JP5485212B2 - 多孔質炭素電極基材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献2に記載の方法では、ガス拡散層の表面はある程度清浄にできるが、電解質膜との接合工程など、ガス拡散層が圧縮された際には新たに炭素粉が発生してしまい、それらが電解質膜に突き刺さってしまって大きな短絡電流が発生してしまうという問題があった。
また、特許文献3に記載の方法を用いても同様にして、後工程の圧縮により炭素粉が発生してしまうという問題が生じる傾向にある。
本発明は、前記のような問題点を克服し、燃料電池に用いた際に短絡や反応ガスのクロスリークが生じにくい、基材表面において結着が不十分な炭素短繊維や樹脂炭化物が十分に除去された多孔質炭素電極基材およびその製造方法を提供することを目的とする。
〔1〕以下の(1)〜(3)の工程を含む、多孔質炭素電極基材の製造方法。
(1)炭素短繊維が炭素により結着された炭素シートを製造する工程。
(2)前記炭素シートを、炭素シートの少なくとも一方の面に弾性を有するシートを配置し、連続的な加圧手段を用いて線圧5kN/m〜30kN/mで加圧する工程。
(3)次いで、炭素シートに付着した炭素粉を連続的に除去する工程。
〔2〕加圧手段を、少なくとも一対のロールを備えた連続式プレス装置とし、前記一対のロールの少なくとも一方が金属製のロールである、〔1〕記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
〔3〕 加圧手段を、少なくとも一対のロールを備えた連続式プレス装置とし、前記一対のロールの少なくとも一方が弾性ロールである、〔1〕又は〔2〕記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
〔4〕 連続式プレス装置が、少なくとも一対のエンドレスベルトを備えた連続式プレス装置である、〔3〕記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
〔5〕 除去が、ブラッシング及び吸引による方法、又は超音波洗浄である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
本発明は、以下の(1)〜(3)の工程を含む、多孔質炭素電極基材の製造方法、である。
(1)炭素短繊維が炭素により結着された炭素シートを製造する工程。
(2)前記炭素シートを、炭素シートの少なくとも一方の面に弾性を有するシートを配置し、連続的な加圧手段を用いて線圧5kN/m〜30kN/mで加圧する工程。
(3)次いで、炭素シートに付着した炭素粉を連続的に除去する工程。
炭素短繊維の平均長は、2〜12mmが好ましく、3〜9mmがさらに好ましい。この範囲内であると抄紙時の分散性と多孔質炭素電極基材としての機械的強度が高くなる。
また、ポリビニルアルコールは電極基材を製造する最終段階の炭素化過程で大部分が分解・揮発してしまい、空孔を形成する。この空孔の存在により、水及びガスの透過性が向上するため好ましい。
本発明では、上記の連続式プレス装置を使用し、線圧で加圧する。具体的には線圧5kN/m〜30kN/mで加圧する。これにより均一に炭素シートに圧力を付与することができ、面圧を付与するプレス方法で生じるおそれがある炭素シートの厚みムラに起因した炭素シートにかかる圧力ムラを回避することができる。
ポリエチレンシートと重ね50g/cm2の力で圧着した際に、剥離したポリエチレンシートに付着した炭素短繊維の数が0.1本〜10本/cm2であり、炭素短繊維の数が付着した炭化物の数よりも少ない多孔質炭素電極基材。
つまり、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数が少なく、このような多孔質炭素電極基材を用いた燃料電池は短絡や反応ガスのクロスリークが生じにくく、耐久性が非常に高い。
〔リーク電流の測定方法〕
パーフルオロスルホン酸系の高分子電解質膜(膜厚:30μm)の片面に、得られた多孔質炭素電極基材が接するように配置し、それを金メッキした銅板電極ではさみ、3.5MPaまで加圧した後、デジタルマルチメーターTR6487(アドバンテスト社製)を使用し、高分子電解質膜へのダメージによるリーク電流を測定した。なお、このときの電極間の電位差は0.6Vで行った。
多孔質炭素電極基材の上面にPE膜を配置し、さらにPE膜の上におもりを乗せることで、多孔質炭素電極基材に対し50g/cm2の圧力を付与した。1分間圧力をかけた後、おもり、PE膜を多孔質炭素電極基材上からはずして、PE膜に付着した炭素短繊維の数をマイクロスコープにより観察した。観察は各サンプルごとに5回行い、1cm2あたりのその平均値を炭素短繊維の付着本数とした。
実施例で使用した弾性を有するシートである離型紙およびテフロン(登録商標)
シートの圧縮弾性係数を測定した。圧縮試験機として島津マイクロオートMST−I((株)島津製作所製)を用いた。直径25mmのサンプルに試験力を加え、圧縮ひずみに対する応力の挙動を測定した。応力範囲0〜3.0MPaにおける圧縮ひずみに対する応力変化を圧縮弾性係数として記録した。正確な弾性係数を決定するため、圧縮試験を5回行い、その平均値を各サンプルの弾性係数とした。本発明に用いた離型紙の弾性係数は1.59GPa、テフロン(登録商標)シートの弾性係数は2.79GPaであった。
炭素短繊維として、長さ3mmにカットした平均直径7μmのPAN系炭素短繊維100質量部と、長さ3mmのポリビニルアルコール(PVA)繊維(商品名:VBP105−1、クラレ株式会社製)を11質量部とを水中で分散し、連続的に金網上に抄造した後、乾燥して炭素繊維紙を得た。
この炭素繊維紙100質量部に、フェノール樹脂(商品名:フェノライトJ−325、大日本インキ化学株式会社製)のメタノール溶液を含浸させ、室温でメタノールを十分に乾燥させ、フェノール樹脂の不揮発分を84質量部付着させたフェノール樹脂含浸炭素シートを得た。
このフェノール樹脂含浸炭素シートを2枚重ねて、250℃の温度で8×104N/mの線力のロールプレスを行い、フェノール樹脂を硬化させた。その後、不活性ガス(窒素)雰囲気中、1900℃で連続的に炭素化して、厚みが220μm、嵩密度が、0.26g/cm2の炭素短繊維の抄紙体からなる炭素シートを得た。
超音波洗浄処理の時間を3分間とした以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が2.5mA/cm2と低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り2.6本と少なかった。
超音波洗浄処理の時間を5分間とした以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が4.8mA/cm2と低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り3.1本と少なかった。
超音波洗浄を行う代わりに多孔質炭素電極基材の両面から回転ブラシと70Wの吸引仕事率で集塵することで除去を行ったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が2.0mA/cm2と低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り3.2本と少なかった。
超音波洗浄を行う代わりに多孔質炭素電極基材の両面から回転ブラシと300Wの吸引仕事率で集塵することで除去を行ったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が2.2mA/cm2と低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り1.8本と少なかった。
超音波洗浄を行う代わりに多孔質炭素電極基材の両面から回転ブラシと500Wの吸引仕事率で集塵することで除去を行ったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が3.8mA/cm2と低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り2.2本と少なかった。
炭素シートのプレスに用いる1対のプレスロールのうち、一方をゴム製のロール、もう一方を金属ロールとしたことおよび、離型紙の代わりにテフロン(登録商標)シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が3.0mA/cm2と低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り1.7本と少なかった。
炭素シートのプレスに用いる1対のプレスロールのうち、一方をゴム製のロール、もう一方を金属ロールとしたこと以外は実施例4と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が3.0mA/cm2と低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り0.6本と少なかった。
炭素シートのプレスを1対のステンレスベルトを備えた連続プレス装置によりおこなったことおよび、離型紙の代わりにテフロン(登録商標)シート(商品名:スカイブドテープ、中興化成工業株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が2.3mA/cm2と低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り2.6本と少なかった。
炭素シートのプレスを1対のステンレスベルトを備えた連続プレス装置によりおこなったこと以外は実施例4と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が2.0mA/cm2と低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り3.4本と少なかった。
プレス時の線圧を5.8kN/mとしたこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が4.4mA/cm2と低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り3.3本と少なかった。
プレス時の線圧を11.7kN/mとしたこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が4.3mA/cm2と低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り3.9本と少なかった。
プレス時の線圧を20.4kN/mとしたこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が4.5mA/cm2と低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り3.6本と少なかった。
プレス処理において炭素シートの片面のみに離型紙を用いたこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が8.9mA/cm2と低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り8.8本と少なかった。
プレス処理において炭素シートの片面のみに離型紙を用いたこと以外は実施例8と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が6.3mA/cm2と低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り5.6本と少なかった。
プレス処理において炭素シートの片面のみに離型紙を用いたこと以外は実施例9と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が8.2mA/cm2と低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り8.1本と少なかった。
プレス処理および除去を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が13.8mA/cm2高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り13.2本と多かった。
プレス処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が11.3mA/cm2と高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り11.2本と多かった。
プレス処理を施さなかったこと以外は実施例4と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が10.5mA/cm2と高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り11.5本と多かった。
除去を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が10.8mA/cm2と高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り11.8本と多かった。
プレス処理において離型紙を用いなかったこと以外は実施例4と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が10.3mA/cm2と高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り12.6本と多かった。
プレス処理において離型紙を用いなかったこと以外は実施例10と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が10.1mA/cm2と高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り11.2本と多かった。
炭素シートを1対の平板を備えるバッチプレス装置を通過させ、間欠的にプレス処理をおこなったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が10.2mA/cm2と高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り12.6本と多かった。
炭素シートを1対の平板を備えるバッチプレス装置を通過させ、間欠的にプレス処理をおこなったことおよび除去方法として気体の吹き付け処理をしながら吸引処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が10.3mA/cm2と高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm2当り11.6本と多かった。
Claims (5)
- 以下の(1)〜(3)の工程を含む、多孔質炭素電極基材の製造方法。
(1)炭素短繊維が炭素により結着された炭素シートを製造する工程。
(2)前記炭素シートを、炭素シートの少なくとも一方の面に弾性を有するシートを配置し、連続的な加圧手段を用いて線圧5kN/m〜30kN/mで加圧する工程。
(3)次いで、炭素シートに付着した炭素粉を連続的に除去する工程。 - 加圧手段を、少なくとも一対のロールを備えた連続式プレス装置とし、前記一対のロールの少なくとも一方が金属製のロールである請求項1記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
- 加圧手段を、少なくとも一対のロールを備えた連続式プレス装置とし、前記一対のロールの少なくとも一方が弾性ロールである、請求項1又は2記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
- 連続式プレス装置が、少なくとも一対のエンドレスベルトを備えた連続式プレス装置である、請求項3記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
- 除去が、ブラッシング及び吸引による方法、又は超音波洗浄である、請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
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