JP5449111B2 - 風車およびその制振方法 - Google Patents
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Description
下記特許文献1には、AMDに受動ダンパを組み合わせることで付加質量を小さくする発明が開示されている。しかし、依然として付加質量を駆動するためのアクチュエータが必要となるので、重量の増大を根本的に解決するものではない。
しかし、同図に示したように、風車では制振する必要のある周波数帯域が広いため、以下のような問題がある。すなわち、図13に示すように、一般に、制振効果の高いピークレベルと制振効果を発揮する周波数帯域とは反比例の関係にあるため、大きな制振効果を得ようとすれば狭い周波数帯域とせざるを得ず(曲線L1参照)、逆に広い周波数帯域を得るためにはピークレベルが低くなってしまう(曲線L2参照)。したがって、風車に特有な振動の周波数帯域の全てで大きな制振効果を得ることは困難である。
すなわち、本発明にかかる風車は、風車の固有振動数における振動を減衰するように調整された受動ダンパと、風車に流入する風の乱れの変動周波数および/または風車翼の回転数のn次(nは自然数)周波数における振動を減衰するように調整された能動ダンパと、該能動ダンパの制振周波数を調整する能動ダンパ用制御部とを備えていることを特徴とする。
一方、風車に流入する風の乱れの変動周波数は、天候や季節、時刻等に応じた風況によって変動する。また、風車翼の回転数のn次周波数についても、風車翼の回転数によって変動する。したがって、これらの周波数における振動に対しては、能動ダンパ用制御部によって制振周波数を動的に変化させることができる能動ダンパ(例えばAVC;Active Vibration Control)を用いることとした。
このように、能動ダンパと受動ダンパとを、それぞれ対応する周波数を分けて負担させることとしたので、それぞれのダンパの制振効果を効果的に発揮させることができる。
付加質量として選定される風車構成要素としては、例えば、風車本体に対して相対移動可能とされたナセルカバー、トランス、ラダー(昇降はしご)、タワーのプラットフォーム(足場)、ナセルから下方へと吊り下げられるケーブル、ナセルをヨー方向に旋回させる旋回モジュール等が挙げられる。
付加質量として選定される作動油または機械油としては、例えば、油圧機器のリザーバタンク内の作動油、増速機の潤滑油等が挙げられる。
一方、風車に流入する風の乱れの変動周波数は、天候や季節、時刻等に応じた風況によって変動する。また、風車翼の回転数のn次周波数についても、風車翼の回転数によって変動する。したがって、これらの周波数における振動に対しては、制振周波数を動的に変化させることができる能動ダンパ(例えばAVC;Active Vibration Control)を用いることとした。
このように、能動ダンパと受動ダンパとを、それぞれ対応する周波数を分けて負担させることとしたので、それぞれのダンパの制振効果を効果的に発揮させることができる。
図1には、本発明の基本的な制振の考え方が示されている。同図(a)の横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸は風車のタワーの上部に設置されたナセルにおける振動レベル[dB]を示す。同図(a)に示すように、低周波数側から順に、風の乱れの周波数成分による振動、ロータ回転数(1N)における振動、風車自身の固有振動数の1次成分(1st)における振動、ロータ回転数の3倍の回転数(3N)における振動、風車自身の固有振動数の2次成分(2nd)における振動が表れる。なお、ロータ回転数(1N)における周波数と1次固有振動数(1st)との関係は、風車自身の固有振動数によって逆転する場合もある。また、ロータ回転数の3倍の回転数(3N)に表れる振動は、風車翼が3枚であることに起因するものである。
図1(b)の横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸は制振装置による減衰量[dB]を示す。同図に示されているように、本発明では、1次固有振動数(1st)に調整して受動ダンパ(具体的にはTMD)を機能させ、風の乱れの周波数成分(及び/又はロータ回転数の1N成分)に調整してアクティブ制振(AVC;能動ダンパ)を機能させる。
特に、アクティブ制振については、図2に示すように、風の乱れ成分の変動に応じて、周波数帯域を調整することが好ましい。また、アクティブ制振は、図3に示すように、ロータ回転数(1N)の変動に応じて、周波数帯域を調整することが好ましい。
同図において、風車翼3によって回転させられたロータ4の回転出力は、増速機7へと導かれる。増速機7にて回転数が増大された回転出力が発電システム9へと導かれ電気出力へ変換される。発電システム9からの発電出力は、図示しない系統へと供給される。それぞれの風車翼3には、ピッチ角制御機構11が設けられている。このピッチ角制御機構によって、風車翼3に流入する風を受けて回転出力を得るファイン側から、風を受け流すフェザー側までの間で、風車翼3のピッチ角が適宜変更されるようになっている。
ピッチ角制御機構11へ入力されるピッチ角指令値θは、ピッチ角制御部13にて生成される。ピッチ角制御部13は、発電システム9から出力される発電出力値Pに基づいてピッチ角を設定するピッチ角設定部15を備えている。このピッチ角設定部15によって、所望の出力電力値となるように風車翼3のピッチ角が設定される。ピッチ角設定部15によって設定されたピッチ角は、補正部17へと送られる。
補正部17では、風の乱れ情報取得手段19から得られた風の乱れの周波数に基づいて、ピッチ角を補正し、ピッチ角指令値θとして出力する。風の乱れ情報取得手段19としては、例えば、風車翼3の荷重変動を得る光ファイバ歪み計測器が挙げられる。あるいは、風車にレーザドップラー流速計または超音波ドップラー流速計を設置し、風車の上流側の風速を計測することによってピッチ角をフィードフォワード制御することとしてもよい。このように、風の乱れ成分を取得することによって、風の乱れ成分の周波数帯域における振動を集中的に減衰させるようにピッチ角を変更する。具体的には、風の乱れ成分によって生じるタワーの振動を打ち消すスラスト力を発生するようにピッチ角を制御する。補正部17では、風の乱れ成分の周波数帯域が変化した場合であっても、この変化に応じて動的にピッチ角を変更するようになっている。
また、補正部17には、風車翼3によって回転させられたロータの回転数を取得するロータ回転数取得手段21からの出力値が入力される。このようにロータ回転数を取得することによって、ロータ回転数(1N)における振動を集中的に減衰させるようにピッチ角を変更する。具体的には、ロータの回転よって生じるタワーの振動を打ち消すスラスト力を発生するようにピッチ角を制御する。補正部17では、ロータ回転数が変動した場合であっても、この変化に応じて動的にピッチ角を変更して制振を行う。
なお、本発明のアクティブ制振は、風の乱れ成分のみ、又はロータ回転数(1N)のみに対応させて制振する。しかし、これらの周波数成分が近い場合、あるいは制振効果のピークレベルを落として広めの制振周波数帯域を許容する場合には、両者に対応させるように制振を行ってもよい。
同図において、m1は風車の質量を示し、m2はTMDに用いられる付加質量を示す。また、yは振動時の変位方向を示す。
図5の振動モデルを式で表すと以下のようになる。
My”+Cy’+ky=F
ここで、M,C,k,y,Fは、以下の行列で表される。
図6〜図8には、ナセルカバーの質量を付加質量m2として利用する場合が示されている。図6に示すように、ナセルカバー30は、タワー2の上端に固定されたフレーム32に対して変位可能に取り付けられている。
図7には、フレーム32に対するナセルカバー30の取り付け構造が示されている。同図(a)は側面図、(b)は(a)の背面図を示す。同図に示されているように、フレーム32とナセルカバー30はリニアガイド34によって接続されており、これにより、フレーム32に対してナセルカバー30が往復動できるようになっている。また、フレーム32とナセルカバー30との間には、TMDのバネ要素および減衰要素となる弾性部材(ゴム等)36が複数設けられている。弾性部材36は、図8に示すように、フレーム32とナセルカバー30との間に挿入されたゴムが好適である。なお、図8(b)には、比較例としての構造が示されており、一般的には金属等の剛部材38が設けられている。
上部モジュール5aには、増速機、発電機等が配置されている。下部モジュール5b内には、ナセル5を回頭させるヨー旋回モータおよびヨーブレーキが配置されている。下部モジュール5bは、上部モジュール5aに対して相対移動が可能となっている。また、図示しないが、上部モジュール5aと下部モジュール5bとが相対移動する際にTMDのバネ要素および減衰要素を与えるように弾性部材が配置されている。
風車の固有振動数は風車の形状や体格によって一義的に決まるので、当該固有振動数における振動は、特定の周波数に固定して減衰を調整できるTMD(またはTLD)によって減衰させることとした。
一方、風車に流入する風の乱れの変動周波数は、天候や季節、時刻等に応じた風況によって変動する。また、風車翼の回転数のn次周波数についても、風車翼の回転数によって変動する。したがって、これらの周波数における振動に対しては、制振周波数を動的に変化させることができるAVCを用いることとした。
このように、TMDとAVCとを、それぞれ対応する周波数を分けて負担させることとしので、それぞれのダンパの制振効果を効果的に発揮させることができる。
3 風車翼
4 ロータ
5 ナセル
7 増速機
Claims (6)
- 風車の固有振動数における振動を減衰するように調整された受動ダンパと、
風車に流入する風の乱れの変動周波数および/または風車翼の回転数のn次(nは自然数)周波数における振動を減衰するように調整された能動ダンパと、
該能動ダンパの制振周波数を調整する能動ダンパ用制御部と、
を備えていることを特徴とする風車。 - 前記能動ダンパは、風車翼のピッチ角を変更することによって制振力を得ることを特徴とする請求項1に記載の風車。
- 風車に流入する風の流速を検出する風速計を備え、
前記能動ダンパ用制御部は、前記風速計によって検出した流速に基づいて前記能動ダンパを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の風車。 - 前記受動ダンパは、同調型質量ダンパとされ、
該同調型質量ダンパは、付加質量として、風車本体に対して相対移動可能とされた風車構成要素を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の風車。 - 前記受動ダンパは、同調型液体ダンパとされ、
該同調型液体ダンパは、付加質量として風車本体内に貯留された作動油または潤滑油を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の風車。 - 風車の固有振動数における振動を減衰するように調整された受動ダンパと、能動ダンパとを備えた風車の制振方法であって、
風車に流入する風の乱れの変動周波数および/または風車翼の回転数のn次(nは自然数)周波数における振動を減衰するように前記能動ダンパの制振周波数を制御することを特徴とする風車の制振方法。
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