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JP5452974B2 - 被測定物位置検出装置及びその被測定物位置検出装置を備える切削機械 - Google Patents

被測定物位置検出装置及びその被測定物位置検出装置を備える切削機械 Download PDF

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JP5452974B2 JP2009111973A JP2009111973A JP5452974B2 JP 5452974 B2 JP5452974 B2 JP 5452974B2 JP 2009111973 A JP2009111973 A JP 2009111973A JP 2009111973 A JP2009111973 A JP 2009111973A JP 5452974 B2 JP5452974 B2 JP 5452974B2
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Description

本発明は、例えばNC旋盤などの切削機械に使用される被測定物位置検出装置に関し、特に被測定物となるチャック等の熱変位により変位した位置を検出する被測定物位置検出装置及びその被測定物位置検出装置を備える切削機械に関するものである。
例えば、特許文献1には、加工熱や環境の温度変化によっても計測誤差が生じなく、しかも工具の刃先形状や磨耗量、加工物の寸法などをも計測することができる刃先位置計測装置が開示されている。具体的には、数値制御の基準となる加工基準点に対して位置決めされた計測基準面が基準ピースに形成され、計測基準面と工具の刃先との輪郭がカメラによって捕らえられる。捕らえられた輪郭は電気的な画像情報として画像メモリに記憶され、相対位置演算回路は画像情報に基づいて加工基準点および刃先間の相対距離を演算する。即ち、特許文献1では、熱などによる部位の変位の影響を受けずに相対位置を計測できる。
そして、特許文献1の一実施例において、数値制御装置には加工基準点と工具の刃先との間でそれらの相対距離を計測する刃先位置計測装置が設けられている。この刃先位置計測装置は、加工基準点に対する相対位置が予め決められている計測基準面を持つ基準ピースと、計測基準面および刃先の輪郭を画像として捕らえるカメラと、メインプロセッサとを備える。基準ピースは、主軸のチャックに保持される(段落番号「0015」および図1参照)。
特開平9−253979号公報
ところで、特許文献1では、工作機械の加工運転を一時停止させた状態で基準ピース(テストピースと同義)を装着させると共に、計測終了後の運転再開処理(基準ピースの取外しなど)が必要となるので、そのための時間および労力が必要となる。即ち、計測処理のために、工作機械の加工運転を停止および運転再開させ且つチャックに対する基準ピースの着脱が手間で煩雑となり、使い勝手が悪い。
また、切削工具の刃先すなわちNCテーブルの移動量を測定(即ち、切削工具のベクトル測定)する際の基準は、変動する。即ち、上記基準となる例えばチャックは環境温度などによって熱変位するが、特許文献1を含む従来技術では熱変位に対する解決策が無かった。
更に、特許文献1において、例えばバイトなどの切削工具およびチャックの周面を、カメラの撮像領域に収めて撮像(以下、一望視ともいう)する場合、一般的にチャック外周面の汚れや錆などの状態によって切削工具とチャックとの相対位置を正確に計測することが困難である。即ち、カメラの撮像時にはチャック周囲が暗いので投光した状態で撮像する必要があるが、その投光に基づきチャック外周面の曲率(即ち、曲面の反射光)によってチャックの外径を小さく撮像する場合がある。なお、チャックなどを特殊加工させると、高精度に撮像することができるが、高価などとなる。
本発明の目的は、回転体である被測定物の熱変位により変位した位置を簡易な構成で且つ正確に検出し得る被測定物位置検出装置及びその被測定物位置検出装置を備える切削機械を提供することにある。
本発明に係る被測定物位置検出装置は、回転可能に配置される被測定物である爪付きチャックの熱変位により変位した位置を検出する検出手段を備え、且つ上記チャックを構成する金属と同一性ある材質で上記チャックよりも径大な補助体を、上記チャックに連接して配置させ、上記検出手段は、静止時および回転時の少なくとも一方における上記補助体と対向し、上記補助体を介して上記チャックの熱変位により変位した位置を検出することを特徴とする。また、上記被測定物位置検出装置においては、上記検出手段を上記補助体に対して移動させるようにしても良い。
上記各被測定物位置検出装置においては、上記検出手段は上記チャックにおけるX方向の位置を検出するX方向センサおよびZ方向の位置を検出するZ方向センサとし、上記各センサを、上記補助体に対する検出位置の基準となる段部が形成される基準手段にそれぞれ配置しても良い。また、本発明に係る被測定物位置検出装置に、上記チャックの温度を検出する接触式の温度センサをさらに上記検出手段と共に設けるようにしても良い。更に、本発明に係る被測定物位置検出装置及びその被測定物位置検出装置を備える切削機械は、上述した各被測定物位置検出装置による検出データに基づき、切削工具の切削位置を演算することを特徴とする
本発明に係る被測定物位置検出装置及びその被測定物位置検出装置を備える切削機械は、上述する各被測定物位置検出装置において、被写体を撮像する撮像手段と、上記被測定物に対する検出位置の基準となる段部が形成される基準手段に上記撮像手段の位置誤差を測定する基準部とを備え、上記撮像手段は上記基準部及び上記切削工具を被写体として同一の撮像領域内に撮像し、この撮像した画像データに基づき切削工具の切削位置を演算するようにしても良い。また、本発明に係る被測定物位置検出装置及びその被測定物位置検出装置を備える切削機械は、上述する各被測定物位置検出装置において、異なる撮像位置での被写体にそれぞれ対応する光路を分離する光路分離手段および上記光路分離手段における同一の光路上に配置される撮像素子を備え、上記光路分離手段は一方の撮像位置での上記被写体を撮像する際には他方の撮像位置での光路を遮断させる撮像装置と、上記被測定物に対する検出位置の基準となる段部が形成される基準手段に上記撮像装置の位置誤差を測定する基準部とを備え、上記撮像装置は、上記一方の光路における一方の撮像位置での上記基準部及び上記一方の撮像位置での切削工具を被写体として同一の撮像領域内に撮像し、或いは上記一方の光路における上記一方の撮像位置での上記基準部を被写体として撮像すると共に上記他方の光路における他方の撮像位置での切削工具を光路切換えの時間差をもって撮像し、この撮像した画像データに基づき切削工具の切削位置を演算するようにしても良い。
本発明に係る被測定物位置検出装置を備える切削機械は、回転可能に配置される被測定物の熱変位により変位した位置を検出する検出手段を備え、上記検出手段は静止時および回転時の少なくとも一方における上記被測定物と対向して位置を検出する被測定物位置検出装置において、被写体を撮像する撮像手段と、上記被測定物に対する検出位置の基準となる段部が形成される基準手段に上記撮像手段の位置誤差を測定する基準部とを備え、上記撮像手段は上記基準部及び上記切削工具を被写体として同一の撮像領域内に撮像し、この撮像した画像データに基づき切削工具の切削位置を演算することを特徴とする。また、本発明は、回転可能に配置される被測定物である爪付きチャックの熱変位により変位した位置を検出する検出手段を備え、且つ上記チャックを構成する金属と同一性ある材質で上記チャックよりも径大な補助体を、上記チャックに連接して配置させ、上記検出手段は、静止時および回転時の少なくとも一方における上記補助体と対向し、上記補助体を介して上記チャックの熱変位により変位した位置を検出する被測定物位置検出装置において、被写体を撮像する撮像手段と、上記補助体に対する検出位置の基準となる段部が形成される基準手段に上記撮像手段の位置誤差を測定する基準部とを備え、上記撮像手段は上記基準部及び上記切削工具を被写体として同一の撮像領域内に撮像し、この撮像した画像データに基づき切削工具の切削位置を演算する。更に、本発明は、回転可能に配置される被測定物の熱変位により変位した位置を検出する検出手段を備え、上記検出手段は静止時および回転時の少なくとも一方における上記被測定物と対向して位置を検出する被測定物位置検出装置において、異なる撮像位置での被写体にそれぞれ対応する光路を分離する光路分離手段および上記光路分離手段における同一の光路上に配置される撮像素子を備え、上記光路分離手段は一方の撮像位置での上記被写体を撮像する際には他方の撮像位置での光路を遮断させる撮像装置と、上記被測定物に対する検出位置の基準となる段部が形成される基準手段に上記撮像装置の位置誤差を測定する基準部とを備え、上記撮像装置は、上記一方の光路における一方の撮像位置での上記基準部及び上記一方の撮像位置での切削工具を被写体として同一の撮像領域内に撮像し、或いは上記一方の光路における上記一方の撮像位置での上記基準部を被写体として撮像すると共に上記他方の光路における他方の撮像位置での切削工具を光路切換えの時間差をもって撮像し、この撮像した画像データに基づき切削工具の切削位置を演算する。なお、上記各被測定物位置検出装置を備える切削機械は、上記検出手段を上記被測定物に対して移動させても良い。また、上記検出手段を上記被測定物におけるX方向の位置を検出するX方向センサおよびZ方向の位置を検出するZ方向センサの少なくとも一方とし、上記センサを上記被測定物に対する検出位置の基準となる段部が形成される基準手段に配置しても良い。更に、上記被測定物位置検出装置に、上記被測定物の温度を検出する温度センサを設けるようにしても良い。また、上述する各被測定物位置検出装置による検出データに基づき、切削工具の切削位置を演算するようにしても良い。更に、本発明に係る被測定物位置検出装置を備える切削機械は、上述した各変形例の構成の内、1つの変形例または2つ以上の変形例を組合せるパターンとしても良い。
本発明に係る被測定物位置検出装置では、検出手段が静止時および回転時の少なくとも一方における爪付きチャックよりも径大な補助体と対向し、補助体を介してチャックの熱変位により変位した位置を検出する。即ち、本発明に係る被測定物位置検出装置によれば、検出手段を回転可能に配置されるチャック(補助体)に対向する構成なので、簡易で且つ正確に被測定物の熱変位により変位した位置を検出し得る。また、本発明に係る被測定物位置検出装置によれば、温度センサを接触式にすると共に、検出手段で熱変位により変位した補助体の位置を検出し得るので、補助体の温度に対応する位置データ(膨張率または収縮率に基づく変位量のデータと同義)をも検出し得る。更に、本発明に係る被測定物位置検出装置を備える切削機械によれば、検出手段が静止時および回転時の少なくとも一方における被測定物と対向し、被測定物の熱変位により変位した位置を検出するので、この検出(位置)データに基づき切削工具を精度良く切削位置へ移動し得る。
また、本発明に係る被測定物位置検出装置を備える切削機械によれば、テスト材(従来例のようなテストピースを含む)を用いることなく、検出装置の検出データに基づき、切削工具の相対ベクトル(切削工具全体の位置)を正確に検出し得る。更に、本発明に係る被測定物位置検出装置を備える切削機械によれば、被測定物の位置データなどを、回転する被測定物とは別部材である検出装置を介して出力させることができるので、例えばブラシホルダーなどを不要にできる。
本発明に係る実施例1の単軸タイプのターレット旋盤を示す正面図である。 図1に示すターレット旋盤の主要部を示す側面図である。 図2に示す撮像装置に関する図であり、(A)はその撮像装置の端面図、図3(B)はそのシャッターの平面図である。 図3(A)に示す撮像装置が隔壁に配置されている状態を示す端面図である。 実施例1に係る位置検出装置でチャックの位置を検出する図である。 図5に示すバイトに係る画像取込位置の初期データ(ベクトルデータ)を取得する手順説明図である。 実施例2に係る位置検出装置でチャックの位置を検出する図である。 実施例2の位置検出装置の要部を示す図である。 他の変形例に係る位置検出装置を示す図である。 刃先清掃装置を示す図である。 図10に示す刃先清掃装置の側面図であり、(A)〜(E)はその清掃状態を示す図である。 図10に示す刃先清掃装置の側面図であり、(A)〜(E)はその清掃状態を示す図である。 他の変形例に係る刃先清掃装置を示す図である。 他の変形例に係る刃先清掃装置の側面図であり、(A)〜(E)はその清掃状態を示す図である。 図1に示すターレット旋盤のブロック図である。 図1に示すターレット旋盤に係るバイト画像処理モードに関するフローチャート図である。 切削工具の検査様子を示す図である。 切削工具の検査様子を示す図である。 切削工具の検査様子を示す図である。 切削工具の検査様子を示す図である。 切削工具の検査様子を示す図である。 切削工具の検査様子を示す図である。 切削工具の検査様子を示す図である。 切削工具の検査様子を示す図である。 切削工具の検査様子を示す図である。 切削工具の検査様子を示す図である。 切削工具の検査様子を示す図である。 切削工具の検査様子を示す図である。 切削工具の検査様子を示す図である。 切削工具の検査様子を示す図である。 切削工具の検査様子を示す図であり、(A)はそのチップのエッジを求める様子を示す図、(B)〜(D)はチップのノーズを求める様子を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について、具体化した実施例1及び実施例2を説明する。
以下、図1乃至図6に基づいて、本発明の実施例1である被測定物位置検出装置及びその被測定物位置検出装置を備える切削機械について説明する。なお、実施例1の切削機械は、単軸タイプのターレット旋盤(以下、単に旋盤という)Sとして説明する。
(旋盤Sの概略構成)
図1に示すように、旋盤S内には、軸線がZ軸方向(水平方向)と平行になるように固定された主軸台10と、Z軸方向に平行な方向及びZ軸方向と直交し垂直方向に対し60度後方に傾斜したX軸方向に平行な方向に移動可能なターレット装置20とが対向するように配置されている。主軸台10には、主軸11がZ軸方向と平行な軸線の回りに回転可能に支持されている。主軸11は、図示しない主軸駆動モータによって回転駆動されるようになっている。主軸11のターレット装置20側の先端部には、被加工物であるワークWを把持するチャック12が取り付けられている。このような構成の主軸台10及び主軸駆動モータは、ベッド13上に配置されている。
ターレット装置20には、取付台であるターレット刃物台(以下、単に刃物台という)21がZ軸方向と平行な軸線の回りに回転割出し可能に設けられている。刃物台21上には、複数の切削工具25,26(図5参照)が円周上等角度間隔に取り付けられている。このような構成のターレット装置20は、X軸方向およびZ軸方向へスライド可能に配置されている。なお、ターレット装置20は、NCテーブル50のNCモータ52(図15参照)によってボールねじ機構(図示省略)を介して移動する。即ち、ターレット装置20は、固定配置された主軸台10に対して移動する。一方、刃物台21は、図示しないターレットモータによって回転駆動する。
図1に示すように、旋盤S内には、主軸台10とターレット装置20を覆うカバー14が設けられ、カバー14内には、主軸台10側とターレット装置20側と仕切る隔壁15が設けられている。この隔壁15は、刃物台21上の図5に示す切削工具25,26によってチャック12に把持されたワークWの外周または端面などを切削加工する際に、飛散する切削粉や切削液などが主軸台10などに付着しないようにするために設けられている。即ち、この隔壁15で仕切られた主軸台10側が隔離ゾーンS1となっており、ターレット装置20側が加工ゾーンS2となっている。
主軸11は隔壁15に設けられた孔から加工ゾーンS2側に突き出され、その主軸11の先端にチャック12が取り付けられている。図5に示す被測定物位置検出装置(以下、位置検出装置ともいう)18は、チャック12に対向するように配置され、図1及び図2に示す撮像装置27の位置誤差を測定するものである。この位置検出装置18は、内径加工バイト25と外径加工バイト26の両方に共通して使用する。
(撮像装置27に関する構成)
図1及び図2に示すように、旋盤S内には、撮像装置27が隔離ゾーンS1と加工ゾーンS2との間をスライド可能に配置されている(図4参照)。この撮像装置27は、被写体となる切削工具(以下、バイトともいう)25,26の例えば図5に示すチップ25A,26A(バイト等のチップでない切削工具のときは刃先)などを撮像する。即ち、撮像装置27は、チップ25A,26Aなどを撮像する際には加工ゾーンS2側へスライドし、撮像が終了すると隔離ゾーンS1側へスライドする。なお、撮像装置27で撮像した画像データは、中央処理装置であるCPU60(図15参照)へ出力するように構成されている。そして、CPU60は、チップ25A,26Aの変位などを照合・演算し、それらの結果に基づいて切削工具の加工位置を補正する。
図3(A)に示すように、撮像装置27の筐体27Aは撮像スペース(レンズ室ともいう)28A及び防塵スペース(シャッタ室ともいう)28Bに区画されている。具体的には、角筒状の筐体27Aのレンズ室28Aには、例えば500万画素のカメラ(撮像素子であるCCD30Aを含む)30と,撮像レンズ体29と,フルミラー31Aと,ハーフミラー31Bとが収納されている。
このハーフミラー31Bは、撮像レンズ体29及びフルミラー31Aの間に配置されており、入射する被写体光を一部反射し一部投下するミラーである。なお、ハーフミラー31B(ビームスプリッターともいう)には、平板型,プリズム型,ウエッジ基板型などのミラーを含む。
上述したフルミラー31Aとハーフミラー31Bは、それぞれの撮像光学系の視野が同一サイズとなるように配設している。即ち、それぞれの被写体を交互に撮像できるように、フルミラー31A及びハーフミラー31Bは配設されている。例えばフルミラー31Aで図3(A)の2点鎖線に示す被写体(チップ)23Aを撮像する際にはハーフミラー31Bの光路を遮断し、ハーフミラー31Bで被写体(チップ)24Aを撮像する際にはフルミラー31Aの光路を遮断するように構成している。
従って、カメラ30の撮像レンズ体29と2つの被写体(例えばバイト23,24など)との間の光路を一対のミラー31A及び31Bでそれぞれ直角に屈曲させ、1つの視野領域(撮像領域と同義)の範囲で被写体を撮像する。そして、図3に示すように、1つの視野領域で例えばバイト23のチップ23Aを先ず撮像し、且つ上記撮像後に1つの視野領域でバイト24のチップ24Aを引続き撮像する。
なお、図1に示す光源43または44が撮像装置27の反対側より発光(即ち、バックライト照明と)し、撮像はバイト23または24のすくい面(即ち、切削線で輪郭される面)側から行う。そして、CPU60は、画像処理してシルエットのモノクロ(又はカラー写真)データとして記録する。この場合、フロントライト画像処理を行うようにしても良い。また、視野領域は、500万画素のカメラを用いた場合において、短辺は17mm(2000画素)、長辺は21.5mm(2500画素)となっている。
レンズ室28A及びシャッター室28Bの間には、焦点合わせレンズ33がフルミラー31Aに対応する光路上に、透明の防護ガラス34がハーフミラー31Bに対応する光路上にそれぞれ配置されている。ここで、焦点合わせレンズ33は、2系列の焦点距離LA(例えば100mm)を合わせるものである。なお、レンズ室28Aは、常時所定気圧たとえば+0.15MPaに保持されている。
また、レンズ室28A及びシャッター室28Bの間には孔27Bが形成されており、この孔27Bからシャッター室28Bへ圧縮空気(以下、エアーともいう)が送られる。即ち、常時シャッター室28Bは、レンズ室28Aよりも低い加圧状態たとえば+0.11MPaに加圧されている。従って、シャッター室28Bが加圧されているので、クーラント液または切粉などが、シャッター室28Bへ流入するのを防止する。なお、レンズ室28Aには図示しないエアー接続口が配置されており、このエアー接続口およびコンプレッサ(図示省略)の間はコンプレッサで生成されるエアーを供給するエアー通路となっている。そして、後述するシャッター38又は39を開放する前から閉鎖完了までの間、エアーをレンズ室28Aへ噴出し続ける。
シャッター室28Bの焦点合わせレンズ33及び防護ガラス34に対向する部位には、開口27C及び27Dがそれぞれ形成されている。切換手段であるシャッター38及び39は、筐体27Aとその支持片27E間にスライド可能に配置されており、開口27Cまたは27Dを開閉する。即ち、上述した光路を遮断するシャッター38または39は、上述したエアー通路のエアーを用いて、スライドするように構成されている。また、支持片27Eには、開口27F及び27Gが、開口27C及び27Dに対向するように形成されている。
図3(B)に示すように、シャッター38はその平面形状が帯状となっており、シャッター39はその平面形状が略L字状となっている。そして、シャッター38及び39は、開口27G及び27Fに対向するように移動し、開口27C及び27Dを開閉する。
即ち、シャッター38及び39は、それぞれの光路を開放し、図3に示す被写体となる切削工具24のチップ24A(図面では2点鎖線で示す)をカメラ30で撮像する。そして、シャッター38及び39は、クーラント液または切粉などがシャッター室28Bへ流入するのを防止するために、閉止している。また、シャッター38及び39は、常には閉止しており、且つ同時に光路を開放しない。なお、シャッターは、例えば電圧のオン・オフの切換えで開閉する液晶シャッター又は光路切換え機構などを適用しても良い。
図1及び図2に示すように、撮像装置27の各ミラー31A及び31B(図3参照)に対向する光路上の位置には、照明用の光源43及び44がそれぞれ配置されている。これらの光源43及び44は、例えば発光LEDなどで構成されている。
(撮像装置27のスライド機構に関する概略構成)
図1及び図4に示すように、撮像装置27は、隔壁15の所定箇所に配置されており、図示しないスライド機構(例えばエアー通路のエアーで作動するシリンダ等)が連結されている。そのため、上述したように撮像装置27は、隔離ゾーンS1と加工ゾーンS2との間をスライドし、切削加工直前には加工ゾーンS2から隔離ゾーンS1へ後退する。撮像装置27を後退させる理由は、切削加工のターレット装置20に搭載するバイト等との干渉を防止すると共に、撮像装置27が切削作業中における作業者の視覚障害を回避し作業性を向上させるためである。
また、図4に示すように、撮像装置27と隔壁15との間には、合成樹脂製(例えばウレタンゴム製)のシールカバー40が配置されている。即ち、撮像装置27は、シールカバー40に嵌め込まれる状態で保持されている。このシールカバー40には、スライド時の撮像装置27が加工ゾーン内の切粉を挟んだりするのを防止すると共に、クーラント液が隔離ゾーンS1内へ滲み込むのを防止するものである。
更に、撮像装置27の回りを囲うような導口40Aが開口されている。そして、エアーは図示しないエアー通路から導口40Aへ送出し(図4の矢印参照)、撮像装置27とシールカバー40との隙間からエアーが吹き出るようになっている(図4の太線矢印参照)。
なお、撮像装置27が隔離ゾーンS1へ後退している位置(図4の実線に示す待機位置)では、撮像装置27の先端(シールカバー40に対向する部位)が、シールカバー40より若干加工ゾーンS2へ突出する状態あるいは面一になるように予め設定されている。
(位置検出装置18に関する構成)
図5に示すように、チャック12の先端にはフランジ66が連結されており、このフランジ66はチャック12の直径よりも若干だけ大径となっている。なお、補助体であるフランジ66は、チャック12を構成する金属(鋼)と同一材質で成形されている。また、フランジ66には、図1に示すワークWを挟持する複数個の爪17(図5参照)が配置されている。
一方、基準手段である位置検出装置18の先端には薄肉状の段部18Aが形成されており、段部18AのZ面にはX方向の距離を検出する(X方向)光センサ68が配置されている。また、段部18AのX面には、Z方向の距離を検出する(Z方向)光センサ69が配置されている。光センサ68および69にはリード線が配線され、図15に示すCPU60を含む制御装置に接続されている。光センサ68および69は、その発光素子から光を射出(発光と同義)すると共に、その反射光を受光素子で受光することにより(図5参照)、被測定物たとえば図5に示すフランジ66の距離を検出データ(例えば、発光から反射光の受光時間のデータ)としてCPU60へ出力する。
そして、位置検出装置18の光センサ66及び69は、フランジ66にそれぞれ対向するように配置される(図5の実線参照)。即ち、位置検出装置18は、上述した撮像装置27と同様に、待機位置(図5の2点鎖線に示す位置)および検出位置(図5の実線に示す位置)に亘ってスライド可能に配置されている。そして、測定時に待機位置から検出位置へと移動した位置検出装置18は、図5の実線で示すように、光センサ68及び69がフランジ66の外周面に所定間隔をもって対向し、光センサ68及び69とフランジ66との距離(X距離およびZ距離)を検出する。
なお、図3Aに示す撮像装置27は、図5に示すように、位置検出装置18の基準部(即ち、段部18Aの先端)18B及びバイト26のチップ26Aが、撮像装置27(図3A参照)の視野領域に収めて撮像(一望視と同義)できるよう配置される。また、外径用のバイト26はチップ検出時に撮像装置27の一望視Aエリア(図中では「A枠」という)内の所定位置に移動するように予め設定されていると共に、内径用のバイト25はチップ検出時に撮像装置27の一望視Bエリア(図中では「B枠」という)内の所定位置に移動するように予め設定されている。更に、本例は光センサ68及び69を配置面から突出させているが、光センサ68及び69は配置面に対して面一または埋設させても良い。
(バイト26に係る画像取込位置の初期データを取得する手順)
図6に基づき、バイト26に係る画像取込位置の初期ベクトルデータを取得する手順について説明する。この初期ベクトルデータ設定モードは、図1に示す旋盤Sにおける機械製造時の調整工程(初期化時)で行う処理である。
そして、この処理データに基づき、図15に示すCPU60は、キャリブレーションサイクル時などに、変動するベクトル値を検出し演算する。ここで、キャリブレーションサイクルは、切削の精度を所定水準に維持する補償値を得るため、図1に示す旋盤Sの稼動時に強制的に所定間隔を設けて検査を行うことである。即ち、キャリブレーションサイクルは、旋盤Sの運転が開始した後に行う検査である。
まず、初期ベクトルデータ設定モードでは、図6に示すテスト材90を用いて、バイト26を手動でカメラ30(図3A参照)の一望視Aエリア内に移動させる。バイト26が一望視Aエリア内へ移動していない場合には、画像処理を行い、図6に示す一望視Aエリア中心との差すなわちオフセット値をCPU60(図15参照)は演算する。CPU60は、オフセット値が許容範囲内(例えば100μm以内)か否かを判断し、許容範囲外であればバイト26を許容範囲内になるよう移動させる。この処理は、バイト26が許容範囲内に収まるまで続けられる。
そして、許容範囲内(その時の一望視Aエリア中心の位置をCとする)であれば、CPU60は、画像認識に基づきチップ26Aの先端に対する位置検出装置18の基準部18B(図5参照)のベクトル値F1を演算する。引続き、CPU60は、位置検出装置18に対するフランジ66の周端のベクトル値F2を演算する。即ち、このベクトル値F2は、上述した光センサ68及び69とフランジ66との距離(X距離およびZ距離)に基づいて演算する。
最後に、CPU60は、位置検出装置18に対するテスト材90原点のベクトル値F3を演算する。なお、ベクトル値F3は、初期化時に求める固定値である。また、NCテーブル50(図15参照)の原点に対する加工時のチップ26A先端のベクトル値Mは、手動でワークW(図1参照)におけるテスト材90を仕上げ切削(切り込み量を少なくして切削)して、初期化時のNCテーブル50の位置データに基づいて得る。更に、初期化時には、ワーク原点に対するワークW(図1参照)のベクトル値WL即ちテスト材90の切削時に得られる測定値を、例えばマイクロメータなどでテスト材90の寸法WL(具体的には図6に示すWx,Wzの値)として得る。
そして、初期化時には、ベクトル値M,NC移動量C,ベクトル値F1,ベクトル値F2,ベクトル値WLをベクトル式(M=C+F1+F2+F3+WLすなわちF3=M−C−F1−F2−WL)へ代入し、ベクトル値F3を演算する。ここで、C値は、初期化時などに移動するNCテーブル50(図15参照)の原点に対する画像認識点でのチップ26A先端のNC移動量を表す。なお、C値はバイト毎に異なり、F3値も一台のターレット装置に一つのみ存在する。また、テスト材90は、直径と端面がそれぞれ一箇所あれば適用できる。更に、各バイトのC値およびM値を求め、記録媒体たとえば図15に示すRAM64にそれぞれ記録する。
一方、キャリブレーションサイクル時には、ベクトル値F1およびベクトル値F2を演算する。即ち、ベクトル値F2は、上述したように、位置検出装置18を待機位置(図5の2点鎖線参照)から検出位置(図5の実線参照)にスライドさせた後、光センサ68(69を含む)から光を射出およびその反射光(図5参照)に基づき、図15に示すCPU60は光センサ68及び69とフランジ66との距離(X距離およびZ距離)を演算する。
そして、加工対象となるワークW(図1参照)のベクトルMは、予め設定されている。即ち、実際には上述したM=C+F1+F2+F3+WLより演算したM値に基づき、図15に示すNCテーブル50を図6に示すMの場所へ移動させて切削加工させる。
即ち、キャリブレーションサイクル時には、図6に示すテスト材90(従来例のようなテストピースを含む)を用いることなく、位置検出装置18の検出(位置)データに基づき、切削工具の相対ベクトル(切削工具全体の位置)を正確に検出し得る。なお、鋼で形成されるチャック12の熱膨張率は、1.15×10−5であるので、1℃変化すると直径300mmのチャックは3μm増減する。
(本実施例の作用)
位置検出時には、図5の実線で示すように、位置検出装置18を待機位置から検出位置へスライドさせる。そして、光センサ68及び69がフランジ66の外周面に対し所定間隔をもって対向した後に、光センサ68および69の発光素子はフランジ66の外周面に対して発光する。フランジ66からの反射光を光センサ68および69の受光素子が受光すると、位置検出装置18は熱変位で膨張または収縮したフランジ66の位置を検出データ(例えば、発光から反射光の受光時間のデータ)としてCPU60へ出力する。
即ち、CPU60は、光センサ68及び69とフランジ66との距離(X距離およびZ距離)を検出し、チャック12の熱変位に対応するベクトルF2を演算してM値に基づきNCテーブル50をM(図6参照)へ移動させる。従って、本実施例によれば、位置検出手段18を回転可能に配置されるフランジ66(チャック12と同義)に対向する構成なので、簡易で且つ正確にチャック12の熱変位により変位した位置を検出し得る。
また、本実施例によれば、位置検出装置18が被測定物であるチャック12の熱変位に対応する位置を正確に検出するので、チップ25Aまたは26Aを精度良く切削位置へ移動し得る。そして、被測定物の位置を検出した後、位置検出装置18は待機位置へスライドする。
更に、本実施例によれば、光センサ68および69にはリード線が配線されCPU60に接続されているので、位置検出装置18から制御装置(図示省略)まで簡単に導出させることができる。即ち、本実施例によれば、チャック12の位置データなどを、回転するチャック12とは別部材である位置検出装置18を介して出力させることができるので、例えばブラシホルダーなどを不要にできる。
なお、チップ検出時には、図5に示すように、位置検出装置18の基準部18B及びバイト26のチップ26Aを図3Aに示すカメラ30の視野領域に収めて撮像する。また、チップ検出時には、図4に示すように、撮像装置27を隔離ゾーンS1から加工ゾーンS2へスライドさせると共に、図1に示す光源43及び44を発光させる。
そして、図5に示すバイト26のチップ26Aを検出する場合、撮像位置(図4の破線で示す状態)の撮像装置27は、図3に示すように、シャッター38をスライドさせハーフミラー31B側の光路を開放する。カメラ30は、一望視Aエリア内に位置する被写体である位置検出装置18の基準部18B及びチップ26Aを撮像する。即ち、シャッター39側の光路を遮断しているので、ハーフミラー31Bは一望視Aエリアの被写体光をカメラ30へ反射させる。
一方、図5に示すバイト25のチップ25Aを検出する場合(この場合バイト26は一望視Aエリアには無い)、図3に示すように、先ずシャッター38をスライドさせハーフミラー31B側の光路を開放する。カメラ30は、一望視Aエリア内に位置する被写体である位置検出装置18の基準部18Bを撮像する。撮像後直ちに、シャッター38を閉止させると共に、シャッター39をスライドさせフルミラー31A側の光路を開放する。シャッター38及び39の切換えは、その切換え瞬間の時間差(略同時と同義)たとえば0.5秒で行う。
そして、カメラ30は、図5に示すように、一望視Bエリア内に位置する被写体であるバイト25のチップ25Aを撮像する。即ち、シャッター38側の光路を遮断しているので、フルミラー31Aは一望視Bエリアの被写体光をカメラ30へ反射させる。この際、 ハーフミラー31Bはフルミラー31Aで反射された被写体光を透過するので、カメラ30は一望視Bエリア内の被写体のみを撮像する。そして、その後の画像処理および照合処理などは、例えば特願2009−38185号に記載する切削加工位置の補正処理を行う。
なお、本例では位置検出装置18をスライド可能に配置させているが、位置検出装置18を常に検出位置(図5の実線参照)に固定させるようにしても良い。また、本発明に係る検出手段は、光センサの他に、非接触式のエアーマイクロメータや接触式の差動トランス等でも、同様に適用できる。この場合、検出手段は被測定物たとえばチャックなどの静止時または回転時でも、チャックの熱変位により変位した位置を検出しても良い。
更に、図5に示すチップ25A,26Aのエッジは、後述する例えば切削線用のシークラインを用いて求めることができる。このシークラインとは、2次元仮想画面内に設定された長さと傾きが自由な線分で、その線方向の中心位置に対するエッジの位置を求めるものである。
図7及び図8を用いて、本発明に係る位置検出装置の実施例2を説明する。但し、上記実施例1の図5に示す位置検出装置18と実質的に同一部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。なお、実施例2は、実施例1と同一の光センサ68及び69が配置されている(図8参照)。
実施例2は、図8に示すように、接触式の温度センサ70を、光センサ69に並列状に配置した例である。即ち、本実施例は、温度センサ70でチャック12の温度を検出する例である。
温度センサ70は、円柱状の接触子71がスライド可能に配置されており、接触子71が被測定物たとえばフランジ66に接触することによってフランジ66の温度データをCPU60(図15参照)へ出力する。即ち、スライド可能に配置される接触子71はフランジ66に当接し、温度センサ70内に押込められて没入する構成となっている。
本実施例において、位置検出時に、温度センサ70の接触子71がフランジ66に接触するので、温度センサ70はフランジ66の温度データをCPU60へ出力する。即ち、本実施例によれば、温度センサ70が被測定物であるフランジ66(チャック12)の温度に対応する位置データ(膨張率または収縮率に基づく変位量のデータと同義)をも検出するので、チップ25Aまたは26Aを精度良く切削位置へ移動させ切削し得る。その他の構成及び作用効果は、実施例1と同様である。温度センサは、接触式の他に非接触式であっても、同様に適用できる。
なお、上記各実施例では、図9に示すように、チャック12にフランジを設けることなく、センサ68及び69をチャック12の外周面に対し所定間隔をもって対向し得るように、位置検出装置18を配置させても良い。また、上記各実施例において、位置検出を光センサ68または69の一方のみとしても良く、例えばX方向の光センサ68のみを配置するようにしても良い。更に、位置検出装置18の移動方向は、図面の左右方向または上下方向のみではなく、これらの組み合わせなど移動方向は問わない。
(刃先清掃装置に関する構成)
以下、図10乃至図14に基づき、刃先などの被清掃物を清掃する被清掃物清掃装置に関する構成を説明する。なお、上記実施例1の図5に示す位置検出装置18と実質的に同一部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
(技術分野)
この技術分野は、切削工具の刃先たとえばチップなどを清掃する被清掃物清掃装置および被清掃物清掃装置を備える切削機械に関するものである。
(背景技術)
特開平10−96616号公報には、エアーガンが配置されるロボット制御装置を切削工具たとえばミルの回りに移動させると共に、ミルのチップに付着している切粉等を上記エアーガンによって除去する構成が開示されている(段落番号「0060」参照)。なお、上記公開公報は、ストラクチャライトユニットの投光窓からスリットをチップに投光し、撮影窓を通してカメラ撮影(即ち、画像処理)を行って工具チップの磨耗などを自動検査するものである。
(解決しようとする課題)
上記公開公報等において、上述した画像処理後に切削工具の磨耗などを検査する際、微細な切粉等も出来るだけ清掃する必要がある。また、熱変位により切削工具の切削位置を検出する場合(例えば特許文献1などを含む)、例えばある基準線を用いて位置検出する際にも、同様に微細な切粉等などを出来るだけ除去する必要がある。
そして、上記公開公報において、ミルのチップに付着した微細な切粉等を、一般に通常のエアーガンで漫然と吹き飛ばすのみでは除去できず、そのため切削工具の刃先位置を正確に検出するのが困難となる。
そこで、以下に説明する被清掃物清掃装置は被清掃物例えば切削工具に付着する微細な切粉等を有効に除去し、また被清掃物清掃装置を備える切削機械は被清掃物例えば切削工具の切削位置を効率良く検出し得るようにするものである。例えば、被清掃物(切削工具など)に対向する清掃手段は、被清掃物の外形に沿う移動軌跡データに基づき被清掃物と相対移動する被清掃物清掃装置である。
また、被清掃物清掃装置と、被写体を撮像する撮像手段と、上記撮像装置は被写体として被清掃物である切削工具を撮像し、この画像データに基づき切削工具の移動軌跡データを演算する演算手段と、上記移動軌跡データに基づき切削工具または被清掃物を相対移動させる制御手段とを備える切削機械である。
図10乃至図13に示すように、筒状のエアーノズル88は位置検出装置18の上方に位置決めされており、エアーノズルには先細り状の先端口88Aが位置検出装置18の段部18A近傍に配置されている。先端口88Aの口径は例えば直径1.5mmで、エアー有効領域は例えば2mm程度に予め設定している。即ち、エアーノズル88にはコンプレッサ(図示省略)が接続されているので、コンプレッサからのエアーが先端口88Aから噴出する。なお、先端部88Aは、バイト26のチップ26Aに向くよう折曲げ形成されている。また、刃先清掃装置は、エアーノズル88および図示しないコンプレッサなどを備える。
(刃先清掃装置の作用)
画像処理を実行する直前に、刃先清掃装置は、図10に示すように、外径用バイト26をエアーノズル88の先端口88Aに対向させる。次に、バイト26のチップ26Aは、図11(A)乃至図11(C)に示すように、エアーノズル88の先端口88Aがチップ26Aの輪郭線(実際にワークを切削する箇所と同義)に対応する切削面上部から順次に下部(X方向)へ向かって移動する。この際、チップ26Aは、エアーを噴出し続けるエアーノズル88の先端口88Aに対して所定間隔たとえば2mmをもって曲線的に移動する。
引続き、図11(D)及び図11(E)に示すように、チップ26Aはその輪郭線に対応するチップ26A下面のZ方向へ向かって曲線的に移動する。なお、この際には、エアーノズル88の先端口88Aからエアーが噴出し続けている。即ち、本例においては、被清掃物の一部分たとえばチップ26Aの輪郭線に沿って集中的に清掃するので、例えば通常のエアーガンで漫然と刃先に付着した切粉等を吹き飛ばす場合に比べ、微細な切粉等でも除去し得る。
最後に、バイト26は、図10の2点鎖線に示すように、位置検出装置18の基準部18Bに対応するよう移動させる。そして、図3(A)に示すカメラ30は、一望視Aエリア内に位置する基準部18B及びチップ26Aを撮像する。本例においては、エアーノズル88を含む刃先清掃装置は、チップ26Aの輪郭線に対応する切削面付近の広範囲に亘る切粉等を吹き飛ばす。
従って、本例によれば、チップ26Aの切削処理に際する十分な範囲での切粉等を除去し得るので、切粉等が付着していない綺麗な状態のチップ26Aを画像処理できる。ここで、バイト26は上述した曲線的な移動軌跡を描くように移動するが、この移動軌跡データは予めRAM64(図15参照)の記録媒体に記録されている。そして、図15に示すCPU60は、バイト26を移動軌跡データに基づいて移動させる。
なお、演算手段または制御手段であるCPU60は、画像処理後に切粉等がチップ26Aに付着していることが検出した場合、全工程または付着箇所のみを複数回または切粉等が除去されるまで上述した清掃動作を繰返すようにしても良い。また、本例では、清掃時において、バイト26の他にエアーノズル88を相対的に移動可能としても良くまたはエアーノズル88のみを移動させるようにしても良い。更に、清掃のタイミングは、キャリブレーションサイクル時など任意に変更し得る。
一方、外径用バイト25のチップ25Aの場合は、図12(A)乃至図12(C)に示すように、エアーノズル88の先端口88Aがチップ25Aの輪郭線に対応する切削面略中央から順次に上部(上方向の斜め)へ向かって移動する。この際、チップ25Aは、エアーノズル88の先端口88Aに対して所定間隔をもって曲線的に移動する。引続き、図12(D)及び図12(E)に示すように、チップ25Aはその輪郭線に対応するチップ25A上部から下方(X方向)へ向かって曲線的に移動する。その他の作用効果は、図11の例と同様である。
他の例として、図13に示すエアーノズル88は、バイト24を上方からチップ24Aに向くよう下向きに折曲げ形成させても良い。この場合には、先端口88Aがチップ24A全面に亘ってエアーを吹き付けることができるので、チップ24Aに付着している微細な切粉等でも有効的に清掃し得る。また、本実施例では、先端口88Aの折曲げ方向,口径またはコンプレッサの圧縮力(具体的には、圧縮弁による調整)など任意に変更し得る。
更に他の例として、図14(A)に示す先細り状のブラシ部材89を回転可能に配置し、ブラシ部材89の先端に複数本のハケ89Aを配置する。即ち、ブラシ部材89には図示しない可変タイプのモータが連結されており、このモータはブラシ部材89を高速乃至低速の範囲に亘って回転する。なお、モータは、定速のみとしても良い。その他の構成および作用効果は図11の例と同様である。
なお、本例では、エアーノズル88またはブラシ部材89の他に、レーザ或いは超音波などを用いるようにしても良い。また、上述したエアーノズル88などの移動軌跡データは、刃先の上述した50μmのシークライン群に基づいて生成する。即ち、CPU60は、複数本のシークライン群に基づき刃先の輪郭線を生成(即ち、演算)し、この輪郭線を移動軌跡として用いる。更に、輪郭線の取得方法としては、例えば所謂境界追跡法によって刃先などの被清掃物の輪郭を取得しうる。これらのデータは、上述した機械製造時の調整工程時などに取得する。
(画像認識処理方法)
図15乃至図32を用いて、本実施例に係る切削工具の画像認識処理方法を詳述する。
(技術分野)
この技術分野は、被写体たとえば切削工具を画像認識する際の画像認識処理方法及びこの画像認識処理方法を用いる工作機械に関するものである。
(背景技術)
特開平4−232407号公報には、受光手段により受光された工具に係る平行光線の幅を測定し、工具の回転角と測定値との関係から工具の外形形状を求めるものである(要約参照)。そして、上記公報では、工具に係る平行光線の幅を測定し、工具の回転角と測定値との関係から工具の外形形状を求めるので、変形箇所の特定や変形の程度の検出が可能である。なお、上記公報では、工具の外形形状を容易に求めることができるので、作業時間も短時間ですみ、自動化も可能となる。
(解決しようとする課題)
上記公報において、変形箇所の特定や変形の程度の検出できるが、その変形の程度など精度良く画像認識する方法が開示されていないので、変形などの程度に基づき切削に支障があるか否かを検出し得ない。なお、切粉等が例えば切削工具のすくい面に溶着し膨張する場合がある(膨張する状態を構成刃先という)。この場合には、ワークの切削面が粗くなったり又は寸法が変わるので、構成刃先を出来る限り早期に検出し除去する必要がある。
そのため、光センサ又はカメラ等で認識する際、その方向によっては構成刃先か否かを認識できない場合がある。また、切粉等がすくい面(即ち、切削線で輪郭される面)に付着し、切削に支障がある場合には、機械を直ちに停止させる必要がある。しかし、切粉等が切削面とは無関係な箇所に付着しても、切削の支障にはならないので、機械を停止させる必要が無い。
そこで、この画像認識処理方法は、切削工具の変形具合を精度良く画像認識でき、切削に支障があるか否かをも検出し得るものである。
(旋盤Sの制御系に関する構成)
図15に示すように、旋盤Sは、CPU60と、不揮発性メモリであるROM62,RAM64と、NCテーブル50に配置されるモータドライバ51,NCモータ52と、ターレット装置20に配置されるモータドライバ53,ターレットモータ54と、操作部56と、表示部57と、ブザー58と、を備える。照合手段および補正手段であるCPU60は、旋盤Sの全体的な動作を司り、たとえば操作部56に配置される操作キーが操作された場合に、その操作に基づく処理を行う。また、CPU60には撮像手段の一部を構成するカメラ30が接続されており、カメラ30で撮像された画像データがCPU60へ入力される。
記録手段であるROM62は旋盤Sに各種の処理を制御するプログラムを記録し、そのプログラムによって旋盤Sが制御される。記録手段であるRAM64は各種データの読み書き用の記録域たとえば画像データ領域65を有し、この画像データ領域65に画像データ等が記録される。モータ52または54は、CPU60の駆動信号に基づき、モータドライバ51または53を介して回転する。表示手段である表示部12は、カメラ30で撮像される画像データなどを表示する。警告手段であるブザーは、警告音を出力する。
(バイト画像処理モード)
バイト画像処理モードについて、図16のフローチャートで説明する。ステップ162において、刃先が折損か否かを判断する。ステップ160が否定の場合はステップ164で刃先が膨張(構成刃先または切粉の付着など)か否かを判断し、ステップ164が否定の場合はステップ166で刃先が磨耗か否かを判断する。なお、これらの判断手法は、後述するシークラインなどを用いる。
ステップ166が肯定の場合即ち磨耗と判断される場合、ステップ168で磨耗が設定値(例えば20μm)以上か否かを判断する。ステップ168が肯定の場合即ち設定値以上の場合、ステップ170において、摩擦量のデータをRAM64に記録する(即ち、メンテナンス等の際のデータとする)。
そして、ステップ162またはステップ164が肯定の場合またはステップ168が否定の場合またはステップ170の処理が終了した後に、ステップ172で旋盤Sの運転を強制的に停止(例えばバイトが交換されるまで切削加工運転禁止等のフェールセーフ処置の実施を含む)させ、ステップ174で警告する。
具体的には、表示部(図13参照)に警告表示またはブザー58を作動させて警告音または図示しないスピーカから警告音声を出力させる。作業者は、上記警告によりバイト交換が促される。なお、撮像した視野部分に切粉などの異物が付着した場合、CPU60は画像認識機能としてエラー設定できるので、フェールセーフ処置の実施ができる。また、ステップ166で刃先が磨耗と判断されれば、CPU60は設定値以下でも、チップ交換のために旋盤Sの運転を停止させる。
ステップ166が否定の場合すなわち刃先が磨耗でないと判断した場合、ステップ176において、CPU60は刃先の変位が設定値(例えば100μm)以上か否かを判断する。刃先の変位は、図7の切削線の総合位置を検出することによって判断され、熱変位の他に刃先の磨耗も含まれる場合がある。
ステップ176が肯定の場合すなわち設定値以上の場合、ステップ178において、測定時の変位データに基づき補間データをRAM64に記録する(即ち、メンテナンス等の際のデータとする)。そして、ステップ176が否定の場合またはステップ178の処理後、ステップ179において、フィードバックして補償処理を行なう。
以下、図17乃至図32に基づいて、切削工具の画像認識処理方法について説明する。
(切削工具の初期画像データ方法)
初期画像データ方法は、新たな切削工具をターレット刃物台21(図1参照)にセットする際に、図1に示す撮像装置27で撮像して行う画像認識処理である。なお、500万画素のカメラ30(図3A参照)では、図17に示すチップ26Aのエッジ等の位置決めの認識精度が±0.25μm(=1/34ピクセル)の精度で画像認識される。
即ち、500万画素(1画素当りの実寸法は8.6μm)の光学系のカメラでも、最近の画像処理技術の上記認識精度が向上したことによって十分にチップ等の折損・磨耗などを画像認識できると共に、チャック12(図1参照)などの温度を1℃単位で測定できる。ここで、図17の四角枠は、チップ26Aの先端(即ち、すくい面)を検出するときに用いる刃先検出エリアである。
まず、チップ26Aの初期画像データ方法は、図17に示すように、複数本のシークライン(刃先部分輪郭の位置を求める手段)CLをチップ26Aの輪郭に沿って例えは40μm毎の等間隔で予め設定される。この際、シークラインCLの長さは輪郭線を中心として基準長すなわち半長50μm(全長は100μm)で、シークラインCLは輪郭線に対し直角になるよう予め設定される。ここで、図17に示すシークラインCL群(刃先の輪郭部分を位置認識する手段)より構成されるテンプレート(刃先の位置を求める手段)を、基準画像となるオリジナルテンプレートという。
本例において、基準長を例えば50μmに設定したのは、チップ26Aの欠損または切粉等の付着の大きさ(即ち、最大長さ)などを、50μm以上あるいは以下として認識させるためである。即ち、被写体であるチップ26Aに切粉等が付着して外形が変化する時、被写体の位置(所謂オブジェクトベクトル)が移動するのを回避するためである。
従って、シークラインCLのエッジ位置(チップ26Aの輪郭線などにおける交点位置と同義)が、シークラインCLの半長以上または以下にズレる場合は、対象となるシークラインCLをエラー処理(無効と同義)してオブジェクトベクトルの演算に算入させないためである。ここで、パターンマッチング(照合と同義)による被写体の位置決めは、ズレがシークラインCL内に収まるものでのみオブジェクトベクトルを演算し、シークラインCL数の内ある割合の本数までのエラーは許容している。
パターンマッチング後は、各シークラインCLについて、その中点(半長50μmの点)とエッジ位置とのシークラインCL上の差分を演算する。この差分は、被写体(例えば、バイト等)の初期画像データ設定時を基準に、被写体外形の変形度合いを示す。この基準は、オリジナルテンプレートに対する切削線のベクトル値(以下、相対値という)の場合にも適用する。
なお、上記基準は、バイト自体の位置がボールネジ(図示省略)の熱膨張などによって変位しても、これらのシークラインCL上の差分は変動しない。また、バイトの変形箇所たとえばチップの欠損箇所あるいは切粉等の付着箇所は、シークラインCL全数の割合からすると、非常に低いので、被写体全体の変位に与える影響は少ない。
そして、本例では、上述したシークラインCL上の差分値に基づき、刃具の折損および切粉等の付着を検出する。なお、本例では、所謂マルチステップパターンマッチング(以下、「MS」という)パターンマッチングの技法を、被写体の位置認識に適用しているが、これ以外に正規化相関によるパターンマッチング等を用いるようにしても良い。また、本例では、各エッジ認識にMSパターンマッチングのテンプレートを構成するシークラインCLを用いているが、これ以外にエッジ検出用のキャリパスライン(シークラインCLを変形したもの)などを適用しても良い。
(切削線データの取得方法)
図18乃至図20に基づき、切削線データの取得方法について説明する。図18に示すように、X方向切削線に係るシークライン(切削線を求める手段)CLは、例えば10μmの等間隔をもって複数が生成する。X方向切削線は、シークラインCL群の中でエッジ位置が最下端のものを演算し、その最下端エッジ位置から水平方向へ描いた直線である。即ち、X方向切削線は、チップ26Aの輪郭に対する水平接線である。
図19に示すように、Z方向切削線に係るシークラインCLも、上述したX方向切削線の場合と同様に生成する。即ち、Z方向切削線は、チップ26Aの輪郭に対する垂直接線である。そして、X方向切削線およびZ方向切削線の位置を、オリジナルテンプレートに対する差分量として、図15に示すRAM64にそれぞれ記録する。
図20に示すように、水平に対して30度方向の切削線を生成することができる。即ち、テーパ面をワークに切削するには、バイトの移動軌跡を演算するために、特定角度たとえば30度などの切削線を生成する。これにより、テーパ面を精度よく加工し得る。なお、本例では、X方向切削線およびZ方向切削線とバイトのノーズより、幾何学的にバイトの軌跡を設定しても良い。
ここで、切削線の位置(ベクトル)は相対ベクトルおよび絶対ベクトルの意義があり、絶対ベクトルは刃具の磨耗と機械全体の熱歪の合計である。そして、絶対ベクトルをNCテーブル50(図15参照)で補償し、刃具の磨耗と機械の熱変位をフィードバック補償する。即ち、NCテーブル50の補正データは、切削線の絶対位置に基づいて処理する。
一方、切削線の相対ベクトルは、オリジナルテンプレートでパターンマッチングした位置に対する切削線の位置に基づき、刃具の磨耗量限界値の演算(内側への移動)および切粉の付着と構成刃先の検出(外側への移動)の処理に用いる。なお、図15に示すCPU60は、刃具の磨耗量=切削線/刃具全体位置(切削線の相対位置)で演算する。
(キャリブレーションサイクル時の検出処理)
第1に、図21に示すように、刃具の欠損部分を検出する場合は、シークラインCL上の差分がチップ26Aの内側方向へ窪むので、その窪み量および幅が閾値以上か否かをCPU60(図15参照)は判断する。閾値は、例えば窪み量が30μm以上で、且つ幅がシークラインCLが5本(略200μm)以上に亘って連続する場合などである。この閾値は任意に変更でき、また窪み量および幅の一方のみが該当する場合にも欠損としても良い。
本例においては、オリジナルテンプレートのシークラインCL群(図17参照)およびキャリブレーションサイクル時の画像データを照合し、シークラインCLの相対位置の変化箇所(相違箇所と同義)を検出し得る。即ち、本例によれば、オリジナルテンプレート(図17参照)でパターンマッチングするのみで、チップ26Aの欠損を検出し得る。
第2に、図22に示すように、刃具に突起を検出する場合は、シークラインCL上の差分がチップ26Aの外側方向へ突出するので、その突出量および幅が閾値以上か否かをCPU60は判断する。閾値は、例えば突出量が20μm以上で、且つ幅がシークラインCLが3本(略120μm)以上に亘って連続する場合などである。本例によれば、図21の例と同様に、オリジナルテンプレート(図17参照)でパターンマッチングするのみで、チップ26Aの欠損を検出し得る。
第3に、刃具の磨耗量が閾値以上か否かを検出する場合は、オリジナルテンプレートに対する切削線の相対位置の変化を検出する。即ち、CPU60は、オリジナルテンプレート(図17参照)にキャリブレーションサイクル時の画像データをパターンマッチングした画像データ(図23参照)と比較し、切削線の相対位置における磨耗箇所が閾値(例えば、20μm)以上である(図24参照)場合に、刃具の磨耗量オーバー(刃具の寿命)と判断する。本例においては、オリジナルテンプレートのシークラインCL群(図17参照)および切削線を用いることより、刃具の磨耗量オーバーを検出し得る。
第4に、図25及び図26に示すように、刃具の突起(構成刃先または切粉の付着)を検出する場合も、オリジナルテンプレートに対する切削線の相対位置の変化を検出する。即ち、切削線の相対位置変化がチップ26Aの外側方向へ突出する場合は、その設定値(例えば、5μm)以上か否かをCPU60が判断する。設定値以上の場合は、切粉等の異物がチップに付着または刃具の異常変形の発生と判断する。
この工程は、初期設定時の切削線の相対位置に対する変化のみならず、キャリブレーションサイクル時の現検出時における切削線位置に対する変化をも検出する。この検出は、磨耗によりチップ26Aが内側へ後退した状態の切削線を基準とするためである。
また、キャリブレーションサイクル時の現検出時における切削線位置に対する相対的変化量が、上述した設定値(バイトデータと同義)以上で且つ突出量および幅が閾値以上か否かをCPU60は判断する。閾値は、例えば最大突出量が50μ以上で、幅tが200μ以上に亘って連続する場合(図25参照)などである。この場合、「構成刃先の疑いアリ」とCPU60が判断する。
CPU60は、幅tをもって構成刃先の突出量と検出する。即ち、構成刃先が生成した場合は、刃具より突出した部分がある幅tをもって連続した形状となる。そして、上述した構成刃先でない場合、CPU60は切粉等の異物がチップに付着する(図26参照)と判断する。即ち、本例によれば、オリジナルテンプレートのシークラインCL群(図17参照)および切削線を用いることより、刃具の突起(構成刃先または切粉の付着)を検出し得る。
(シークラインCLの設定方法)
シークラインCLは、図27に示すように、求める切削線(図27ではZ方向切削線)に対し直角方向で、チップ26Aの内側から外側へ向かいように生成する。そして、シークラインCLは、中央から上端および下端の方向(図27参照)へ向かって例えば10μピッチの等間隔で生成する。
また、シークラインCLの始点位置が、オリジナルテンプレートの輪郭線より突出する場合(図27では最下端から3本目および4本目参照)は、その突出量を例えば20μm程度に設定する。更に、シークラインCL全体が、オリジナルテンプレートより離間する場合(図27では最下端の2本参照)は、シークラインCLを2本以内になるように生成する。そして、これら2本のシークラインCLは、始点位置を例えば最下端から3本目の同一位置とし、且つ同一長さに設定する。
本例においては、上述のようなシークラインCL群を生成すると、切削に何ら影響を与えない範囲を設定するので、シークラインCLの始点位置から離間している異物は検出対象外し得る。即ち、本例によれば、上記シークラインCL群で切削に影響を与える検出範囲が設定しているので、切削上問題となり得る検出対象物を特定できる。なお、図27に示す異物は、空中に浮遊している浮遊物である。
(非検出対象範囲の例)
先ず、図28に示すように、切粉A,刃具の異常突起および切粉Bは、いずれもZ方向切削線よりも内側に位置するので、非検出対象物とする。即ち、上記切削線の内側に位置する異物などは、切削に影響しない範囲であるので、非検出対象物とする。なお、CPU(図15参照)は、シークラインCLのエッジ位置により、チップ26Aの外形を検出(認識)する。また、シークラインCL1(図28参照)のように、エッジ部分が無い(無効)シークラインCLは、検出の対象外とする。
異物Aは、シークラインCL2における最初のエッジ部分が切削線付近であり、最後のエッジ部分が外側(右側)位置しているので、シークラインCL2は検出の対象外とする。即ち、チップの外形は単体であるので、これより離間している異物などは非検出対象物となる。異物B,CおよびDは、シークラインCLから外れている(即ち、エッジ部分が無い)ので、非検出対象物とする。
一方、チップ26Aの仮想線として示す基準線から先端部分(基準部分という)は、切削に影響を与える。この基準部分に切粉等が付着する場合、CPU60(図15参照)は検出対象物とする。なお、本例では、シークラインCL群の中央(図28参照)から上端および下端へと処理する。そして、例えば無効シークラインより下方にシークラインが存在する場合には、そのシークラインは検出の対象外とする。
次に、図29に示すような長尺な切粉の一端がチップ26Aに付着する場合、シークラインCL12の最終エッジが不明となっているので、CPU60は検出対象物とする。この場合、長尺な切粉の他端は、チップ26Aの基準部分に影響を与えないが、あえて検出対象物とした。なお、CPU60が検出対象物と判断すると、CPU60は異常であるとして、図16のステップ172で運転停止などの処理を行う。
最後に、CPU60は、切削線(X方向およびZ方向の切削線を含む)の絶対位置(絶対ベクトルと同義)を演算する。即ち、CPU60は、切削線の絶対ベクトルの変化(変化量を含む)を、次回の切削サイクルへフィードバックする。
(チップ26Aの絶対ベクトル検出方法)
チップ26Aの絶対ベクトル検出は、以下のような画像データを用いることによって行う。この画像データは、例えば総合検出エリアと刃先検出エリアで構成される。図30に示すように、総合検出エリア(実線部分の四角枠参照)は、チップ26Aを示す撮像領域であり、チップ26Aを全体的に検出するときに用いる。刃先検出エリア(2点鎖線の四角枠参照)は、チップ26Aの先端を検出するときに用いる。
そして、上述したように、500万画素のカメラ30(図3参照)では、図31(A)で説明するチップのエッジ等の位置決めの認識精度が±0.25μm(=1/34ピクセル)の精度で画像認識でき、図31(B)〜図31(D)で説明する切削線LcmまたはLbmの認識精度が±0.45μm(=1/19ピクセル)の精度で画像認識できる。なお、上述したように、図31の実線部分枠(四角枠)は、総合検出エリアであり、図31の2点鎖線部分枠(四角枠)は、刃先検出エリアである。
先ず、図31(A)に示すように、複数のシークラインLaを設定することによりチップ26Aのエッジを求める。使用前後のチップ26Aのエッジを求めてパターンマッチングし、各エッジの位置が閾値以下に異なっている場合はチップ26Aの折損と判断する。一方、各エッジの位置が閾値以上に異なっている場合はチップ26Aに切粉が溶着などした膨張(構成刃先ともいう)と判断する。なお、閾値は例えば20μmなどの幅を設け、その幅は任意に変更し得る。
チップのノーズも、シークラインを用いて求めることができる。即ち、図31(B)に示すように、下方に向かう複数のシークラインLbを所定間隔で設定し、輝度の極大値(暗から明に変化する点)が最下点となるシークラインLbmを求めてX方向切削線とする。同様に、図31(C)に示すように、左方に向かう複数のシークラインLcを所定間隔で設定し、輝度の極大値(暗から明に変化する点)が最左点となるシークラインLcmを求めてZ方向切削線とする。
次に、図31(D)に示すように、X方向切削線Lbmと、このX方向切削線Lbmに平行であってZ方向切削線LcmのエッジEcを通る線Lbpとの距離Rzを求める。同様に、Z方向切削線Lcmと、このZ方向切削線Lcmに平行であってX方向切削線LbmのエッジEbを通る線Lcpとの距離Rxを求める。そして、距離Rzと距離Rxのうち、大きい方をノーズに設定する。使用後のチップ26Aのノーズが使用前のチップ26Aのノーズよりも設定値以上になっている場合はチップ26Aの摩耗と判断する。
以上、説明した画像認識処理方法は、オリジナルテンプレートのシークライン群およびキャリブレーションサイクル時の画像データを照合し、シークラインの相対位置の変化箇所を検出するものである。また、画像認識処理方法は、刃具の磨耗量が閾値以上か否かを検出する場合、オリジナルテンプレートに対する切削線の相対位置の変化を検出するものである。更に、画像認識処理方法は、刃具の突起(構成刃先または切粉の付着)を検出する場合も、オリジナルテンプレートに対する切削線の相対位置の変化を検出するものである。
画像認識処理方法は、初期設定時の切削線の相対位置に対する変化を検出すると共に、キャリブレーションサイクル時の現検出時における切削線位置に対する変化をも検出するものである。また、画像認識処理方法は、キャリブレーションサイクル時の現検出時における切削線位置に対する相対的変化量が、設定値または閾値であるかを照合手段が演算するものである。
画像認識処理方法を用いる工作機械は、上述した各処理またはこれらの処理を複数組合せる処理を行う画像認識処理装置と、被写体を撮像する撮像手段と、上記撮像装置は被写体として切削工具を撮像し、この画像データに基づきオリジナルテンプレートおよびキャリブレーションサイクル時の画像データを照合する照合手段と、上記照合手段の照合結果に基づき運転停止または照合データを次回の切削サイクルへフィードバックさせる制御手段とを備えるものである。
本発明は実施例1及び実施例2で説明した短軸旋盤に限定されず、例えば2軸正面旋盤またはフライス盤など種々の切削機械(切削工具とワークを相対的に移動させて加工する機械)に適用できる。なお、本発明に係る被測定物位置検出装置を備える切削機械は、上述した検出手段を被測定物に対して移動させても良い。また、上記検出手段を上記被測定物におけるX方向の位置を検出するX方向センサおよびZ方向の位置を検出するZ方向センサの少なくとも一方とし、上記センサを上記被測定物に対する検出位置の基準となる段部が形成される基準手段に配置しても良い。更に、上記被測定物位置検出装置に、上記被測定物の温度を検出する温度センサを設けるようにしても良い。また、上述する各被測定物位置検出装置による検出データに基づき、切削工具の切削位置を演算するようにしても良い。更に、本発明に係る被測定物位置検出装置を備える切削機械は、上述した各変形例の構成の内、1つの変形例または2つ以上の変形例を組合せるパターンとしても良い。
12…チャック(被測定物)、18…位置検出装置(基準手段)、18B…基準部(被写体)、25…内径加工用のバイト(被写体)、25A…刃先、26…外径加工用のバイト(被写体)、26A…刃先、27…撮像装置(撮像手段)、30…カメラ、60…CPU(照合手段,演算手段,補正手段,画像認識処理装置)、62…ROM(記録手段)、64…RAM(記録手段)、66…フランジ(補助体)、68,69…光センサ(位置検出手段)、70…温度センサ、90…テスト材、S…旋盤(切削機械)、W…ワーク

Claims (8)

  1. 回転可能に配置される被測定物である爪付きチャックの熱変位により変位した位置を検出する検出手段を備え、且つ上記チャックを構成する金属と同一性ある材質で上記チャックよりも径大な補助体を、上記チャックに連接して配置させ、
    上記検出手段は、静止時および回転時の少なくとも一方における上記補助体と対向し、上記補助体を介して上記チャックの熱変位により変位した位置を検出することを特徴とする被測定物位置検出装置。
  2. 請求項1に記載の被測定物位置検出装置において、上記検出手段を上記補助体に対して移動させることを特徴とする被測定物位置検出装置。
  3. 請求項1又は2に記載の被測定物位置検出装置において、上記検出手段は上記チャックにおけるX方向の位置を検出するX方向センサおよびZ方向の位置を検出するZ方向センサとし、
    上記各センサを、上記補助体に対する検出位置の基準となる段部が形成される基準手段にそれぞれ配置することを特徴とする被測定物位置検出装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の被測定物位置検出装置において、上記チャックの温度を検出する接触式の温度センサをさらに上記検出手段と共に設けることを特徴とする被測定物位置検出装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の被測定物位置検出装置による検出データに基づき、切削工具の切削位置を演算することを特徴とする被測定物位置検出装置を備える切削機械。
  6. 回転可能に配置される被測定物の熱変位により変位した位置を検出する検出手段を備え、上記検出手段は静止時および回転時の少なくとも一方における上記被測定物と対向して位置を検出する被測定物位置検出装置において、被写体を撮像する撮像手段と、上記被測定物に対する検出位置の基準となる段部が形成される基準手段に上記撮像手段の位置誤差を測定する基準部とを備え、
    上記撮像手段は上記基準部及び上記切削工具を被写体として同一の撮像領域内に撮像し、この撮像した画像データに基づき切削工具の切削位置を演算することを特徴とする被測定物位置検出装置を備える切削機械。
  7. 回転可能に配置される被測定物である爪付きチャックの熱変位により変位した位置を検出する検出手段を備え、且つ上記チャックを構成する金属と同一性ある材質で上記チャックよりも径大な補助体を、上記チャックに連接して配置させ、上記検出手段は、静止時および回転時の少なくとも一方における上記補助体と対向し、上記補助体を介して上記チャックの熱変位により変位した位置を検出する被測定物位置検出装置において、被写体を撮像する撮像手段と、上記補助体に対する検出位置の基準となる段部が形成される基準手段に上記撮像手段の位置誤差を測定する基準部とを備え、
    上記撮像手段は上記基準部及び上記切削工具を被写体として同一の撮像領域内に撮像し、この撮像した画像データに基づき切削工具の切削位置を演算することを特徴とする被測定物位置検出装置を備える切削機械。
  8. 回転可能に配置される被測定物の熱変位により変位した位置を検出する検出手段を備え、上記検出手段は静止時および回転時の少なくとも一方における上記被測定物と対向して位置を検出する被測定物位置検出装置において、異なる撮像位置での被写体にそれぞれ対応する光路を分離する光路分離手段および上記光路分離手段における同一の光路上に配置される撮像素子を備え、上記光路分離手段は一方の撮像位置での上記被写体を撮像する際には他方の撮像位置での光路を遮断させる撮像装置と、上記被測定物に対する検出位置の基準となる段部が形成される基準手段に上記撮像装置の位置誤差を測定する基準部とを備え、
    上記撮像装置は、上記一方の光路における一方の撮像位置での上記基準部及び上記一方の撮像位置での切削工具を被写体として同一の撮像領域内に撮像し、或いは上記一方の光路における上記一方の撮像位置での上記基準部を被写体として撮像すると共に上記他方の光路における他方の撮像位置での切削工具を光路切換えの時間差をもって撮像し、この撮像した画像データに基づき切削工具の切削位置を演算することを特徴とする被測定物位置検出装置を備える切削機械。
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