本出願は、本出願と同日に同じ発明者が出願した2つの特許出願と関連する。その2つの出願は通信リンクを使用した改良型GPS受信機(1996年3月8日出願のシリアルNo.08/612,582号)、パワー管理機能付き改良型GPS受信機(1996年3月8日出願のシリアルNo.08/613,966号)である。
本出願は、同じ発明者Norman F.Krasnerにより1995年10月9日に出願された仮特許出願「Low Power,Sensitive Pseudorange Measurement Apparatus and Method for Global Positioning Satellites Systems」と題する米国特許出願第60/005,318号に関連し、その出願日の権利を主張する。
本特許明細書の開示の一部は、著作権保護の対象となるものを含む。著作権所有者は、特許商標局の特許ファイルまたは記録にあるように、何人かが特許文書または特許開示をそのまま複製することに反対しないが、それ以外は全ての著作権を保有する。
本発明は、電力消耗が非常に少なく、非常に低い受信信号レベルで動作することができる遠隔ハードウェアになる方法で、移動、つまり遠隔物体の位置を計算する装置および方法に関する。つまり、電力消費量が減少する一方で、受信機の感度は上昇している。これは、図1Aで示すように、遠隔受信機能を実現し、個別に配置された基地局10から遠隔またはGPS移動ユニット20へとドップラー情報を送ることにより可能になる。
疑似距離を使用して、様々な方法で遠隔ユニットの地理的位置を計算できることを理解されたい。以下のような3つの例がある。
1.方法1:衛星のデータ・メッセージを基地局10から遠隔ユニット20に再送することにより、遠隔ユニット20はこの情報を疑似距離測定値と組み合わせ、その位置を計算することができる。例えば、参照により本明細書に組み込んだ米国特許第5,365,450号を参照すること。通常、遠隔ユニット20は、遠隔ユニット20の位置の計算を実行する。
2.方法2:遠隔ユニット20は、当技術分野で一般に実施されている普通の方法で受信したGPS信号から衛星の天文暦(エフェメリス)データを収集する。このデータは、通常は1時間ないし2時間有効で、疑似距離測定値と組み合わせて、通常は遠隔ユニットで、位置計算を完成することができる。
3.方法3:遠隔ユニット20は、通信リンク16を介して疑似距離を基地局10に送信し、基地局は、この情報を衛星の天文暦(エフェメリス)データと組み合わせて、位置計算を完成することができる。例えば、参照により本明細書に組み込んだ米国特許第5,225,842号を参照すること。
アプローチ(すなわち方法)1および3では、基地局10と遠隔ユニット20とは、関係する全衛星を共通して見て、GPS疑似距離コードの反復率に伴う時間の曖昧さを解決するのに十分なだけ接近して配置されると想定される。これは、基地局10と遠隔ユニット20との間の範囲が、光速にPN反復期間(1ミリ秒)を掛けた値の1/2倍、つまり約150kmの場合に満たされる。
本発明を説明するために、方法3は位置計算を完成するために使用すると想定される。しかし、本明細書を検討すると、当業者には本発明の様々な態様および実施形態を、上記の3つの方法および他のアプローチとともに使用できることが理解される。例えば、方法1の変形では、衛星の天文暦(エフェメリス)を表すデータのような衛星データ情報は、基地局から遠隔ユニットに送信され、この衛星データ情報を、バッファしたGPS信号から本発明により計算した疑似距離と組み合わせて、遠隔ユニットの緯度と経度を(および多くの場合は高度も)提供することができる。遠隔ユニットから受信する位置情報は、緯度および経度に制限するか、緯度、経度、高度、速度および遠隔ユニットの方位を含む包括的情報にすることができることが理解される。さらに、本発明の局部発振器の補正および/または電力管理の態様を、方法1のこの変形に使用することができる。さらに、ドップラー情報を遠隔ユニット20に送信し、本発明の態様により遠隔ユニット20で使用することができる。
方法3では、基地局10が、図1Aで示すようにデータ通信リンク16で送るメッセージを介して、遠隔ユニット20に測定を実施するよう命令する。基地局10は、このメッセージ内で視界にある衛星にドップラー情報も送る。これは衛星データ情報の一形態である。このドップラー情報は通常、周波数情報の形式で、メッセージは通常、視界にある特定の衛星の識別データまたは他の初期化データも特定する。このメッセージは、遠隔ユニット20の部品である別個のモデム22に受信され、低電力マイクロプロセッサ26に結合されたメモリ30に記憶される。マイクロプロセッサ26は、遠隔ユニット処理エレメント32〜48とモデム22との間のデータ情報転送を扱い、以下の検討で明白なように、遠隔受信機20内の電力管理機能をも制御する。通常、マイクロプロセッサ26は、疑似距離および/または他のGPSの計算を実施中、または代替電源が利用可能な場合を除き、大部分または全部の遠隔ユニット20のハードウェアを低電力状態または電力断状態に設定する。しかし、モデムの受信機部分は、少なくとも周期的に電源を(全力まで)入れ、基地局10が遠隔ユニットの位置を決定する命令を送信したか否かを決定しなければならない。
この上記のドップラー情報は、このようなドップラー情報に要求される精度が高くないので、継続時間が非常に短い。例えば、10Hzの精度が必要で最大ドップラーが約±7kHzの場合、視界にある衛星ごとに11ビットのワードで十分である。8個の衛星が視界にある場合は、このようなドップラーを全部指定するのに、88ビット必要となる。この情報を使用すると、遠隔ユニット20がこのようなドップラーを探索する必要がなくなり、したがってその処理時間は十分の一以下に短縮される。ドップラー情報を使用すると、さらに、GPS移動ユニット20がGPS信号のサンプルをさらに素早く処理でき、これはプロセッサ32が位置情報を計算するために全電力を受け取らねばならない時間を短縮する傾向がある。これだけでも遠隔ユニット20が消費する電力が低下し、感度向上に貢献する。GPSメッセージのデータのエポック(epoch)など、追加の情報を遠隔ユニット20に送ることもできる。
受信したデータ・リンク信号は、高精度搬送波周波数を使用することができる。遠隔受信機20は、以下で説明する図6に示すように、自動周波数制御(AFC)ループを使用して、この搬送波にロックし、それによってその基準発振器をさらに較正する。10ミリ秒というメッセージ送信時間、20dBの受信S/N比によって、通常はAFCを介した周波数測定に10Hz以上の精度が可能になる。これは一般に、本発明の要件に十分な精度を上回る。この特徴は、従来通りに実行するか、本発明の高速畳み込み法を用いて実行する位置計算の精度も改善する。
本発明の一つの実施形態では、通信リンク16は、双方向ページャー・システムのように市販されている狭帯域無線周波数通信媒体である。このシステムは、遠隔ユニット20と基地局10との間で送信されるデータ量が比較的少ない実施形態に使用することができる。ドップラーおよび他のデータ(例えば視界にある衛星のIDなどの初期化データ)の送信に必要なデータ量は比較的少なく、位置情報(例えば疑似距離)に必要なデータ量も同様に比較的少ない。したがって、この実施形態に対しては狭帯域システムで十分である。これは、短期間に大量のデータを送る必要があるようなシステムとは異なり、このシステムはより高い帯域の無線周波数通信媒体を必要とすることがある。
遠隔ユニット20が(例えば基地局10から)GPS処理命令とドップラー情報をともに受信すると、バッテリおよび電力調整器および電力スイッチ回路36(および制御された電力線21a、21b、21cおよび21d)を介して、マイクロプロセッサ26がRF/IF変換器42、アナログ/ディジタル変換器44およびディジタル・スナップショット・メモリ46を起動し、これによってこれらの構成要素に十分な電力を供給する。これによってアンテナ40を介して受信したGPS衛星からの信号はIF周波数に逓減され、その後ディジタル化される。通常は100ミリ秒から1秒(またはこれより長いこともある)の継続時間に対応するこのようなデータの連続セットは、次にスナップショット・メモリ46に記憶される。記憶されるデータの量は、電力の節約がよりよい感度の獲得ほど重要でない場合には、(よりよい感度を獲得するために)メモリ46に記憶できるデータを増加させ、電力の節約が感度より重要な場合はデータの記憶量が少なくなるようマイクロプロセッサ26により制御される。通常、GPS信号が部分的に妨害された場合は、感度の方が重要になり、豊富な電源(例えば自動車用バッテリ)を使用可能な場合は、電力の節約がそれほど重要ではない。このデータを記憶するためにこのメモリ46にアドレスすることは、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ集積回路48が制御する。GPS信号の逓減は、以下でさらに検討するように、局部発振器信号39を変換器42に提供する周波数合成装置38を使用して達成される。
この時間を通して(スナップショット・メモリ46を視界内の衛星からのディジタル化GPS信号で満たす間)、DSPマイクロプロセッサ32は低電力状態に維持することができる。RF/IF変換器42およびアナログ/ディジタル変換器44は、通常、疑似距離の計算に必要なデータを収集し記憶するのに十分な短期間、オン状態にされる。データ収集が完了すると、変換器回路はオフにされるか、(メモリ46が十分な電力を受け続けながら)制御された電力線21bおよび21cを介して他の方法で電力が削減され、したがって実際の疑似距離計算中にさらなる電力消耗に貢献しない。疑似距離計算は、一つの実施形態では、Texas InstrumentsからのTMS320C30集積回路で例証されるような汎用プログラマブル・ディジタル信号処理IC32(DSP)を使用して実行される。このDSP32は、このような計算を実行する前に、制御された電力線21eを介してマイクロプロセッサ26および回路36によって能動電力状態にされる。
このDSP32は、特殊化したカスタム・ディジタル信号処理ICではなく汎用およびプログラマブルICを使用するという点で、ある種の遠隔GPSユニットに使用されている他のDSPとは異なる。さらに、DSP32は、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムの使用を可能にし、これによってローカルに生成した基準と受信信号との間で大量の相関演算を素早く実行することにより、疑似距離を非常に高速に計算することができる。通常、受信した各GPS信号のエポックの探索を終了するのに、このような相関が2046必要である。高速フーリエ変換アルゴリズムによって、このような位置を全て同時にかつ平行に探索することができ、したがって従来通りのアプローチに対して、必要な計算プロセスが10倍から100倍高速化できる。
DSP32は、視界内衛星のそれぞれに対して疑似距離の計算を終了すると、本発明の一つの実施形態では、相互接続バス33を介してこの情報をマイクロプロセッサ26に送る。この時点で、マイクロプロセッサ26は、適切な制御信号をバッテリおよび電力調整回路36に送ることにより、DSP32およびメモリ46を再び低電力状態に入れることができる。次に、マイクロプロセッサ26はモデム22を使用して、最終的な位置計算のために、データ・リンク16で疑似距離データを基地局10に送る。疑似距離データに加えて、バッファ46で最初にデータを収集した時刻からデータ・リンク16でデータを送る時刻までに経過した時間を示す時間タグを、基地局10に同時に送ることができる。この時間タグは、位置計算を実行する基地局の能力を向上させる。というのは、データの収集時にGPS衛星位置を計算できるからである。代替方法として、上記の方法1により、DSP32は遠隔ユニットの位置(例えば緯度、経度または緯度、経度および高度)を計算し、このデータをマイクロプロセッサ26に送ることができ、これは同様にモデム22を介してこのデータを基地局10に中継する。この場合、位置計算は、DSPが衛星のデータ・メッセージを受信した時刻からバッファのデータ収集が開始した時刻までの経過時間を維持することによって容易になる。これによって、位置計算を実行する遠隔ユニットの能力が向上する。というのは、データ収集時にGPS衛星位置を計算できるからである。
図1Aで示すように、モデム22は、一つの実施形態では別のアンテナ24を使用して、データ・リンク16で受信メッセージを送受信する。モデム22は、交互にアンテナ24に結合される通信用受信機および通信用送信機を含むことが理解される。同様に、基地局10は、別のアンテナ14を使用して、データ・リンク・メッセージを送受信することができ、したがって基地局10でGPSアンテナ12を介してGPS信号を連続的に受信することができる。
典型的な例では、DSP32の位置計算は、ディジタル・スナップショット・メモリ46に記憶されたデータ量および単数または複数のDSPの速度によって、数秒かからないことが予想される。
以上の検討から、遠隔ユニット20は、基地局10からの位置計算命令が頻繁でなければ、電力消費量の多い回路をわずかな時間しか起動しなくて済むことが明白である。少なくとも多くの状況で、このような命令の結果、遠隔装置が高い電力消耗状態へと起動されるのは、時間のわずか約1%以内になることが予測される。
次に、これによってバッテリは、他の場合に可能な長さより100倍長く動作できる。電力管理操作の実行に必要なプログラム命令は、EEPROM28または他の適切な記憶媒体に記憶される。この電力管理戦略は、様々な電力稼働率の状況に適用可能である。例えば、原動機が使用可能な場合、位置の決定は連続的に実施される。
上記で示したように、ディジタル・スナップショット・メモリ46は、比較的長い期間に対応するレコードを捕らえる。高速畳み込み法を用いてこの大きなデータのブロックを効率的に処理すると、(例えば建物、樹木などで部分的に妨害されたために受信状態が悪い場合に)低受信レベルの信号を処理する本発明の能力に貢献する。可視GPS衛星の全疑似距離が、同じバッファ済みデータを使用して計算される。これによって、信号の振幅が急速に変化している(都市部の妨害状態のような)状態で、連続的にトラッキングするGPS受信機より性能が改善される。
図1Bで示したわずかに異なる実現形態は、マイクロプロセッサ26およびその周辺機器(RAM30およびEEPROM28)を不要にし、その機能を、さらに複雑なFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)49内に含まれる追加の回路が肩代わりする。この場合、FPGA49、つまり低電力装置は、相互接続部19を通してモデム22からの起動を感知すると、DSP32aチップを目覚めさせる働きをする。相互接続部19は、モデムをDSP32aおよびFPGA19に連結する。DSPチップ32aは、目覚めると、モデムと直接にデータを送受信する。DSP32aは、バッテリおよび電力調整器およびスイッチ36に連結して回路36に電力オン/オフ命令を与える相互接続部18を通じて、電力制御操作も実行する。DSP32aは、図7に示すような電力管理法により、相互接続部18によって回路36に与えられた電源オン/オフ命令を通して、様々な構成要素の電力を選択的にオンにしたり、低下させたりする。回路36は、このようなコマンドを受信し、様々な構成要素に選択的に電力を供給する(または電力を低下させる)。回路36は、相互接続部17を介してDSP32aを目覚めさせる。回路36は、選択した制御装置の電力線21a、21b、21c、21dおよび21fを通る電力を選択的に切り換えることによって、様々な構成要素に選択的に電力を与える。したがって、たとえば変換器42および変換器44に電力を供給するには、線21bおよび21cを通してそれらの変換器に電力を供給する。同様に、モデムへの電力は、制御した電力線21fを通じて供給される。
低周波数結晶発振器47は、メモリおよび電力管理FPGA49に連結される。一つの実施形態では、メモリおよび電力管理FPGA49は、低周波数発振器47を含む低電力タイマを含む。FPGA49のタイマが切れると、FPGA49は相互接続部17を通じてDSP32aに目覚まし信号を送り、次にDSP32aはバッテリおよび電力調整器および電力スイッチ回路36へ電力オン/オフ命令を与えることにより、他の回路を目覚めさせることができる。他の回路は、位置決め操作する(たとえば疑似距離または緯度および経度などの位置情報を決定する)ため、回路36の制御により、制御された電力線21a、21b、21c、21dおよび21fを通して電力を供給される。位置決め操作の後、DSP32Aは、図7で示す方法により、FPGAタイマをリセットし、それ自体への電力を削減し、回路36も他の構成要素への電力を削減する。単数または複数のバッテリが、メモリおよび電力管理FPGA49およびDSP32aによって制御される制御電力線を通して、全電力制御回路に電力を供給することが予測される。構成要素への電力線(21bなど)を制御することによって電力を直接削減するのではなく、構成要素が消費する電力は、(図1Bの相互接続部17を介したDSP32aの場合のように)構成要素へ信号を送って電力を削減するか、十分な電力になるよう目覚めさせることによって削減できることも予測され、これは往々にして、集積回路などの構成要素が、構成要素の電力状態を制御する入力部を有し、構成要素が電力消費を制御するのに必要な内部論理(たとえば構成要素の様々な論理ブロックへの電力を削減する論理)を有する場合に可能である。メモリおよび電力管理FPGA49は、データが変換器44からメモリ46に記憶される時、またはDSP構成要素32aがメモリ46からデータを読み取っている時のアドレス操作など、メモリを制御し、管理する。FPGA49は、必要に応じて、メモリ・リフレッシュなどの他のメモリ機能も制御することができる。
図1Cは、図1Aおよび図1Bに示したGPS移動ユニットと同じ構成要素を多く含むGPS移動ユニットの本発明による別の実施形態を示す。図1Cに示すGPS移動ユニットは、複数のバッテリ81、さらにオプションの外部電源入力部83および太陽電池79からの電力を受けるよう結合される電力調整器77を含む。電力調整器77は、図1Cに示すDSPチップ32aおよびメモリおよび電力管理FPGA39に管理された制御電力線の制御下で、全回路に電力を供給する。太陽電池79は、従来通りの充電技術を用いて、これらのバッテリを充電することができる。太陽電池79は、バッテリを充電する以外に、GPS移動ユニットに電力を供給することもできる。図1Cに示した実施形態では、FPGA49は相互接続部75を介してDSPチップ32aに目覚まし信号を与える。この信号によってDSPチップは十分な電力状態に復帰し、DSPチップ32aについて説明する様々な機能を実行する。DSPチップは、相互接続部19を介してDSPに直接結合されるモデム22から、外部コマンドを介して十分な電力状態に起動することもできる。
図1Cも、GPS移動ユニットが電力節約のために感度を犠牲にすることができる本発明の特徴を示す。本明細書で述べるように、GPS移動ユニットの感度は、メモリ46に記憶した干渉GPS信号の量を増加させることによって向上させることができる。これは、より多くのGPS信号を捕捉してディジタル化し、このデータをメモリ46に記憶することによって実施する。このようにバッファリングを多くすると電力消費量が増加するが、GPS移動ユニットの感度も向上させる。このように感度を上げたモードは、GPSユニットの電力モード・スイッチ85で選択することができ、これはバス19に結合されてDPSチップ32aにコマンドを与え、高感度モードにする。あるいは、この電力モード・スイッチ85は、DSP32aチップにコマンドを送り、GPS信号の捕捉スナップショットを小さくし、それによってメモリ46に記憶するGPS信号の量を少なくすることによって、電力記憶量を増加させ、感度を下げるようにすることもできる。この電力モードの選択は、基地局からモデム22へ送信した信号で行われ、次にモデムが相互接続部19を介してDSPチップ32aにこのコマンドを通信することもできることが理解される。
移動GPSユニットのRF/IF周波数変換器およびディジタル化システムの代表的な例を、図2Aに示す。1575.42MHzの入力信号が、帯域制限フィルタ(BPF)50および低ノイズ増幅器(LNA)52を通過し、周波数変換ステージに送られる。このステージで使用される局部発振器(LO)56は、(PLL58を介して)2.048MHz(またはその高調波)の温度補正済み水晶発振器(TCXO)60に位相ロックされる。好ましい実施形態では、LOの周波数は1531.392MHzで、これは2991×0.512MHzである。その結果生じるIF信号は、ここで44.028MHzを中心とする。このIFが望ましいのは、44MHz付近で低価格の構成要素が入手できるからである。特に、テレビ用途に豊富に使用されている表面弾性波フィルタ(SAW)は容易に入手することができる。言うまでもなく、SAW装置の代わりに他の帯域制限装置を使用することができる。
受信したGPS信号は、ミキサー54でLO信号と混合され、IF信号を生成する。このIF信号は、2MHzの帯域まで精密帯域制限するためSAWフィルタ64を通過し、次にI/Q逓減器68に送られ、これが信号を近ベースバンド(通常は4kHz中心の周波数)に変換する。この逓減器68の局部発振器の周波数は、1.024MHzの43番目の高調波、つまり44.032MHzの形で2.048MHzのTCXO60から得られる。
I/Q逓減器68は、通常はRF構成要素として市販されている。これは通常、2つのミキサーとロウパス・フィルタで構成される。このような場合、一方のミキサーの入力ポートにはIF信号およびLO信号が供給され、他方のミキサーの入力ポートには同じIF信号および90°位相をシフトしたLO信号が供給される。2つのミキサーの出力にはローパス・フィルタがかけられ、フィードスルーや他の歪み生成物を除去する。
図2Aで示すように、必要に応じて、帯域制限操作の前後に増幅器62および66を使用することができる。
I/Q逓減器68の2つの出力は、信号を2.048MHzでサンプリングする2つの整合A/D変換器44に送られる。代替実現形態は、A/D変換器44を比較器(図示せず)と交換するが、これはそれぞれ着信信号の極性に従って2価値(1ビット)系列のデータを出力する。このアプローチは、マルチレベルA/D変換器に対して受信機の感度が約1.96dB失われる結果となることが、よく知られている。しかし、比較器を使用すると、A/D変換器に対して大幅に費用が節約でき、さらにその後のスナップショット・メモリ46でのメモリ要件が軽減される。
逓減器およびA/Dシステムの代替実現形態を図2Bに示す。これは帯域サンプリング法を使用する。使用するTCXO70は、周波数が4.096MHz(またはその高調波)である。TCXOの出力は、A/D変換器44(または比較器)へのサンプル・クロックとして使用することができ、これは信号を1.028MHzに変換する働きをする。この周波数は、4.096MHzの第11高調波と44.028MHzという入力IF周波数との差である。その結果として生じる1.028MHzのIFは、サンプル率の約4分の1であり、これはサンプリング・タイプの歪みを最小にするのにほぼ理想的であることが知られている。図2AのI/Qサンプリングと比較すると、この信号サンプラは、2チャンネルではなく1チャンネルのデータを与えるが、速度は2倍である。また、データは1.028MHzというIFで効果的である。次に、ほぼ0MHzへのI/Q周波数変換が、下記の後続の処理でディジタル手段により実現される。図2Aおよび図2Bの装置は、費用および複雑さは同等で、構成要素の入手しやすさが好ましいアプローチを決めることが多い。しかし当業者には、同様の結果を得るために他の受信機の構成を使用できることが明白である。
以下の検討を単純にするために、以下では、図2AのI/Qサンプリングを使用し、スナップショット・メモリ46は2.048MHzの2チャンネルのディジタル化データを含むものとする。
DSP32で実行される信号処理の詳細は、図3の流れ図および図4A、図4B、図4C、図4Dおよび図4Eの図の助けを借りて理解することができる。当業者には、下記の信号処理を実行するためのマシン・コードまたは他の適切なコードがEPROM34に記憶されていることが明白である。他の不揮発性記憶装置を使用することもできる。処理の目的は、ローカルに生成した波形に対する受信波形のタイミングを決定することである。さらに、高感度を達成するために、このような波形の非常に長い部分、通常は1ミリ秒ないし1秒を処理する。
処理を理解するために、まず、受信した各GPS信号(C/Aモード)は、通常は「チップ」と呼ばれる、1023個の記号でできた高速(1MHz)反復疑似乱数(PN)パターンで構成されることが分かる。この「チップ」は図4Aに示す波形に似ている。このパターンにはさらに、50ボーで衛星から送信された低速データが加えられる。このデータはすべて、2MHzの帯域で測定した状態で、非常に低いS/N比で受信される。搬送波の周波数およびすべてのデータ速度が、非常に高い精度まで分かり、かつ、データがないとしたら、S/N比を大幅に改善し、互いに連続するフレームを加えることにより、データを大幅に減少させることができる。たとえば、1秒の期間に1000のPNフレームがある。最初のこのようなフレームを、次のフレームに一貫して追加し、結果を第3フレームに追加し、以下同様にすることができる。その結果、継続時間は1023チップの信号となる。これで、このシーケンスの位相をローカル基準シーケンスと比較し、2つの間の相対的時間を決定して、いわゆる疑似距離を確立することができる。
上記のプロセスは、スナップショット・メモリ46に記憶された受信データの同じセットから、視界内の各衛星について別個に実施しなければならない。というのは、概して異なる衛星からのGPS信号はドップラー周波数が異なり、PNパターンが互いに異なるからである。
信号ドップラーの不確実さのために搬送波の周波数が5kHz以上で不明になり、受信機の局部発振器の不確実さのためにこの量が追加されるので、上記のプロセスは困難になる。このドップラーの不確実さは、本発明の一つの実施形態では、視界内の衛星からの全GPS信号を同時にモニタする基地局10から、このような情報を送ることによって取り除かれる。したがって、ドップラー探索は遠隔ユニット20では回避される。局部発振器の不確実さも、図6に示すように、基地−リモート間通信信号を使用してAFC操作を実行することにより、(恐らく50Hzまで)大幅に削減される。
GPS信号に重ねた50ボーのデータが存在することで、20ミリ秒の期間を超えるPNフレームの一貫した加算がなお制限される。つまり、データ符号の反転でさらなる処理利得が妨げられるまでに、最大20のフレームを一貫して追加することができる。以下のパラグラフで詳述するように、フレームの整合フィルタリングおよび絶対値(または絶対値の平方)の加算によって、追加の処理利得を達成することができる。
図3の流れ図は、ステップ100から開始し、基地局10からのコマンドでGPSの処理操作を初期化する(図3では「固定コマンド」と呼ぶ)。このコマンドは、通信リンク16を介して視界内の各衛星のドップラー・シフトおよびその衛星のIDとを送ることを含む。ステップ102で、遠隔ユニット20は基地局10から送信された信号への周波数ロックによって、局部発振器のドリフトを計算する。代替法は、遠隔ユニットに非常に良質の温度補正水晶発振器を使用することである。例えば、ディジタル制御のTCXO、いわゆるDCXOは現在、約0.1/百万の精度、つまりL1のGPS信号に約150Hzの誤差を達成することができる。
ステップ104では、遠隔ユニットのマイクロプロセッサ26は、受信機のフロントエンド42、アナログ/ディジタル変換器44およびディジタル・スナップショット・メモリ46への電源を投入し、C/AコードのPNフレームK個の継続時間だけデータのスナップショットを収集し、ここでKは通常100ないし1000(100ミリ秒から1秒の継続時間に相当)である。十分な量のデータが収集されたら、マイクロプロセッサ26はRF/IF変換器42およびA/D変換器44の電源を切る。
各衛星の疑似距離は、以下のように計算される。まず、ステップ106では、処理すべき任意のGPS衛星信号について、対応する疑似乱数コード(PN)コードをEPROM34から検索する。手短に検討するように、好ましいPN記憶フォーマットは、実際はこのPNコードのフーリエ変換を、1023PNビットあたりサンプル2048個の率でサンプリングしたものである。
スナップショット・メモリ46のデータは、N個の連続するPNフレームのブロック、つまり2048N個の複雑なサンプルのブロックで処理される(Nは通常は5ないし10の範囲の整数である)。図3の底部のループ(ステップ108〜124)で示すように、各ブロックで同様の操作を実行する。つまり、このループを、処理すべきGPS信号ごとに合計K/N回、実行する。
ステップ108では、2048N個のデータ・ワードのブロックに、信号搬送波のドップラー効果と、受信機の局部発振器のドリフト効果とを取り除く複素指数を掛ける。例証するために、基地局10から送信されるドップラー周波数と、feHzに対応する局部発振器のオフセットとを想定してみる。データを予め逓倍すると、関数e−j2πfenT ,n=[0,1,2・・・、2048N−1]+(B−1)×2048Nの形をとり、ここでT=1/2.048MHzはサンプリング期間で、ブロック数Bは1ないしK/Nの範囲である。
次に、ステップ110では、ブロック内のデータの隣接するフレームN個(通常は10個)のグループを互いに加算する。つまり、サンプル0、2048、4096、・・・2048(N−1)を互いに加算し、次に1、2049、4097、・・・2048(N−1)+1を互いに加算し、以下同様とする。この時点で、ブロックは2048個しか複素サンプルを含まない。このような加算演算によって生成した波形の例を、PNフレーム4個の場合で図4Bに示す。この加算演算は、高速畳み込み演算に先立つ前処理演算と見なすことができる。
次に、ステップ112〜118で、平均化したフレームはそれぞれ、整合フィルタリング操作を受けるが、その目的はデータのブロック内に含まれる受信PNコードとローカルに生成したPN基準信号との間に相対的時間を決定することである。同時に、サンプリング時間に対するドップラー効果も補正される。これらの演算は通常、一つの実施形態では、本明細書で述べるように、巡回畳み込みを実行する方法で用いた高速フーリエ変換アルゴリズムなど、高速畳み込み演算を使用することにより、大幅に高速化される。
話を単純にするために、上記のドップラー補正は最初は無視される。
実行される基本的動作は、処理されるブロックのデータ(2048個の複素数サンプル)を、ローカルに記憶される同様の基準PNブロックと比較することである。比較は実際には、データ・ブロックの各エレメントに対応する基準エレメントを(複素数で)掛けて、結果を合計することによって実行される。この比較を「相関」と呼ぶ。しかし、個々の相関はデータ・ブロックのある特定の開始時間にしか実行せず、よりよく整合のとれそうな可能な位置が2048ある。すべての可能な開始位置の全相関動作のセットを、「整合フィルタリング」操作と呼ぶ。好ましい実施形態では、完全な整合フィルタリング操作が必要である。
PNブロックの他の時間は、PN基準を循環シフトし、同じ操作を実行することによって試験することができる。つまり、PNコードをp(0)、p(1)・・・p(2047)とすると、サンプル1個による循環シフトはp(1)p(2)・・・p(2047)p(0)となる。この変形シーケンスは、データ・ブロックがサンプルp(1)で開始するPN信号を含むか、試験して決定する。同様に、データ・ブロックはサンプルp(2)、p(3)等で開始でき、それぞれは基準PNを循環シフトし、試験を再実行することによって試験される。完全な試験のセットは2048×2048=4,194,304の動作が必要で、それぞれが複素数の乗法と加算法とを必要とすることが明白である。
高速フーリエ変換(FFT)を使用して、より効率的で数学的に同等の方法を使用することができ、これは約12×2048の複素数乗法と2倍の加算数を必要とするだけである。この方法では、ステップ112でデータ・ブロックに対してFFTが行われ、かつPNブロックに対してFFTが行われる。データ・ブロックのFFTは、ステップ114で基準のFFTの複素共役行列を掛け、その結果をステップ118で逆フーリエ変換する。このようにして得られた結果としてのデータは、長さ2048で、あらゆる可能な位置のデータ・ブロックおよびPNブロックの相関のセットを含む。順方向または逆のFFT演算はそれぞれ、P/2 log2 Pの演算を必要とし、ここでPは送るデータのサイズである(基数を2とするFFTアルゴリズムを使用するものとする)。問題のケースの場合、B=2048なので、各FFTには11×1024の複素数乗法が必要である。しかし、好ましい実施形態の場合のように、PNシーケンスのFFTをEPROM34に予め記憶しておくと、フィルタリング・プロセス中にFFTを計算する必要がない。複素数の合計を順方向FFT、逆FFTについて掛け、FFTの積は(2×11÷2)×1024=24576となり、これは直接的な相関に対して171倍の節約になる。図4Cは、この整合フィルタリング演算で生成した波形を示す。
本発明の好ましい方法は、データのサンプル2048個がチップ1023個のPN期間に採取されるようなサンプル率を使用する。これによって、長さ2048のFFTアルゴリズムを使用することができる。べき数2または4のFFTアルゴリズムは他のサイズ(および2048=211)より通常ははるかに効率的であることが分かっている。したがって、このようにして選択したサンプリング率は、処理速度を大幅に改善する。適切な循環畳み込みが達成できるよう、FFTのサンプル数は、一つのPNフレームのサンプル数に等しいことが好ましい。つまり、上述したように、この状態によって、データ・ブロックをPNコードのすべての循環シフト・バージョンと突き合わせて試験することができる。FFTのサイズを、一つのPNフレームの長さとは異なるサンプル数にまたがるよう選択する場合は、当技術分野で「オーバラップ・セーブ」または「オーバーラップ加算」として知られる代替方法のセットを使用することができる。このアプローチには、好ましい実現形態について上述したアプローチより、約2倍の計算が必要である。
当業者には、様々なサイズおよび様々なサンプル率の様々なFFTアルゴリズムを使用して上記のプロセスを修正し、高速畳み込み演算を行う方法が明らかである。また、必要な計算の数が、直接的な相関で必要なB2 ではなくBlog2 Bに比例する特性も有する高速畳み込みアルゴリズムのセットが存在する。このようなアルゴリズムの多くは、標準的な参考文献、たとえばH.J.Nussbaumerの「Fast Fourier Transform and Convolution Algorithms」(New York,Springer−Verlag,C1982)に列挙されている。このようなアルゴリズムの重要な例は、Agarwal−Cooleyのアルゴリズム、分割入れ子アルゴリズム、再帰的な多項式入れ子アルゴリズム、およびWinogradフーリエ・アルゴリズムであり、最初の3つは畳み込みに、後者はフーリエ変換の実行に使用する。これらのアルゴリズムを、上述した好ましい方法の代わりに使用してもよい。
次に、ステップ116で使用する時間ドップラー補正法について説明する。好ましい実現形態では、受信GPS信号へのドップラー効果および局部発振器の不安定さのため、使用するサンプル率は、PNフレームにつきサンプル2048個という数字に正確に対応しなくてもよい。たとえば、ドップラー・シフトは±2700ナノ秒/秒という遅延誤差を生じることがあることが知られている。この効果を補正するために、上記のように処理したデータのブロックは、この誤差を補正するために時間をシフトする必要がある。一例として、処理するブロックのサイズがPNフレーム5個(5ミリ秒)に相当する場合は、ブロックごとの時間シフトは±13.5ナノ秒にもなり得る。局部発振器の不安定さによる時間シフトはこれより小さい。これらのシフトは、単一のブロックに必要な時間シフトの倍数で、連続するデータのブロックを時間シフトさせることにより補正することができる。つまり、フロック当たりのドップラー時間シフトがdの場合、ブロックはnd(n=0、1、2・・・)だけ時間シフトされる。
概して、これらの時間シフトはサンプルの断片である。ディジタル信号処理法を使用してこれらの演算を直接実行すると、非整数の信号補間法を使用することになり、計算の負担が大きくなる。代替アプローチ、つまり本発明の好ましい方法は、高速フーリエ変換の関数に処理を組み込む。d秒の時間シフトは、ある関数のフーリエ変換にe−j2πfdを掛けた値に等しいことがよく知られており、ここでfは周波数の変数である。したがって、時間シフトは、データ・ブロックのFFTにe−j2πnd/Tf (n=0、1、2・・・、1023)およびe−j2π(n−2048)d/Tf(n=1024、1025、・・・2047)を掛けることによって達成され、ここでTf はPNフレームの継続時間(1ミリ秒)である。この補正は、FFT処理に伴う処理時間を約8%しか増加させない。補正は、0Hzにわたる位相補正の連続性を保証するため、2つの半分に分割される。
整合フィルタリング演算が終了したら、ブロックの複素数の絶対値、または絶対値の平方をステップ120で計算する。いずれの選択肢でもほぼ同様に働く。この演算は、(図4Dに示すような)50Hzのデータ位相の反転、および残っている低周波数搬送波の誤差を取り除く。次に、サンプル2048個のブロックをステップ122で処理された前のブロックの合計に加算する。ステップ122は、ステップ112〜118で行った高速畳み込み演算に続く後処理演算と見なすことができる。これは、ステップ124の決定ブロックで示すように、すべてのK/Nブロックが処理されるまで続き、ここでサンプル2048個の1ブロックが残り、これで疑似距離を計算する。図4Eは加算演算の後の結果となる波形を示す。
疑似距離の決定はステップ126で行う。ローカルで計算したノイズ・レベルより上でピークを探索する。このようなピークを発見したら、ブロックの開始時刻に対するその発生時刻が、特定のPNコードおよび付随のGPS衛星に伴う疑似距離を表す。
ステップ126で補間ルーチンを使用し、サンプル率(2.048MHz)に伴う精度よりはるかに大きい精度までピークの位置を探す。補間ルーチンは、遠隔受信機20のRF/IF部分に使用した前の帯域フィルタリングによって決まる。良質のフィルタは、底辺の幅がサンプル4個に等しいほぼ三角形のピークをもたらす。この状態で、(DCベースラインを除去するため)平均振幅を引いた後、最も大きい2つの振幅を使用して、ピーク位置をより精密に決定することができる。サンプル振幅をAp およびAp+1 とし、ここでAp ≧Ap+1 で、一般性の損失がなく、pがピーク振幅の指標とする。これで、Ap に対応する位置に対するピークの位置は、ピーク位置=p+Ap /(Ap +Ap+1 )という式で得られる。たとえば、Ap =Ap+1 とすると、ピーク位置はp+0.5である、つまり2つのサンプルの指標の中間であることが分かる。場合によっては、帯域フィルタリングがピークをまるめることができ、3ポイントの多項式補間の方が適切である。
以上の処理では、閾値決定に使用するローカル・ノイズ基準は、このような最大ピークを幾つか除去した後に平均化した最終ブロックの全データを平均することによって計算することができる。
疑似距離が分かったら、衛星を全て処理するまで、ステップ128で、視界内にある次の衛星について同様の方法で処理を続行する。全衛星の処理が終了したら、プロセスはステップ130に続き、疑似距離データを通信リンク16を介して基地局10に送り、ここで遠隔ユニットの最終位置計算が実行される(方法3を使用するものとする)。最後にステップ132で、遠隔ユニット20の回路の大部分を低電力状態にし、別の位置決め操作を実行するという新しいコマンドを待つ。
次に、上述し図3で図示した信号処理について概略する。遠隔GPSユニット上のアンテナを使用して、視界内の単数または複数のGPS衛星からのGPS信号を遠隔GPSユニットで受信する。この信号をディジタル化し、遠隔GPSユニットのバッファに記憶する。この信号を記憶した後、プロセッサは前処理、高速畳み込み処理、および後処理操作を実行する。これらの処理操作は以下のことを伴う。
a)記憶したデータを、GPS信号に含まれる疑似乱数(PN)コードのフレーム期間の倍数と継続時間を等しくする一連の隣接ブロックに分割する。
b)各ブロックで、データの連続するサブブロックを一貫して加算することにより、疑似乱数コード期間の継続時間に等しい長さを有するデータの圧縮ブロックを生成する前処理ステップを実行する。サブブロックの継続時間は1PNフレームに等しい。この加算ステップは、各サブブロックの対応するサンプル数を互いに加算することである。
c)圧縮ブロックごとに、整合フィルタリング演算を実行する。これは高速畳み込み技術を用いて、データのブロック内に含まれる受信PNコードとローカルで生成したPN基準信号(たとえば処理しているGPS衛星の疑似乱数シーケンス)との間の相対的タイミングを決定する。
d)前記整合フィルタリング演算で生成した積で絶対値平方演算を実行して疑似距離を決定し、絶対値平方データのブロックを互いに加算してピークを生成し、全ブロックの絶対値平方データを単一ブロックのデータにまとめることにより後処理する。
e)ディジタル補完法を用いて高精度で前記単一ブロックのデータのピーク位置を探す。ここで、その位置はデータ・ブロックの開始から前記ピークまでの距離で、位置は処理中の疑似乱数シーケンスに対応するGPS衛星の疑似距離を表す。
通常、バッファしたGPS信号の処理に使用する高速畳み込み技術は、高速フーリエ変換(FFT)で、畳み込みの結果は圧縮ブロックの順方向変換の積と予め記憶した疑似乱数シーケンスの順方向変換の表現とを計算し、第1結果を生成し、次に第1結果の逆変換を実行して結果を回収することによって生成する。また、ドップラーによって誘発された時間遅延および局部発振器によって誘発された時間誤差の影響は、圧縮ブロックの前方向FFTと、ブロックに必要な遅延補正に対応するようサンプル数に対する位相が調整された複素指数関数との乗法を、前方向と逆高速フーリエ変換演算との間に挿入することにより、データの各圧縮ブロックごとに補正される。
以上の実施形態では、各衛星からのGPS信号の処理は、並列ではなく、時間の経過とともに順番に発生しする。代替実施形態では、視界内の全衛星のGPS信号を、時間的に並列にまとめて処理することができる。
基地局10は、対象となる全衛星に対して共通の視野を有し、C/A PNコードの反復期間に伴う曖昧さを避けるために、遠隔ユニット20と十分に近い距離にあるものとする。90マイルの距離であればこの基準を満足する。基地局10はまた、GPS受信機を有し、視界にある全衛星を高精度で連続的にトラッキングするような良好な地理的位置にあるものとする。
記載された基地局10の幾つかの実施形態は、移動GPSユニットの緯度および経度のような位置情報を計算するための基地局のコンピュータなど、データ処理構成要素を使用するが、各基地局10は、単に、移動GPSユニットからの疑似距離などの受信情報を、実際に緯度および経度を計算する単数または複数の中心位置に中継するだけでもよい。この方法で、各中継基地局からデータ処理ユニットおよびそれに関連する構成要素を除去することにより、これら中継基地局の費用および複雑さを軽減することができる。中心位置は、受信機(例えば遠隔通信受信機)およびデータ処理ユニットおよび関連の構成要素を含むことになる。さらに、特定の実施形態では、基地局は、遠隔ユニットにドップラー情報を送る衛星でよく、これによって送信セル中の基地局をエミュレートするという点で仮想的でよい。
図5Aおよび図5Bは、本発明による基地局の2つの実施形態を示す。図5Aに示す基地局では、GPS受信機501がGPSアンテナ501aを通してGPS信号を受信する。GPS受信機501は、従来通りのGPS受信機でよく、通常はGPS信号に対して計時した計時基準信号を提供し、視界内の衛星に対するドップラー情報も提供する。GPS受信機501は、時刻基準信号510を受信してこの基準に位相ロックする調整された局部発振器505に結合される。この調整された局部発振器505はモジュレータ506へと出力する。モジュレータ506は、GPS移動ユニットの視界内にある各衛星からのドップラー・データ情報信号や他の衛星データ情報信号511も受信する。モジュレータ506は、送信機503に変調信号513を与えるため、調整された局部発振器505から受信した局部発振器信号でドップラー情報や他の衛星データ情報を変調する。送信機503は相互接続部514を介してデータ処理ユニット502に接続されている。データ処理ユニットは、ドップラー情報などの衛星データ情報を送信機のアンテナ503aを介してGPS移動ユニットに送信させるように送信機503の動作を制御する。この方法で、GPS移動ユニットはドップラー情報を受信することができ、その発生源はGPS受信機501で、図6に示すように、GPS移動ユニットの局部発振器の較正に使用することができる、高精度の局部発振器搬送波信号も受信する。
図5Aに示したような基地局は、通信アンテナ504aを介して遠隔またはGPS移動ユニットからの通信信号を受信するよう接続された受信機504も含む。アンテナ504aは、1本のアンテナが従来通りの方法で送信機と受信機との両方の働きをするという点で、送信機のアンテナ503aと同じアンテナであることが理解される。受信機504は、データ処理ユニット502に接続される。処理ユニットは従来通りのコンピュータ・システムでよい。処理ユニット502は、GPS受信機511からドップラー情報や他の衛星データ情報を受信する内部接続部512も含む。この情報は、受信機504を介して移動ユニットから受信した疑似距離情報や他の情報の処理に使用することができる。このデータ処理ユニット502は、従来通りのCRTなどのディスプレイ装置508に接続される。データ処理ユニット502は、ディスプレイ508に地図を表示するのに使用するGIS(地理情報システム)ソフトウェア(例えばカリフォルニア州Santa ClaraのStrategic Mapping,Inc.によるAtlas GIS)を含む大量記憶装置507にも接続される。ディスプレイの地図を使用して、ディスプレイ上で表示された地図に対する移動GPSの位置をディスプレイ上に表示することができる。
図5Bに示す代替基地局は、図5Aと同じ構成要素を多く含む。しかし、ドップラー情報や他の衛星データ情報をGPS受信機から獲得するのではなく、図5Bの基地局は、従来通りに遠隔通信リンクや無線リンクから獲得したドップラー情報や他の衛星データ情報552の発生源を含む。このドップラー情報や衛星情報は、相互接続部553を通してモジュレータ506に伝達される。図5Bに示すモジュレータ506の他の入力は、セシウム基準局部発振器などの基準品質の局部発振器から得た発振器出力信号である。この基準局部発振器551は、ドップラー情報や他の衛星データ情報を変調する精密な搬送波周波数を供給する。この情報は送信機503を介して移動GPSユニットに送信される。
図6は、図1Aのアンテナ24と同様の通信チャンネル・アンテナ601を通して受信した精密な搬送波周波数信号を使用する、本発明のGPS移動ユニットの実施形態を示す。アンテナ601は図1Aのモデム22に似ているモデム602に接続される。このモデム602は、本発明の一つの実施形態により本明細書で述べる基地局から送られた精密な搬送波周波数信号にロックされた自動周波数制御回路603に接続される。自動周波数制御回路603は出力604を与える。これは通常、精密搬送波周波数の周波数にロックされている。比較器605で、この信号604を、相互接続部608を介したGPS局部発振器606の出力と比較する。比較器605が実行した比較の結果は、周波数合成器609に与えられる誤差補正信号610である。この方法で、周波数合成器609は、相互接続部612を通してGPS逓減器614へ、より高品質で較正された局部発振信号を供給する。相互接続部612に供給される信号は、図1Aの相互接続部39によって変換器42に与えられる局部発振器信号と同様であり、また変換器42はGPSアンテナ613に接続してGPS信号を受信するGPS逓減器614と同様である。代替実施形態では、比較器605が実行する比較の結果は、誤差補正として相互接続部610aを介して図1Aに示すDSPチップ32と同様なDSP構成要素620に出力される。この場合、周波数合成器609には誤差補正信号610が供給されない。自動周波数制御回路は、位相ロック・ループまたは周波数ロック・ループまたはブロック位相推定器など、従来通りの幾つかの技術を使用して実行することができる。
図7は、本発明の一つの実施形態による特定の電力管理シーケンスを示す。電力を低減するには、当技術分野で多くの方法が知られていることが理解される。それには、計時した同期構成要素に与えられる時間を遅くしたり、特定の構成要素への電力を完全に遮断するか、構成要素の特定の回路を切って残りを切らないようにすることなどがある。例えば、位相ロック・ループおよび発振器回路は、始動および安定化の時間が必要であり、したがって設計者はこれらの構成要素の電源を完全には(または全く)切らないよう決定できることが理解される。図7に示す例は、システムの様々な構成要素を初期化し、低電力状態にするステップ701で始まる。周期的に、あるいは所定の時間の後、モデム22の通信用受信機はフル・パワー状態に復帰し、基地局10からコマンドが送信されていないか判断する。これはステップ703で発生する。ステップ705で、ベース・ユニットからの位置情報を求める要求が受信されたら、モデム22はステップ707で電力管理回路に警告する。この時点で、モデム22の通信用受信機は、所定の時間だけ電源を切るか、電源を切ってから後で再び周期的に電源を入れるが、これをステップ709として示す。通信受信機は、この時点では電源を切らずに、フル・パワー状態に維持することができる。次にステップ711で、電力管理回路は、変換器42およびアナログ/ディジタル変換器44の電力を上げることにより、移動ユニットのGPS受信機部分をフル・パワー状態に戻す。周波数発振器38も電源断であれば、この構成要素はこの時点で電源投入し、フル・パワー状態に戻り、時間をかけて安定化する。次にステップ713で、構成要素38、42および44を含むGPS受信機が、GPS信号を受信する。このGPS信号は、GPS受信機がステップ711でフル・パワー状態に戻った時に同様にフル・パワー状態に戻ったメモリ46内でバッファされる。スナップショット情報の収集が終了すると、GPS受信機はステップ717で低電力状態に戻る。これは通常、変換器42および44の電力が低下し、メモリ46はフル・パワー状態を維持する。次にステップ719で、処理システムがフル・パワー状態に戻るが、一つの実施形態では、DSPチップ32にもフル・パワーを供給することになる。しかし、DSPチップ32に、図1Cに示す実施形態の場合のように電力管理機能がある場合は、DSPチップ32aは通常はステップ707でフル・パワー状態に戻ることが理解される。マイクロプロセッサ26が電力管理機能を実行する図1Aで示す実施形態では、DSPチップ32のような処理システムは、ステップ719でフル・パワー状態に戻ってもよい。ステップ721で、GPS信号は、図3に示すように、本発明の方法により処理される。次に、GPS信号の処理が終了したら、処理システムは、(上述したように処理システムが電力管理機能も制御していない限り)ステップ723で示すように低電力状態になる。次にステップ725で、モデム22の通信用送信機が、ステップ727で処理済みGPS信号を基地局10に送り返すために、フル・パワー状態に戻る。疑似距離情報または緯度および経度情報などの処理済みGPS信号の送信が終了すると、通信用送信機はステップ729で低電力状態に戻り、電力管理システムは、ステップ731で所定のような期間だけ遅延を待つ。この遅延の後、モデム22の通信用受信機は、基地局から要求が送信されているか判断するために、フル・パワー状態に戻る。
本発明の方法および装置について、GPS衛星を参照しながら説明してきたが、教示はスードライト(psuedolite)または衛星とスードライトとの組合せを使用する位置決めシステムにも同様に適用できることが理解される。スードライトとは、GPSの時間とほぼ同期された、L帯域搬送波信号で変調されたPNコード(GPS信号に類似)を放送する地上ベースの送信機である。各送信機は、遠隔受信機が特定できるよう、一意のPNコードが割り当てられる。スードライトは、トンネル、鉱山、建物またはその他の封鎖された区域など、軌道衛星からのGPS信号が利用できない状況で有用である。「衛星」という用語は、本明細書では、スードライトまたはスードライトの同等品を含み、GPS信号という用語は、本明細書ではスードライトまたはスードライトの同等品からのGPSのような信号を含むものとする。
以上の検討では、本発明を米国全世界測位衛星(GPS)システムでの用途を参照しながら説明してきた。しかし、これらの方法は同様の衛星測位システム、および特にロシアのGlonassシステムにも同様に適用できることは明白である。Glonassシステムは、主に、異なる疑似乱数コードを使用するのではなくわずかに異なる搬送波周波数を使用することにより、異なる衛星からの放射を互いに識別するという点で、GPSシステムとは異なる。この状態では、上記のほぼ全ての回路およびアルゴリズムを適用することができるが、ただし新しい衛星の放射を処理する場合は、異なる指数乗数を使用してデータを前処理する。この操作は、追加の処理演算を必要とせずに、図3のボックス108のドップラー補正演算と組み合わせることができる。この状況では1つのPNコードしか必要ではなく、したがってブロック106が省略される。本明細書では「GPS」という用語は、ロシアのGlonassシステムなど、このような代替衛星測位システムを含む。
図1A、図1Bおよび図1Cはディジタル信号を処理する複数の論理ブロック(例えば図1Aの46、32、34、26、30、28)を示すが、このブロックの幾つかまたは全部を単一の集積回路に統合しながら、このような回路のDSP部分のプログラム可能な性質は残せることを理解されたい。このような実現形態は、非常に低電力で価格が問題になる用途には重要である。
また、図3の動作の一つまたは幾つかは、全体的な処理速度を向上させるために、DSPプロセッサのプログラム可能な性質を維持しながら、物理的に組み込まれた論理で実行できることを理解されたい。例えば、ブロック108のドップラー補正能力は、ディジタル・スナップショット・メモリ46とDSP IC32との間に配置できる専用のハードウェアで実行することができる。図3のその他の全てのソフトウェア機能は、このような場合、DSPプロセッサで実行してもよい。また、1つの遠隔ユニットに幾つかのDSPを一緒に使用して、処理電力を大きくしてもよい。また、GPSデータ信号のフレームの複数セットを収集(サンプリング)して、図3に示すように各セットを処理しながら、各フレーム・セットの収集間の時間を考える。
本発明の実施形態の一例であり、本明細書で述べた方法およびアルゴリズムの演算を検証し、さらにこの方法およびアルゴリズムを使用することによって可能な感度の改善を示すデモンストレーション・システムを構築した。デモンストレーション・システムは、GEC Plessey SemiconductorsからのGPSアンテナおよびRF逓減器で構成され、Gage Applied Sciences,Inc.のディジタイザ・バッファ・ボードが続く。アンテナおよび逓減器は、図1Aの機能38、40、42および44を実行し、ディジタイザ・バッファは図1Aの機能44、46および48を実行する。信号処理は、ウィンドウズ(登録商標)95のオペレーティング・システムで動作するペンティアム(登録商標)・マイクロプロセッサを使用するIBM PC互換システムで実行した。これは、DSPチップ32およびメモリ周辺機器34の機能をエミュレートした。視界内の衛星のドップラー情報は、信号処理ルーチンへの入力として信号処理ソフトウェアに供給され、モデムおよびマイクロプロセッサ22、24、25、26の機能をエミュレートした。
このデモンストレーション・システムのアルゴリズムは、MATLABプログラミング言語を使用して開発した。様々な妨害状況で獲得した生のGPS信号で、多数の試験を実施した。その試験により、デモンストレーション・システムの感度性能が、同時に試験した幾つかの商用GPS受信機より非常に優れていることが検証された。付録Aは、この試験に使用したMATLABマシン・コードの詳細なリストを提供し、本発明の高速畳み込み演算の一例(例えば図3)である。
以上の明細書で、本発明について特定の例証的な実施形態を参照しながら説明してきた。しかし、添付の請求の範囲で述べる本発明の幅広い精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更ができることは明白である。したがって、明細書および図面類は、限定的な意味ではなく例示と見なすものとする。