JP5458740B2 - 硫化物固体電解質材料 - Google Patents
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Description
まず、本発明の硫化物固体電解質材料について説明する。本発明の硫化物固体電解質材料は、上述した構造式で表されるPS4ユニットを含有するPS4ユニット含有イオン伝導体と、鉄硫化物とを含有することを特徴とするものである。
以下、本発明の硫化物固体電解質材料について、構成ごとに説明する。
まず、本発明におけるPS4ユニット含有イオン伝導体について説明する。本発明におけるPS4ユニット含有イオン伝導体は、上述したPS4ユニットを含有するものであれば特に限定されるものではない。通常、PS4ユニット含有イオン伝導体は、伝導する金属イオンとなる金属元素、P元素およびS元素を有する原料組成物を用いてなるものである。中でも、PS4ユニット含有イオン伝導体は、Li元素、P元素およびS元素を含有する原料組成物を用いてなるものであることが好ましい。リチウム電池に有用な硫化物固体電解質材料とすることができるからである。
次に、本発明における鉄硫化物について説明する。本発明における鉄硫化物は、PS4ユニット含有イオン伝導体のPS4ユニットと水との反応により生じる硫化水素の発生を抑制するものである。
本発明の硫化物固体電解質材料は、PS4ユニット含有イオン伝導体と、鉄硫化物とを含有するものであれば特に限定されるものではない。通常、PS4ユニット含有イオン伝導体および鉄硫化物は、互いに接触するように分散されている。両者が互いに接触することで、PS4ユニットと水との反応を抑制することができる。
次に、本発明の電池について説明する。本発明の電池は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有する電池であって、上記正極活物質層、上記負極活物質層および上記電解質層の少なくとも一つが、上述した硫化物固体電解質材料を含有することを特徴とするものである。
以下、本発明の電池について、構成ごとに説明する。
まず、本発明における電解質層について説明する。本発明における電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層である。電解質層は、金属イオンの伝導を行うことができる層であれば特に限定されるものではないが、固体電解質材料から構成される固体電解質層であることが好ましい。安全性の高い電池(全固体電池)を得ることができるからである。さらに、本発明においては、固体電解質層が、上述した硫化物固体電解質材料を含有することが好ましい。固体電解質層に含まれる上記硫化物固体電解質材料の割合は、例えば10体積%〜100体積%の範囲内、中でも50体積%〜100体積%の範囲内であることが好ましい。特に、本発明においては、固体電解質層が上記硫化物固体電解質材料のみから構成されていることが好ましい。硫化水素発生量の少ない電池を得ることができるからである。固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。また、固体電解質層の形成方法としては、例えば、固体電解質材料を圧縮成形する方法等を挙げることができる。
次に、本発明における正極活物質層について説明する。本発明における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料および導電化材および結着材の少なくとも一つを含有していても良い。特に、本発明においては、正極活物質層に含まれる固体電解質材料が、上述した硫化物固体電解質材料であることが好ましい。硫化水素発生量の少ない電池を得ることができるからである。正極活物質層に含まれる硫化物固体電解質材料の割合は、電池の種類によって異なるものであるが、例えば0.1体積%〜80体積%の範囲内、中でも1体積%〜60体積%の範囲内、特に10体積%〜50体積%の範囲内であることが好ましい。また、正極活物質の種類は、伝導する金属イオンの種類によって異なるものであるが、本発明の電池がリチウム電池である場合、正極活物質として、例えばLiCoO2、LiMnO2、Li2NiMn3O8、LiVO2、LiCrO2、LiFePO4、LiCoPO4、LiNiO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等を挙げることができる。
次に、本発明における負極活物質層について説明する。本発明における負極活物層は、少なくとも負極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料、導電化材および結着材の少なくとも一つを含有していても良い。特に、本発明においては、負極活物質層に含まれる固体電解質材料が、上述した硫化物固体電解質材料であることが好ましい。硫化水素発生量の少ない電池を得ることができるからである。負極活物質層に含まれる硫化物固体電解質材料の割合は、電池の種類によって異なるものであるが、例えば0.1体積%〜80体積%の範囲内、中でも1体積%〜60体積%の範囲内、特に10体積%〜50体積%の範囲内であることが好ましい。また、負極活物質としては、例えば金属活物質およびカーボン活物質を挙げることができる。金属活物質としては、例えばIn、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。一方、カーボン活物質としては、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。なお、負極活物質層に用いられる固体電解質材料および導電化材については、上述した正極活物質層における場合と同様である。また、負極活物質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内である。
本発明の電池は、上述した正極活物質層、電解質層および負極活物質層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および負極活物質の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、本発明に用いられる電池ケースには、一般的な電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースとしては、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。また、本発明の電池が全固体電池である場合、発電要素を絶縁リングの内部に形成しても良い。
本発明の電池の種類としては、リチウム電池、ナトリウム電池、マグネシウム電池およびカルシウム電池等を挙げることができ、中でも、リチウム電池およびナトリウム電池が好ましく、特に、リチウム電池が好ましい。また、本発明の電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。本発明の電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。
次に、本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法について説明する。本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法は、鉄硫化物の添加のタイミングによって、2つの実施態様に大別することができる。以下、本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法について、第一実施態様と、第二実施態様とに分けて説明する。
本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法の第一実施態様は、PS4ユニット含有イオン伝導体の原料である原料組成物と、鉄硫化物との混合物に、非晶質化を行う態様である。具体的には、PS4ユニットを含有するPS4ユニット含有イオン伝導体を含有する硫化物固体電解質材料の製造方法であって、上記PS4ユニット含有イオン伝導体の原料である原料組成物、および、鉄硫化物を含有する混合物を調製する調製工程と、上記混合物を、非晶質化処理により非晶質化する非晶質化工程と、を有することを特徴とするものである。
第一実施態様における調製工程は、上記PS4ユニット含有イオン伝導体の原料である原料組成物、および、鉄硫化物を含有する混合物を調製する工程である。なお、第一実施態様に用いられる原料組成物および鉄硫化物については、上記「A.硫化物固体電解質材料」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、原料組成物および鉄硫化物の混合物は、各成分が均一に分散していることが好ましい。
第一実施態様における非晶質化工程は、上記混合物を、非晶質化処理により非晶質化する工程である。なお、非晶質化により、通常、硫化物ガラスからなるPS4ユニット含有イオン伝導体が得られる。非晶質化処理としては、例えばメカニカルミリング法および溶融急冷法を挙げることができ、中でもメカニカルミリング法が好ましい。常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
第一実施態様の製造方法により得られる硫化物固体電解質材料については、上記「A.硫化物固体電解質材料」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、第一実施態様においては、上述した調製工程および非晶質化工程により得られたことを特徴とする硫化物固体電解質材料を提供することができる。
本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法の第二実施態様は、まず、PS4ユニット含有イオン伝導体の原料である原料組成物の非晶質化を行い、次に、得られたPS4ユニット含有イオン伝導体と鉄硫化物との混合を行う態様である。具体的には、PS4ユニットを含有するPS4ユニット含有イオン伝導体を含有する硫化物固体電解質材料の製造方法であって、上記PS4ユニット含有イオン伝導体の原料である原料組成物を調製する調製工程と、上記原料組成物を、非晶質化処理により非晶質化し、上記PS4ユニット含有イオン伝導体を合成する非晶質化工程と、上記PS4ユニット含有イオン伝導体、および、鉄硫化物を混合する混合工程と、を有することを特徴とするものである。
第二実施態様における調製工程は、上記PS4ユニット含有イオン伝導体の原料である原料組成物を調製する工程である。なお、第二実施態様に用いられる原料組成物については、上記「A.硫化物固体電解質材料」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、原料組成物は、各成分が均一に分散していることが好ましい。
第二実施態様における非晶質化工程は、上記原料組成物を、非晶質化処理により非晶質化し、上記PS4ユニット含有イオン伝導体を合成する工程である。なお、非晶質化により、通常、硫化物ガラスからなるPS4ユニット含有イオン伝導体が得られる。非晶質化処理としては、例えばメカニカルミリング法および溶融急冷法を挙げることができ、中でもメカニカルミリング法が好ましい。常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
第二実施態様における混合工程は、上記PS4ユニット含有イオン伝導体、および、鉄硫化物を混合する工程である。なお、鉄硫化物については、上記「A.硫化物固体電解質材料」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
第二実施態様の製造方法により得られる硫化物固体電解質材料については、上記「A.硫化物固体電解質材料」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、第二実施態様においては、上述した調製工程、非晶質化工程および混合工程により得られたことを特徴とする硫化物固体電解質材料を提供することができる。
出発原料として、硫化リチウム(Li2S)、五硫化リン(P2S5)および硫化鉄(II)(FeS)を用いた。これらの粉末をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、(100−x)(0.75Li2S・0.25P2S5)・xFeSの組成において、x=10のモル比となるように秤量し、メノウ乳鉢で混合し、原料組成物を得た。次に、得られた原料組成物1gを45mlのジルコニアポットに投入し、さらにジルコニアボール(Φ10mm、10個)を投入し、ポットを完全に密閉した。このポットを遊星型ボールミル機に取り付け、台盤回転数370rpmで40時間メカニカルミリングを行い、硫化物固体電解質材料を得た(実施例1−1)。また、(100−x)(0.75Li2S・0.25P2S5)・xFeSの組成において、xの値を、それぞれx=30、50、70に変化させたこと以外は、実施例1−1と同様にして、硫化物固体電解質材料を得た(実施例1−2〜1−4)。
(100−x)(0.75Li2S・0.25P2S5)・xFeSの組成において、xの値を、x=0に変化させたこと以外は、実施例1−1と同様にして、硫化物固体電解質材料を得た。
(硫化水素発生量の測定)
実施例1−1〜1−4、比較例1−1で得られた硫化物固体電解質材料をそれぞれ100mg秤量し、これらの粉末サンプルを、密閉されたデシケータ(1755cc、大気雰囲気、温度25℃、湿度40%)の内部に配置し、最初の300秒間で発生した硫化水素の発生量を、硫化水素センサーを用いて測定した。その結果を図4に示す。図4に示されるように、FeSの添加量が増えるに従って、硫化水素発生量が低減することが確認された。
実施例1−1〜1−4、比較例1−1で得られた硫化物固体電解質材料をそれぞれ100mg秤量し、4.3t/cm2の圧力でプレスすることによって、φ10mmのペレットを得た。得られたペレットの両極を、SUSを用いて挟み込んで電極とし、ソーラートロンを用いて5mVの電圧でインピーダンス測定を行って伝導度を求めた。
実施例1−2(x=30)および比較例1−1(x=0)で得られた硫化物固体電解質材料を用いて、ラマン分光測定を行った。ラマン分光測定は、上述した硫化水素発生量の測定前後における試料を対象とした。その結果を図10および図11に示す。図10に示されるように、実施例1−2で得られた硫化物固体電解質材料は、硫化水素発生量の測定前(硫化物固体電解質材料の合成時)において、PS4ユニットのピーク(417cm−1のピーク)を有することが確認された。これにより、鉄硫化物を添加した場合であっても、PS4ユニットの形成は阻害されないことが確認された。さらに、実施例1−2で得られた硫化物固体電解質材料は、鉄硫化物を含有するため、硫化水素発生量の測定後においても、PS4ユニットのピーク(417cm−1のピーク)には変化が生じなかった。
2 … 負極活物質層
3 … 電解質層
10 … 発電要素
Claims (16)
- 前記PS4ユニット含有イオン伝導体が、Li元素、P元素およびS元素を含有する原料組成物を用いてなるものであることを特徴とする請求項1に記載の硫化物固体電解質材料。
- 前記原料組成物が、Li2SおよびP2S5を有することを特徴とする請求項2に記載の硫化物固体電解質材料。
- 前記原料組成物におけるLi2SおよびP2S5の割合が、モル換算で、Li2S:P2S5=70〜85:15〜30の範囲内にあることを特徴とする請求項3に記載の硫化物固体電解質材料。
- 前記鉄硫化物が、FeSであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の硫化物固体電解質材料。
- 前記原料組成物におけるFeSの含有量が、20mol%以上であることを特徴とする請求項5に記載の硫化物固体電解質材料。
- 前記鉄硫化物が、前記PS4ユニット含有イオン伝導体の内部に、鉄硫化物相として存在することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の硫化物固体電解質材料。
- 正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有する電池であって、
前記正極活物質層、前記負極活物質層および前記電解質層の少なくとも一つが、請求項1から請求項7までのいずれかに記載の硫化物固体電解質材料を含有することを特徴とする電池。 - 前記原料組成物が、Li元素、P元素およびS元素を含有することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の硫化物固体電解質材料の製造方法。
- 前記原料組成物が、Li2SおよびP2S5を有することを特徴とする請求項9から請求項11までのいずれかの請求項に記載の硫化物固体電解質材料の製造方法。
- 前記原料組成物におけるLi2SおよびP2S5の割合が、モル換算で、Li2S:P2S5=70〜85:15〜30の範囲内にあることを特徴とする請求項12に記載の硫化物固体電解質材料の製造方法。
- 前記鉄硫化物が、FeSであることを特徴とする請求項9から請求項13までのいずれかの請求項に記載の硫化物固体電解質材料の製造方法。
- 前記原料組成物におけるFeSの含有量が、20mol%以上であることを特徴とする請求項14に記載の硫化物固体電解質材料の製造方法。
- 前記非晶質化処理が、メカニカルミリングであることを特徴とする請求項9から請求項15までのいずれかの請求項に記載の硫化物固体電解質材料の製造方法。
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