以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳しく説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る画像読取装置の構成を示す図である。
図1において、200は画像読取装置であるリーダであり、このリーダ200は、原稿等の読み取り対象の原稿に記録された画像情報を光学的に読み取り、光電変換して画像データとして不図示の画像形成装置に入力するものである。このリーダ200の上面には、透明な第1及び第2プラテンガラス202,102が設けられている。また、リーダ200には、不図示の光を原稿に投射するランプ、反射笠、原稿からの反射光を光電素子Rまで導き、かつ縮小していく縮小光学系を含んだ第1画像読取部201が設けられている。
リーダ200の上面には原稿を、第1画像読取部201による画像読み取りが可能な画像読取位置に搬送するシート搬送装置であるADF(自動原稿給送装置)100が設けられている。そして、リーダ200はADF100によって第2プラテンガラス102の画像読取位置に搬送された原稿画像を第1画像読取部201により読み取る。また、リーダ200は、第2プラテンガラス202上に載置された原稿画像を、第1画像読取部201を副走査方向に走査させて読み取ることも可能である。
一方、ADF100は、原稿の裏面の画像を読み取る第2画像読取部130が設けられている。この第2画像読取部130は、流し読みガラス103の下方を通過する原稿の裏面に不図示の光源から光を照射した後、原稿からの反射光を受光素子で光電変換し、入射光量に応じた電気信号を出力するものである。
また、ADF100は、原稿トレイ111に積載された原稿を、例えば流し読みの際、第1画像読取部201及び第2画像読取部130による画像読取位置に搬送するものであり、原稿トレイ上方に設けられ、原稿を送り出す給紙ローラ112を備えている。
ここで、給紙ローラ112は、上下方向に回動自在な不図示のアームに軸支されており、通常、アームの上方回動によりホームポジションである上方位置に退避しており、原稿のセット作業を阻害しないようになっている。また、原稿給送動作が開始されると、アームの下方回動により給紙ローラ112は下降して原稿の上面に当接するようになっている。
給紙ローラ112の下流には、原稿を1枚ずつ分離する分離部を構成する分離ローラ対113が設けられている。さらに、この分離ローラ対113の下流には分離ローラ対113により1枚ずつ分離されて搬送された原稿をレジストローラ対116に搬送する搬送ローラ114,115が配されている。
ここで、レジストローラ対116は、原稿の先端を揃えるためのものである。そして、分離ローラ対113により分離された1枚の原稿の先端を静止した状態のレジストローラ対116のニップ部に突き当て、原稿にループを生じさせることにより、原稿の先端を揃えるようにしている。
ところで、レジストローラ対116により先端が揃えられた原稿は、この後、画像読取位置の上流側に配置された第1シート搬送手段である第1リードローラ対117により画像読取位置に搬送される。また、この後、画像読取位置を通過する原稿は、第1リードローラ対117及び画像読取位置の下流側に配置された第2シート搬送手段である第2リードローラ対118により第2プラテンガラス102上を通過しながら搬送される。このとき、原稿の表面の画像情報が第1画像読取部201により読み取られる。
なお、図1に示すように、第2プラテンガラス102には第2プラテンガラス102での原稿搬送性を安定させるためのプラテンローラ122及びコロ123,124が、プラテンガラス102に対して所定のギャップを開けて配置されている。また、流し読みガラス103においても、同様の目的でプラテンローラ125及びコロ126が、流し読みガラス103に対して所定のギャップを開けて配置されている。
さらに、レジストローラ対116の上流には、原稿がプラテンガラス102(画像読取位置)に進入する前に、原稿の先端を検知するレジセンサS1が配置されている。また、第1リードローラ対117の上流側には、搬送される原稿の先端及び後端を検知するリードセンサS2が設けられている。なお、これらレジセンサS1及びリードセンサS2の検知出力は、ADF100の動作を制御する制御部Dに入力される。
ところで、リーダ200は、第1画像読取部201を停止させた状態で、ADF100によって原稿を搬送させながら、第2プラテンガラス102及び流し読みガラス103の位置で原稿画像を読み取る流し読みモードを備えている。
次に、リーダ200の流し読みモードにおける原稿画像読み取り動作について説明する。
流し読みモードにより原稿画像読み取る場合には、まずアームを下降させて給紙ローラ112を原稿の上面に当接させた後、給紙ローラ112を回転し、最上位の原稿を分離ローラ対113に搬送する。ここで、原稿が複数枚重なって搬送された場合には、分離ローラ対113により、最上位の原稿を他の原稿から分離して搬送する。
1枚に分離された原稿は、搬送ローラ114,115によってレジストローラ対116に搬送された後、レジストローラ対116によって先端が揃えられた後、第1及び第2リードローラ対117,118により第2プラテンガラス102上を搬送される。このとき、原稿の表面の画像情報を第1画像読取部201にて読み取る。なお、読取動作は第1リードローラ対117の上流に配置されているリードセンサS2の原稿先端検知をもって開始される。
次に、原稿の表面画像の読み取りが終了すると、第2リードローラ対118により、原稿は第2流し読みガラス130の下面を通過し、この際、原稿の裏面の画像情報を第2画像読取部130にて読み取る。なお、この第2画像読取部130による原稿の裏面画像読み取りが終了すると、原稿は搬送ローラ対119及び排紙ローラ対120により排紙トレイ121上に排紙される。
ところで、第1リードローラ対117は、シート搬送方向と直交する幅方向に複数配置された駆動回転体である駆動ローラ117aと、駆動ローラ117aに接離可能に圧接する複数の従動回転体である従動ローラ117bとから構成されている。即ち、第1リードローラ対117は、シート搬送方向と直交する幅方向に複数配置された回転体対からなる。また、第2リードローラ対118は、幅方向に複数配置された複数の駆動ローラ118aと、この駆動ローラ118aに接離可能に圧接する複数の従動ローラ118bとから構成されている。即ち、第2リードローラ対118は、幅方向に複数配置された複数の回転体対からなる。さらに、搬送ローラ対119は、複数の駆動ローラ119aと、この駆動ローラ119aに接離可能に圧接する複数の従動ローラ119bとから構成されている。
ここで、第1及び第2リードローラ対117,118の駆動ローラ117a,118a、搬送ローラ対119の駆動ローラ119a及びプラテンローラ122,125は、図2に示すようにリードモータ301により駆動される。
なお、図2において、302はリードモータ301の回転軸に固着されたプーリ、303は第1リードローラ対117の駆動ローラ117aに設けられたプーリ、304は第2リードローラ対118の駆動ローラ118aに設けられたプーリである。また、305は搬送ローラ対119の駆動ローラ119aに設けられたプーリ、306はプラテンローラ122に設けられたプーリ、307はプラテンローラ125に設けられたプーリである。
そして、リードモータ301の駆動は、各プーリ302〜307に巻き付けられたタイミングベルト308〜310を介して各プーリ302〜307に伝達される。この結果、第1リードローラ対117及び第2リードローラ対118は、リードモータ301により同一駆動され、読取に関するローラの駆動がモータの個体によるばらつきの影響を受けないようにすることができる。なお、このリードモータ301は制御部D(図1参照)によってその回転速度が制御される。
ところで、本実施の形態において、第1リードローラ対117、第2リードローラ対118の挟持圧、言い換えればシート搬送力は変更可能となっている。次に、このような第1リードローラ対117の挟持圧(シート搬送力)を変更する搬送力変更手段である挟持圧変更機構について図3、図4を用いて説明する。なお、第2リードローラ対118の挟持圧(シート搬送力)も、この挟持圧変更機構190により同様の機構によって変更可能となっている。
図3において、1903は第1リードローラ対117の従動ローラ117bを回転自在に保持する保持部材であるアームであり、このアーム1903は回動軸1902に対して回動自在に取り付けられている。また、1908は回動軸1902に取り付け位置を変更可能に取り付けられたストッパであり、このストッパ1908はピン1909によって係止されている。
1904はねじりばねであり、このねじりばね1904により、アーム1903に対し、アーム1903をストッパ1908へ付勢する方向にねじり力を加えている。そして、このねじりばね1904の付勢力によってアーム1903を介して従動ローラ117bが、その上方に位置する駆動ローラ117a(図1参照)に圧接することにより、第1リードローラ対117には原稿を挟持する挟持力(圧接力)が付与される。
1901は回動軸1902の端部に、軸方向に対して垂直に取り付けられた加圧レバーであり、この加圧レバー1901には図4に示すようにカム1905が圧接している。なお、この加圧レバー1901は、図3に示すねじりばね1904により、時計方向、即ちカム側に付勢されている。
そして、この加圧レバー1901は、カム軸1905aに設けられているカム1905の回転と共に位置(傾斜角度)が変化する。ここで、このようなカム機構により加圧レバー1901の位置が変化すると、回動軸1902の回転角度が変化し、これに伴いねじりばね1904による従動ローラ117bを駆動ローラ側に付勢する力が異なるようになる。
このように、カム1905の回転位置(加圧レバー1901の位置)によって、ねじりばね1904による付勢力が異なるようになる。つまり、カム1905の回転位置を変更することにより、第1リードローラ対117の挟持圧を変更することができる。
なお、図4の(a)はカム1905により押圧され、従動ローラ117bが駆動ローラ117aに圧接する加圧状態(圧接状態)を示している。図4の(b)はカム1905による押圧が解除され、従動ローラ117bが駆動ローラ117aに対して離間、あるいは小さな圧力で圧接する状態(以下、軽圧接離間状態という)を示している。
なお、後述する図15に示すように、第1リードローラ対117は、幅方向に複数配置されている。複数のローラ対のうちの従動ローラ117bの夫々が、回動軸1902に回動自在に支持されたアーム1903に保持されている。
図5はカムの外形線を表すものであり、挟持圧変更機構において、第1リードローラ対117の挟持圧が大きくなるのは図5におけるR1の外形線と加圧レバー1901が接しているときである。また、挟持圧が小さくなる、あるいは従動ローラ117bが駆動ローラ117aから離間するのはR2の外形線に加圧レバー1901が接しているときである。
また、図6はカム1905の駆動機構を示す図であり、図6の(a)において、1905bはカム軸1905aに設けられたプーリであり、このプーリ1905bとカム1905とはカム軸1905aに対して同一に回転する。また、1906は離間モータであり、離間モータ1906の駆動は、離間モータ1906に設けられたプーリ1906a及びプーリ1905bに巻き付けられたベルト1907により、各プーリ1905b,1906aを介してカム1905に伝達される。
一方、図6の(b)において、1910は離間センサである。また、1905cはカム1905と同一回転するセンサフラグであり、このセンサフラグ1905cが離間センサ1910を通過するタイミングにより、カム1905の位置を制御することができる。例えば、図4の(a)に示す加圧位置はセンサフラグ1905cが離間センサ1910を通過してから30°回転した位置、言い換えれば離間モータ1906の駆動パルスを10パルスカウントしたところとすることができる。
なお、図7は、ADF100の駆動を制御する制御部D(図1参照)の制御ブロック図であり、ADF100の制御部Dは、CPU1001、ROM1002、RAM1003等で構成されるCPU回路部1000を備えている。このCPU回路部1000は、通信IC1004を介して、不図示の画像形成装置本体側に設けられたCPU回路部1005と通信してデータ交換を行うようになっている。そして、CPU回路部1005からの指示に基づきROM1002に格納されている各種プログラムを実行してADF100の駆動制御を行う。
また、CPU回路部1000にはドライバ1006が接続され、このドライバ1006はCPU回路部1000からの信号に基づき、給紙ローラ112及び分離ローラ対113を駆動する不図示の給紙モータを駆動する。また、搬送ローラ114,115を駆動する不図示の搬送モータの他、離間モータ1906、リードモータ301等の各種モータを駆動する。
なお、離間モータ1906、リードモータ301は、ステッピングモータからなり、励磁パルスレートを制御することによって駆動するローラ対を等速で回転させたり、独自の速度で回転させたりすることができる。
さらに、このCPU回路部1000には、既述したレジセンサS1、リードセンサS2及び離間センサ1910からの検出信号が入力されるようになっている。そして、CPU回路部1000は、これらのセンサS1,S2,1910からの検出信号に基づき、離間モータ1906、リードモータ301の駆動制御を行う。
ところで、本実施の形態においては、主走査方向に複数個配置された第1リードローラ対117の複数の駆動ローラ117a及び従動ローラ117bのうち、幾つかを完全離間させ、他の幾つかについては圧接力を弱くした軽圧接離間状態とするようにしている。また、主走査方向上に複数個配置された第2リードローラ対118の複数の駆動ローラ118a及び従動ローラ118bのうち、幾つかを完全離間させ、且つ他の幾つかについては圧接力を弱くした軽圧接離間状態とするようにしている。
そして、このように圧接状態を調節するため、回動軸1902と一体的に回動するアーム1903の回動角度を弾性的に規制するよう回動軸1902に固定するストッパ1908の位相(取り付け位置)を変えるようにしている。
図8の(b)、(c)は、カム1905が図4の(b)に示す軽圧接離間状態にあるときにおいても従動ローラ117bが駆動ローラ117aに圧接するようにストッパ1908を回動軸1902に取り付けた状態を示している。なお、図8において、1903bはアーム1903に設けられた係止部であり、このアーム1903の係止部1903bが、ストッパ1908に係止した位置に応じて加圧レバー1901の状態が決まる。
例えば、図8の(a)の位置にストッパ1908を取り付けた場合、アーム1903の係止部1903bがストッパ1908と突き当たったとき加圧レバー1901は、図4の(b)の軽圧接離間状態における加圧レバー1901よりも更に水平に近い状態となる。
なお、図8の(a)は、図8(b)、(c)の構成において、カム1905を装着していない状態、即ちストッパ1908と係止部1903bとの関係を説明するために仮にカム1905により加圧レバー1901が押圧されないときの状態を表している。そして、このようにカム1905を装着していない状態のときには、アーム1903の突き当て部1903bとストッパ1908が突き当たることでアーム1903及び従動ローラ117bの位置が決まる。このとき、ねじりバネ1904はアーム1903を矢印方向に付勢している。
図8の(b)は、カム1905が図4の(b)に示す軽圧接離間状態にあるときの状態を示している。この場合、図8の(a)のようにアーム1903の突き当て部1903bとストッパ1908が突き当たっている状態よりも、さらにθ1の変位をねじりバネ1904に加えている。これにより、駆動ローラ117aと従動ローラ117bとを軽圧接離間状態とすることができる。
また、図8の(c)は、カム1905が図4の(a)に示す加圧状態にあるときの状態を示している。この場合、図8の(a)のようにアーム1903の突き当て部1903bとストッパ1908が突き当たっている状態よりも、さらにθ2の変位をねじりバネ1904に加えている。ここで、θ2>θ1であるから、ねじりバネ1904はより大きなトルクを発生しており、したがって第1リードローラ対117の圧接力はより大きくなっている。
図9の(a)及び(b)は、軽圧接離間状態において、従動ローラ117bを駆動ローラ117aから完全離間させる場合を示している。なお、図9の(a)は、カム1905が図4の(b)に示す軽圧接離間状態にあるときの状態を示している。
この場合、ストッパ1908を固定させる位相を図8(b)、(c)の構成のものに対して異ならしめることで、加圧レバー1901が離間位置にまで寝させられる前に、ストッパ1908とアーム1903の係止部1903bが突き当たるようにしている。これにより、加圧レバー1901が離間位置になるときには、従動ローラ117bを駆動ローラ117aから完全に離間することができる。なお、この場合においてもねじりバネ1904はアーム1903を図中矢印の方向に付勢するようにトルクを発している。
また、図9の(b)は、カム1905が図4の(a)に示す加圧状態にあるときの状態を示している。この場合、従動ローラ117bが駆動ローラ117aに当接してからさらにカム1905は加圧レバー1901を押し上げることによって、ねじりバネ1904は図9の(a)の状態よりも、さらにθ3の変位分のトルクを発する。
このように、第1リードローラ対117の複数の従動ローラ117bにおいてストッパ1908を固定させる位相を変えることで、複数の従動ローラ117bのうちの幾つかは、駆動ローラ117aから離間させることができる。また、他の従動ローラ117bについては駆動ローラ117aに対する圧接力が低減した軽圧接離間状態とすることができる。これにより、軽圧接離間状態における第1リードローラ対117の圧接力(挟持圧)を変更することができる。なお、第2リードローラ対118においても、同様である。
なお、第1リードローラ対117および第2リードローラ対118の構成について、装置を下方からみた模式図である図15の(b)を用いて説明する。
幅方向に複数設けた第1リードローラ対117のうちの両端の回転体対と中央の回転体対(点線で示した回転体対)は図9に示した機構によって完全に離間する。一方、第1リードローラ対117を構成している図15の(b)において実線で示した回転体対は、図8の(b)、(c)に示した機構によって、軽圧接離間状態において回転体対は圧接する。
なお、第1リードローラ対117について詳述したが、既述の第2リードローラ対118についても同様の挟持圧変更機構が設けられている。
図15の(b)で、第2リードローラ対118のうちの両端の回転体対と中央の回転体対(点線で示した回転体対)は軽圧接離間状態で図9で説明した機構によって完全に離間する。一方、第2リードローラ対118を構成している図15の(b)において実線で示した回転体対は、図8(b)、(c)で説明した機構によって、軽圧接離間状態において回転体対は圧接する。
従来、全てのローラ対について圧接力を弱めるものがあったが、この従来構成では、原稿と回転体対との接している部分が多いため、接している部分で回転体対と原稿との間で摩擦力が発生する。よって、圧接力が弱くしても全ての回転体対が圧接していると原稿を挟持する挟持力が残ってしまうので、例えば原稿の後端がローラ対を抜けるときのばたつきが生じやすかった。
既述のように本実施形態では、第1リードローラ対117を構成する複数の回転体対のうちの幾つかは完全に離間するために、上記従来構成と比較して原稿とローラとの接触部分が少なくなって実質的に原稿を挟む力をより弱めることができる。したがって、従来構成に対して、原稿の後端が第1リードローラ対117を抜けるときの原稿のばたつきもより少なくなる。このことは第2リードローラ対118において、原稿の先端が突入するときの原稿のばたつきについても同様のことがいえる。
ところで、挟持圧の変更は、カム1905の回転によって行われるので、挟持圧の変更には時間がかかるようになる。また、挟持圧の変更が瞬時にして行われると、それに伴う搬送力の急激な変動が、原稿の搬送に影響し読取画質の悪化につながるため、挟持圧の変更を略連続的に行う必要がある。
例えば、挟持圧の変更にかかる時間は、図5に示す形状のカム1905の場合、1ステップあたり3°回転させる減速比で、離間モータ1906を400ppsで回転させるとすると、R2からR1までの角度は90°であるから、75msecはかかる。また、回転させる角度が180°とすると150msecとなる。
この場合、搬送速度が610mm/secであると、挟持圧変更の間に原稿は最低でも46mm、最大で92msec下流へ進むことになる。搬送速度が305mm/secであると、挟持圧変更の間に原稿は最低でも23mm、最大で46mm進むことになる。
なお、カム1905の回転開始のトリガとしては、本実施の形態の場合、第1リードローラ対117の加圧状態から軽圧接離間状態への切り替えは、レジセンサS1(図1)が原稿後端を検知してから所定の搬送量をもって始める。また、第2リードローラ対118の軽圧接離間状態から加圧状態への切り替えは、リードセンサS2(図2)の原稿先端検知から所定の距離を搬送してから始める。
なお、本実施形態では、第2リードローラ対118は、原稿後端が通過するときのショックを回避すべく圧接状態となった後に再度、軽圧接離間状態となる。第2リードローラ対118の加圧状態から軽圧接離間状態への切り替えは、第1リードローラ対117と同様に、レジセンサS1での原稿後端検知をトリガとしている。
次に、本実施の形態に係るADF100の制御部Dによる第1リードローラに対する挟持圧変更動作について図10に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、ユーザによるJOBスタートの指令を受けると、制御部Dは、離間モータ1906を駆動し(S141)、カム1905を回転させる。なお、このとき、離間センサ1910は、カム1905と一体に回転するセンサフラグ1905cを検知せず、Onとなった状態となっている。
次に、センサフラグ1905cがカム1905と一体に回転することにより、離間センサ1910がセンサフラグ1905cを検知し、離間センサ1910がOffとなる(S142のY)。そして、このように離間センサ1910がOffとなった後、カム1905を所定の角度だけ回転させて加圧位置に移動させたところで離間モータ1906を停止させる(S143)。
次に、原稿が搬送され、やがてレジセンサS1が原稿を検知し、レジセンサS1がOnとなる(S144のY)。なお、このレジセンサS1のOnにより、原稿が搬送されていることを確認することができる。また、この後、レジセンサS1がOffとなると(S145のY)、原稿後端がレジセンサS1を通過したことを検知し、カム1905を加圧位置から離間位置へ変位させる動作に移る(S146)。
即ち、この後、カム1905を回転させる。そして、カム1905の回転に伴って離間センサ1910が一旦Onとなり、更にこの後、離間センサ1910がOffとなると(S147のY)、そこから所定角度回転させ、カム1905を離間位置としたところで離間モータ1906を停止させる(S148)。
そして、このような一連の加圧→離間への動作を終えた後、給紙部の不図示のセンサ等により次の給紙があると判断した場合は(S149のY)、S141に戻り次紙のために離間モータ1905を駆動する。なお、S149にて、次の給紙が無いと判断すると(S149のN)、JOBを終了する。制御部Dは、第2リードローラ118に関しても、レジセンサS1およびリードセンサS2からの出力に基づいて、離間、加圧の動作を行う第2リードローラ118用のモータを制御する。
ところで、昨今のADF100では操作性向上の観点及び装置外寸の制約などから、既述した図1に示すように、原稿トレイ111と排紙トレイ121を同一側に配置するような構成になっている。このため、読取部付近にて搬送パスを折り返す構成になっている。また、ADF100の下部に位置するリーダ200の内部では光学系ユニットである第1画像読取部201が走査できるだけのスペースを確保する必要がある。
以上の理由から、第1及び第2リードローラ対117,118の従動ローラ117b,118bは、リーダ200の領域に入り込まないように配置されており、このことから第1及び第2リードローラ対117,118の間隔は充分に小さくすることが難しい。このため、第1リードローラ対117と第2リードローラ対118との間隔は本実施の形態の場合、80mm程度となっている。
図11は、原稿読み取り時における原稿の動きを示す図である。原稿Pを読み取る際には、第1リードローラ対117により搬送された原稿Pは、第2プラテンガラス102上を通過し、この後、図11の(a)に示すように、先端が第2リードローラ対118に到達する。そして、このように先端が第2リードローラ対118に到達した後、所定量搬送したところで第2リードローラ対118の挟持圧が上げられる。
また、図11の(b)に示すように、レジセンサS1が原稿後端を検知し、この後、所定量搬送したところで第1リードローラ対117の挟持圧は下げられ、挟持圧が小さくなってから所定量搬送されると、原稿後端が第1リードローラ対117を通過する。
ここで、このような挟持圧の変更タイミングは原稿サイズに応じて異なる。例えば、原稿サイズがLTR(搬送方向長さ216mm)やA4(搬送方向長さ210mm)、またはそれ以上の長さを持つ原稿の場合は、第1及び第2リードローラ対117,118における挟持圧の時系列変化は図12に示すようになる。なお、図12において、F1A,F1Bは第1リードローラ対117の搬送力であり、圧接状態の搬送力と、軽圧接離間状態の搬送力をそれぞれ示している。またF2A,F2Bは第2リードローラ対118の搬送力であり、圧接状態の搬送力と、軽圧接離間状態の搬送力とを夫々示している。
図12に示すように、レジセンサS1が原稿を検知したタイミングt2Sでは、第1リードローラ対117の搬送力は大きくなっており、第2リードローラ対118の搬送力は小さくなっている。そして、この後、図11の(a)に示すように、原稿Pの先端が第2リードローラ対118に到達し、そこから所定量搬送したタイミングt2で第2リードローラの挟持圧が上げられる。
また、図11の(b)に示すように、レジセンサS1が原稿後端を検知したタイミングt1Sから、所定量搬送したところで第1リードローラ対117の挟持圧は下げられる。そして、挟持圧が小さくなってから所定量搬送されたt1において原稿後端が第1リードローラ対117を通過する。
なお、本実施の形態においては、図11の(a)に示すように、原稿Pの先端が第2リードローラ対118に到達したタイミングt2から所定量搬送したところ、すなわち余裕時間t2mが経過したとき、第2リードローラ対118の挟持圧が上昇を開始する。
ここで、第2リードローラ対118の挟持圧を切り替えるトリガとしては、レジセンサS1(またはリードセンサS2)による原稿先端の検知であるが、その時間をt2Sとしている。なお、図12において、t2Lは、レジセンサS1による原稿先端検知から、実際に挟持圧を切替え始めるまでの時間であって、タイムラグである。
また、レジセンサS1が原稿後端を検知した時間をt1Sとすると、t1Sにおいて、レジセンサS1が原稿後端を検知し、それから所定量搬送したところで第1リードローラ対117の搬送力は下げられる。なお、図12において、t1Lは、この間の時間であるタイムラグ、t1は挟持圧が小さくなってから所定量搬送される時間、t1mは、その間の時間である余裕時間である。
このように、本実施の形態においては、第1及び第2リードローラ対117,118の搬送力を変動させ、両者の搬送力の大小関係を変更させることで、メインで原稿を搬送するローラの切り替えを略連続的に行うようにしている。これにより、原稿後端が第1リードローラ対117を抜けたときに生じる瞬間的な搬送状態の変動を小さくすることができる。
ところで、原稿PがLTRやA4、あるいはそれ以上の長尺紙にように、t2とt1の間隔が十分にある場合は、上述のように挟持圧変更のための時間(距離)が確保できる。しかし、原稿PがA5やSTMT、B6といった小サイズのものの場合、図13に示すようにt2とt1の間隔が十分にとれない。
これに対応するためには、例えば図13の(a)に示すように、第2リードローラ対118の軽圧接離間状態から加圧状態への変更を原稿先端が第2リードローラ対118に到達するタイミングt2の直後に行うことができれば良い。すなわち、搬送力をF2BからF2Aへと上昇させるための変更開始を原稿先端が第2リードローラ対118に到達するタイミングt2の直後に行うことができれば良い。
また、第1リードローラ対117の加圧状態から軽圧接離間状態への変更完了、すなわち搬送力をF1AからF1Bへと減少させ終わるのを、原稿後端が第1リードローラ対117を通過するタイミングt1の直前に完了させることができれば良い。原稿の先端が第2リードローラ対118に到達するタイミングt2では、第1リードローラ対117が搬送力を変更している最中となる。
そこで、本実施の形態においては、カム形状の工夫によって、この瞬間の第1及び第2リードローラ対117,118の搬送力の大小関係を、以下のようにすることができる。
変更途中の第1リードローラ対117の搬送力F1A’>第2リードローラ対118の搬送力F2B
これにより、第1リードローラ対117にメインの搬送力を持たせたまま第2リードローラ対118の挟持を加えることができる。
また、この直後から第2リードローラ対118の搬送力をF2BからF2Aへと上昇させ、原稿後端が第1リードローラ対117を通過する瞬間において第1リードローラ対117の搬送力の変更を完了させるようにすれば良い。
これにより、この瞬間の第1及び第2リードローラ対117,118の搬送力の大小関係は、以下のようになり、原稿後端が第1リードローラ対117を通過する前に、メインの搬送の担い手を第2リードローラ対118に移すことができる。
変更途中の第2リードローラ対118の搬送力F2A’>第1リードローラ対117の搬送力F1B
しかし実際には、レジセンサS1の原稿後端検知から、またはリードセンサS2の原稿先端検知からの搬送量の見積もりには誤差が生じるため、搬送力変更のタイミングは、所定の余裕時間を持ってなされる必要がある。このため、本実施の形態においては、余裕時間t1m,t2mを設けている。なお、この余裕時間t1m,t2mは搬送パスの形状や、搬送速度などによって設定される。
しかし、余裕時間t1m,t2mによっては図13の(b)に示すように、原稿先端が第2リードローラ対118に到達するときt2から、後端が第1リードローラ対117を通過するときt1までリードローラ対117,118の両方が軽圧接離間状態となる。すなわち、第1及び第2リードローラ対117,118の搬送力が、それぞれF1B、F2Bになる。そして、このように第1及び第2リードローラ対117,118が軽圧接離間状態になると、既述したように、特に厚紙原稿の搬送において、駆動ローラと原稿とで滑りが生じ、搬送不能に陥る危険性が高い。
そこで、リードローラ対117,118が共に軽圧接離間状態になるのを避けるため、図14に示すように余裕時間t1m,t2mの長さを設定する。すなわち、最大でも第1リードローラ対117が遷移状態から軽圧接離間状態へ移るタイミング(軽圧接離間状態への変更完了)と、第2リードローラ対118が軽圧接離間状態から遷移状態へ移るタイミング(圧接状態への変更開始)が重なるように設定する。このためには、図14において、余裕時間t1mとt2mの関係は、以下のようにする必要がある。
t1m+t2m ≦t1−t2
なお、本実施の形態の場合、第1及び第2リードローラ対117,118の間隔は、既述したように80mmである。このため、搬送可能な最小原稿サイズをSTMTの139mmとすると、理想的にはt1m=t2mであるから、搬送余裕は(139−80)/2=30mmに抑えなければならない。ここで、搬送速度が610mm/secの場合、余裕時間はt1m=t2m=49msecであり、搬送速度が305mm/secの場合t1m=t2m=98msecである。
このような余裕時間t1m、t2mは、離間モータの回転開始指令から実際に駆動を開始するまでの損失時間などを考慮した上で、トリガとなるセンサ検知から実際に挟持圧を変更させるまでのタイムラグt1L、t2Lを設定することで得られる。なお、t1m+t2m≒t2−t1となる場合は、原稿を第1及び第2リードローラ対117,118ともほぼ離間状態にある状態で搬送することになる。
以上説明したように、本実施の形態では、原稿のサイズに拘らず第2リードローラ対118の圧接状態への変更開始を第1リードローラ対117のシート搬送力の軽圧接離間状態への変更完了よりも先にするようにしている。これにより、小サイズの厚紙原稿を搬送する場合においても、搬送力を十分に保持して安定した搬送を実現し、かつ第1リードローラ対117を原稿後端が抜けたときに生じる瞬時的な搬送状態の急変も軽減することができる。また、小サイズの薄紙原稿を搬送する場合においても、原稿の状態を安定させて搬送することができ、読取画質の悪化を抑え、原稿へのダメージも少なくすることができる。
すなわち、原稿サイズに拘らず第2リードローラ対118のシート搬送力の変更開始を第1リードローラ対117のシート搬送力の変更完了よりも先に行うことにより、シートを安定して搬送することができると共に、読取画質の悪化を抑えることができる。
なお、図15は、第1及び第2リードローラ対117,118において、軽圧接離間状態において駆動ローラに圧接させる従動ローラの配置を示す図である。なお、図15において、実線が圧接させる従動ローラを表し、点線が離間させる従動ローラを表している。ここで、図15の(a)のように、圧接させる従動ローラ117b,118bを配置すると、原稿にかかる圧力分布が不均一になり、図中矢印の方向にシワが生じる危険性がある。
このため、本実施の形態においては、図15の(b)のように、圧接させる従動ローラ117b,118bを、幅方向の位置が一致する従動ローラ117b,118bとしている。これにより、原稿Pにかかる圧力分布が原稿搬送方向と平行になり、原稿Pの状態は安定する。
また、第1及び第2リードローラ対117,118の各駆動ローラ及び従動ローラの配置は、原稿搬送方向(幅方向)上で一致していることが望ましい。しかし、少なくとも、図16に示すように、第1及び第2リードローラ対117,118の各駆動ローラ及び従動ローラ117b,118bのニップ部が、原稿搬送方向上で重なっていれば、同様の効果を得ることができる。
さらに、圧接する場所の駆動ローラ117a,118aの形状を図17のように、中央側の径φ21,φ11よりも主走査方向外側の径径φ22,φ12が大きくなるような形状にすることにより、原稿Pは主走査方向上で両方向に引っ張られるようになる。これにより、よりシワの発生を抑え、読取画質を向上させることができる。
なお、これまでの説明においては、画像読取装置(リーダ)について述べてきたが、本発明はこれに限らない。例えば、画像読取装置を備え、画像読取装置により読み取られた画像情報に基づいて画像を形成する画像形成部を備えた画像形成装置にも適用することができる。