JP5491258B2 - 酸化物半導体の成膜方法 - Google Patents
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また、近年における表示装置のめざましい発展に伴い、液晶表示装置(LCD)のみならず、エレクトロルミネッセンス表示装置(EL)や、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の各種の表示装置において、表示素子に駆動電圧を印加して表示装置を駆動させるスイッチング素子として、薄膜トランジスタ(TFT)が多用されている。
例えば、特許文献1及び特許文献2は、酸化亜鉛を高温で結晶化し、薄膜トランジスタを構成する方法を開示する。また、特許文献3では、キャリア密度を積極的に低濃度に制御するために正2価元素をドーパントとして利用する試みがなされ、これによって得られた半導体膜を薄膜トランジスタに応用した例が報告されている(特許文献4)。さらに、薄膜トランジスタを得る工程で、非晶質酸化物膜をパターニングした後に、結晶化を行い、高移動度を実現した例が報告されている(特許文献5)。
また、特許文献3及び4の酸化物半導体は、酸化インジウムを主成分とした酸化物半導体であり、化学的安定性に優れるが、キャリア濃度のバラツキが大きく、信頼性の高いトランジスタを得ることが困難であった。
特許文献6では、高移動度の結晶性酸化物トランジスタを得るために、水分圧について言及しているが、これはRFスパッタの場合であり、DCスパッタ、あるいは周波数10MHz以下のACスパッタの場合には、必ずしも好適な条件ではなかった。
1.系内の水分圧3×10−4〜5×10−2Paで、スパッタリングターゲットをDCスパッタリングして成膜体を成膜し、前記成膜体を結晶化する酸化物半導体の成膜方法。
2.系内の水分圧3×10−4〜5×10−2Paで、スパッタリングターゲットを周波数10MHz以下の高周波スパッタリングで成膜体を成膜し、前記成膜体を結晶化する酸化物半導体の成膜方法。
3.前記結晶化をアニーリングにより行なう1又は2に記載の酸化物半導体の成膜方法。
4.前記酸化物半導体が、In2O3からなる、又はIn2O3及びインジウム元素以外の正3価以下の原子価を有する添加元素1種以上の酸化物からなり、インジウム元素及び前記添加元素の原子比(全添加元素)/(In+全添加元素)が0.0001以上0.2以下である1〜3のいずれかに記載の酸化物半導体の成膜方法。
5.前記正3価以下の原子価を有する添加元素が、Mg,Al,Ca,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Sr,Ba及び希土類元素から選ばれる1種以上である4に記載の酸化物半導体の成膜方法。
また、本発明の酸化物半導体の成膜方法では、系内の水分圧3×10−4〜5×10−2Paで、スパッタリングターゲットを周波数10MHz以下の高周波スパッタリングで成膜体を成膜し、当該成膜体を結晶化する。
系内の水分圧が3×10−4Pa未満の場合、薄膜内に取り込まれる水の量が少ないため、成膜直後に構造を有することでその後の結晶化過程が阻害され、効率的にキャリア濃度が減らせないおそれがある。一方、5×10−2Pa超の場合、緻密性や密着性に劣るため、移動度が小さくなるおそれがある。
DCスパッタリング、周波数1MHz以下の交流スパッタリング及びパルススパッタリングは、系内のプラズマが広がりにくいため、成膜体の損傷を抑制することができる。加えて、DCスパッタリングは、大面積に成膜でき且つ成膜速度の速いので工業化の面からも好ましい。
尚、DCスパッタリングの場合、結晶化工程前に結晶化が進行しやすくなるが、本発明では積極的に水を導入することで、完全な非晶質成膜体を得ることが可能とする。
到達圧力が3×10−4Pa超の場合、雰囲気ガス中のH2O以外の炭素を含む不純物元素の影響で、被成膜用基体と酸化物薄膜の密着性が低下するおそれがある。
尚、上記到達圧力とは、アルゴン、酸素、水等を導入する前の真空度をいい、スパッタ圧力とは、アルゴン、酸素、水等を導入後のスパッタ開始時の圧力をいう。
雰囲気ガス中の酸素分圧が40×10−3Pa超の場合、得られる半導体の移動度が低下したり、キャリア濃度が不安定となったりするおそれがある。これは成膜時の雰囲気ガス中の酸素が多すぎると、結晶格子間に取り込まれる酸素が多くなり、散乱の原因となったり、容易に膜中から酸素が離脱し不安定化したりするためと推定される。
また、ボトムゲート構造のトランジスタの基板であれば、SiO2,SiNx,SiNxOy,Al2O3,Ta2O3,HfO2等の無機物;ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルフェノール、PMA、フッ素系ポリマー等の有機物を用いることができる。
S−T距離を短くすることで成膜速度を速めることができ、工業化に適しているが、近すぎる場合、成膜体がプラズマによるダメージを受けるおそれがある。
基板温度が200℃超の場合、成膜直後(as−depo)の時点で微結晶層が生じ、後処理の結晶化を阻害するおそれがある。
尚、大面積を成膜する場合、膜質の均一性を持たせるため、基板を固定したフォルダーは回転させる、マグネットを動かしエロージョン範囲を広げる等の方法をとることが好ましい。
焼結ターゲットのバルク抵抗は、0.001〜1000mΩcmであることが好ましく、0.01〜100mΩcmであることがより好ましい。また、焼結ターゲットが正3価以下の元素を含む場合、当該ドープしている正3価以下の元素は、焼結ターゲットを製造する時に酸化物或いは金属粉末の状態で加えることができる。
焼結ターゲットの焼結密度は、通常70%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上である。
結晶化の方法としては、ランプアニール装置(LA;Lamp Annealer)、急速熱アニール装置(RTA;Rapid Thermal Annealer)、ゴールドイメージ炉等による熱処理が挙げられる。酸化物半導体が吸収可能な波長を用いたエキシマレーザーやYAGレーザーによっても結晶化が可能であるが、好ましくはアニーリングである。
アニール温度が150℃未満の場合、結晶化しないおそれがある。アニール温度が500℃を超えると使用可能な基板に著しい制限を受けるおそれがある。
熱処理時間はアニール温度に依存するが、2時間以内が好ましい。2時間を越えると生産性が低下するおそれがある。
熱処理の温度が150℃未満の場合、処理効果が発現しなかったり、処理時間がかかりすぎたりするおそれがあり、500℃超の場合、基板が変形するおそれがある。
また、熱処理時間が0.5分未満の場合、内部まで伝熱する時間が不足し、処理が不十分となるおそれがあり、12000分超の場合、処理装置が大きくなり工業的に使用できなかったり、処理中に基板が破損・変形したりするおそれがある。
尚、正3価以下の原子価を有する元素とは、イオン状態での価数として、正3価以下を取りうる元素をいう。
(全添加元素)/(In+全添加元素)が0.0001未満の場合、キャリア数が制御できないおそれがある。一方、(全添加元素)/(In+全添加元素)が0.2超の場合、結晶化温度が高くなって結晶化が困難になり、キャリア濃度が高くなったり、ホール移動度が低下したりするおそれがある。また、当該酸化物半導体を備えるトランジスタを駆動させた際に閾値電圧が変動したり、駆動が不安定となったりするおそれがある。
本発明の酸化物半導体は、これら添加元素を1種又は2種以上含むことができる
例えば、本発明の酸化物半導体は、通常、n型領域で用いられるが、P型Si系半導体、P型酸化物半導体、P型有機半導体等の種々のP型半導体と組合せてPN接合型トランジスタ等の各種の半導体デバイスに利用することができる。また、TFTを論理回路、メモリ回路、差動増幅回路等各種の集積回路にも適用できる。さらに、電界効果型トランジスタ以外にも静電誘起型トランジスタ、ショットキー障壁型トランジスタ、ショットキーダイオード、抵抗素子に適応できる。
ここで、ボトムゲート構成のTFTとは、通常、ゲート電極を設置(成膜)した後に半導体層を設置(成膜)する構成のことである。
電界効果型トランジスタである薄膜トランジスタ1はボトムゲート型であり、ガラス基板
60上に、ゲート電極30が形成され、その上にゲート絶縁膜50が形成されている。ゲート絶縁膜50上には、酸化物半導体膜40が形成され、さらにその上にドレイン電極10とソース電極20とが離間して形成されている。
例えば、ITO,IZO,ZnO,SnO2等の透明電極や、Al,Ag,Cu,Cr,Ni,Mo,Au,Ti,Ta等の金属電極、又はこれらを含む合金の金属電極を用いることができる。
ゲート絶縁膜50の材料としては、例えばSiO2,SiNx,Al2O3,Ta2O5,TiO2,MgO,ZrO2,CeO2,K2O,Li2O,Na2O,Rb2O,Sc2O3,Y2O3,HfO3,CaHfO3,PbTi3,BaTa2O6,SrTiO3,AlN等の化合物を用いることができる。これらのなかでも、好ましくはSiO2,SiNx,Al2O3,Y2O3,HfO3,CaHfO3であり、より好ましくはSiO2,SiNx,Y2O3,HfO3,CaHfO3である。
尚、上記の酸化物の酸素数は、必ずしも化学量論比と一致していなくともよい(例えば、SiO2でもSiOxでもよい)。
酸化物半導体40は、好ましくはホール測定で求めたキャリア密度が1×10+19cm−3未満であり、より好ましくは5×10+17cm−3未満、さらに好ましくは5×10+16cm−3未満である。キャリア密度が1×10+19cm−3以上の場合、漏れ電流が大きくなるおそれがある。
尚、キャリア密度の下限としては、酸化物半導体40を備える素子の用途にもよるが、例えば10+15/cm−3以上とするのが好ましい。
比抵抗が10−1Ωcm未満の場合、電気が容易に流れ半導体薄膜として機能しないおそれがある。一方、比抵抗が108Ωcm超の場合、強い電界をかけないと半導体として機能しないおそれがある。
膜厚が0.5nm未満の場合、工業的に均一に成膜することが難しいおそれがある。一方、膜厚が500nm超の場合、成膜時間が長くなり工業的に採用できないおそれがある。
電界効果移動度が1cm2/Vs未満の場合、スイッチング速度が遅くなるおそれがある。
閾値電圧は、通常は0.01〜5V、好ましくは0.05〜3V、より好ましくは0.1〜2V、さらに好ましくは0.2〜1Vである。5Vより大きいと消費電力が大きくなるおそれがあり、0.01Vより小さいと変動によりノーマリーオンとなるおそれがある。
[薄膜トランジスタ及びホール効果測定用素子の作製]
マグネトロンスパッタリング装置に、2インチのIn2O3ターゲットを装着し、基板A1として厚み100nmの熱酸化膜付シリコンウェハー及び基板B1としてスライドガラス(コーニング社製♯1737)をそれぞれ装着した。DCマグネトロンスパッタリング法により、3mm□のメタルマスクを使用して、下記の条件で基板A1及び基板B1上にそれぞれ膜厚20nmの非晶質膜を成膜した。非晶質膜を形成した基板を大気中で300℃で1時間アニーリングし、非晶質膜をそれぞれ結晶化して酸化物半導体膜を形成した。
基板温度:25℃
到達圧力:1×10−4Pa
雰囲気ガス:Ar98%、H2O2%
スパッタ圧力(全圧):6×10−1Pa
水分圧:6.0×10−4Pa
投入電力:DC100W
S−T距離:170mm
基板A1からはW/L=1000/200μmの酸化物半導体素子A1が得られ、基板B1からは10mm□のホール効果測定用素子B1が得られた。
基板温度:25℃
到達圧力:1×10−4Pa
雰囲気ガス:Ar100%
スパッタ圧力(全圧):6×10−1Pa
投入電力:100W
成膜時間:4分間
S−T距離:170mm
酸化物半導体素子A1をケースレーの4200SCSにセットし、Vds=10V及びVgs=−20〜20Vの条件で伝達特性を評価した。結果を表1に示す。
ホール効果測定用素子B1を東陽テクニカのRSITEST8300にセットし、室温でホール効果を評価した。結果を表1に示す。
酸化物半導体膜の成膜に用いるターゲット、並びにそのスパッタ条件及びアニーリング条件を、表1〜表6に記載の組成を有するターゲット及び条件に変更したほかは参考例1と同様にして薄膜トランジスタ及びホール効果測定用素子を作製し、評価した。結果を表1〜6に示す。
尚、実施例16のパルスDCでは、duty比20%(On状態80%)の矩形波を800kHzに設定した。また、実施例21ではターゲットとしてΦ4インチ、厚さ5mmのIn2O3:Nd2O3=93:7を2枚使用し、ACスパッタ装置に装着して、周波数10MHzでスパッタリングを行なった。
図3は、縦軸にドレイン電流を、横軸にゲート電圧を取った図面であり、この図面から素子のトランジスタの特性が分かる。
この図から分かるように、比較例1では水分量が少ないため、結晶化後のキャリア濃度が多く、Off電流が高くなってしまっている。比較例2では、水分量が多すぎるため、緻密性に劣る半導体膜となり、On電流が小さくなっており、移動度が小さくなった。一方、参考例1〜3は適切な水導入量であり、良好なOn−Off特性を示していることが分かる。
この図から、水分圧が3e−4Paから5e−2Paの間ではS値が小さく、水分圧をこの範囲に設定して製造したトランジスタは、立ち上がりの急峻なトランジスタであることが分かる。
[チャネルを微細加工した薄膜トランジスタの製造]
マグネトロンスパッタリング装置に、2インチのIn2O3及びZnOからなるターゲット(原子比In2O3:ZnO=95:5)を装着し、厚み100nmの熱酸化膜付シリコンウェハーを装着した。DCマグネトロンスパッタリング法により、3mm□のメタルマスクを使用して、下記の条件で膜厚50nmの非晶質膜を成膜した。
基板温度:25℃
到達圧力:1×10−4Pa
雰囲気ガス:Ar98%、H2O2%
スパッタ圧力(全圧):6×10−1Pa
水分圧:6.0×10−4Pa
投入電力:DC100W
S−T距離:170mm
得られた薄膜トランジスタについて、参考例1と同様にして評価した。結果を表7に示す。
10 ドレイン電極
11 第1導電層
12 第2導電層
20 ソース電極
21 第1導電層
22 第2導電層
30 ゲート電極
31 第1導電層
32 第2導電層
40 酸化物半導体
50 絶縁膜
60 ガラス基板
Claims (4)
- 系内の水分圧1×10 −3 〜5×10−2Paで、スパッタリングターゲットをDCスパッタリングして成膜体を成膜し、
前記成膜体を結晶化する、酸化物半導体の成膜方法であって、
前記酸化物半導体が、In 2 O 3 及びインジウム元素以外の正3価以下の原子価を有する添加元素1種以上の酸化物からなり、インジウム元素及び前記添加元素の原子比(全添加元素)/(In+全添加元素)が0.08以上0.2以下であり、
前記正3価以下の原子価を有する添加元素が、Al,Fe,Ga,Ba及び希土類元素から選ばれる1種以上である、酸化物半導体の成膜方法。 - 系内の水分圧1×10 −3 〜5×10−2Paで、スパッタリングターゲットを周波数10MHz以下の高周波スパッタリングで成膜体を成膜し、
前記成膜体を結晶化する、酸化物半導体の成膜方法であって、
前記酸化物半導体が、In 2 O 3 及びインジウム元素以外の正3価以下の原子価を有する添加元素1種以上の酸化物からなり、インジウム元素及び前記添加元素の原子比(全添加元素)/(In+全添加元素)が0.08以上0.2以下であり、
前記正3価以下の原子価を有する添加元素が、Al,Fe,Ga,Ba及び希土類元素から選ばれる1種以上である、酸化物半導体の成膜方法。 - 前記結晶化をアニーリングにより行なう請求項1又は2に記載の酸化物半導体の成膜方法。
- 前記希土類元素が、Y,Sm及びNdから選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物半導体の成膜方法。
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