以下、本発明の一実施形態を、図1〜図9を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[構成]
図1には、一実施形態に係る放送受信装置であるFM受信装置100の概略的な構成がブロック図にて示されている。この図1に示されるように、FM受信装置100は、アンテナ110と、RF処理ユニット120とを備えている。また、FM受信装置100は、適応フィルタ手段としての適応フィルタユニット130と、遅延手段としての遅延ユニット140と、再生処理ユニット150と、アナログ処理ユニット160とを備えている。さらに、FM受信装置100は、スピーカユニット170と、操作入力ユニット180と、制御ユニット190とを備えている。
上記のアンテナ110は、放送波を受信する。アンテナ110による受信結果は、受信信号RFSとして、RF処理ユニット120へ送られる。
上記のRF処理ユニット120は、制御ユニット190から送られた選局指令CSLに従って、選局すべき希望局の信号を受信信号RFSから抽出する選局処理を行い、所定の中間周波数帯の成分を有する中間周波信号IFDとして、適応フィルタユニット130及び遅延ユニット140へ送る。このRF処理ユニット120は、入力フィルタと、高周波増幅器(RF−AMP:Radio Frequency-Amplifier)と、バンドパスフィルタ(以下、「RFフィルタ」とも呼ぶ)とを備えている。また、RF処理ユニット120は、ミキサ(混合器)と、中間周波フィルタ(以下、「IFフィルタ」とも呼ぶ)と、AD(Analogue to Digital)変換器と、局部発振回路(OSC)とを備えている。
ここで、入力フィルタは、アンテナ110から送られた受信信号RFSの低周波成分を遮断するハイパスフィルタである。高周波増幅器は、入力フィルタを通過した信号を増幅する。RFフィルタは、高周波増幅器から出力された信号のうち、高周波帯の信号を選択的に通過させる。ミキサは、RFフィルタを通過した信号と、局部発振回路から供給された局部発振信号とを混合する。
IFフィルタは、ミキサから出力された信号のうち、予め定められた中間周波数範囲の信号を選択して通過させる。AD変換器は、IFフィルタを通過した信号をデジタル信号に変換する。この変換結果は、中間周波信号IFDとして、適応フィルタユニット130及び遅延ユニット140へ送られる。
なお、局部発振回路は、電圧制御等により発振周波数の制御が可能な発振器等を備えて構成される。この局部発振回路は、制御ユニット190から送られた選局指令CSLに従って、選局すべき希望局に対応する周波数の局部発振信号を生成し、ミキサへ供給する。
上記の適応フィルタユニット130は、RF処理ユニット120から送られた中間周波信号IFDを受ける。そして、適応フィルタユニット130は、制御ユニット190から指定されたフィルタ制御FLCに従って、いわゆるマルチパスの発生による受信信号の歪みの除去等を行うためのフィルタリング処理を行う。適応フィルタユニット130によるフィルタリング処理結果は、信号FLDとして、再生処理ユニット150へ送られる。なお、適応フィルタユニット130の構成については、後述する。
上記の遅延ユニット140は、RF処理ユニット120から送られた中間周波信号IFDを受ける。そして、遅延ユニット140は、上述の適応フィルタユニット130のフィルタリング処理による遅延に対応する時間だけ、中間周波信号IFDを遅延させる。遅延ユニット140による遅延結果は、信号DLDとして、再生処理ユニット150及び制御ユニット190へ送られる。
上記の再生処理ユニット150は、適応フィルタユニット130から送られた信号FLD、及び、遅延ユニット140から送られた信号DLDを受ける。そして、再生処理ユニット150は、信号FLD,DLDに対して検波処理を施し、検波結果を、検波信号DTD1,DTD2として、制御ユニット190へ送る。
また、再生処理ユニット150は、信号FLDの検波結果に対してステレオ復調処理を施す。このステレオ復調結果が、信号DMDとして、アナログ処理ユニット160へ送られる。
なお、再生処理ユニット150の構成については、後述する。
上記のアナログ処理ユニット160は、再生処理ユニット150から送られた信号DMDを受ける。そして、アナログ処理ユニット160は、制御ユニット190による制御のもとで、出力音声信号AOSを生成し、スピーカユニット170へ送る。
かかる機能を有するアナログ処理ユニット160は、DA(Digital to Analogue)変換部と、音量調整部と、パワー増幅部とを備えて構成されている。ここで、DA変換部は、再生処理ユニット150から送られた信号DMDを受ける。そして、DA変換部は、信号DMDをアナログ信号に変換する。なお、DA変換部は、信号DMDに含まれるレフトチャンネル(以下、「Lチャンネル」)信号及びライトチャンネル(以下、「Rチャンネル」)信号に対応して、互いに同様に構成された2個のDA(Digital to Analogue)変換器を備えている。DA変換部によるアナログ変換結果は音量調整部へ送られる。
また、音量調整部は、DA変換部から送られたLチャンネル及びRチャンネルのアナログ変換結果信号を受ける。そして、音量調整部は、制御ユニット190からの音量調整指令VLCに従って、Lチャンネル及びRチャンネルのそれぞれに対応するアナログ変換結果信号に対して音量調整処理を施す。なお、音量調整部は、本実施形態では、Lチャンネル及びRチャンネルに対応して、互いに同様に構成された2個の電子ボリューム素子等を備えて構成されている。音量調整部による調整結果の信号は、パワー増幅部へ送られる。
また、パワー増幅部は、音量調整部から送られたLチャンネル及びRチャンネルの音量調整結果の信号を受ける。そして、パワー増幅部は、音量調整結果の信号をパワー増幅する。なお、パワー増幅部は、Lチャンネル及びRチャンネルに対応して、互いに同様に構成された2個のパワー増幅器を備えている。パワー増幅部による増幅結果である出力音声信号AOSは、スピーカユニット170へ送られる。
上記のスピーカユニット170は、Lチャンネルスピーカ及びRチャンネルスピーカを備えている。このスピーカユニット170は、アナログ処理ユニット160から送られた出力音声信号AOSに従って、音声を再生出力する。
上記の操作入力ユニット180は、FM受信装置100の本体部に設けられたキー部、あるいはキー部を備えるリモート入力装置等により構成される。ここで、本体部に設けられたキー部としては、不図示の表示ユニットに設けられたタッチパネルを用いることができる。また、キー部を有する構成に代えて、音声入力する構成を採用することもできる。操作入力ユニット180への操作入力結果は、操作入力データIPDとして制御ユニット190へ送られる。
制御ユニット190は、FM受信装置100の動作を統括制御する。この制御ユニット190の構成については、後述する。
次に、上記の適応フィルタユニット130の構成について説明する。この適応フィルタユニット130は、本実施形態では、IIR(Infinite Impulse Response)型のフィルタとして構成され、図2に示されるように、加算器212と、2N個の遅延器2131〜2312Nと、(2N+1)個の係数倍器2140〜2142Nと、加算器215、係数更新部216とを備えている。
上記の加算器212は、RF処理ユニット120から送られた中間周波信号IFD、及び、加算器215から送られた信号YFを受ける。そして、加算器212は、中間周波信号IFDと信号YFとを加算し、信号X0(T)を生成する。こうして生成された信号X0(T)は、遅延器2131及び係数倍器2140へ送られる
上記の遅延器213j(j=1〜2N)のそれぞれは、入力した信号Xj-1(T)を単位遅延時間τだけ遅延させ、信号Xj(T)として出力する。この結果、信号Xj(T)と信号X0(T)との関係は、次の(1)式で表される。
Xj(T)=X0(T−j・τ) …(1)
なお、本実施形態では、遅延器213jのそれぞれは、周期τの不図示の基準クロックに同期して信号Xj-1(T)をサンプリングして出力する。このため、単位遅延時間τの間、サンプリング結果が遅延器213jに保持されて、出力されるようになっている。ここで、単位遅延時間τは、信号周期の1/4となっている。
遅延器213jにより生成された信号Xj(T)は、係数倍器214jへ向けて送られる。ここで、遅延器213Nにより生成された信号XN(T)(=Y(T))は、信号FLDとして、再生処理ユニット150へも送られる。なお、係数倍器2140へは、上述したように、信号X0(T)が送られるようになっている。
上記の係数倍器214m(m=0〜2N)のそれぞれは、信号Xm(T)、及び、係数更新部216からのタップ係数Km(T)を受ける。そして、係数倍器214mは、信号Xm(T)とタップ係数Km(T)とを乗算する。この乗算の結果は、加算器215へ送られる。
上記の加算器215は、係数倍器2140〜2142Nによる乗算結果[X0(T)・K0(T)]〜[X2N(T)・K2N(T)]を受ける。そして、加算器215は、次の(2)式により、信号YF(T)を算出する。
YF(T)=X0(T)・K0(T)+…+X2N(T)・K2N(T) …(2)
こうして算出された信号YF(T)は、加算器212へ送られる。
上記の係数更新部216は、加算器212から送られた信号X0(T)、遅延器2131〜2132Nから送られた信号X1(T)〜X2N(T)を受ける。そして、係数更新部216は、制御ユニット190から送られたフィルタ制御FLCに従って、CMA(Constant Modulus Algorithm)アルゴリズムを使用してタップ係数K0(T)〜K2N(T)を算出する。こうして算出されたタップ係数Km(T)(m=0〜2N)は、係数倍器214mへ送られる。
ここで、係数更新部216は、次の(3)〜(5)式により、逐次、タップ係数K0(T)〜K2N(T)を算出する。
ERR(T)=([Y(T)]2+[Y(T−τ)]2)1/2−VTH …(3)
Km(T−τ)=Km(T)−α・ERR(T)・Pm(T) …(4)
Pm(T)=Xm(T)・Y(T)+Xm(T−τ)・Y(T―τ) …(5)
(3)式における値VTHは所定の収束値であり、実験、シミュレーション、経験等により、予め定められる。また、(4)式における値αは、収束速度を調整するパラメータ値であり、制御ユニット190により指定される。ここで、値αが大きくなるほど、収束速度が速くなるようになっている。
次いで、上記の再生処理ユニット150について説明する。この再生処理ユニット150は、図3に示されるように、第1検波手段としての検波部1511と、第2検波手段としての検波部1512と、ステレオ復調部153とを備えている。
上記の検波部1511は、適応フィルタユニット130から送られた信号FLDを受ける。そして、検波部1511は、信号FLDに対して、所定方式でデジタル検波処理を施してコンポジット信号である検波信号DTD1を生成する。こうして生成された検波信号DTD1は、ステレオ復調部153及び制御ユニット190へ送られる。
上記の検波部1512は、遅延ユニット140から送られた信号DLDを受ける。そして、検波部1512は、信号DLDに対して、検波部1511の場合と同様の所定方式でデジタル検波処理を施してコンポジット信号である検波信号DTD2を生成する。こうして生成された検波信号DTD2は、制御ユニット190へ送られる。
上記のステレオ復調部153は、検波部1511から送られた検波信号DTD1を受ける。そして、ステレオ復調部153は、セパレーション処理を含めたステレオ復調処理を検波信号DTD1に対して施し、信号DMDを生成する。生成された信号DMDは、アナログ処理ユニット160へ送られる。
次に、上記の制御ユニット190について説明する。この制御ユニット190は、図4に示されるように、第1検出手段としてのレベル検出部221と、第2検出手段の一部としての振幅変調(AM)成分抽出部222と、第2検出手段の一部としてのレベル検出部223とを備えている。また、制御ユニット190は、BPF部2261,2262と、レベル検出部2271,2272とを備えている。さらに、制御ユニット190は、決定手段としての処理制御部229を備えている。
上記のレベル検出部221は、遅延ユニット140から送られた信号DLDを受ける。そして、レベル検出部221は、信号DLDのレベルを検出する。このレベル検出部221による検出結果は、選局されている希望局の放送波の電界強度を反映したものとなっている。レベル検出部221による検出結果は、受信信号レベルSLVとして、処理制御部229へ送られる。
上記のAM成分抽出部222は、遅延ユニット140から送られた信号DLDを受ける。そして、AM成分抽出部222は、信号DLDのAM変調成分を抽出する。かかるAM変調成分は、マルチパス現象の影響により発生するものである。AM成分抽出部222による抽出結果は、信号MPDとして、レベル検出部223へ送られる。
上記のレベル検出部223は、AM成分抽出部222から送られた信号MPDを受ける。そして、レベル検出部223は、信号MPDのレベルを検出する。このレベル検出部223による検出結果は、マルチパスフェージングの影響度を反映したものとなっている。レベル検出部223による検出結果は、マルチパスレベルMPLとして、処理制御部229へ送られる。
上記のBPF部2261は、再生処理ユニット150から送られた検波信号DTD1を受ける。そして、BPF部2261は、所定周波数F1,F2のそれぞれを中心周波数とする狭帯域(帯域幅:ΔF)の成分を通過させる。BPF部2261を通過した信号PD11,PD12は、レベル検出部2271へ送られる。
上記のBPF部2262は、再生処理ユニット150から送られた検波信号DTD2を受ける。そして、BPF部2262は、上述のBPF部2261と同様に、所定周波数F1,F2のそれぞれを中心周波数とする狭帯域(帯域幅:ΔF)の成分を通過させる。BPF部2262を通過した信号PD21,PD22は、レベル検出部2272へ送られる。
上記のレベル検出部2271は、BPF部2261から送られた信号PD11,PD12を受ける。そして、レベル検出部2271は、信号PD11,PD12のそれぞれのレベルを検出する。レベル検出部2271よる検出結果は、検出レベルLV11,LV12として、処理制御部229へ送られる。
上記のレベル検出部2272は、BPF部2262から送られた信号PD21,PD22を受ける。そして、レベル検出部2272は、信号PD21,PD22のそれぞれのレベルを検出する。レベル検出部2272よる検出結果は、検出レベルLV21,LV22として、処理制御部229へ送られる。
ここで、BPF部226j(j=1,2)及びレベル検出部227jの構成について説明する。
BPF部226jは、図5に示されるように、個別BPF部226j1と、個別BPF部226j2とを備えている。個別BPF部226j1は、再生処理ユニット150から送られた検波信号DTDjにおける所定周波数F1を中心周波数とする帯域幅ΔFの帯域(以下、「第1帯域」と呼ぶ)の成分を通過させ、信号PDj1としてレベル検出部227jへ送る。また、個別BPF部226j2は、再生処理ユニット150から送られた検波信号DTDjにおける所定周波数F2を中心周波数とする帯域幅ΔFの帯域(以下、「第2帯域」と呼ぶ)の成分を通過させ、信号PDj2としてレベル検出部227jへ送る。
なお、個別BPF部226j1の特性が、図6に示されている。また、個別BPF部226j2の特性が、図7に示されている。
レベル検出部227jは、図5に示されるように、個別レベル検出部227j1と、個別レベル検出部227j2とを備えている。個別レベル検出部227j1は、個別BPF部226j1から送られた信号PDj1のレベルを検出し、検出レベルLVj1として、処理制御部229へ送る。また、個別レベル検出部227j2は、個別BPF部226j2から送られた信号PDj2のレベルを検出し、検出レベルLVj2として、処理制御部229へ送る。
上記の処理制御部229は、様々な処理を行うことにより、FM受信装置100の機能を実現させる。この処理制御部229は、操作入力ユニット180からの操作入力データIPDを解析する。そして、操作入力データIPDの内容が選局指定であった場合には、制御ユニット190は、指定された希望局に対応する選局指令CSLを生成して、RF処理ユニット120へ送る。また、操作入力データIPDの内容が、音量調整態様を含む音量調整指定であった場合には、処理制御部229は、指定された音量調整態様に対応する音量調整指令VLCを生成して、アナログ処理ユニット160へ送る(図4参照)。
また、処理制御部229は、レベル検出部221,223,2271,2272から送られた信号レベルSLV、マルチパスレベルMPL、検出レベルLV11,LV12,LV21,LV22を受ける。そして、処理制御部229は、これらのレベルSLV,MPL,LV11,LV12,LV21,LV22に基づいて、適用フィルタユニット130のフィルタリング動作態様を決定する。決定されたフィルタリング動作態様は、フィルタ制御FLCとして、適応フィルタユニット130へ送られる(図4参照)。なお、処理制御部229によるフィルタリング動作態様の決定処理の詳細については、後述する。
[動作]
以上のようにして構成されたFM受信装置100の動作について、処理制御部229による適応フィルタユニット130の制御処理に主に着目して説明する。
前提として、操作入力ユニット180には既に利用者により選局指定が入力されており、指定された希望局に対応する選局指令CSLが、RF処理ユニット120へ送られているものとする。また、操作入力ユニット180には既に利用者により音量調整指定が入力されており、指定された音量調整態様に対応する音量調整指令VLCが、アナログ処理ユニット160へ送られているものとする(図1参照)。
こうした状態で、アンテナ110で放送波を受信すると、受信信号RFSが、アンテナ110からRF処理ユニット120へ送られる。そして、RF処理ユニット120において、選局すべき希望局の信号が中間周波数帯の信号に変換された後、AD変換が行われる。このAD変換の結果が、中間周波信号IFDとして、適応フィルタユニット130及び遅延ユニット140へ送られる(図1参照)。
中間周波信号IFDを受けた適応フィルタユニット130では、上述したようにして適応フィルタリング処理が施される。そして、適応フィルタユニット130は、適応フィルタリング処理の処理結果を、信号FLDとして、再生処理ユニット150へ送る(図1参照)。
また、中間周波信号IFDを受けた遅延ユニット140は、中間周波信号IFDに対して、適応フィルタユニット130における適応フィルタリング処理による処理遅延時間である時間Nτの遅延処理を施す。そして、遅延ユニット140は、遅延処理結果を、信号DLDとして、再生処理ユニット150及び制御ユニット190へ送る(図1参照)。
再生処理ユニット150では、検波部1511が信号FLDを受ける。信号FLDを受けた検波部1511は、信号FLDに対して、所定方式でデジタル検波処理を施して検波信号DTD1を生成する。そして、検波部1511は、検波信号DTD1を、スレレオ復調部153及び制御ユニット190へ送る(図3参照)。
また、再生処理ユニット150では、検波部1512が信号DLDを受ける。信号DLDを受けた検波部1512は、信号DLDに対して、所定方式でデジタル検波処理を施して検波信号DTD2を生成する。そして、検波部1512は、検波信号DTD2を、制御ユニット190へ送る(図3参照)。
制御ユニット190では、BPF部2261が、検波部1511から送られた検波信号DTD1を受ける。そして、BPF部2261は、検波信号DTD1における上述した第1及び第2帯域の成分を選択的に通過させ、信号PD11,PD12として、レベル検出部2271へ送る。引き続き、レベル検出部2271が、信号PD11,PD12のそれぞれのレベルを検出し、検出レベルLV11,LV12として、処理制御部229へ送る(図4参照)。
また、制御ユニット190では、BPF部2262が、検波部1512から送られた検波信号DTD2を受ける。そして、BPF部2262は、検波信号DTD2における上述した第1及び第2帯域の成分を選択的に通過させ、信号PD21,PD22として、レベル検出部2272へ送る。引き続き、レベル検出部2272が、信号PD21,PD22のそれぞれのレベルを検出し、検出レベルLV21,LV22として、処理制御部229へ送る(図4参照)。
さらに、制御ユニット190では、上述したレベル検出と並行して、レベル検出部221が、遅延ユニット140から送られた信号DLDのレベルを検出し、受信信号レベルSLVとして、処理制御部229へ送る。また、制御ユニット190では、AM成分抽出部222が、遅延ユニット140から送られた信号DLDのAM変調成分を抽出する。そして、レベル検出部223が、信号MPDのレベルを検出し、マルチパスレベルMPLとして、処理制御部229へ送る(図4参照)。
こうして検出されたレベルSLV,MPL,LV11,LV12,LV21,LV22に基づいて、処理制御部229が、適応フィルタユニット130によるフィルタリング処理態様を決定する。かかる決定に際しては、図8に示されるように、まず、ステップS11において、処理制御部229が、検出されたレベルSLV,MPL,LV11,LV12,LV21,LV22を取得する。引き続き、ステップS12において、処理制御部229が、次の(6),(7)式によりレベル比R1,R2を算出する。
R1=LV11/LV21 …(6)
R2=LV12/LV22 …(7)
次に、ステップS13において、処理制御部229が、レベル比R1,R2、受信信号レベルSLV及びマルチパスレベルMPLに基づいて、中間周波信号IFDにおける希望局の放送波以外に対応する成分、すなわち、妨害信号の混入率βの推定を行う。ここで、混入率βは0〜1の範囲のいずれかの値と推定される。例えば、レベル比R1,R2の双方の値が、受信信号レベルSLV及びマルチパスレベルMPLを考慮した場合に、妨害信号成分が存在しないといえる値であった場合には、処理制御部229は、混入率βを「0」と推定する。また、レベル比R1,R2の双方の値が、受信信号レベルSLV及びマルチパスレベルMPLを考慮した場合に、適用フィルタユニット130が、希望局の放送波に対応する信号成分ではなく妨害信号の成分に追従した動作を行っているといえる場合には、混入率βを「1/2より大きい」と推定する。
次いで、ステップS14において、処理制御部229が、推定された混入率βに基づいて、パラメータαの値を決定する。そして、処理制御部229は、決定された値αを指定したフィルタ制御FLCを適応フィルタユニット130へ送ることにより、適応フィルタユニット130に対するパラメータαの値の指定を行う。この結果、適応フィルタユニット130は、指定された値を用いて、適応フィルタリング処理を行う。
なお、混入率βの変化に応じた値αの変化の様子が、図9に示されている。この図9においては、決定された値αが、予め定められた最大値αMAXと最小値αMINと間で変化する様子が太実線で示されている。かかる表記は、後述する図10においても同様となっている。
上記の最大値αMAX及び最小値αMINは、混入率βに対応した適応フィルタリング処理の収束速度を実現するとの観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
次に、ステップS15において、処理制御部229が、決定された値αが最小値αMINに一致するか否かを判定することにより、適応フィルタユニット130の適応フィルタリング処理が妨害信号に追従することになりそうか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS15:N)には、処理はステップS11へ戻る。
ステップS15における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS15:Y)には、処理はステップS16へ進む。このステップS16では、処理制御部229が、タップ係数Km(T)(m=0〜2N)の初期化指定したフィルタ制御FLCを適応フィルタユニット130へ送る。この結果、適応フィルタユニット130は、妨害信号成分への追従性がクリアされた状態からの適応フィルタリング処理が行われる。
次いで、ステップS17において、処理制御部229が、ステップS16で行われたタップ係数Km(T)の初期化から所定時間PT1が経過した否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS17:N)には、ステップS17の処理が繰り返される。そして、所定時間PT1が経過し、ステップS17における判定の結果が肯定的となると(ステップS17:Y)、処理はステップS18へ進む。
なお、所定時間PT1は、利用者における聴感上の違和感の防止の観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
ステップS18では、処理制御部229が、パラメータαの値の最小値αMINから最大値αMAXへの復旧処理を行う。なお、本実施形態では、所定時間PT2を更に経過した時点で、処理制御部229が、パラメータαの値として最大値αMAXを指定したフィルタ制御FLCを適応フィルタユニット130へ送ることにより、適応フィルタユニット130におけるパラメータαの値の最大値αMAXへの復旧を行うようになっている。
なお、所定時間PT2は、利用者における聴感上の違和感の防止の観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
ステップS18の処理が終了すると、処理はステップS11へ戻る。以後、上記のステップS11〜S18の処理が繰り返され、処理制御部229による適応フィルタユニット130の制御が実行される。こうした処理制御部229による制御のもとで実行される適応フィルタユニット130による適応フィルタリング処理の結果の検波結果である検波信号DTD1が、ステレオ復調部153へ送られる(図3参照)。
検波信号DTD1を受けたステレオ復調部153は、セパレーション処理を含めたステレオ復調処理を、検波信号DTD1に対して施す。そして、ステレオ復調部153は、ステレオ復調処理の結果を、信号DMDとして、アナログ処理ユニット160へ送る(図3参照)。
再生処理ユニット150からの信号DMDを受けたアナログ処理ユニット160では、DA変換部、音量調整部及びパワー増幅部が、順次、処理を行い、出力音声信号AOSを生成し、スピーカユニット170へ送る(図1参照)。そして、スピーカユニット170が、アナログ処理ユニット160からの出力音声信号AOSに従って、音声を再生出力する。
以上説明したように、本実施形態では、適応フィルタユニット130による中間周波信号IFDに対する適応フィルタリング処理結果を検波した検波信号DTD1と、遅延ユニット140による中間周波信号IFDに対する遅延処理結果を検波した検波信号DTD2とを、制御ユニット190が比較する。引き続き、制御ユニット190は、中間周波信号IFDにおける妨害信号の混入率を推定する。そして、制御ユニット190は、推定された混入率に基づいて、適応フィルタユニット130の動作を制御する。
ここで、制御ユニット190は、混入率が大きくなるにつれて、適応フィルタリング処理の収束速度が遅くなるように制御を行う。そして、適応フィルタユニット130が、希望局の放送波に対応する信号成分ではなく妨害信号の成分に追従した動作を行うようになると判断した場合には、制御ユニット190は、適応フィルタリング処理の収束速度が最も遅くなる指定を行うとともに、妨害信号成分への追従性をクリアするためのタップ係数Km(T)(m=0〜2N)の初期化指定を、適応フィルタユニット130に対して行う。
こうした制御ユニット190による制御のもとで、適応フィルタリング処理が施された結果の検波信号DTD1に対応する音声がスピーカユニット170から出力される。したがって、本実施形態によれば、希望局を選局しているのにもかかわらず、突然に隣接局の放送に対応する音声に切り換わる等の現象の発生による聴取者における聴感上の違和感の発生の抑制と、良質な再生音声の出力との調和を図ることができる。
また、本実施形態では、妨害信号の混入率の推定に際して、中間周波信号IFDの信号レベル及び中間周波信号IFDにおけるマルチパス現象の影響度を考慮している。このため、妨害信号の混入率を合理的に推定することができる。
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、上記の実施形態では、中間周波数信号IFDのレベルを検出し、中間周波数信号IFDへの妨害信号の混入率の推定の際に考慮することにした。これに対し、中間周波数信号IFDに対する自動利得制御(AGC)を行うようにすれば、当該混入率の推定に際しては、中間周波数信号IFDのレベルの検出を省略することもできる。なお、この場合には、妨害信号が存在せず、かつ、マルチパス現象も発生していないときには、レベル比R1,R2の双方の値は、「略1」となる。
また、上記の実施形態では、検波信号DTD1,DTD2について、第1及び第2帯域の2つの帯域成分のレベルを比較するようにしたが、比較する成分レベルの帯域数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。なお、比較する成分レベルの帯域数が多くなるほど、混入率βの推定精度が高くなる。
また、上記の実施形態では、検波信号DTD1,DTD2について、第1及び第2帯域の2つの帯域成分のレベルを比較するようにしたが、所定長の期間において、各成分が所定レベルを超える回数同士を比較するようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、同一アンテナで受信した放送波に対応する信号を適応フィルタユニット及び遅延ユニットへ供給するようにしたが、適応フィルタユニットへ供給する信号と、遅延ユニットへ供給する信号とを、互いに異なるアンテナで受信した放送波に対応する信号としてもよい。
また、上記の実施形態では、図9に示されるように混入率βが0〜1/2の範囲で、値αが線形に変化するようにした。これに対し、図10に示されるように、混入率βの変化に対して、値αが非線形で変化するようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、図8のステップS18におけるパラメータαの値の復旧を、所定時間PT2を経過した時点で一挙に行うことにしたが、所定時間PT2を経過するまでの期間中に段階的に行うようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、適応フィルタユニットをIIR型のフィルタとして構成したが、FIR(Finite Impulse Response)型のフィルタと構成してもよいし、IIR型のフィルタとFIR型のフィルタとを中間周波信号のレベル検出結果等に応じて切換可能な構成としてもよい。
また、上記の実施形態では、適応フィルタユニットで採用する適応フィルタリング処理のアルゴリズムをCMAとしたが、他の適応フィルタリング処理のアルゴリズムを採用してもよい。
また、上記の実施形態では、FM受信装置に本発明を適用したが、他の種類の放送受信装置であっても本発明を適用できるのは、勿論である・
なお、上記の実施形態における適応フィルタユニット130、再生処理ユニット150及び制御ユニット190を、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等を備えた演算手段としてのコンピュータとして構成し、予め用意されたプログラムを当該コンピュータで実行することにより、上記の実施形態における処理の一部又は全部を実行するようにしてもよい。このプログラムはハードディスク、CD−ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、当該コンピュータによって記録媒体から読み出されて実行される。また、このプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配信の形態で取得されるようにしてもよい。