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JP5406456B2 - 電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物及びその用途 - Google Patents

電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物及びその用途 Download PDF

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JP5406456B2 JP2008022655A JP2008022655A JP5406456B2 JP 5406456 B2 JP5406456 B2 JP 5406456B2 JP 2008022655 A JP2008022655 A JP 2008022655A JP 2008022655 A JP2008022655 A JP 2008022655A JP 5406456 B2 JP5406456 B2 JP 5406456B2
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Description

本発明は、電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物及びその用途に関する。より詳しくは、光学部材を保護する粘着フィルム等を形成するために好適に用いることができる電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物、該組成物を硬化させて得られる積層体、該積層体により構成される粘着フィルム、並びに、該粘着フィルムを貼り付けてなる光学部材に関する。
電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物は、UVやEB等の電離放射線によって硬化する性能を有する再剥離型の表面保護フィルム(表面保護シート)等として用いることができる粘着フィルムを製造するための原料となるものである。再剥離型の表面保護フィルムとは、光学部材等を製造する工程において、加工、輸送、検査等の間、工程中に傷や汚れ等がつくのを抑制するために一時的に貼り付けられるものであり、通常は、最終的に剥がして廃棄されるものである。近年、光学部材等の表面を保護するためのフィルムの需要が急増し、光学部材を保護するのに適したものが特に望まれている。
光学部材の表面を保護するために用いる粘着フィルムとしては、剥離時に発生する歪により光学部材や液晶セルの配向の乱れ、セルギャップの拡大等の問題が生じないようにする観点及び生産性の観点から、高速剥離時の粘着力(高速粘着力)が必要充分に低いものであることが望ましい。また、高速粘着力が低いのみではなく、粘着フィルムの自重で被着体に速やかに濡れる性質(なじみ性)も優れていることが望ましい。なじみ性が優れていれば、工程中に何らかのトラブルで粘着フィルムが剥がれた場合でも粘着フィルムの自重で被着体に再接着することができるため、工程中に光学部材の表面に傷がつくことをより効果的に抑制できるからである。
粘着フィルムの高速粘着力を下げる方法としては、例えば、粘着フィルムを構成する重合体の架橋密度を上げることが考えられる。しかしながら、重合体の架橋密度を上げて粘着フィルムの高速粘着力を下げると、同時に被着体との接着強度をも下げてしまい、製造工程中に保護フィルムが剥がれたり、オートクレーブ処理時に浮きを発生する等の問題が生じるおそれがあり、また、なじみ性が低下する等の問題が生じることになる。特に表面に微細な凹凸を有する部材(例えば、アンチグレア処理された偏光板等の光学部材)を被着体とする場合、これらの問題が顕著である。
このように、高速で剥離した際の粘着力(高速粘着力)を低くすることと、なじみ性等を向上することとは、互いに相反する物性であり、従来の粘着フィルムは、これらを両立するものではなかった。そのため、これらの物性を同時に高いレベルで両立する粘着フィルム及びそのような粘着フィルムを形成することができる再剥離用粘着剤組成物が求められていた。また、粘着フィルムを表面に微細な凹凸を有する被着体にも用いることができるものとすることが望まれていた。
従来の再剥離用粘着剤組成物としては、例えば、再剥離型感圧接着剤の主成分として、単独重合体のガラス転移温度が−15℃以下のアクリレ―ト系単量体50〜90質量%、単独重合体のガラス転移温度が0〜120℃のアクリレ―ト系単量体40〜5質量%、酸性基含有単量体5〜0.1質量%を必須とした単量体混合物を、この単量体混合物100質量%あたり、反応性ノニオン系界面活性剤0.2〜4質量%とアニオン系界面活性剤0.1〜2質量%を用いて、水媒体中で重合して得られる水分散型アクリル系共重合体を使用し、かつ、この感圧接着剤の溶剤可溶分を40%以下、弾性率を1〜40Kg/cmの範囲に設定するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、アクリル系粘着剤において、ガラス転移温度の高い成分(0〜120℃)を含有させることにより粘着力を弱めて再剥離性を付与することを提案するものである。しかしながら、粘着力が高すぎるため、再剥離性をより向上させる工夫の余地があった。更に架橋密度を上げることによって粘着力を下げることは可能であるが、なじみ性との両立ができないものであり、高速剥離時の低粘着性となじみ性とを両立したものとする等の工夫の余地があった。
また、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加物51〜100質量%、及び前記以外の(メタ)アクリル系モノマー0〜49質量%、並びにその他の重合性モノマー0〜49質量%を単量体成分とする(メタ)アクリル系(共)重合体と、架橋剤とを含有してなる粘着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この技術は、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加物を51〜100質量%用いたアクリル系重合体を、エポキシ化合物やイソシアネート化合物で架橋させたものを用いることにより、濡れ性を向上し、高速剥離時の粘着力低減しようとするものである。しかしながら、なじみ性と高速剥離性とを両立するには多量にアクリル酸アルキレンオキサイド付加物を使用しなければならないが、このモノマーが高価であり、工業的に用いるには適しない技術であった。また、アルキレンオキサイド部分がラジカルによる引き抜きを受けやすいために重合中にゲル化を起こしやすい等の問題点があった。
更に、炭素−炭素二重結合を1個有し且つ鎖長が原子数で6個以上である分子内側鎖を有する放射線反応性ポリマーを主成分とするとともに、放射線照射による硬化反応により生じる収縮力が30MPa以下である再剥離型粘着剤が開示されている(例えば、特許文献3参照)。この技術は、炭素−炭素二重結合を1個有する放射線反応性ポリマーと放射線反応性オリゴマーからなる再剥離型粘着剤であり、硬化反応により生じる収縮力による被貼着物の反りを低いレベルに抑制すること等を目的とするものである。しかしながら、半導体製造時のダイシングテープを想定したものであり、予めイソシアネートで架橋した粘着テープをシリコンウエハに貼り付け、剥離する際の粘着力を低下させる目的でUV硬化させるものであり、高速粘着力は充分に低いが、剥離時の低粘着性のみを意識したものであり、なじみ性の両立ができていない等の問題点があった。
従来の放射線硬化型粘着剤としては、分子量5000〜50000の(メタ)アクリロイル基を分子内に有する放射線硬化型プレポリマ75〜95質量%と分子量500〜3000の(メタ)アクリロイル基を両末端に有する放射線硬化型オリゴマ5〜25質量%からなる混合物に、多官能チオール0.2〜2.0質量%および酸性基を有するアクリル系モノマ50〜100質量%を配合してなる絞り加工の表面保護フィルム用放射線硬化型粘着剤が開示されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、この技術は、金属板やガラス板といった高極性の被着体に用いられるものであり、低極性の高分子材料等に使用するには適しないものであった。また、構成要素として50〜100質量%と多量の酸性基含有モノマーを必須としており、粘着力が高すぎ、粘着力レベルとなじみ性とを両立するものではなかった。
更に、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以下であり、且つ130℃における溶融粘度が5万〜50万(mPa・S)である(メタ)アクリル酸エステル共重合体ポリマーと、水素引き抜き型光開始剤とを含有する単一の層からなる透明粘着シートであって、一側のシート表面の粘着力と他側のシート表面の粘着力とが異なる表裏異粘着性を備えた透明粘着シートが開示されている(例えば、特許文献5参照)。この技術は、PETフィルムやソーダライムガラスと近似する吸収波長領域を有する水素引き抜き型開始剤を用いることにより、PETフィルムやソーダライムガラス越しに紫外線照射した側の粘着性をその反対側よりも高くすることで、表裏で粘着性の異なる粘着シートを得ようとするものである。しかしながら、この技術はPETフィルムやソーダライムガラス越しに照射した面の硬化性が低く、粘着力が大きすぎる等の問題があった。
特開平8−85779号公報(第1−2頁) 特開2005−200540(第1−2頁) 特開2000−355678号公報(第1−2頁) 特開昭61−207476号公報(第1−2頁) 特開2006−299053号公報(第1−2頁)
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、高速剥離時の低粘着性となじみ性とを高いレベルで両立し、光学部材を保護する粘着フィルム等として好適に用いることができる電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物及びその用途を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、再剥離用粘着剤の用途に用いるための電離放射線硬化性組成物について種々検討したところ、アクリル系重合体(A)100質量%に対して、多官能単量体(B)を1〜50質量%含む組成物において、アクリル系重合体(A)を、アルキル基の炭素数が8〜14であるアクリル酸アルキルエステルを必須とする単量体成分を重合して得られ、かつ、側鎖の不飽和結合が0〜0.200mmol/gである側鎖不飽和結合含有重合体とし、更に、アクリル系重合体(A)を構成する単量体成分として、アルキル基の炭素数が8〜14であるアクリル酸アルキルエステル、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する単量体、並びに、その他のビニル系単量体を用い、これらの単量体の使用量を特定範囲とすることによって、特殊なモノマーを用いなくとも高速剥離時の低粘着性となじみ性とを高いレベルで両立することができ、表面に微細な凹凸を有する被着体にも好適に用いることができる保護フィルムの原料となることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。
すなわち、本発明は、アクリル系重合体(A)100質量%に対して、多官能単量体(B)を1〜50質量%含む電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物であって、上記アクリル系重合体(A)は、アルキル基の炭素数が8〜14であるアクリル酸アルキルエステルを必須とする単量体成分を重合して得られ、かつ、側鎖の不飽和結合が0〜0.200mmol/gである側鎖不飽和結合含有重合体であり、上記単量体成分は、単量体全量を100質量%とすると、アルキル基の炭素数が8〜14であるアクリル酸アルキルエステルが50〜100質量%、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する単量体が0〜10質量%、並びに、その他のビニル系単量体が0〜50質量%である電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物である。
以下に本発明を詳述する。
本発明の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物は、アクリル系重合体(A)100質量%に対して、多官能単量体(B)を1〜50質量%含むものである。
多官能単量体を1〜50質量%含むことによって、粘着剤として要求される初期タック、粘着力、凝集力を発現することになる。多官能単量体は、粘着剤の架橋密度を高めポリマー主鎖の動きを抑制して、被着体へのなじみ性や粘着力を調整することにより再剥離性能を調整し、特に光学フィルムの表面保護フィルムに必要な物性が発現することになる。
上記多官能単量体の使用量は、アクリル系重合体(A)が有する側鎖の不飽和二重結合量に応じて変えることが好ましい。不飽和二重結合量が多い場合は、多官能単量体の使用量を少なく、逆に不飽和二重結合量が少ない場合は、多官能単量体の使用量を多くすることで目的の粘着剤が得られる。多官能単量体の使用量は、アクリル系重合体(A)100質量%に対して50質量%以下である。50質量%を超えると、なじみ性が不足するおそれがある。多官能単量体(B)の使用量としては、アクリル系重合体(A)100質量%に対して、2〜40質量%であることが好ましい。より好ましくは、3〜30質量%である。多官能単量体(B)の使用量がこのような好ましい範囲であると、粘着力となじみ性とのバランスが更に優れることになる。
上記多官能単量体(B)は、2以上の官能基を有する単量体である。多官能単量体(B)は、2つ以上のラジカル重合性基を有する単量体であることが好ましい。より好ましくは、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する2官能以上の(メタ)アクリレートであり、更に好ましくは、3つ以上のラジカル重合性基を有する単量体である。特に好ましくは、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートである。なお、本明細書中、3つのラジカル重合性基を有する単量体を3官能単量体(3官能モノマー)ともいう。
上記2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)、メタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
上記3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他の多官能(メタ)アクリレートとしては、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類を適宜使用可能である。
上記多官能単量体の中でも、3官能(メタ)アクリレートであるトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパンが好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが最も好ましい。
上記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物は、多官能単量体に加えて、必要に応じて、単官能単量体を併用することも可能である。これによって、所望の粘着物性を有するように電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物を微調整することができる。単官能単量体の添加量としては、重合体100質量%に対して50質量%以下が好ましい。50質量%を超えると硬化性が低下するおそれがある。単官能単量体の使用量としては、例えば、アクリル系重合体(A)100質量%に対して、0〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは、0〜25質量%であり、更に好ましくは、0〜20質量%である。単官能単量体の使用量がこのような好ましい範囲であると、硬化性を低下させることなく所望の粘着特性を付与することができる。
上記単官能単量体は、1つの官能基を有する化合物である。単官能単量体は、1つのラジカル重合性基を有する化合物であることが好ましい。単官能単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート等の(メタ)アクリレートを用いることができる。これらの中でも、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレートが好ましい。
本発明の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物に含まれるアクリル系重合体(A)は、アルキル基の炭素数が8〜14であるアクリル酸アルキルエステルを必須とする単量体成分を重合して得られ、かつ、側鎖の不飽和結合が0〜0.200mmol/gである側鎖不飽和結合含有重合体である。
以下に、アクリル系重合体(A)を得るための単量体成分及び重合工程について説明する。
上記アルキル基の炭素数が8から14のアクリル酸アルキルエステルを一般式で表せば、下記一般式(1);
Figure 0005406456
(式中、Rは、炭素数が8から14のアルキル基を表す。)で表される化合物である。なお、上記Rは、直鎖であってもよく、分岐であってもよい。
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、イソミリスチルアクリレートが挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記Rは、炭素数が8〜12のアルキル基であることが好ましい。より好ましくは、8〜9のアルキル基である。上記Rが8〜9のアルキル基である化合物の中でも、2−エチルヘキシルアクリレート又はイソノニルアクリレートを用いることが特に好ましい。
上記アクリル系重合体(A)において、アルキル基の炭素数が8〜14であるアクリル酸アルキルエステルの使用量は、全単量体成分を100質量%としたとき、50〜100質量%である。アルキル基の炭素数が8〜14であるアクリル酸アルキルエステルの使用量が50質量%未満であると、なじみ性が不足するおそれがある。アルキル基の炭素数が8〜14であるアクリル酸アルキルエステルの使用量は、55〜95質量%であることが好ましい。より好ましくは、57〜90質量%である。アクリル酸アルキルエステルの使用量がこのような好ましい範囲であると、なじみ性がより優れることになる。
上記なじみ性とは、偏光板等の光学部材の上に保護フィルムを軽く置いた時に、テープの自重のみで粘着剤が被着体に濡れていく性能であるが、これは、各工程中何かのトラブルで保護フィルムが剥がれてしまったとしても、なじみ性が優れていればテープの自重のみで再接着するため、光学部材の表面に傷がつくことを抑制するために要求される性能である。
偏光板の中には、表示部のぎらつき感を抑えるため表面に微細な凸凹を設けることで光の反射を抑制したいわゆるアンチグレア処理されたものがある。このアンチグレア処理された偏光板は微細な凸凹のために粘着剤の濡れが悪いという欠点を有する。一般に架橋密度を上げて高速剥離性を満たした保護フィルムはこのなじみ性が悪く、両物性を両立させることは困難である。本発明の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物を用いて得られる粘着フィルムは、なじみ性に優れるとともに高速剥離時の低粘着性にも優れ、アンチグレア処理された偏光板のような微細な凹凸を有する光学部材等にも好適に用いることができる。ここでいう微細な凹凸とは、凹凸の高低差が0.1〜10μm程度のものを言い、このような微細な凹凸を有する被着体としては、AG(アンチグレア、防眩)処理フィルム、AR(反射防止)フィルム、電磁波遮蔽フィルム等が挙げられる。
凹凸高低差とは、JIS B0601に準拠して測定される十点平均粗さ(Rz)で示される数値である。被着体表面の凹凸高低差の測定には、例えば、キーエンス社製レーザー顕微鏡VK−9710を用いることができる。
本発明の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物は、アクリル系重合体(A)を構成する単量体として水酸基及び/又はカルボキシル基を有する単量体を含むものを用いることによって、基材との密着性を向上することができ、また、後述の不飽和二重結合及び官能基を有する化合物を重合体側鎖に付加させる際の反応点とすることができる。不飽和二重結合及び官能基を有する化合物としてイソシアネート基含有化合物を用いる際の反応点とするには、水酸基を有する単量体を用いることが好ましい。また、不飽和二重結合及び官能基を有する化合物としてグリシジル基含有化合物又はオキサゾリン単量体を用いる際の反応点とするには、カルボキシル基を有する単量体を用いることが好ましい。また、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する単量体としては、水酸基を有する単量体又はカルボキシル基を有する単量体のいずれか一方を用いることが好ましい。水酸基を有する単量体とカルボキシル基を有する単量体とを共重合させると、水酸基とカルボキシル基とが反応してしまい、不飽和二重結合を重合体側鎖に付加させる際の反応点とすることができなくなるからである。
上記水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
水酸基を有する単量体は、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。より好ましくは、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、更に好ましくは、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。また、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルのなかでも、2−ヒドロキシエチルメタクリレート又は2−ヒドロキシエチルアクリレートを用いることが特に好ましい。
上記カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、及び、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
カルボキシル基を有する単量体は、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
上記アクリル系重合体(A)において、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する単量体の使用量は、全単量体成分を100質量%としたとき、0〜10質量%である。10質量%を超えるとなじみ性が不足するおそれがある。水酸基及び/又はカルボキシル基を有する単量体の使用量は、0〜8質量%であることが好ましい。より好ましくは、0〜7.0質量%であり、更に好ましくは、0〜6.0質量%である。
上記その他のビニル系単量体は、上記アルキル基の炭素数が8から14のアクリル酸アルキルエステル、及び、上記水酸基及び/又はカルボキシル基を有する単量体のいずれにも該当しない化合物であり、これらと共重合可能なビニル基含有単量体である。
その他のビニル系単量体としては、例えば、アルキル基の炭素数が1から7のアクリル酸アルキルエステル、アルキル基の炭素数が1から18のメタクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル、ビニルトルエン、及び、スチレン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記その他のビニル系単量体としてより好ましくは、アルキル基の炭素数が1から7のアクリル酸アルキルエステル及びアルキル基の炭素数が1から18のメタクリル酸アルキルエステルである。
上記アクリル系重合体(A)において、その他のビニル系単量体の使用量は、全単量体成分を100質量%としたとき、0〜50質量%である。その他のビニル系単量体の使用量が50質量%を超えると上記アルキル基の炭素数が8から14のアクリル酸アルキルエステルの使用量が少なくなりすぎ、なじみ性が不充分になる。その他のビニル系単量体の使用量は、0〜45質量%であることが好ましい。より好ましくは、0〜40質量%であり、更に好ましくは、0〜35質量%である。
上記アクリル系重合体(A)は、側鎖の不飽和結合が0〜0.200mmol/gである側鎖不飽和結合含有重合体であるが、側鎖の不飽和結合は、0〜0.180mmol/gであることが好ましい。より好ましくは、0〜0.160mmol/gである。
側鎖に不飽和結合を有する重合体としては、(i)側鎖不飽和結合となる部分を有する単量体を用いて重合をおこなうか、又は、(ii)重合体を調製した後に側鎖に不飽和結合を導入してもよい。これらの方法の中でも、上記(ii)の方法でおこなうことが好ましい。
上記(ii)のように不飽和二重結合を重合体の側鎖に導入する方法としては、不飽和基二重結合及び官能基を有する化合物をアクリル系重合体(A)のもとになる重合体に付加させる(付加反応工程をおこなう)方法が挙げられる。なお、側鎖の不飽和結合が実質的に0mmol/gであっても、多官能単量体の使用量を上記のように特定することによって、本発明の効果を奏することができる。
上記アクリル系重合体(A)を得るための重合工程は、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の種々の方法により行うことができるが、分散剤や乳化剤の混入がない、塊状重合又は溶液重合が好ましい。
上記アクリル系重合体(A)を得るための重合工程において使用する溶媒は、重合反応に不活性なものであることが好ましい。また、電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物とする際に使用する溶媒を用いることが好ましい。これによって効率的に電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物を調製することができる。なお、溶媒は、重合機構、使用する単量体の種類や量、重合温度、重合濃度等の重合条件に応じて適宜設定することが好適である。
上記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール等のモノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン,ジオキサン等の環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール等のグリコールモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールモノエーテルのエステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアルキルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量としては、全単量体成分100質量%に対して、40〜1000質量%が好ましい。より好ましくは、100〜400質量%である。
上記重合工程において、重合開始剤を使用することが好ましい。
上記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物;
2,2′−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記重合工程における重合開始剤の添加量は、必要充分に重合反応をおこなうことができればよいが、例えば、重合溶液の全質量を100質量%としたとき、0.01〜1.0質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.01〜1.0質量%であり、更に好ましくは、0.02〜0.5質量%である。重合開始剤の添加量が1.0質量%を超えると、保存安定性が充分ではなくなるおそれがある。
上記重合工程は、必要に応じて連鎖移動剤を添加しておこなうことが好ましい。これによって、所望の平均分子量を有する重合体を得ることができる。上記連鎖移動剤は、公知の種々の連鎖移動剤を用いることができるが、単量体成分の重合反応を極めて容易に制御できることから、チオール化合物が最も好ましい。
上記チオール化合物としては、例えば、t−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオフェノール、チオナフトール等の芳香族メルカプタン;チオグリコール酸;チオグリコール酸オクチル、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス−(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス−(チオグリコレート)等のチオグリコール酸アルキルエステル;β−メルカプトプロピオン酸;β−メルカプトプロピオン酸オクチル、1,4−ブタンジオールジ(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス−(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス−(β−チオプロピオネート)等のβ−メルカプトプロピオン酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルキルメルカプタンが好ましい。
上記連鎖移動剤の使用量は、該連鎖移動剤の種類や、単量体組成等に応じて設定すればよく、単量体成分100質量%に対して0.01〜4質量%の範囲内が好ましい。より好ましくは、0.02〜3質量%の範囲内であり、更に好ましくは、0.03〜2質量%の範囲内である。
上記重合工程における重合温度としては、例えば、50〜200℃とすることが好ましい。50℃未満であると、分解温度の低い開始剤を用いる必要があり、開始剤を冷却保存する設備等が必要となる等、工業製造に不利となるおそれがある。200℃を超えると、開始剤の分解温度に達する前に単量体成分が熱重合し始めるおそれがある。好ましくは、60〜150℃である。なお、重合温度は、開始剤の種類等に応じて適宜設定することが好ましい。
上記重合工程における反応時間は、反応温度等のその他の反応条件、及び、単量体の物性によって適宜調整すればよいが、0.1〜48時間であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜24時間である。上記反応時間が0.1時間未満であると、単量体が充分に重合しないおそれがあり、反応工程が経済的に非効率なものとなるおそれがある。上記反応時間が48時間を超えるとゲル化するおそれがある。
続いて、不飽和基二重結合及び官能基を有する化合物をアクリル系重合体(A)のもとになる重合体に付加させる工程(付加反応工程)について説明する。
上記付加反応工程の方法としては、例えば、(a)カルボキシル基及び/又は水酸基を有する単量体を共重合した重合体にイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させる方法、(b)カルボキシル基を有する単量体を共重合した重合体に、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有単量体、及び/又は、イソプロペニルオキサゾリン等のオキサゾリン単量体を反応させる方法が挙げられる。これらの方法の中でも、上記(a)の方法でおこなうことが反応率が高く、また反応速度が速いため特に好ましい。
上記導入方法(a)で用いられるイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステルは、分子中に1つのイソシアネート基を有するモノイソシアネートであることが好ましい。多価イソシアネート化合物を用いると、合成中に分子間での架橋が発生し、ゲル化するおそれがある。
上記分子中に1つのイソシアネート基を有するイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステルは、下記一般式(2);
Figure 0005406456
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、アルキル基の1の水素原子がイソシアネート基で置換された基を表す。)で表される化合物である。
上記一般式(2)で表される化合物において、Rは、炭素数1〜5のアルキル基の1の水素原子がイソシアネート基で置換された基であることが好ましい。より好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基の1の水素原子がイソシアネート基で置換された基である。なお、上記Rは、直鎖であっても分岐であってもよい。また、Rが有するイソシアネート基は、ブロックされていてもよい。
上記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネートが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの化合物の中でも、(メタ)アクリロイルオキシメチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましい。より好ましくは、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートである。
このようなイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、カレンズシリーズ(昭和電工社製)等を用いることができる。
上記導入方法(b)で用いられるエポキシ基含有単量体とは、エポキシ基と二重結合とを有する化合物である。エポキシ基としては、例えば、1,2−エポキシド基(オキシラン基)、1,3−エポキシド基(オキセタニル基)、1,4−エポキシド基(テトラヒドロフラニル基)、1,5−エポキシド基(テトラヒドロピラニル基)が挙げられる。
このような化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸アリル、ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の脂肪族1,2−エポキシド基を有する単量体、3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン等の脂肪族1,3−エポキシド基を有する単量体、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、ビニルシクロヘキセンオキサイド等の脂環式1,2−エポキシド基を有する単量体が挙げられる。
これらの中でも、カルボキシル基への反応性及び経済性等の点で優れることから、脂肪族1,2−エポキシド基を有する単量体が好ましい。特に好ましくは、(メタ)アクリル酸グリシジルである。最も好ましくは、メタクリル酸グリシジルである。
このようなエポキシ基含有単量体ととしては、ブレンマーG(商品名、日本油脂社製)等を用いることができる。
上記導入方法(b)で用いられるオキサゾリン単量体は、ビニル基とオキサゾリン基とを有する化合物である。オキサゾリン単量体としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、反応性、入手しやすさ等の点で優れることから、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
上記付加反応工程は、50〜100℃の温度範囲で行うことが好ましい。この際、通常は、アクリル系重合体(A)のもとになる重合体、不飽和基二重結合及び官能基を有する化合物、溶媒、及び、付加触媒を混合して行うことになる。
上記温度としてより好ましくは、55〜90℃であり、更に好ましくは、60〜80℃で行う。温度が50℃未満であると、反応に長い時間がかかったり、反応率が低下したりするおそれがある。温度が100℃を超えると、反応中に重合体がゲル化し易くなる。また、ゲル化を防ぐために、更に重合禁止剤を混合し、分子状酸素含有ガスの存在下で行うことが望ましい。分子状酸素含有ガスとしては、通常、窒素等の不活性ガスで希釈された空気或いは酸素ガスが用いられ、反応容器内に吹き込まれる。
上記付加反応工程における反応時間としては、不飽和基二重結合及び官能基を有する化合物の反応率が80%以上に達するまで続けることが好ましい。より好ましくは、90%以上に達するまで続けることであり、更に好ましくは、95%以上に達するまで続けることである。
これによって、側鎖に充分な量の不飽和結合を導入したり、毒性の高いイソシアネート含有単量体及びエポキシ基含有単量体を充分に低減する等の効果が発揮されることになる。なお、反応率は、FT−IRによる未反応官能基量の定量、反応液の酸価の定量、ガス或いは液体クロマトグラフィ法を用いたエポキシ基含有単量体等の残存量の定量等により確認できる。
上記付加反応工程に用いる溶媒としては、重合する際に用いる溶媒として挙げたものを使うことができ、1種又は2種以上を用いてもよい。重合体を溶媒を用いて合成し、得られた重合体溶液の溶媒を、そのまま付加反応工程用の溶媒として用いるのが効率的で好ましい。
上記付加反応工程における溶媒の使用量は、重合体溶液の全質量を100質量%としたとき、重合体濃度が10〜80質量%であることが好ましい。上記範囲で行うことにより、反応時間が短縮でき経済的であり、また、系の粘度が比較的低いためゲル化し難く、温度制御も容易である傾向が期待できる。より好ましい濃度は、15〜70質量%であり、更に好ましい濃度は、20〜60質量%である。
上記導入方法(a)に用いる付加触媒としては、例えば、スズ化合物又は公知のウレタン開裂触媒を用いることができる。これらの中でも、副反応が少ないこと等から、ジラウリン酸ジブチルスズを用いることが好ましい。
上記導入方法(a)における触媒の使用量は、アクリル系重合体(A)のもとになる重合体とイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステルとの合計質量を100重量%としたとき、0.01〜0.5質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.02〜0.1質量%である。上記範囲で行うことにより、反応時間が短縮でき経済的であり、また、保存安定性をより向上できる。
上記導入方法(b)に用いる付加触媒としては、公知のエステル化用又はエステル交換用塩基性触媒及び酸性触媒を用いることができる。これらの中でも、副反応が少ないこと等から、塩基性触媒を用いることが好ましい。
塩基性触媒としては、例えば、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等の3級アミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、テトラメチル尿素等の尿素化合物、テトラメチルグアニジン等のアルキルグアニジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド化合物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の3級ホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩等を挙げることができる。これらの触媒は、単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。
これらの中では、反応性、取扱い性やハロゲンフリーの点で、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、テトラメチル尿素、トリフェニルホスフィンが好ましい。
上記導入方法(b)における触媒の使用量は、アクリル系重合体(A)のもとになる重合体とエポキシ基含有単量体及びオキサゾリン化合物との合計質量を100重量%としたとき、0.01〜5.0質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜3.0質量%である。上記範囲で行うことにより、反応時間が短縮でき経済的であり、また、保存安定性をより向上できる。
上記付加反応工程は、重合禁止剤を添加して行うことが好ましい。
重合禁止剤としては、公知のラジカル重合性単量体用重合禁止剤を用いることができる。ラジカル重合性単量体用重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、メトキノン、6−t−ブチル−2,4−キシレノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系禁止剤、有機酸銅塩やフェノチアジンを挙げることができる。これらの中では、低着色、重合防止能力の点でフェノール系禁止剤が好ましく、入手性、経済性から、中でもメトキノン、6−t−ブチル−2,4−キシレノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,2‘−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)が好ましい。より好ましくは、2,2‘−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)である。これらの重合禁止剤は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。
上記重合禁止剤の使用量としては、全単量体成分と不飽和基二重結合及び官能基を有する化合物との合計質量を100質量%としたとき、0.001〜1.0質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.005〜0.5質量%である。上記のような範囲で行うことにより、付加反応工程におけるゲル化防止と、組成物にした際の充分な硬化性との両立を期待できる。
上記アクリル系重合体(A)としては、重量平均分子量が1万から100万のものを使用することができる。重量平均分子量が100万を超えると塗工性が悪くなるおそれがある。上記重量平均分子量は、2万から80万であることが好ましい。より好ましくは、3万から60万である。
上記重量平均分子量は、下記ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)装置及び条件で測定することが好適である。
装置:HLC−8220GPC(商品名、東ソー株式会社製)
溶出溶媒:テトラヒドロフラン
標準物質:東ソー株式会社製標準ポリスチレン
分離カラム:TSKgel SuperHZM−M
上記アクリル系重合体(A)のガラス転移温度は、−100〜−20℃であることが好ましい。ガラス転移温度が−100〜−20℃であると、充分ななじみ性を付与することができる。上記ガラス転移温度としてより好ましくは、−100〜−30℃であり、更に好ましくは、−100〜−40℃であり、特に好ましくは、−100〜−50℃である。
上記アクリル系重合体(A)のガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定装置)、DTA(示差熱分析装置)、TMA(熱機械測定装置)によって求めることができる。また、ホモポリマーのTg(K)は各種文献(例えば、ポリマーハンドブック等)に記載されているので、コポリマーのTg(K)は、各種ホモポリマーのTgn(K)と、モノマーの質量分率(Wn)とから下記式によって求めることもできる。
Figure 0005406456
ここで、上記略語は、下記のものを表す。
Wn:各単量体の質量分率
Tgn:各単量体のホモポリマーのTg(K)
続いて、多官能単量体(B)について説明する。
上記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物が、更に、水素引き抜き型光重合開始剤(C)を含んでなり、紫外線照射により硬化するものであることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
紫外線(UV)硬化に用いられる開始剤には、水素引き抜き型及び自己開裂型があるが、本発明の場合には、水素引き抜き型の光開始剤を使用することが好ましい形態である。水素引き抜き型開始剤を用いると、開始剤が粘着剤樹脂から水素ラジカルを引き抜き、このポリマー上のラジカルが他のポリマー分子の側鎖不飽和結合と反応することにより(多官能モノマーを間に介する場合もあり)架橋構造が形成される。この反応はポリマーラジカルを起点とするため架橋効率がよく、その結果高速剥離性となじみ性の両立が可能になると推測される。一方、自己開裂型は開始剤がラジカル2分子に開裂し、このラジカルがまずあるポリマー分子の側鎖不飽和結合と反応し、さらに別のポリマー分子と反応することで架橋構造が形成される。先述の水素引き抜き型と比較して架橋構造を形成するまでのステップが長くなるために架橋効率が悪いと考えられる。実際、水素引き抜き型開始剤と比較して高速粘着力が下がりにくく、粘着剤樹脂側鎖の不飽和二重結合量や多官能モノマー量を増やすことで高速粘着力を下げることは可能であるが、なじみ性とのバランスが取れない。高速剥離性を出すには全体的にある程度の架橋度に上げる必要があるが、自己開裂型は架橋効率が悪いため過度の架橋が必要となる。そのため、架橋密度が高すぎるところが存在し、結果として高速剥離性となじみ性のバランスが悪くなると考えられる。
上記水素引き抜き型開始剤としては、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、トリメチルベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−フルオロベンゾフェノン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、〔4−(メチルフェニルチオ)フェニル〕フェニルメタノン等のベンゾフェノン類;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類や3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、ミヒラーケトン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
上記水素引き抜き型光開始剤の中でも、ベンゾフェノン類を用いることが好ましい。ベンゾフェノン類とは、ベンゾフェノン基を有する化合物である。より好ましくは、ベンゾフェノンである。
また、水素引き抜き型光開始剤の添加量は、電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物の全質量を100質量%としたとき、0.1〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.2〜8質量%であり、0.3〜6質量%である。
本発明の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物では、水素引き抜き型光開始剤とともに自己開裂型光開始剤を併用することもできる。自己開裂型光開始剤を使用することで単官能モノマーの未反応量を低減することができる。ただし、自己開裂型光開始剤の添加量は、組成物の全質量を100質量%としたとき、5質量%以下であることが好ましい。自己開裂型開始剤は架橋効率を低下させる働きもあるからである。
上記自己開裂型光開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ジメチルベンジルケタール、2,2−ジメトキシフェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物を紫外線照射によって硬化させる場合、UV光源としてはブラックライト、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。
UVの照射強度としては、粘着剤組成物を充分に硬化させることができればよく、例えば、50〜1000mW/cmが好ましい。照射強度が弱すぎると硬化に時間がかかりすぎる場合がある。
UVの照射量としては、例えば、10〜1000mJ/cmが好ましい。照射量が少なすぎると硬化が不十分で高速粘着力が高くなりすぎる場合があり、多すぎると過剰な硬化のためになじみ性が不足する場合がある。
本発明の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物とイソシアネート架橋剤を含んでなる従来の再剥離用粘着剤組成物との違いについて以下に説明する。
再剥離型粘着剤は、粘着力を低く抑える、貼り付け後の経時的な粘着力の上昇を抑えるという目的から、通常の粘着剤と比較して高架橋密度にする必要がある。そのために、通常よりも多くの架橋点をもった粘着剤樹脂を多量の架橋剤で架橋するという形態をとっている。一般的に用いられるイソシアネート架橋方式では、架橋点として高極性のウレタン結合が多く形成されてしまい、これが粘着層のタックや濡れ性を低下させてしまうために、なじみ性を発現させることが困難となる。一方、電離放射線硬化の場合、架橋部は無極性のアルキル基であるため柔軟でなじみ性が発現しやすい。
また、イソシアネート架橋の場合、多量の架橋点を多量の架橋剤で反応させるため、架橋密度の分布ができやすいといった問題点や、目的としたのポリマー架橋点とイソシアネート化合物の反応(ウレタン結合)以外に、イソシアネート同士の反応(アロファネート結合)や系中に存在する水分との反応などの副反応も起こるため架橋構造は複雑であり、不均一であると考えられる。一方、電離放射線硬化の場合は、不飽和二重結合がラジカルと反応することによって架橋が形成されるため、イソシアネートのような副反応もなく、比較的架橋密度が均一であり、そのため高速剥離性となじみ性のバランスが優れているものと考えられる。
このような理由から、本発明の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物に含まれてもよいイソシアネート架橋剤及びエポキシ化合物等の架橋剤の含有量は、後述するような範囲とすることが好ましい形態である。
上記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物が電子線照射により硬化するものであることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
電子線照射により硬化させると、開始種がすべてポリマーラジカルであるため、高速剥離性となじみ性とのバランスがより優れることになる。また、電子線(EB)硬化は、電子線照射によりポリマーラジカルを発生させるところが起点となるため、水素引き抜き型開始剤を用いた紫外線(UV)硬化と同じ機構である。厳密に言えば、水素引き抜き型開始剤を用いたUV硬化は、ポリマーラジカルと開始剤ラジカル(開始剤がポリマーから水素ラジカルを引き抜いたもの)の2種が開始種となるが、EB硬化はすべてポリマーラジカルが開始種となるためより好ましい形態である。
上記電子線照射による硬化は、加速電圧が300kV以下である電子線を用いればよい。より好ましくは250kV以下である電子線を用いることである。加速電圧が300kVを超えると組成物を通過した電子線が基材を劣化するおそれがある。電子線の照射においては、加速電圧が高いほど電子線の透過能力が増加する。したがって、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材シートへの余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材シートの劣化を最小限にとどめることができる。このように、最適な加速電圧は、樹脂層の厚さに左右されるので、硬化後の厚さが、好ましい範囲の5〜50μm程度である場合には、加速電圧は50〜200kVの範囲が好ましい。
上記照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量に調整するのが好ましく、通常5〜300kGyで調整される。照射線量は、好ましくは10〜250kGyであり、より好ましくは20〜200kGyである。
上記電子線照射における電子線源としては、例えば、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
上記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物を硬化させる際に用いる電離放射線としては、紫外線(UV)照射及び電子線(EB)照射のなかでも、電子線照射を用いることが特に好ましい。紫外線と比較して照射回数も少なくて済み、その結果、粘着フィルム等の製造に関して、生産性を向上させることができる。一般に電子線硬化は、紫外線照射による硬化のように光重合開始剤を必要としないため、電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物の保存安定性が良好であり、塗工作業性等を向上させることができる。
上記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物が、更に、粘着剤組成物100質量%に対して、メルカプタン化合物(D)を0.1〜10質量%含んでなることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
メルカプタン化合物(D)を0.1〜10質量%含むことによって、酸素による硬化阻害の抑制や、局所的に架橋密度が過剰になるのを連鎖移動効果により効果的に抑制することができ、なじみ性を更に向上することができる。
酸素による硬化阻害を抑制する効果は、酸素とラジカルとが結合してできる重合活性のないパーオキシラジカルがメルカプタンから水素を引き抜くことによって重合活性のあるチイルラジカルと変換されることによって得られる。なじみ性向上効果は、電離放射線硬化時に局所的に高架橋密度となるのをメルカプト基による連鎖移動により制御することによって得られると考えられる。
メルカプタン化合物の添加量が0.1質量%未満であると、添加の効果が得られない場合があり、10質量%を超えると硬化性が低下する場合がある。
上記メルカプタン化合物(D)の含有量は、アクリル系重合体(A)を100質量%としたとき、0.1〜9質量%であることが好ましい。メルカプタン化合物の添加量としてより好ましくは、重合体100質量%に対して0.1〜8質量%であり、更に好ましくは重合体100質量%に対して0.1〜7質量%である。
なお、上記メルカプタン化合物(D)の添加量は、アクリル系重合体(A)を得るための上記重合工程で添加されるメルカプタン系の連鎖移動剤の残存物を含む量である。
上記メルカプタン化合物とは、少なくとも1つのメルカプト基を有する化合物である。
メルカプタン化合物の例としては、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、β−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸オクチル等の単官能メルカプタン類;1,4−ブタンジオールジチオグリコレート、1,4−ブタンジオールジ(β−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(β−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキス(β−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキスペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキスペンタエリスリトールテトラキス(β−メルカプトプロピオネート)等の多官能メルカプタン類が挙げられる。揮発性や臭気の観点から多官能メルカプタン類が好ましい。
多官能メルカプタン類とは、1分子あたりメルカプト基を2個以上有する化合物である。
本発明の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物は、更に必要に応じて、添加物として無機充填剤、非反応性樹脂(例えば、アクリル系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等)、着色顔料、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、染料、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、粘着付与剤等を適宜使用することができる。またこれらの添加物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物は、基材と粘着層との密着性向上等の理由により、イソシアネート化合物やエポキシ化合物などの、アクリル系重合体(A)の有する官能基と反応し得る架橋剤を併用することができる。
イソシアネート含有化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、等のジイソシアネート化合物;「スミジュールN」(住友バイエルウレタン社製)等のビュレットポリイソシアネート化合物;「デスモジュールIL」、「デスモジュールHL」(いずれもバイエルA.G.社製)、「コロネートEH」(日本ポリウレタン工業社製)等として知られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物;「スミジュールL」(住友バイエルウレタン社製)等のアダクトポリイソシアネート化合物;「デユラネートD201」(旭化成社製)等のポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。これらは、単独で使用し得るほか、2種以上を併用することもできる。
上記エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン等が挙げられる。
これらのイソシアネート化合物やエポキシ化合物の含有量は、アクリル系重合体(A)を100質量%としたとき、0.5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.4質量%以下であり、更に好ましくは、0.3質量%以下である。イソシアネート化合物やエポキシ化合物の添加量が上記範囲を超えると、なじみ性が低下するおそれがある。
上記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物は、得られる粘着シート(粘着フィルム)が下記のような物性を有するものであることが光学部材を保護する粘着フィルム等の用途において好適であり、本発明において好ましい形態であるといえる。そのような物性を発現させるためには、上述した本発明の構成を採用し、適宜好ましい形態を採用することによって達成することが可能である。
すなわち、得られる粘着シート(粘着フィルム)の低速粘着力が0.1N/25mm以上のものであることが好ましい。低速粘着力が0.1N/25mm以上であることによって、工程中における剥がれや、オートクレーブ処理時の浮き等をより抑制することができる。なお、本明細書において、低速粘着力とは、剥離速度0.3m/分で180°剥離した際の粘着力をいい、後述の測定方法で得られる値である。
上記低速粘着力としてより好ましくは、0.12N/25mm以上である。更に好ましくは、0.15N/25mm以上であり、特に好ましくは、0.17N/25mm以上であり、最も好ましくは、0.20N/25mm以上である。
上記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物は、剥離時の被着体へのダメージを小さくするという観点から、粘着シートを被着体から高速で剥離する際に要する力、すなわち、高速粘着力が必要充分に低いものであることが好ましい。具体的には2.0N/25mm以下であることが好ましい。なお、本明細書において高速粘着力とは、剥離速度30m/分で180°剥離した際の粘着力をいい、後述の測定方法で得られる値である。
上記高速粘着力としてより好ましくは、1.7N/25mm以下である。更に好ましくは、1.5N/25mm以下であり、特に好ましくは、1.2N/25mm以下であり、最も好ましくは、1.0N/25mm以下である。
上記低速粘着力及び高速粘着力は、本発明の組成物を乾燥後の糊厚が20μmとなるように厚さ38μmのPETフィルムへ塗工し、硬化させて得られる粘着シートをPMMA板に貼り付けたものを用いて測定することが好ましい。この場合、測定用の試料は、例えば、硬化後の粘着シートを25mm×150mmの大きさに裁断し、PMMA板(エンジニアリングテストサービス社製)に貼り付け、2kgローラーで1往復圧着させて得られる。
低速粘着力は、圧着1時間後に、0.3m/分の剥離速度で180°方向へ剥離した際の粘着力を測定して得られる。また、高速粘着力は、圧着1時間後に、30m/分の剥離速度で180°方向へ剥離した際の粘着力を測定して得られる。
本発明の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物は、硬化して得られる粘着シート(粘着フィルム)が上記低速粘着力と上記高速粘着力とのいずれをも満たすことが好ましい。
つまり、上記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物を硬化して得られる粘着シートが、被着体に貼り付け、0.3m/分で180°剥離した際の粘着力が0.1N/25mm以上であり、かつ、30m/分で180°剥離した際の粘着力が1.5N/25mm以下であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物は、低速粘着力を高速粘着力で割った値(以下、この値を剥離速度依存性という。)が15以下であることが好ましい。これによって、高速粘着力に対する低速粘着力が相対的に充分大きくなり、保護フィルムとして充分な性能を発揮することができる。
上記剥離速度依存性は、14以下であることが好ましい。より好ましくは、13以下であり、更に好ましくは、12以下であり、特に好ましくは、11以下である。最も好ましくは、10以下である。
上記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物を硬化して得られる粘着シートを40mm×40mmの面積にカットしたものが、0.1〜10μmの凹凸高低差を表面に有する被着体上に静置した際に、濡れ始めから全面が濡れるまでに要する時間(以下、濡れ時間という。)が180秒以内であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
濡れ時間が上記のような範囲であれば、なじみ性に優れたものであるといえ、更に効率的に粘着フィルムを剥がすことができ、生産性が優れることになる。このような物性を発現させるためには、上述した本発明の構成を採用し、適宜好ましい形態を採用することによって達成することが可能である。
上記濡れ時間は、150秒以内であることが好ましい。より好ましくは、120秒以内であり、更に好ましくは、90秒以内であり、特に好ましくは、60秒以内である。
上記濡れ時間は、下記の測定条件で算出される値である。
微細凹凸面を有する被着体として、凹凸高低差5.7μm、表面粗さ(Ra)0.31μmである防眩処理フィルム(商品名「BOF−H141S」、BUFFALO社製液晶保護フィルム)を用い、これに本発明の組成物を乾燥後の糊厚が20μmとなるように厚さ38μmのPETフィルムへ塗工し、硬化させて得られる粘着フィルム(上記低速粘着力及び高速粘着力測定に用いるものと同じ試料)を40mm×40mmの大きさに裁断したものを粘着面を下にして静かに置いた。そして、粘着フィルムが防眩処理フィルムに濡れ始めてから(なじみ始めてから)試料の全面が濡れる(なじむ)のに要する時間を測定する。
続いて、本発明の積層体、粘着フィルム、粘着フィルムロール、及び、光学部材について説明する。
本発明はまた、上記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物を基材に塗布し、電離放射線照射により硬化させて得られる積層体でもある。
上記積層体は、ハードコート性能を付与したフィルムや光学部材用表面保護フィルム等の支持体を含んでなることが好ましい。ハードコートとは、フィルム等の樹脂(基材)の上層に塗布した液状塗膜に紫外線又は電子線を照射することにより得られた耐摩耗性に優れた塗膜である。光学部材用表面保護フィルムとは、液晶表示板に使用される光学部材、フィルム(偏光板、反射防止フィルム等)を傷や汚染等の要因より基材を保護するフィルムである。
本発明の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物の硬化後の厚みは、通常、0.5〜500μmである。好ましくは、1〜300μm、より好ましくは3〜200μmになるように塗布する。特に粘着剤として使用する場合には、5〜50μmの厚みが好ましい。本発明で使用する電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物を粘着剤用途での使用を想定した場合、有機溶媒等の非反応性希釈剤が含有されていない場合は、塗工液は反応性希釈剤を溶媒とする塗布可能な粘性を有する液状であり、電子線硬化によりその厚さが著しく減少するものではないので、電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物の塗布厚と硬化後の樹脂層の厚さとはほぼ同じとなる。
上記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物を支持体上に塗布する方法としては、慣用の塗布法を採用できる。例えば、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、メイヤーバーコーター等を用いて塗布する方法が挙げられる。
本発明の積層体は、通常は、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムや、紙、不織布等の多孔質材料等からなる各種の支持体の片面又は両面に、上記粘着剤層を塗布形成し、シート状やテープ状等の形態としたものである。本発明の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物を用いてなる粘着フィルム類を構成する支持体の厚みは、通常、5〜200μm、好ましくは10〜100μmである。
上記支持体に使用される公知の離型剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系若しくは脂肪酸アミド系等がある。また、シリカ粉等による離型及び防汚処理や、酸処理、アルカリ処理,プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の易接着処理、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理をすることもできる。
また、上記支持体は、耐熱性及び耐溶剤性を有するとともに可撓性を有するプラスチック基材であることが好ましい。支持体が可撓性を有することにより、ロールコーター等によって粘着剤組成物を塗布することができ、ロール状に巻き取ることができる。
上記プラスチック基材としては、シート状やフィルム状に形成できるものであればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミド等のポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。
上記耐熱性及び耐溶剤性を有するとともに可撓性を有するプラスチック基材としては、上述したもの以外にも、例えば、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体をラクトン環化縮合反応させることによって得られる下記一般式(3)で表されるラクトン環含有重合体が知られている。また当該ラクトン環含有重合体を主成分とする熱可塑性樹脂は、透明性や光学等方性等の光学特性や耐熱性が優れており、光学用面状熱可塑性樹脂成形体(シートやフィルム等)として活用でき、当該電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物の支持体として好適に使用できる。
上記ラクトン環含有重合体とは、下記一般式(3);
Figure 0005406456
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表す。)で表される化合物である。なお、上記R、R及びRは、酸素原子を含んでいてもよい。
本発明はまた、上記積層体により構成される粘着フィルムでもある。
本発明の積層体により構成される粘着フィルムは、剥離速度依存性が充分に低いものであり、再剥離型の表面保護フィルム等として各種基材に対して好適に用いることができる。上記基材としては、例えば、光学部材、金属板、ガラス板、プラスチック板、樹脂塗装銅板、窓ガラス、家具、車等の製品に対して使用することができる。これらの中でも、光学部材に使用することが好ましい。
上記粘着フィルムは、支持体背面に公知の離型剤を塗布してロール状に巻回したり(いわゆるセパレータフリー)、形成された放射線硬化した粘着剤層の露出表面に公知の離型剤を塗布したセパレータで被覆してロール状に巻き取ってもよい。
本発明は更に、上記積層体により構成される粘着フィルムロールであって、上記粘着フィルムロールは、セパレーターを介さずに巻回された粘着フィルムロールでもある。
本発明の積層体により構成される粘着フィルムは、剥離速度依存性が充分に低いものであり、セパレータフリーのフィルムロールとすることが特に好適である。表面保護フィルム用途では、セパレータフリーによりロール状に巻き取る形態が、コスト削減、剥離したセパレータの廃棄がないので環境面にも悪影響を与えず、効率的な工業生産が可能となることで好ましい。
上記粘着フィルムロールは、基材フィルムに電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物を塗工する工程、この電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物に紫外線又は放射線を照射して架橋する工程、及び、架橋後の粘着剤層と支持体背面間にセパレータを介さずにロール状に巻き取る工程を含む製造方法により得られるものであることが好ましい。
このような粘着フィルムロールの製造方法もまた、本発明の1つである。
本発明は更に、上記粘着フィルムにより構成される表面保護フィルムであって、上記表面保護フィルムは、表面の凹凸高低差が0.1〜10μmの被着体に用いられる表面保護フィルムでもある。
凹凸高低差とは、JIS B0601に準拠して測定される十点平均粗さ(Rz)で示される数値である。上記被着体は、表面の凹凸高低差が1.0〜9.0μmのものであることが好ましい。より好ましくは、2.0〜8.0μmのものである。
本発明の表面保護フィルムをこのような被着体に用いると、高速剥離時の低粘着性となじみ性とを両立する効果が、更に顕著に発揮されることになる。
本発明は更に、上記粘着フィルムにより構成される表面保護フィルムであって、上記表面保護フィルムは、アンチグレア処理された光学部材に用いられる表面保護フィルムでもある。
光学部材におこなうアンチグレア処理としては、例えば、液晶表示装置等の表面にシリカの微粉末等を吹き付けて微細な凹凸を付け、光を散乱させる方法、シリカのような無機フィラーや、メラミン、アクリル等のプラスチックビーズからなる有機フィラーを含有する樹脂溶液を塗工し、溶剤を乾燥させることによって表面に微細な凹凸を形成させ、光を散乱させる方法、及び、液晶表示装置等の表面に透明な薄膜を設けて光の干渉を発生させる(外光を打ち消す)ARコーティング等が挙げられる。これらの中でも、例えば、無機、有機フィラー含有樹脂溶液を塗工する方法でアンチグレア処理された光学部材に本発明の表面保護フィルムを用いることが特に好ましい。また、アンチグレア処理された光学部材は、表面の凹凸高低差が上記被着体の凹凸高低差と同様であることが好ましい。更に、光学部材は、偏光板であることが好ましい。
本発明の表面保護フィルムをこのような形態を有する光学部材に用いると、高速剥離時の低粘着性となじみ性とを両立する効果が、更に顕著に発揮されることになる。
なお、本発明の表面保護フィルムは、本発明の粘着フィルムロールを用いて構成されるものであることが好ましい。これによって、光学部材等の被着体の表面保護を更に効率的におこなうことができる等の有利な効果が発揮されることになる。
本発明は更に、上記粘着フィルムを貼り付けてなる光学部材でもある。
上記光学部材としては、例えば、液晶ディスプレイを構成する偏光板、位相差板、輝度向上フィルムや、プラズマディスプレイを構成するARフィルム、電磁波シールドフィルム、IRカットフィルム等の光学フィルム等が挙げられる。微細凹凸面を有する光学部材であることが特に好適である。
本発明の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物及びその用途は、上述の構成よりなり、高速剥離時の低粘着性となじみ性とを高いレベルで両立し、光学部材を保護する粘着フィルム等として好適に用いることができるものである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
以下の実施例及び比較例では、下記の方法で測定をおこなった。
[微細凹凸面へのなじみ性]
微細凹凸面を有する被着体として、凹凸高低差5.7μm、表面粗さ(Ra)0.31μmである防眩処理フィルム(商品名「BOF−H141S」、BUFFALO社製液晶保護フィルム)を用い、これに粘着フィルムを40mm×40mmの大きさに裁断したものを粘着面を下にして静かに置いた。そして、粘着フィルムが防眩処理フィルムに濡れ始めてから(なじみ始めてから)試料の全面が濡れる(なじむ)のに要する時間を測定した。
[合成例1]
アクリル重合体の重合例(樹脂A1)
温度計、冷却器、窒素ガス導入管、及び攪拌機を備えた反応器に、2−エチルヘキシルアクリレート 143.85部、ブチルアクリレート 63部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 3.2部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン 0.21部、溶剤として酢酸エチル 280.6部を仕込んだ後、反応器を窒素ガスで置換した。次に、上記の混合物を攪拌しながら内温を85℃に昇温した後、重合開始剤として2,2‘−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)(商品名「ABN−E」;日本ヒドラジン工業社製)0.175部、溶剤として酢酸エチル 3.15部を添加して反応を開始した。重合開始から10分後に、2−エチルヘキシルアクリレート 335.65部、ブチルアクリレート 147部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 7.35部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン 0.49部の混合物を滴下ロートから60分かけて滴下した。また、重合開始剤としてABN−E 0.175部、溶剤として酢酸エチル 14部を別の滴下ロートより同様に滴下した。滴下終了後に酢酸エチル 119部で滴下ロートを洗浄しながら反応器に添加した。その後、還流温度にて5時間反応させた後、酢酸エチル 105部で希釈を行い、不揮発分濃度53.9%、重量平均分子量21万のアクリル系重合体(樹脂A1)の溶液を得た。
[合成例2〜6]
アクリル重合体の重合例(樹脂A2〜A6)
モノマー組成を表1記載の比率に変更した以外は樹脂A1と同様の操作を行い、樹脂A2〜A5を得た。樹脂A2〜A5の不揮発分濃度、重量平均分子量を表1に示した。
Figure 0005406456
上記表1において、略語は下記のものを示す。
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
INA:イソノニルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
[合成例7]
側鎖に不飽和二重結合を有するアクリル系重合体の製造例(樹脂B1)
温度計、冷却器、窒素ガス導入管、及び攪拌機を備えた反応器に、樹脂A1溶液を固形分換算で100部、重合禁止剤として2,2‘−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名「アンテージW−400」;川口化学工業社製)0.06部、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名「カレンズAOI」;昭和電工社製)0.18部を加え、窒素/空気=2/1の混合ガスをバブリングさせながら攪拌を行い、内温を70℃に昇温した。その後、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ 0.04部を添加し、70℃で3時間反応させた後、FT−IR分析によりイソシアネート基に由来する2273cm−1ピークの消失を確認し、樹脂固形分あたり0.013mmol/gの不飽和二重結合を有するアクリル重合体(樹脂B1)を得た。
[合成例8〜12]
側鎖に不飽和二重結合を有するアクリル系重合体の製造例(樹脂B2〜B6)
使用するアクリル系重合体およびカレンズAOI量を、表2のように変更した以外は樹脂B1と同様の操作を行い、樹脂B2〜B6を得た。樹脂B1〜B6の不飽和二重結合導入量、重量平均分子量を表2に示した。なお、下記表2のDBTDLとは、ジラウリン酸ジブチルスズを表す。
Figure 0005406456
実施例1
粘着剤樹脂A1 100部(固形分換算)に対し、トリメチロールプロパントリアクリレート 23.5部、光開始剤としてベンゾフェノン 2.5部、メルカプタンとしてペンタエリスリトールテトラキス(β−メルカプトプロピオネート)(商品名:PEMP;堺化学工業社製)1.2部を加えてUV硬化型粘着剤組成物を得た。
この粘着剤組成物を厚さ38μmのPETフィルムへ、乾燥後の糊厚が20μmとなるようにアプリケーターで塗工し、熱風循環オーブンにて80℃、3分間の条件で乾燥させた。次いで、この乾燥物を高圧水銀ランプを有するUV照射機にて、ピーク照度168mW/cm、照射量100mJ/cmの条件でUVを照射してUV硬化型粘着シートを作成した。
実施例1で得られた粘着シートについて、下記の評価方法で評価した。
[低速粘着力測定方法]
硬化後の粘着シートを25mm×150mmの大きさに裁断し、PMMA板(エンジニアリングテストサービス社製)に貼り付け、2kgローラーで1往復圧着させた。圧着1時間後に、0.3m/分の剥離速度で180°方向へ剥離した際の粘着力を測定した。低速粘着力としては、工程中における剥がれや、オートクレーブ処理時の浮きを抑制する観点からは高いことが好ましく、具体的には0.1N/25mm以上であることが好ましい。
[高速粘着力測定方法]
硬化後の粘着シートを25mm×150mmの大きさに裁断し、PMMA板(エンジニアリングテストサービス社製)に貼り付け、2kgローラーで1往復圧着させた。圧着1時間後に、30m/分の剥離速度で180°方向へ剥離した際の粘着力を測定した。高速粘着力としては、剥離時の被着体へのダメージを小さくするという観点からはできるだけ低いことが好ましく、具体的には1.5N/25mm以下であることが好ましい。
[剥離速度依存性]
剥離速度依存性は、上記の高速粘着力を低速粘着力でわったものであるが、低速粘着力を大きくし、かつ高速粘着力を小さくすることが望ましいため、できるだけ小さいことが好ましい。具体的には、剥離速度依存性が10以下であるものが好ましいといえる。
[微細凹凸面へのなじみ性]
微細凹凸面を有する被着体として、十点平均粗さ(Rz)6.74μm、算術平均粗さ(Ra)0.31μm(キーエンス社製レーザー顕微鏡VK−9710を用い、JIS B0601に準拠して測定)である防眩処理フィルム(商品名「BOF−H141S」、BUFFALO社製液晶保護フィルム)を用い、これに粘着シートを40mm×40mmの大きさに裁断したものを粘着面を下にして静かに置いた。そして、粘着シートが防眩処理フィルムに濡れ始めてから(なじみ始めてから)試料の全面が濡れる(なじむ)のに要する時間を測定し、以下の判定基準により判断した。
判定基準
◎:全面が60秒以内になじむ
○:全面が60〜180秒以内になじむ
×:全面がなじむのに180秒を超える
実施例2〜22、比較例3〜6
粘着剤樹脂、多官能モノマー、単官能モノマー、光開始剤、及び、メルカプタンを表3のように変更した以外は実施例1と同様の操作を行ってUV硬化型粘着シートを作成した。そして、実施例1と同様の評価方法で低速粘着力測定方法、高速粘着力測定方法、剥離速度依存性、及び、微細凹凸面へのなじみ性を測定した。
比較例1〜2
粘着剤樹脂A6に対し、イソシアネート架橋剤である「デユラネートD−201」(旭化成社製)、硬化触媒であるジラウリン酸ジブチルスズを表3記載の配合比で加えてイソシアネート硬化型粘着剤組成物を得た。
この粘着剤組成物を厚さ38μmのPETフィルムへ、乾燥後の糊厚が20μmとなるようにアプリケーターで塗工し、熱風循環オーブンにて80℃、3分間の条件で乾燥させた。次いで、この乾燥物を23℃、65%RHの条件で1週間養生を行ってイソシアネート硬化型粘着シートを作成した。
参考例23〜27
粘着剤樹脂B3 100部(固形分換算)に対し、トリメチロールプロパントリアクリレート、メルカプタンを表3記載の配合比で加えてEB硬化型粘着剤組成物を得た。
この粘着剤組成物を厚さ38μmのPETフィルムへ、乾燥後の糊厚が20μmとなるようにアプリケーターで塗工し、熱風循環オーブンにて80℃、3分間の条件で乾燥させた。次いで、この乾燥物をEB照射機にて、加速電圧130kV、照射線量60kGyの条件でEBを照射してEB硬化型粘着シートを作成した。
これらの実施例、参考例及び比較例の結果を下記表3及び表4に示す。
Figure 0005406456
Figure 0005406456
上記表3及び表4において、略語は下記のものを示す。
A−TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート
EHDG:2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート
BP:ベンゾフェノン
MBB:O−ベンゾイル安息香酸
4−ClBP:4−クロロベンゾフェノン
DETX−S:2,4−ジエチルチオキサントン
IRG184:イルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)
IRG651:イルガキュア651(2,2−ジメトキシー1,2−ジフェニルメタンー1−オン)
IRG819:イルガキュア819[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド]
PEMP:ペンタエリスリトールテトラキス(β−メルカプトプロピオネート)
n−DM:n−ドデシルメルカプタン
TMMP:トリメチロールプロパントリス(β−メルカプトプロピオネート)
A−HD:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
A−NOD:1,9−ノナンジオールジアクリレート
上記実施例、参考例及び比較例より、下記のようにいえることがわかった。
実施例1のUV硬化型粘着シートは、低速粘着力0.1N/25mm以上、高速粘着力1.5N/25mm以下、剥離速度依存性10以下、微細凹凸面へのなじみ性○を満足しており、高速剥離性となじみ性の両立した粘着シートであることがわかる。
一方、比較例1はイソシアネート硬化型の粘着シートであるが、なじみ性は合格であるものの高速粘着力が1.5N/25mmを超えており、高速剥離性となじみ性の両立ができていない。高速粘着力を下げるためにさらにイソシアネート架橋剤の添加量を増やした比較例2では何とか高速粘着力が1.5N/25mmを満足するものの、一方でなじみ性が×となりやはり高速剥離性となじみ性の両立ができていない。
実施例1〜6および比較例3は、UV硬化型粘着剤樹脂の二重結合導入量を0〜0.300mmol/gまでに段階的に変えておこなったものである。二重結合量が増えるにしたがって多官能モノマー量を減らしてやることで、二重結合導入量を0〜0.200mmol/gの粘着剤樹脂では低速、高速粘着力と微細凹凸面へのなじみ性を両立した粘着シートとなる。一方、二重結合導入量が0.300mmol/gと多くなりすぎると、高速粘着力となじみ性の両立ができなくなってしまう。
また、実施例7〜9及び比較例4は、UV硬化型粘着剤樹脂の単量体組成を変えた結果である。アルキル基の炭素数が9から14のアクリル酸アルキルエステルを50質量%以上含有する実施例7〜9では高速剥離性と微細凹凸面へのなじみ性が両立できているが、アルキル基の炭素数が9から14のアクリル酸アルキルエステル量が50質量%未満である比較例4では高速剥離性と微細凹凸面へのなじみ性が両立できない。
実施例10〜13は、UV硬化型粘着剤組成物へのメルカプタン添加効果を示した結果である。メルカプタンを含まない実施例10においても高速剥離性と微細凹凸面へのなじみ性は両立できているが、メルカプタンを添加した実施例11〜13ではなじみ性が大幅に向上している。
更に、実施例14及び15は、UV硬化型粘着剤組成物の多官能モノマーとして3官能モノマーと2官能モノマーを併用した結果である。このように官能モノマーと2官能モノマーを併用した場合でも、高速剥離性と微細凹凸面へのなじみ性両立が可能である。
実施例16〜19並びに比較例5及び6は、UV硬化型粘着剤組成物の光開始剤の種類を変えておこなったものである。水素引き抜き型開始剤を用いた実施例16〜19では、高速剥離性と微細凹凸面へのなじみ性が両立できているが、自己開裂型開始剤を用いた比較例5及び6では、高速粘着力が高い割にはなじみ性が悪化しており、架橋効率の悪さを示している。
実施例20及び21は、UV硬化型粘着剤樹脂の導入二重結合があるものとないものをブレンドした結果である。このようにブレンドした場合でも高速剥離性と微細凹凸面へのなじみ性が両立できていることがわかる。
実施例22は、UV硬化型粘着剤組成物の単官能モノマーを併用した結果である。照射量が少ない場合には未反応の単官能モノマーが残存しやすいが、自己開裂型開始剤を少量併用することで残存モノマーを低減できる。また、このように単官能モノマー、自己開裂型開始剤を併用した場合でも、高速剥離性と微細凹凸面へのなじみ性両立が可能である。
参考例23〜27は、EB硬化型粘着剤組成物の結果である。UV硬化型粘着剤組成物と同様に高速剥離性と微細凹凸面へのなじみ性が両立できており、しかも高いなじみ性を維持したままでの高速粘着力のさらなる低減化が可能となっている。これはUV硬化よりもEB硬化の方が架橋効率が良いためと考えられる。

Claims (10)

  1. アクリル系重合体(A)100質量%に対して、多官能単量体(B)を1〜50質量%含む電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物であって、
    該アクリル系重合体(A)は、アルキル基の炭素数が8〜14であるアクリル酸アルキルエステルを必須とする単量体成分を重合して得られ、かつ、側鎖の不飽和結合が0〜0.200mmol/gである側鎖不飽和結合含有重合体であり、
    該単量体成分は、単量体全量を100質量%とすると、アルキル基の炭素数が8〜14であるアクリル酸アルキルエステルが50〜100質量%、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する単量体が0〜10質量%、並びに、その他のビニル系単量体が0〜50質量%であり、
    該電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物は、更に、水素引き抜き型光重合開始剤(C)を含んでなり、紫外線照射により硬化するものであり、該粘着剤組成物100質量%に対して、メルカプタン化合物(D)を0.1〜10質量%含んでなる
    ことを特徴とする電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物。
  2. 前記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物は、電子線照射により硬化するものであることを特徴とする請求項1に記載の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物。
  3. 前記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物は、電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物を硬化して得られる粘着シートが、被着体に貼り付け、0.3m/分で180°剥離した際の粘着力が0.1N/25mm以上であり、かつ、30m/分で180°剥離した際の粘着力が2.0N/25mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物。
  4. 前記電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物は、電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物を硬化して得られる粘着シートが、0.1〜10μmの凹凸高低差を表面に有する被着体上に静置した際に、濡れ始めから全面が濡れるまでに要する時間が180秒以内であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の電離放射線硬化性再剥離用粘着剤組成物を基材に塗布し、電離放射線照射により硬化させて得られることを特徴とする積層体。
  6. 請求項に記載の積層体により構成されることを特徴とする粘着フィルム。
  7. 請求項に記載の積層体により構成される粘着フィルムロールであって、該粘着フィルムロールは、セパレーターを介さずに巻回されたものであることを特徴とする粘着フィルムロール。
  8. 請求項に記載の粘着フィルムにより構成される表面保護フィルムであって、
    該表面保護フィルムは、表面の凹凸高低差が0.1〜10μmの被着体に用いられることを特徴とする表面保護フィルム。
  9. 請求項に記載の粘着フィルムにより構成される表面保護フィルムであって、
    該表面保護フィルムは、アンチグレア処理された光学部材に用いられる
    ことを特徴とする表面保護フィルム。
  10. 請求項に記載の粘着フィルムを貼り付けてなることを特徴とする光学部材。
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