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JP5495592B2 - 筆記具用w/o型エマルションインキ組成物及び筆記具 - Google Patents

筆記具用w/o型エマルションインキ組成物及び筆記具 Download PDF

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JP5495592B2 JP2009070033A JP2009070033A JP5495592B2 JP 5495592 B2 JP5495592 B2 JP 5495592B2 JP 2009070033 A JP2009070033 A JP 2009070033A JP 2009070033 A JP2009070033 A JP 2009070033A JP 5495592 B2 JP5495592 B2 JP 5495592B2
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Description

本発明は、筆記具用W/O型エマルションインキ組成物及び筆記具に関する。
ボールペン等の筆記具用のインキとしては、水性インキ及び油性インキが一般的であるが、近年、油性成分中に水性成分を分散させたW/O型エマルションインキが検討されている。一般に、油性インキは書き味が重くなる傾向があり、水性インキは筆記線の乾燥が遅く紙面を汚しやすい傾向がある。これに対し、W/O型エマルションインキは、良好な書き味と筆記線の乾燥性との両方を満足するインキとして注目されている(例えば、特許文献1参照)。
特許第3090425号
しかしながら、W/O型エマルションインキは、水性インキ及び油性インキに比べて、書き始めの際のインキの吐出性を良好にすることが難しいという事情がある。上記特許文献1に記載されたW/O型エマルションインキも、その点を十分に改善するものではなく、初筆かすれの発生を十分に抑制することができなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、書き初めの際の初筆かすれを十分に抑制することが可能な筆記具用W/O型エマルションインキ組成物及びそれを用いた筆記具を提供することを目的とする。
本発明では、油性成分中に水性成分が分散された筆記具用W/O型エマルションインキ組成物であって、油性成分が植物油及びリン酸エステルを含有し、油性成分及び水性成分の少なくとも一方が着色剤を含有する、筆記具用W/O型エマルションインキ組成物を提供する。
上記本発明の筆記具用W/O型エマルションインキ組成物によれば、油性成分中に植物油及びリン酸エステルの双方を含有させることにより、書き始めの際のインキの吐出がスムーズになり、初筆かすれの発生を十分に抑制することができる。また、インキの吐出がスムーズになることから、筆記時のボテの発生を抑制するとともに、十分書き味に優れたものとすることができる。さらに、植物油は、VOC(揮発性有機化合物)成分をほとんど含まないため大気汚染等の問題がなく、その上廃棄後の分解が容易であるため、環境にやさしいという利点がある。
本発明の筆記具用W/O型エマルションインキ組成物における植物油は、ひまし油を含むことが好ましい。植物油がひまし油を含むことにより、初筆かすれをより一層抑制することができる。また、W/O型エマルションインキ組成物の乳化安定性を向上することもできる。
本発明の筆記具用W/O型エマルションインキ組成物では、油性成分に含有される着色剤が油溶性染料を含むことが好ましい。これによって、油性成分からなる油滴が安定となり、インキ組成物の乳化安定性を一層良好にすることができる。
本発明の筆記具用W/O型エマルションインキ組成物におけるリン酸エステルの含有量は、0.04〜3質量%であることが好ましい。このような範囲でリン酸エステルを含有することによって、初筆かすれの発生を一層抑制することが可能となる。
本発明の筆記具用W/O型エマルションインキ組成物における植物油の含有量は、0.9〜10.0質量%であることが好ましい。このような範囲で植物油を含有することによって、初筆かすれの発生を一層抑制することが可能となる。
また、本発明では、上述の筆記具用W/O型エマルションインキ組成物を有する筆記具を提供する。かかる筆記具は、上記特徴を有するW/O型エマルションインキ組成物を有することから、書き始めの際のインキの吐出がスムーズで、初筆かすれの発生を十分に抑制することができる。また、インキの吐出がスムーズになることから、筆記時のボテの発生が抑制されるとともに十分書き味に優れたものとなり、また耐摩耗性にも優れたものとなる。
本発明によれば、書き初めの際の初筆かすれを十分に抑制することが可能な筆記具用W/O型エマルションインキ組成物及びそれを用いた筆記具を提供することができる。
本発明の筆記具の一実施形態であるボールペンを示す模式断面図である。
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
本実施形態の筆記具用W/O型エマルションインキ組成物は、油性成分中に水性成分が分散された筆記具用W/O型エマルションインキ組成物であって、上記油性成分が植物油及びリン酸エステルを含有し、上記油性成分及び上記水性成分の少なくとも一方が着色剤を含有するものである。以下、本実施形態のW/O型エマルションインキ組成物(以下、単に「インキ組成物」ということもある。)を構成する各成分について説明する。
油性成分は、植物油を含有する。植物油としては、例えば、ひまし油、アボカド油、サフラワー油、ローズヒップ油、ピスタチオナッツ油、マカデミアンナッツ油、メドウフォーム油、クランベアビシニカ油、ビャクダン抽出油、キハダ樹皮抽出油、オオムギ抽出油、アルガン油、ホホバ油、ヤシ油、オリーブ油、綿実油等を用いることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
植物油は、初筆かすれの発生を十分に抑制する観点から、ひまし油、ピスタチオナッツ油、クランベアビシニカ油及びアルガン油から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。また、植物油は、ひまし油を含有することによって、初筆かすれを一層低減することとともに、乳化安定性に優れたインキ組成物とすることができる。
植物油の含有量は、インキ組成物全量を基準として、好ましくは1〜10.0質量%であり、より好ましくは1〜5.0質量%である。この含有量が1質量%未満であると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、初筆かすれの抑制効果が低下する傾向があり、10.0質量%を超えると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、インキ組成物の乳化安定性が損なわれる傾向がある。植物油の含有量を、1〜5.0質量%とすることによって、初筆かすれを十分に抑制しつつ乳化安定性に優れたインキ組成物とすることができる。
油性成分は、上述した植物油に加えて、リン酸エステルを含有する。リン酸エステルは、リン酸とアルコールを脱水縮合することによって得ることができる。本実施形態では、市販されている一般的なリン酸エステルを用いることが可能であり、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル及びリン酸トリエステルのいずれも用いることができる。
リン酸エステルの酸価は、好ましくは50〜200であり、より好ましくは60〜150である。酸価が50〜200のリン酸エステルを用いることによって、初筆かすれの発生を一層十分に抑制しつつ耐磨耗性に優れたインキ組成物とすることができる。
リン酸エステルのpHは、好ましくは1〜6、より好ましくは1.5〜3である。pHが上記範囲であるリン酸エステルを用いることによって、筆記具のチップの耐摩耗性に優れるインキ組成物とすることができる。また、リン酸エステルのHLBは、好ましくは4〜14、より好ましくは5〜13である。HLBが上記範囲であるリン酸エステルを用いることによって、乳化安定性に一層優れたインキ組成物とすることができる。
リン酸エステルの含有量は、インキ組成物全量を基準として、好ましくは0.05〜3質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%であり、さらに好ましくは0.3〜0.9質量%である。この含有量が0.05質量%未満であると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、初筆かすれの抑制効果が低下する傾向があり、3質量%を超えると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、インキの乳化安定性が損なわれる傾向がある。リン酸エステルの含有量を、0.05〜1質量%とすることによって、初筆かすれを十分に抑制しつつ乳化安定性に優れたインキ組成物とすることができる。また、リン酸エステルの含有量を、0.05〜0.9質量%とすることによって、さらにボテの発生が一層抑制されたインキ組成物とすることができる。
油性成分は、着色剤として、油溶性染料を含有することが好ましい。これによって、油性成分からなる油滴が安定となり、インキ組成物の乳化安定性を一層良好にすることができる。油溶性染料としては公知のものを特に制限なく使用することができる。このような油溶性染料としては、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料等が挙げられ、より具体的には、例えば、スピリットブラック61F、バリファーストバイオレット1701、バリファーストバイオレット1704、バリファーストイエロー1109、バリファーストブルー1605、バリファーストブルー1621、バリファーストブルー1623、バリファーストレッド1320、バリファーストレッド1360、バリファーストレッド2320(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、アイゼンスピロンブラックGMHスペシャル、アイゼンスピロンバイオレットC−RH、アイゼンスピロンイエローC−GH new、アイゼンスピロンブルーC−RH、アイゼンスピロンS.P.T. ブルー−111、アイゼンスピロンS.P.T. ブルー−121(以上、保土谷化学工業株式会社製)等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。油溶性染料を用いることにより、筆跡を濃く明瞭なものとすることができる。
油溶性染料の含有量は、インキ組成物全量を基準として、好ましくは5.0〜40.0質量%であり、より好ましくは10.0〜30.0質量%であり、さらに好ましくは20〜30質量%である。この含有量が5.0質量%未満であると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、筆跡の明瞭さが低下する傾向があり、40.0質量%を超えると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、インキ組成物の粘度が高くなり、書き味が低下するとともに、経時的に油溶性染料の析出が生じやすくなる傾向がある。
油性成分は、上述の成分以外に、従来のインキ組成物の油性成分として用いられる成分を含有していてもよい。例えば、油性成分は、極性溶剤を含有していてもよい。極性溶剤としては、インキ組成物に使用される極性溶剤を特に制限なく使用することができる。かかる極性溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル(フェニルグリコール)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、ベンジルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのアルコール類等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
極性溶剤の含有量は、インキ組成物全量を基準として、好ましくは20.0〜60.0質量%であり、より好ましくは30.0〜50.0質量%である。この含有量が20.0質量%未満であると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、粘度が高くなり書き味が損なわれる傾向があり、60.0質量%を超えると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、インキの乳化安定性が損なわれる傾向がある。
油性成分は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、粘度調整剤(樹脂等)、潤滑剤、顔料、酸化防止剤等が挙げられる。
上記粘度調整剤としては、例えば、ケトン樹脂、スルフォアミド樹脂、マレイン樹脂、キシレン樹脂、アミド樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂、ブチラール樹脂等を使用することができる。
上記潤滑剤としては、例えば、オレイン酸などの高級脂肪酸や上記リン酸エステルとは異なるリン酸エステル系の潤滑剤等を使用することができる。
上記顔料としては、例えば、カーボンブラック、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、縮合アゾ系、ジケトピロロピロール系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、スレン系、イソインドリノン系などの一般的な有機顔料等を使用することができる。
本実施形態のインキ組成物において、水性成分は、少なくとも水と着色剤とを含むことが好ましい。ここで、水の含有量は、インキ組成物全量を基準として5.0〜30.0質量%であることが好ましく、10.0〜20.0質量%であることがより好ましい。この含有量が5.0質量%未満であると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、書き味が低下する傾向があり、30.0質量%を超えると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、経時安定性が低下する傾向がある。
着色剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができ、顔料及び染料のいずれも使用可能である。顔料としては、例えば、カーボンブラック、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、縮合アゾ系、ジケトピロロピロール系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、スレン系、イソインドリノン系などの一般的な有機顔料等を使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。顔料を用いることにより、筆跡を濃く明瞭なものとすることができるとともに、筆跡の耐光性を十分なものとすることができる。
また、染料としては、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料などの水溶性染料を使用することができる。このうち、直接染料としては、カラーインデックスナンバーで示すと、カラーインデックス(以降、C.I.と略称)Direct Black 17、同19、同38、同154、C.I. Direct Yellow 1、同4、同12、同29、C.I. Direct Orange 6、同8、同26、同29、C.I. Direct Red 1、同2、同4、同13、C.I. Direct Blue 2、同6、同15、同78、同87などが挙げられる。また、酸性染料としては、C.I. Acid Black 2、同31、C.I. Acid Yellow 3、同17、同23、同73、C.I. Acid Orange 10、C.I. Acid Red 13、同14、同18、同27、同52、同73、同87、同92、C.I. Acid Blue 1、同9、同74、同90などが挙げられる。また、塩基性染料としては、C.I. Basic Yellow 2、同3、C.I. Basic Red 1、同2、同8、同12、C.I. Basic Violet 1、同3、同10、C.I. Basic Blue 5、同9、同26などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
水性成分における着色剤の含有量は、インキ組成物全量を基準として、好ましくは0.5〜10.0質量%であり、より好ましくは1.0〜5.0質量%である。この含有量が0.5質量%未満であると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、筆記線の明瞭さが損なわれる傾向があり、10.0質量%を超えると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、書き味及びインキ組成物の乳化安定性が損なわれる傾向がある。
水性成分中に着色剤として顔料を含有させる場合、水性成分は、顔料分散剤を更に含むことが好ましい。このような顔料分散剤としては、上記顔料を分散可能なものであれば特に制限されず、例えば、アクリル酸又はそのエステル、メタクリル酸又はそのエステル、マレイン酸又はそのエステルなどの1種を、単独で重合させるか、或いは、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどと共重合させた樹脂を、アルカリ金属やアミンで中和して水溶性にした水溶性樹脂や、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも水溶性樹脂が好ましく、具体的にはスチレン−マレイン酸共重合体が特に好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。顔料分散剤を用いることにより、経時的に顔料の沈降や凝集が生じることを抑制することができ、良好な経時安定性を得ることができる。
顔料分散剤の含有量は、インキ組成物全量を基準として0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.5〜3.0質量%であることがより好ましい。この含有量が0.1質量%未満であると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、経時的に顔料の沈降や凝集が生じやすくなる傾向があり、5.0質量%を超えると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、インキ組成物の粘度が高くなり書き味が低下する傾向がある。
また、水性成分は、潤滑剤を更に含むことが好ましい。このような潤滑剤としては、例えば、ポリアルキレングリコール誘導体、脂肪酸塩、ノニオン系界面活性剤、リン酸エステルなどが挙げられる。リン酸エステルは、油性成分に含まれるものと同一でも異なっていてもよい。これらの中でも脂肪酸塩が好ましく、具体的にはオレイン酸カリウムが特に好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。潤滑剤を用いることにより、顔料等によるボール受け座の摩耗を一層抑制することができる。
潤滑剤の含有量は、インキ組成物全量を基準として、好ましくは0.1〜5.0質量%である。この含有量が0.1質量%未満であると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、ボール受け座の摩耗抑制効果が低下する傾向があり、5.0質量%を超えると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、インキ組成物の経時安定性が低下する傾向がある。
また、水性成分は、上記材料以外に更に他の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤としては、例えば、防錆剤、防菌剤、保湿剤、pH調整剤等が挙げられる。
上記防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、リン酸オクチル、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、エチレンジアミン四酢酸塩などを使用することができる。
上記防菌剤としては、例えば、ペンタクロロフェノールナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2,4−チアゾリルベズイミダゾール、パラオキシ安息香酸エステルなどを使用することができる。
上記保湿剤としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素などを使用することができる。
上記pH調整剤としては、例えば、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどを使用することができる。
本実施形態のインキ組成物は、上述した油性成分と水性成分とを混合することにより、油性成分中に水性成分からなる水滴が分散されたW/O型エマルションインキとして得ることができる。
本発明のインキ組成物において、油性成分と水性成分との含有量の比(油性成分:水性成分)は、質量比で5:5〜8:2の範囲内であることが好ましく、6:4〜7:3の範囲内であることがより好ましい。油性成分の比率が上記範囲よりも大きくなると、通常の油性インキに近い状態となって書き味が低下するとともに、インキの泣き出しや紙面へのボタ等が生じやすくなる傾向がある。一方、油性成分の比率が上記範囲よりも小さくなると、経時安定性が低下するともに、筆跡のかすれが生じやすくなる傾向がある。
油性成分と水性成分との混合は、例えば、ディゾルバー、ヘンシェルミキサー、ホモミキサーなどの攪拌機を用いて行うことができる。攪拌条件は特に制限されないが、例えばディゾルバー攪拌機を用いて、回転数100〜1000rpmで30〜180分間攪拌することにより、水性成分からなる水滴が油性成分中に均一に分散されたW/O型エマルションインキを形成することができる。
また、本実施形態のインキ組成物は、コーンCP40を用い、温度25℃、せん断速度0.75s−1の条件で測定される粘度が、300〜2500mPa・sであることが好ましく、500〜1500mPa・sであることがより好ましい。粘度が300mPa・s未満であると、静置状態におけるインキ組成物の漏れ(ダレ)が生じやすくなり、経時安定性が低下する傾向にあり、2500mPa・sを超えると、書き味が低下する傾向にある。
次に、上述の筆記具用W/O型エマルションインキ組成物を用いた筆記具の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の筆記具の一実施形態であるボールペンを示す模式断面図である。図1に示すボールペン100において、筆記具用W/O型エマルションインキ組成物12はインキ収容管14内に充填されている。インキ収容管14の一端側にはボールペンチップ20が取り付けられている。このボールペンチップ20は、ボールホルダー24及びボール26で構成され、ジョイント22によりインキ収容管14の一端に固定されている。また、インキ収容管14内には、インキ組成物12のボールペンチップ20側と反対側に、インキ組成物12と隣接した状態で逆流防止体16が収容されている。ここで、逆流防止体16は、インキ組成物12との間に隙間が生じないように配置される。
また、ボールペン100においては、インキ収容管14、ボールペンチップ20、インキ組成物12及び逆流防止体16により中芯10が構成されており、この中芯10が本体軸18に装着され、更に本体軸18の後端(ボールペンチップ20と反対側の一端)に通気孔を有する尾栓28が取り付けられている。
以下、ボールペン100の構成要素について説明するが、インキ組成物12以外の構成には、ボールペンに用いられる一般的な構成を適用することができる。
インキ収容管14としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ナイロン、ポリアセタール、ポリカーボネートなどの樹脂、又は、金属からなるものを使用することができる。また、インキ収容管14の形状は特に制限されず、例えば、円筒状等の形状とすることができる。
逆流防止体16は、インキ組成物を流出させない機能(流出防止性)や、インキ組成物をドライアップさせない機能(密栓性)等を有するものであり、こうした機能を有する公知の逆流防止体を特に制限なく使用することができる。かかる逆流防止体16は、例えば、基油と増稠剤とを含んで構成されている。基油としては、鉱油、ポリブテン、シリコン油、グリセリン、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。また、増稠剤としては、金属石鹸系増稠剤、有機系増稠剤、無機系増稠剤等が挙げられる。
本体軸18及び尾栓28としては、例えば、ポリプロピレン等のプラスチック材料からなるものを使用することができる。
ジョイント22としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ナイロン、ポリアセタール、ポリカーボネート等からなるものを使用することができる。
ボールペンチップ20におけるジョイント22、ボールホルダー24及びボール26としては、通常のボールペンに用いられているものを使用することができる。また、ボール26の直径は0.3〜1.2mmであることが好ましい。
本実施形態のボールペンは、上述の特徴を有するインキ組成物を用いているため、初筆かすれやボテの発生を十分に抑制することができる。また、ボール26やボールホルダー24のボール受け座部分の磨耗を十分に抑制することができる。
上述した構成を有する本実施形態のボールペン100は、通常のボールペン等の製造方法により製造することができる。
以上、ボールペンの好適な実施形態について説明したが、ボールペンは上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態のボールペンは、本体軸18を有していなくてもよく、インキ収容管14がそのまま本体軸となっていてもよい。更に、本実施形態に係るボールペンは、インキ収容管14中のインキ組成物12及び逆流防止体16が後端(ボールペンチップ20と反対側の一端)側から加圧された状態となるような加圧機構を有するものであってもよい。また、本実施形態に係るボールペンは、逆流防止体16を有していなくてもよい。
また、本発明の筆記具は、ボールペンに限定されるものではなく、例えば筆ペンを含むマーキングペン類、又はインキ排出部に弁機構を用いた筆記具であってもよい。本発明のW/O型エマルションインキ組成物は、上述のような種々の筆記具に用いることができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(比較例1〜5、実施例1〜8,10〜12、参考例9,13〜15
油性成分及び水性成分について、それぞれ別々に、下記表1及び表2に示す材料を同表に示す配合量(質量部)で配合し、往復回転式攪拌機で混合することにより調製した。なお、表1及び表2中の水性ゲルインキの組成を下記表3に示す。
次に、ディゾルバー攪拌機を用いて、油性成分を攪拌しながら水性成分を加え、室温(25℃)、回転数300rpmの条件で1時間攪拌することにより、油性成分中に水性成分からなる水滴が分散された比較例1〜5、実施例1〜8,10〜12及び参考例9,13〜15のW/O型エマルションインキ組成物を得た。
Figure 0005495592
Figure 0005495592
Figure 0005495592
表1及び表2中の各材料の詳細は以下の通りである。
・ポリビニルピロリドン K−90(商品名):日本触媒社製、曵糸性付与剤。
・VALIFAST VIOLET 1704(商品名):オリヱント化学工業社製、油溶性染料。
・VALIFAST YELLOW 1109(商品名):オリヱント化学工業社製、油溶性染料。
・SPILIT BLACK 61F(商品名):オリヱント化学工業社製、油溶性染料。
・フォスファノール RL−210(商品名):東邦化学工業株式会社製、リン酸エステル系界面活性剤、酸価;95、pH;5.4、HLB;5.4。
・フォスファノール ML−220(商品名):東邦化学工業株式会社製、リン酸エステル系界面活性剤、酸価;150、pH;1.9、HLB;12.5。
・フォスファノール RS−410(商品名):東邦化学工業株式会社製、リン酸エステル系界面活性剤、酸価;105、pH;1.3、HLB;9.0。
・フォスファノール GB−520(商品名):東邦化学工業株式会社製、リン酸エステル系界面活性剤。
・ひまし油:工1(商品名)、伊藤製油社製。
・ピスタチオナッツ油:日光ケミカルズ社製。
・グランベアビシニカ油:日光ケミカルズ社製。
・アルガン油:日光ケミカルズ社製。
表3中の各材料の詳細は以下の通りである。
・キサンタンガム:モナートガムGS(商品名)、大日本製薬社製。
・防錆剤:コロミンCB(商品名)、キレスト社製。
・防菌剤:スラウト99N(商品名)、日本エンバイロケミカルズ社製。
・オレイン酸カリウム:ノンサールOK−1(商品名)、日本油脂社製。
・顔料分散剤:SMA1000H Solution(商品名)、SARTOMER社製。
[初筆かすれの評価]
先端にボールペンチップ(ボール径:0.7mm)を備えた図1に示すものと同様のボールペンのポリプロピレン製の円筒状インキ収容管(内径4.0mm)に、各実施例比較例及び参考例で得られたインキ組成物を収容した。次に、そのインキ収容管内のボールペンチップとは反対側(インキ組成物の後端面側)に、上記インキ組成物と隣接するように、精製鉱油95質量%と増稠剤(金属石鹸、エラストマー)5質量%とからなる逆流防止体を充填した。そして、ボールペンの本体軸の後端に尾栓を取り付け、ボールペンを作製した。なお、各実施例比較例及び参考例ごとに、8本ずつボールペンを作製した。
作製したボールペンについて、一度フリーハンドで筆記した後、室温(25℃)にて1時間静置した。その後、筆記試験機を用いて筆記角度70°、荷重100g、筆記速度4m/分の条件で直線を筆記した。書き始めの筆記線を目視にて観察し、かすれて筆記された筆記線の距離(mm)を測定した。8本のボールペンについて同様の測定を行い、それぞれの測定距離の平均値を初筆かすれとした。結果を表4及び表5に示す。
[ボテの評価]
上述の「初筆かすれの評価」と同様にして、ボールペンを作製した。作製したボールペンを筆記試験機に取り付けて、筆記角度70°、荷重200g、筆記速度4m/分の条件でループを筆記した。筆記線を目視にて観察してボテ(ボタ)の有無を評価した。ボテが殆どなく気にならないもの「A」、「A」よりもボテが大きいものを「B」と評価した。結果を表4及び表5に示す。
[書き味の評価]
上述の「初筆かすれの評価」と同様にして、ボールペンを作製した。作製したボールペンを用いてフリーハンドで筆記し、書き味を以下の評価基準に基づいて評価した。その結果を表4及び表5に示す。
A:滑らかである。
B:滑らかさが十分でなく、重い。
[乳化安定性の評価]
調製したインキ組成物を、光学顕微鏡(倍率:200倍)で観察して、分散状態を観察することによって乳化安定性を評価した。光学顕微鏡による観察は、水性ゲルインキの作製直後と室温(25℃)で2ヶ月間保管後の2回行い、以下の評価基準に基づいて評価した。
A:油性成分中に水性成分が均一に分散しており、分散状態が良好である。
B:油性成分中における水性成分の分散状態がやや不均一である。
C:油性成分中における水性成分の分散状態に不均一な部分が見られる。
Figure 0005495592
Figure 0005495592
植物油とリン酸エステルとを含む実施例1〜8,10〜12及び参考例9,13〜15は、比較例1〜5よりも初筆かすれを抑制することができた。実施例10〜実施例12の評価結果によれば、リン酸エステルの含有量が高くなると、ボテの発生量がやや多くなる傾向にあった。ひまし油の含有量が約9質量%と高い参考例9のインキ組成物の場合、調製直後である初期評価において、わずかに分離相が認められた。また、インキ組成物の調製から2ヶ月経過後には、水性成分が合体して大きな液滴が形成されていた。
リン酸エステルの含有量が約2.8質量%と高い実施例12のインキ組成物では、調製直後である初期評価において、水性成分の液滴の大きさにばらつきが見られた。インキ組成物の調製から2ヶ月経過後には、水性成分が合体して大きな液滴が形成されていた。植物油としてピスタチオナッツ油、グランベアビシニカ油及びアルガン油をそれぞれ用いた参考例13〜15のインキ組成物では、調製直後である初期評価において、水性成分の液滴がわずかに凝集していた。また、室温で2ヶ月保管した後にも同様に液滴の凝集が見られた。

10…中芯、12…インキ組成物、14…インキ収容管、16…逆流防止体、18…本体軸、20…ボールペンチップ、22…ジョイント、24…ボールホルダー、26…ボール、28…尾栓、100…ボールペン。

Claims (4)

  1. 油性成分中に水性成分が分散された筆記具用W/O型エマルションインキ組成物であって、
    前記油性成分が植物油及びリン酸エステルを含有し、前記油性成分及び前記水性成分の少なくとも一方が着色剤を含有し、
    前記植物油の含有量が0.9〜5質量%であり、
    前記植物油がひまし油を含む、筆記具用W/O型エマルションインキ組成物。
  2. 前記油性成分に含有される前記着色剤が油溶性染料を含む、請求項記載の筆記具用W/O型エマルションインキ組成物。
  3. 前記リン酸エステルの含有量が0.04〜3質量%である、請求項1又は2に記載の筆記具用W/O型エマルションインキ組成物。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の筆記具用W/O型エマルションインキ組成物を有する筆記具。
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