半導体ウエハの製造では、ウエハの表面上に形成された様々な材料の層および特に誘電材料の層の除去またはパターン形成にドライエッチングが広く使用されている。プロセスパラメータの制御にとって最も重要なことは、このような層の加工中に所望の膜厚およびエッチング深さでエッチングを停止するためのエッチング終点を正確に決定することである。
半導体ウエハのドライエッチング処理中において、プラズマ光における特定波長の発光強度が、特定の膜のエッチング進行に伴って変化する。そこで、半導体ウエハのエッチング終点検出方法の1つとして、従来から、ドライエッチング処理中にプラズマからの特定波長の発光強度の変化を検出し、この検出結果に基づいて特定の膜のエッチング終点を検出する方法がある。その際、ノイズによる検出波形のふらつきに基づく誤検出を防ぐ必要がある。発光強度の変化を精度良く検出するための方法としては、移動平均法による検出方法(例えば、特許文献1参照)、1次の最小2乗法による近似処理によりノイズの低減を行う方法(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
近年の半導体の微細化、高集積化に伴い開口率(半導体ウエハの被エッチング面積)が小さくなっており、光センサーから光検出器に取り込まれる特定波長の発光強度が微弱になっている。その結果、光検出器からのサンプリング信号のレベルが小さくなり、終点判定部は、光検出器からのサンプリング信号に基づいてエッチングの終点を確実に検出することが困難になっている。
また、エッチングの終点を検出し処理を停止させる際、実際には、誘電層の残りの厚さが所定値と等しいことが重要である。従来のプロセスでは、それぞれの層のエッチング速度が一定であるという前提に基づく時間厚さ制御技法を使用して、全体のプロセスを監視している。エッチング速度の値は、例えば、予めサンプルウエハを処理して求める。この方法では、時間監視法により、所定のエッチング膜厚に対応する時間が経過すると同時にエッチングプロセスが停止する。
しかし、実際の膜、例えばLPCVD(low pressure chemical vapor deposition)技法により形成されたSiO2層は、厚さの再現性が低いことが知られている。LPCVD中のプロセス変動による厚さの許容誤差はSiO2層の初期厚の約10%に相当する。したがって、時間監視による方法では、シリコン基板上に残るSiO2層の実際の最終厚さを正確に測定することはできない。そして、残っている層の実際の厚さは、最終的に標準的な分光干渉計を用いた技法により測定され、過剰エッチングされていると判明した場合は、そのウエハを不合格として廃棄することになる。
また、絶縁膜エッチング装置では、エッチングを繰り返すにつれてエッチング速度が低下するなどの経時的な変化が知られている。場合によっては、エッチングが途中でストップしてしまう場合もあり、その解決は必須である。それに加えて、エッチング速度の経時的な変動をモニターしておくこともプロセス安定稼動のためには重要であるが、従来の方法では、単に終点判定の時間モニターのみであり、エッチング速度の経時的な変化や変動に対処する適切な方法がなかった。しかも、エッチング時間が10秒程度と短い場合の終点判定は、判定準備時間を短くする終点判定方法としなければならないことと、判定時間の刻みも十分短くする必要があるが、必ずしも十分ではない。さらに、絶縁膜では、被エッチング面積が1%以下の場合が多く、エッチングにともなって発生する反応生成物からのプラズマ発光強度変化が小さい。したがって、僅かな変化も検出することのできる終点判定システムが必要になるが、実用的で安価なシステムは見当たらない。
一方、半導体ウエハのエッチング終点検出方法の他の方法として干渉計を使用する様々な方法も知られている。すなわち、第1の方法は、赤、緑、青の3種類のカラーフィルタを用いて、干渉光(プラズマ光)を検出し、エッチングの終点検出を行う方法(例えば、特許文献3参照)である。第2の方法は、2つの波長の干渉波形の時間変化とその微分波形を用いて、干渉波形の極値(波形の最大、最小:微分波形の零通過点)をカウントする方法であり、カウントが所定値に達するまでの時間を計測することによりエッチング速度を算出し、算出したエッチング速度に基づき所定の膜厚に達する迄の残りのエッチング時間を求め、それに基づきエッチングプロセスの停止を行う方法(例えば、特許文献4参照)である。第3の方法は、処理前の干渉光の光強度パターン(波長をパラメータとする)と処理後または処理中の干渉光の光強度パターンとの差の波形(波長をパラメータとする)を求め、その差波形とデータベース化されている差波形との比較により段差(膜厚)を測定する方法(例えば、特許文献5参照)である。第4の方法は、回転塗布装置に関し、多波長にわたる干渉光の時間変化を測定して膜厚を求める方法(例えば、特許文献6参照)である。第5の方法は、干渉光の時間変化の特徴的な振る舞いを測定より求めデータベース化し、そのデータベースと測定される干渉波形との比較によりエッチングの終了判定を行い、この判定により、エッチングプロセス条件の変更を促す方法(例えば、特許文献7参照)である。
この干渉計使用法では、レーザから放出された単色放射線が異種材の積層構造を含むウエハに垂直入射角で当てられる。例えば、Si3N4層の上にSiO2層積層が積層されているウエハにおいて、SiO2層の上面で反射した放射光と、SiO2層とSi3N4層との間に形成された境界面で反射した放射光により、干渉縞が形成される。反射した放射光は、適当な検出器に照射され、これが、エッチング中のSiO2層の厚さによって強さが変化する信号を生成する。エッチングプロセス中、SiO2層の上面が露出されると、ただちにエッチング速度と現行エッチング厚を連続して正確に監視することができる。レーザの代わりに、プラズマによって放出される所定の放射光を分光計によって計測する方法も知られている。
以上の公知の技術では、以下の問題点が生じる。
A.厚膜加工プロセス(膜厚数μのレジストエッチバックなど)における膜厚判定では、干渉光の時間変化は複雑で数十周期以上となり、僅かな擾乱が判定に影響する
B.薄膜加工プロセス(ゲート酸化膜や酸化膜のエッチバックなど)における膜厚判定では、干渉光の微弱な変化を測定する必要があり、僅かな擾乱が判定に影響する。即ち、薄膜加工時の干渉光の時間変化は
1/2〜1/4周期以下となり、干渉縞の変化は僅かであり、膜厚判定ではノイズによる影響を除外する必要がある。
C.量産プロセスの加工用ウエハでは、周辺回路などが混在しており種々の材料(マスク材、被エッチング材、周辺回路にある他の材料)を同時にエッチンング処理するため、異なった材料からの干渉光が複雑に重畳される共に、加工用ウエハはロット内、またはロット間で、種々の材料の膜厚にはバラツキがあり、エッチング処理中の干渉光の時間変化はロット内、またはロット間で変動する。
D.少量多品種の量産処理では、様々なエッチングプロセスが混在するため、エッチング装置は経時変化しやすく、異常放電などが起こりプラズマが変動する。そのため、プラズマ発光が変化し干渉光に擾乱が重畳され判定に影響する。
以上の点から、被処理層、特に、プラズマエッチング処理における被処理層の残膜量やエッチング深さを、要求される測定精度で正確に測定、制御することは困難であった。
以下に、本発明の各実施例を説明する。なお、以下の各実施例において、第1の実施例と同様の機能を有する要素は、第1の実施例と同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
以下、図1〜図5を用いて本発明の第1の実施例を説明する。第1の実施例は、半導体ウエハ等の被処理材をプラズマエッチングする際に、サンプル用の被処理材(第1の被処理材)の各層のエッチング量に対する、干渉光の微分値の波長依存性を示す(波長をパラメータとする)標準微分パターンPSを設定し、次に、サンプル用被処理材と同一構成の被処理材(第2の被処理材)についての実際の処理におけるプラズマエッチング処理開始からの任意の時刻の干渉光の複数波長の強度をそれぞれ測定し、該測定された干渉光強度の微分値の波長依存性を示す(波長をパラメータとする)実微分パターン(Pr)を求め、微分値の標準微分パターン(Ps)と実微分パターン(Pr)とを比較して、被処理材のエッチング量を求めるものである。
まず、図1を用いて、本発明にかかるエッチング量(マスク材の残存膜厚またはシリコンのエッチング深さ)測定装置を備えた半導体素子が形成される半導体ウエハのエッチング装置であるプラズマ処理装置の全体構成を説明する。エッチング装置(プラズマ処理装置)1は、真空容器2を備えており、その内部に図示を省略したガス導入手段から導入されたエッチングガスがマイクロ波電力等により分解しプラズマ3となり、このプラズマ3により試料台5上の半導体ウエハ等の被処理材4がエッチングされる。エッチング量(マスク材の残存膜厚またはシリコンのエッチング深さ)測定装置10の分光器11が有する測定用光源(例えばハロゲン光源)からの多波長の放射光が、光ファイバー8により真空容器2内に導かれ、被処理材4に垂直入射角で当てられる。被処理材4からの干渉光は光ファイバー8を介してエッチング量測定装置10の分光器11に導かれ、その状態に基づきシリコンのエッチング深さまたはマスク材の残存膜厚測定やエッチング処理の終点判定の処理を行う。
エッチング量測定装置10は、分光器11と、第1ディジタルフィルタ回路12と、微分器13と、第2ディジタルフィルタ回路14と、微分波形比較器15と、微分波形パターンデータベース16と、パターンマッチング偏差比較器115と、偏差値設定器116と、残膜厚さ時系列データ記録器18、回帰分析器19と、終点判定器230および終点判定器の結果を表示する表示器17を備えている。なお、図1は、エッチング量測定装置10の機能的な構成を示したものであり、表示器17と分光器11を除いたエッチング量測定装置10の実際の構成は、CPUや、マスク材残存膜厚測定処理プログラムまたはシリコンのエッチング深さ測定処理プログラムや干渉光の微分波形パターンデータベース等の各種データを保持したROMや測定データ保持用のRAMおよび外部記憶装置等からなる記憶装置、データの入出力装置、および通信制御装置により構成することができる。
分光器1は、測定用光源(例えばハロゲン光源)からの多波長の放射光をが、光ファイバー8により真空容器2内に導かれ、被処理材4に垂直入射角で当てられる。被処理材4からの干渉光は光ファイバー8を介してエッチング量測定装置10の分光器11に導かれ、その状態に基づきシリコンのエッチング深さ測定またはマスク材の残存膜厚測定やエッチング処理の終点判定の処理を行う。
分光器11が取り込んだ多波長の干渉光の発光強度は、それぞれ特定波長毎に発光強度に応じた電流検出信号となり電圧信号へ変換される。分光器11によりサンプリング信号として出力された複数の特定波長(j個)の信号は、時系列データyi,jとして図示を省略したRAM等の記憶装置に収納される。時刻iにおける時系列データyi,jは次に、第1ディジタルフィルタ回路12により平滑化処理され平滑化時系列データYi,jとして図示を省略したRAM等の記憶装置に収納される。この平滑化時系列データYi,jを基に、微分器13により微係数値(1次微分値あるいは2次微分値)の時系列データdi,jが算出され、図示を省略したRAM等の記憶装置に収納される。微係数値の時系列データdi,jは、第2ディジタルフィルタ回路14により、平滑化処理され平滑化微係数時系列データDi,jとして図示を省略したRAM等の記憶装置に収納される。そして、この平滑化微係数時系列データDi,jから干渉光強度の微分値の波長依存性を示す(波長jをパラメータとする)実微分パターン(Prj)=Σj(Di,j)が求められる。
一方、微分波形パターンデータベース16には、予め第1の(サンプル用)被処理材を用いて取得したエッチング量測定の対象となる被処理材の残存膜厚sで表されたエッチング深さに対応した前記各波長に対する干渉光強度の微分波形パターンデータ値PSjが設定されている。微分波形比較器15において、実微分パターンPrj=Σj(Di,j)と膜厚sの微分波形パターンデータ値PSjが比較される。パターンマッチング偏差比較器115において、パターンマッチング偏差(σs=√(Σj(Di,j−PSj)×(Di,j−PSj)/j))が最小となるパターンマッチング偏差値(最小)σsを求め、偏差値設定器116に予め設定されたパターンマッチング偏差値(設定)σ0と比較し、パターンマッチング偏差値(最小)σsがパターンマッチング偏差値(設定)σ0以下であれば時刻iの瞬時膜厚Ziとして膜厚値sを膜厚時系列データ記録器18に保存する。パターンマッチング偏差値(最小)σsがパターンマッチング偏差値(設定)σ0以上の時は時刻iの瞬時膜厚Ziを保存しない。
回帰分析器19において、時刻i以前の瞬時膜厚データを用いた回帰直線近似より時刻iの計算膜厚Fを求める。この計算膜厚Fが予め設定された目標膜厚以下であるかどうかを終点判定器230で判定する。以上の処理により求められた被処理材のエッチング量の結果は、結果表示器17により表示される。
なお、第1の実施例では分光器11が1個だけの場合を示してあるが、被処理材の面内を広く測定して制御したい場合には、複数の分光器11を設ければよい。
次に、図2のフローチャートを用いて、図1のエッチング量測定装置10でエッチング処理を行う際に、被処理材のエッチング量を求める手順について説明する。
最初に、目標エッチング量(目標残存膜厚さ値)の設定と、微分波形パターンデータベース16より波長域(少なくとも3個の波長域)の抽出された微分パターン(残膜厚さ標準微分パターン)PSjとパターンマッチング偏差値(設定)σ0の設定を行う(ステップ600)。すなわち、予め微分波形パターンデータベース16に被処理材の処理条件に応じて必要とされるエッチング量(残存膜厚さ)sに対応した標準微分パターンPSjを設定する。
次のステップにおいて、被処理体からの干渉光のサンプリング(例えば0.25〜0.5秒毎に)を開始する(ステップ601)。すなわち、エッチング処理開始に伴い、サンプリング開始命令が出される。エッチングの進行に従って変化する多波長の発光強度が、光検出器(分光器11)により発光強度に応じた電圧の光検出信号として検出される。分光器11の各波長j毎の光検出信号は、ディジタル変換され、サンプリング信号yi,jを取得する。
次に、分光器11からの多波長出力信号yi,jを第1段目のディジタルフィルタ12により平滑化し、平滑化時系列データYi,jを算出する(ステップ602)。すなわち、第1段目のディジタルフィルタによりノイズを低減し、平滑化時系列データYi,jを求める。
次に、微分器13において、平滑化時系列データYi,jを微分してS−G法により、各波長毎の微係数di,jを算出する(ステップ603)。すなわち、微分処理(S−G法)により各波長毎の信号波形の微係数(1次または2次)di,jを求める。さらに、第2段目のディジタルフィルタ14により平滑化微係数時系列データDi,jを算出する(ステップ604)。そして、微分波形比較器15において、マッチングパターン偏差値(最小)σs=√(Σ(Di,j−PSj)2/j)値の算出を行い、残存膜厚sに対するマッチングパターン偏差値(最小)σsのもっとも小さい最小値σを求める(ステップ605)。
次に、パターンマッチング偏差比較器115において、算出したマッチングパターン偏差値(最小値)σとマッチングパターン偏差値(設定)σ0とを比較するσ≦σ0の判定を行い(ステップ606)、σ≦σ0の場合、被処理材膜厚が残存膜厚sになったものとして時刻iの瞬時膜厚Ziを残膜厚さ時系列データ記録器18に保存する(ステップ607)。σ≦σ0でない場合、時刻iの瞬時膜厚Ziは標準微分パターンのデータベースからは求まらず、瞬時膜厚は残膜厚さ時系列データ記録器18に保存しない(ステップ608)。これらの平滑化微係数時系列データDi,jと予め微分波形比較器15に設定された微分パターンPSjを比較し、その時刻での残存膜厚値Ziを算出する(ステップ615)。
次に、収納された過去の時系列データZiを用いて、回帰分析器19により1次回帰直線Y=Xa×t+Xb(Y:残膜量、t:エッチング時間、Xa:絶対値がエッチング速度、Xb:初期膜厚)を求め、この回帰直線より時刻i(現時点)の計算残膜量Fを算出する(ステップ609)。次に、終点判定器230において、計算残膜量Fと目標残存膜厚さ値を比較してエッチング量(残存膜厚値)を判定し、目標残存膜厚さ値以下であれば被処理材のエッチング量が所定値になったものとしてその結果を表示器17に表示する(ステップ609)。目標残存膜厚さ値以上である場合、ステップ602に戻り、これらのステップを繰り替えす。最後に、ステップ610で計算算膜量Fが目標残存膜厚さ値以下の場合は、サンプリング終了の設定を行う(ステップ611)。
ここで、ある波長jに関する時刻iの平滑化微係数時系列データDiの算出について説明する。第1のディジタルフィルタ回路12としては、例えば2次バタワース型のローパスフィルタを用いる。2次バタワース型のローパスフィルタにより平滑化時系列データYiは式(1)により求められる。
Yi=b1yi+b2yi−1+b3yi−2
−[a2Yi−1+a3Yi−2]……(1)
ここで、係数b、aは、サンプリング周波数およびカットオフ周波数により数値が異なる。例えば、a2=−1.143、a3=0.4128、b1=0.067455、b2=0.13491、b3=0.067455(サンプリング周波数10Hz、カットオフ周波数1Hz)やa2=−0.00073612、a3=0.17157、b1=0.29271、b2=0.58542、b3=0.29271(カットオフ周波数2.5Hz)などが利用される。
2次微係数値の時系列データdiは、微分器(微係数演算回路)13により5点の時系列データYiの多項式適合平滑化微分法を用いて、下記式(2)から以下のように算出される。
j=2
di=ΣwjYi+j……(2)
j=−2
ここで、w−2=2、w−1=−1、w0=−2、w1=−1、w2=2、である。
前記微係数値の時系列データdiを用いて、平滑化微係数時系列データDiは第2のディジタルフィルタ回路(2次バタワース型のローパスフィルタ、但し、ディジタルフィルタ回路のa、b係数とは異なっても良い)14により、下記式(3)により求められる。
Di=b1di+b2di−1+b 3di−2
−[a 2Di−1+a 3Di−2]……(3)
図3に、ポリシリコンをエッチング処理し、ポリシリコン膜厚45nmで判定した場合の干渉強度とエッチング時間の関係を示す。被エッチング処理材のポリシリコンの初期膜厚は約170nmであり、図には、ウエハ表面から観測される波長500nmの干渉光波形、その1次微分波形およびウエハ表面を見ないようにして観測される波長500nmのプラズマ光(参照光)、そして、標準微分パターンとのマッチング比較により求めたエッチング処理中のポリシリコン膜厚の時間変化(瞬時膜厚推移)を示す。ここで、瞬時膜厚推移は、各時刻での1次微分パターンをそれぞれの膜厚に対応する標準微分パターンと比較し、パターンマッチングの偏差が最も小さいものを選択し、その膜厚変化をプロットしたものである。
図4に、上記ポリシリコンのエッチングを継続的に処理している時に発生した瞬時膜厚推移の変動を示す。図では、瞬時膜厚がエッチング処理時間約25から約31秒の間に、瞬時膜厚が急激に低下し、膜厚は約10nmに達している。この現象はチャンバ内の一部分に蓄積した反応生成物によりエッチングプラズマが僅か変化したり、プラズマを生成する電力が僅か変動することにより発生すると考えられるが、エッチング処理時間約25から約30秒の間のみ瞬時膜厚が急激に低下し、その後、瞬時膜厚の推移は元に戻り、エッチング処理は正常に終了している。この様な瞬時膜厚の変動があった場合、例えば、膜厚45nmの膜厚判定は時刻25秒で判定膜厚以下となるため、膜厚約100nmでエッチング処理を終了し、不良品を製造することになる。したがって、膜厚判定システムはこのような変動に対応して正確な膜厚判定を行う必要がある。
ここで、瞬時膜厚の急激な低下を防ぐために、干渉波形の挙動を解析した。一般的に、干渉波形変化は、物質が薄膜化すると、多くの波長域で干渉光の変化がなくなってくるため、それらの波長における1次微分変化は同時にゼロに近づく。また、プラズマの変動があった場合にも、多くの波長域でその変化は同時に起こり、それらの波長の1次微分は同時に変化し、変動が緩和するとともにゼロに近づき、この微分の挙動は薄膜時の干渉光変化に類似するものである。したがって、このような急激な変動を防ぐためには、膜厚測定に用いる標準微分パターンの内、できるだけ膜厚が薄いデータを使用しないようにすることである。すなわち、目標とする判定膜厚より薄い膜厚の標準微分パターンは、エッチング処理中の瞬時膜厚を求めるために使用しないように、標準微分パターンとのパターンマッチング処理を行うことである。
図5に、パターンマッチング処理に用いる標準微分パターンの最小膜厚を20nmとした場合の結果を示す。図より、プラズマの変動があるエッチング処理時間約25から約30秒の急激な膜厚低下は回避できることがわかる。また、変動のある時刻でのパターンマッチング処理の結果、パターンマッチング偏差は0.05以上となっており、標準微分パターンと実微分パターンがマッチングする膜厚が存在しないため、標準微分パターン作成時の初期膜厚となっている。膜厚測定に用いる膜厚に対する標準微分パターンの設定は、図2のフローチャートにおいて、ステップ600で目標残存膜厚さ値をセットされた際に、この値をもとに標準微分パターンの最小膜厚を定め、この膜厚以上の標準微分パターンを採用する。
次に、プラズマ変動を回避する別の実施例を示す。ここでは、プラズマ変動があった場合、パターンマッチング偏差が大きくなることを利用するものである。一般的に、エッチング処理を開始後、膜厚判定のための微分処理を開始数秒は、プラズマ着火の影響を受けて干渉波形が僅かに乱れパターンマッチング偏差値σが悪くなる。この時刻でのパターンマッチング偏差値(設定)σ0を基準として、その時刻以降のパターンマッチング偏差値σを算出し、そのパターンマッチング偏差値σがパターンマッチング偏差値(設定)σ0より大きい場合には、標準微分パターンとのパターンマッチングが十分でないとし、瞬時膜厚Ziを標準微分パターンからは求めないで、例えば、データベース(標準微分パターン)の初期膜厚と設定するものである。そして、この時刻の初期膜厚となった瞬時膜厚データは、計算膜厚Fを求めるための回帰直線近似解析には用いない。
図6に、第2の実施例である、微分処理開始2秒間のパターンマッチング偏差値σ0=0.04を用いて、エッチング処理中の時刻iの瞬時膜厚Ziを求め、時刻i以前の瞬時膜厚Ziの時系列データをもとに回帰直線近似から時刻iの計算膜厚Fを算出した結果を示す。図より、求められた膜厚推移はプラズマ変動に影響されず、安定に推移し十分膜厚判定が行えることがわかる。ここでは、パターンマッチング偏差値σ0をウエハ処理毎に微分処理開始後の数秒間で求め、パターンマッチング判定を行っているが、ウエハ処理を複数枚行い、それぞれのパターンマッチング偏差値σ0の平均値を、図2のフローチャートにおいて、ステップ600で設定してもよい。
半導体ウエハから半導体デバイスを製造するためプラズマを用いて半導体ウエハを処理するような量産の工程では、本発明のようなプラズマ処理装置は連続的に運転されることになり、被処理材の枚数の増大に伴なって処理室内部の部材表面に生成物が付着して堆積する等の処理室内の条件が変動し、これが処理室内で生成されるプラズマの状態を変動させ処理の結果得られる表面の形状を変動させることになる。そこで、上記量産において被処理材を処理した結果の変動を制御するような工程の管理が必要となる。本実施例において、このような量産管理を行う場合には、パターンマッチング偏差値が予め定められた値より大きくなった回数を被処理材であるウエハ毎の処理で監視し、その回数を図示を省略した記録器やカウンタ等により計数する。このような計数はパターンマッチング偏差比較器115で行ってもよい。
さらに、その回数の推移を所定の値(例えば、回数の値や増加率に関する所定の値)と比較することにより、装置状態やウエハエッチング状態を把握することができる。すなわち、上記回数が徐々に大きくなった場合には、前記回数の所定値をウエットクリーニング等プラズマ処理装置内のメンテナンスを開始する目安としたり、回数が急激に大きくなり増加率がその所定値より大きくなった場合には、処理対象のウエハの検査工程にそのウエハを搬送する等の処置の必要性を使用者に報知したり警告したりする。このような報知や警告は、パターンマッチング偏差比較器115からの指令に応じて例えば図1等の表示器17に表示される。
次に、プラズマ変動を回避する第3の実施例を説明する。ここでは、上記したパターンマッチング偏差比較による瞬時膜厚推移の安定化ではなく、エッチング処理中の時刻iの瞬時膜厚Ziを求め、時刻i以前の瞬時膜厚Ziの時系列データをもとに回帰直線近似から時刻iの計算膜厚Fを算出する際に、計算膜厚Fと瞬時膜厚Ziとの差(絶対値)が予め設定されるある膜厚許容値以上であった場合は、時刻iの瞬時膜厚Ziは正確な膜厚ではないと判断し、この瞬時膜圧Ziを時刻i以降の回帰直線近似による計算膜厚算出には用いない方法で行った結果を図7に示す。図7より、この方法でも同様に図4に示すプラズマの変動があるエッチング処理時間約25から約30秒の急激な変化を回避できることがわかる。ここでは、膜厚許容値としては20nmを用いた。この膜厚許容値の設定は、エッチング処理時に現れる干渉波形の変化より決めることができる。例えば、被エッチング材のポリシリコン初期膜厚200nmがエッチングされる際、波長500nmでの干渉波形は約7/2周期あり、干渉波形の1/4周期以内(微分値の符号が異なる)を正確に判断すればよく、その膜厚は約20nmとなる。
次に、量産処理中のエッチング速度はほぼ一定であり、エッチング速度の変動は大きくても±10%程度であることを利用した膜厚測定の誤判定回避に関する第4の実施例を説明する。図3の瞬時膜厚推移より、正常なエッチング処理(32−60秒間)の瞬時膜厚Zi変化の傾きは一定であり、その傾きより求めたエッチング速度は約123nm/minである。一方、図4のプラズマが変動した時間(25−31秒間)における瞬時膜厚変化の傾きは、正常なエッチング処理間に比べ小さい事がわかる。量産処理において、エッチング速度が倍あるいは半分になる場合は、エッチング処理が異常であり、エッチング装置のウエットクリーニング等の処理を行い、エッチング装置を正常に戻す必要がある。図8に、第4の実施例にかかる膜圧判定器を備えたプラズマ処理装置の構成を、また、膜厚判定のフローチャートを図9に示す。
第4の実施例は、図8に示すように、図1に示したプラズマ処理装置のエッチング量測定装置10の回帰分析器19と終点判定器230の間に、残膜厚さ比較器20と、エッチング速度比較器21を付加した点に特徴を有している。
図9に示すように、最初に、目標エッチング量(目標残存膜厚さ値)の設定と、微分波形パターンデータベースより波長域(少なくとも3個の波長域)の抽出された微分パターン(残膜厚さ標準微分パターン)PSjおよびパターンマッチング偏差値(設定)σ0および膜圧許容値Z0ならびにエッチング速度許容値R0の設定を行う(ステップ1600)。
次のステップにおいて、干渉光のサンプリング(例えば0.25〜0.5秒毎に)を開始する(ステップ1601)。すなわち、エッチング処理開始に伴い、サンプリング開始命令が出される。エッチングの進行に従って変化する多波長の発光強度が、光検出器により発光強度に応じた電圧の光検出信号として検出される。分光器11の光検出信号は、ディジタル変換され、サンプリング信号yi,jを取得する。
次に、分光器11からの多波長出力信号yi,jを第1段目のディジタルフィルタ12により平滑化し、平滑化時系列データYi,jを算出する(ステップ1602)。すなわち、第1段目のディジタルフィルタによりノイズを低減し、平滑化時系列データYi,jを求める。
次に、微分器13において、S−G法により、微係数di,jを算出する(ステップ1603)。すなわち、微分処理(S−G法)により信号波形の微係数(1次または2次)diを求める。さらに、第2段目のディジタルフィルタ14により平滑化微係数時系列データDi,jを算出する(ステップ1604)。そして、微分波形比較器15において、マッチングパターン偏差値(最小)σs=√(Σ(Di,j−PSj)2/j)値の算出を行い、膜厚sに対するマッチングパターン偏差値(最小)σsのもっとも小さい最小値σを求める(ステップ1605)。
次に、パターンマッチング偏差比較器115において、算出したマッチングパターン偏差値(最小値)σとマッチングパターン偏差値(設定)σ0とを比較するσ≦σ0の判定を行い(ステップ1606)、σ≦σ0の場合、被処理材膜厚が膜厚sになったものとして時刻iの瞬時膜厚Ziを残膜厚さ時系列データ記録器18に保存する(ステップ1607)。σ≦σ0でない場合、時刻iの瞬時膜厚Ziは標準微分パターンのデータベースからは求まらず、瞬時膜厚は残膜厚さ時系列データ記録器18に保存しない(ステップ1608)。
処理中のエッチング速度は、残膜厚さ時系列データ記録器18のデータをもとに、回帰分析器19において、1次回帰直線近似から計算膜厚Fとその傾きXaを求める(1609)。次に、残膜厚さ比較器20において、瞬時膜厚Ziが計算膜厚Fと膜厚許容値z0より制限される膜厚であるか否か(F−z0≦Zi≦F+z0)を判定し、または、エッチング速度比較器21において、回帰近似より求めた直線の傾きXaが標準微分パターン作成時のエッチング速度Rとエッチング速度許容値R0により制限されるエッチング速度であるか否か(R−R0≦Xa≦R+R0)を判定し、(F−z0≦Zi≦F+z0)あるいは(R−R0≦Xa≦R+R0)である場合には、瞬時膜厚Ziが残膜厚さ時系列データ記録器18に収納され(ステップ1612)、その他の場合は、収納されない(ステップ1611)。
次いで、膜厚判定は計算膜厚Fにより行われ、目標残存膜厚さ値以下であれば被処理材のエッチング量が所定値になったものとしてその結果を表示器17に表示する(ステップ1613)。エッチング中の膜厚変化の状態は、この計算膜厚Fを表示することにより可能である。目標残存膜厚さ値以上である場合、ステップ1602に戻り、これらのステップを繰り返す。最後に、サンプリング終了の設定を行う(ステップ1614)。
図10に、第4の実施例における膜厚許容範囲値20nm、エッチング速度許容50%(エッチング速度117nm/min)設定および最小膜厚1nm(目標残存膜厚さ値50nm)設定を行った時の計算膜厚推移結果を示す。図より、計算膜厚Fはプラズマ変動に影響されずに、安定に推移し目標膜厚50nmの判定が可能であることがわかる。ここで、目標膜厚とはエッチング処理によって得ようとする目標となる膜厚であり、最小膜厚とは最小値を判定するときに判定可能な膜圧の最小値である。この実施例においては、膜厚許容範囲値が20nmであるので、残存する膜厚は目標膜厚50nm±20nmであればよく、30nmの最小膜厚値を検出できれば、突然それ以下の膜圧を検出したとしてもこの値を無視することができる。
残膜厚さ時系列データ記録器18に収納されなかった瞬時膜厚のデータ個数は、エッチング処理が正常に行われた場合、ほぼゼロであるが、エッチング装置の経時変化によって装置のエッチング特性が変わると、干渉微分パターンのマッチングが悪化し収納されないデータ点数が増加する。また、処理するウエハの仕様に変動があると、パターンマッチングが悪くなりデータ点数が増加する。従って、量産工程では、残膜厚さ時系列データ記録器18に収納されなかった瞬時膜厚のデータ個数を表示器17に表示させることによりエッチング装置の装置管理や処理ウエハの生産管理を行う事が可能である。
次に、プラズマの変動がある場合に観測される干渉光や参照光を補正し、膜厚判定を行う第5の実施例について説明する。プラズマの変動(異常)に伴うプラズマ発光の急峻な変化により干渉光は変化し、例えば、図4、図5に示したように、正確な膜厚を求めることが困難となることがある。また、観測される光信号のS/N比を向上するために、ディジタルフィルタ処理や多項式適合平滑化微分処理を用いているので、急峻な発光の変化はこれらの処理により緩和され長い時間にわたり影響が現れる。この影響を回避することは、プラズマ発光に急峻な変化があった場合、ディジタルフィルタ処理や多項式適合平滑化微分処理を一時中断する方法があるが、これらの処理を中断すると瞬時膜厚が求まらず、膜厚判定を行うことが不可能になる。
そこで、プラズマの急峻な変化を検知し、測定に用いている各波長においてその変化量を求め、各変化量に応じて各波長の光信号を補正し、これらの補正した光信号に対してディジタルフィルタ処理や多項式適合平滑化微分処理などの処理を行い、膜厚を求める方法について説明する。
膜厚判定用のデータベースである標準パターンデータを収集する際に、干渉光および参照光の時間変化を測定された発光データに関して、時刻iのサンプリング点における変化量(時刻i−1との差分)を各波長毎に調べ、エッチング処理中の最大変化量を干渉光や参照光について求める。これらの一サンプリング当りの最大変化量に基づいてノイズ閾値を設定し、このノイズ閾値を用いて、プラズマの急峻な変化を検知する。
次に、このノイズ閾値以上の変化量があった場合、各波長に対してのそれぞれの補正係数(強度比:Si,j=yi−1,j/yi,j)を求め、光信号yi,jをy‘i,j=Si,j*yi,jにより補正する。この補正されたy’i,jに関してディジタルフィルタ処理や多項式適合平滑化微分処理などの処理を行い、瞬時膜厚Ziを求め判定を行う。
このようにしてプラズマの変動を回避し、膜厚判定を行った第6の実施例にかかる膜圧判定器を備えたプラズマ処理装置の構成を、図11を用いて説明する。エッチング装置1は真空容器2を備えており、その内部に導入されたエッチングガスがマイクロ波電力等により分解しプラズマとなり、このプラズマ3により試料台5上の半導体ウエハ等の被処理材4がエッチングされる。エッチング量(残存膜厚またはエッチング深さ)測定装置10の分光器11が有する測定用光源(例えばハロゲン光源)からの多波長の放射光が、光ファイバー8により真空容器2内に導かれ、被処理材4に垂直入射角で当てられる。被処理材からの干渉光は光ファイバー8を介してエッチング量測定装置10の分光器11に導かれ、その状態に基づきシリコンのエッチング膜厚測定や終点判定の処理を行う。
エッチング量測定装置10は、分光器11、サンプリングデータ比較器110、ノイズ閾値を設定するノイズ値設定器111、補正係数記録器・表示器113、サンプリングデータ補正器112、第1ディジタルフィルタ回路12、微分器13、第2ディジタルフィルタ回路14、微分波形比較器15、微分波形パターンデータベース16、パターンマッチング偏差比較器115、偏差値設定器116、残膜厚さ時系列データ記録器18、回帰分析器19、終点判定器230および判定器の結果を表示する表示器17を備えている。
分光器11が取り込んだ多波長の発光強度は、それぞれ発光強度に応じた電流検出信号となり電圧信号へ変換される。分光器11によりサンプリング信号として出力された複数の特定波長(j個)の信号は、サンプリングデータ比較器110において、ノイズ値設定器111に予め設定された値と比較され、信号の変化値がノイズ値以上であれば、サンプリングデータ補正器112において、信号の変化がないように時系列データyi,jを補正する。その時の補正係数は、補正係数記録器・表示器113に収納される。このように、瞬間的に変化した信号の補正された時系列データy‘i,jは、RAM等の記憶装置に収納される。時刻iにおける時系列データy’i,jは次に、第1ディジタルフィルタ回路12により平滑化処理され平滑化時系列データYi,jとしてRAM等の記憶装置に収納される。この平滑化時系列データYi,jを基に、微分器13により微係数値(1次微分値あるいは2次微分値)の時系列データdi,jが算出され、RAM等の記憶装置に収納される。微係数値の時系列データdi,jは、第2ディジタルフィルタ回路14により、平滑化処理され平滑化微係数時系列データDi,jとしてRAM等の記憶装置に収納される。そして、この平滑化微係数時系列データDi,jから干渉光強度の微分値の波長依存性を示す(波長をパラメータとする)実パターンが求められる。
一方、微分波形パターンデータベース16には、エッチング量測定の対象となる被処理材の膜厚sに対応した前記各波長に対する干渉光強度の微分波形パターンデータ値PSjが予め設定されている。微分波形比較器15において、実パターンと膜厚sの微分波形パターンデータ値PSjが比較される。パターンマッチング偏差比較器115において、パターンマッチング偏差(σs=√(Σj(Di,j−PSj)×(Di,j−PSj)/j))が最小となるパターンマッチング偏差値(最小)σsを求め、偏差値設定器116に予め設定された偏差値σ0と比較し、パターンマッチング偏差値(最小)σsがパターンマッチング偏差値(設定)σ0以下であれば時刻iの瞬時膜厚として膜厚値sを膜厚時系列データ記録器18に保存する。パターンマッチング偏差値(最小)σsがパターンマッチング偏差値(設定)σ0以上の時は保存しない。回帰分析器19において、時刻i以前の瞬時膜厚データZiを用いた回帰直線近似より時刻iの計算膜厚Fを求める。この計算膜厚Fが予め設定された目標膜厚以下であるかどうかを終点判定器230で判定する。以上の処理により求められた被処理材のエッチング量の結果は、結果表示器17により表示される。
(変形例)
図11の構成図では、干渉光の処理手段について記載されているが、第5の実施例の変形例では、外部光源からの光による干渉光測定ではなく、プラズマ光を利用した干渉光測定の処理手段に関しては、図12に示すように、エッチング処理容器2の側壁に設けたプラズマ光測定手段1001と、分光器1003と、サンプリングデータ比較器1110と、ノイズ値設定器1111とを備えている。また、プラズマ光測定手段として、図13に示すように、エッチング処理容器2の底部に設けたプラズマ光測定手段1002と、分光器1003と、サンプリングデータ比較器1110と、ノイズ値設定器1111とを備えても良い。これらの装置は、図11の分光器103、サンプリングデータ比較器110、ノイズ値設定器111と同等に動作する。サンプリングデータ比較器1110の出力は図11のサンプリングデータ比較器110の出力と同様にサンプリングデータ補正器112を介して第1ディジタルフィルタ12へ出力される。
次に、図14のフローチャートにより、図11のエッチング量測定装置10でエッチング処理を行う際に、被処理材のエッチング量を求める手順について説明する。
最初に、目標エッチング量(目標残存膜厚値)の設定と標準微分パターンデータベースより波長域(少なくとも3個の波長域)の抽出された微分パターンPSjと偏差値σ0とノイズ値Nの設定を行う(ステップ2600)。すなわち、予め微分波形パターンデータベース15、25に被処理材の処理条件に応じて必要とされるエッチング量sに対応した標準微分パターンを設定する。
次のステップにおいて、干渉光のサンプリング(例えば0.25〜0.5秒毎に)を開始する(ステップ2601)。すなわち、エッチング処理開始に伴い、サンプリング開始命令が出される。エッチングの進行に従って変化する多波長の発光強度が、光検出器により発光強度に応じた電圧の光検出信号として検出される。分光器11の光検出信号はディジタル変換され、時刻iのサンプリング信号yi,jを取得する。
次に、分光器11からの多波長出力信号yi,jを時刻i−1の信号yi−1,jとの差を求める(ステップ2604)。この差yi,j−yi−1,jがノイズ値設定器111に予め設定された値Nより大きいかどうかを、サンプリングデータ比較器110を用いて判定する(ステップ2620)。図12、図13の例の場合には、時刻i−1およびiのプラズマ発光に関する出力信号についてノイズ値設定器1111にあらかじめ設定された値より大きいかどうかを、サンプリングデータ比較器1110を用いて判定する。大きい場合は、変化の割合、すなわち補正係数をSi,j=yi−1,j/yi,jにより求める(ステップ2621)。また、小さい場合は、補正係数はSi,j=1とする(ステップ2622)。この補正係数により分光器からの多波長出力信号yi,jはy‘i,j=Si,j×yi,jと補正される(ステップ2623)。なお、この補正係数値は補正係数記録器・表示器113に収納したり表示したりし、エッチングプロセスの量産管理に用いる。このように補正された信号y‘i,jは第1段目のディジタルフィルタ12に送信されて平滑化され、時系列データYi,jが算出される(ステップ2602)。すなわち、第1段目のディジタルフィルタによりノイズを低減し、平滑化時系列データYi,jを求める。
次に、微分器13において、S−G法により、微係数di,jを算出する(ステップ2603)。すなわち、微分処理(S−G法)により信号波形の係数(1次または2次)diを求める。さらに、第2段目のディジタルフィルタ14により平滑化微係数時系列データDi,jを算出する(ステップ2604)。そして、微分波形比較器15において、σs=√(Σ(Di,j−PSj)2/j)値の算出を行い、膜厚sに対するマッチングパターン偏差値(最小)σsのもっとも小さい最小値σを求める(ステップ2605)。次に、パターンマッチング偏差比較器115において、(σs:マッチングパターン偏差値(最小)、σ0:マッチングパターン偏差値(設定))の判定を行い(ステップ2606)、σs≦σ0の場合、被処理材膜厚が膜厚sになったものとして時刻iの瞬時膜厚を残膜厚さ時系列データ記録器18に保存する(ステップ2607)。σs≦σ0でない場合、時刻iの瞬時膜厚は標準微分パターンのデータベースからは求まらず、瞬時膜厚は残膜厚さ時系列データ記録器18に保存しない(ステップ2608)。これらの平滑化微係数時系列データDi,jと予め微分波形比較器15に設定された微分パターンPZjを比較し、その時刻での残膜値Ziを算出する(ステップ2615)。次に、収納された過去の時系列データZiを用いて、回帰分析器19により1次回帰直線Y=Xa×t+Xb(Y:残膜量、t:エッチング時間、Xa:絶対値がエッチング速度、Xb:初期膜厚)を求め、この回帰直線より時刻i(現時点)の計算残膜量Fを算出する(ステップ2609)。次に、終点判定器230において、残膜量Fと目標残存膜厚さ値を比較し、目標残存膜厚さ値以下であれば被処理材のエッチング量が所定値になったものとしてその結果を表示器17に表示する(ステップ2609)。目標残存膜厚さ値以上である場合、ステップ2604に戻り、これらのステップを繰り替えす。最後に、サンプリング終了の設定を行う(ステップ2611)。
次に本発明の具体的な例について、図4で示した放電変動がある干渉光測定に関して説明する。ここで用いた膜厚判定用の標準パターンデータの干渉光および参照光の時間変化の一サンプリング当りの最大変化量は以下のように決定した。前記したポリシリコンのエッチング処理(エッチング開始5秒から55秒までの間)において、標準パターンデータの干渉光の最大変化量は50カウント、参照光の最大変化量は20カウントとなっている。したがって、プラズマの急峻な変化を検知するための、ノイズ閾値は最大変化量の2倍から3倍の間の仕様に応じて定められた所定の値である100カウントおよび50カウントを設定した。
図15に、上記処理を行いプラズマの急峻な変化を補正した結果を示す。図15に示すように、図4に示したエッチング開始後約25秒に発生していた発光の変動が修正され、干渉光波形や参照光波形の異常変化が低減していることがわかる。この例では、干渉波形のノイズ(異常発光)は小さいため、ノイズ閾値より大きな変化は存在しなかった。しかし、参照光のノイズ(異常発光)は大きく、十分にプラズマの変化を検知でき、その時刻での補正を参照光および干渉光に対して行った。このことにより、干渉光の僅かな変動も補正することができる。これらの処理により、エッチング中の求められる瞬時膜厚の推移は安定に得られることがわかる。
この例では、プラズマの急峻な変化を検知する手段として参照光を用いているが、プラズマ生成用電力の反射パワーやマッチングポイント、またはウエハに印加するバイアスの反射パワーやマッチングポイントの値をモニターし、その値の変化を用いてもよい。
また、ここでは、補正係数はSi,j=yi-1,j /
yi,jにより求めているが、時刻i-1以前の複数個の波形データの平均値を用いてもよく、さらに、過去の時系列データに関するラグランジュ補間法やスプライン補間法などの補間法を用いた滑らかな曲線による時刻i-1の近似値を用いてもよい。また、補正係数により修正した時刻iの発光データに対して、ラグランジュ補間法やスプライン補間法を適用して時刻iの発光データを、さらに、修正してもよい。さらに、図12、図13の例においては、試料表面からの干渉光を用いる場合と同様に、プラズマ発光に関するサンプリングデータ比較器1110の比較結果に基づいて得られた補正係数を用いて干渉光のサンプリングデータを補正しても良い。また、任意の時刻でノイズの閾値を越えたことが検出された場合に、少なくとも1時刻のあらかじめ定められた回数の時刻で前述の回帰分析を用いた演算により膜厚さを検出して、なお後の時刻でノイズ閾値を越えたことが検出された際に補正係数を用いて膜圧の検出を行うようにしてもよい。
ノイズ閾値を超えた回数は、エッチング処理が正常に行われた場合、ゼロであるが、エッチング装置の経時変化によって装置のエッチング特性が変わりプラズマ状態が悪化すると、増加する。したがって、量産工程では、ノイズ閾値を超えた回数を表示器17に表示させることによりエッチング装置の装置管理を行う事が可能である。
本発明によれば、プラズマ処理の、特にプラズマエッチング処理において、被処理材のエッチング量をオンラインで正確に測定することが膜厚測定方法とそれを用いたプロセスの終点判定方法を提供することができる。
また、半導体デバイスの被エッチング層をオンラインで所定のエッチング量になるように高精度に制御できるエッチングプロセスを提供することができる。さらに、被処理層の実際のエッチング量をオンラインで正確に測定することのできる被処理材のエッチング量測定装置を提供することができる。