利用して白色光を発光するシステムと、互いに異なる色を発光する複数のLED(例えば、赤R、緑G、青Bの三原色)を組み合わせて白色光を発光するシステムがある。LEDの特性として、RGB発光のLEDは、白色LEDよりも光変調時の応答速度が速い。また、複数のLEDを用いるシステムにおいては、個々のLEDを異なるデータで変調し、RBG発光を組み合わせることで、高速にデータを伝送することが可能になる。このように、色の異なる複数のLEDで異なるデータを伝送する方式のことを色多重方式又は波長多重方式(WDM)と呼ぶことがある。WDM方式の可視光通信技術に関しては、例えば、特開2007−81703に記載がある。
ここで、図1を参照しながら、WDM方式を採用した可視光通信システムLS1の構成について簡単に説明する。図1は、WDM方式を採用した可視光通信システムLS1の一構成例を示す説明図である。
図1に示すように、可視光通信システムLS1の送信側には、S/P変換部12、複数のドライバ回路14、及び複数の発光素子16が設けられている。但し、複数の発光素子16は、互いに異なる色C1〜Cn(光周波数)の光を発光するものである。そして、可視光通信システムLS1の受信側には、複数の受光素子18、複数の復調部20、及びP/S変換部22が設けられている。但し、複数の受光素子18は、互いに異なる色C1〜Cn(光周波数)の光を受光するものである。例えば、発光素子16としては、各色を発光するLEDが用いられる。また、受光素子18としては、各色を透過するカラーフィルタが設けられたPDが用いられる。
可視光通信システムLS1においては、まず、送信データがS/P変換部12により直並列変換され、発光素子16の数nだけ並列データが生成される。つまり、各色C1〜Cnに割り当てられる並列データが生成される。そして、各並列データは、ドライバ回路14に入力される。ドライバ回路14は、入力された並列データに応じた発光強度で発光素子16を発光させる。各色C1〜Cnの発光素子16で発せられた光は、各色C1〜Cnの受光素子18で受光される。各受光素子18で対応する色の光が受光されると、その色の受光強度に応じた信号が受光素子18から出力される。各受光素子18から出力される信号は、復調部20で復調され、P/S変換部22により元の送信データに復元される。
WDM方式を採用した上記の可視光通信システムLS1においては、次のような理由で伝送品質の劣化が生じる。伝送品質の劣化原因としては、例えば、(1)光伝送路における光強度の減衰、(2)外乱光によりノイズの発生、(3)色間における信号強度のばらつき、(4)色間の信号干渉が挙げられる。但し、(3)の原因は、発光素子16の発光強度特性、及び受光素子18の光感度特性に起因して発生する。また、(4)の原因は、発光素子16及び受光素子18の周波数特性に起因して発生する。これらの劣化原因のうち、WDM方式においては、(4)の原因による伝送品質の劣化が大きい。特に、色数を増やして多重化数を増加させて伝送速度の向上効果を得ようとすると、(4)の原因による伝送品質の劣化が大きな問題となる。その理由は、多重化数を増加させると、各色の周波数が近接して色間干渉が増大してしまうことにある。従って、伝送速度をさらに向上させるには、色間干渉の影響を除去すること、及び同じ多重化数でより多くのデータを伝送できるようにすることが求められる。
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態は、上記の可視光通信システムLS1が抱える問題を解決し、色間干渉の影響を除去しつつ、同じ多重化数でより多くのデータを伝送することを可能にするものである。
[可視光通信システムLS2の構成]
まず、図2を参照しながら、本実施形態に係る可視光通信システムLS2の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る可視光通信システムLS2の一構成例を示す説明図である。但し、図2の例においては、説明の都合上、キャリア数、発光素子112の数、受光素子202の数を3とする。もちろん、本実施形態に係る技術は、キャリア数、発光素子112の数、受光素子202の数が3以上の場合に対しても適用可能である。
図2に示すように、可視光通信システムLS2は、送信装置100と、受信装置200とにより構成される。送信装置100は、S/P変換部102と、変調部104と、乗算器106と、キャリア割り当て部108と、ドライバ回路110と、複数の発光素子112とを有する。一方、受信装置200は、複数の受光素子202と、FFT部204と、信号検出部206と、復調部208と、P/S変換部212とを有する。但し、FFT部204は、乗算器232、及び積分回路234により構成される。なお、図2の例では、受光素子202(PD(Cg)、PD(Cb))の出力信号が入力される各FFT部204の詳細な構成を省略して描画している。但し、いずれのFFT部204も実質的に同じ構成を有するものとする。
まず、送信データdは、S/P変換部102により直並列変換される。そして、S/P変換部102から(キャリア数+1)個のデータ列が出力される。S/P変換部102から出力される各キャリアに対応するデータ列は、変調部104に入力され、所定の多値数(例えば、2値)で変調される。そして、変調部104から変調信号が出力される。一方、残り1個のデータ列は、キャリア割り当て用の制御データ列Scとしてキャリア割り当て部108に入力される。変調部104から出力されるキャリア毎の変調信号は、乗算器106に入力される。乗算器106では、変調信号に各キャリア周波数f1、f2、f3に対応するキャリア正弦波信号が乗算される。但し、キャリア周波数f1、f2、f3に対応する3個のキャリア正弦波信号は、互いにOFDM方式で言う直交関係を有する。
乗算器106でキャリア正弦波信号が乗算された変調信号(以下、キャリア信号;S1、S2、S3)は、キャリア割り当て部108に入力される。キャリア割り当て部108では、どのキャリアをどの色に割り当てるかが決定され、各色の発光制御に用いる信号が生成される。但し、この割り当て方法については、S/P変換部102から入力されたキャリア割り当て用の制御データ列Scにより決定される。キャリア割り当て部108の詳細な構成については後述する。キャリア割り当て部108で各色に割り当てられた信号(以下、色割り当て信号)は、各色に対応するドライバ回路110に入力される。色割り当て信号が入力されると、ドライバ回路110は、入力された色割り当て信号に基づいて発光素子112に供給される電流量を制御し、色割り当て信号の信号振幅に応じた発光強度で各発光素子112を発光させる。
例えば、赤色R(光周波数Cr)に割り当てられた色割り当て信号Srは、赤色Rの光を発光する発光素子112(LED(Cr))を駆動するためのドライバ回路110(Dr)に入力される。そして、ドライバ回路110(Dr)は、色割り当て信号Srの信号振幅に応じた発光強度で発光素子112(LED(Cr))を発光させる。緑色G(光周波数Cg)、青色B(光周波数Cb)に割り当てられた色割り当て信号Sg、Sbについても同様である。各発光素子112から発せられた光は、受信装置200が有する各色の受光素子202で受光される。受光素子202としては、例えば、各色のカラーフィルタが設けられた3つのPDが用いられる。各受光素子202により光が受光されると、各色の光強度に応じた電気信号(以下、受信信号)が受光素子202から出力される。受光素子202から出力された各色の受信信号は、色毎に設けられたFFT部204に入力される。各FFT部204は、各受信信号にFFT処理を施して各色の色割り当て信号に含まれるキャリア周波数成分を抽出する手段である。
ここでは、説明の都合上、赤色Rに対応する受光素子202から出力された受信信号に施されるFFT処理についてのみ説明することにする。まず、受光素子202(PD(Cr))から出力された受信信号は、乗算器232に入力される。乗算器232では、受信信号に対して各キャリア周波数f1、f2、f3に対応するキャリア正弦波信号が乗算される。乗算器232で各キャリア正弦波信号が乗算された受信信号は、積分回路234に入力される。積分回路234においては、乗算器232の出力信号に対し、時間軸上でOFDMシンボル長(T)までの積分区間について積分演算が施され、キャリア周波数f1、f2、f3の各々に対応する信号成分が抽出される。そして、積分回路234で抽出された各キャリア周波数成分は、信号検出部206に入力される。例えば、赤色Rにキャリア周波数f1、f2のキャリア信号S1、S2が割り当てられている場合、信号検出部206には、キャリア信号S1、S2に対応する信号成分(変調信号)が入力される。なお、緑色G、青色Bについても、上記の赤色Rについて行われたものと実質的に同じ処理が実行される。
上記の通り、各色のFFT部204により、各色の色割り当て信号に含まれる各キャリア成分が分離され、各色のキャリア成分が信号検出部206に入力される。そのため、信号検出部206では、どの色割り当て信号に、どのキャリア信号が含まれていたかを検出することができる。例えば、図5に示すように信号検出部206を構成することで、3つのFFT部204から入力される合計9つの信号(変調信号に相当)に基づいて各色割り当て信号に含まれるキャリア信号の種類を検出することができる。
図5に示すように、信号検出部206は、信号選択部252、及びレベル判定部254により構成される。上記の通り、信号検出部206には、各FFT部204から、それぞれ3つのキャリア成分が入力されるため、合計9つのキャリア成分が入力される。そして、これら9つのキャリア成分は、信号選択部252、及びレベル判定部254に入力される。また、レベル判定部254には、所定の閾値が入力される。そこで、レベル判定部254は、各キャリア成分の信号振幅が所定の閾値を越えるか否かを判定する。
例えば、所定の閾値は、ノイズレベルより高く、キャリア信号の情報を含むキャリア成分の信号振幅よりも低い値に設定される。すると、キャリア成分の信号振幅が所定の閾値を下回る場合、そのキャリア成分がキャリア信号を含まないことが示される。同様に、9つのキャリア成分について上記の判定処理が実行され、キャリア信号の有無が9ビットのデータとして後段の組み合わせ検出部210に出力される。また、レベル判定部254においてキャリア信号が存在すると判定されたキャリア成分の情報は信号選択部252に入力される。そして、信号選択部252は、レベル判定部254から入力された情報に基づき、キャリア信号の情報が含まれるキャリア成分のみを選択して後段の各復調部208に出力する。
上記のようにしてレベル判定部254で検出された9ビットのデータは、各色割り当て信号と各キャリア信号との間の対応関係を示すものである。また、信号選択部252で選択されたキャリア成分は、各キャリア周波数f1、f2、f3の変調信号に相当する。従って、組み合わせ検出部210には、色割り当て信号とキャリア信号との間の対応関係を示す情報が入力されることになる。また、各復調部208には、各キャリア周波数f1、f2、f3に対応する変調信号が入力されることになる。このように、信号検出部206により、送信装置100のキャリア割り当て部108で決定された割り当て方法が検出される。この割り当て方法は、キャリア割り当て用の制御データ列Scに基づいて決定されたものである。逆に言えば、この割り当て方法が検出できると、その検出結果に基づいてキャリア割り当て用の制御データ列Scが検出できる。
組み合わせ検出部210においては、信号検出部206から入力された各色割り当て信号とキャリア信号との対応関係に基づいてキャリア割り当て用の制御データ列Scを検出する。そして、組み合わせ検出部210で検出されたキャリア割り当て用の制御データ列Scは、P/S変換部212に入力される。一方、各復調部208では、入力された変調信号に復調処理を施して元の並列データを復調する。各復調部208で復調された並列データは、P/S変換部212に入力される。その後、P/S変換部212は、各復調部208から入力された並列データ、及び組み合わせ検出部210から入力されたキャリア割り当て用の制御データを並直列変換して送信データdを復元する。このように、各色に各キャリアを割り当てる組み合わせにデータを載せることで、同じ色数(多重度数)であっても、より多くのデータを伝送することが可能になる。
以上、本実施形態に係る可視光通信システムLS2の構成について説明した。上記の通り、本実施形態においては、各キャリア周波数に対応するキャリア信号をドライバ回路110の前段で加算せず、各キャリア信号の信号振幅に応じた発光強度で各発光素子112を発光させる。そのため、OFDM方式におけるPAPR増加の問題が緩和され、各色のドライバ回路110及び発光素子112に対して要求されるダイナミックレンジの幅が低く抑えられる。その結果、小型で安価なLED駆動回路及びLEDを用いて、OFDM方式による通信性能の向上効果を得ることが可能になる。また、互いに直交するキャリア正弦波信号に各並列データが割り当てられるため、色間干渉による影響を除去することができる。さらに、キャリア割り当て方法にデータを載せて伝送するため、色数以上のデータを同時に伝送することが可能になり、多重化数を増加させずに伝送速度を向上させることができる。その結果、可視光通信における伝送速度を飛躍的に向上させることが可能になる。
(キャリア割り当て部108の詳細な構成)
ここで、図3を参照しながら、送信装置100が有するキャリア割り当て部108の構成について、より詳細に説明する。図3は、キャリア割り当て部108の一構成例、及びキャリア割り当て方法の一例を示す説明図である。
図3に示すように、キャリア割り当て部108は、3つのスイッチ132、134、136、スイッチ制御部138、及び3つの加算器142、144、146により構成される。スイッチ132(SW1)には、乗算器106からキャリア周波数f1に対応するキャリア信号S1が入力される。スイッチ134(SW2)には、乗算器106からキャリア周波数f2に対応するキャリア信号S2が入力される。スイッチ136(SW3)には、乗算器106からキャリア周波数f3に対応するキャリア信号S3が入力される。また、スイッチ制御部138には、キャリア割り当て用の制御データ列Scが入力される。
各スイッチ132、134、136(SW1、SW2、SW3)には、それぞれ3つの出力端子が設けられている。例えば、スイッチ132(SW1)は、スイッチ制御部138による切り替え制御に応じて、入力端子に入力されたキャリア信号S1をいずれかの出力端子に出力する。3つの出力端子は、それぞれ各色の発光素子112(LED(Cr)、LED(Cg)、LED(Cb))に対応する。つまり、スイッチ132(SW1)の出力端子が選択されることで、キャリア信号S1の割り当てられる色が決定される。同様に、スイッチ134(SW2)は、スイッチ制御部138による切り替え制御に応じて、入力端子に入力されたキャリア信号S2をいずれかの出力端子に出力する。また、スイッチ136(SW3)は、スイッチ制御部138による切り替え制御に応じて、入力端子に入力されたキャリア信号S3をいずれかの出力端子に出力する。
上記の通り、スイッチ132、134、136(SW1、SW2、SW3)の各出力端子は、それぞれ各色の発光素子112(LED(Cr)、LED(Cg)、LED(Cb))に対応している。そのため、同じ色に対応する出力端子から出力された信号は、いずれか同じ加算器142、144、146に入力される。例えば、赤色Rに対応する出力端子について考えてみよう。赤色Rの発光素子112(LED(Cr))は、ドライバ回路110(Dr)により駆動制御される。さらに、ドライバ回路110(Dr)は、加算器142から出力される信号の振幅に応じた発光強度で発光素子112(LED(Cr))を駆動する。このように、加算器142は赤色Rに対応する。同様に、加算器144は緑色Gに対応する。さらに、加算器146は青色Bに対応する。
そのため、加算器142には、スイッチ132、134、136(SW1、SW2、SW3)の赤色Rに対応する出力端子から信号が入力される。同様に、加算器144には、スイッチ132、134、136(SW1、SW2、SW3)の緑色Gに対応する出力端子から信号が入力される。さらに、加算器146には、スイッチ132、134、136(SW1、SW2、SW3)の青色Bに対応する出力端子から信号が入力される。加算器142、144、146では、それぞれ入力された信号が加算される。そして、加算器142、144、146から出力された信号(色割り当て信号)は、ドライバ回路110に入力される。ドライバ回路110は、入力された色割り当て信号の信号振幅に応じた発光強度で発光素子112を発光制御する。発光素子112は、ドライバ回路110による発光制御に応じて対応する色の光を発する。
上記の通り、キャリア割り当て部108においては、キャリア信号S1、S2、S3が入力されると、スイッチ制御部138の切り替え制御を受けてスイッチ132、134、136がキャリア信号S1、S2、S3を各色へと割り当てる。そして、各色に割り当てられたキャリア信号S1、S2、S3は加算され、その加算処理で生成された色割り当て信号に基づいて各色の光が発光される。キャリア割り当て部108における信号の流れは上記の通りである。次に、スイッチ制御部138による割り当て方法について説明する。
図3の例では、3つのキャリア信号S1、S2、S3が3つの色(Cr、Cg、Cb)に割り当てられる。そのため、組み合わせ数は、33=27通りとなる。従って、スイッチ制御部138による割り当て処理で伝送可能なデータ量は、下記の式(1)のように計算され、4.75ビットとなる。つまり、図3に例示したキャリア割り当て部108の構成を採用すると、キャリア信号S1、S2、S3で伝送されるデータ量に加え、さらに4.75ビットのデータを伝送することが可能になる。
なお、本実施形態に例示した構成においては、説明の都合上、キャリア数が3、発光素子112の数(色数)が3に限定されていた。しかしながら、本実施形態の構成は任意のキャリア数及び色数に拡張することが可能である。例えば、キャリア数nf、色数ncの場合、上記の割り当て方法で追加的に伝送可能になるデータ量Ikは、下記の式(2)により表現することができる。従って、本実施形態に係る送信装置100が伝送可能なデータ量Iは、下記の式(3)により表現される。
但し、同式において、NBは、各キャリアの変調波1シンボル当たりのビット数を表す。また、係数(2/(nf+1))は、キャリア数を増やして帯域分割することで得られるデータ圧縮率を表す。この係数を乗じることにより、WDM方式の可視光通信システムLS1で伝送可能なデータ量と直接的な対比を行うことができるようになる。なお、キャリア毎に変調部104における変調方式を変えることも可能であるが、ここでは全てのキャリアについて同じ変調方式が用いられるものとした。上記の式(3)に基づいてWDM方式の可視光通信システムLS1で伝送可能なデータ量と、本実施形態に係る可視光通信システムLS2で伝送可能なデータ量とを比較したので、その比較結果を図6に示す。
上記の通り、WDM方式の場合は1シンボル当たりのビット数が伝送可能なデータ量となるが、本実施形態の場合はキャリア数に応じてシンボル長が変化する。そのため、WDM方式のシンボル長と等価的になるように、本実施形態で伝送可能なデータ量には、上記の係数を掛けたデータ量が用いられている。図6を参照すると、本実施形態に係るデータ量は、LED数nc、キャリア数nfに依らずWDM方式のデータ量を上回ることが分かる。また、キャリア数nfが増加しても、伝送可能なデータ量の低下が非常に少ないことが分かる。このことから、伝送可能なデータ量を大きく低下させることなく、OFDMのシンボル長を長くしてマルチパス耐性を向上させるように構成することができる。
さて、ここでキャリア割り当て部108の構成及びスイッチ制御部138による制御方法について説明を補足する。図3に例示したように、キャリア信号S1、S2が加算器142に入力され、キャリア信号S3が加算器146に入力されると、各発光素子112から各色の光が発せられる。これらの各光に含まれる信号分布を模式的に示すと、図4のようになる。図4の(A)は発光素子112(LED(Cr)の出力、(B)は発光素子112(LED(Cg)の出力、(C)は発光素子112(LED(Cb)の出力に対応する。また、実線が存在するスペクトルである。図3の割り当て例においては、赤色R(Cr出力)の信号分布にキャリア周波数f1、f2の信号が現れ、緑色G(Cg出力)の信号分布には信号が存在せず、青色B(Cg出力)の信号分布にキャリア周波数f3の信号が現れている。
この例において、Cr出力は、単一のキャリア信号の周波数スペクトルに比べると幅が広い。そのため、単一のキャリア信号を発光させる場合に比べ、ドライバ回路110、及び発光素子112に要求するダイナミックレンジが広くなる。しかし、3つのキャリア信号S1、S2、S3を全て加算したOFDM信号の信号振幅に基づいて発光する場合に比べると、ダイナミックレンジを低く抑制することができる。本実施形態においては、各ドライバ回路110、及び各発光素子112に課せられるダイナミックレンジへの性能要求を低減させることも目的に含まれる。そのため、スイッチ制御部138は、キャリア信号S1、S2、S3の色割り当て処理を行う際に、同じ色に全てのキャリア信号S1、S2、S3が割り当てられないようにする方が好ましい。
さらに、キャリア割り当て部108は、異なる色に同じキャリア信号S1、S2、S3が割り当てられないように構成されている。つまり、スイッチ132、134、136は、入力端子から入力されたキャリア信号が複数の出力端子に出力されないように構成されている。異なる色に同じキャリア信号が割り当てられると、その色間でキャリア周波数の直交性が失われてしまう。そのため、色間干渉の影響により伝送品質が劣化してしまう。そこで、本実施形態においては、異なる色に同じキャリア信号が割り当てられないようにキャリア割り当て部108が構成されているのである。このような構成にすることで、OFDM方式の特性を生かし、上記のような色間干渉の影響を除去することが可能になる。
以上説明したように、本実施形態に係る可視光通信システムLS2は、発光色の異なる複数のLEDに対して、送信情報で変調されたOFDM信号の各キャリア信号成分を割り当てる。このとき、各キャリア信号は情報変調されていることに加えて、LEDにキャリア信号を割り当てる際のキャリア周波数とLED波長の組み合わせにも情報を付加する。このような構成により、WDM方式に比べて伝送速度が向上すると共に、WDM方式で問題となる色間干渉の影響を除去することができる。その結果、通信品質が向上し、LEDやPDに関して選定方法や設置数の自由度を向上させることにも繋がる。また、キャリア数を増やしても伝送可能なデータ量が大きく減らないため、キャリア数を増加させてマルチパス耐性を向上できるような構成にすることも可能になる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
上記の説明においては、発光手段としてLEDを例に挙げて説明した。しかしながら、発光手段としては、LEDの他にも、例えば、LD、SLD等の半導体発光素子、蛍光灯、ブラウン管(CRT)ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ(PDP)装置、有機電界発光(EL)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置等が用いられる。