以下、本発明に係る接続具について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る接続具10の全体構成を示す斜視図である。図2は、図1に示す接続具10の一部分解斜視図であり、接続具10を構成するノズル12を分解した状態で図示している。
本実施形態に係る接続具10は、第1シリンジ14a及び第2シリンジ14bが並列されて一体的に連結されたシリンジ14と、該シリンジ14の各先端が接続されることで、シリンジ14内に充填されている液体を塗布対象へと噴射するノズル12とを備えたスプレー式デバイス(塗布具)である。接続具10は、例えば腹腔鏡下手術の際に、ノズル12の先端方向に延びた細径で長尺なノズルシャフト16を腹腔内に挿入し、シリンジ14から供給された液組成が異なる2種の液体をノズル12内で混合しつつ、その混合物である薬液を臓器や腹壁等に塗布する医療用器具として用いられる。
以下の説明では、図1における幅方向をX方向、高さ方向をY方向、ノズルシャフト16の延在方向をZ方向(軸方向)と呼ぶ。また、ノズルシャフト16の前方(噴射方向)をZ1方向又は先端、ノズルシャフト16の後方(シリンジ14側)をZ2方向又は基端(後端)と呼び、さらに、接続具10を先端側から見て右方をX1方向、左方をX2方向、上方をY1方向、下方をY2方向と呼ぶ。なお、これらの方向は説明の便宜上のものであり、接続具10は任意の向きで(例えば、上下を反転させて)使用可能であることは勿論である。
図1及び図2に示すように、シリンジ14は、ノズル12で混合されて噴射される2種の液体に対応する第1シリンジ14a及び第2シリンジ14bを備え、第1シリンジ14aに液体L1を充填し、第2シリンジ14bに液体L2を充填して用いられる。本実施形態の場合、第1シリンジ14aと第2シリンジ14bは、その外径や排除容積が異なる以外は略同様の構成であるため、以下では代表的に第1シリンジ14aについて参照符号(数字)に「a」を付して説明し、第2シリンジ14bについては対応する第1シリンジ14aの構成要素の参照符号(数字)に「b」を付し、詳細な説明は省略する。勿論、第1シリンジ14aと第2シリンジ14bを同径のもので構成してもよい。
第1シリンジ14aは、縮径した流通口(吐出口)18aを先端に設けた外筒(シリンダ)20aと、外筒20a内で液密に摺動可能なガスケット22aと、ガスケット22aを外筒20aの軸方向(Z方向)に移動させる押し子(プランジャロッド)24aとを備える。流通口18aは、外筒20aの内外で液体を流通させるための開口であり、外筒20aの先端面から突出した先細りテーパ状の凸部である。
外筒20aの基端縁部外周には、操作者が押し子24aを操作する際に人差し指や中指等をかける薄板楕円状のフランジ26が形成されると共に、該フランジ26は、第2シリンジ14bの外筒20bの基端縁部外周と一体的に形成されている。各外筒20a、20bの基端側開口部には、各押し子24a、24bの進退移動をガイドするガイド部材28が嵌挿されている。外筒20a(20b)の外周面には、液量を示す目盛り(図示せず)を設けてもよい。
外筒20a(20b)の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)等の樹脂を用いるとよいが、成形の容易さや水蒸気透過性の低さ等を考慮すると、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル等が好ましい。なお、外筒20aは、内部の視認性を確保するために、透明又は半透明であることが好ましい。
押し子24aは、軸方向(Z方向)に直交する断面が十字状に構成された長尺なロッドであり、ガイド部材28の第1シリンジ14a側を軸方向に貫通する十字状のガイド孔28aに挿通されている。同様に、押し子24bは、ガイド部材28の第2シリンジ14b側を軸方向に貫通する十字状のガイド孔28bに挿通されている。
押し子24a、24bは、その基端側がブリッジ24cによって一体的に連結され、全体として略U字状に構成されている。すなわち、押し子24a、24bの進退動作は、ブリッジ24cに設けられた共通の操作部(操作円板)24dによって一体化されている(図2参照)。押し子24a(24b)の材質も上記した外筒20aと同様なものでよいが、透明な外筒20a内での視認性を向上させるため、非透明であることが望ましい。
ガスケット22aは、例えば弾性材料で形成されており、押し子24aの先端に連結されることで、外筒20aの内周面に密着して液密に摺動可能なピストンである。ガスケット22aは、その先端側(Z1側)に形成した室に流通口18aから液体L1を吸引・充填可能であると共に、充填された液体L1を流通口18aから押し出すことができる。
ガスケット22a(22b)の材質は、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、或いはそれらの混合物等の弾性材料を用いるとよい。
第2シリンジ14bは、上記した第1シリンジ14aと略同様の構成であり、流通口18bと、外筒20bと、ガスケット22bと、押し子24bとを備え、フランジ26及びガイド部材28を第1シリンジ14aと共用している。
第1シリンジ14a及び第2シリンジ14bは、基端側がフランジ26で連結されると共に、中央から先端にかけた部分が平板状の連結部30で連結されている。連結部30には、シリンジ14にノズル12を着脱する際に両者をロック及びアンロックする係合機構(ロック機構)32を構成するフック部材34が設けられる(図3参照)。係合機構32は、フック部材34と、該フック部材34が係合するノズル12側の爪部材36とを有する。図3に示すように、連結部30におけるフック部材34と反対側の面(Y2方向面)には、フック部材34と爪部材36との係合動作をZ方向にガイドするガイド爪37が設けられている。
フック部材34は、図3に示す側面視で略T字状の本体部38と、該本体部38の基端から斜め下方(Z2方向且つY2方向)に延びた薄板状の弾性片(弾性体)40とから構成されている。
本体部38は、幅方向(X方向)両側面から突出したピン42、42が、連結部30のX方向両側から上方(Y1方向)に突出した薄板状で一対の支持部材44、44の各取付孔46、46に対して軸支され、これにより矢印θ1、θ2方向に揺動可能となっている(図3中の2点鎖線参照)。本体部38の先端には、フック部材34がノズル12側の爪部材36をZ方向に乗り越えるためのテーパ面48が設けられており、該テーパ面48の後方に、爪部材36の凸部50と係合可能な凹部52が形成されている。弾性片40は、内面側(Z1方向且つY2方向)に向かって湾曲すると共に、その端部が連結部30上に着地し、且つ連結部30上をスライド可能な板ばね状の部材であり、ピン42を回転軸として揺動する本体部38を矢印θ1方向に付勢している。
本体部38には、さらに、ピン42より先端側(Z1側)で下方に突出した平板状の規制部材54が設けられている。規制部材54は、フック部材34が爪部材36に係合していない状態では、そのZ2側面が支持部材44のZ1側面に当接することにより、弾性片40の付勢力でフック部材34が矢印θ1方向に過度に回転し、先端のテーパ面48の位置がY2方向に下がりすぎることを防止している。
従って、ノズル12をシリンジ14に装着する際、つまりフック部材34と爪部材36とが互いにZ方向に接近されて係合する際に、規制部材54の作用下にテーパ面48を爪部材36の凸部50の角部に確実に当接させることができる。これにより、係合機構32では、フック部材34と爪部材36とを近接方向に移動させるだけで、テーパ面48が凸部50上を滑りつつ、フック部材34は弾性片40の付勢力に抗して矢印θ2方向に揺動するため、テーパ面48が凸部50を確実に乗り越え、凸部50と凹部52とを容易に係合させることができる(図3参照)。
なお、図3中の参照符号56は、フック部材34と爪部材36との係合状態を解除する際に、操作者が弾性片40の付勢力に抗して本体部38を矢印θ2方向に揺動させるために操作(押圧)する部位を表示すると共に、該操作での操作者の指先等の滑りを防止するための横溝である。
フック部材34の材質も上記した外筒20a等と同様なものでよい。なお、弾性片40は、本体部38と一体に成形しても別体に構成してもよいが、その湾曲形状や板厚等を適宜設定することにより、所望の弾性力を発生可能なものとするとよく、勿論、弾性片40に代えてコイルばねやトーションばねを用いてもよい。
このようなシリンジ14において、第1シリンジ14aに充填される液体L1と、第2シリンジ14bに充填される液体L2とは、当該接続具10の用途や使用目的等に応じて適宜選定すればよく、例えば、生体組織接着材の投与に使用する場合には、液体L1及び液体L2のうち、一方はトロンビンを含有する液体(溶液等)、他方はフィブリノーゲンを含有する液体(溶液等)を挙げることができる。また、例えば、接続具10を癒着防止材の投与に使用する場合には、液体L1及び液体L2のうち、一方はスクシンイミジル基で修飾したカルボキシメチルデキストリンを含有する液体(溶液等)、他方はリン酸水素二ナトリウムを含有する液体(溶液等)を挙げることができる。
このような組み合わせの液体L1及び液体L2は、それらを混合すると、変質、すなわちゲル化(固化)する。ゲル化することにより、例えば、液体L1と液体L2とが混合した薬液(混合物、混合液)を、塗布された生体組織(目的部位)に確実に留めることができ、該目的部位において生体組織接着材や癒着防止材としての機能を確実に発揮することができる。勿論、液体L1及び液体L2の種類や組み合わせは、上記で例示したものに限定されるものではない。
一方、ノズル12は、図1及び図2に示すように、上下に2分割された一対の上部ハウジング60a及び下部ハウジング60bを有するハウジング60と、Z方向に進退可能な状態でハウジング60内に収容され、シリンジ14の各流通口18a、18bが嵌合する接続口62a、62bを基端面に設けた流路部材(移動部材)64と、流路部材64からハウジング60外へと突出して先端方向に延びたノズルシャフト16とを有する。ハウジング60は、分割構造ではなく一体構造としてもよい。
ハウジング60は、平面視で先細りの略三角形状であり(図4Aも参照)、その先端にノズルシャフト16が通過及び摺動する円形の開口66が形成され、その基端に流路部材64が出没可能に臨む矩形の開口68が形成された箱状の部材である。
上部ハウジング60aの内壁面には、下部ハウジング60b側に突出する一対の凹型ピン70、70と、一対の凹型ピン72、72とが設けられている。同様に、下部ハウジング60bの内壁面には、上部ハウジング60a側に突出する一対の凸型ピン74、74と、一対の凸型ピン76、76とが設けられている。さらに、上部ハウジング60aの基端には、Z2方向に突出すると共にY方向に屈曲した上部突出片36aが設けられ、下部ハウジング60bの基端には、Z2方向に突出した下部突出片36bが設けられる。これにより、各凸型ピン74、76が各凹型ピン70、72にそれぞれ係合し、下部突出片36bの基端面の凸部78が上部突出片36aにおける凸部50内側の凹部80に係合することで、ハウジング60が形成されると同時に爪部材36が形成される。
図4Aに示すように、本実施形態の場合、第1シリンジ14aと第2シリンジ14bの径が異なり、フック部材34のX方向位置がシリンジ14の幅方向でややX2側にあることから、該フック部材34が係合する爪部材36の位置もX方向で中心よりもややX2側に設けられている。
図2、図3及び図4Aに示すように、流路部材64は、その中央をY方向に貫通する略矩形の貫通孔82が形成され、基端に爪部材36を避ける逃げ凹部83が形成された扁平矩形状のブロックであり、その基端面に一対の接続口62a、62bが形成されている。流路部材64の先端面には、ノズルシャフト16が挿入・接続される出口ポート84がZ1方向に突設されると共に、下面には、ガス供給源86からのチューブ86aが挿入・接続される入口ポート(ガスポート)88がY2方向に突設される。入口ポート88は、下部ハウジング60bに形成された孔部(長孔)89を挿通している。
図4A及び図4Bから諒解されるように、流路部材64は、ハウジング60内に収容されると共に、該ハウジング60の内壁面に沿ってZ方向に進退可能である。
流路部材64の貫通孔82内には、その幅方向(X方向)中心をZ方向に延びた支持板90が設けられると共に、一対の弾性部材92a、92bが支持板90から両側方向(X方向)に突出している。弾性部材92a、92bは、図4Aに示す平面視でX方向からZ1方向に傾斜した片持ち梁であり、支持板90から突出した板ばね状の部材である。弾性部材92a、92bは、その一面(Z1側面)が貫通孔82内をY方向に挿通した凹型ピン70及び凸型ピン74に当接可能な状態で貫通孔82内に配置されている(図4A参照)。弾性部材92a、92bとしては、板ばね状の部材以外に、コイルばね等を用いてもよい。
従って、図4Aに示すように、流路部材64は、ノズル12とシリンジ14が接続されずに分離された状態では、凹型ピン70及び凸型ピン74が貫通孔82内を挿通していることから、弾性部材92a、92bのZ1側面と貫通孔82のZ2側面との間の凹型ピン70及び凸型ピン74により、流路部材64のがたつきやずれが最小限に抑えられる。また、凹型ピン70及び凸型ピン74と爪部材36とにより、開口68からの流路部材64の抜け止めがなされている。
一方、図4Bに示すように、ノズル12とシリンジ14が接続される際には、流路部材64は、シリンジ14の各流通口18a、18bが各接続口62a、62bに嵌合する際のZ1方向への押込み力により、ハウジング60に対して相対的にZ1側へ移動する。同時に、流路部材64に対するストッパ部材として機能する凹型ピン70及び凸型ピン74に弾性部材92a、92bが当接し、弾性変形することで発生する反発力(付勢力)により、各流通口18a、18bと各接続口62a、62bとの嵌合強度が高められると共に、操作者に対して適度な装着感(負荷)が付与される。
さらに、接続完了後には、弾性部材92a、92bが凹型ピン70及び凸型ピン74に当接して弾性変形していることによる反発力により、流路部材64は、フック部材34と爪部材36との係合作用下にZ方向位置が固定されたハウジング60からZ2方向への付勢力を受けた状態に保持される。このため、シリンジ14の各流通口18a、18bと流路部材64の各接続口62a、62bとの強固な嵌合状態が維持されることになる。
このような流路部材64の内部には、接続口62aからZ1方向に貫通した第1液体流路94aと、接続口62bからZ1方向に貫通した第2液体流路94bと、入口ポート88と出口ポート84の間を連通する屈曲したガス流路96とが形成されている(図3及び図4A参照)。そこで、シリンジ14側からの液体L1、L2を各液体流路94a、94bへと流通させるための開口である接続口62a、62bは、テーパ状の凸部として形成された流通口18a、18bとテーパ嵌合可能な奥細りテーパ状の凹部として形成されている。
ノズルシャフト16は、細径で長尺なチューブであり、拡径したノズルヘッド97が先端に設けられると共に、基端がハウジング60内で流路部材64の出口ポート84に接続される。ノズルシャフト16内には、図2、図4A及び図5に示すように、第1シリンジ14aから供給されて第1液体流路94aを通過した液体L1が流通する第1ノズル液体流路98aと、第2シリンジ14bから供給されて第2液体流路94bを通過した液体L2が流通する第2ノズル液体流路98bと、ガス供給源86から供給されてガス流路96を通過したガスGが流通するノズルガス流路100とが設けられている。
液体L1、L2が流通する第1及び第2ノズル液体流路98a、98bは、流路部材64に形成された第1及び第2液体流路94a、94bにそれぞれ接続されると共に、ハウジング60内でノズルシャフト16の途中から該ノズルシャフト16内へと引き込まれる(図2及び図4A参照)。さらに、第1及び第2ノズル液体流路98a、98bは、ノズルシャフト16内を先端方向へと延在した後、ノズルヘッド97近傍に配設された合流路102で互いに合流される。各ノズル液体流路98a、98bは、互いの先端が合流路102の基端で一体的に合流しており、これにより、液体L1と液体L2を均一に且つ確実に混合可能となっている。合流路102の先端は、ノズルヘッド97の先端で開口した噴射口104に接続されている。
ガスGが流通するノズルガス流路100は、流路部材64の出口ポート84に接続された外チューブであるノズルシャフト16の内腔によって構成されており、第1及び第2ノズル液体流路98a、98bと合流路102とが内チューブとして配設された部分では、これらの周囲に形成された間隙で構成される。
そこで、図5に示すように、合流路102の壁面が、ガスGが通過可能且つ液体が通過不能の通気膜で形成されることにより、ノズルガス流路100を流通したガスGは、合流路102の管壁からその内部へと流入する。これにより、合流路102を流通する液体L1、L2の混合液は、周囲から流入するガスGと共に噴射口104から噴射されることで霧化され、目的部位(患部)に対して均一に塗布される。
図4A及び図4Bから諒解されるように、第1及び第2ノズル液体流路98a、98bを含むノズルシャフト16は、ノズル12とシリンジ14との着脱時、流路部材64のZ方向への進退動作に伴って、Z方向に進退し、ハウジング60先端の開口66内を摺動可能である。なお、流路部材64から突出した入口ポート88についても略同様であり、孔部89内をZ方向に移動可能である。そこで、孔部89の形状は、入口ポート88又はチューブ86aが挿通可能な内径を有し、且つZ方向の長さが流路部材64の移動量に対応するように延びた長孔であるとよい。該長孔には、Z方向の長さのみが長尺なもの以外、例えば、楕円や、流路部材64の移動量を考慮した大径の円等も含むものとする。
第1及び第2ノズル液体流路98a、98bとノズルシャフト16の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種の軟質又は硬質樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、ステンレス鋼、アルミニウム、銅または銅系合金等の各種金属材料、各種ガラス、アルミナ、シリカ等の各種セラミックスが挙げられる。
また、合流路102には、前記通気膜を形成するために管壁の内外を貫通する図示しない細孔が多数形成されている。これら細孔の平均孔径は、特に限定されないが、例えば、2μm以下が好ましい。このように通気膜として機能する合流路102は、液体L1、L2に対して不透過性(撥水性)、すなわち、疎水性を有している。
そこで、合流路102には、疎水性を有する材質、又はその表面が疎水化処理が施されたものを用いるとよく、疎水性を有する材質としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンの共重合体(ECTFE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられ、これらの材料を、延伸法、ミクロ相分離法、電子線エッチング法、焼結法、アルゴンプラズマ粒子等の方法で多孔質としたものが好適に用いられる。また、疎水化処理の方法としては、特に限定されず、例えば、合流路102の表面に、前記疎水性を有する材料をコーティングする方法等が挙げられる。
ガス供給源86(図1参照)としては、例えば、内部空間に高圧のガスGが充填されたガスボンベを用いるとよく、該ガス供給源86又はチューブ86aの途中には、入口ポート88へのガスGの供給をオン・オフする開閉弁等が設けられるとよい。ガスGとしては、例えば、二酸化炭素を用いるとよい。
次に、以上のように構成される接続具10におけるノズル12とシリンジ14との接続動作及び作用について説明する。
先ず、第1及び第2シリンジ14a、14bの外筒20a、20b内に、所定の液体L1、L2をそれぞれ充填する。これら液体L1、L2としては、上記にて例示したトロンビンを含有する液体とフィブリノーゲンを含有する液体との組み合わせ等、当該接続具10の用途や塗布対象等に応じて適宜選定すればよい。
外筒20a、20b内への液体L1、L2の充填方法は、特に限定されないが、例えば、シリンジ14a、14bの流通口18a、18bを、液体L1、L2をそれぞれ収容した2本のバイアル瓶等の液体容器(図示せず)内にそれぞれ挿入し、操作部24dを引き寄せることで各押し子24a、24bを外筒20a、20b内で後退させ、液体容器内の液体L1、L2を流通口18a、18bから吸引する方法等が挙げられる。また、前記液体容器として、例えば、特開2009−153720号公報に開示されているように、粉体を収容した容器と液体を収容した容器とを両頭針によって連通させ、粉体を液体で溶解した溶解液を収容した液体容器に対し、所定の装着部材を介してシリンジ14を取り付け、該溶解液を吸引する方法等を適用することもできる。
次に、液体L1、L2を各シリンジ14a、14bにそれぞれ充填したシリンジ14の先端にノズル12を接続する。すなわち、図4Aに示すように、ノズル12とシリンジ14とを、互いの接続口62a、62bと流通口18a、18bとが対向するように位置合わせを行い、図4Bに示すように、ノズル12とシリンジ14とを近接方向に押込み、各流通口18a、18bを各接続口62a、62bに嵌合させる。
このようなノズル12とシリンジ14との接続動作においては、先ず、流路部材64のテーパ状の凹部である各接続口62a、62bに対し、シリンジ14のテーパ状の凸部である各流通口18a、18bを挿入し、互いのテーパ面同士を当接させ、当接した後もシリンジ14とノズル12との押込み動作を継続する。
そうすると、図4A及び図4Bから諒解されるように、流路部材64がシリンジ14からのZ1方向への押込み力を受けて、ハウジング60に対して相対的にZ1方向に摺動し、弾性部材92a、92bがストッパ部材(凹型ピン70及び凸型ピン74)に当接して弾性変形を開始する。従って、弾性部材92a、92bの弾性変形により流路部材64がハウジング60からZ2方向への反発力を受けるが、シリンジ14をさらにノズル12に対してZ1方向に押込むことにより、接続口62a、62bと流通口18a、18bとが、前記反発力による適度な装着感(抵抗感)を持って強固に且つ確実にテーパ嵌合される。
同時に、図3、図4A及び図4Bから諒解されるように、フック部材34については、先端のテーパ面48が爪部材36の凸部50に当接すると共に、弾性片40の付勢力に抗して矢印θ2方向に揺動されつつテーパ面48が凸部50を乗り越え、凹部52と凸部50とが互いに係合される。この際にも、フック部材34のテーパ面48が弾性片40の付勢力に抗して凸部50を乗り越え、さらに凸部50と凹部52とが係合するため、適度な装着感(抵抗感)を持って強固に且つ確実にフック部材34と爪部材36とを係合させることができる。
以上のように、本実施形態に係る接続具10では、ノズル12とシリンジ14を互いの接続口62a、62bと流通口18a、18bとを位置決めして近接方向に押込むだけの簡単な操作で、接続口62a、62b及び流通口18a、18bの嵌合動作と、フック部材34及び爪部材36の係合動作とが同時に実行される。すなわち、接続具10では、実質的にノズル12とシリンジ14とを押込む1回の動作(1アクション)のみで、容易に且つ確実にノズル12とシリンジ14とを接続することができる。この際、接続口62a、62b及び流通口18a、18bがテーパ嵌合によって接続される構成であることにより、接続時の位置決めや互いの嵌合動作を一層容易に行うことができ、且つ液漏れをより確実に防止した強固な嵌合状態を得ることができる。
前記接続が完了した状態では、図4Bに示すように、流路部材64は、弾性部材92a、92bによってハウジング60(及びフック部材34によってハウジング60と係合したシリンジ14)に対するZ2方向への付勢力を受け続ける。このため、流通口18a、18bと接続口62a、62bとは、その嵌合状態を維持する方向(Z方向で互いに近接する方向)の付勢力を受け続けるため、その嵌合状態を一層強固に維持することができる。この際、ストッパ部材である凹型ピン70及び凸型ピン74に対しては、弾性部材92a、92bによるZ1方向への押圧力が付与されているため、フック部材34の凹部52と爪部材36の凸部50とは、互いにZ方向で離間する方向の力が維持されていることから互いに強固に引っかっており、さらにフック部材34が弾性片40の付勢作用下に図3中の矢印θ1方向に付勢されているため、その係合状態が一層強固に維持される。
従って、接続具10によれば、ノズル12をシリンジ14に接続した後、操作部24dをZ1方向に押込み操作して、各シリンジ14a、14bに充填された液体L1、L2を流通口18a、18bから接続口62a、62bを介して各液体流路94a、94b、さらに噴射口104へと流通させる際、各流路内での圧力が相当に上昇した場合であっても、前記テーパ嵌合した部分からの液漏れを生じることが有効に防止され、液体L1、L2及びガスGの混合液を噴射口104から円滑に噴射することができる。
その後、ノズル12とシリンジ14の接続状態を解除し、互いに分離する際には、フック部材34の基端にある横溝56を、例えば親指で下方に押込み、該フック部材34を弾性片40の付勢力に抗して図3中の矢印θ2方向に揺動させる。略同時に、前記親指でのフック部材34の押込み状態を維持したまま、ノズル12とシリンジ14とを、例えば右手と左手で互いに離間する方向に引き離し、接続口62a、62bから流通口18a、18bを引き抜くことで、ノズル12とシリンジ14とを容易に分離することができる。
また、接続具10では、流路部材64をY方向に貫通する貫通孔82を設け、該貫通孔82内にストッパ部材(凹型ピン70及び凸型ピン74)を挿通させている(図4A及び図4B参照)。すなわち、凹型ピン70及び凸型ピン74が貫通孔82の内壁面と弾性部材92a、92bの側面との間にあることから、ノズル12とシリンジ14とが接続されていない状態では、流路部材64のハウジング60内でのガタツキが抑制され、さらに流路部材64のハウジング60からの確実な抜け止めがなされている(図4A参照)。一方、ノズル12とシリンジ14とが接続された状態では、凹型ピン70及び凸型ピン74に弾性部材92a、92bが当接することで、流路部材64がハウジング60からの反発力を適切に受けることができる(図4B参照)。
つまり、ストッパ部材が挿通され、弾性部材92a、92bを配置した貫通孔82を流路部材64に設けたことにより、該流路部材64のハウジング60からの抜け止めやガタツキ防止と、該流路部材64の弾性的な摺動及びその摺動範囲の規制とが、簡単且つコンパクトな構造で実現されている。特に、各液体流路94a、94b及びガス流路96が形成された流路部材64について、貫通孔82内に弾性部材92a、92b及び凹型ピン70及び凸型ピン74を設けたことにより、該流路部材64のZ方向での寸法をより低減することができ、ハウジング60の大きさも最小限に構成することができる。勿論、貫通孔82を設けず、例えば、流路部材64のZ1側面に弾性部材92a、92bを設けた構成としてもよい。
図4A及び図4Bから諒解されるように、接続具10では、貫通孔82の幅方向で略中心をZ方向に延びた支持板90を設け、該支持板90から第1及び第2シリンジ14a、14bの各軸線方向へと弾性部材92a、92bを延在させている。これにより、流路部材64に対するシリンジ14からのZ1方向への押込み力や、弾性部材92a、92bによるZ2方向への反発力が、該流路部材64の幅方向(X方向)で適切にバランスされるため、該流路部材64のZ方向への摺動をより円滑にすることができる。
本発明は、上記の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
例えば、上記実施形態では、フック部材34をシリンジ14側に設け、爪部材36をノズル12側に設けた構成を例示したが、フック部材34をノズル12側に設け、爪部材36をシリンジ14側に設けた構成としてもよい。
また、シリンジ14としては、上記のように第1シリンジ14a及び第2シリンジ14bを用いた2本構成以外であっても勿論よく、1本又は3本以上としてもよい。勿論、シリンジ14の本数を変更した場合には、流路部材64の接続口の個数や液体流路の個数も適宜変更するとよい。
流路部材64の動作を規制するストッパ部材としては、上記では上部ハウジング60aと下部ハウジング60bとを係合するための凹型ピン70及び凸型ピン74を用いた構成を例示したが、ストッパ部材のみに使用されるピン等をハウジング60の内面に別途設けてもよいことは勿論である。