以下、本発明に係る自転車シミュレーション装置の実施の形態例を図1〜図19を参照しながら説明する。
本実施の形態に係る自転車シミュレーション装置10は、図1に示すように、実際に自転車を運転しているような疑似感覚を運転者(乗員)に与えることで、自転車における交通安全指導のほか、各種のゲーム機、トレーニング機器等に使用することができる。
図1に示すように、自転車シミュレーション装置10は、実際の自転車に類似した車体構造からなる模型自転車12と、模型自転車12の運転に応じて運転者の前方の背景画像(映像)を表示するメインモニタ14と、メインモニタ14を支持するフロントスタンド16と、運転者の後方の背景画像を表示するリヤモニタ(後方表示部)18と、自転車シミュレーション装置10の全体的な制御を行う制御装置(制御部)20とを備える。
自転車シミュレーション装置10は、模型自転車12と、メインモニタ14と、フロントスタンド16と、リヤモニタ18とを分割可能な構造(4分割構造)であり、各要素はボルト締結等によって分割及び組立を容易に行うことができる。
メインモニタ14は、フロントスタンド16の上部で支持され、モニタ位置調整機構22によって上下方向(高さ方向)での位置調整が可能となっている。メインモニタ14の左右側方には、それぞれ模型自転車12を運転する運転者の左後方及び右後方の情景を表示する一対のサブモニタ24、24が設けられている。従って、以下の説明では、メインモニタ14、サブモニタ24及びリヤモニタ18を総称していう場合は、単にモニタ200(ディスプレイ装置:図6参照)と記す。
フロントスタンド16は、パイプ状の本体枠17と、本体枠17の底部に設けられた脚部19や車輪21等によって構成されており、略水平面を構成するアッパープレート23の上方に、モニタ位置調整機構22を介してメインモニタ14が取り付けられる。
制御装置20は、フロントスタンド16のアンダープレート25に配置されており、模型自転車12の各部に取り付けられたセンサによって運転者の操作情報(走行情報)が入力されることで、フロントスタンド16やサブモニタ24、リヤモニタ18の状況に応じた各種の映像を表示する。
リヤモニタ18は、フロントスタンド16の下部に連結されて模型自転車12の下部まで延びたメインフレーム26に連結部28で連結されたパイプ状のリヤスタンド(後方スタンド)30により、模型自転車12の後方に設けられる。図2に示すように、リヤモニタ18は、モニタ位置調整機構22によるメインモニタ14の調整範囲hの略中央位置に対応して設置されると共に、模型自転車12の車体前後方向での中心線から一方側(本実施形態では車体右側)に多少オフセットした位置に設置されている。
図1に示すように、模型自転車12は、床面及びフロントスタンド16の下部に固定されて当該模型自転車12の車体を構成するメインフレーム26と、メインフレーム26にシートポスト(サドル側パイプ)32を介して連結されるサドル34(着座部)と、メインフレーム26に連結されるステアリングポスト(ステアリング側パイプ)36に固着されたヘッドパイプ38を支軸として回動可能なステアリング40と、ゴム製等のタイヤによって床面に固定されるダミーの後輪42とを有し、車体後方側に駆動部43が配置されている。サドル34は、サドル位置調整機構44によって上下方向(高さ方向)での位置調整が可能であり、ステアリング40は、ステアリング位置調整機構46によって上下方向(高さ方向)での位置調整が可能である。
メインフレーム26は、フロントスタンド16の下部に一対の連結部47、47によって両端側が連結されて床面に固定される支持パイプ48と、支持パイプ48の中央部から車体後方側へと延びて床面に這わされるアンダーパイプ50と、アンダーパイプ50から前傾斜及び後傾斜でそれぞれ上方に延びるステアリング側ベースパイプ52及びサドル側ベースパイプ54と、ステアリング側ベースパイプ52及びサドル側ベースパイプ54の間を連結するセンターフレーム56と、ステアリング側ベースパイプ52及び支持パイプ48の間を連結する一対のフロントフォーク58、58とから構成されて模型自転車12の車体を構成している。
図2に示すように、ヘッドパイプ38の下方には、樹脂等のケースで覆われた第1制御ボックス60が取り付けられている。第1制御ボックス60の内部には、ステアリング40の回動動作に適度な手応えを与えるディスクダンパ62(ステアリング抵抗発生器)やステアリング40の舵角を検知する舵角センサ64(図4参照)等が収納されている。
ここで、第1制御ボックス60を含むステアリング40の回転機構部66の構成について図3及び図4に基づいて説明する。
ステアリング40の回転機構部66は、ステアリング40の中心位置から下方に延びる支柱68と、該支柱68の下部にボルト70及びナット72によって固着されるステアリングステム74と、該ステアリングステム74が回転自在に挿通される上述のヘッドパイプ38と、ステアリングステム74をヘッドパイプ38に対して回転自在に支持するための上部レースセット76(ベアリング等を含む)及び下部レースセット78(ベアリング等を含む)と、ヘッドパイプ38の下部に固定された上述の第1制御ボックス60とを有する。ステアリング40には例えば樹脂製のグリップ80が取り付けられている。
第1制御ボックス60は、ヘッドパイプ38に固着され、一部がヘッドパイプ38から横方向にはみ出す固定板82と、該固定板82の上面のうち、ヘッドパイプ38の中空部に対向した部分に例えばねじ84によって固定されたディスクダンパ62(ステアリング抵抗発生器)と、固定板82の下面のうち、ディスクダンパ62と対向する位置に例えばボルト86及びナット88によって固定された舵角センサ64と、固定板82の上面に例えばねじ90によって固定され、ディスクダンパ62、舵角センサ64等を保護するカバー92とを有する。
上述したステアリングステム74の下端面の中心には、ディスクダンパ62の中心孔62a(ロータの中心孔)に挿通される矩形状の第1回転軸94と、第1回転軸94の先端に設けられ、舵角センサ64の中心孔64aに挿通される矩形状の第2回転軸96(ピン)とを有する。第2回転軸96は、その外形が第1回転軸94の外形よりも小さく、且つ、軸線が第1回転軸94の軸線と同じとされている。また、ステアリングステム74の下端には前方に突出する板状の指示片98が設けられている。
ディスクダンパ62は、図示しないが、内部のロータとシートとの間にオイルが充填され、ステアリング40の操舵に伴って、ロータとシートとが相対的に回転すると、オイルの粘性抵抗によってロータにトルクが発生する。このトルクがステアリング40を介して運転者に伝わり、運転者は、ステアリング40の操舵において適度な手応えを感じることができる。
舵角センサ64は、ステアリング40の操舵角に応じて、内部の電気抵抗が変化する方式のセンサを好ましく採用することができる。この場合、例えば舵角センサ64に一定のセンス電流を流し、内部の電気抵抗の変化を電圧変化として電気的に取り出せる構造を採用することができる。なお、舵角センサ64からの電圧信号は、デジタル変換されて舵角値とされ、その後のCPUでの算術演算や論理演算に使用される。舵角センサ64としては、上述の電気抵抗変化型のほか、磁気抵抗素子(MR素子)を用いたものや、電磁誘導方式の舵角センサ等を使用することができる。
そして、固定板82の上面には、ステアリング40の最大舵角を決める円柱状の第1ストッパ100と第2ストッパ102が設けられている。すなわち、ステアリング40を右方向に回転操作することで、ステアリングステム74の下端に設けられた指示片98が第1ストッパ100に当たり、このときの舵角センサ64の値(最大値)に基づいて、右方向の最大入力舵角が決定されるようになっている。同様に、ステアリング40を左方向に回転操作することで、指示片98が第2ストッパ102に当たり、このときの舵角センサ64の値(最小値)に基づいて、左方向の最大入力舵角が決定され、さらに、最大値と最小値の中間値がステアリング40の回動中心(中立点)として決定されるようになっている。なお、第1ストッパ100及び第2ストッパ102が、ヘッドパイプ38に設けられた張り出し部101にねじ103によって固定されることで、固定板82がヘッドパイプ38に固定されるようになっている。
一方、図1及び図2に示すように、ステアリング側ベースパイプ52及びフロントフォーク58の間に形成された略三角形状の空間には、樹脂等のケースで覆われた第2制御ボックス104が取り付けられている。第2制御ボックス104の内部には、ステアリング40に設けられた前輪ブレーキレバー106の揺動動作に適度な手応えを与えるブレーキ抵抗発生器や前輪ブレーキワイヤ108の摺動量によって前輪ブレーキの操作量を検知するブレーキセンサ206(図6参照)等が収納されている。後輪ブレーキレバー110(図1参照)からの後輪ブレーキワイヤ112は、第2制御ボックス104を抜けて後輪側へと延びている(図2参照)。これら第1制御ボックス60及び第2制御ボックス104は、ハーネス114等を介してメインモニタ14や制御装置20と接続されている。なお、以下の説明では、前輪ブレーキレバー106及び後輪ブレーキレバー110を総称していうときは、単にブレーキレバー208(図6参照)と記す。
図5に示すように、駆動部43は、サドル側ベースパイプ54から後方に延びた左右一対のトラス構造で後輪42を支持するパイプ状のアンダーステー116及びアッパーステー118によって支持されている。アンダーステー116の前端部には、回転軸(クランク軸:回転体)120の左右に連結された一対のクランク122、122と、各クランク122、122の先端に設けられたペダル124、124とが回転可能に軸支されている。
従って、駆動部43では、運転者がペダル124を漕ぐと、クランク122に結合されたフロントスプロケット126に巻き掛けられた無端状のドライブチェーン128が駆動される。ドライブチェーン128は、ペダル124の車体後方側に回転可能に取り付けられたフライホイール130の回転軸132に設けたリヤスプロケット(図示せず)に巻き掛けられており、これにより、運転者のペダル操作に伴ってフライホイール130が回転駆動される。なお、ドライブチェーン128に代えて、樹脂や金属等のベルトを用いてもよい。
フライホイール130の車体前方側には、該フライホイール130の外周面に接して従動回転するローラ134を有するペダル負荷調整機構136が取り付けられており、フライホイール130の回転抵抗を調整することによって、ペダル124の回転に必要な踏力、すなわちペダル負荷の変更が可能となっている。
フライホイール130の回転軸132と該回転軸132に取り付けられる前記リヤスプロケットとの間には一方向クラッチ(図示せず)が配設されており、通常の自転車と同様の惰性走行を再現することができる。また、車体側に取り付けられた回転速度センサ210(図6参照)でフライホイール130の回転速度を検知することにより、模型自転車12の疑似的な速度が制御装置20において算出される。さらに、フライホイール130には、後輪ブレーキレバー110からの後輪ブレーキワイヤ112によって操作されるドラムブレーキ138(図5参照)が取り付けられており、実際に回転駆動されるフライホイール130を制動することで、実走行に近いリヤブレーキ操作感を得ることができる。
このようなフライホイール130は、アンダーステー116及びアッパーステー118に固定される支持板140に対し、回転軸132を中心として回転自在に軸支されている。フライホイール130に制動力を与えるドラムブレーキ138は、後輪ブレーキレバー110の操作により後輪ブレーキワイヤ112に連結された揺動アーム142が車体前方に引かれると、ケースの内周面にブレーキシュー(図示せず)が押し付けられて摩擦力が発生する構成である。なお、ブレーキシステムは、ディスク式ブレーキや、フライホイールの外周部を挟むカンチ式のリムブレーキ等を使用する構成としてもよい。
また、図1及び図2に示すように、リヤモニタ18を支持するリヤスタンド30は、メインフレーム26のアンダーパイプ50の端部に連結部28で連結される連結パイプ(連結部)170と、連結パイプ170の他端側を鉛直方向に立ち上げて、その上端側にリヤモニタ18が固定される鉛直パイプ(保持部)172と、鉛直パイプ172の立ち上げ基端部周辺を補強して、リヤモニタ18を安定して支持するために床面に固定される円環パイプ(保持部)174とから構成されている。
連結パイプ170は、連結部28に近い部分が模型自転車12の車体前後方向に沿っており、その後方側が屈曲して模型自転車12の後輪42の前方から車体右後方へと延びている。
図5に示すように、連結部28において、メインフレーム26のアンダーパイプ50と連結パイプ170とは、アンダーパイプ50側が棒状パイプである一方、連結パイプ170側がスリット170aを有する中空パイプであり、該連結パイプ170に前記アンダーパイプ50の端部を差し込み、連結パイプ170の外周から連結ボルト176で締結されることで互いに連結される。
図1及び図5に示すように、リヤモニタ18からのハーネス178は、鉛直パイプ172内から連結パイプ170内へと通されて、該連結パイプ170の端部近傍に形成された孔部170bから外部に取り出されて立ち上げられ、その先端のUSBコネクタ(コネクタ)178aが模型自転車12の下部に設けられたUSB端子(コネクタ)180に接続される。USB端子180に結線後のハーネス184は、模型自転車12前方に設けたUSBコネクタ186に接続され、メインモニタ14の下方に設けた制御装置20から延びるハーネス188のUSBコネクタ(コネクタ)190と結線され、これにより、リヤモニタ18をメインフレーム26側(フロントスタンド16)に配置された制御装置20で表示制御することができる。このように、リヤモニタ18からの配線(ハーネス)が各コネクタを介して制御装置20へと接続されることにより、当該自転車シミュレーション装置10の各部の分解及び組立を一層簡便に行うことができる。つまり、リヤスタンド30、模型自転車12、メインモニタ14の各々をコネクタで分離でき、各々を分解するときの配線の処理が容易となる。この場合、USB端子180からのハーネス184は、センターフレーム56内から第2制御ボックス104内へと通って、模型自転車12の前方へと導出される。センターフレーム56、ステアリング側ベースパイプ52及び第2制御ボックス104へのハーネス184の出入口には、ゴム製等のグロメットをそれぞれ配設しておくことで、ハーネス184を保護することができる。
なお、USBコネクタ178a等が外れた場合には、メインモニタ14にその箇所を表示し、再接続されることで再起動させるとよい。勿論、リヤモニタ18と制御装置20とは、USB接続以外の接続方法で接続してもよい。
図1に示すように、模型自転車12では、駆動部43は、樹脂等のカバー99によって覆われており、運転者がドライブチェーン等に接触することが防止されている。
そして、制御装置20は、図6に示すように、加速度演算部222と、加速度補正部224と、加減速度演算部226と、車速演算部228と、旋回角度提供部230と、背景画像表示部232と、車速表示部234と、メモリ236とを有する。
メモリ236には、予め設定された複数の背景画像情報238がそれぞれ記憶されている。1つの背景画像情報238は、自転車の教育用に設定された1つの街の三次元画像情報であって、モニタ200に表示する際には、使用者が操作する自転車の背景画像上での三次元座標(すなわち、カメラ視点の三次元座標)と、焦点中心の座標に基づいてスクリーン座標系の画像に変換して表示される。このとき、使用者がペダル124を操作することによって、カメラ視点の背景画像上での三次元座標が刻々と変化することから、モニタ200には、自転車に乗った使用者があたかも街中を走行しているような動画像が表示されることになる。
メモリ236に記憶される背景画像情報238(三次元画像情報)としては、例えば現実に存在する街を模した仮想の街の三次元画像情報や、十字路(信号機有り、なし)、T字路、歩道等、教育上キーとなる種々のポイントが要所要所に配置された仮想の街の三次元画像情報等がある。特に、本実施の形態では、交通法規を考慮して、年齢層に応じた複数の三次元画像情報が用意されてある。すなわち、街中の車道を自転車で走行することを主体にした三次元画像情報、街中の歩道を自転車で走行することを主体にした三次元画像情報等である。
背景画像表示部232は、メモリ236に記憶された複数の背景画像情報238のうち、選択された背景画像情報238を、メモリ236から読み出してモニタ200に表示する。この場合、背景画像表示部232は、仮想の三次元座標に基づく背景画像情報238を、少なくともカメラ視点に基づいて透視変換することによって得られたスクリーン座標による画像としてモニタ200に表示する。
背景画像情報238上の自転車の三次元座標(すなわち、カメラ視点の三次元座標)のうち、X座標(左右)及びZ座標(奥行き)は使用者のステアリング操作や走行速度に応じて刻々と変化する。一方、Y座標(高さ方向)は、一定の座標を維持する。つまり、後述する旋回角度提供部230からの旋回角度情報(第6レジスタR6に格納された旋回角度値)と、後述する車速演算部228からの車速情報(第4レジスタR4に格納された車速値)とに基づいてカメラ視点のベクトルが得られることから、カメラ視点のX座標とZ座標が求まり、結果的に、選択された背景画像情報238上でのカメラ視点の三次元座標が求まることとなる。
そして、背景画像表示部232は、求まったカメラ視点の三次元座標と前記ベクトルとに基づいて、背景画像情報238のうち、カメラ視点からベクトル方向の視野に入る背景画像情報238を抽出し、スクリーン座標系の画像に変換してモニタ200に表示する。この処理が繰り返されることで、モニタ200には、自転車に乗った使用者があたかも街中を走行しているような動画像が表示されることになる。なお、背景画像情報238のモニタ200への表示は、ファーストパーソン(1人称の視点)で表示するようにしてもよいし、サードパーソン(3人称の視点)で表示するようにしてもよい。
加速度演算部222は、回転速度センサ210からの検出値に基づいて現在の速度値を演算し、さらに、該現在の速度値から前回の速度値(第2レジスタR2に格納された値:初期値=0)を差し引いた値に基づいて加速度値αを演算し、第1レジスタR1に格納する。
加速度補正部224は、第1レジスタR1に格納された加速度値αを回転速度センサ210からの検出値に基づいて補正して補正加速度値βとし、第2レジスタR2に格納する。
車速演算部228は、2つの演算手法(第1演算手法又は第2演算手法)に基づいて車速を演算する。
すなわち、第1演算手法は、第2レジスタR2に格納された補正加速度値βを積分して速度値を求める。そして、ブレーキの操作量に応じた減速値を、速度値から減算して暫定の車速値を求め、さらに、この暫定の車速値に応じた走行抵抗分の車速減少分を、前記暫定の車速値から減算して、車速値として確定させ、該確定した車速値を第4レジスタR4に格納する。
第2演算手法は、先ず、加減速度演算部226での演算が行われる。加減速度演算部226は、第2レジスタR2に格納された補正加速度値βに、ブレーキ操作による減速度、走行斜面による加減速度、転がり抵抗、空気抵抗を反映させた現在の加減速度値γを演算し、第3レジスタR3に格納する。そして、車速演算部228は、第3レジスタR3に格納された加減速度値γを積分した値を車速値として第4レジスタR4に格納する。
制御装置20は、車速演算にて第1演算手法を採用した場合、加速度演算部222での処理から、加速度補正部224での処理、車速演算部228での処理にわたる一連の処理を繰り返すことで、また、車速演算にて第2演算手法を採用した場合、加速度演算部222での処理から、加速度補正部224での処理、加減速度演算部226での処理、車速演算部228での処理にわたる一連の処理を繰り返すことで、例えば単位時間(例えばテレビ信号の1フレーム期間(1/60sec))ごとに順次車速を求めるように制御する。演算された車速値は、背景画像表示部232での背景画像情報238の表示に利用される。
一方、旋回角度提供部230は、運転者によるステアリング40の操作に対応して、モニタ200上の背景画像を旋回表示させるための旋回角度の情報を提供する機能を有し、中立点設定部240と、入力舵角変換部242と、最大旋回角度設定部244と、旋回角度演算部246とを有する。
中立点設定部240は、モニタ200に、ステアリング40を左方向及び右方向にそれぞれ第1ストッパ100及び第2ストッパ102に当たるまで回すことを要請するガイダンスを表示する。そして、それぞれ第1ストッパ100及び第2ストッパ102に当たったときの2つの舵角(電圧値)を取得し、これら2つの電圧値の中間値をステアリング40の回動中心(中立点)として設定する。
入力舵角変換部242は、中立点の設定後、舵角センサ64から入力される電圧値を、設定された中立点(電圧値)を原点(入力舵角値=0)とした入力舵角値に変換する。このとき、例えば右方向の舵角値であれば、正符号「+」を付し、左方向の舵角値であれば、負符号「−」を付す。これらの正符号及び負符号は、符号ビットを利用して付される。
最大旋回角度設定部244は、中立点設定部240にて取得した2つの電圧値(それぞれ第1ストッパ100及び第2ストッパ102に当たったときの2つの電圧値)のうち、右方向の電圧値を、設定された中立点(電圧値)を原点(入力舵角値=0)とした入力舵角値、すなわち、最大入力舵角に変換し、この最大入力舵角を右方向の最大旋回角度値とする。また、上述のように得られた最大旋回角度に負符号を付して左方向の最大旋回角度値とする。
旋回角度演算部246は、入力舵角変換部242からの入力舵角に基づいてカメラ視点の旋回角度、すなわち、背景画像上での自車両(運転者が操作する自転車)の旋回角度を求める。
ここで、旋回角度演算部246での自車両の旋回角度を求める方法(原理)について、一般的な方法と比較して、図7も参照しながら説明する。先ず、自転車のシミュレーション装置において、自車両の旋回角度を求める場合、一般的には、図7の破線T0に示すように、旋回角度を、入力舵角と一致させることが考えられる。図7において、右方向の最大入力舵角を+Am、これに対応する最大旋回角度を+Mm、左方向の入力舵角を−Am、これに対応する最大旋回角度を−Mmとしたとき、破線T0は、原点(0,0)、点Pa(+Am,+Mm)、点Pb(−Am,−Mm)を結んだ直線(破線)となる。
この場合、自車両が直進している状況において、ステアリング40のわずかな舵角の変化でも忠実に背景画像が左右方向に変化することになるため、運転者は、直進しているにも拘わらず、左右に激しく動く背景画像を見ることになり、乗り物酔いに類似した、いわゆる画面酔いの感覚を持つに至るおそれがある。
そこで、本実施の形態では、舵角センサ64の中立点を中心として右方向及び左方向に所定角度だけ不感帯Whを設け、入力舵角の値が不感帯Wh内にあれば旋回角度を0°とする。すなわち、右方向を「+」、左方向を「−」としたとき、舵角センサ64の中立点を中心として、入力舵角±2°〜±5°の範囲で不感帯Whを設ける。例えば入力舵角が±3°の範囲に不感帯Whを設けた場合、入力舵角が±3°の範囲に入っていれば、自車両の旋回角度は0°となる。これにより、自車両が直進している状況において、ステアリング40のわずかな舵角の変化は、背景画像の左右方向の変化にはつながらず、直進している状況の背景画像の変化だけが表示されることになる。これは、直進時の画面酔いの防止につながる。
入力舵角が不感帯Whの範囲外となった場合の旋回角度の設定方法としては、以下の2つの方法(第1設定方法及び第2設定方法)がある。
第1設定方法は、入力舵角(絶対値)を|Ax|、最大旋回角度(絶対値)を|Mm|、不感帯Whの最大入力舵角(絶対値)を|Dz|としたとき、以下の演算式(1)にて旋回角度(絶対値:|Rd|)を求める。そして、求まった旋回角度(|Rd|)に、入力舵角の符号(正負)を付して、今回の旋回角度値として第6レジスタR6に格納する。
|Rd|=(|Ax|−|Dz|)×{|Mm|/(|Mm|−|Dz|)} ……(1)
これは、右方向の最大入力舵角を+Am、左方向の最大入力舵角を−Amとしたとき、右方向の入力舵角+Axに対しては、図7の点Pc(+Dz,0)と点Pa(+Am,+Mm)を結んだ直線Taに基づいて旋回角度を求め、左方向の入力舵角−Axに対しては、図7の点Pd(−Dz,0)と点Pb(−Am,−Mm)を結んだ直線Tbに基づいて旋回角度を求めることを示す。
一方、第2設定方法は、以下の演算式(2)にて旋回角度(絶対値:|Rd|)を求める。そして、求まった旋回角度(|Rd|)に、入力舵角の符号(正負)を付して、今回の旋回角度値として第6レジスタR6に格納する。
|Rd|=(|Ax|−|Dz|)×k×Cv ……(2)
上記演算式(2)において、kは入力舵角の変化に対する旋回角度の変化を示す傾きであり、k=|Mm|/(|Mm|−|Dz|)によって求めることができる。Cvは車速値に依存した係数であって、通常走行領域では1.0とし、通常走行領域以外(低速走行領域及び高速走行領域)では1.0以下とする。本実施の形態では、係数Cvはメモリ236に登録された係数マップ250(マップ情報)に基づいて求める。
すなわち、自転車の漕ぎ出し段階等のように、車速値が例えば0〜4km/h等の低速走行領域では、自車両の姿勢を安定化させるために、ステアリング40を激しく左右に動かすことが多い。また、ペダル124を激しく漕いで自転車を高速で走らせる等、車速値が高速走行領域では、ペダル124を漕ぐときの反動でステアリング40も左右に操舵されることになる。このような場合に、背景画像もステアリング40の操舵に合わせて激しく左右に動くと、運転者の視点が定まらなくなり、画面酔いを引き起こすおそれがある。そこで、この第2設定方法では、第1設定方法の演算式(1)に車速値に依存した係数Cvを考慮して旋回角度を求める。
車速値に対する係数Cvの変化、すなわち、係数マップ250の特性は、例えば図8に示すように、車速値0km/h以上、4km/h未満の低速走行領域では、0.2から1.0に急峻に立ち上がる特性とされ、車速値4km/h以上、10km/h未満の通常走行領域では、該領域にわたって1.0の一定の特性とされ、車速値10km/h以上、22km/h未満の高速走行領域では、1.0から0.6に緩やかに立ち下がる特性とされ、22km/h以上の超高速走行領域では、0.6の一定の特性とされている。なお、通常走行領域での旋回角度は、実質的に演算式(1)で求められる旋回角度と同じになる。
従って、低速走行領域での旋回角度は、通常走行領域の場合と比べて、低速であればあるほど小さくなる。同様に、高速走行領域での旋回角度も、通常走行領域の場合と比べて、高速であればあるほど小さくなる。
係数マップ250は、メモリ236に、車速値と係数とを対応させて記憶されている。従って、現在の車速値に対応する係数Cvを取得する場合は、係数マップ250に配列された複数のレコードのうち、現在の車速値と同じ車速値、あるいは最も近い車速値が登録されたレコードを検索し、検索したレコードに格納された係数Cvを読み出すことにより得られる。
なお、係数マップ250において、車速値における低速走行領域の上限(あるいは通常走行領域の下限)、通常走行領域の上限(あるいは高速走行領域の下限)、高速走行領域の上限(あるいは超高速走行領域の下限)、並びに、低速走行領域の下限における係数、高速走行領域の上限(あるいは高速走行領域の下限)における係数は、使用するシミュレーション装置の規模や、模型自転車12のサイズ等に応じて適宜設定することができる。
そして、第2設定方法においては、現在の車速値に基づく係数Cvを係数マップ250から読み出して、該読み出した係数Cvを、上述した第1設定方法の演算式(1)に乗算することによって旋回角度を求める。
この第2設定方法を採用することで、低速走行領域において、自車両の姿勢を安定化させるために、ステアリング40を激しく左右に動かしても、旋回角度は、演算式(1)で求めた旋回角度よりも小さくなることから、背景画像がステアリング40の操舵に合わせて激しく左右に動くことがなくなり、画面酔いを防止することができる。また、高速走行領域や超高速走行領域において、ペダル124を激しく漕ぐことによる反動で、ステアリング40が左右に激しく動くことになっても、旋回角度は、演算式(1)で求めた旋回角度よりも小さくなることから、背景画像がステアリング40の操舵に合わせて激しく左右に動くことがなくなり、画面酔いを防止することができる。
なお、自車両を漕ぎ出した後、車速値が例えば4〜10km/hの通常走行領域となった場合は、運転者は余裕を持って運転している状況にあることから、旋回角度を、演算式(1)で求められる旋回角度と同じにしても、低速走行領域や高速走行領域のような不都合(画面酔いの誘発)は生じない。
車速表示部234は、第4レジスタR4に格納された車速値をモニタ200に表示する。このとき、スピードメーターの画像が表示されていれば、スピードを示す指標をアナログ表示形式で、車速値に応じた回転角だけ回転させて表示し、あるいは車速値が示す数値を表示する。もちろん、スピードメーターの画像が表示されていなくても、モニタ200の画面のコーナー部に車速値を示す数値を表示するようにしてもよい。これによって、使用者は現在の車速を一目で認識することができ、車速に応じて背景画像が変化していく模様を体験することができる。
次に、本実施の形態に係る自転車シミュレーション装置10の動作、すなわち、模擬運転動作について図9〜図12Bを参照しながら説明する。
模擬運転に当たっては、モニタ200に、練習コース(自転車で仮想の街中を走行するコース)、難易度の設定、ケーススタディコース(危険予知、回避の練習をガイダンスを受けながら練習するコース)、自転車に関するクイズ等が選択するための選択画面が表示され、使用者は該当する項目を選択する。そして、模擬運転は、選択された項目に従って練習コースの画面、ケーススタディコースの画面、クイズの画面を表示する。使用者は表示された画面やガイダンスに従って模型自転車12を操作していくことになる。
先ず、図9のステップS1において、ステアリング40の中立点を設定する。中立点設定部240は、モニタ200に、ステアリング40を右方向及び左方向にそれぞれ第1ストッパ100及び第2ストッパ102に当たるまで回すことを要請するガイダンスを表示する。その後、中立点設定部240は、それぞれ第1ストッパ100及び第2ストッパ102に当たったときの2つの舵角(電圧値)を取得し、これら2つの電圧値の中間値をステアリング40の回動中心(中立点)として設定する。
その後、ステップS2において、右方向及び左方向の最大旋回角度を設定する。最大旋回角度設定部244は、上述のステップS1で取得した2つの電圧値のうち、右方向の電圧値を、設定された中立点(電圧値)を原点とした最大入力舵角値に変換し、この最大入力舵角値を右方向の最大旋回角度値とする。また、この右方向の最大旋回角度値に負符号を付して左方向の最大旋回角度値とする。
その後、ステップS3において自車両(使用者が操作する自転車)の挙動演算処理が行われ、ステップS4において他車両の挙動演算処理が行われ、ステップS5においてガイダンス処理が行われる。その後、ステップS6において終了要求(終了ボタンの操作、電源断等)があるか否かが判別され、終了要求でなければステップS3以降の処理が繰り返される。
ここで、ステップS3における自車両の挙動演算処理を図10及び図11に基づいて説明する。先ず、図10のステップS101〜ステップS109(又はステップS111)にかけて、自車両の車速値が設定され、図11のステップS112〜ステップS114(又はステップS117)にかけて自車両の旋回角度が設定される。
すなわち、図10のステップS101において、加速度補正部224は、第4レジスタR4から速度値v(初期値=0)を読み出す。その後、ステップS102において、加速度補正部224は、速度値vが所定値未満であるか否かを判別する。通常、加速度は停止状態から走行状態に移る過程や低速時において高くなる。そこで、速度が低速であるかどうかを判別する。本実施の形態では、所定値として例えば5km/hに設定してある。もちろん、実施される用途に応じて適宜変更してもよい。
加速度補正部224は、前記速度値が所定値未満であれば、ステップS103において、第5レジスタR5(図6参照)に第1補正係数haを格納し、前記速度値が所定値以上であれば、ステップS104において、第5レジスタR5に第2補正係数hbを格納する。第1補正係数haと第2補正係数hbとの大小関係は、第1補正係数ha及び第2補正係数hbは共に1より大きい値であって、第1補正係数ha>第2補正係数hbであり、本実施の形態では、ha=hb×3とした。もちろん、実施される用途に応じて適宜変更してもよい。
その後、ステップS105において、加速度演算部222は、回転速度センサ210からの検出値に基づいて加速度値αを演算する。具体的には、まず、回転速度センサ210からの検出値に基づいて現在の速度値=I/kを演算する。ここで、Iは回転速度センサ210からの検出値、kは使用者の年齢に応じた係数である。係数kは、年齢が高くなるに従って小さくなるように設定される。得られた現在の速度値からステップS101にて読み出した速度値vを差し引いた値を加速度値αとする。得られた加速度値αを第1レジスタR1に格納する。加速度値αを上述のように演算するので、制御装置20は、現在のフライホイール130の回転数を加速度として認識することになる。
ステップS106において、加速度補正部224は、第1レジスタR1に格納された加速度値αに、第5レジスタR5に格納された補正係数(第1補正係数ha又は第2補正係数hb)を乗算して補正加速度値βを得、該補正加速度値βを第2レジスタR2に格納する。
つまり、ステップS105及びステップS106において以下の演算が行われる。
補正加速度値β={(I/k)−v}×z
その後、ステップS107以降において、車速値の演算が行われる。具体的には、ステップS107〜ステップS109での第1演算手法又はステップS110及びS111での第2演算手法によって車速値の演算が行われる。
すなわち、第1演算手法では、ステップS107において、車速演算部228は、第2レジスタR2に格納された補正加速度値βを積分して速度値を求める。その後、ステップS108において、車速演算部228は、ブレーキレバー208の操作に基づくブレーキセンサ206からのブレーキ入力値に基づいて減速値を演算し、前記速度値から減速値を差し引いて暫定の車速値を求める。その後、ステップS109において、暫定の車速値に応じた走行抵抗分の車速減少分を、暫定の車速値から減算して、車速値として確定させ、該確定した車速値を第4レジスタR4に格納する。ここでは、フライホイール130の回転数を加速度に見立てて、該加速度を積分した値から車速値を求めるようにしているため、フライホイール130の回転数の急増、急減に対して、車速値の変化が緩やかになる。
一方、第2演算手法では、ステップS110において、加減速度演算部226は、第2レジスタR2に格納された補正加速度値βに、ブレーキ操作による減速度Da(前輪ブレーキによる減速度Daf+後輪ブレーキによる減速度Dar)、走行斜面による加減速度Db、転がり抵抗Dc、空気抵抗Ddを反映させて現在の加減速度γを演算し、第3レジスタR3に格納する。
前輪ブレーキによる減速度の特性、すなわち、前輪ブレーキレバー106の操作量(ストローク量)に対する減速度の変化は図12Aの実線Lafに示す特性となる。従って、前輪ブレーキによる減速度Dafは、以下の演算式(3)に基づいて求めることができる。
Daf=f×m ……(3)
ここで、fは、使用者による前輪ブレーキレバー106の操作量に応じた値(0〜1の値)であり、mは、前輪ブレーキ限界制動力に基づく値(定数)である。
後輪ブレーキによる減速度の特性、すなわち、後輪ブレーキレバー110の操作量(ストローク量)に対する減速度の変化は図12Aの破線Larに示す特性となる。従って、後輪ブレーキによる減速度Darは、以下の演算式(4)に基づいて求めることができる。
Dar=r×n ……(4)
ここで、rは、使用者による後輪ブレーキレバー110の操作量に応じた値(0〜1の値)であり、nは、後輪ブレーキ限界制動力に基づく値(定数)である。
走行斜面による加減速度Dbは、以下の演算式(5)に基づいて求められる。
Db=sinθ ……(5)
ここで、θは、背景画像上での自車両が走行している斜面(坂道)の斜面角度であり、以下のようにして得ることができる。例えば用意された複数の背景画像情報238にそれぞれ対応した複数の坂道情報テーブル252(図6参照)をメモリ236に記憶しておく。各坂道情報テーブル252には、対応する背景画像情報238に設定された坂道の三次元座標と坂道の斜面角度とが対応して登録されている。そして、背景画像表示部232から現在のカメラ視点の三次元座標を受け取り、現在の表示されている背景画像情報238に対応した坂道情報テーブル252に登録されている坂道の三次元座標とを対比して、現在のカメラ視点が坂道に位置している場合は、該坂道の傾斜角度を読み出して傾斜角度θとし、現在のカメラ視点が坂道に位置していない場合は、傾斜角度θを0とする。
転がり抵抗Dcは、一定値としている。
空気抵抗の特性、すなわち、速度に対する空気抵抗の変化は図12Bの実線Ldに示す特性となる。従って、空気抵抗Ddは、以下の演算式(6)に基づいて求めることができる。
Dd=v×v×0.0001 ……(6)
本来、空気抵抗は、(1/2)×v2×前面投影面積×空気密度×空気抵抗係数で求められるが、この実施の形態では、演算を容易にするために、現在の速度値v以外の項を一定値(=0.0001)とした。もちろん、本来の演算式に基づいて空気抵抗Ddを求めてもよい。
ステップS111において、車速演算部228は、第3レジスタR3に格納された加減速度値γを積分し、その積分値を車速値として第4レジスタR4に格納する。
次に、図11のステップS112において、入力舵角変換部242は、舵角センサ64から入力される電圧値(検出値)を、入力舵角値に変換する。
ステップS113において、旋回角度演算部246は、入力舵角値が予め設定された不感帯Whの範囲内にあるか否かを判別する。
入力舵角値が不感帯Wh内にあれば、次のステップS114に進み、旋回角度値を0°に設定して、該旋回角度値を第6レジスタR6に格納する。
一方、ステップS113において、入力舵角値が不感帯Wh外であると判別された場合は、ステップS115以降の処理に進み、旋回角度演算部246は、上述した第2設定方法による旋回角度値の設定を行う。もちろん、第1設定方法によって旋回角度値を設定してもよい。
すなわち、ステップS115において、係数Cvを求める。図10のステップS109又はステップS111にて求められた車速値(第4レジスタに格納されている)と、メモリ236に登録された係数マップ250とに基づいて、今回の車速値に対応した係数Cvを求める。
その後、ステップS116において、演算式(2)における傾きkを求める。これは、図9のステップS2にて設定された最大旋回角度Mmと不感帯Whの最大入力舵角値Dzとに基づいて求められる。
そして、ステップS117において、今回の入力舵角値と、ステップS115にて得られた係数Cvと、ステップS116にて得られた傾きkとに基づいて、演算式(2)を演算して、今回の旋回角度値を求め、第6レジスタR6に格納する。
上述のステップS114での処理又はステップS117での処理が終了した段階で、次のステップS118に進み、背景画像表示部232は、メモリ236に記憶された複数の背景画像情報238のうち、選択されたコースに対応した背景画像情報238を、メモリ236から読み出してモニタ200に表示する。このとき、背景画像表示部232は、背景画像情報238を、今回の車速値及び旋回角度値によって三次元座標が設定されたカメラ視点に基づいてモニタ200に表示する。
図9のステップS5におけるガイダンス処理は、危険回避等のガイダンスを表示したり、音声出力するものであって、例えば背景画像上での自車両が赤信号で停止している状態で、青信号に切り替わらないうちから走行しようとしたとき、モニタ200には停止を促す内容を意味する文章がガイダンスとして表示され、また、音声出力されることとなる。
そして、上述したステップS6において、終了要求があると判別された場合、この自転車シミュレーション装置10での処理が終了する。
このように、本実施の形態に係る自転車シミュレーション装置10においては、ヨーレートを用いないことで、ステアリング操作に応じた背景画像(映像)の旋回の表示を、ステアリング操作に遅れずに表示することができ、モニタ200に表示された背景画像(映像)を見ながら操作する使用者に対して違和感を生じさせることを極力なくすことができる。また、ヨーレートを用いた場合、単位時間を測定するためのクロック計時手段や、単位時間毎にサンプリングされた角度データを保存しておくためのメモリが新たに必要になるが、本実施の形態では、ヨーレートを用いないため、制御装置20に新たなメモリを設置する必要がなく、その結果、制御装置20に組み込まれる各機能部のうち、ステアリング40に関わる機能部については廉価にできる。そのため、その他の機能部、例えばフライホイール制御等の機能部を充実させることができ、これにより、全体的な信頼性を高めることが可能となる。しかも、本実施の形態では、ステアリング40の回動中心を基準として不感帯Whを設けたことにより、意図しない背景画像の旋回表示をなくすことができ、安定した例えば直進走行の映像を表示することができる。
また、入力舵角の最大入力舵角(絶対値)|Am|を、背景画像の旋回角度の最大旋回角度(絶対値)|Mm|と一点のみで等しくしたことにより、入力舵角と背景画像の旋回角度との関係を、線形に変化する一次関数にすることができ、ステアリング操作に応じた背景画像の旋回表示を、違和感なく表示させることができる。
特に、演算式(2)にて旋回角度を算出することによって、低速走行領域(例えば漕ぎ始め)においては、通常走行領域と比べて入力舵角に対する背景画像の旋回角度が小さくなることから、発進時におけるふらつきから画面酔いを防止することができる。同様に、高速走行領域においては、通常走行領域と比べて入力舵角に対する映像の旋回角度が小さくなることから、ペダル124を激しく漕ぐことによる反動で、ステアリング操作が大きくなっても、背景画像の旋回角度を小さくすることができ、画面酔いを防止することができる。
上述した演算式(2)では、入力舵角|A(x)|から不感帯Whの最大入力舵角|Dz|を差し引いた値に、入力舵角の変化に対する旋回角度の変化を示す傾きkと模型自転車12の背景画像上での車速に依存した係数Cvとを乗算するという単純な算出法で、ステアリング操作をリニアに背景画像の旋回表示に反映させることができる。しかも、係数Cvを予め設定された係数マップ250から算出して、上述の背景画像の旋回表示を行うようにしたので、車速を考慮した映像の旋回角度の変化を廉価な構成で実現させることができる。
上述した演算式(2)を用いて旋回角度を算出することで、通常走行領域においては、車速が考慮されないため、入力舵角と映像の旋回角度との関係を、線形に変化する一次関数にすることができ、ステアリング操作に応じた映像の旋回表示を、違和感なく表示させることができる。また、通常走行領域以外では、通常走行領域の場合よりも、映像の旋回角度が小さくなることから、画面酔いを防止することができる。
さらに、本実施の形態では、ステアリング40の回動操作が第1ストッパ100にて規制された時点での舵角センサ64の値(最大値)と、ステアリング40の回動操作が第2ストッパ102にて規制された時点での舵角センサ64の値(最小値)との中間値を、ステアリング40の回動中心に対応した値としたので、ステアリング40の回動中心(中立点:ゼロ点)を容易に設定することができる。
また、ステアリングステム74の下端に設けられた第2回転軸96(ピン)を舵角センサ64の中心孔64aに挿入し、ステアリングステム74の回動に伴って舵角センサ64に挿入された第2回転軸96が回動することで、ステアリング40の舵角を検出するようにしたので、ステアリング40の回動を遅滞なく舵角センサ64に伝達することができ、ステアリング40の舵角を高精度に検出することができる。
また、本実施の形態に係る自転車シミュレーション装置10においては、回転速度センサ210からの検出値に基づいて加速度を演算し、得られた加速度を検出値に基づいて補正して補正加速度とし、第1演算方式では、得られた補正加速度に基づいて車速を演算し、第2演算方式では、得られた補正加速度にブレーキ操作による減速度、走行斜面による加減速度、転がり抵抗、空気抵抗を反映させた現在の加減速度を演算し、この加減速度に基づいて車速を演算するようにしたので、現在の車速に応じた加速度を得ることが可能となり、実際に自転車を走行する場合と同様の走行感を疑似体験させることができる。しかも、専用の負荷抵抗発生装置を別途取り付ける必要がないため、自転車シミュレーション装置10体の小型化をも図ることができる。
また、本実施の形態では、回転速度センサ210からの検出値を積分した値に対し、1以上の補正係数を乗算した値を車両の速度として演算し、補正係数を、車速が小さいときには大きな値に設定し、車速が大きくなると小さな値に設定するようにしたので、使用者がペダル124を漕ぎ出した低速時には、車速を補正係数(1以上の値)により大きな値にして素早くスピードが上がるような疑似走行画像が表示されることとなり、また、車速が上がるにつれて、補正係数が小さくなるので、車速が上がりすぎてしまうことがない。すなわち、図13に示すように、車速(実線Sa参照)は、漕ぎ出し時においては、フライホイール130の回転速度(実線Sb参照)とほぼ同じように、ペダル124への踏み込みに対して直接的に車速が上がっていき、走り出し後は、フライホイール130の回転速度が一定となった後においても、車速が徐々に加速していく特性を得ることができる。従って、例えばペダル124の漕ぎ出し時と走り出し後において、実車に近い感覚を使用者に与えることができる。
また、本実施の形態では、回転速度センサ210からの検出値に基づいて加速度を演算し、予め設定された速度しきい値と検出値とを比較し、その比較結果に応じて加速度を補正するようにしたので、加速度を補正する演算が簡単になり、制御装置20への演算負荷を低減することができる。
また、本実施の形態では、加速度に補正係数を乗算することで加速度を補正し、検出値が所定値(速度しきい値)未満の場合に補正係数として第1補正係数haを用い、検出値が速度しきい値以上の場合に補正係数として第2補正係数hbを用い、第1補正係数ha>第2補正係数hbの関係を有するようにしたので、補正係数を、漕ぎ出し時には大きく、走り出し後はそれより小さくすることができ、漕ぎ出し時においては、ペダル124への踏み込みに対して直接的に車速が上がっていく感覚となり、走り出し後は徐々に加速していく感覚となる。つまり、車両の停止状態から走行状態に移る過程や低速時において加速度が高くなるという現実に近い走行感を使用者に与えることができる。
また、本実施の形態では、得られた補正加速度にブレーキ操作による減速度、走行斜面による加減速度、転がり抵抗、空気抵抗を反映させた現在の加減速度を演算し、この加減速度を積分した値を車両の速度としたので(第2演算方式)、使用者によるブレーキ操作や坂道の斜面効果、空気抵抗等による影響を車速に反映させることが可能となり、より現実に近い走行感を使用者に与えることができる。
また、本実施の形態では、加速度演算部222での処理から、加速度補正部224での処理、加減速度演算部226での処理にわたる一連の処理を繰り返すことで順次前記補正加速度を求めるように制御したので、モニタ200に三次元画像情報による背景画像を表示している場合に、カメラ視点の背景画像上での三次元座標を刻々と変化させることができ、モニタ200に、自転車に乗った使用者があたかも街中を走行しているような動画像を表示させることが可能となる。
また、本実施の形態では、車速演算部228にて得られた車速をモニタ200に表示するようにしたので、使用者は現在の車速を一目で認識することができ、車速に応じて背景画像が変化していく模様を体験することができる。
上述の例では、フライホイール130の外周面に接して従動回転するローラ134を有するペダル負荷調整機構136を取り付けて、フライホイール130の回転抵抗を調整することによって、ペダル124の回転に必要な踏力(ペダル負荷)の変更を可能にしたが、その他、発電機によって、運転者のペダリングに応じた負荷を発生させる負荷ユニット300を用いるようにしてもよい。具体的に、負荷ユニット300の構成について図14〜図17を参照しながら説明する。
負荷ユニット300には、図14に示すように、クランク軸120(回転体)及び発電機302が設けられている。図15に示すように、クランク軸120の回転を伝える動力伝達部として、クランク軸120と平行な第1中間軸304、第2中間軸306及び発電機軸308が設けられており、各軸はそれぞれベアリングで軸支されている。クランク軸120には一方向クラッチ310を介して第1駆動ギア312aが設けられている。
第1中間軸304には、第1駆動ギア312aと噛合して増速回転される第1従動ギア312bと、第2中間軸306に回転を伝える第2駆動ギア314aとが設けられている。第2中間軸306には、第2駆動ギア314aと噛合して増速回転される第2従動ギア314bと、発電機軸308に回転を伝える第3駆動ギア316aとが設けられている。発電機軸308には、第3駆動ギア316aと噛合して増速回転される第3従動ギア316bと、発電機302とが設けられている。
クランク軸120の回転は、一方向クラッチ310の作用により、正方向の回転駆動力のみが第1中間軸304に伝達される。従って、クランク軸120が逆方向に回転する場合、又は発電機軸308が慣性により一方向に回転している最中にクランク軸120の回転を停止又は減速させた場合には、発電機軸308はクランク軸120と無関係にその時点の回転状態(一方向への回転又は停止)が維持される。
これにより、ペダリングを減速、停止又は逆回転させたときに、第1中間軸304、第2中間軸306及び発電機軸308の慣性力によってペダル124、124が強制的に回転させられることが防止される。また、ペダル124、124を逆方向に回転させる場合には、発電機軸308による負荷や第1中間軸304、第2中間軸306及び発電機軸308の慣性力がなく、極めて軽く回転可能となる。このような特性は、実際の自転車と同様であって現実感が高い。
なお、第3従動ギア316bの近傍には、正面を通過する第3従動ギア316bの歯を検出する速度ピックアップ318が設けられている。発電機軸308は、実際の自転車における後輪に相当し、回転速度センサ210において、速度ピックアップ318の検出信号に基づいて発電機軸308の回転速度を検出することにより、模型自転車12の疑似的な速度が制御装置20において算出される。
発電機302は、汎用の直流モータが発電用に用いられている。図16に示すように、発電機302のプラス端子320a及びマイナス端子320b(図14参照)はコネクタ322を介してコンデンサ制御回路324に接続されている。プラス端子320a及びマイナス端子320bは、プラスライン326及びマイナスライン328と導通している。プラスライン326は大容量コンデンサ330を介してグランドGに接続され、マイナスライン328は直接的にグランドGに接続されている。つまり、プラス端子320aとマイナス端子320bとの間に大容量コンデンサ330が接続されている。このように、コンデンサ制御回路324は、プログラム動作する部分がなく、しかも、部品点数が少なく、簡便、且つ、廉価な回路である。
コンデンサ制御回路324を負荷制御部として用いる場合には、図17に示すように、漕ぎ出し時の時刻t0においては大容量コンデンサ330は放電されており、充電電圧Vcは略0であって大電流が通電可能である。従って、時刻t0においてペダル124、124に発生する負荷Lは大きい。ペダル124、124を漕ぎ始めると充電電圧Vcは一次遅れ応答の波形で上昇し、漕ぐ力が一定であるときには、次第に一定値に収束する。このとき、負荷Lは充電電圧Vcと同じ波形に沿って減少し、ペダル124、124は軽く感じられるようになる。すなわち、コンデンサ制御回路324によれば、実際の自転車と同様に、漕ぎ出しの加速時にはペダル124、124が重く感じられ、加速するにともなって次第にペダル124、124が軽く感じられるようになり、より現実感が得られる。
また、ペダル124、124を漕ぐことを停止した時刻t1以降は、大容量コンデンサ330に充電された電力は、発電機302内のコイルに流れ込んで次第に放電する。この放電にともなって、充電電圧Vcは減少し、再びペダル124、124を漕ぎ始めるときの負荷Lが大きくなる。
なお、図17における負荷Lの軸は上方が小となるように設定している。また、充電電圧Vcを計測して定数倍し、模擬的な走行速度Vとして用いてもよい。
このように、発電機302と大容量コンデンサ330とを用いることで、自転車の漕ぎ始めにおいては、ペダル124の負荷が重く、自転車の速度が上がるにつれて段階的にペダル124の負荷が軽減することとなり、実際の自転車を操作している感覚を得ることができる。この場合、実際の自転車と同様に、低速走行領域において、自車両の姿勢を安定化させるために、ステアリング40を激しく左右に動かすことが多くなることから、入力舵角に対して旋回角度を小さくするという演算式(2)による処理を行うことで、このような低速走行領域での画面酔いを有効に防止することが可能となる。つまり、発電機302と大容量コンデンサ330を用いた制御を採用することにより、上述した演算式(2)によって算出した旋回角度による効果をさらに際立たせることができる。
なお、本発明に係る自転車シミュレーション装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
例えば上述した自転車シミュレーション装置10の第1の設定方法では、図7に示すように、入力舵角の最大入力舵角(絶対値)|Am|を、背景画像の旋回角度の最大旋回角度(絶対値)|Mm|と一点のみで等しくし、不感帯Whを除く入力舵角と背景画像の旋回角度との関係を一次関数としたが、その他、例えば図18に示すように、不感帯Whを除く入力舵角と背景画像の旋回角度との関係を曲線(Ta1、Ta2、Tb1、Tb2参照)にしてもよい。曲線としては、二次曲線や三次曲線等のほか、円弧を含む。また、図19に示すように、所定の入力角度(絶対値)|Aa|(不感帯Whの最大入力舵角(絶対値)|Dz|より大きく、最大入力舵角(絶対値)|Am|よりも小さい)以上になると、T0(破線)と等しくなるようにしてもよい。この場合、不感帯Whの最大入力舵角|Dz|から所定の入力舵角|Aa|にかけて、入力舵角と背景画像の旋回角度との関係を、一次関数(Tc、Td参照)にしてもよいし、曲線(Tc1、Tc2、Td1、Td2参照)にしてもよい。