以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。図1〜図5には、本発明の着用物品の第1実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ1が記載されている。第1実施形態のおむつ1は、図2に示すように、着用時に着用者の背側に配される背側部Aと腹側に配される腹側部Bとその間に位置する股下部Cとを有しており、背側部A及び腹側部Bがシート(後述する外装体26を構成する、外層シート27A,27B及び内層シート28A,28B)を含んで構成され、背側部A及び腹側部Bにおける該シートに着用者の胴回り方向(おむつ1の幅方向、図2におけるY方向)に沿って弾性部材7,8が伸長状態で配置されている着用物品である。
おむつ1は、図2及び図3に示すように、液透過性の表面シート2、液不透過性又は液難透過性(撥水性等)の裏面シート3及び両シート2,3間に介在配置された液保持性の吸収体4を含む実質的に縦長(矩形形状)の吸収性本体25と、該吸収性本体25の非肌当接面側(裏面シート3側)に位置して該吸収性本体25を固定している外装体26とを備えている。吸収性本体25と外装体26との間は接着剤によって接合されている。吸収性本体25は、背側部Aから股下部Cを介して腹側部Bに亘って配されている。背側部A及び腹側部Bは吸収性本体25及び外装体26を含んで構成されている。おむつ1は、図2に示すように、全体として長手方向中央部(股下部C)が内方に括れた砂時計状の形状となっている。
尚、本明細書において、肌当接面は、着用物品及びその構成部材における着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面は、着用物品及びその構成部材における着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。また、長手方向は、着用物品又は着用物品の構成部材の長辺に沿う方向であり、幅方向は、該長手方向と直交する方向である。おむつ1の如きパンツ型の着用物品の場合、パンツ型の着用物品を図2に示す如く展開したときに、その長辺に沿う方向(図2の上下方向)が、パンツ型の着用物品の長手方向であり、図2の左右方向が、パンツ型の着用物品の幅方向である。
図2及び図3に示すように、吸収性本体25の長手方向の左右両側には、液抵抗性ないし撥水性で、且つ通気性の素材から構成された側方カフス17,17が形成されている。各側方カフス17の自由縁部の近傍には、1本又は複数本の側方カフス弾性部材17aが伸張状態で配置されている。側方カフス17は、おむつ着用時に起立して液の流出を阻止する。第1実施形態においては、側方カフス17形成用のシート材19における、前記自由縁部とは反対側の縁部は、吸収体4と裏面シート3との間に固定されているが、裏面シート3と外装体26との間に固定されていても良い。
外装体26は、図2及び図4に示すように、背側部A側と腹側部B側とで分割されている。より具体的には、外装体26は、背側部Aに配置されている背側外装体26Aと、腹側部Bに配置されている腹側外装体26Bとを有し、両外装体26A,26Bが、胴回り方向と直交する方向(おむつ1の長手方向、図2におけるX方向)に所定間隔L2を置いて配置されていて且つ両外装体26A,26B間(股下部Cの胴回り方向と直交する方向の中央部)に外装体が配置されていない。外装体が配されていない、股下部Cの前記中央部におけるおむつ1の外表面(非肌当接面)は、吸収性本体25の非肌当接面側の裏面シート3によって形成されているが、該裏面シート3の外側に外装体26とは別の外表面シートを配置しても良い。一方、背側部A及び腹側部B、並びに股下部Cにおける背側部A寄りの部分(背側股下部Ca)及び股下部Cにおける腹側部B寄りの部分(腹側股下部Cb)におけるおむつ1の外表面は、外装体26A,26Bによって形成されている。
背側外装体26Aは、背側部Aにおいては平面視して矩形形状を有し、背側股下部Caにおいてはそのおむつ幅方向中央部が、おむつ長手方向の内方に向けて凸状に突出している。背側外装体26Aの背側股下部Caにおけるおむつ長手方向の両側縁は、内方に向けて円弧状に湾曲してレッグ縁部A3,A4を形成している。腹側外装体26Bも、背側外装体26Aと同様の平面視形状を有しており、腹側外装体26Bの腹側股下部Cbにおけるおむつ長手方向の両側縁は、内方に向けて円弧状に湾曲してレッグ縁部B3,B4を形成している。外装体26は、背側部Aにおける背側外装体26Aの両側縁部A1,A2と腹側部Bにおける腹側外装体26Bの両側縁部B1,B2とが互いに接合されており、その接合によって、おむつ1に、一対のサイドシール部S,S、ウエスト開口部12及び一対のレッグ開口部13,13が形成されている。サイドシール部Sでは、腹側外装体26Bと背側外装体26Aとが接着剤、ヒートシール、高周波シール又は超音波シール等によって接合されている。
外装体26A,26Bの胴回り方向と直交する方向(おむつ1の長手方向)の全長L1と、おむつの該方向の全長Lとの比(L1/L)は、好ましくは0.1〜0.4、更に好ましくは0.2〜0.3である。また、股下部Cにおける外装体26が配されていない部分の胴回り方向と直交する方向の長さ(背側外装体26Aと腹側外装体26Bとの間の最短離間距離)L2と、おむつの該方向の全長Lとの比(L2/L)は、好ましくは0.1〜0.4、更に好ましくは0.2〜0.3である。
背側外装体26Aは、図4に示すように、外層シート27Aと内層シート28Aとが積層された構造を有している。同様に、腹側外装体26Bは、外層シート27Bと内層シート28Bとが積層された構造を有している。外層シート27A,27Bと内層シート28A,28Bとの間は、所定の部位において接着剤(図示せず)によって接合されており、本実施形態では積層された略全域で接合されている。外層シート27A,27Bは、ウエスト開口部12の開口周縁部(ウエスト縁部)において、内層シート28A,28Bと積層したときに該内層シート28A,28Bのウエスト縁部側から延出し(図4参照)、吸収性本体25側に折り返された部分27AE,27BEを有している。この折り返された部分27AE,27BEによって、図2に示すように、吸収性本体25のおむつ長手方向の両端部が被覆されている。折り返された部分27AE,27BEと、該部分と対向する部分との間は、所定の部位において接着剤(図示せず)によって接合されている。
外装体26(26A,26B)は、吸収性本体25における胴回り方向と直交する方向(おむつ1の長手方向)に沿った両側縁25s、25sから該胴回り方向の外方に向けて延出する延出部26E,26Eを有している。延出部26Eの胴回り方向に沿った長さW1(図2参照)と外装体26A,26Bの胴回り方向に沿った長さW(図2参照)との比(W1/W)は、好ましくは0.1〜0.4、更に好ましくは0.15〜0.3である。尚、前記長さW1,W2は、完成品(後述する延伸加工が施された着用物品)の自然状態における長さである。
背側股下部Caにおけるレッグ縁部A3,A4及び腹側股下部Cbにおけるレッグ縁部B3,B4(おむつ1の内向きの円弧状に湾曲した側縁部)には、1本又は複数本(第1実施形態では2本)のレッグ弾性部材6が配されている。背側股下部Caに位置するレッグ弾性部材6は、外装体36Aの両側縁部A1,A2における背側股下部Caの近傍を起点としてレッグ縁部A3,A4に沿って配され、且つ吸収性本体25の側縁25sに達している。腹側股下部Cbに位置するレッグ弾性部材6は、外装体36Bの両側縁部B1,B2における背側股下部Cbの近傍を起点としてレッグ縁部B3,B4に沿って配され、且つ吸収性本体25の側縁25sに達している。図2に示すおむつの展開状態において、左側に位置するレッグ弾性部材6と右側に位置するレッグ弾性部材6とは、おむつ1を幅方向に二分する仮想直線(図示せず)を挟んで左右対称に配されている。各レッグ弾性部材6は、外層シート27A,27Bと内層シート28A,28Bとの間に伸長状態で挟持固定されている。これによって背側股下部Ca及び腹側股下部Cbにレッグギャザーが形成されている。レッグ弾性部材6は、おむつ1の着用状態におけるレッグ開口部13の開口周縁から100mm以内、特に0〜50mm以内の部位に少なくとも1本配されていることが好ましい。
背側部A及び腹側部Bそれぞれにおけるウエスト部D(ウエスト縁部)には、ウエスト弾性部材7が配設されてウエストギャザーが形成されている。ウエスト弾性部材7は、おむつ1の幅方向に沿って略全幅に亘って、外層シート27A,27Bと内層シート28A,28Bとの間に伸長状態で挟持固定されている。弾性部材7は、おむつ1の長手方向端縁1a,1b(ウエスト開口部12の開口周縁)から80mm以内、特に0〜40mm以内の部位に少なくとも1本配されていることが好ましい。ウエスト部Dは、着用者の腰回りに位置する部位であり、通常、背側部Aにおけるおむつ1の長手方向端縁1a(腹側部Bにおけるおむつ1の長手方向端縁1b)から該おむつ1の長手方向の全長L(図2参照)の1〜15%の長さまでの領域である。
また、背側部A及び腹側部Bそれぞれにおける胴回り部E(ウエスト縁部の近傍)の長手方向の両側部には、それぞれ複数本の胴回りギャザー形成用弾性部材8が配設されて左右一対の胴回りギャザーが形成されている。胴回りギャザー形成用弾性部材8は、幅方向に沿って略直線状に配され、外層シート27A,27Bと内層シート28A,28Bとの間に伸長状態で挟持固定されている。背側部Aにおける胴回り部Eは、図2に示すようにおむつ1を、その各部の弾性部材を伸張させて平面状に拡げた状態(展開状態)とし、背側部A側を上側、腹側部B側を下側と考えた場合に、ウエスト部Dよりも下方に位置し且つ股下部Cよりも上方に位置する領域である。腹側部Bにおける胴回り部Eは、おむつ1を図2に示すものとは上下逆にした場合に、背側部Aにおける胴回り部Eと略同位置にある領域である。
このように、背側部A及び腹側部Bにおける外装体26(26A,26B)の各延出部26Eには、胴回り方向に沿って伸長状態で配置された複数本の弾性部材7,8が、胴回り方向と直交する方向に所定間隔を置いて配置されている。背側部A又は腹側部Bに位置する外装体26(延出部26E)における、隣接する弾性部材の配置間隔は、好ましくは2〜20mm、更に好ましくは5〜10mmである。また、背側部A又は腹側部Bに位置する外装体26(延出部26E)における、胴回り方向に沿って伸長状態で配置された弾性部材の本数は、好ましくは3〜50本、更に好ましくは5〜40本である。
各弾性部材6,7,8は、接着剤等により、外層シート27A,27Bと内層シート28A,28Bとの間に伸長状態で挟持固定されている。特に、後述する被延伸加工部においては、弾性部材の伸縮(特に収縮)をシートに付与する観点から、弾性部材は接着剤等によりシート間に固定されている必要がある。尚、後述する被延伸加工部における、弾性部材が配置されていない領域のシート間は、前記観点からは、接着剤等により接合されていなくても良いが、ギャザー(図5参照)の外観の向上という観点からは、接着剤等により接合されていることが好ましい。
弾性部材固定用の接着剤としては、外層シートと内層シートとを接合するための接着剤を用いても良いが、一般に弾性部材の固定には単なるシートの接合よりも接着剤を多く必要とするため、接着剤使用量低減の観点から、外層シートと内層シートとを接合するための接着剤とは別に、弾性部材固定用の接着剤を追加的に塗布することが好ましい。弾性部材固定用の接着剤の塗布パターンは面状、スパイラルパターン形状、オメガ形状、サミット形状等を用いることができるが、ギャザーの風合いや柔らかさの観点から、弾性部材のみに所謂コームガン等を用いて、直接接着剤を塗布することが好ましい。尚、後述する延伸加工に関し、延伸加工が施される範囲において、弾性部材は連続的にシートに固定されていることが好ましい。
また、各弾性部材6,7,8は、背側部A及び腹側部Bそれぞれにおける吸収性本体25と重なる領域では切断されており、該領域において非機能化されている。弾性部材の切断は、公知の熱エンボス加工を利用することにより行うことができる。熱エンボス加工を利用する場合、外層シート27A,27B側から熱エンボス加工を施しても良く、内層シート28A,28B側から熱エンボス加工を施しても良い。
前述したように、吸収性本体25と外装体26との間は接着剤によって接合されている。両者の接合方法としては、接着剤の塗布の他に、熱シール、超音波シール、物理的係合等の手段を用いることができる。特に、接着剤の塗布は、各構成材料にダメージを与えずに、接合部の境界面を接合できるため、好ましい。接着剤の塗布部の平面視における形状としては、面状、線状、ドット状、線ドット状、オメガ状、スパイラル状等、従来公知のものを適用することができる。接着剤の塗布装置としては、接触式でも非接触式でも良く、ダイコータ、スパイラルスプレー、オメガノズル、カーテンスプレー、ビードノズル、ロールコータ、グラビアコータ、スクリーンロールコータ等を用いることができる。また、接着剤の塗布に際しては、特に接着剤の使用量に注意を払うべきであり、その塗布方法としては、通気性や接着強度を確保しやすいものが好ましく、具体的には、各種コータを用いて接着剤をストライプ状に塗布する方法(一方向に帯状に延びる接着剤塗布部を、該一方向と交差する方向に所定間隔を置いて複数配置する方法)、あるいはオメガノズル、サミットノズル等を用いて接着剤を塗布する方法等が挙げられる。
ところで、一般に、吸収性本体と外装体との接合において、接合前に外装体が実質的に伸長性又は伸縮性を有していない場合は、その接合形態(接合部の位置、大きさ等)は、特に工夫せずに任意に設定することができるが、接合時に外装体が伸長性又は伸縮性を有している場合、中でも、外装体における伸長性又は伸縮性を有している部分やその近傍に吸収性本体を接合する場合は、以下に示すような工夫をすることが好ましい。ここで、接合時に外装体が伸長性又は伸縮性)を有しているとは、1)吸収性本体の接合時に、後述する延伸加工によって外装体に伸長性又は伸縮性が付与されている場合の他、2)吸収性本体の接合時に外装体に延伸加工は施されていないが、弾性部材を具備していることによって該外装体に伸縮性及び伸長性が付与されている場合を含む。第1実施形態のおむつ1は、その製造時において、後述するように、延伸加工の前に吸収性本体25と外装体26(外装体の連続体)とを接合しており(図9参照)、吸収性本体接合時の外装体26は、延伸加工によっては伸長性又は伸縮性を付与されていないが、弾性部材6,7,8を具備しているため、これに起因する伸縮性が付与されている。従って、第1実施形態のおむつ1は、吸収性本体25と外装体26との接合形態に関し、以下に示すような工夫をすることが好ましい。
吸収性本体と外装体との接合形態に関する工夫は、吸収性本体と外装体とを接合するときの該外装体の伸長率によって異なる。以下に、A)外装体をその収縮状態(自然状態)の1.5倍以下の低い伸長率で伸長させ且つその伸長状態以上に伸長可能な状態で吸収性本体と接合する場合と、B)外装体をその収縮状態の1.5倍を超える高い伸長率で伸長させた状態で吸収性本体と接合する場合とに分けて、前記工夫について説明する。
前記A)の場合には、吸収性本体25と外装体26との接合部(接着剤の塗布部)は、吸収性本体25と外装体26とが重なる領域における、おむつ幅方向(胴回り方向Y)の中央部に存していることが好ましい。その理由は次の通りである。通常、吸収性本体25は、伸縮性を実質的に有しない吸収体4を有し、伸縮性を有していないか又は伸縮性に極めて乏しいものであり、また、吸収性本体接合前の外装体26は、弾性部材6,7,8を有し、外装体26全体として伸縮性に優れるものであるところ、伸縮性に乏しい吸収性本体25と伸縮性に優れる外装体26との接合部の面積が大きすぎると、外装体26の伸縮性が損なわれる。特に、吸収性本体25のおむつ長手方向に沿う両側縁部及びそれらの近傍が外装体26と接合されていると、外装体26の伸縮性が大きく損なわれたり、吸収性本体25が剥がれたりする。つまり、外装体を低い伸長率で伸長させた状態で吸収性本体と接合させる場合には、前記接合部の面積(接着剤の塗布面積)が少ないほど、外装体26は伸縮性に乏しい吸収性本体25と接合されていることによる影響(伸縮性の低下)を受けにくく、また、吸収性本体25と外装体26とを、該吸収性本体25のおむつ幅方向の全幅に亘って接合せずに、該吸収性本体25のおむつ幅方向の一部(中央部)で接合することにより、その接合部(接着剤の塗布部)よりもおむつ幅方向の外方に延出する外装体26の、後述する延伸加工によって得られた伸縮性を一層有効に活かすことが可能となる。以上の理由により、吸収性本体25と外装体26との接合部は、吸収性本体25と外装体26とが重なる領域における、おむつ幅方向の中央部に存していることが好ましい。
また、前記接合部は、おむつ幅方向に30mm程度の長さを有していることが好ましい。前記接合部がこのように構成されていることは、吸収性本体25のおむつ幅方向の端部よりも外方に延出する外装体26の伸縮性の活用及び着用者へのフィット性を高める上で有効である。
一方、前記B)の場合には、吸収性本体25と外装体26との接合形態に関する工夫は、吸収性本体25が外装体26から剥がれないこと、吸収性本体25が外装体26の収縮の影響を受けにくくすることを主たる目的とする。前記B)を採用して得られたおむつ1においては、その自然状態において、外装体26に加えて吸収性本体25にも収縮力が働くことから、装着時には収縮した外装体26と一体化された吸収性本体25とが共に伸長可能となるため、吸収性本体25が外装体26から剥がれやすく、特に、外装体26における伸縮性を有している部分(弾性部材が配されている部分)やその近傍に吸収性本体25を接合する場合は、吸収性本体25の剥がれが生じやすい。このような場合の前記接合形態に関する工夫としては、例えば、外装体26における、伸縮性を有し且つ吸収性本体25が接合される部分の該伸縮性を非機能化することが挙げられる。非機能化の方法としては、吸収性本体接合前の外装体26における伸縮性を有している部分に、間欠的(部分的)に、加圧及び/又は熱を用いて、配設された弾性部材を部分的に切断及び/又は融着する処理を施す方法が好ましい。この非機能化処理の効果については、特開2001−61890号公報に記載されている。また、おむつ1を着用するときに吸収性本体25が外装体26から剥がれず、また捲れることがないようにするために、吸収性本体25と外装体26との接合部(接着剤の塗布部)のおむつ幅方向の長さは、吸収性本体25のおむつ幅方向の全幅に対して、好ましくは1/5〜4/5、更に好ましくは2/5〜4/5である。
尚、前述した吸収性本体25と外装体26との接合形態に関する工夫は、吸収性本体25が、通常のこの種の吸収性本体と同様に、実質的に伸長性又は伸縮性を有していない場合に適用されるべきものであり、吸収性本体25が伸縮性を有している(若しくは伸長可能な構成を有している)場合は、その限りではない。
第1実施形態のおむつ1においては、図2に示すように、背側部A及び腹側部Bに、弾性部材6,7,8を含み且つ延伸加工によってシート(外層シート27A,27B及び内層シート28A,28B)自体に伸長性が付与されている。ここで、「シート自体に伸長性が付与されている」とは、本来伸長性を有していなかったシート自体に(延伸加工によって)伸長性が付与されている場合の他、伸長性を有しているシート自体の該伸長性が(延伸加工によって)更に高められている場合を含む。背側部Aに位置する被延伸加工部P4は、該背側部Aの胴回り方向と直交する方向(おむつ1の長手方向X)の全長に亘って実質的に連続しており、また、腹側部Bに位置する被延伸加工部P5は、該腹側部Bの胴回り方向と直交する方向の全長に亘って実質的に連続している。ここで、「実質的に連続している」とは、第1実施形態のように、1の被延伸加工部が所定の範囲に亘って途切れることなく連続している場合のみならず、複数の被延伸加工部が胴回り方向と直交する方向に所定間隔(好ましくは5mm以下の間隔)を置いて連なって列をなしている場合も含む。
より具体的には、背側部Aを構成する背側外装体26Aの延出部26Eに、背側部Aのおむつ長手方向(図2中符号Xで示す方向)の全長及び背側股下部Caの一部に亘って該おむつ長手方向に連続する、平面視において帯状の被延伸加工部P4(図2の背側部A及び背側股下部Caにおいて斜線を付した部分)が形成されている。図2に示すおむつの展開状態において、左側に位置する被延伸加工部P4と右側に位置する被延伸加工部P4とは、おむつ1を幅方向に二分する仮想直線(図示せず)を挟んで左右対称に配されている。また、腹側部Bを構成する腹側外装体26Bの延出部26Eには、腹側部Bのおむつ長手方向の全長及び腹側股下部Cbの一部に亘って該おむつ長手方向に連続する、平面視において帯状の被延伸加工部P5(図2の腹側部B及び腹側股下部Cbにおいて斜線を付した部分)が形成されている。腹側部B側に位置する被延伸加工部P5は、背側部A側に位置する被延伸加工部P4の延長線上に位置している。被延伸加工部P4は、背側外装体26Aの両側縁部A1,A2よりもおむつ幅方向の内方に存しており、また、被延伸加工部P5は、腹側外装体26Bの両側縁部B1,B2よりもおむつ幅方向の内方に存している。
被延伸加工部P4,P5におけるシートは、延伸加工によってそれ自体に伸長性が付与されている。即ち、被延伸加工部P4,P5における外層シート27A,27B及び内層シート28A,28Bは、延伸加工によって、当該シートの形成成分である繊維等の一部あるいは全部が伸びたり破断したりし、これによって破れない程度に破壊されて塑性変形を起こしているため、同一のシートにおける延伸加工が施されていない部位(塑性変形を起こしていない部位)に比して、弾性部材の伸縮方向に伸びやすく且つその伸び量が増えている。つまり、被延伸加工部P4,P5におけるシート自体が、低応力でも容易に弾性部材の伸縮方向に伸長しやすくなっている。そのため、被延伸加工部P4,P5は、延伸加工が施されていない従来のおむつにおける外装体に比して、弾性部材の伸縮方向に引っ張ったときの伸び量が多く、小さな力でより伸びやすい高伸長性を有している。また、被延伸加工部P4,P5には、弾性部材が伸長状態で配されているため、該弾性部材の伸縮方向に伸長しやすいシートが該伸縮方向に伸長されても、該弾性部材の収縮作用によって該シートが伸びっぱなしになることはなく、そのため図5に示す如き収縮したギャザーが容易に形成される。
図5には、図2に示す展開状態のおむつ1における、背側部A側のウエスト縁部の被延伸加工部P4の一部が模式的に示されている。被延伸加工部P4には、図5に示すように、弾性部材7の伸縮方向〔おむつ1の幅方向(胴回り方向)、図5におけるY方向〕と直交する方向〔おむつ1の長手方向(胴回り方向と直交する方向)、図5におけるX方向〕に延びる凸状の襞20,21が、それぞれウエスト縁部に沿って列をなすように多数配されてなるギャザーが形成されている。襞20,21は、後述するおむつ1の製造方法における歯溝ロール(歯溝を歯車状に噛み合わせた一対のギアロール)を用いたシートの延伸加工において、該シートに、該歯溝ロールの歯の跡が残ることによって形成される。被延伸加工部P4のウエスト縁部以外の他の部分及び腹側部B側の被延伸加工部P5においても、図5に示す如きギャザーが形成されている。延伸加工については後で詳述する。
第1実施形態のおむつ1は、延伸加工によってシート自体に弾性部材の伸縮方向への伸長性が付与されている被延伸加工部P4,P5を、背側部A及び腹側部Bを構成する外装体26に、これらの胴回り方向と直交する方向の全長に亘って有していることにより、種々の優れた効果を奏する。即ち、第1実施形態のおむつ1は、延伸加工が施されておらず、シート自体に伸長性が付与されている部分を有していない、未延伸加工品と比べてサイズ適用範囲が広く、着用者の様々な身体的特徴、体型に対応することができる。またおむつ1は、ウエスト縁部が着用者の肌に優しく当接するため、締め付けが少なくてゆとりがあり、肌に該縁部の跡がつきにくく、着用感に優れる。また、本実施形態のおむつ1の斯かる特長は、おむつの型紙(外装体)の大きさを変えたり、新たな部材を追加したりすることなく、元々備えている部材を延伸するだけで得られるものであるため、おむつ1は、高性能であるにもかかわらず、材料費の節減、製造コストの低廉化が図られており、環境にも優しい。また、おむつ1の背側部A及び腹側部Bには、これらの部位を構成するシートの延伸加工(ギア延伸法)によって、図5に示す如き弾性部材の伸縮方向と直交する方向に延びる襞が、該縁部に沿って列をなすように多数配されてなるギャザーが形成されており、このような規則正しく整列する襞を有するギャザーによって、おむつ1の外観(見た目)が向上している。
帯状の被延伸加工部P4,P5の胴回り方向に沿った長さW2と延出部26Eの胴回り方向に沿った長さW1との比(W2/W1)は、サイズ適正の確保およびサイドシール部Sの加工性確保の観点から、好ましくは0.3〜0.95、更に好ましくは0.5〜0.9である。尚、背側部A側における被延伸加工部P4と腹側部B側における被延伸加工部P5とは、長さW2が同じであっても良く、異なっていても良い。第1実施形態では両者の長さW2は同じになっている。
被延伸加工部P4,P5の伸長率は、導入された弾性部材の伸長倍率や延伸されているシート(外層シート27及び内層シート28)の材質、延伸倍率等によって異なるが、好ましくは2〜500%、更に好ましくは50〜300%である。
ここで、伸長率は次のようにして測定される。例えば被延伸加工部P4の伸長率を測定する場合、まず、おむつ1から、弾性部材7が伸長状態で配されている被延伸加工部P4を含む、該おむつ1のウエスト縁部を切り取る。切り取ったウエスト縁部を弛緩させた状態で放置し、ペン等を用いて該ウエスト縁部に、弾性部材7の伸縮方向に単位長さ(50mm,100mm,200mm等)の印をつける。ウエスト縁部における印の両外側を把持して該ウエスト縁部を弾性部材7の伸縮方向に引っ張ってこれを伸ばし、該ウエスト縁部の伸びがとまったところで印間の寸法(限界伸び長さ)を測定する。限界伸び長さを、引っ張る前のウエスト縁部の長さ(初期長さ)で除し、更に1を引いて100倍することで、被延伸加工部P4の伸長率(%)が求められる。例えば被延伸加工部P4の初期長さが50mm、限界伸び長さが75mmであった場合、該被延伸加工部P4の伸長率は50%となる。
被延伸加工部P4,P5は、シート及び該シートに伸長状態で接合された弾性部材を含んで構成される外装体26の所定部位(延出部26E)に、延伸加工を施すことにより得られる。この延伸加工の際、弾性部材は伸長状態とされる。不織布や樹脂シート等のシートの延伸加工は、例えば後述するように、互いに噛み合う歯溝を有する一対のギアを用い、該ギアにシートを噛ませるギア延伸法によって行うことができる。ギアの形状は、歯溝を歯車状に噛み合わせた一対のギアロール(波状ロール)でも良く、平板状でも良い。延伸加工は、例えば前述した特許文献1に記載のギア(特許文献1の図3及び図5の記載等参照)を用いて行うことができる。
おむつ1における各部の形成材料について説明すると、表面シート2並びに外装体26を構成する外層シート27及び内層シート28は、何れも延伸加工が施されるシートであり、延伸加工に適したシートからなるものが好ましい。延伸加工に適したシートとしては、1)延伸加工前には伸長性を有さず(即ち非伸長性であり)延伸加工により伸長性を発現するシートか、又は2)延伸加工前にも多少の伸長性(低伸長性)を有し延伸加工により伸長性が向上する(高伸長性を有するようになる)シートが好ましく用いられ、例えば不織布、樹脂シート、エラストマー材料、エラストマーを含むシート複合材料等が挙げられる。
特に、表面シート2、外層シート27及び内層シート28としては、通気性、伸長性の観点から、不織布が好ましい。表面シート2としては、特に尿などの液体を透過させる液透過性の不織布が好ましく用いられ、必要に応じ開孔を形成する。また、外層シート27としては、特に液不透過性で透湿性の不織布又は撥水性で且つ透湿性の不織布が好ましく用いられる。また、内層シート28としては、液不透過性の樹脂シートが好ましい。
前記不織布としては、例えば弾性繊維若しくは非弾性繊維からなるスパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンボンドとメルトブローンとを組み合わせたSMS不織布、エアースルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、エアーレイド不織布、レジンボンド不織布等の各種製法によるものが挙げられる。これら不織布の坪量は、裂け防止のため、ある程度の坪量と強度が必要であり、逆に坪量が高く厚すぎると通気性を阻害する観点から、5〜50g/m2、特に8〜30g/m2が好ましい。
前記不織布を構成する繊維の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル等の合成樹脂が挙げられる。不織布を構成する繊維は、親水化処理や撥水処理がされたものでもよいし、芯材の表面に熱融着性の鞘材を有するいわゆる芯鞘構造の複合繊維等であってもよい。不織布においては、延伸加工により伸長性を発現しやすい繊維を用いることが好ましい。
前記樹脂シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン等からなるフィルム状のものが挙げられる。樹脂シートは発泡していても良い。樹脂シートの厚みは、柔らかさと強度の観点から、5〜100μm、特に8〜30μmとすることが好ましい。同様の観点から、樹脂シートの坪量は、5〜50g/m2、特に8〜30g/m2が好ましい。
また、吸収体4としては、従来の使い捨ておむつや生理用ナプキンにおいて吸収体として用いられるものを特に制限無く用いることができ、例えば、木材パルプ等の親水性繊維からなる繊維集合体、該繊維集合体に粒状の高吸水性樹脂を保持させたもの等を用いることができる。これらの繊維集合体は、紙、不織布等の透水性シートによって被覆されていても良い。
また、前記各種弾性部材6,7,8,17aとしては、この種のおむつに従来から用いられている公知の材質のものを特に制限なく用いることができる。弾性部材の材質としては、例えば、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等が挙げられる。また、前記各種弾性部材6,7,8,17aの形態としては、糸状、帯状、リボン状、フィルム状、ネット状等から適宜選択することができ、特に、安価で接着性に優れ伸縮応答性に優れ応力設計が容易という観点から、糸状やリボン状弾性部材が好ましい。
また、前記各種シート27,28,19と前記各種弾性部材6,7,8,17aとの接合に用いられる接着剤としては、例えば、スチレン系(SIS、SBS、SEBS)、ポリオレフィン系のホットメルト接着剤が挙げられる。
次に、本発明の着用物品の他の実施形態について、図6〜図8を参照して説明する。以下の着用物品の実施形態については、前述した第1実施形態のおむつと異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施形態のおむつについての説明が適宜適用される。
図6には、第2実施形態のパンツ型使い捨ておむつの図2相当図が示されている。前述した第1実施形態における被延伸加工部P4,P5は、吸収性本体25と重なっていなかったが、第2実施形態における被延伸加工部P8,P9は、図6に示すように、吸収性本体25と重なっている。即ち、第2実施形態のおむつ1においては、背側部Aを構成する背側外装体26Aにおける両側縁部A1,A2を除く略全域に、被延伸加工部P8が形成されており、また、腹側部Bを構成する腹側外装体26Bにおける両側縁部B1,B2を除く略全域に、被延伸加工部P9が形成されている。被延伸加工部P8,P9の伸長率やシートの延伸倍率は、被延伸加工部P4,P5と同様に設定することができる。
第2実施形態における背側外装体26A及び腹側外装体26Bは、それぞれ図6に示すように、平面視において矩形形状を有し、その長手方向をおむつ1の幅方向Yに一致させて配置されている。背側部A及び腹側部Bそれぞれにおけるウエスト部Dには、複数本のウエスト弾性部材7が配設されてウエストギャザーが形成されており、また、胴回り部Eには、複数本の胴回りギャザー形成用弾性部材8が配設されて胴回りギャザーが形成されている。弾性部材7,8は、背側部A及び腹側部Bそれぞれの略全幅に亘って幅方向Yに沿って略直線状に配され、背側外装体26A及び腹側外装体26Bをそれぞれ構成する2枚のシート(外層シート、内層シート)の間に伸長状態で挟持固定されている。長手方向Xに隣接する弾性部材7,8の間隔は、略均一となっている。
第1実施形態においては、吸収性本体25の長手方向Xの両端部が、背側外装体26A及び腹側外装体26Bをそれぞれ構成するシート(外層シート)における折り返された部分によって被覆されていたが、第2実施形態においては、図6に示すように、背側外装体26A及び腹側外装体26Bをそれぞれ構成するシートは折り返されておらず、従って、吸収性本体25の長手方向Xの両端部は該シートで被覆されておらず、吸収性本体25の肌当接面の全域が露出している。
第2実施形態のおむつ1は、前述したように、被延伸加工部P8,P9が吸収性本体25と重なっている構成を有していることから、その製造時においては、外装体26(外装体の連続体)の所定部位(略全域)に延伸加工を施した後に、該外装体26に吸収性本体25を配置する工程が実施される。即ち、第2実施形態のおむつ1の製造方法においては、吸収性本体25の接合前に、延伸加工によって外装体26に伸縮性が付与されている。この点は、後述する第1実施形態のおむつ1の製造方法(図9参照)と異なる点である。
第2実施形態のおむつ1の製造時においては、吸収性本体25の接合前に外装体26(外装体の連続体)が伸縮性を有し且つ外装体26における伸縮性を有している部分に吸収性本体25を接合するため、吸収性本体25と外装体26との接合形態に関しては、前述した工夫をすることが好ましい。具体的には、第2実施形態のおむつ1の製造時においては、先ず、外装体26(外装体の連続体)に延伸加工を施した後、これを該外装体26が備えている弾性部材7,8の伸縮方向に伸長させて、該外装体26における、吸収性本体25の配置予定箇所の弾性部材を切断するなどして、該配置予定箇所の伸縮性を非機能化し、次いで、該配置予定箇所に吸収性本体25を配置・接合することが好ましい。吸収性本体25と外装体26との間の接合は、第1の実施形態にて説明した内容を適用できる。接合は接着剤によってなされ、該接着剤の塗布部は、外装体26における吸収性本体25の配置部分と略同じ面積が、それよりも小さい面積とすることが好ましい。第2実施形態の使い捨ておむつによっても、第1実施形態の使い捨ておむつと同様の効果が奏される。
第3実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1は、図7及び図8に示すように、外装体36が分割されておらず、背側部Aから股下部Cを経て腹側部Bに亘る2枚の連続シートで構成されている点で、第1実施形態のパンツ型使い捨ておむつと異なる。即ち、第3実施形態における外装体36は、連続シートである外層シート37と内層シート38とが積層された構造を有している。両シート37,38の間は、所定の部位において接着剤(図示せず)によって接合されており、第3実施形態では積層された略全域で接合されている。また、外層シート37は、図8に示すように、ウエスト開口部の開口周縁部(ウエスト縁部)において、内層シート38と積層したときに該内層シート38のウエスト縁部側から延出し、吸収性本体25側に折り返された部分37AE,37BEを有している。
外装体36は、おむつ1の外形を形成しており、図7に示すように、股下部Cのおむつ長手方向(胴回り方向と直交する方向、図7におけるX方向)に沿った両側縁が内向きの円弧状に湾曲してレッグ縁部を形成しており、全体としておむつ長手方向中央部が内方に括れた砂時計状の形状となっている。外装体36は、吸収性本体25における胴回り方向と直交する方向に沿った両側縁25s、25sから該胴回り方向の外方に向けて延出する延出部36E,36Eを有している。
そして、第3実施形態のおむつ1においては、図7に示すように、背側部Aの外装体36の左右両側に位置する延出部36Eに、背側部Aのおむつ長手方向の全長及び腹側股下部Cbの一部に亘って該おむつ長手方向に連続する、平面視において帯状の被延伸加工部P4,P4が形成されていると共に、これら左右一対の被延伸加工部P4,P4の間で且つ吸収性本体25の胴回り方向に沿った端縁25aよりもおむつ長手方向外方における外装体36に、延伸加工部P4と同様の延伸加工によって形成された、平面視において帯状の被延伸加工部P6が形成されている。背側部Aにおける被延伸加工部P4とP6とは繋がっていて、被延伸加工部全体として略コ字状をしており、両被延伸加工部P4,P6によって吸収性本体25の背側部A側の端部が包囲されている。腹側部Bにも、背側部Aと同様に延伸加工が施されて、被延伸加工部P5,P7が形成されている。被延伸加工部P6,P7にも、被延伸加工部P4,P5と同様に、図5に示す如きギャザーが形成されている。背側部Aにおける被延伸加工部P6と腹側部Bにおける被延伸加工部P7とは、おむつ1を長手方向に二分する仮想直線(図示せず)を挟んで対称位置に存している。
被延伸加工部P6,P7の胴回り方向と直交する方向の長さL3と、外装体36における、吸収性本体25の胴回り方向に沿った端縁(長手方向端縁)25aからの延出部の長さL4との比(L3/L4)は、好ましくは0.3〜1、更に好ましくは0.5〜1である。第3実施形態の使い捨ておむつによっても、第1実施形態の使い捨ておむつと同様の効果が奏される。
次に、本発明の着用物品の製造方法について、前述した第1実施形態の使い捨ておむつ1の製造方法を例にとり、図面を参照して説明する。尚、後述する本発明の製造方法の説明においては、前述した実施形態と同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前述した実施形態の説明が適宜適用される。
本実施態様のおむつの製造方法は、図9に示すように、いわゆる横流れ方式のパンツ型使い捨ておむつの製造方法であり、おむつ1の背側部A及び腹側部Bを構成するシート(外層シート27及び内層シート28)に、着用者の胴回り方向(図2におけるX方向)に沿って弾性部材7,8を伸長状態で接合しておむつ中間体60(複合シート)の連続体を得、該おむつ中間体60を該弾性部材7,8の伸縮方向に伸長させた状態で、該おむつ中間体60における背側部A及び腹側部Bの所定部位を、互いに噛み合う歯溝を有する一対の歯溝ロール(挟持体)70,71間に噛み込ませて延伸する工程を有している。
より具体的には、本実施態様のおむつの製造方法は、1)外装体26(26A,26B)の連続体の形成工程と、2)外装体26の連続体に吸収性本体25を配置する吸収性本体の配置工程(おむつ中間体の連続体の形成工程)と、3)外装体26の連続体の所定部位に延伸加工を施す工程とを具備している。即ち、本実施態様のおむつの製造方法における延伸加工は、吸収性本体の配置後に実施される。
外装体26の連続体の形成工程(図示せず)では、先ず、帯状の外層シート27Aと内層シート28Aとを接合して帯状の外装体26Aの連続体を形成すると共に、帯状の外層シート27Bと帯状の内層シート28Bとを接合して帯状の外装体26Bの連続体を形成する。本実施態様においては、これらのシート同士を接合するときに、弾性部材6,7,8がこれらのシート同士の間に供給され、それらの間の所定部位に伸張状態で接合される。具体的には、両シート27,28を重ね合わせる前に、両シートの何れか一方又は双方の相対向する面の所定の部位に、両シート27,28及び弾性部材6,7,8を固定するための接着剤を塗工しておくと共に、弾性部材6,7,8にも接着剤を塗工しておき、これらの弾性部材を伸長状態で挟んだ状態で両シート27,28をニップロールで狭圧する。また、両シート27,28は、ヒートシール等の各種シールや接着剤等の接合手段によって所定の部位で互いに接合される。
次に、こうして形成された帯状の外装体26A,26Bの連続体を、互いに平行に並べて同一方向に搬送しつつ、それぞれの所定部位(弾性部材6の湾曲配置部分の内側)を切断してレッグ縁部(おむつ1の内向きの円弧状に湾曲した側縁部)を形成する。図9には、レッグ縁部が形成された後の外装体26A,26Bの連続体が記載されている。このレッグ縁部を形成するための外装体の切断には、ロータリーカッター、レーザーカッター等を用いることができる。尚、レッグ縁部の形成は、後述する吸収性本体25の配置後に行うこともできる。
吸収性本体25の配置工程では、別途製造され、予めホットメルト接着剤等の接着剤が塗布された吸収性本体25が、所定間隔を置いて並列に並べられている外装体26Aと外装体26Bとの間を跨ぐように、内層シート28A,28B上に供給されて固定される。吸収性本体25は、当該技術分野において通常用いられている製造方法に従って製造することができる。吸収性本体25の配置後、外層シート27A,27Bにおける内層シート28からの延出部27AE,27BEを、該吸収性本体25側に折り返して接着剤で固定する。こうして、おむつ中間体60の連続体が得られる。
本実施態様では、こうして得られたおむつ中間体60の連続体の所定部位に、一対の歯溝ロール70,71を用いて延伸加工を施す。一対の歯溝ロール70,71は、それぞれの周面部に、ロール軸線方向(CD)に延び且つ互いに噛み合う歯溝を有している。より具体的には、一対の歯溝ロール70,71の周面部には、図9に示すように、前記歯溝が形成され且つロールの軸線方向の延びる高延伸部72が、それぞれのロール周方向に離間されて二対形成されており、各ロールにおける隣接する高延伸部72,72間に、前記歯溝が形成されておらず略平坦な低又は非延伸部73が形成されている。各高延伸部72は、略矩形形状を有し、その長手方向を各ロールの軸線方向に一致させて該軸線方向の全長に亘って形成されている。両ロール70,71におけるニ対の高延伸部72は、ロールの回転に伴い周期的に噛み合うように形成されている。
高延伸部72には、図10に示すように、所定の高さHを有する歯72aが形成されており、一対の歯溝ロール70,71それぞれの高延伸部72どうしを互いに噛み合わせたときに、両ロールの歯溝が所定の噛み合い深さDで噛み合うようになされている。そのため、被延伸加工物(おむつ中間体60)における、相対向する高延伸部72,72間に噛み込まれた部分のシートは、該シートの形成成分である繊維等の一部あるいは全部に伸びや破断が発生し、全体として破れない程度に破壊されて塑性変形を起こし、該被延伸加工物の搬送方向(MD)に優れた伸長性を発現する高伸長領域となる。
ロール軸線方向(CD)に延びる歯72aは、その端面が、延伸加工時にシート材料や弾性部材に局所的なダメージを極力与えないようにするために、滑らかな表面形状を持っている。歯72aがこのような形状をしていることにより、被延伸加工物を噛みこんだときに、該被延伸加工物に与えるダメージを低減させることができる。また、高延伸部72の歯の高さをロール軸線方向の両端部から中央部に向かって徐々に変更する等して、被延伸加工物に延伸加工をグラデーションで施すことで、材料のダメージをより一層低減させることができる。グラデーションとは、延伸加工を施す部分と、延伸加工を施さない部分との境界をなだらかにするために、刃の形状を前記のようにテーパー形状にする等して、延伸倍率を徐々に変化させ、延伸倍率が1倍を超える被延伸加工部と、延伸加工が施されなかった部分(延伸倍率1倍の部分)との間の延伸倍率の変化を小さくする、ということである。
一方、一対の歯溝ロール70,71それぞれの低又は非延伸部73には、前述したように前記歯溝が形成されておらず略平坦なため、被延伸加工物(おむつ中間体60)における、相対向する低又は非延伸部73,73間を通った部分のシートは、実質的に塑性変形を起こさず、実質的に伸長性を発現しない低又は非伸長領域となる。
一対の歯溝ロール70,71それぞれの高延伸部72どうしの噛み合い深さD(図10参照)は、被延伸加工物の延伸倍率を高め、該被延伸加工物に良好な伸長性を与えるために、被延伸加工物の材料にもよるが0.5mm以上が好ましく、0.5〜5mmが特に好ましい。一対の歯溝ロール70,71の噛み合い深さDは、図10に示すように、歯溝ロール70,71どうしを噛み合わせて回転させるとき、隣接する歯72a,72aが重なり合う長さである。
本実施態様においては、前述した被延伸加工部P4及びP5による効果を確実に奏させるようにする観点から、被延伸加工物(おむつ中間体30)に施す延伸加工による延伸倍率(被延伸加工部におけるシートの延伸倍率)は、好ましくは1.02倍以上、更に好ましくは1.1倍以上である。即ち、高延伸部72,72どうしが噛み合う部分におけるシート及び弾性部材の延伸倍率(伸長倍率)は1.02倍以上、特に1.1倍以上が好ましい。但し、延伸倍率が大きすぎると、延伸加工によってシートが受けるダメージが大きくなりすぎてシートの強度不足等を招くおそれがあるため、延伸倍率の上限は、シートに用いる材料にもよるが、5.0倍程度とすることが好ましい。ここで、延伸倍率とは、歯溝を有するロール等の延伸加工装置の設定上、もとのシートを何倍に延伸するか、ということを示すもので、(歯溝を有するロールの噛み合いによって材料が延伸されたときの材料長さ)/(該ロールの噛み合いによって延伸される前の材料長さ)で定義される。延伸倍率は、歯溝を有する延伸加工装置における歯の噛み合い深さ、隣接する歯のピッチ、歯の幅等によって調整することができる。
また、歯溝ロール70,71の高延伸部72は、隣接する歯のピッチP(図10参照)が、好ましくは0.5〜20mm、更に好ましくは0.5〜10mmである。また、各歯72aの幅W(図10参照、最大幅)は、ピッチPの好ましくは1/2未満であり、且つ歯72aの高さH(図10参照)は、好ましくは0.5〜20mm、更に好ましくは0.5〜10mmである。歯溝ロール70,71それぞれにおける歯溝の形態がこのような条件を満たすものであると、両歯溝ロール70,71間に供給される被延伸加工物(おむつ中間体60)に、高い伸長性を付与することができる。
尚、歯のピッチとは、1つの歯の中心線とそれと隣り合う歯の中心線との距離をいう。歯溝ロールの歯の幅とは、1つの歯の幅をいう。歯72aの幅Wは、歯の高さ方向に亘って均一であっても良く、あるいは歯の根元から先端に向って細くなる台形型であっても良く、あるいは長方形型、三角型等であっても良い。ロールの歯の高さとは、歯の根元から先端までの長さをいう。
歯溝ロール70,71の各ロール軸には、歯72aとは別に、一般的な、JIS B1701に規定されているギアが、駆動用のギアとして取り付けられている。そして、この駆動用のギアが噛み合って回転することで、両ロール70,71それぞれの歯72aどうしが直接接触しなくても、両ロール70,71が同期して回転する。
被延伸加工物が通過する、歯溝ロール70,71間の隙間は、何れも適宜精密に設定可能であり、該隙間をコントロールすることで、被延伸加工物の延伸倍率を容易に変更することができる。一対の歯溝ロールのうちの一方には、シリンダ等を用いた昇降装置(図示せず)が備わっており、前記隙間のコントロールが容易になされている。前記隙間の調整には図示されていないが、くさび等を用いることができる。尚、図示した例においては、歯溝ロールは、歯溝部分とロールとが一体化されて構成されているが、歯溝部分だけをセグメント化して構成することもできる。歯溝部分のセグメント化とは、歯溝部分だけが別部材としてロールの周面部に対して着脱自在に取り付け可能になっている構造である。歯溝部分のセグメント化されていると、歯溝の噛合せ深さを調整、延伸倍率の変更、延伸パターンの変更などが容易になる。また、刃が磨耗してきた場合であっても、スペアパーツを準備しておけば容易に交換ができる。
おむつ中間体60の延伸加工は、例えば次のようにして行うことができる。おむつ中間体60の連続体を、一対の歯溝ロール70,71間に供給する。おむつ中間体60の連続体の両ロール70,71間への供給は、両ロール70,71を挟んでMDの上流側に配された供給ニップロール(図示せず)と、下流側に配された低速度ニップロール(図示せず)を用いて該連続体に一定のテンションを掛けながら行われる。両ロール70,71間では、おむつ中間体60における、外装体26A,26Bそれぞれの左右一対の延出部26E,26Eが、該外装体26A,26BのCDの全長に亘って、該弾性部材7,8の伸縮方向に伸長された状態で高延伸部72,72間に噛み込まれ、この噛み込まれた部分におけるシートの形成成分が適度に破壊されて該シートの塑性変形が起こり、これにより弾性部材7,8の伸縮方向に優れた伸長性を発現する前記被延伸加工部P4,P5となる。一方、おむつ中間体60における他の部位は、実質的に当該部位におけるシートの塑性変形が起こらないため、伸長性は実質的に向上しない。
本実施態様においては前述したように、複合シート(おむつ中間体60)を弾性部材の伸縮方向に伸長させた状態で、該弾性部材が配された部分に延伸加工を施している。ここで、「複合シートを弾性部材の伸縮方向に伸長させた状態」とは、複合シートにおける弾性部材(延伸加工が施される部分の弾性部材)が、搬送テンション等によって引っ張られることによって、該複合シートを構成するシートへの該弾性部材の接合固定時における伸長率(以下、接合時伸長率ともいう)と略同じ伸長率で伸長している状態を意味し、該複合シートを構成するシートが伸長されているか否かを問わない。ここで、接合時伸長率と略同じ伸長率は、接合時伸長率よりも若干小さい伸長率から若干大きい伸長率までを含むものであり、具体的には、接合時伸長率に対して0.5〜1.5倍の範囲にあることが好ましい。
こうして、おむつ中間体60の連続体に被延伸加工部P4,P5を形成した後、常法に従って、各吸収性本体25を二つ折りし、次いで、シール装置(図示せず)を用いて該連続体に、MDに所定間隔をおいてヒートシールを施してサイドシール部S(図9では図示せず)を形成し、次いで、切断手段(図示せず)を用いて該連続体を該サイドシール部Sで切断して個々のおむつ1に分離する。
本実施態様の製造方法においては、前述したように、シートに弾性部材を伸長状態で接合した後で該弾性部材を伸長させつつ該シートにおける該弾性部材の接合部分に延伸加工を施しており、これにより、おむつのサイズ適用範囲を広げ且つ着用感を向上させ、更には見た目にも美しい被延伸加工部P4,P5が得られる。これに対し、シートに延伸加工を施した後でその被延伸加工部に弾性部材を伸長状態で接合する方法は、延伸加工によって得られたシートにおける被延伸加工部の高伸長性が、その後の弾性部材の接合工程で使用する接着剤によって損なわれるおそれがある。また、シートに延伸加工を施すと、シートが伸びっ放しになって自力では元の長さに戻らないようになるため、その後の弾性部材の接合が困難になる。
本発明の適用範囲は、前述したパンツ型の使い捨ておむつに限定されず、例えば展開型の使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の、吸収体を具備する吸収性物品の他、吸収体を具備しない着用物品、例えば、手術着等の医療用着用物品、ジャンパー等の一般の着用物品にも好適である。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば第1及び第2実施形態では、被延伸加工部は、背側部A及び腹側部Bの両方に存していたが、背側部A又は腹側部Bの何れか一方にのみ存していても良い。また第1及び第2実施形態では、被延伸加工部は、背側部A及び腹側部B以外の部分(背側股下部Ca、腹側股下部Cb)にも存していたが、背側部A及び/又は腹側部Bのみに存していても良い。また、第1実施形態において、外装体26A,26Bは、それぞれ、平面視において矩形形状であっても良い。
また、第1実施形態においては、被延伸加工部P4,P5は、図2に示すように背側部A又は腹側部Bにおける吸収性本体25の左右両側それぞれに1つずつ形成されていたが、背側部A又は腹側部Bにおける吸収性本体25の左右両側それぞれに複数形成されていても良い。その場合、複数の被延伸加工部P4(P5)は、胴回り方向(おむつ1の幅方向、図2におけるY方向)に所定間隔を置いて配置することができる。
また前記実施態様(第1実施形態のおむつの製造方法)では、各おむつ中間体が幅方向に連結されてなる連続体を扱う、いわゆる横流れ方式であったが、各おむつ中間体が長手方向に連結されてなる連続体を扱う、いわゆる縦流れ方式であっても良い。また、前記実施態様では、外装体26に吸収性本体25を配置した後に該外装体26に延伸工程を施したが、吸収性本体25の配置前に外装体26に延伸加工を施しても良く、特に第2実施形態のおむつの製造方法ではそのようにすることが好ましい。また、前記実施態様において、各おむつ中間体における吸収性本体25の配置領域を挟んで一方の側に延伸加工を施した後、吸収性本体25を配置し、その後他方の側に延伸加工を施しても良い。また、前記実施態様において、外装体26に延伸加工を施した後に該外装体26上に吸収性本体25を配置する場合には、外層シート27A,27Bは吸収性本体25側に折り返された部分27AE,27BEを有しない構成(第2実施形態参照)とするか、又は折り返された部分27AE,27BEの領域については吸収性本体25を配置した後に延伸加工を施しても良い。
また前記実施態様では、おむつ中間体の連続体に対して延伸加工を施したが、予め製造した1つのおむつ中間体に対して延伸加工を施しても良い。また前記実施態様では、レッグ縁部を形成するための切断(いわゆるRカット)を済ませたおむつ中間体60に延伸加工を施したが、Rカットする前に延伸加工を施しても良い。