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JP5472055B2 - 熱伝導性シリコーングリース組成物 - Google Patents

熱伝導性シリコーングリース組成物 Download PDF

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JP5472055B2 JP2010258690A JP2010258690A JP5472055B2 JP 5472055 B2 JP5472055 B2 JP 5472055B2 JP 2010258690 A JP2010258690 A JP 2010258690A JP 2010258690 A JP2010258690 A JP 2010258690A JP 5472055 B2 JP5472055 B2 JP 5472055B2
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Description

本発明は、耐ボイド性に優れた熱伝導性シリコーングリース組成物に関する。
プリント基板上に実装されるIC等の電子部品は使用時の発熱による温度上昇によって性能が低下したり破損したりすることがあるため、従来、電子部品と放熱部材の間に熱伝導性の良い放熱シートや放熱グリースが用いられている。放熱シートは手軽に取り付けることができる利点があるが、IC、放熱部材の表面は一見平滑に見えてもミクロ的に観れば凸凹があるので、実際はそれらの被着面に放熱シートを確実に密着させることはできず、空気層が残存する結果、放熱効果が期待通りに発揮されない不都合がある。それを解決するために放熱シートの表面に粘着層等を設けて密着性を向上させたものも提案されているが十分な結果が得られていない。放熱グリースはICや放熱部材等の表面の凹凸に影響されることなくそれら被着面に良好に追随し密着性をもたらすが、他の部品を汚したり長時間使用するとオイルの流出等の問題が起こりがちである。そのため、液状シリコーンゴム組成物をポッティング剤や接着剤として用いる方法が提案されている(特許文献1:特開昭61−157569号公報、特許文献2:特開平8−208993号公報)。
ところで、一般的に、IC等の電子部品は、オルガニック基板上にマウントされているが、シリコンチップやエポキシ樹脂等、使用されている部材の熱膨張係数の違いから温度変化により基板が反ってしまうことがある。この場合、基板中央部に対して周辺部では数十ミクロン程度も反ってしまうこともある。しかし、IC等の電子部品上に配置されるアルミダイキャスト等の放熱部材は、構造体が大きく高強度であるため反ることはない。したがって、IC等の電子部品と放熱部材との間に挟まれる放熱材料は基板の反りに追随できないと、剥離してしまい、その結果、熱抵抗が上昇し所望する放熱性能が得られなくなる。そのため、使用される放熱材料は反りに追随できる柔軟性が必要となる。しかし、上記特許文献1,2に記載の組成物は、硬化後の硬化物が非常に硬いことからIC動作時に起こる基板の反りに追随できずに基材等から剥がれてしまうことがある。そうすると、所望する放熱性能が得られないため、経時で熱抵抗が上昇する等の問題点があった。これらを解決するために、緩い架橋構造をもった放熱グリース等が提案された(特許文献3:特許第3541390号公報、特許文献4:特許第4130091号公報)。しかし、これら提案された技術においても、高湿度下で急激に温度を上昇させると放熱材料の中に大きなボイドが発生してしまう等の欠点があった。
特開昭61−157569号公報 特開平8−208993号公報 特許第3541390号公報 特許第4130091号公報
そこで、本発明は、上記欠点を克服し、耐ボイド性に優れた熱伝導性シリコーングリース組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アルケニル基を有する特定のオルガノポリシロキサンを2種類混合させることにより、ボイドの発生を効果的に防止し得ることを知見し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記に示す熱伝導性シリコーングリース組成物を提供する。
(A)下記平均組成式(1)
a1 bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rはアルケニル基、R1は脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R1の一部は全置換基(R+R1)に対して4〜6mol%のフェニル基であり、aは0.0001〜0.2、bは1.7〜2.2の正数であり、a+bは1.9〜2.4である。)
で表され、25℃における粘度が100〜2,000mPa・sである1分子中にアルケニル基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン、
(B)下記平均組成式(2)
2 c3 dSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R2はアルケニル基、R3は脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R3の一部は全置換基(R2+R3)に対して4〜6mol%のフェニル基であり、cは0.0001〜0.2、dは1.7〜2.2の正数であり、c+dは1.9〜2.4である。)
で表され、25℃における粘度が2,001〜10,000mPa・sである1分子中にアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン;(A)及び(B)成分の合計量に対して3〜20質量%、
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン;(C)成分由来のSi−H基の個数が(A)と(B)成分由来のアルケニル基の合計個数の0.5〜3.0倍になる量、
(D)下記一般式(3)
Figure 0005472055

(式中、R4は炭素数1〜6のアルキル基、R5は互いに同一又は異種の炭素数1〜18の1価炭化水素基、eは5〜120の整数である。)
で表される片末端3官能の加水分解性オルガノポリシロキサン;(A)及び(B)成分のオルガノポリシロキサンの合計100質量部に対して50〜150質量部、
(E)熱伝導性フィラー;(A)及び(B)成分のオルガノポリシロキサンの合計100質量部に対して500〜3,500質量部、
(F)白金系触媒;硬化有効量
を含有する25℃の粘度が400〜1,000Pa・sであることを特徴とする熱伝導性シリコーングリース組成物。
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物によれば、放熱部材と発熱性電子部品に介在されるシリコーングリース組成物の硬化物は良好な熱伝導性を有するばかりでなく、柔軟性を有するためIC等の電子部品の反りに対する追随性が良好で、密着性が維持されるので放熱性能が維持される。また高湿度下で急激に温度を掛けてもボイドが発生することはなく、耐久性が高い。
以下に本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物を詳述する。
−(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン−
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、本発明組成物の主剤(ベースポリマー)として使用されるものであり、下記平均組成式(1)で表される。
a1 bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rはアルケニル基、R1は脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、また、R1の一部は全置換基(R+R1)に対して4〜6mol%のフェニル基であり、aは0.0001〜0.2、bは1.7〜2.2の正数であり、a+bは1.9〜2.4である。)
ここで、前記Rのアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基等が例示されるが、合成のし易さ、コストの面からビニル基が好ましい。上記(A)成分において、アルケニル基は1分子中に少なくとも1個有するものである。
1としては、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基やこれらの基の水素原子の1個又はそれ以上がハロゲン原子等に置換された基などが挙げられ、メチル基、フェニル基等が好適に使用され、全置換基中のフェニル基含有量は4〜6mol%である。フェニル基含有量が4mol%未満の場合、−60℃以下の耐寒性が劣り、6mol%を超える場合、コスト的に不利となる。また、aは0.0001〜0.2、bは1.7〜2.2の正数であり、a+bは1.9〜2.4である。
なお、この(A)成分のオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が、100mPa・sより小さいと得られる熱伝導性シリコーングリース組成物の柔軟性が損なわれ、2,000mPa・sより大きいと得られる熱伝導性シリコーングリース組成物の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難となるため、100〜2,000mPa・sの範囲であり、好ましくは500〜1,500mPa・sである。(A)成分では1分子中に少なくとも1個のアルケニル基が必要である。なお、オルガノポリシロキサンの粘度は回転粘度計B型粘度計((株)東京計器社製)により測定した値である(以下同じ)。
−(B)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン−
(B)成分のオルガノポリシロキサンは、本発明組成物の主剤(ベースポリマー)の一部として使用されるものであり、下記平均組成式(2)で表される。
2 c3 dSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R2はアルケニル基、R3は脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、また、R3の一部は全置換基(R2+R3)に対して、4〜6mol%のフェニル基であり、cは0.0001〜0.2、dは1.7〜2.2の正数であり、c+dは1.9〜2.4である。)
ここで、前記R2のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基等が例示されるが、合成のし易さ、コストの面からビニル基が好ましい。上記(B)成分において、アルケニル基は1分子中に少なくとも2個有するものである。R3としては、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基やこれらの基の水素原子の1個又はそれ以上がハロゲン原子等に置換された基などが挙げられ、メチル基、フェニル基等が好適に使用され、全置換基中のフェニル基含有量は4〜6mol%である。フェニル基含有量が4mol%未満の場合、−60℃以下の耐寒性が劣り、6mol%を超える場合、コスト的に不利となる。また、cは0.0001〜0.2、dは1.7〜2.2の正数であり、c+dは1.9〜2.4である。
なお、この(B)成分のオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が、2,001mPa・sより小さいと得られる熱伝導性シリコーングリース組成物の柔軟性が損なわれ、10,000mPa・sより大きいと得られる熱伝導性シリコーングリース組成物の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難となるため、2,001〜10,000mPa・sの範囲であり、好ましくは3,000〜7,000mPa・sである。また、耐ボイド性を向上させるため、(B)成分では1分子中に少なくとも2個のアルケニル基が必要である。
(B)成分は、(A)成分と(B)成分の合計量に対して、3質量%より少ないと耐ボイド性が充分ではなく、20質量%より多いと得られる熱伝導性シリコーングリース組成物の粘度が高くなりすぎるため取り扱い性が悪くなるので、3〜20質量%の範囲であり、好ましくは3〜10質量%の範囲である。
(B)成分のオルガノポリシロキサンは、公知の方法で製造することができる。例えば、上記各単位に対応するクロルシラン類を必要なモル比で混合し、共加水分解及び縮合に供する方法、あるいは、上記各単位の構造を有するポリシロキサン及び/又は環状シロキサン化合物の平衡化反応によって製造される。
−(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン−
(C)成分は、分子鎖末端に珪素原子に直結した水素原子(SiH基)を少なくとも1個、好ましくは2個以上、特に3〜30個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンで、上記(A)及び(B)成分と反応し、架橋剤として作用するものである。その分子構造には、前記条件を除いて特に制限はなく、従来より知られている、例えば直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造(樹脂状)等の各種構造が使用可能である。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(4)で示されるものが好適に用いられる。
6 fgSiO(4-e-f)/2 (4)
上記平均組成式(4)中、R6は、脂肪族不飽和結合を除く、好ましくは炭素数1〜10の、珪素原子に結合した非置換又は置換の1価炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、これらの基の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも好ましくはアルキル基、アリール基、3,3,3−トリフルオロプロピル基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基である。また、fは0.7〜2.2、gは0.001〜0.5で、かつe+fが0.8〜2.5を満足する正数であり、好ましくは、fは1.0〜2.1、gは0.005〜0.1、f+gが1.5〜2.2である。
また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、得られるシリコーンゲルの特性、組成物の取扱作業性の点から、1分子中の珪素原子の数(又は重合度)は、通常、3〜1,000個、好ましくは5〜400個、より好ましくは10〜300個程度のものが望ましく、25℃における粘度が、通常、1〜10,000mPa・s、好ましくは3〜5,000mPa・s、より好ましくは5〜500mPa・s程度の、室温(25℃)で液状のものが好適に使用される。
上記平均組成式(4)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、具体的には、例えば、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等が挙げられる。これらのオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
この(C)成分の添加量は、(A)及び(B)成分のアルケニル基1個に対し、(C)成分の珪素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を0.5〜3.0個与える量であり、特には1.0〜2.5個であることが好ましい。珪素原子に結合した水素原子(SiH基)が0.5個より少ない場合は、架橋密度が低くなりすぎ、組成物が硬化しなかったり、硬化物の耐熱性に悪影響を与え、また、3.0個より多い場合は、脱水素反応による発泡の問題が生じたり、耐熱性に悪影響を与える。
−(D)加水分解性オルガノポリシロキサン−
(D)成分の加水分解性オルガノポリシロキサンは、下記一般式(3)で表される。
Figure 0005472055

(式中、R4は炭素数1〜6のアルキル基、R5は互いに同一又は異種の炭素数1〜18の1価炭化水素基、eは5〜120の整数である。)
式中、R4はメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基で、合成のし易さ、経済面からメチル基が好ましい。R5は炭素数1〜18の飽和又は不飽和の1価炭化水素基の群の中から選択される1種もしくは2種以上の基である。このような基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、2−フェニルエチル基、2−メチル−2−フェニルエチル基等のアラルキル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、p−クロロフェニル基等のハロゲン化炭化水素基等が挙げられる。合成のし易さ及びコストの面から、R5の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。eは5〜120の整数である。
(D)成分の配合量は、(A)及び(B)成分のオルガノポリシロキサンの合計100質量部に対して、50質量部より少ないと(E)成分とのなじみが悪くなるし、150質量部より多いと耐ボイド性が悪くなるため、50〜150質量部であり、好ましくは70〜130質量部である。
−(E)熱伝導性フィラー−
(E)成分の熱伝導性フィラーは、前記シリコーン硬化物に熱伝導性を付与するためのものである。例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、ダイヤモンド、グラファイト又はその組み合わせより選択される。これら熱伝導性フィラーの平均粒径は、通常、0.1〜50μm、好ましくは1〜20μmの範囲である。小さすぎると組成物の粘度が高くなりすぎて進展性の乏しいものとなるし、大きすぎると得られる組成物が不均一となり易い。また、これら熱伝導性フィラーの形状は球状、不定形状どちらでもよい。
(E)成分の配合量は、(A)及び(B)成分のオルガノポリシロキサンの合計100質量部に対して500質量部より少ないと所望する熱伝導率が得られないし、3,500質量部より多いと得られる熱伝導性シリコーングリース組成物の粘度が高くなり、取り扱いが悪くなるため、500〜3,500質量部であり、好ましくは1,000〜3,000質量部である。
−(F)白金系触媒−
(F)成分の白金系触媒(白金又は白金系化合物)は、上記(A)及び(B)成分中のアルケニル基と上記(C)成分中のSiH基との付加反応を促進し、本発明組成物の硬化物を得るために配合される成分である。
この白金又は白金系化合物は、これ自体は従来公知のものであり、例えば、特公昭46−28795号公報、特公昭51−8926号公報、特公昭55−423号公報、特公昭56−136655号公報に開示されているようなアルケニル基含有オルガノシロキサン又はアルケニル基含有オルガノシロキサンを配位子とする白金錯体で、その具体例としては、例えば、白金/1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、白金/1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、白金系触媒は、1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物に対する(F)成分の配合量は硬化有効量でよいが、一般的に、上記(A),(B)及び(C)成分の合計量に対して、白金原子の質量として、通常、0.1〜100ppm、好ましくは0.5〜80ppm、より好ましくは1〜50ppm程度の範囲で配合すればよい。前記配合量が少なすぎると付加反応が著しく遅くなるか、又は硬化しなくなり、逆に多すぎると硬化後のポリシロキサン組成物の耐熱性が低下し、また、白金は高価であることからコスト面で不利となる。
−(G)反応制御剤−
(G)成分の反応制御剤は、任意成分であり、ヒドロシリル化反応を制御する目的で添加される。反応制御剤としては公知のものを使用することができ、アセチレン化合物、各種窒素化合物、有機りん化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物等が利用できる。これらはシリコーン樹脂への分散性を良くするためにトルエン、キシレン、イソプロピルアルコール等の有機溶剤で希釈して使用することもできる。その配合量は通常、上記(A),(B)及び(C)成分の合計量に対して10〜10,000ppm、好ましくは100〜5,000ppm、より好ましくは100〜3,000ppmである。
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法は、特許第4460433号公報に準ずる。即ち、まず、(A),(B),(D)及び(E)成分を、トリミックス、ツウィンミックス、プラネタリミキサー(何れも井上製作所(株)製混合機の登録商標)ウルトラミキサー(みずほ工業(株)製混合機の登録商標)、ハイビスディスパーミックス(特殊機化工業(株)製混合機の登録商標)等の混合機などにて、これらの混合物がペースト化するまで攪拌を継続し、ペースト状混合物を得る。ここまでの攪拌工程では、必要に応じて50〜200℃程度に加熱してもよいが、加熱した場合には、次の(G)成分を添加する前に、室温まで冷却する。(G)成分を添加、混合した後、続いて(F)成分を添加し混合する。更に続いて(C)成分を添加し該混合物中に均一に分散するまで攪拌する。その後、このペースト状混合物を、静置状態で、90℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上の温度まで加熱した後、その温度で熟成させる(静置状態とは、前記ペースト状混合物を加熱する際及び熟成させる際に、混合機等で攪拌したり、混合したりしない状態、即ち剪断力を加えない状態である)。静置、熟成させた後、温度を50℃以下まで下げた後、混練を行う。
得られた熱伝導性シリコーングリース組成物の粘度は、400Pa・s未満であると耐ボイド性が良くないし、1,000Pa・sを超えると取り扱いが悪くなるので、400〜1,000Pa・sの範囲である。
以上の如くして得られた本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、高熱伝導率を持ちながら、高湿度下で急激に温度を上昇させてもボイド発生が少なく、大幅に耐ボイド性の向上が認められた。
以下、本発明を実施例と比較例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、下記例において、試験法は以下の通りである。
〔H/Vi〕
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン由来のSi−H基の個数と、(A)成分と(B)成分由来のアルケニル基の合計個数の比を計算した。
〔熱伝導性シリコーングリース組成物の粘度〕
熱伝導性シリコーングリース組成物の粘度の測定は、株式会社マルコム社製の型番PC−1TL(10rpm)を用いて25℃にて行った。1,000Pa・sを超えたものは粘度が測れないため、その場合は、『粘度測れず』とした。測定できた場合は、その数値を採用した。
〔熱伝導率〕
熱伝導率は、京都電子工業株式会社製のTPA−501により、いずれも25℃において測定した。
〔粒径〕
粒径測定は、日機装株式会社製の粒度分析計であるマイクロトラックMT3300EXにより測定した体積基準の累積平均径である。
〔ボイド試験〕
0.5mmのスペーサーを設け、アルミニウム板とスライドガラスの間に、直径1.5cmの円状になるように熱伝導性シリコーングリース組成物を挟みこんだ。この試験片を85℃/85%RHの恒温層に3時間放置後、取り出して室温にて15分間放置した。それらを今度は150℃のオーブンに投入して、2時間後のボイドの発生状況を確認した。
ボイドの発生状況は、株式会社キーエンス社製のデジタルマイコロスコープ(Model:VHX)を用いて、直径1.5cmの円状の熱伝導性シリコーングリース組成物中に発生したボイドの面積%を測定し、それを値とした。
[実施例1〜9、比較例1〜11]
〔熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法〕
表1及び表2の仕込み量に合わせ、次の手順にて製造を行った。まず、(A)、(B)、(D)及び(E)成分を、5Lプラネタリミキサー(井上製作所(株)製混合機の登録商標)に仕込み、150℃にて2時間混合した。攪拌を止め、室温まで冷却させた後、(G)成分を添加し、15分間混合した後、続いて(F)成分を添加し、更に15分間混合した。更に続いて(C)成分を添加し、1時間混合攪拌を行った。その後、このペースト状混合物を、静置状態で、150℃にて4時間熟成させた(静置状態とは、前記ペースト状混合物を加熱する際及び熟成させる際に、混合機等で攪拌したり、混合したりしない状態、即ち剪断力を加えない状態である)。静置、熟成させた後、温度を50℃以下まで下げ、次いで10分間混練を行った。
(A)成分
A−1: <実施例用>(フェニル基量4.9mol%)
Figure 0005472055

上記平均組成式で表される、25℃における粘度が700mPa・sであるオルガノポリシロキサン。
A−2: <実施例用>(フェニル基量4.7mol%)
Figure 0005472055

上記平均組成式で表される、25℃における粘度が1,350mPa・sであるオルガノポリシロキサン。
A−3: <比較例用>(フェニル基量5.5mol%)
Figure 0005472055

上記平均組成式で表される、25℃における粘度が3,750mPa・sであるオルガノポリシロキサン。
(B)成分
B−1: <実施例用>(フェニル基量5.3mol%)
Figure 0005472055

上記平均組成式で表される、25℃における粘度が4,650mPa・sであるオルガノポリシロキサン。
B−2: <実施例用>(フェニル基量5.2mol%)
Figure 0005472055

上記平均組成式で表される、25℃における粘度が6,200mPa・sであるオルガノポリシロキサン。
B−3: <比較例用>(フェニル基量4.9mol%)
Figure 0005472055

上記平均組成式で表される、25℃における粘度が710mPa・sであるオルガノポリシロキサン。
B−4: <比較例用>(フェニル基量5.1mol%)
Figure 0005472055

上記平均組成式で表される、25℃における粘度が11,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン。
(C)成分
C−1:
Figure 0005472055

上記平均組成式で表される、25℃における粘度が95mPa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン。
(D)成分
D−1:
Figure 0005472055

上記平均組成式で表される、25℃における粘度が35mPa・sである加水分解性オルガノポリシロキサン。
(E)成分
E−1:アルミナ粉末(平均粒径10.3μm)
E−2:酸化亜鉛粉末(平均粒径1.1μm)
(F)成分
F−1:白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の溶液(白金原子として1質量%含有)
(G)成分
G−1:1−エチニル−1−シクロヘキサノールの50質量%トルエン溶液
Figure 0005472055
Figure 0005472055

Claims (1)

  1. (A)下記平均組成式(1)
    a1 bSiO(4-a-b)/2 (1)
    (式中、Rはアルケニル基、R1は脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R1の一部は全置換基(R+R1)に対して4〜6mol%のフェニル基であり、aは0.0001〜0.2、bは1.7〜2.2の正数であり、a+bは1.9〜2.4である。)
    で表され、25℃における粘度が100〜2,000mPa・sである1分子中にアルケニル基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン、
    (B)下記平均組成式(2)
    2 c3 dSiO(4-c-d)/2 (2)
    (式中、R2はアルケニル基、R3は脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R3の一部は全置換基(R2+R3)に対して4〜6mol%のフェニル基であり、cは0.0001〜0.2、dは1.7〜2.2の正数であり、c+dは1.9〜2.4である。)
    で表され、25℃における粘度が2,001〜10,000mPa・sである1分子中にアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン;(A)及び(B)成分の合計量に対して3〜20質量%、
    (C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン;(C)成分由来のSi−H基の個数が(A)と(B)成分由来のアルケニル基の合計個数の0.5〜3.0倍になる量、
    (D)下記一般式(3)
    Figure 0005472055

    (式中、R4は炭素数1〜6のアルキル基、R5は互いに同一又は異種の炭素数1〜18の1価炭化水素基、eは5〜120の整数である。)
    で表される片末端3官能の加水分解性オルガノポリシロキサン;(A)及び(B)成分のオルガノポリシロキサンの合計100質量部に対して50〜150質量部、
    (E)熱伝導性フィラー;(A)及び(B)成分のオルガノポリシロキサンの合計100質量部に対して500〜3,500質量部、
    (F)白金系触媒;硬化有効量
    を含有する25℃の粘度が400〜1,000Pa・sであることを特徴とする熱伝導性シリコーングリース組成物。
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