以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る収納構造が適用された引戸装置の全体正面図が示されており、図2には、この引戸装置の全体背面図が示されている。
図1及び図2で示されている引戸装置は、老人介護施設の通路となっている廊下と個別部屋とを仕切る位置に設置されているものであり、図1には、廊下の側から見た引戸装置が示され、図2には、個別部屋の側から見た引戸装置が示されている。この引戸装置は、引戸装置用扉体1で開閉される出入口となっている開口部6と、この開口部6の側部に設けられ、開き移動で開口部6を開いた扉体1を収納するための戸袋7と、開口部6に対して戸袋7とは反対側の側部に設けられた袖部60と、を備えている。本実施形態に係る戸袋7は、この戸袋7の内部に収納される扉体1の厚さ方向両面を覆う両面式戸袋となっているとともに、戸袋7は、壁4の内部に収納された壁収納式戸袋となっている。
また、図1に示されているように、袖部60には、物品を内部に収納するための収納部となっている収納ボックス90が上記通路側において配設されており、この収納ボックス90は、後述の説明で明らかになるとおり、戸袋7の内側方向と同じ方向への深さを有している。また、袖部60の上記通路側の表面には、図1に示されているように、収納ボックス90の下側において、手摺り59が取り付けられている。
なお、本実施形態に係る引戸装置は、通路となっている廊下と個別部屋とを仕切る位置に設置されるのではなく、個別部屋と大広間とを仕切る位置や、個別部屋と庭とを仕切る位置に配置されてもよく、要するに、本実施形態に係る引戸装置は、個別部屋と、この個別部屋の外側の空間とを仕切る位置に設置することができる。
次に、袖部60を除く引戸装置自体の構造を、一層詳しく説明する。
扉体1は把持部1Aを把持することにより、左右動させることができて開口部6を開閉することができ、この開口部6は、無目2と、戸先側の縦枠部材3(開口部6を形成する複数の部材のうち、扉体1の閉じ側(戸先側)の縦枠部材)と、壁4と、床5とに囲まれて形成されている。また、壁4の開口部6側の端部には、見切り部材となっている竪額縁部材9が配置されている。また、扉体1がその内側で移動する引戸装置の外枠組みの基本構造は、無目2と、戸先側の縦枠部材3と、戸尻側の縦枠部材8と、竪額縁部材9と、戸袋7の下端に配置された下枠10により形成され、戸尻側の縦枠部材8により戸袋7の終端部が形成されている。
なお、扉体1の把持部1Aは、扉体1における収納ボックス90の下端部に相当する位置から、扉体1における手摺り59の配置位置に相当する位置までの間の範囲に、少なくとも一部が配置されたものとなっており、把持部1Aは、この範囲の全体に渡る上下長さを有するものとしてもよく、また、図1に示されているように、この上下長さからさらに上下方向に延伸した長い上下寸法を有するものとしてもよい。
図2に示されているように、無目2は、無目本体2Aと、この無目本体2Aに設けられた点検用カバー2Bとからなり、点検用カバー2Bは、この無目本体2Aや縦枠部材3、竪額縁部材9に設けられているねじ孔に螺合される止めねじ等の止め具2Cで取り付け、取り外し自在になっており、したがって、無目本体2Aに対して点検用カバー2Bは開閉自在となっている。無目本体2Aは、図2のS6―S6線断面図である図6に示されているように、戸袋7まで延びる長さ、言い換えると、戸先側の縦枠部材3から戸尻側の縦枠部材8まで延びる長さを有し、点検用カバー2Bは、図2に示されているように、無目本体2Aの全長のうち、開口部6の上方に位置する部分だけに設けられている。
無目2の内部には、扉体1を移動させるための移動機構が配置されており、この移動機構は、開口部6と、開口部6に隣接して設けられている戸袋7とに跨っている。図3及び図4には、この移動機構の全体詳細図が示されている。図3は、移動機構によって扉体1が閉じ限位置に達しているとき、すなわち、扉体1が前述の戸先側の縦枠部材3に当接しているときを示し、図4は、扉体1が開き限位置に達しているときを示す。
図3に示されているように、無目本体2Aの内部には扉体1の移動を案内するためのガイド部材であるガイドレール12が組み込まれ、上記移動機構を形成する部材であって、無目本体2Aの略全長に亘る長さを有するこのガイドレール12は、図2のS5―S5線断面図である図5に示すとおり、無目本体2Aの内部に設けられている補強部材を兼ねる取付部材11に取り付けられ、戸袋7の内部まで延びている。同一断面形状が長さ方向に連続しているこのガイドレール12は、取付部材11に取り付けられた基部12Aと、この基部12Aの下端から扉体1の厚さ方向に水平に延びるアーム部12Bと、このアーム部12Bの先端から垂直に立ち上がった係合部12Cとを有する。
図3で示すように、扉体1には、ローラブラケット13,14に回転自在に取り付けられた2個のローラ15,16が扉体1の移動方向に配設され、ローラブラケット13,14を介して扉体1の上部に配置されているこれらのローラ15,16は、図5に示すように、扉体1の上方に不動部材となって水平に架設されているガイドレール12の係合部12Cに係合している。このため、扉体1は、ローラ15,16が係合部12C上を転動することによりガイドレール12に沿って移動するとともに、扉体1は、ガイドレール12の係合部12Cにローラ15,16及びローラブラケット13,14を介して吊り下げられた上吊り式のものとなっている。
また、図1に示すように、戸袋7に近い開口部6の床5には、垂直軸を中心に回転自在となったガイドローラ17が配置され、このガイドローラ17は、図5に示すとおり、扉体1の下端に下向きに開口して配置されているチャンネル部材1Bの内部に挿入されており、ガイドレール12に沿った扉体1の移動は、扉体1の下端がこのガイドローラ17で案内されながら行われる。
図3に示されているように、ガイドレール12の扉体開き側の端部には、扉体1を開き限位置に停止させるためのストップ装置20が取り付けられ、このストップ装置20は、扉体1側に向けて本体21に突設されたゴム等の弾性材料からなるストップ部材22と、本体21に取り付けられた小径ローラによる被係止部材23とを有する。一方、扉体1に設けられている2個のローラブラケット13,14のうち、扉体開き側のローラブラケット14の後端には板状の受け部材24が結合され、この受け部材24には、板ばねの折り曲げで形成されている係止部材25が取り付けられている。
扉体1を前記把持部1Aで開き側に移動させ、この移動が開き限位置に達すると、図4に示されているように、被係止部材23には、一旦上向きに湾曲変形してもとの形状に弾性復帰する係止部材25が係止するとともに、受け部材24はストップ部材22に当接し、これにより扉体1は開き限位置に停止する。
また、扉体1の把持部1Aに閉じ側への操作力を作用させた場合には、被係止部材23から上向きに弾性変形する係止部材25が離脱するため、扉体1はガイドレール12とガイドローラ17に案内されて閉じ側へ移動する。
また、図3及び図4に示されているように、扉体1に設けられている2個のローラブラケット13,14のうち、扉体閉じ側のローラブラケット13には、扉体1を閉じ移動させるための駆動装置30のケーシング30Aがブラケット31で取り付けられている。駆動装置30は、ケーシング30Aの内部に回転自在に収納されたリール33を有し、このリール33の内部には渦巻きばねが配置され、この渦巻きばねの一端はリール33に結合されているとともに、他端はケーシング30Aに結合されている。
また、リール33には、図3及び図4で示されているナイロン紐又はワイヤー等からなる紐状部材34が巻かれているとともに、この紐状部材34の一端が結合されている。この紐状部材34はケーシング30Aから導出され、紐状部材34の他端は、開閉移動する扉体1に対して不動部材となっている前述した縦枠部材3に取り付けられたフック部材35に結合されている。
図3で示すように閉じ限位置に達している扉体1を把持部1Aで図4に示すように開き側へ移動させたときには、紐状部材34がリール33を回転させながら駆動装置30のケーシング30Aから繰り出され、このとき、リール33の内部の上記渦巻きばねがリール33の回転で蓄圧されるようになっている。このため、この後に把持部1Aから手を離すと(扉体1が図4のように閉じ限位置に達しているときには、前述のように、把持部1Aに操作力を作用させて被係止部材23から係止部材25を離脱させると)、渦巻きばねの蓄圧力によってリール33には、扉体1の開き移動時とは逆方向へ扉体1を移動させようとする回転力が生じているため、この回転力で緊張する紐状部材34の引張力によって扉体1は閉じ側へ引っ張られ、リール33が回転して紐状部材34を巻き取ることにより、扉体1は閉じ限位置まで自動的に移動する。
したがって、本実施形態における扉体1を閉じ側へ自動的に移動させるための駆動装置30は渦巻きばね式であるとともに、紐状部材34の引張力による引張式駆動装置となっている。
なお、以上説明したように本実施形態の駆動装置30は、扉体1と、縦枠部材3や無目2等の不動部材とのうち、扉体1に取り付けられていたが、駆動装置30を縦枠部材3や無目2等の不動部材に取り付け、この駆動装置30のケーシング30Aから導出される紐状部材34の先端を、扉体閉じ側のローラブラケット13に結合してもよい。
図3及び図4に示されているように、ガイドレール12には、閉じ側への扉体1の移動速度を低速化させて制動させ、扉体1を閉じ限位置に減速させて到達させるための制動装置40が取り付けられている。この制動装置40は、ガイドレール12に結合されたシリンダ本体41と、シリンダ本体41にガイドレール12の長さ方向に伸縮自在に挿入されたピストンロッド42とを有するシリンダ装置で構成され、シリンダ本体41は、不動部材となっているガイドレール12に取り付けられている。
図3及び図4に示されているように、扉体1に2個設けられているローラブラケット13,14のうち、扉体開き側のローラブラケット14には、ピストンロッド42の先端部が挿抜自在となったキャッチ部材44が取り付けられ、ピストンロッド42の先端部と、この先端部が挿入されるキャッチ部材44の内部とのうち、一方には磁石が設けられ、他方にはこの磁石に吸着する磁性材料が設けられている。このため、ピストンロッド42とキャッチ部材44とは、磁力で接続分離自在となっている。
図3に示すように扉体1が閉じ限位置に達しているときには、シリンダ本体41に対して収縮しているピストンロッド42の先端部がキャッチ部材44の内部に挿入された状態になっており、扉体1を開き側へ移動させると、ピストンロッド42の先端部とキャッチ部材44とが上記磁力で接続されているため、ピストンロッド42はシリンダ本体41に対して伸び作動する。このピストンロッド42が伸び作動限に達してもさらに扉体1が開き側に移動すると、図4に示すように、ピストンロッド42とキャッチ部材44とが分離し、ピストンロッド42はその位置で停止する。また、扉体1が前記引張式駆動装置30の駆動力で閉じ側へ移動し始め、そして扉体1が所定位置に達すると、キャッチ部材44はピストンロッド42に当接してこれらのキャッチ部材44とピストンロッド42とが上記磁力で再度接続され、扉体1がさらに閉じ側へ移動することにより、ピストンロッド42はシリンダ本体41に対して収縮作動する。
なお、ピストンロッド42の先端部と、この先端部が挿入されるキャッチ部材44の内部とに、互いに磁性が逆となった磁石を設けることにより、ピストンロッド42とキャッチ部材44とを上記と同様に接続分離自在としてよい。
シリンダ本体41には、ピストンロッド42が伸び作動したときに多量のエアをシリンダ本体41の内部に吸引し、ピストンロッド42が収縮作動したときにはこのエアを絞りながら排出するバルブが設けられている。このため、ピストンロッド42が伸び作動する扉体1の開き移動時には、扉体1を軽く移動させることができ、また、ピストンロッド42が収縮作動する扉体1の閉じ移動時には、扉体1がシリンダ本体41の内部のエア圧力によって制動されながら移動し、これにより、扉体1は減速された速度で閉じ限位置に達するようになっている。
なお、本実施形態の制動装置40はシリンダ式のものとなっているが、制動装置は、これに限らず、例えば、扉体1の移動がラック部材とピニオン部材とで伝達されるロータリ式のものとしてもよい。
図2のS6―S6線断面図である図6に示されているように、内部が前述した戸袋7となっている壁4は、下地材50と、外面形成部材51とを含んで形成されており、鉛直断面がハット形状となっている下地材50は、上下方向に間隔を開けて複数個配置されている。石膏ボード等による外面形成部材51は、戸袋7の内外方向に配置された内側外面形成部材51Aと、外側外面形成部材51Bとからなり、上下寸法が小さい内側外面形成部材51Aは下地材50同士の間に配置され、上下寸法が大きい外側外面形成部材51Bは、これらの下地材50と内側外面形成部材51Aの外側に配置されている。外側外面形成部材51Bの表面にはビニルクロス等の仕上げ材が貼り付けられ、これにより、壁4の表面が仕上げられている。
次に、図1で示されている袖部60と、この袖部60に物品を収納するための収納部として配設されている収納ボックス90とについて説明する。
図1及び図2に示されている引戸装置は、前述したように老人介護施設の廊下と個別部屋とを仕切る位置に設置されている。図7は、この引戸装置の袖部60の鉛直断面である図1のS7−S7線断面図であり、図8は、袖部60の水平断面である図1のS8−S8線断面図である。また、図10には、収納ボックス90の側面図が示され、図11には、収納ボックス90の平面図が示されている。
図1と、図10及び図11とに示されているように、収納ボックス90は、ボックス本体91と、このボックス本体91の正面開口部を塞ぐ板状の蓋部材92とを有し、図1で分かるように、透明ガラス板となっている蓋部材92は、左右の一方の端部がヒンジ93でボックス本体91に取り付けられることにより、ヒンジ93を中心にボックス本体91に対して開閉自在となっている。また、蓋部材92には施錠具94が設けられ、キーで操作されるこの施錠具94により、ボックス本体91の正面開口部を塞いでいるときの蓋部材92を施錠、解錠できるようになっている。
また、図1に示されているように、ボックス本体91の内部には、棚板95と、照明器具96とが設けられている。
収納ボックス90の内部に収納される物品は、言い換えると、棚板95の上に載せられるなどして収納ボックス90の内部に収納される物品は、袖部60にこの収納ボックス90が設けられている引戸装置の扉体1を開閉移動させることにより開口部6を通って出入りする上述の個別部屋の利用者にとって慣れ親しんだ物品である。したがって、上述の廊下を通って自室まで来た利用者は、透明ガラス製の蓋部材92を透過して見ることができる上記物品を認識することにより、自室となっている個別部屋まで来たことを理解することができるようになっており、この後、利用者は、扉体1を把持部1Aで開き移動させることにより開口部6を通って自室に入ることができる。
図7及び図8に示されているように、袖部60の収納ボックス90が配設されている側の面(上記廊下側の面)には、金属板又は合成樹脂板等による袖パネル61が配設されている。このため、袖部60の収納ボックス90が配設されている側の表面は、この袖部60の表面形成部材となっている袖パネル61によって形成されている。また、袖部60の収納ボックス90が配設されている側とは反対側の面(上記個別部屋側の表面)には、図6で示した壁4と同じく、石膏ボード等による外面形成部材62が配設されており、この外面形成部材62には、内側外面形成部材62Aと、外側外面形成部材62Bとがあり、外側外面形成部材62Bの表面には、ビニルクロス等による仕上げ部材が貼り付けられている。
そして、袖部60の内部は空間部63となっており、この空間部63には、図8で示されているように、長さ方向が上下方向となった下地材64,65が配置されており、これらの下地材64,65により外面形成部材62が支持されている。また、下地材64,65のうち、開口部6側に配置された下地材64には、この開口部6の前述した戸先側の縦枠部材3がアンカー部材66を介して支持されており、開口部6側とは反対側に配置された下地材65には、袖パネル61の開口部6側とは反対側の端部の見切り部材となっている縦枠部材67がアンカー部材68を介して結合されている。
開口部6の戸先側の縦枠部材3には、空間部63において、開口部6側とは反対側へ延出した延出端部3Aが形成されているとともに、袖パネル61の開口部6側の端部には、空間部63において、開口部6側とは反対側へ延出した延出端部61Aが形成されている。これらの延出端部3Aと61Aは、係止手段69の係止作用により係止されている。このため、開口部6の戸先側の縦枠部材3は、袖パネル61が取り付けられた取付部材ともなっている。また、上述の見切り部材となっている縦枠部材67には、空間部63において、開口部6側へ延出した延出端部67Aが形成されているとともに、袖パネル61の開口部6側とは反対側の端部には、空間部63において、開口部6側へ延出した延出端部61Bが形成されている。これらの延出端部67Aと61Bも、係止手段69の係止作用により係止されている。このような係止手段69は、袖パネル61の上下方向に複数個設けられている。
図12は、係止手段69の具体的構造を示す分解斜視図である。なお、袖パネル61の左右の延出端部61A,61Bの両方について設けられている係止手段66は、同じ構造になっているため、図12は、代表例として、図8における左側の係止手段69、言い換えると、開口部6側の係止手段69を示している。
係止手段69は、係止部材70と、被係止部材71とからなる。また、係止部材70は、板状のベース部70Aと、このベース部70Aから突設されたピン部70Bとを備えたものになっている。ベース部70Aは、ビス等の止着具72により縦枠部材3の延出端部3Aに止着されている。また、ピン部70Bは、ベース部70Aに基端部が接続された軸部70Cと、この軸部70Cの先端に設けられ、軸部70Cよりも大きい直径で形成された略半球状の先端部70Dとからなる。
また、被係止部材71は板状の形状を有し、この被係止部材71は、ビス等の止着具73により袖パネル61の延出端部61Aに止着されている。被係止部材71には貫通孔74が形成されており、この貫通孔74は、ピン部70Bの軸部70Cの直径よりも大きい幅で上下に長く形成された長孔部74Aと、この長孔部74Aの下端に、ピン部70Bの略半球状の先端部70Dよりも大きい直径で形成された丸孔部74Bとからなる。長孔部74Aの幅寸法は、ピン部70Bの略半球状の先端部70Dの直径よりも小さくなっている。そして、袖パネル61の延出端部61Aには、貫通孔74と対応する位置において、この貫通孔74よりも大きい開口部61Cが形成されている。
図13及び図14には、係止手段69の係止作用により、袖パネル61の左右の延出端部61A,61Bを縦枠部材3,67の延出端部3A,67Aに取り付けるための作業が示されている。すなわち、先ずはじめに、袖パネル61を持ち上げることにより、図13に示されているように、係止部材70に設けられているピン部70Bの先端部70Dの位置と、被係止部材71の貫通孔74の丸孔部74Bの位置とを一致させ、この後、袖パネル61を縦枠部材3,67の延出端部3A,67A側へ押すことにより、ピン部70Bの先端部70Dを、貫通孔74の丸孔部74Bと上記開口部61Cとに挿入する。次いで、袖パネル61を下方へ落とす。
これにより、ピン部70Bの軸部70Cは、貫通孔74の丸孔部74Bから長孔部74Aへ移行することになり、長孔部74Aの幅寸法は、ピン部70Bの先端部70Dの直径よりも小さくなっているため、係止部材70への被係止部材71の係止作用により、袖パネル61の左右の延出端部61A,61Bは、縦枠部材3,67の延出端部3A,67Aに取り付けられることになる。このとき、ピン部70Bの軸部70Cの長さを被係止部材71の厚さと同じにして、係止部材70のベース部70Aに被係止部材71を当接させることにより、袖パネル61の左右の端部は、空間部63の内外方向に位置決めされることになる。
なお、以上の係止手段69は、係止部材70が縦枠部材3,67側に、被係止部材71が袖パネル61側に、それぞれ取り付けられていたが、これらの取り付けを逆としてもよい。
また、係止手段を、以上説明した構造、作用となった係止手段とせず、例えば、フック形状となっている係止部材を、溝や段部等による被係止部を有する被係止部材に係止するようにしたものでもよい。
また、本実施形態では、図7に示されているように、袖部60の内部の前述した空間部63には、水平方向へ延びる下地材75が配置されており、この下地材75に、袖パネル61の上側に配置された上枠部材76がアンカー部材77を介して結合されている。この上枠部材76には、空間部63の内部において、前述の外面形成部材62の側へ延びる延出部76Aが形成されており、袖パネル61の上端部には、空間部63の内部において、外面形成部材62の側へ延びる延出部61Dが形成されている。上下に間隔が開いているこれらの延出部76Aと61Dとの間は、乾式又は湿式の目地部材78で埋められている。また、それぞれの延出部76A,61Dの先端部には、下方へ延びる下方延出部76B,61Eが設けられ、下方延出部76Bに下方延出端部61Eを当接させることにより、袖パネル61の上端部は、空間部63の内外方向に位置決めされている。
さらに、図7に示されているように、空間部63の下端には下枠部材79が配置されており、前述の床5に設置されたこの下枠部材79には、空間部63の内部において、外面形成部材62の側へ延びる延出部79Aと、この延出部79Aの先端から立ち上がった立上部79Bとが設けられている。また、袖パネル61の下端部には、空間部63の内部において、外面形成部材62の側へ延びる延出部61Fと、この延出部61Fの先端から垂下した垂下部61Gとが設けられている。立上部79Bに垂下部61Gを当接させることにより、袖パネル61の下端部は、空間部63の内外方向に位置決めされており、本実施形態では、これらの立上部79Bと垂下部61Gは、ビス等の止着具80で止着されている。
そして、上下に間隔が開いている延出部79Aと61Fとの間は、乾式又は湿式の目地部材81で埋められており、止着具80は、この目地部材81で隠されている。
図10及び図11に示されているように、収納ボックス90の前述したボックス本体91は、前方部101と後方部102とからなり、これらの前方部101と後方部102は、上面部101A,102Aと、下面部101B,102Bと、左右の側面部101C,101D,102C,102Dとからなる四角形となっており、前方部101の正面には、図1で説明したヒンジ93で開閉自在となっている蓋部材92により開閉される正面開口部が形成されているとともに、後方部102の奥面は奥面部102Eにより塞がれている。また、後方部102の上面部102Aには、図1で示した照明器具96に接続されている電気配線103が挿通され、この電気配線103は、袖部60の内部の空間部63に配線されている。すなわち、電気配線103は、袖部60の内部の空間部63を利用して配線されている。
本実施形態では、前方部101の鉛直断面積は、後方部102の鉛直断面積よりも大きくなっており、このため、図10及び図11に示されているように、前方部101と後方部102との間は、段部104となっている。
図9は、前述した袖パネル61の正面図を示し、この袖パネル61には、収納ボックス90の配設位置において、四角形の開口部105が形成されている。この開口部105の開口面積は、収納ボックス90のボックス本体91の後方部102の鉛直断面積と対応しており、言い換えると、開口部105の開口面積は、収納ボックス90のボックス本体91の後方部102における袖パネル61と平行をなす面での断面積と対応している。このため、開口部105は、後方部102を挿入するための挿入用開口部になっているとともに、前方部101における袖パネル61と平行をなす面での断面積は、図9で示されているように、挿入用開口部105の開口面積よりも大きくなっている。
挿入用開口部105に後方部102が挿入されることにより、収納ボックス90は袖パネル61に配設され、この配設は、図7及び図8に示されているように、上述の段部104が袖パネル61の表面に当接するまで、挿入用開口部105に後方部102を挿入することにより行われる。これにより、後方部102は、前述した袖部60の内部の空間部63に配置されるとともに、前方部101は、袖パネル61の表面から突出して配置されることになる。言い換えると、後方部102は、袖部60において、前述した戸袋7の内側方向と同じ方向への深さをもって配置され、前方部101は、袖部60において、戸袋7の外側方向と同じ方向へ突出して配置される。
そして、このように収納ボックス90が袖パネル61に配設されたときには、上述した前方部101における袖パネル61と平行をなす面での断面積と、挿入用開口部105の開口面積との関係により、挿入用開口部105は前方部101によって覆われることになる。
図7及び図8に示されているように、袖パネル61には、この袖パネル61に以上のようにして配設される収納ボックス90を保持するための収納ボックス保持部110が設けられており、この保持部110は、戸袋7の内側方向と同じ方向への延出長さをもって袖パネル61の裏面に配置されている。また、この保持部110は、後方部102と同様に、上面部110Aと、下面部110Bと、左右の側面部110C,110Dとからなる四角形となっており、保持部110の奥面は奥面部110Eにより塞がれている。また、上面部110Aには、前述した電気配線103を案内挿通させるためのゴムパッド等による案内部材111が設けられている。また、本実施形態では、図7に示されているように、保持部110の上面部110Aと下面部110Bには、保持部110の内部において、補強部材112,113が設けられている。
このように構成された保持部110は、左右の側面部110C,110Dに形成された図8のフランジ部114,115が袖パネル61の裏面に溶接等で結合されることにより、袖パネル61に取り付けられている。
そして、収納ボックス90のボックス本体91のうち、前述した後方部102は保持部110の内部に挿入配置されており、この後方部102は、図7及び図8に示されているように、釘やビス等の止着具116により保持部110の左右の側面部110C,110Dに止着されている。
このため、収納ボックス90は袖パネル61の保持部110に保持されているとともに、袖パネル61に組み付けられている。
以上のように収納ボックス90を袖パネル61の保持部110に保持させて、この収納ボックス90を袖パネル61に組み付ける作業は、袖パネル61が前述した係止手段69等により図8の縦枠部材3,67等に取り付けられる前に行われる。すなわち、収納ボックス90を袖パネル61に組み付ける作業は、引戸装置が生産される工場や、引戸装置が設置される現場で行われ、図1で示した手摺り59を袖パネル61にボルト、ナット等の取付具で取り付ける作業も、引戸装置が生産される工場や、引戸装置が設置される現場で行われ、このときの袖パネル61は縦枠部材3,67等に取り付けられておらず、したがって、周囲が開放された環境において、収納ボックス90の袖パネル61への組付作業及び手摺り59の袖パネル61への取付作業を行うことができるため、これらの作業を容易かつ効率的に行える。
なお、収納ボックス90を袖パネル61に組み付ける作業時において、電気配線103を保持部110の案内部材111に挿通させる作業が行われ、また、袖パネル61を係止手段69等により縦枠部材3,67等に取り付ける作業時において、図7の止着具80を前述した立上部79Bと垂下部61Gとに打ち込む作業や、目地部材78,81の配置作業が行われる。
また、袖パネル61を係止手段69等により縦枠部材3,67等に取り付けた後は、戸袋7の内側方向と同じ方向への深さを有している収納部としての収納ボックス90は、戸袋7の外面に配設されておらず、この収納ボックス90は、扉体1で開閉される開口部6に対して戸袋7とは反対側の側部に設けられた袖部60に配設されている。このため、収納ボックス90を、開口部6を開けるために開き移動して戸袋7の内部に収納される扉体1に影響されることなく、引戸装置に設けることができる。
また、収納ボックス90は、袖部60に、戸袋7の内側方向と同じ方向への深さを有して配設されているため、収納ボックス90の収納容量を大きくすることができ、このため、全体として引戸装置に収納部としての収納ボックス90を扉体1等との関係で合理的に設けることができる。
また、本実施形態では、袖部60に収納ボックス90を配設するために、この袖部60の表面形成部材となっている袖パネル61に収納ボックス90を配設する構造としたため、袖部60に容易に収納ボックス90を設けることができる。
また、袖部60の表面形成部材となっている袖パネル61を袖部60に配置するために、袖パネル61を、この袖パネル61が取り付けられる取付部材となっている縦枠部材3,67に、係止部材70と被係止部材71からなる係止手段69の係止作用により取り付けるようにしたため、簡単に行えるこの係止作業により、袖部60への袖パネル61への配置作業を容易に行える。
また、本実施形態では、袖パネル61に収納ボックス90を組み付けるために、袖パネル61に、戸袋7の内側方向と同じ方向へ延出した収納ボックス保持部110が設けられ、保持部110に収納ボックス90を保持させることにより、袖パネル61に収納ボックス90を組み付けるようにしたため、保持部110による収納ボックス90の保持作用により、袖パネル61に収納ボックス90を有効に組み付けることができる。
また、収納ボックス90のボックス本体91は、袖パネル61から戸袋7の内側方向と同じ方向へ延びる後方部102と、袖パネル61から戸袋7の外側方向と同じ方向へ突出した前方部101とからなるため、前方部101の容量分だけ、収納ボックス90の収納容量を一層大きくすることができる。
また、袖パネル61には、後方部102を挿入するための挿入用開口部105が形成され、前方部101における袖パネル61と平行をなす面での断面積は挿入用開口部105の開口面積よりも大きいため、後方部102を挿入用開口部105に挿入すると、この挿入用開口部105は前方部101によって覆われることになる。このため、この挿入用開口部105の外観を良好に仕上げるための仕上げ作業を行う必要がない。
さらに、本実施形態では、袖パネル61を取り付けるための取付部材の一つは、扉体1で開閉される開口部6の戸先側の縦枠部材3であり、この縦枠部材3は、袖部60の内部の空間部63に配置された図8の下地材64により支持されているが、戸袋の内側方向と同じ方向への深さを有して袖パネル61に配設されている収納ボックス90のボックス本体91のうちの後方部102は、空間部63における下地材64の配置位置からずれている位置に配置されているため、下地材64と干渉することなく、後方部102の配置を行えることになる。
また、図1に示されているように、収納ボックス90の下側には手摺り59が設けられているため、収納ボックス90の内部に収納されている物品を確認する際に、手摺り59を触ることにより、楽な姿勢によりこの確認を行える。
さらに、扉体1に設けられている把持部1Aは、前述したように、扉体1における収納ボックス90の下端部に相当する位置から、扉体1における手摺り59の配置位置に相当する位置までの間の範囲に、少なくとも一部が配置されたものとなっているため、一方の手で手摺り59を触りながら収納ボックス90の内部に収納されている物品を見つつ、他方の手で把持部1Aを触って扉体1を容易に開き移動させることができる。
なお、以上説明した実施形態では、図7及び図8に示されているように、収納ボックス保持部110の奥面部110Eと外面形成部材6との間にすき間があったが、奥面部110Eを外面形成部材62に接触するまで後退させることにより、収納ボックス90の奥行き寸法を図7及び図8で示されている寸法よりも大きくしてもよい。
また、奥面部110Eの位置を、外面形成部材62を貫通した前述の個別部屋側へ突出した位置とすることにより、収納ボックス90の奥行き寸法を一層大きくしてもよい。このように奥面部110Eの位置を、外面形成部材62を貫通した個別部屋側へ突出した位置とする場合には、個別部屋側へ突出した収納ボックス保持部110の部分の外面に、外面形成部材62と同様な材料で形成した外面形成部材を被覆してもよく、被覆しなくてもよい。
また、上述の個別部屋の利用者が収納ボックス90の内部に収納されている物品を確認した後に、図1の開口部6を閉じている扉体1の把持部1Aによりこの個別部屋の利用者が扉体1の開き操作を行うことになるため、袖部60に配設される収納ボックス90と把持部1Aとの間の水平距離は、このようして行われる扉体1の開き操作を行うことに都合のよい距離に設定されることが好ましい。
すなわち、収納ボックス90の水平方向の中心位置と、把持部1Aの水平方向の中心位置との間の水平方向の距離は、収納ボックス90の内部に収納されている物品を確認した上記利用者がそのままの位置又は姿勢で片手により扉体1の開き操作を行うことができる距離、例えば、50cm〜120cmの範囲内の距離、さらに詳しくは、70cm〜100cmの範囲内の距離に設定することが好ましい。
また、収納ボックス90の高さ方向の中心位置と床5との間の鉛直方向の距離も、床5の上に立った上記利用者又は床5の上の車椅子に座った上記利用者が収納ボックス90の内部に収納されている物品を容易に確認できる距離に設定することが好ましく、この距離は、例えば、70cm〜160cmの範囲内の距離、さらに詳しくは、90cm〜140cmの範囲内の距離に設定することが好ましい。
以上説明した実施形態における戸袋7は、壁4の内部に収納されたが壁収納式戸袋となっていたが、本発明に係る収納構造は、戸袋が露出している露出式戸袋を備える引戸装置にも適用することができる。
また、前述した戸袋7は、扉体1の厚さ方向両面を覆う両面式戸袋であったが、本発明に係る収納構造は、扉体1の厚さ方向片面のみを覆う片面式戸袋を備える引戸装置にも適用することができる。
図15及び図16は、この片面式戸袋207,307を備える引戸装置を示す。図15の片面式戸袋207は、扉体1の厚さ方向のうち、袖部60における収納ボックス90の配設側と同じ側に設けられており、図16の片面式戸袋307は、扉体1の厚さ方向のうち、袖部60における収納ボックス90の配設側とは反対側に設けられている。
また、以上説明した収納ボックス90は引戸装置の袖部60に設けられていたが、このような収納ボックスは、玄関ドア装置等の開き戸装置(バランスドア装置を含む)や折れ戸装置の袖部にも設けることができ、これらの開き戸装置や折れ戸装置の開閉体である開き戸やバランスドアに把持部として設けられるドアノブの近傍に、言い換えると、開き戸やバランスドアの戸先部に近い位置に、収納ボックスを上記袖部において設けることにより、収納ボックスの内部に収納されている物品を確認した者が、そのままの位置又は姿勢で片手によりドアノブを操作することにより、開き戸やバランスドアを開き操作できるようにしてもよい。
そして、このような開き戸装置や折れ戸装置についても、前述した把持部と収納ボックスとの間の水平方向の距離、収納ボックスと床との間の鉛直方向の距離を適用することが好ましく、さらには、袖部に手摺りを設けることや、この手摺りの位置と収納ボックスの位置とで定まる前述の範囲にドアノブを設けることが好ましい。