以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るインクジェットヘッドを含むインクジェットプリンタの内部構成を示す模式図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ101は直方体形状の筐体101aを有している。筐体101a内には、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド1(液体吐出ヘッド;以下、ヘッド1とする)、及び、搬送機構16が配置されている。また、筐体101aの天板内面には、ヘッド1や搬送機構16等の動作を制御する制御部100が取り付けられている。天板の上部には、排紙部15が設けられており、画像が形成された用紙Pが排出される。搬送機構16の下方には、筐体101aに対して着脱可能な給紙ユニット101bが配置されている。給紙ユニット101bの下方には、筐体101aに対して着脱可能なインクタンクユニット101cが配置されている。
インクジェットプリンタ101の内部には、図1に示す太矢印に沿って用紙搬送経路が形成されており、用紙Pが給紙ユニット101bから排紙部15に向けて搬送される。給紙ユニット101bは、給紙トレイ11と、給紙ローラ12とを有している。給紙トレイ11は、上方に向かって開口した箱形状を有しており、複数枚の用紙Pが積層された状態で収納される。給紙ローラ12は、給紙トレイ11の最も上方にある用紙Pを送り出す。送り出された用紙Pは、ガイド13a、13bによりガイドされ且つ送りローラ対14によって挟持されつつ搬送機構16へと送られる。
搬送機構16は、2つのベルトローラ6、7と、搬送ベルト8と、テンションローラ10と、プラテン18とを有している。搬送ベルト8は、両ローラ6、7に巻回されたエンドレスのベルトである。テンションローラ10は、搬送ベルト8の下側ループにおいて、その内周面に接触しつつ下方に付勢されており、搬送ベルト8にテンションを付加している。プラテン18は、搬送ベルト8の内側領域に配置され、ヘッド1と対向する位置において、搬送ベルト8が下方に撓まないように搬送ベルト8を支持している。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、その軸にモータ19から駆動力が与えられることで、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、ベルトローラ7の回転により搬送ベルト8が走行することによって、図1中時計回りに回転する。なお、モータ19の駆動力は、複数のギアを介してベルトローラ7に伝達される。
搬送ベルト8の外周面8aは、シリコーン処理が施されることによって粘着性を有している。ベルトローラ6と対向する位置には、ニップローラ4が配置されている。ニップローラ4は、給紙ユニット101bから送り出された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえ付ける。用紙Pは、その粘着力によって外周面8a上に保持されながら用紙搬送方向(図1中右方であって副走査方向)へと搬送される。
ベルトローラ7と対向する位置には、剥離プレート5が設けられている。剥離プレート5は、用紙Pを外周面8aから剥離する。剥離された用紙Pは、ガイド29a、29bによりガイドされ、且つ二組の送りローラ対28によって挟持されつつ搬送される。そして用紙Pは、筐体101aの上部に形成された排出口22から、筐体101aの天板上面に設けられた排紙凹部(排紙部)15へと排出される。
4つのヘッド1は、互いに異なる色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)を吐出する。これら4つのヘッド1は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有している。また、4つのヘッド1は、用紙Pの搬送方向Aに沿って並べて固定されている。つまり、このプリンタ101はライン式のプリンタであり、搬送方向Aと主走査方向とは互いに直交する関係にある。
ヘッド1の下部には、インクを吐出する複数の吐出口108(図3参照)が形成されたヘッド本体33が設けられている。これらの吐出口108は、ヘッド本体33の下面である吐出面2aに開口している。搬送される用紙Pが4つのヘッド1のすぐ下方を通過する際に、用紙Pの上面に向けて吐出口108から各色のインクが順に吐出されることにより、用紙Pの上面(印刷面)に所望のカラー画像が形成される。また、各吐出口108においては、当該吐出口108付近の増粘したインクを用紙Pに向けて吐出する予備吐出、及び、当該吐出口108から液体が吐出されない範囲で吐出口108に形成されたメニスカスを振動させる予備振動を行うことが可能である。
各ヘッド1は、インクタンクユニット101c内のインクタンク17と接続されている。4つのインクタンク17には互いに異なる色のインクが貯留されている。各インクタンク17からは、チューブ(図示せず)を介してヘッド1にインクが供給される。
4つのヘッドの中で最も上流に位置するヘッド1とニップローラ4との間には、反射型光学センサである用紙センサ31が配置されている。用紙センサ31は、搬送経路を搬送される用紙の先端が用紙センサ31の直下に到達したときに、その検出信号を出力する。
また、4つのヘッドの中で最も下流に位置するヘッド1よりも僅かに下流の位置には、4つのヘッドが設けられている環境の温度を検出可能な温度センサ72、及び、湿度を検出可能な湿度センサ73が配置されている。温度センサ72及び湿度センサ73は、制御部100に対して、検出した温度及び湿度をそれぞれ出力する。なお、本実施形態では温度センサ72のみを使用するが、湿度センサ73のみ、または、両方を使用するようにしてもよい。
以下、ヘッド本体33について説明する。図2はヘッド本体33の平面図である。図3は、図2において隣り合う2つのアクチュエータユニット21に跨る部分の拡大図である。図4は、図3に示すIV−IV線に沿った流路ユニット9の部分断面図である。また、図5(a)及び図5(b)は、図4中に一点鎖線で示した領域の拡大断面図及び個別電極の平面図である。なお、図3において、図面を分かりやすくするために、破線で描くべきアパーチャ112を実線で描いている。
ヘッド本体33は、図2に示すように、流路ユニット9、及び、流路ユニット9の上面9aに固定された4つのアクチュエータユニット21を含んでいる。図3に示すように、流路ユニット9は、インク流路が内部に形成されている。アクチュエータユニット21は台形の平面形状を有している。アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対応した複数のアクチュエータを含んでおり、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する機能を有する。
流路ユニット9の上面9aには、インクタンク17からのインクが流入する、計10個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、図2及び図3に示すように、インク供給口105bに連通するマニホールド流路105及びマニホールド流路105から分岐した副マニホールド流路105aが形成されている。マニホールド流路105は、平面視でアクチュエータユニット21の台形の斜辺に沿って延びている。アクチュエータユニット21の下方には4本の副マニホールド流路105aが主走査方向に沿って延びている。これら4本の副マニホールド流路105aは、アクチュエータユニット21の一方の斜辺側においてマニホールド流路105から分岐し、主走査方向に沿って延び、他方の斜辺側において別のマニホールド流路105と合流している。流路ユニット9の吐出面2aには、図3及び図4に示すように、多数の吐出口108がマトリクス状に配置されている。
圧力室110は流路ユニット9の表面に開口している。圧力室110は、流路ユニット9の長手方向(主走査方向)に沿って並んでおり、これによって複数の圧力室列が形成されている。これらの圧力室列は、副走査方向に等間隔に16列配列されている。圧力室列のそれぞれに含まれる圧力室110の数は、アクチュエータユニット21の外形形状(台形)に対応して、その長辺側(下底側)から短辺側(上底側)に向かって次第に少なくなるように配置されている。
吐出口108も、上記の圧力室列と対応する複数の吐出口列を形成するように配置されている。これらの吐出口列は、平面視で副マニホールド流路105aを避けるように互いに平行に配列されている。
流路ユニット9は、図4に示すように、9枚のステンレス鋼からなる金属製のプレート122〜130から構成されている。これらプレート122〜130を互いに位置合わせしつつ積層することによって、インク供給口105bに連通するマニホールド流路105、マニホールド流路105から副マニホールド流路105a、そして副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経て吐出口108に至る多数の個別インク流路132が形成される。個別インク流路132において、副マニホールド流路105aへの出口から吐出口108までの経路のほぼ中心に圧力室110が配置されている。
流路ユニット9におけるインクの流れについて説明する。図2〜図4に示すように、インク供給口105bを介して流路ユニット9内に供給されたインクは、マニホールド流路105から副マニホールド流路105aに分岐される。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路132に流れ込み、絞りとして機能するアパーチャ112及び圧力室110を介して吐出口108に至る。
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図2に示すように、4つのアクチュエータユニット21は、インク供給口105bを避けるよう千鳥状に配置されている。さらに、各アクチュエータユニット21の平行対向辺は流路ユニット9の長手方向に沿っており、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士は流路ユニット9の幅方向(副走査方向)に関して互いにオーバーラップしている。
図5(a)に示すように、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる3枚の圧電シート141〜143から構成されている。圧電シート141〜143は、いずれも複数の圧力室110に跨る形状とサイズを有した一枚のシートからなっている。最下層の圧電シート143の下面が流路ユニット9に固定される固定面となっている。また、最上層の圧電シート141の上面は、平型の柔軟基板であるCOF(Chip On Film)50と対向している。圧電シート141の上面の圧力室110に対向する位置には、個別電極135が形成されている。COF50は、後述のように個別電極135に接続される。圧電シート141とその下側の圧電シート142との間には、これらのシートの全面に亘って一体に形成された共通電極134が介在している。
個別電極135は、図5(b)に示すように、圧力室110と相似な略菱形の平面形状を有する。平面視で、個別電極135の大部分は、圧力室110の領域内にある。個別電極135の菱形形状における鋭角部の一方は圧力室110の外に延出されている。延出方向の先端には、上方に突出した個別バンプ136が設けられ、個別電極135と電気的に接続されている。圧電シート141上には、共通電極用の個別バンプも形成されている。共通電極134は、圧電シート141に形成されたスルーホール内の導電体(図示せず)を介して上記の個別バンプと電気的に接続されている。
共通電極134には、上記の個別バンプを介して、すべての圧力室110に対応する領域において等しくグランド電位が付与されている。一方、個別電極135は、COF50を介して後述のドライバIC52の各出力端子と電気的に接続されており、ドライバIC52からの駆動信号が選択的に供給されるようになっている。
圧電シート141はその厚み方向に分極されている。個別電極135を共通電極134と異なる電位にして圧電シート141に対してその分極方向に電界を印加すると、個別電極135に対応した電界印加部分が圧電効果により歪む活性部として働く。つまり、アクチュエータユニット21には、圧力室110の数に対応した複数のアクチュエータが作り込まれており、個別電極135と圧力室110とで挟まれた各部分が個別のアクチュエータとして働く。例えば、分極方向と電界の印加方向とが同じであれば、活性部は分極方向と直交する方向(平面方向)に縮む。
このように、アクチュエータユニット21は、圧力室110から離れた上側1枚の圧電シート141を活性部が含まれる層とし、且つ圧力室110に近い下側2枚の圧電シート142、143を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプのアクチュエータである。非活性層は、活性層とは対照的に、電界の印加に対して自発的な歪みを生じない。図5(a)に示すように、圧電シート141〜143は圧力室110を区画するプレート122の上面に固定されているため、圧電シート141における電界印加部分とその下方の圧電シート142、143との間で平面方向への歪みに差が生じると、圧電シート141〜143全体が圧力室110側へ凸になるように変形(ユニモルフ変形)する。これにより圧力室110内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、圧力室110内に圧力波が発生する。そして、発生した圧力波が圧力室110から吐出口108まで伝播することによって吐出口108からインク滴が吐出される。
このようにアクチュエータユニット21を駆動することによって、吐出口108からインクが吐出される。本実施形態では、吐出口108からのインクの吐出には、用紙Pに画像を形成するための吐出と、吐出口108付近の増粘したインクを吐出するために行う予備吐出とがある。さらに、吐出口108に対しては、当該吐出口108付近のインクの増粘を解消するために、吐出口108からインクが吐出されない範囲でアクチュエータユニット21を駆動する予備振動を行うことが可能である。予備振動によって、吐出口108に形成されたインクのメニスカスが振動する。
図1に戻って、インクジェットプリンタ101は、制御部100を含んでいる。制御部100は、インクジェットプリンタ101の各部の動作を制御する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random AccessMemory)、ROM(Read Only Member)などの複数のハードウェアから構成されている。ROMには、インクジェットプリンタ101を制御する各種のソフトウェアが格納されている。そして、そのソフトウェアと制御部100内のハードウェアとが協働することによって、制御部100内には、図6に示すように、画像データ記憶部44、搬送制御部62、画像印字制御部45、待ち時間検出部46、第1決定部41、第2決定部42、第3決定部43、フラッシング制御部47、予備吐出インク量調整部48、第1経過時間調整部49、第2経過時間調整部60、印字インク量調整部61、及び、カウンタ63が構築されている。また、制御部100は、これら以外の部分において、これらが行う処理以外の各種処理を行う。本実施の形態において、制御部100は、ドライバIC52を含んでいるとする。
なお、ここでは便宜上、インクジェットヘッド1のうちの1つからのみ吐出が行われることを前提に説明を行うが、他の3つのインクジェットヘッド1に関しても、以下の処理が同様に適応される。
画像データ記憶部44(画像データ記憶手段)は、図示しないホストコンピュータから送られる、画像データを色毎に記憶する。画像データは、例えば、ビットマップ形式のデータ、jpeg形式のデータ等に基づいて構成されており、用紙Pに印刷されるべき画像について、用紙P上における画像ドットの色、サイズ及び位置を指示する。用紙P上にはi列×j行(i、jは自然数)のドットを形成可能である。これに対応して、画像データは、i×j個のドット形成可能位置それぞれに関して各印字周期に吐出されるべきインク量を示したインク量情報を含んでいる。ここで、印字周期とは、副走査方向(用紙Pの搬送方向に平行な方向)の印字解像度に対応した単位距離だけ用紙Pが搬送されるのに要する時間を意味しており、吐出口108から吐出されるインク量は、「大」(21pl)、「中」(14pl)、「小」(7pl)、及び、「なし」(0pl)のいずれかである。
搬送制御部62は、ベルトローラ7の駆動源であるモータ19を制御する。
画像印字制御部45は、搬送機構16によって搬送されている用紙Pに向けてインクが吐出されて画像が印字されるように、印字周期を単位としてアクチュエータユニット21を制御する。この制御は、搬送制御部62によるモータ19の制御と同期をとりつつ、用紙センサ31からの用紙Pの先端の検出信号、及び、画像データ記憶部44に記憶された画像データに基づいて行われる。
待ち時間検出部46(待ち時間検出手段)は、直近に印字が施された用紙Pへの印字終了から次に印字が施される用紙Pへの印字開始までの待ち時間を検出する。具体的には、待ち時間検出部46は、プリンタ101が複数の用紙Pへの印字を行う旨の印字命令を受信しており、直近に印字された用紙Pの印字終了後に次の用紙Pに連続して印字が施される場合には、これら2枚の用紙Pに係る所定間隔を搬送速度で除算して得られる値を検出する。また、待ち時間検出部46は、直近に印字された用紙Pが当該印字命令に係る最後に印字される用紙Pであって、次の用紙Pに連続して印字が施されない場合には、直近に印字された用紙Pの印字終了時刻から次に印字命令を受信した時刻までの時間に、印字命令を受信してから始められる印字準備に要する準備時間を加算して得られる時間を検出する。
第1決定部41(第1決定手段)は、温度センサ72の出力信号が示す温度が高くなるにつれて小さくなる値Mを決定する。Mとは、予備吐出を開始するタイミングの決定に関与する指標であって、後述するランダムな値mを決定する際の上限値となるものである。本実施形態では、第1決定部41は、温度によりMが1つに決まるよう予め定められた参照テーブルA(図示せず)を参照し、検出された温度に対するMを決定する。参照テーブルAは、温度が高くなるにつれてMが小さくなるように定められている。
なお、Mは、湿度センサ73の出力信号が示す湿度が低くなるにつれて小さくなる値であってもよい。その場合、第1決定部41は、湿度によりMが1つに決まるよう予め定められた参照テーブルA´(図示せず)を参照し、検出された湿度に対するMを決定する。参照テーブルA´は、湿度が低くなるにつれてMが小さくなるように定められている。
第2決定部42(第2決定手段)は、各吐出口108について、0以上M以下のランダムな値である値mを決定する。mとは、各吐出口108について、後述の予備吐出を始めるタイミング(予備吐出タイミング)を指示するためのものである。ドット形成可能位置の作る列毎に異なる値mが設定されることになる。
第3決定部43(第3決定手段)は、温度センサ72の出力信号が示す温度が高くなるにつれて小さくなる値Nを決定する。Nとは、予備振動許容タイミングを指示するためのものである。予備振動許容タイミングとは、増粘抑制動作である予備振動を開始すべきタイミングであって、何ら増粘抑制動作を施さなくても印字品質が保てる限界の時間に続くタイミングでもある。本実施形態では、第3決定部43は、温度によりNが1つに決まるよう予め定められた参照テーブルB(図示せず)を参照し、検出された温度に対するNを決定する。参照テーブルBは、温度が高くなるにつれてNが小さくなるように定められている。
なお、Nは、湿度センサ73の出力信号が示す湿度が低くなるにつれて小さくなる値であってもよい。その場合、第3決定部43は、湿度によりNが1つに決まるよう予め定められた参照テーブルB´(図示せず)を参照し、検出された湿度に対するNを決定する。参照テーブルB´は、湿度が低くなるにつれてNが小さくなるように定められている。
フラッシング制御部47(フラッシング制御手段)は、画像印字制御部45がアクチュエータユニット21を制御する場合を除いて、用紙Pへの印字開始からの又は直近のインク吐出からの経過時間が予備振動許容タイミングに達するまでアクチュエータユニット21が駆動されないように、アクチュエータユニット21を制御する。なお、予備振動許容タイミングは、時間的に、予備吐出タイミングよりも前のタイミングである。本実施形態では、フラッシング制御部47は、印字周期を単位としてアクチュエータユニット21を制御しており、予備振動許容タイミングとは、各吐出口108について、用紙Pへの印字開始からの又は直近のインク吐出からの経過印字周期数を示すカウンタ63の値がNと等しくなる印字周期である。
また、フラッシング制御部47は、第2決定部42が決定したmがゼロ以外の各吐出口108について、予備振動が、予備振動許容タイミングから後述の予備吐出タイミングまでの間の各印字周期において行われるように、アクチュエータユニット21を制御する。ただし、フラッシング制御部47は、温度センサ72の出力信号が示す温度が第1しきい値よりも高い場合にだけこのような予備振動が行われるように、アクチュエータユニット21を制御する。インクの乾燥が進まない環境下では、予備振動は行われず、その分電力消費を抑えることができる。
なお、フラッシング制御部47は、検出された湿度が第2しきい値よりも低い場合にだけこのような予備振動が行われるように、アクチュエータユニット21を制御してもよい。
また、フラッシング制御部47は、各吐出口108について、予備吐出が、用紙Pへの印字開始からの又は直近のインク吐出からの経過時間が当該吐出口108について決定されたmによって指示される予備吐出タイミングに達するごとに行われるように、アクチュエータユニット21を制御する。本実施形態では、予備吐出タイミングとは、各吐出口108について、カウンタ63の値が「N+当該吐出口108について決定されたm」の値と等しくなる印字周期である。
予備吐出インク量調整部48(予備吐出液体量調整手段)は、温度センサ72の出力信号が示す温度に基づいて、予備吐出において吐出口108から吐出されるインク量が所定上限値を超えない範囲において温度が高くなるにつれて多くなるように、インク量を調整する。本実施形態では、予備吐出インク量調整部48は、参照テーブルC(図示せず)を参照し、当該インク量を「大」、「中」、「小」のいずれか1つに決定する。参照テーブルCは、温度が高くなるにつれてインク量が「小」→「中」→「大」と多くなるように定められている。
予備吐出、とりわけ用紙Pへの予備吐出では、インクの吐出量を少なくし、形成されるドットの視認性を低くする。参照テーブルCでは、高温時の増粘による吐出量減少を考慮して温度とインク量の指示値との関連づけがなされているので、いずれの組み合わせによっても、形成されるドットの視認性は低いものとなる。
また、予備吐出インク量調整部48は、湿度センサ73の出力信号が示す湿度に基づいて、予備吐出において吐出口108から吐出されるインク量が所定上限値を超えない範囲において湿度が低くなるにつれて多くなるように、インク量を調整するようにしてもよい。その場合、予備吐出インク量調整部48は、参照テーブルC´(図示せず)を参照し、インク量を「大」、「中」、「小」のいずれか1つに決定し調整する。参照テーブルC´は、湿度が低くなるにつれてインク量が「小」→「中」→「大」と多くなるように定められている。
第1経過時間調整部49(第1経過時間調整手段)は、待ち時間検出部46が検出した待ち時間に基づいて、待ち時間が長くなるにつれて大きくなるように、用紙Pへの印字開始からの経過時間の初期値を調整する。印字指令を受信した後は、ヘッド1からキャップが外され、吐出口108が大気に開放された状態で印刷の準備動作が行われる。また、印字指令に基づく印字処理が終わっても、装置は吐出口108を大気に開放したまま所定時間待機する。いずれの場合も、インクの増粘が進む。第1経過時間調整部49による初期値の調整は、これらの増粘要因を考慮した調整であって、その影響の大きさに合わせて吐出特性の維持動作の開始を早める。
本実施形態では、第1経過時間調整部49は、待ち時間により値Wが1つに決まるよう予め定められた参照テーブルD(図示せず)を参照し、検出された待ち時間に対する値Wをまず決定する。そして、「当該値W+後述の値E」の値を、カウンタ63が用紙Pへの印字開始からの経過印字周期数を示す場合の初期値とする。参照テーブルDは、待ち時間が長くなるにつれてWが大きくなるように定められている。
第2経過時間調整部60(第2経過時間調整手段)は、温度センサ72の出力信号が示す温度に基づいて、温度が高くなるにつれて大きくなるように、用紙Pへの印字開始からの又は直近のインク吐出からの経過時間の初期値を調整する。本実施形態では、第2経過時間調整部60は、温度により値Eが1つに決まるよう予め定められた参照テーブルE(図示せず)を参照し、検出された温度に対するEをまず決定する。そして、「上述のW+当該E」の値を、カウンタ63が用紙Pへの印字開始からの経過印字周期数を示す場合の初期値とすると共に、当該Eを、カウンタ63が直近のインク吐出からの経過印字周期数を示す場合の初期値とする。参照テーブルEは、温度が高くなるにつれてEが大きくなるように定められている。
また、第2経過時間調整部60は、湿度センサ73の出力信号が示す湿度に基づいて、湿度が低くなるにつれて大きくなるように、用紙Pへの印字開始からの又は直近のインク吐出からの経過時間の初期値を調整してもよい。その場合、第2経過時間調整部60は、湿度によりEが1つに決まるよう予め定められた参照テーブルE´(図示せず)を参照し、湿度センサ73の出力信号が示す湿度に対するEを決定する。参照テーブルE´は、湿度が低くなるにつれてEが大きくなるように定められている。
印字インク量調整部61(記録液体量調整手段)は、画像印字制御部45の制御に基づく用紙Pへの画像の印字において吐出口108から吐出されるインク量を調整する。このとき、指示されるインク量は、所定上限値を超えない範囲において用紙Pへの印字開始からの又は直近のインク吐出からの経過時間が長くなるにつれて多くなる。本実施形態では、カウンタ63の値と対応するインク量の変更段階数とを決定し、両者の関係を湿度によって変える。より具体的には、まず、温度により値N1および値N2(カウンタ63の値に関する閾値)がそれぞれ1つに決まるよう定められた参照テーブルF(図示せず)を参照し、温度センサ72の出力信号が示す温度に対するN1およびN2を決定する。そして、吐出されるインク量を、注目する吐出口108に係るカウンタ63の値がN1より小さい場合は、当初予定していたインク量のままにし、カウンタ63の値がN1以上N2未満である場合は、当初予定していたインク量よりも1段階多い量とし、カウンタ63の値がN2以上である場合は、当初予定していたインク量よりも2段階多い量とする。ただし、このように調整したインク量が所定上限値、即ちインク量「大」を超える場合は、吐出されるインク量を「大」とする。
次に、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1の印字処理について、図7及び8のフローチャートを参照して説明する。ここでは便宜上、一インクジェットヘッド1に対する処理のみを記載し、他の3つのインクジェットヘッド1に対する処理を省略する。
ここで、用紙P上に形成される画像はi列×j行のドットによって構成される。同列に属すドットは全て、同一の吐出口108から吐出されたインクによって形成されるものである。1つの印字周期において、i列目j行目のドット形成可能位置に吐出されるべきインク量をX(i,j)と表す(i、jは自然数)。ホストからの印字命令を受信した段階では、X(i,j)には、インク量「大」(21pl)、「中」(14pl)、「小」(7pl)、及び、「なし」(0pl)のいずれかが示されている。
まず、ホストからの印字命令を受信すると、ステップS1において、受信した印字命令に含まれる画像データが画像データ記憶部44に格納される。画像データには、印字周期毎に、各ドット形成可能位置に吐出されるべきインク量を示すX(i,j)が含まれている。また印字命令には、印字枚数及びレイアウト情報などが含まれている。
そして、ステップS2では、制御部100が、温度センサ72によって検出された温度を取得する。次にステップS3では、制御部100が、待ち時間検出部46によって検出された待ち時間を取得する。
ステップS4では、以下の初期設定を行う。
第1決定部41が、参照テーブルAを参照し、ステップS2において取得した温度に対するMを決定する。
第3決定部43が、参照テーブルBを参照し、ステップS2において取得した温度に対するNを決定する。
印字インク量調整部61が、参照テーブルFを参照し、ステップS2において取得した温度に対するN1およびN2を決定する。
第1経過時間調整部49が、参照テーブルDを参照し、ステップS3において取得した待ち時間に対するWを決定する。
第2経過時間調整部60が、参照テーブルEを参照し、ステップS2において取得した温度に対するEを決定する。
フラッシング制御部47が、ステップS2において取得した温度が第1しきい値よりも高いか否かを判断し、第1しきい値より高い場合は、後述のステップS11において予備振動を行うよう設定し、そうでない場合は、予備振動を行わないよう設定する。
予備吐出インク量調整部48が、参照テーブルCを参照し、ステップS2において取得した温度に対するインク量を「大」、「中」、「小」のいずれか1つに決定し、これを後述するステップS13の予備吐出において吐出口108から吐出されるインク量として設定する。
続いてステップS5では、用紙Pへの印字開始からの又は直近のインク吐出からの経過印字周期数を示すカウンタ63の初期化を行う。具体的には、ステップS4にて設定したWおよびEを用いてカウンタ63の値=「W+E」とする。
次にステップS6では、第2決定部42が、0以上かつステップS4で設定したM以下の範囲でmをランダムに決定する。なお、ステップS6は、ステップS22においてiの値(ドット形成可能位置の列を示す値)が1ずつインクリメントされる毎に行われるため、mは各iに対して1つ、即ち、各吐出口108に対して1つ決定される。
次にステップS7では、制御部100が、ステップS1にて格納したインク量:X(i,j)が「なし」であるか否かを判断する。なお、iおよびjの初期値はそれぞれ「1」であり、初めてステップS7の処理を行う際には、X(1,1)が「なし」であるか否かを判断する。そして、「なし」であると判断された場合(S7:YES)、ステップS8に進む。「なし」でないと判断された場合(S7:NO)、ステップS15に進む。
ステップS8では、フラッシング制御部47が、カウンタ63の値がステップS4で設定したN以上か否かを判断する。カウンタ63の値がN以上でないと判断された場合(S8:NO)、ステップS9に進む。ステップS9では、カウンタ63の値に1を加算する。そして、ステップS18に進む。また、ステップS8においてカウンタ63の値がN以上であると判断された場合(S8:YES)、ステップS10に進む。本実施形態においては、ステップS8においてカウンタ63の値が初めてN以上となる印字周期が、ドット形成可能位置が作るこの列における予備振動許容タイミングである。
ステップS10では、フラッシング制御部47が、カウンタ63の値が「N+m」の値に等しいか否かを判断する。カウンタ63の値が「N+m」の値に等しくないと判断された場合(S10:NO)、ステップS11に進む。ステップS11では、ここで予備振動を行うようステップS4にて設定されている場合、当該X(i,j)に対応する印字周期に予備振動が行われることを示すよう、フラッシング制御部47がX(i,j)のデータを書き換える。そしてステップS12に進む。予備振動を行わないようステップS4にて設定されている場合は、このようなデータの書き換えを行わずステップS12に進む。ステップS12では、カウンタ63の値に1を加算する。そして、ステップS18に進む。
また、ステップS10において、カウンタ63の値が「N+m」の値に等しいと判断された場合(S10:YES)、ステップS13に進む。ステップS13では、当該X(i,j)に対応する印字周期に吐出口108から予備吐出が行われるよう、予備吐出インク量調整部48がX(i,j)のデータを書き換える。このとき、インク量:X(i,j)は、ステップS4で予備吐出インク量調整部48によって設定されたインク量にする。本実施形態においては、ステップS10においてカウンタ63の値が「N+m」の値に等しくなるこの印字周期が、i列目j行目のドット形成可能位置における予備吐出タイミングである。その後、ステップS14において、カウンタ63の値=Eに設定する。これにより、カウンタ63の値に基づく各処理が、環境(温度)の変化に即したものとなる。そして、ステップS18に進む。
ステップS15では、当該X(i,j)に対応する印字周期に吐出口108から吐出を行う際の印字インク量調整量決定処理を行う。印字インク量調整量決定処理の詳細を図8に示す。
印字インク量調整量決定処理では、ステップS101において、印字インク量調整部61が、当該印字周期における画像データが指示する吐出インク量:X(i,j)が「大」であるか否かを判断する。「大」であると判断された場合は、ステップS102に進む。「大」でないと判断された場合、ステップS103に進む。
ステップS103では、印字インク量調整部61が、カウンタ63の値がステップS4で設定したN1以上であるか否かを判断する。N1以上であると判断された場合、ステップS104に進み、N1以上でないと判断された場合、ステップS102に進む。ここで、閾値N1は、インクの増粘が印字品質にほとんど影響しないという条件下で、X(i,j)=「なし」に対応する印字周期の最大繰り返し可能回数に相当する。
ステップS102では、印字インク量調整量を示す値L=0に設定する。そして、印字インク量調整量決定処理を終了する。ここで、値L=0と設定するのは、ステップ102がステップ101に続くステップである場合、X(i,j)を「大」以外に調整する余地がないためであり、ステップ103に続くステップである場合、増粘の影響がなくインク量:X(i,j)を調整する必要がないためである。
ステップS104では、印字インク量調整部61が、カウンタ63の値がステップS4で設定したN2以上であるか否かを判断する。N2以上であると判断された場合、ステップS106に進み、N2以上でないと判断された場合、ステップS105に進む。ここで、閾値N2は、インクの増粘が印字品質に影響するという条件下で、その影響の度合いに応じて印字インク量調整量を変更するための指標である。カウンタ63の値がこれより小さければX(i,j)に対する調整量は少なくてよく、これ以上であれば調整量を多くする必要がある。
ステップS106では、印字インク量調整部61が、当該X(i,j)が「中」であるか否かを判断する。「中」であると判断された場合、ステップS105に進み、「中」でないと判断された場合、ステップS107に進む。
ステップS105では、L=1に設定する。ここで、値L=1とするのは、ステップS105がステップS106に続くステップである場合、X(i,j)を1段階上げる以外に調整の余地がないためであり、ステップS104に続くステップである場合、増粘の影響が弱くX(i,j)に対する調整量も少なくてよいためである。そして、印字インク量調整量決定処理を終了する。ステップS107では、L=2に設定する。ここで、L=2と設定するのは、増粘の影響が強いためX(i,j)に対する調整量を多くする必要があると共に、X(i,j)を2段階上げることが可能なためである。そして、印字インク量調整量決定処理を終了する。
続いて、図7のステップS16に戻る。ステップS16では、当該カウンタ63の値に対応する印字周期に吐出口108から吐出されるインク量:X(i,j)を、印字インク量調整部61がステップS15で決定したLに基づいて書き換える。このとき、画像データで指示されたインク量:X(i,j)は、それよりもL段階多い量のインク量に変更される。例えば、当該X(i,j)が「小」であり、ステップS15にてLが1と決定された場合、X(i,j)のデータを、「小」より1段階多い量である「中」に書き換える。その後、ステップS17に進む。ステップS17では、カウンタ63の値=Eに設定する。そして、ステップS18に進む。
ステップS18では、当該i列目において未処理のj行目のドット形成可能位置があるか否かを判断する。即ち、当該i列目におけるj個の全てのドット形成可能位置に対する処理を行ったか否かを判断する。未処理のドット形成可能位置があると判断された場合(S18:YES)、ステップS19に進み、jの値に1を加算する。そして、ステップS7に戻る。未処理のドット形成可能位置がないと判断された場合(S18:NO)、ステップS20に進む。
ステップS20では、未処理のドット形成可能位置の列があるか否かを判断する。即ち、i個の全ての列に対する処理を行ったか否かを判断する。未処理の列があると判断された場合(S20:YES)、ステップS21に進む。
ステップS21では、カウンタ63の値=「W+E」とし、カウンタ63の初期化を行う。続いて、ステップS22では、iの値に1を加算する。そして、ステップS7に戻る。
ステップS20において、未処理の列がないと判断された場合(S20:NO)、ステップS23に進む。ステップS23では、画像の印字、予備振動、及び、予備吐出を行う。具体的には、画像印字制御部45及びフラッシング制御部47が、搬送制御部62によるモータ19の制御と同期をとりつつ、用紙センサ31からの用紙Pの先端の検出信号、及び、ステップS11、S13、S16で変換が施された後のX(i,j)に基づきアクチュエータユニット21を制御する。そして、印字処理を終了する。
次に、図9を参照し、印字処理の一例を説明する。
本実施形態において、用紙Pは8列×35行のドットが形成可能である。図9に示すマス目それぞれが、各印字周期にドットを形成することが可能なドット形成可能位置である。ここでは、用紙P上のi列目j行目のドット形成可能位置を(i,j)と表し、上述のように、(i,j)に関して、各印字周期に吐出されるべきインク量をX(i,j)と表す。なお、便宜上、当該印字処理に関する印字命令を受信した段階において、X(1,1)〜X(8,11)の88個のドットは全てインク量「なし」であるとする。そのため、図7において、ステップS7からステップS15を経てステップS18に至る処理は行われない。なお、このとき用いられるヘッド1は、8つの吐出口108を有したラインヘッドである。
図9は、ある印字処理を行う際に、ステップS23にて(1,1)〜(8,11)に対応する印字周期で、各吐出口108に対して行われる処理をそれぞれ示したものである。「振」と示されたマス目に対応する印字周期には、吐出口108に対して予備振動が行われ、「吐」と示されたマス目に対応する印字周期には、吐出口108に対して予備吐出が行われる。また、何も示されていないマス目に対応する印字周期には、吐出口108に対して予備振動や予備吐出が行われない。
本実施形態において、図7ステップS4では以下のように設定されるとする。
ステップS2において取得した温度に対するMは、5である。
ステップS2において取得した温度に対するNは、10である。
ステップS2において取得した温度に対するN1およびN2はそれぞれ、5、10である。
ステップS3において取得した待ち時間に対するWは、2である。
ステップS2において取得した温度に対するEは、3である。
ステップS2において取得した温度は第1しきい値よりも高く、よって、ステップS11では予備振動を行う。
ステップS2において取得した温度に対するインク量は、「中」である。よって、ステップS13の予備吐出において吐出口108から吐出されるインク量は「中」となる。
ある印字処理において、上述のようにステップS4にて初期設定が行われた後、ステップS5にてカウンタ63の初期化が行われる。このとき、W=2、E=3であるため、カウンタ63の初期値=5となる。そしてステップS6にて、1列目に対するm=2と決定される。
ステップS7ではまず、X(1,1)が「なし」であるか否かが判断される。ここでは、X(1,1)〜X(8,11)は全てインク量「なし」であるため、YESと判断されステップS8に進む。ステップS8では、カウンタ63の値がN以上か否かが判断される。ここでは、カウンタ63の値=5、N=10であるため、NOと判断されステップS9に進み、カウンタ63の値に1が加算される。そして、ステップS18に進み、1列目には未処理のドット形成可能位置があるためYESと判断され、ステップS19にてjに1が加算される。その後、ステップS7に戻る。このような処理が、カウンタ63の値=N=10になるまで行われる。即ち、X(1,1)〜X(1,5)は、インク量「なし」のままとなる。よって、図9に示されているように、ステップS23において(1,1)〜(1,5)に対応する印字周期には、吐出口108に対して予備振動や予備吐出が行われない。
その後、X(1,6)についての処理では、ステップS8において、カウンタ63の値=N=10であると判断され、ステップS10に進む。ステップS10では、カウンタ63の値が「N+m」の値に等しいか否かが判断される。ここでは、カウンタ63の値=10、N+m=12であるため、NOと判断されステップS11に進む。ステップS11では、ステップS4において設定されたように、ステップS23において(1,6)に対応する印字周期に予備振動が行われるように、X(1,6)のデータが書き換えられる。その後、ステップS12においてカウンタ63の値に1が加算される。そして、カウンタ63の値=N+m=12になるまで同様の処理が行われる。即ち、X(1,7)に対しても同様にデータの書き換えが行われる。よって、図9に示されているように、ステップS23において(1,6)〜(1,7)に対応する印字周期には、吐出口108に対して予備振動が行われる。
その後、X(1,8)についての処理では、ステップS8において、カウンタ63の値=12≧N=10であるため、YESと判断されステップS10に進む。ステップS10では、カウンタ63の値=N+m=12であるため、YESと判断されステップS13に進む。ステップS13では、ステップS23において(1,8)に対応する印字周期に予備吐出が行われるように、X(1,8)のデータが書き換えられる。具体的には、X(1,8)を、ステップS4で設定された「中」に書き換える。よって、図9に示されているように、ステップS23において(1,8)に対応する印字周期には、吐出口108に対して予備吐出が指示される。
そして、カウンタ63の値=E、即ち、3に設定する。その後、ステップS8にて再びカウンタ63の値=N=10となるまで、予備振動や予備吐出などの処理が行われない。よって、図9に示されているように、ステップS23において少なくとも(1,9)〜(1,11)に対応する印字周期には、吐出口108に対して予備振動や予備吐出が行われない。
なお、図9の例において、2列目〜8列目に対するmはそれぞれ、4、0、3、1、3、0、5となっている。
次に、図10を参照し、印字インク量調整量決定処理の具体例を説明する。なお、用紙P上に形成可能なドットの数、および、図7のステップS4にて設定される値等は、図9の例と同じである。
図10(a)は、ある印字処理に関する印字命令を受信した段階における、インク量:X(1,31)〜X(8,35)をそれぞれ示したものである。図10(b)は、ステップS23における調整されたインク量:X(1,31)〜X(8,35)、即ち、実際にそれぞれの吐出口108から吐出されるインク量をそれぞれ示したものである。何も示されてないマス目に対応する印字周期に吐出口108から吐出されるインク量は、「なし」である。
ここで、(1,33)のマス目を例に挙げる。印字処理に関する印字命令を受信した段階におけるX(1,33)は、図10(a)に示されているように「小」である。よって、図7のステップS7において、X(1,33)は「なし」でないと判断され、ステップS15の印字インク量調整量決定処理に進む。
印字インク量調整量決定処理において、ステップS101では、X(1,33)は「小」であるため、NOと判断されステップS103に進む。ステップS103では、カウンタ63の値がN1以上であるかが判断される。このときのカウンタ63の値が11であったとし、N1=5であるため、YESと判断されステップS104に進む。ステップS104では、カウンタ63の値がN2以上であるかが判断される。カウンタ63の値=11≧N2=10であるため、YESと判断されステップS106に進む。ステップS106では、X(1,33)は「小」であるため、NOと判断されステップS107に進む。そして、ステップS107において、L=2と決定され、印字インク量調整量決定処理を終了する。
ステップS16に戻り、X(1,33)のデータを、「小」より2段階多い量である「大」に書き換える。よって、図10(b)に示されているように、ステップS23におけるインク量:X(1,33)、即ち、(1,33)に対応する印字周期に吐出口108から吐出されるインク量は「大」となる。
以上説明した実施形態によると、各吐出口108について、予備吐出が用紙Pへの印字開始からの又は直近のインク吐出からの経過時間が予備吐出タイミングに達するごとに行われるため、各吐出口108からの全インク吐出量を算出する必要がなく、各吐出口108における用紙Pへの印字開始からの又は直近のインク吐出からの経過時間を算出するシーケンシャルな演算のみを必要とする。よって、演算処理の簡素化が実現される。
また、各吐出口108について、予備吐出が行われる予備吐出タイミングが、ランダムな値mによって指示されるため、予備吐出によって吐出されたインクは搬送方向に関して用紙Pのランダムな位置に着弾する。よって、予備吐出によって形成された複数のドットが搬送方向と直交する方向に延びた直線として形成されることがなく、印字された画像とは関わりのないドットが予備吐出によって用紙P上に形成されたことが観察者に認識されにくい。
また、mは、0以上、且つ、ヘッド1が設けられている環境の温度が高くなるにつれて小さくなる又は湿度が低くなるにつれて小さくなるM以下のランダムな値であり、温度又は湿度に基づいた値である。よって、温度又は湿度によるインクの増粘しやすさを考慮し、適切にインクの増粘を解消することができる。また、予備吐出を行う必要のない吐出口108からインクを無駄に吐出するなどの事態を少なくすることができる。従って、画質の劣化を防止することができる。
アクチュエータユニット21は、予備吐出タイミングよりも前であって、温度又は湿度に基づいたNによって指示される予備振動許容タイミングに達するまで駆動されない。よって、温度又は湿度によるインクの増粘しやすさを考慮し、予備吐出を行う必要のない吐出口108からインクを無駄に吐出するなどの事態を少なくすることができる。従って、画質の劣化を防止することができる。
mがゼロ以外の各吐出口108について、予備振動許容タイミングから予備吐出タイミングまでの間に予備振動が少なくとも1回行われるため、無駄なインクの消費を回避しつつ、インクの増粘をより確実に解消することができる。従って、画質の劣化をより確実に防止することができる。
mがゼロ以外の各吐出口108について、温度が第1しきい値よりも高い又は湿度が第2しきい値よりも低い場合にだけ予備振動が行われるため、温度又は湿度によるインクの増粘しやすさをより考慮した、より適切な予備振動を行うことができる。よって、予備振動を行う必要のない吐出口108に対して無駄に予備振動を行うなどの事態を少なくすることができる。これにより、不必要な電力の消費を抑えることができる。
mがゼロ以外の各吐出口108について、予備振動許容タイミングから予備吐出タイミングまでの間の各印字周期において予備振動が行われるため、インクの増粘をより確実に解消することができる。従って、画質の劣化をより確実に防止することができる。
予備吐出において吐出口108から吐出されるインク量が、温度又は湿度によるインクの増粘しやすさを考慮して調整されるため、より適切にインクの増粘を解消することができる。従って、画質の劣化をより確実に防止することができる。
直近に印字が施された用紙Pへの印字終了から次に印字が施される用紙Pへの印字開始までの待ち時間を考慮して初期値が調整されるため、例えば、当該待ち時間が長い、即ち、インクの増粘が生じやすい場合には、予備吐出タイミングが早まることとなる。よって、より適切にインクの増粘を解消することができる。従って、画質の劣化をより確実に防止することができる。
温度又は湿度によるインクの増粘しやすさを考慮して初期値が調整されるため、例えば、温度が高い又は湿度が低い、即ち、インクの増粘が生じやすい場合には、予備吐出タイミングが早まることとなる。よって、より適切にインクの増粘を解消することができる。従って、画質の劣化をより確実に防止することができる。
画像印字制御部45の制御に基づく用紙Pへの画像の印字において吐出口108から吐出されるインク量が、温度又は湿度によるインクの増粘しやすさを考慮して調整されるため、用紙Pに着弾するインク量がインクの増粘によって減少するなどの事態を防止することができる。従って、画質の劣化をより確実に防止することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更を上述の実施形態に施すことが可能である。
上述の実施形態では、フラッシング制御部47は、mがゼロ以外の各吐出口108について、予備振動が、予備振動許容タイミングから予備吐出タイミングまでの間の各印字周期において行われるように、アクチュエータユニット21を制御するが、予備振動許容タイミングから予備吐出タイミングまでの間に少なくとも1回行われるように、アクチュエータユニット21を制御するようにしてもよい。
また、吐出口108から吐出されるインク量は、「小」、「中」、「大」、「なし」の4種類に限られない。よって、ステップS15の印字インク量調整量決定処理におけるLの値も、0、1、2に限られない。
また、上述の実施形態では、吐出口108から吐出される液体をインクとして説明したが、インク以外で時間とともに増粘する液体であれば、本願発明を適用できる。また、インクジェットヘッドとしてPZTを用いた液体吐出ヘッドを例に説明したが、静電方式や液体を加熱して生じるバブルを利用した液体吐出ヘッドであっても、本願発明を適用できる。
また、上述の実施形態では、図7におけるステップS7以降繰り返される処理は、(1,1)、(1,2)、(1,3)…、(2,1)、(2,2)…という順番に各ドット形成可能位置に対して行われる。つまり、i列目に属するドット形成可能位置すべてに対する処理が終了したのち、i+1列目に属するドット形成可能位置に対して処理を行う。しかし、本発明はこれに限られず、(1,1)、(2,1)、(3,1)…、(1,2)、(2,2)…という順番に、j列目に属するドット形成可能位置すべてに対する処理が終了したのち、j+1列目に属するドット形成可能位置に対して処理を行うようにしてもよい。その場合は、カウンタの数を列の数であるj個分設ける必要がある。
また、上述の実施例では、第2経過時間調整部60が、印字命令を受信したところで温度に対する値Eを決定していたが、印字命令を受信後は、予め決められた時間間隔で温度及び値Eを決定するようにしてもよい。これにより、環境(温度)の経時的変化に対応して、上述のような吐出特性の維持動作ができる。