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JP5338465B2 - 車両の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、走行用の駆動源と、連続的に変速比が変化する無段変速機とを備えた車両の制御装置に関するものである。
従来、無段変速機を備える車両制御装置では、駆動源トルクを算出する際に、まず、アクセル開度及び車速から目標トルクを設定し、この目標トルクを実現するために理想的な理想駆動トルクを決定する。次に、無段変速比を固定変速比モードにした場合のイナーシャトルクを求めると共に、このイナーシャトルクから駆動源加減速パワーを求め、さらにこの駆動源加減速パワーによる駆動力変化を抑制する駆動源トルク補正量を求める。そして、目標トルクと駆動源トルク補正量との和から、駆動源トルクを算出する。(例えば、特許文献1参照)。
そして、駆動源と無段変速機との間に配置されたトルク断接機構(第2クラッチ)の断接に伴うイナーシャ変化による車両ショックの発生が想定される状況では、駆動源に有するモータからの出力トルクが急変するように制御することで、車両ショックの発生を抑制している。
特開2006-170274号公報
ところで、従来の無段変速機を備える車両制御装置では、車両ショックの抑制を行うためにモータトルクを急変させる場合、モータ回転数を一定にするならば、モータに電力供給を行うバッテリーからの入出力が急激に変化することとなる。ここで、バッテリーSOC状態やバッテリー温度等によってバッテリー入出力が制限されている場合には、急激なトルク変化制御に対応できず、車両ショックの抑制を十分実行できないおそれがあった。
また、駆動源にエンジンを有する場合では、エンジントルクを補正することで車両ショックを抑制することが行われるが、エンジントルクはばらつきが大きく、車両ショックを吸収することは困難であった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、駆動源トルクを制御することなく、イナーシャ変化を伴う車両ショックの発生を抑制することができる車両の制御装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明では、走行用の駆動源と、駆動源と駆動輪との間に配置された無段変速機と、駆動源と無段変速機との間のトルク伝達を断接するトルク断接機構とを備えた車両の制御装置において、無段変速機を変速させることによりトルク断接機構の断接動作に伴って生じる車両ショックを抑制するショック抑制手段は、トルク断接機構の断接動作に伴って生じるイナーシャ変化に応じて、無段変速機の変速速度を変化させる。
よって、本発明の車両の制御装置にあっては、無段変速機の変速速度を変化させることで車両に作用する加速度を変化させ、これによりトルク断接機構の断接動作に伴って生じるイナーシャ変化を相殺することができ、イナーシャ変化を伴う車両ショックの発生を抑制することができる。
この結果、従来のように駆動源からの出力トルクを制御しなくとも、イナーシャ変化を伴う車両ショックの発生を抑制することができる。
実施例1の車両の制御装置が適用されたパラレルハイブリッド車両(車両の一例)を示す全体システム図である。 実施例1の統合コントローラにて実行されるショック抑制処理(ショック抑制手段)の流れを示すフローチャートである。 無段変速機における変速線の一例を示す図である。 無段変速機における変速速度変化と加速度との関係の一例を示す模式図である。 実施例1の車両の制御装置における変速制御によるショック抑制と、モータトルク制御によるショック抑制(比較例)とを説明するタイムチャートである。
以下、本発明の車両の制御装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の車両の制御装置が適用されたパラレルハイブリッド車両(車両の一例)を示す全体システム図である。以下、図1に基づいて、駆動系及び制御系の構成を説明する。
実施例1のパラレルハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジン(駆動源)Engと、第1クラッチCL1と、モータ/ジェネレータ(駆動源)MGと、第2クラッチ(トルク断接機構)CL2と、無段変速機CVTと、ファイナルギヤFGと、左駆動輪LTと、右駆動輪RTと、を備えている。
前記エンジンEngは、走行用の駆動源であり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンである。エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御やフューエルカット制御等が行われる。なお、エンジン出力軸には、フライホイール(図示せず)が設けられている。
前記第1クラッチCL1は、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGとの間の位置に介装される。この第1クラッチCL1としては、第1クラッチコントローラ5からの第1クラッチ制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された第1クラッチ制御油圧により、締結・スリップ締結(半クラッチ状態)・開放が制御される。この第1クラッチCL1としては、例えば、油圧アクチュエータを用いたストローク制御によりスリップ締結から完全開放までが制御され、ダイアフラムスプリングによる付勢力にて完全締結を保つ常時締結(ノーマルクローズ)の乾式単板クラッチが用いられ、エンジンEng〜モータ/ジェネレータMG間の締結/半締結/開放を行なう。この第1クラッチCL1が完全締結状態ならモータトルク+エンジントルクが第2クラッチCL2へと伝達され、開放状態ならモータトルクのみが第2クラッチCL2へと伝達される。なお、半締結/開放の制御は、第1クラッチ断接用の油圧アクチュエータ(図示せず)に対するストローク制御にて行われる。
前記モータ/ジェネレータMGは、走行用の駆動源であり、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた交流同期型モータ/ジェネレータである。このモータ/ジェネレータMGは、発進時や走行時に駆動トルク制御や回転数制御を行うと共に、モータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータ/ジェネレータMGは、バッテリー4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この動作状態を「力行」と呼ぶ)、ロータがエンジンEngや左右駆動輪LT,RTから回転エネルギーを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリー4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。なお、このモータ/ジェネレータMGのロータは、第2クラッチCL2を介して無段変速機CVTの変速機入力軸inputに連結されている。
前記第2クラッチCL2は、前記エンジンEngと前記モータ/ジェネレータMGとを有する走行用駆動源と、左右駆動輪LT,RTとの間に介装されたクラッチであり、第2クラッチコントローラ9からの第2クラッチ制御指令に基づいて、第2クラッチ油圧ユニット10により作り出された第2クラッチ制御油圧により、締結・スリップ締結(半クラッチ状態)・開放が制御される。この第2クラッチCL2としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できるノーマルオープンの湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキが用いられ、クラッチ油圧(押付力)に応じて伝達トルク(クラッチトルク容量)が発生する。そして、この第2クラッチCL2は、無段変速機CVTおよびファイナルギヤFGを介し、エンジンEngおよびモータ/ジェネレータMG(第1クラッチCL1が締結されている場合)から出力されたトルクを左右駆動輪LT,RTへと伝達する。つまり、この第2クラッチCL2の断接より、駆動源であるエンジンEng及びモータ/ジェネレータMGと無段変速機CVTとの間のトルク伝達が断接される。
なお、第2クラッチCL2としては、図1に示すように、独立のクラッチをモータ/ジェネレータMGと無段変速機CVTの間の位置に設定する以外に、無段変速機CVTと左右駆動輪LT,RTの間の位置に設定しても良い。
前記無段変速機CVTは、変速機入力軸inputに接続したプライマリプーリと、変速機出力軸outputに接続したセカンダリプーリと、プライマリプーリとセカンダリプーリとの間に架け渡されたプーリベルトと、を有するベルト式無段変速機である。
プライマリプーリは、変速機入力軸inputに固定された固定シーブと、変速機入力軸inputに摺動自在に支持された可動シーブと、を有している。セカンダリプーリは、変速機出力軸outputに固定された固定シーブと、変速機出力軸outputに摺動自在に支持された可動シーブと、を有している。
プーリベルトは、プライマリプーリとセカンダリプーリとの間に巻き掛けられた金属ベルトであり、それぞれの固定シーブと可動シーブとの間に狭持される。ここでは、固定シーブと可動シーブとのそれぞれに接する傾斜面を両側にもった多数のエレメントを重ね、薄板を層状に重ねると共に円環状に形成したリング2組を、エレメントの両側に挟み込ませることで構成された、いわゆるVDT型ベルトを使用している。
そして、両プーリのプーリ幅を変更し、プーリベルトの挟持面の径を変更して変速比(プーリ比)を自在に制御する。ここで、プライマリプーリのプーリ幅が広くなると共に、セカンダリプーリのプーリ幅が狭くなると変速比がLow側に変化する。また、プライマリプーリのプーリ幅が狭くなると共に、セカンダリプーリのプーリ幅が広くなると変速比がHigh側に変化する。
そして、実施例1のハイブリッド駆動系は、電気自動車走行モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド車走行モード(以下、「HEVモード」という。)と、準電気自動車走行モード(以下、「準EVモード」という。)と、駆動トルクコントロール発進モード(以下、「WSCモード」という。)等の走行モードを有する。
前記「EVモード」は、第1クラッチCL1を開放状態とし、モータ/ジェネレータMGの動力のみで走行するモードである。前記「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態とし、モータアシスト走行モード・走行発電モード・エンジン走行モードの何れかにより走行するモードである。前記「準EVモード」は、第1クラッチCL1が締結状態であるがエンジンEngをOFFとし、モータ/ジェネレータMGの動力のみで走行するモードである。前記「WSCモード」は、「HEVモード」からのP,N→Dセレクト発進時、または、「EVモード」や「HEVモード」からのDレンジ発進時等において、モータ/ジェネレータMGを回転数制御させることで第2クラッチCL2のスリップ締結状態を維持し、第2クラッチCL2を経過するクラッチ伝達トルクが、車両状態やドライバー操作に応じて決まる要求駆動トルクとなるようにクラッチトルク容量をコントロールしながら発進するモードである。なお、「WSC」とは「Wet Start clutch」の略である。
実施例1のパラレルハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリー4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、変速機コントローラ7と、変速油圧ユニット8、第2クラッチコントローラ9と、第2クラッチ油圧ユニット10と、統合コントローラ11と、を有して構成されている。なお、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、変速機コントローラ7と、第2クラッチコントローラ9と、統合コントローラ11とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線12を介して接続されている。
前記エンジンコントローラ1は、エンジン位置検出器13からのエンジン位置情報と、統合コントローラ11からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
前記モータコントローラ2は、モータ/ジェネレータMGのロータ回転位置を検出するモータ位置検出器(レゾルバ)14からの情報と、統合コントローラ11からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータ/ジェネレータMGのモータ動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2では、バッテリー4の充電容量をあらわすバッテリーSOCを監視していて、このバッテリーSOC情報は、モータ/ジェネレータMGの制御情報に用いられると共に、CAN通信線12を介して統合コントローラ11へ供給される。
前記第1クラッチコントローラ5は、図示しない油圧アクチュエータのストローク位置を検出する第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報と、統合コントローラ11からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・スリップ締結・開放を制御する指令を第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。
前記変速機コントローラ7は、アクセル開度センサ16と、変速機入力回転数検出器17、変速機出力回転数検出器18と、インヒビタースイッチ(図示せず)等からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点がシフトマップ上で存在する位置により最適な変速比を検索し、検索された変速比を得る制御指令を変速油圧ユニット8に出力する。なお、シフトマップとは、アクセル開度と車速に応じてアップシフト線とダウンシフト線を書き込んだマップをいう。また、統合コントローラ11から変速制御変更指令が出力された場合、通常の変速制御に代え、変速制御変更指令にしたがった変速制御を行う。
前記第2クラッチコントローラ9は、モータ位置検出器14と、変速機入力回転数検出器17からのセンサ情報を入力すると共に、第2クラッチ油圧(電流)指令値を実現するように、第2クラッチ油圧ユニット10にクラッチ油圧指令値を出力してソレノイドバルブの電流を制御する。これにより、第2クラッチCL2の押付力が設定されて、締結・スリップ締結・開放が制御される。
前記統合コントローラ11は、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、バッテリーSOC状態、アクセル開度、車速(変速機出力回転数に同期した値)、作動油温等から目標駆動トルクを演算する。そして、その結果に基づき各アクチュエータ(モータ/ジェネレータMG、エンジンEng、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、無段変速機CVT)に対する指令値を演算し、各コントローラ1,2,5,7,9へと送信する。
図2は、実施例1の統合コントローラにて実行されるショック抑制処理(ショック抑制手段)の流れを示すフローチャートである。以下、統合コントローラの処理内容を、図2に示すフローチャートを用いて説明する。なお、図2に示すショック抑制処理は、定時割り込みにより繰り返し実行される。
ステップS1では、車両に作用するイナーシャ(加速度)が変化し、車両ショックが発生するか否かを判断し、YES(ショック発生)の場合はステップS2に進み、NO(ショック未発生)の場合はエンドへ進む。ここで、イナーシャ変化を伴う車両ショック発生の有無は、第2クラッチCL2が定常状態(締結中又は開放中)から過度状態へと移行したか否かに基づいて判断する。つまり、車両に作用するイナーシャ(加速度)は、第2クラッチCL2の断接により、第2クラッチCL2における伝達トルクが変化するために発生すると考えられるため、この第2クラッチCL2の断接動作の有無により、イナーシャ(加速度)変化による車両ショック発生の有無を判断することができる。
ステップS2では、ステップS1での車両ショック発生との判断に続き、要求駆動力範囲内の変速によって車両ショックを吸収できるか否かを判断し、YES(吸収可能)の場合はステップS3へ進み、NO(吸収不可能)の場合はステップS4へ進む。ここで、現在の変速比を、例えば予め読み込んだ車速、変速機入力回転数(第2クラッチCL2の出力回転数)、アクセル開度、図3に示す変速線から探索により求める。また、要求駆動力は、予め読み込んだ車速、アクセル開度等に基づいて求める。そして、要求駆動力範囲内の変速によって発生することができる加速度d(ωo)(以下、変速機ショックという)を求める。この変速機ショックは、変速の方向(ダウンシフト方向への変速か、アップシフト方向への変速か)と、無段変速機CVTの変速速度変化とによって異なり、下記式1及び式2から導かれる式3によって算出される。
Figure 0005338465
ここで、Tin:変速機入力トルク
in:変速機入力イナーシャ
o:変速機出力イナーシャ
CVT:変速機フリクショントルク
LR:車両フリクショントルク
ωin:変速機入力軸角速度
ωo:変速機出力軸角速度
d(ωin):変速比入力軸の角加速度(変速比入力軸角速度を時間微分した
値)
d(ωO):変速比出力軸の角加速度、変速機ショック(変速比出力軸角速度を
時間微分した値)
ra:変速比
d(ra):変速速度(変速比を時間微分した値)
一方、車両ショックの大きさは、ショック発生時の車速、減速比、インプットトルク(モータ/ジェネレータMGやエンジンEngからの出力トルク)、イナーシャ変化量から演算で求める方法や学習による方法がある。なお、各種条件と車両ショックとの関係を予めマップにしておき、検索によって求めてもよい。
そして、変速機ショックと、車両ショックの大きさとを比較し、変速機ショックよりも車両ショックが小さければ、ショック吸収可能と判断する。
ステップS3では、ステップS2でのショック吸収可能との判断に続き、無段変速機CVTを変速すると共に、その変速速度を変化させ、車両ショックを吸収してエンドへ進む。ここで、車両ショックを吸収するには、変速機ショックを、無段変速機CVTの変速の速度変化によって発生させるが、このとき、変速機ショックとステップS2において算出した車両ショックとの合計がゼロになるように、無段変速機CVTの変速速度d(ra)を適宜変化させる。すなわち、変速機ショックが、車両ショックに対して、反対方向に作用する同じ大きさの加速度になるように無段変速機CVTの変速速度d(ra)を変化させる。
なお、図4に示すグラフからも、無段変速機CVTの変速速度d(ra)を変化させると、この変速速度変化に伴って、変速機ショックd(ωo)に相当する加速度が変化することがわかる。しかも、図から明らかなように変速速度d(ra)が大きいほど加速度(変速機ショックd(ωo))も大きくなり、変速速度d(ra)が小さいほど加速度(変速機ショックd(ωo))が小さくなる。さらに、無段変速機CVTをダウンシフト方向へ変速した場合(図4中実線で示す)では、負方向に加速度(変速機ショックd(ωo))が発生し、アップシフト方向へ変速した場合(図4中破線で示す)では、正方向に加速度(変速機ショックd(ωo))が発生する。
これにより、車両ショックに応じて無段変速機CVTの変速速度d(ra)を変化させることで、車両ショックに対して反対方向に作用する変速機ショックd(ωo)を発生させ、双方のショックを相殺することで車両に発生するショックを吸収する。
ステップS4では、ステップS2でのショック吸収不可能との判断に続き、車両ショックを吸収するためのモータ出力を実現可能であるか否かを判断し、YES(実現可能)の場合はステップS5へ進み、NO(実現不可能)の場合はステップS6へ進む。ここで、モータ出力により車両ショックを吸収するには、モータ/ジェネレータMGの回転数を一定にした状態でモータ出力トルクを急変させるので、モータ出力トルクの急激な変化に伴ってバッテリー出力変動が生じる。そのため、バッテリーSOCやバッテリー温度等によりバッテリー出力可能量を求め、このバッテリー出力可能量からモータ出力可能量を演算する。すなわち、例えばバッテリーSOC不足によりバッテリーからの出力量が制限されている場合には、モータ出力可能量も制限され、モータ出力トルクを急変させることができず吸収できる車両ショックが非常に小さくなる。
一方、車両ショックの大きさは、ショック発生時の車速、減速比、インプットトルク(モータ/ジェネレータMGやエンジンEngからの出力トルク)、イナーシャ変化量から演算で求める方法や学習による方法がある。なお、各種条件と車両ショックとの関係を予めマップにしておき、検索によって求めてもよい。
そして、モータ出力可能量と、車両ショックの大きさとを比較し、モータ出力可能量よりも車両ショックが小さければ、ショック吸収可能と判断する。
ステップS5では、ステップS4でのモータ出力可能との判断に続き、モータ/ジェネレータMGからの出力トルクを急変させ、車両ショックを吸収してエンドへ進む。ここで、車両ショックを吸収するには、モータ/ジェネレータMGの出力トルクの急変によって生じる加速度とステップS2において算出した車両ショックとの合計がゼロになるようにする。すなわち、モータ/ジェネレータMGの出力トルクの急変によって生じる加速度を、車両ショックに対して、反対方向に作用する同じ大きさの加速度にする。
ステップS6では、ステップS4でのモータ出力不可能との判断に続き、出力可能な範囲でモータ/ジェネレータMGからの出力トルクを急変すると同時に、無段変速機CVTを変速すると共にその変速速度を変化させ、車両ショックを吸収してエンドへ進む。なお、無段変速機CVTの変速速度変化により発生する加速度(いわゆる変速機ショック)は、モータ/ジェネレータMGからの出力トルクの急変によって吸収しきれない車両ショックを相殺する分である。また、エネルギーマネンジメントを考慮し、モータ出力制御によるショック吸収と、変速速度変化によるショック吸収とを効率的に分配してもよい。
次に、作用を説明する。
実施例1の車両の制御装置における作用を[変速速度制御時ショック吸収作用]、[モータ出力制御時ショック吸収作用]、[変速速度制御且つモータ出力制御時ショック吸収作用]に分けて説明する。
[変速速度制御時ショック吸収作用]
図5は、実施例1の車両の制御装置における変速制御によるショック抑制と、モータトルク制御によるショック抑制(比較例)とを説明するタイムチャートである。なお、図5では、変速制御によるショック抑制にかかる特性を実線で示し、モータトルク制御によるショック抑制に係る制御を破線で示す。双方の特性が重複する部分では、分かりやすいように実線と破線を僅かにずらして表示しているが、実際の特性は一致する。
時刻t1において、第2クラッチCL2の締結指令(ロックアップ指令)が出力され、第2クラッチロックアップフラグがOFF→ONへと変化する。
時刻t2において、第2クラッチロックアップフラグの変化を受け第2クラッチCL2の締結油圧が上昇し始める。これにより、車両イナーシャ(加速度)が変化して車両ショックが発生すると判断されてショック吸収制御が開始され、モータ/ジェネレータMGの出力回転数が低減し始め、これにより無段変速機CVTの変速比は小さくなり始める(アップシフト方向への変速を開始する)。その結果、モータ/ジェネレータMGの出力トルクが変速比の変化に合わせて緩やかに増加し始める。一方、モータ/ジェネレータMGの出力トルクの増加が緩やかであるため、バッテリー4からの出力は第2クラッチCL2の断接に拘らず一定のままになる。
時刻t3において、第2クラッチ油圧がライン圧に一致して第2クラッチCL2が完全締結し、イナーシャ変化による車両ショックの発生が終了すると、モータ/ジェネレータMGの出力回転数及び無段変速機CVTの変速比はそれぞれ一定になり、これに伴ってモータ/ジェネレータMGの出力トルクも一定になる。
このように、時刻t1において第2クラッチロックアップフラグがOFF→ONへと変化すると、車両イナーシャ(加速度)が変化して車両ショックが発生すると判断され、図2に示すフローチャートにおいてステップS1→ステップS2へと進む。そして、要求駆動力範囲内の変速によって発生した車両ショックを吸収できるときには、ステップS3へ進んで、無段変速機CVTの変速時の変速速度d(ra)を適宜変化させることで車両ショックを吸収する。つまり、第2クラッチCL2の締結によって生じるイナーシャ変化を伴う車両ショックの大きさに応じて、無段変速機CVTの変速時の変速速度d(ra)の変化によって生じる加速度(変速機ショック)d(ωo)により車両ショックを相殺することでショックを吸収する。
この結果、変速機出力軸outputから出力される出力軸トルクは、第2クラッチCL2の締結動作に拘らず一定のままになり、モータ/ジェネレータMGの出力トルクを制御することなく、イナーシャ変化を伴う車両ショックの発生を抑制することができる。
そして、モータ/ジェネレータMGの出力トルク制御をしないので、バッテリー4の急激な出力変動が生じず、バッテリー劣化を防止することができる。さらに、バッテリーSOCやバッテリー温度等の状況により、バッテリー4の入出力制限がかかっている場合や、モータ/ジェネレータMGの不具合等により急激な出力変動ができない場合シーンにおいても、車両ショックが発生する直前のバッテリー出力を維持したまま、無段変速機CVTの変速速度変化によって、車両ショックを吸収することができる。
なお、アップシフト方向へ変速するときの変速速度を変化させると、図4に示すように、正方向、すなわち車両を加速させる方向の加速度が発生することとなる。また、ダウンシフト方向へ変速するときの変速速度を変化させると、図4に示すように、負方向、すなわち車両を減速させる方向の加速度が発生することとなる。
したがって、変速方向及び変速速度を適宜変化させることにより、正方向(車両加速方向)に作用する車両ショックと、負方向(車両減速方向)に作用する車両ショックとの両方に対応することができ、発生する車両ショックの作用方向に拘らず、無段変速機CVTの変速速度を変化させることでショック吸収を図ることができる。
特に、第2クラッチCL2の断接動作等、発生するイナーシャ変化の割合や変化速度が分かっている事象に関しては、予め発生する車両ショックを学習又は演算によって保持しておき、この保持した演算値によりマップを用いて探索で変速速度や時間を算出する場合には、イナーシャ変化シーンに応じて決まったイナーシャを基に必要な変速速度や時間を演算すればよい。
そのため、変速速度等の演算が簡易になり、演算の負担を少なくすることができる。また、車両への制御指令によって生じる車両ショックであるので、予め無段変速機CVTの制御油圧をスタンバイすることができ、スムーズに且つ確実に車両ショックを吸収することができる。
[モータ出力制御時ショック吸収作用]
図5において破線で示す特性に基づいて、モータ出力制御時ショック吸収作用を説明する。
時刻t1において、第2クラッチCL2の締結指令(ロックアップ指令)が出力され、第2クラッチロックアップフラグがON→OFFへと変化する。
時刻t2において、第2クラッチロックアップフラグの変化を受け第2クラッチCL2の締結油圧が上昇し始める。これにより、車両イナーシャ(加速度)が変化して車両ショックが発生すると判断されてショック吸収制御が開始される。すなわち、モータ/ジェネレータMGの出力トルクを急増させる。また、これによりバッテリー4からの出力も急増することとなる。一方、モータ/ジェネレータMGの出力回転数及び無段変速機CVTの変速比は一定のままである。
時刻t3において、第2クラッチ油圧がライン圧に一致して第2クラッチCL2が完全締結し、イナーシャ変化による車両ショックの発生が終了すると、モータ/ジェネレータMGの出力トルク及びバッテリー4からの出力も一定状態になる。モータ/ジェネレータMGの出力回転数及び無段変速機CVTの変速比はそれぞれ一定になり、これに伴ってモータ/ジェネレータMGの出力トルクも一定になる。
この結果、変速機出力軸outputから出力される出力軸トルクは、第2クラッチCL2の締結動作に拘らず一定のままになり、イナーシャ変化を伴う車両ショックの発生を抑制することができる。
このように、時刻t1において第2クラッチロックアップフラグがOFF→ONへと変化すると、車両イナーシャ(加速度)が変化して車両ショックが発生すると判断されたときに、要求駆動力範囲内での変速により車両ショックの吸収ができない場合には、図2にステップS1→ステップS2→ステップS4へと進み、発生する車両ショックを吸収するためのモータ/ジェネレータMGの出力が実現可能であればステップS5へと進む。そして、モータ/ジェネレータMGからの出力トルクを車両ショックに合わせて急変させ、車両ショックの発生を抑制する。
[変速速度制御且つモータ出力制御時ショック吸収作用]
第2クラッチCL2の断接動作に伴ってイナーシャ変化を伴う車両ショックが発生したときに、要求駆動力範囲内の変速によってショック吸収を図ることができず、ショック吸収のためのモータ/ジェネレータMGの出力を実現することができない場合には、図2に示すフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS4→ステップS6へと進み、出力可能範囲内においてモータ/ジェネレータMGの出力トルクを急変させると同時に、無段変速機CVTを変速すると共にその変速速度を変化させることで、車両ショックを吸収する。
なお、モータ/ジェネレータMGからの出力トルクの急変によって吸収しきれない車両ショックを、無段変速機CVTの変速速度変化により発生する加速度(いわゆる変速機ショック)により相殺してショック吸収を図ってもよいし、エネルギーマネンジメントを考慮し、モータ出力制御によるショック吸収と、変速速度制御によるショック吸収とを効率的に分配してもよい。
このように、無段変速機CVTの変速速度制御によるショック吸収と、従来のモータ出力制御によるショック吸収と、双方の組み合わせによるショック吸収と、を使い分けることで、場面に応じた最適なショック吸収を行うことができ、ショック吸収ができない場面を解消すると共に、エネルギー効率を向上させることができる。
次に、効果を説明する。
実施例1の車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 走行用の駆動源(エンジンEng及びモータ/ジェネレータMG)と、該駆動源Eng,MGと駆動輪(左右駆動輪)LT,RTとの間に配置された無段変速機CVTと、前記駆動源Eng,MGと前記無段変速機CVTとの間のトルク伝達を断接するトルク断接機構(第2クラッチ)CL2と、を駆動系に備えると共に、前記無段変速機CVTを変速させることにより前記トルク断接機構CL2の断接動作に伴って生じる車両ショックを抑制するショック抑制手段(図2)を備えた車両の制御装置において、前記ショック抑制手段(図2)は、前記トルク断接機構CL2の断接動作に伴って生じるイナーシャ変化に応じて、前記無段変速機CVTの変速速度d(ra)を変化させる構成とした。これにより、駆動源トルクを制御することなく、イナーシャ変化を伴う車両ショックの発生を抑制することができる。
(2) 前記ショック抑制手段(図2)は、前記イナーシャ変化に応じて車両に作用する加速度(車両ショック)に対して、反対方向に作用する同じ大きさの加速度(変速機ショック)d(ωo)が発生するように前記無段変速機CVTの変速速度d(ra)を変化させる構成とした。これにより、無段変速機の変速速度変化によって生じる加速度(変速機ショック)d(ωo)によって、イナーシャ変化に応じて車両に作用する加速度(車両ショック)を相殺することができ、駆動源トルクを制御することなく、車両ショックの発生を抑制することができる。
以上、本発明の車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、本発明の車両の制御装置をパラレルハイブリッド車両用に適用する例を示したが、FRハブリッド車両やFFハイブリッド車両に適用することもできるし、電気自動車や燃料電池車、エンジン車に対しても本発明の車両の制御装置を適用することができる。要するに、駆動源と駆動輪との間に無段変速機を配置すると共に、駆動源と無段変速機との間のトルク伝達を断接する動力伝達機構を駆動系に有していれば適用することができる。
また、実施例1では、走行用駆動源のモータとして、回生が可能なモータ/ジェネレータMGを示したが、これに限定されるものではなく、力行のみが可能なモータを用いてもよい。
Eng エンジン(駆動源)
MG モータ/ジェネレータ(駆動源)
LT 左駆動輪(駆動輪)
RT 右駆動輪(駆動輪)
CL2 第2クラッチ(動力伝達機構)
CVT 無段変速機

Claims (1)

  1. 走行用の駆動源と、該駆動源と駆動輪との間に配置された無段変速機と、前記駆動源と前記無段変速機との間のトルク伝達を断接するトルク伝達機構と、を駆動系に備えると共に、前記無段変速機を変速させることにより前記トルク断接機構の断接動作に伴って生じる車両ショックを抑制するショック抑制手段を備えた車両の制御装置において、
    前記ショック抑制手段は、前記トルク断接機構の断接動作に伴って生じるイナーシャ変化に応じて車両に作用する加速度に対して反対方向に作用する同じ大きさの加速度が発生するように前記無段変速機の変速速度を変化させることを特徴とする車両の制御装置。
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