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JP5405811B2 - スチリル系色素及びそれを用いた光電変換素子及び色素増感太陽電池 - Google Patents

スチリル系色素及びそれを用いた光電変換素子及び色素増感太陽電池

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JP5405811B2
JP5405811B2 JP2008325027A JP2008325027A JP5405811B2 JP 5405811 B2 JP5405811 B2 JP 5405811B2 JP 2008325027 A JP2008325027 A JP 2008325027A JP 2008325027 A JP2008325027 A JP 2008325027A JP 5405811 B2 JP5405811 B2 JP 5405811B2
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Description

本発明は色素増感型の光電変換素子に用いられる増感色素と、それを用いた光電変換素子ならびに太陽電池に関するものである。
近年、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料から生じる二酸化炭素が温室効果ガスとして地球温暖化やそれによる環境破壊を引き起こしており、更に人口増加に伴う世界的なエネルギー消費の増大により、地球規模での環境破壊がますます進むことが懸念されている。このような状況において、化石燃料とは異なり枯渇する恐れのない太陽エネルギーを利用する検討が精力的に行われている。太陽光発電の導入により、地球温暖化の防止、光熱費の節約等が可能になるため、太陽エネルギーの開発や利用は欧州や日本を中心に年々急速に進んでいる。
太陽光発電の手段として、太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変換させる光電変換素子を用いた太陽電池が注目されるようになってきた。太陽電池としては、単結晶、多結晶、アモルファスのシリコン系、ガリウムヒ素、硫化カドミウム、セレン化インジウム銅等の化合物半導体系といった無機系太陽電池が主に研究され、住宅用等に実用化されているものもある。しかし、これらの無機系太陽電池は製造コストが高いことや、原材料の確保が困難であること等の問題点を抱えている。
その一方で、有機材料を用いた太陽電池は製造コスト、大面積化、原材料確保の点で有利と言われている。有機系太陽電池としては、有機半導体と金属の接触界面での起電力発生を利用するショットキー接合型が知られていたが、変換効率向上に限界があることが認識されるようになった。そのため、2種の有機半導体の接触界面、あるいは有機半導体と無機半導体の接触界面を利用するpnヘテロ接合型が期待されるようになった。しかし、変換効率は無機系太陽電池と比べると格段に低く、耐久性も悪いという問題があった。
こうした状況の中、スイスのローザンヌ工科大学のグレッツェル教授らにより、高い変換効率を示す色素増感太陽電池が報告された(例えば、非特許文献1参照)。提案された色素増感太陽電池は、酸化チタン多孔質薄膜電極、ルテニウム金属錯体色素、電解液からなる湿式太陽電池である。色素増感太陽電池は他の太陽電池に比べて素子構造が簡単で、大型の製造設備がなくても製造できる可能性があり、更に既に実用化されているアモルファスシリコン太陽電池に匹敵する高い変換効率が期待されることから、近年になって次世代型太陽電池として注目を集めている。
色素増感太陽電池の増感色素としてはルテニウム金属錯体が変換効率の点から最も優位と考えられるが、ルテニウムは貴金属であるため製造コスト面で不利であり、かつ実用化されて大量のルテニウム錯体が必要になった場合に資源的な制約が問題となる。そのため、ルテニウム等の貴金属を含まない有機色素を増感色素として用いた色素増感太陽電池が盛んに研究されるようになった。貴金属を含まない有機色素としては、クマリン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、ロダシアニン系色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、キサンテン系色素等が報告されている(例えば、特許文献1〜2参照)。これらの有機色素は安価で吸収係数が大きく、かつ構造の多様性により吸収特性が制御可能といった長所を有するものの、変換効率はルテニウム錯体より大幅に劣り、要求される特性を充分に満足するものが得られていないのが現状である。
特許第4148374号 特開平11−238905号公報 Nature(第353巻、737〜740頁、1991年)
本発明の目的は、効率よく電流を取り出せる新規構造の増感色素を提供し、更にはこの増感色素を用いた良好な光電変換素子ならびに太陽電池を提供することである。
本発明者らは増感色素の光電変換特性向上について鋭意検討した結果、特定の構造を有するスチリル系色素を用いることにより、高効率かつ高耐久性の光電変換素子が得られることを見出した。本発明の構成は以下のとおりである。
[1]
下記一般式(1)で表されるスチリル系色素。
Figure 0005405811
一般式(1)において、R1〜R9は同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアミノ基を表す。Yは陰イオンを表す。Z1は含窒素複素環を形成するのに必要な原子群を表す。pは1または2の整数であり、qは0〜4の整数であり、rは1または2の整数である。)
[2]
下記一般式(2)で表される[1]に記載のスチリル系色素。
Figure 0005405811
一般式(2)において、R1〜R9、Y、p、q、rは請求項1において規定したのと同一の意味を有する。Xは硫黄原子、酸素原子、セレン原子、置換基を有していてもよい炭素原子、置換基を有していてもよい窒素原子を表す。Z2は置換基を有していてもよいベンゼン環または置換基を有していてもよいナフタレン環を表す。)
[3]
前記一般式(2)において、Xが硫黄原子であることを特徴とする[2]に記載のスチリル系色素。
[4]
前記一般式(2)において、Yがヨウ素イオンであることを特徴とする[2]または[3]に記載のスチリル系色素。
[5]
[1]〜[4]のいずれかに記載のスチリル系色素を含有する半導体層を有することを特徴とする光電変換素子。
[6]
対向電極間に、少なくとも[1]〜[4]のいずれかに記載のスチリル系色素を半導体層に吸着させて得られる半導体層及び電解質層が設けられていることを特徴とする色素増感太陽電池。
本発明によれば、効率よく電流を取り出すことができる増感色素を得ることができる。また、この増感色素を用いることにより、高効率かつ高耐久性の光電変換素子及び太陽電池を得ることができる。
本発明のスチリル系色素は、色素増感型の光電変換素子において増感剤として用いられる。本発明の光電変換素子は、導電性支持体上の半導体層に色素を吸着させてなる光電極と対極とを電解質層を介して対向配置させたものである。
以下に、前記一般式(1)及び(2)の構造を有する色素について説明する。
一般式(1)において、R1〜R9の具体例としては、例えば水素原子、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ジメチルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のアミノ基を挙げることができる。R1〜R9で表される原子・基はさらに置換基を有していてもよく、その具体例としては、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のアミノ基、水酸基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基を挙げることができる。
一般式(1)において、Yは陰イオンを示すが、その具体例としては、例えばヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、六フッ化リン酸イオン、四フッ化ホウ素酸イオン、過塩素酸イオン等を挙げることができる。本発明では、Yをヨウ素イオンにすることにより、高効率の光電変換素子が得られるため特に好ましい。
本発明の一般式(1)で示されるスチリル系色素の具体例を以下の(A−1)〜(A−26)に例示するが、これらに限定されるものではない。
Figure 0005405811
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一般式(2)において、Xの具体例としては、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、炭素原子、窒素原子を挙げることができる。炭素原子、窒素原子の場合は置換基を有していてもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のアミノ基等を挙げることができる。本発明では、Xを硫黄原子にすることにより、高効率の光電変換素子が得られるため特に好ましい。
一般式(2)において、Z2はベンゼン環、ナフタレン環を示すが、これらは置換基を有していてもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のアミノ基等を挙げることができる。
本発明の一般式(2)で示されるスチリル系色素の具体例は前記スチリル系色素(A−1)〜(A−20)であるが、これらに限定されるものではない。
本発明のスチリル系色素は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、本発明のスチリル系色素は他の増感色素と併用することができる。他の増感色素の具体例としては、ルテニウム錯体、クマリン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、ロダシアニン系色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、キサンテン系色素、前記一般式(1)及び(2)以外のスチリル系色素等を挙げることができるが、これらに限定されない。本発明のスチリル系色素と、これら他の増感色素とを組み合わせて用いる場合、本発明のスチリル系色素に対して他の増感色素は10〜200質量%が好ましく、20〜100質量%がより好ましい。
本発明において色素増感型の光電変換素子を作製する方法は特に限定されないが、導電性支持体上に半導体層を形成し、その半導体層に本発明のスチリル系色素を吸着させる方法が好ましい。色素を吸着させる方法としては、色素を溶媒に溶解して得られた溶液中に半導体層を長時間浸漬する方法が一般的である。本発明のスチリル系色素を2種以上併用する場合、あるいは本発明のスチリル系色素を他の増感色素と併用する場合、使用する全ての色素の混合溶液を調製して半導体層を浸漬してもよく、それぞれの色素について別々の溶液を調製して、各溶液に半導体層を順に浸漬してもよい。
本発明では、導電性支持体として、金属板の他に、表面に導電性材料を有する導電層を設けたガラス基板やプラスチック基板を用いることができる。導電性材料の具体例としては、金、銀、銅、アルミニウム、白金等の金属、フッ素ドープの酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物等の導電性透明酸化物半導体、炭素等を挙げることができる。本発明においては、フッ素ドープの酸化スズ薄膜をコートしたガラス基板を用いるのが好ましい。
本発明において半導体層を形成する半導体の具体例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化タンタル、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化ニッケル、酸化イットリウム等の金属酸化物、硫化チタン、硫化亜鉛、硫化ジルコニウム、硫化銅、硫化スズ、硫化インジウム、硫化タングステン、硫化カドミウム、硫化銀等の金属硫化物、セレン化チタン、セレン化ジルコニウム、セレン化インジウム、セレン化タングステン等の金属セレン化物、シリコン、ゲルマニウム等の単体半導体等を挙げることができる。これらの半導体は単独で用いるだけでなく、2種類以上を混合して用いることもできる。本発明においては、半導体として酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズを用いるのが好ましい。
本発明における半導体層の態様は特に限定されないが、微粒子からなる多孔質構造を有する薄膜であることが好ましい。多孔質構造等により、半導体層の実質的な表面積が大きくなり、半導体層への色素吸着量が増大すると、高効率の光電変換素子を得ることができる。半導体粒子径は5〜500nmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。半導体層の膜厚は通常2〜100μmであるが、5〜20μmがより好ましい。半導体層を形成する方法としては、半導体微粒子を含むペーストをスピンコート法、ドクターブレード法、スキージ法、スクリーン印刷法等の湿式塗布法で導電性基板上に塗布した後に焼成により溶媒や添加物を除去して製膜する方法や、スパッタリング法、蒸着法、電着法、電析法、マイクロ波照射法等により製膜する方法を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明において、半導体微粒子を含むペーストは市販品を用いてもよく、あるいは市販の半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製したペースト等を用いてもよい。ペーストを調製する際に使用する溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの溶媒は単独あるいは2種以上の混合溶媒として使用することができる。
本発明において、半導体微粉末を溶媒中に分散させる際には、乳鉢等ですりつぶしてもよく、またはボールミル、ペイントコンディショナー、縦型ビーズミル、水平型ビーズミル、アトライター等の分散機を用いてもよい。ペーストを調製する際には、半導体微粒子の凝集を防ぐために界面活性剤等を添加するのが好ましく、増粘させるためにポリエチレングリコール等の増粘剤を添加するのが好ましい。
本発明のスチリル系色素の半導体層表面上への吸着は、該色素溶液中に半導体層を浸し、室温で30分〜100時間放置、あるいは加熱条件下で10分〜24時間放置することにより行う。好ましい条件は、室温で10〜20時間放置である。また、該色素溶液中の色素濃度は10〜2000μMが好ましく、50〜500μMがより好ましい。
本発明のスチリル系色素を半導体層表面上に吸着する際に用いる溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの溶媒は単独あるいは2種以上の混合溶媒として使用される。これらの溶媒の中で、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。
本発明のスチリル系色素を半導体層表面上に吸着する際には、コール酸またはデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、リソコール酸、デヒドロコール酸等のコール酸誘導体を色素溶液中に溶解し、色素と共吸着させてもよい。コール酸またはコール酸誘導体を用いることにより、色素同士の会合を防ぐことができるため、光電変換素子において色素から半導体層へ効率よく電子注入できるようになる。コール酸またはコール酸誘導体を用いる場合、色素溶液中におけるそれらの濃度は0.1〜100mMが好ましく、1〜10mMがより好ましい。
本発明の光電変換素子に用いる対極としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、レドックスイオンの酸化還元反応を促進するために、触媒能を持った導電性材料を使用するのが好ましい。該導電性材料の具体例としては、白金、ロジウム、ルテニウム、炭素等を挙げることができるが、これらに限定されない。本発明においては、導電性支持体上に白金の薄膜をコートしたものを対極として用いるのが特に好ましい。
本発明の光電変換素子においては、対向電極間に電解質が充填され、電解質層が形成されている。電解質としてはレドックス電解質を用いるのが好ましい。レドックス電解質としては、ヨウ素、臭素、スズ、鉄、クロム、アントラキノン等のレドックスイオン対を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの中ではヨウ素系電解質、臭素系電解質が好ましい。ヨウ素系電解質の場合は、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム等とヨウ素の混合物が用いられる。臭素系電解質の場合は、例えば臭化カリウム、臭化リチウム等と臭素の混合物が用いられる。本発明では、これらの電解質を溶媒に溶解させて得られた電解液を用いるのが好ましい。電解液中の電解質の濃度は、0.05〜5Mが好ましく、0.1〜0.5Mがより好ましい。
電解質を溶解する溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの溶媒は単独あるいは2種以上の混合溶媒として使用される。これらの溶媒の中で、ニトリル系溶媒が好ましい。
本発明では、前記電解液中にゲル化剤、ポリマー等を添加させて得られたゲル状電解質を用いてもよい。また、レドックス電解質を含む電解液の代わりに、ポリエチレンオキシド誘導体等のポリマーを用いた固体電解質を用いてもよい。ゲル状電解質、固体電解質を用いることにより、電解液の揮発を低減することができる。
本発明の光電変換素子においては、対向電極間に電解質の代わりに固体電荷輸送層を形成してもよい。固体電荷輸送層に含まれる電荷輸送物質は正孔輸送物質であることが好ましい。電荷輸送物質の具体例としては、ヨウ化銅、臭化銅、チオシアン化銅等の無機正孔輸送物質、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ−p−フェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾール、ポリアニリン、オキサジアゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ピラゾリン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物等の有機正孔輸送物質が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、有機正孔輸送物質を用いて固体電荷輸送層を形成する場合、フィルム形成性結着剤樹脂を併用することが好ましい。フィルム形成性結着剤樹脂の具体例としては、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリレート樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの樹脂は、単独あるいは共重合体として1種または2種以上を混合して用いることができる。これらの結着剤樹脂の有機正孔輸送物質に対する量は、20〜1000質量%が好ましく、50〜500質量%がより好ましい。
本発明の光電変換素子は色素増感太陽電池や各種光センサー等に応用できる。本発明の色素増感太陽電池は、前記一般式(1)または(2)で示されるスチリル系色素を含有する光電変換素子をモジュール化して所定の電気配線を設けることによって得られる。
本発明の色素増感太陽電池においては、半導体層にスチリル系色素を吸着させてなる光電極が陽極となり、対極が陰極となる。太陽光等の光は光電極側、対極側のどちらから照射してもよいが、光電極側から照射する方が好ましい。太陽光等の照射により色素が光を吸収して励起状態となって電子を放出する。この電子が半導体層を経由して外部に流れて対極へ移動する。一方、電子を放出して酸化状態になった色素は、対極から供給される電子を電解質中のイオンを経由して受け取ることにより、元の状態に戻る。このサイクルにより電流が流れ、太陽電池として機能するようになる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
スチリル系色素(A−3)の合成
エタノール100ml中に下記の化合物(B−1)2.5g、1−ピレンカルボキシアルデヒド1.9g、ピペリジン2.0gを加えて5時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、反応液を濃縮し、ヨウ化カリウム水溶液と酢酸を加えてしばらく撹拌してから、結晶を濾取した。得られた結晶は3.8gで収率は81%であった。
Figure 0005405811
[実施例2]スチリル系色素(A−14)の合成
エタノール100ml中に下記の化合物(B−2)3.0g、下記の化合物(B−3)3.7g、ピペリジン3.0gを加えて6時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、反応液を濃縮し、ヨウ化カリウム水溶液と酢酸を加えてしばらく撹拌してから、結晶を濾取した。得られた結晶は5.3gで収率は76%であった。
Figure 0005405811
Figure 0005405811
[実施例3]
フッ素ドープの酸化スズ薄膜をコートしたガラス基板上に酸化チタンペースト(Solaronix製Ti−Nanoxide T)をスキージ法により塗布した。110℃で1時間乾燥後、450℃で30分間焼成し、膜厚6μmの酸化チタン薄膜を得た。次に、スチリル系色素(A−2)をメタノールに溶解して濃度100μMの溶液50mlを作製し、この溶液中に、酸化チタンを塗布焼結したガラス基板を室温で15時間浸漬して色素を吸着させ、光電極とした。
フッ素ドープの酸化スズ薄膜をコートしたガラス基板上に白金触媒ペースト(Solaronix SA製Pt−Catalyst T/SP)をスキージ法により塗布した。110℃で1時間乾燥後、400℃で30分間焼成し、対極とした。次に、光電極と対極との間に厚さ60μmの熱融着フィルムをはさんで重ね合わせ、その隙間に電解液(Solaronix SA製Iodolyte PN50)を注入し、光電変換素子を作製した。
前記光電変換素子の光電極側から、キセノンランプ(分光計器(株)製OTENTOSUN−SH型)で発生した光を照射し、電流−電圧特性をソースメータ(KEITHLEY製Model 2400 General−Purpose SourceMeter)で測定した。光の強度は100mW/cm2に調整した。結果を表1に示す。更に、光を20時間照射した後の特性変化も測定した。結果を表2に示す。
[実施例4〜6および参考例7〜10
スチリル系色素として、実施例3で使用した(A−2)の代わりにそれぞれ表1に示すスチリル系色素を用い、それ以外は実施例3と同様にして光電変換素子を作製して特性を測定した。結果を表1及び表2に示す。
[比較例1〜4]
スチリル系色素として、実施例3で使用した(A−2)の代わりにそれぞれ下記の(C−1)〜(C−4)に示す色素を用い、それ以外は実施例3と同様にして光電変換素子を作製して特性を測定した。結果を表1及び表2に示す。
Figure 0005405811
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これらの結果から、本発明のスチリル系色素を用いることにより、光電変換効率が高く、かつ光照射を長時間続けても高い光電変換効率が維持される光電変換素子が得られることが判明した。実施例の中でも、前記一般式(2)で示されるスチリル系色素の中でも、Xが硫黄原子でかつYがヨウ素イオンである実施例3、実施例4および実施例6では特に良好な特性を示している。
本発明は太陽光のエネルギーを電気エネルギーに効率よく変換できる太陽電池として有用であり、クリーンエネルギーを提供することができる。

Claims (5)

  1. 下記一般式(2)で表されるスチリル系色素。
    Figure 0005405811
    (式中、R 〜R は同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基またはアミノ基を表す。Xは硫黄原子、酸素原子、セレン原子、置換基としてアルキル基を有していてもよい炭素原子、置換基としてアルキル基を有していてもよい窒素原子を表す。Yは陰イオンを表す。 ハロゲン原子を有していてもよいベンゼン環またはハロゲン原子を有していてもよいナフタレン環を表す。pは1または2の整数であり、qは0であり、rは1または2の整数である。
  2. 前記一般式(2)において、Xが硫黄原子であることを特徴とする請求項記載のスチリル系色素。
  3. 前記一般式(2)において、Yがヨウ素イオンであることを特徴とする請求項または請求項2記載のスチリル系色素。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のスチリル系色素を含有する半導体層を有することを特徴とする光電変換素子。
  5. 対向電極間に、少なくとも請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のスチリル系色素を半導体層に吸着させて得られる半導体層及び電解質層が設けられていることを特徴とする色素増感太陽電池。
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