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JP5319203B2 - 除電器 - Google Patents

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JP5319203B2 JP2008210735A JP2008210735A JP5319203B2 JP 5319203 B2 JP5319203 B2 JP 5319203B2 JP 2008210735 A JP2008210735 A JP 2008210735A JP 2008210735 A JP2008210735 A JP 2008210735A JP 5319203 B2 JP5319203 B2 JP 5319203B2
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Description

本発明は、放電電極からイオンを放出し、ガスをイオン化ガスとして除電対象物に向けて吐出して当てることによって除電対象物を除電する除電器に関する。
従来、クリーンルーム等で空気中の帯電防止又は除電対象物の除電に用いられる除電器では、高電圧を放電電極に印加してコロナ放電させることによって空気イオンを発生し、発生した空気イオンを除電対象物等に当てることによって除電する。空気イオンは帯電しているので、空気中に浮遊している埃、塵等の異物も帯電しやすく、その結果として放電電極に周囲の埃、塵等の異物が付着しやすい。
斯かる除電器をクリーンルーム内で使用する場合であっても、クリーンルーム内にはわずかな塵等の異物が存在する。したがって、上述した原理と同様の原理によって、放電電極の先端部分に帯電した異物が付着するという問題があった。放電電極に異物が付着した場合、除電速度は大きく低下し、また付着した塵等が纏まって落下する等、クリーンルームの環境維持を困難にするおそれがあるという問題もあった。
斯かる問題を解決するために、例えば特許文献1では、放電電極の先端部分がノズルの先端よりも内部に一定距離(1mm以内)没入するようにしている空気イオン化装置が開示されている。シースガスの速度は、ノズルの先端部分近傍に気流の巻き込みを生じさせることのない速度(1.0m/s以上)である。
シースガスが負性気体分子を含まない場合、発生した電子群がシースガスとともにノズルの外部に放出され、シースガスが負性気体分子を含む場合には、発生したイオンが外部に放出される。また放電電極に高電圧が印加された場合、放電電極の先端部分にイオン風が発生し、ノズルから噴流が発生するが、シースガスの速度が1.0m/s以上の場合、噴流によって生じる誘引流でノズルの先端部分近傍に気流の巻き込みを生じることなく、シースガスによる充分なシール効果を得ることができる。
また特許文献2では、放電電極の先端と同軸のクリーンガス吐出口を通じて吐出するクリーンガスにより、雰囲気エアを巻き込みながらイオン化エアを生成するイオン化装置が開示されている。放電電極の周囲は、従来のノズルが存在しない実質的に開放した状態となっており、ノズルが同極に帯電することに伴う放電電極の周囲での電界の緩和が発生せず、イオン発生量の低下を防止することができる。また、クリーンガスが放電電極の先端に沿って流れることによって、先端への異物の付着を防止することができる。
放電電極の先端はクリーンガス吐出口からクリーンガスの吐出方向に突出させることにより、放電電極の先端をクリーンガス吐出口の中に配置させた場合と比べ、イオン化エア生成量を多くすることができる。そして特許文献2には、クリーンガス吐出口から突出する放電電極の先端の突出量は、放電電極の汚染防止の観点と、イオン化エアの生成量の観点とのバランスで決定されると記載されている。
特開平9−17593号公報 特開2006−40860号公報
上述した特許文献1に開示されている空気イオン化装置では、シースガスの速度が1.0m/s程度でガスがゆっくり流出するため、異物の付着を減少することはできるが、除電速度も低くなり、充分な除電効果を得ることができないという問題があった。上述した特許文献2に開示されているイオン化装置では、雰囲気エアを放電電極側に巻き込んで除電対象物までイオンを届けるため、雰囲気エアを巻き込んだ場合に塵等が放電電極の先端部分に衝突して付着するおそれがあった。また、放電電極の先端の突出量は、放電電極の汚染防止とイオン化エア生成量とのバランスで決定されると記載されているように、放電電極の汚染防止効果と、充分なイオン化エア生成量による高い除電速度での充分な除電効果とをともに増大することはできないという問題があった。
除電器では、充分なイオン化エア生成量によって高い除電速度で充分な除電効果を得ることは必須であると同時に、放電電極の先端への異物の付着を防止する必要もある。放電電極の先端に異物が付着すると、イオン発生量が低下して充分なイオン化エアが生成されず、除電速度が遅くなって充分な除電効果が得られないからである。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、放電電極の先端部分への異物の付着を防止することができるとともに、高い除電速度で充分な除電効果を得ることができる除電器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために第1発明に係る除電器は、高電圧の印加によってコロナ放電させてイオンを放出する放電電極と、供給されたガスを放出されたイオンとともに吐出する吐出口と、供給されたガスを前記吐出口へ誘導するガス流路とを有するノズルを備え、複数の前記ノズルが、筐体の長手方向の一面にて、長手方向に沿って所定間隔で配設されたバータイプの除電器において、前記放電電極は前記ノズルの中心に配設し、先端部分が円錐形状に形成され、該先端部分にてコロナ放電するようにしてあり、前記ガス流路は、前記放電電極を取り囲むように形成されており、流路面積が漸次小さくなるように絞り込むスロート部を備え、該スロート部は、前記流路面積が最小となるスロート面を有し、前記放電電極の前記先端部分は、前記スロート面よりも前記吐出口側へ突出しており、前記ガス流路へガスを供給するガス供給口を備え、該ガス供給口にてガスを絞り込むようにしてあり、共通のメインガス供給通路から、それぞれの前記ノズルの前記ガス流路へガスが供給され、前記吐出口から吐出した直後のガスの流速が音速を超え、かつ該吐出口でのガス圧が大気圧以上となるようにしてあることを特徴とする。
また、第発明に係る除電器は、第発明において、前記流路面積は前記吐出口にて最小となるようにしてあることを特徴とする。
また、第発明に係る除電器は、第発明において、前記スロート部は、前記放電電極の配設位置を変動させることにより、前記スロート面の流路面積と前記吐出口の流路面積との比率を調整するようにしてあることを特徴とする。
また、第発明に係る除電器は、第1発明において、前記ガス供給口の手前におけるガス圧に対する大気圧の比率が0.528以下となるようにしてあることを特徴とする。
また、第発明に係る除電器は、第又は第発明において、前記スロート部の手前であって前記流路面積が変動しない部分におけるガス圧に対する大気圧の比率が0.528以下となるようにしてあることを特徴とする。
第1発明では、高電圧の印加によってコロナ放電させてイオンを放出する放電電極と、供給されたガスを放出されたイオンとともに吐出する吐出口と、供給されたガスを前記吐出口へ誘導するガス流路とを有するノズルを備え、複数のノズルが、筐体の長手方向の一面にて、長手方向に沿って所定間隔で配設されたバータイプの除電器により、共通のメインガス供給通路から、それぞれのノズルのガス流路へガスが供給され、ガス流路から供給されたガスを吐出口からイオン化ガスとして除電対象物に向けて吐出する。放電電極に正又は負の高電圧を印加し、該放電電極の先端部分の周囲にイオンを発生し、吐出口からガスをイオン化ガスとして除電対象物に向けて吐出する。吐出口から吐出した直後のガスの流速が音速を超え、かつ該吐出口でのガス圧が大気圧以上になるようにガスを供給することにより、吐出口から吐出するガスをいわゆる最適膨張又は不足膨張にすることができるので、イオンを放出する放電電極の先端部分に異物が付着することを防止することができるとともに、速やかに充分なイオン化ガスを除電対象物に当てることができ、高い除電速度で充分な除電効果を得ることが可能となる。
ここで、最適膨張とは、吐出口から吐出した直後のガスの流速が音速を超え、吐出口でのガス圧と大気圧とが等しい場合に、吐出口から吐出したガスの吐出領域面積が、吐出口の開口面積と等しくなる膨張形態である。不足膨張とは、吐出口から吐出した直後のガスの流速が音速を超え、吐出口でのガス圧が大気圧より高い場合に、吐出口から吐出したガスの吐出領域面積が、吐出口の開口面積より大きくなる膨張形態である。なお、不足膨張では吐出口手前でガスの膨張が抑えられて吐出後に膨張するので、吐出口手前ではガスの膨張が不足している状態と考えて、不足膨張と呼ばれている。
また、放電電極がノズルの中心に配設してあり、ガス流路が、放電電極を取り囲むように形成されていることにより、イオンを放出する放電電極が偏心していないので、外部から混入する異物との距離が一定となるようにすることができ、異物が付着する可能性をより低減することができる。
さらに、ガス流路にガスを供給するガス供給口を備え、ガス供給口にてガスを絞り込むことにより、ガス供給口の手前におけるガス圧に対する大気圧の比率が0.528以下となるようにして、吐出口から吐出した直後のガスの流速が音速を超え、吐出口でのガス圧が大気圧以上となるようにすることで、最適膨張又は不足膨張にすることが可能となる。
そのうえ、ガス流路は、流路面積が漸次小さくなるように絞り込むスロート部を備えることにより、スロート部の手前であって流路面積が変動しない部分におけるガス圧に対する大気圧の比率が0.528以下となるようにして、吐出口から吐出した直後のガスの流速が音速を超え、吐出口でのガス圧が大気圧以上となるようにすることで、最適膨張又は不足膨張にすることが可能となる。特に、流路面積が最小となる面(スロート面)を吐出口近傍に設け、スロート面から吐出口までの距離を0(ゼロ)に近づけ、かつスロート面の流路面積に対する吐出口の流路面積の比を1に近づけることにより、少ないガス流量で最適膨張又は不足膨張にすることが可能となる。さらに、放電電極の先端部分は、スロート面よりも吐出口側へ突出していることにより、放電電極の先端部分の周囲にイオンをより発生させやすくすることができ、吐出口からガスをイオン化ガスとして除電対象物に向けて吐出することができる。
発明では、流路面積は吐出口にて最小となることにより、ガス流路途中にスロート部を設けることなく、吐出口をスロート部とすることができる。そして、スロート部の手前であって流路面積が変動しない部分におけるガス圧に対する大気圧の比率が0.528以下となるようにして、吐出口から吐出した直後のガスの流速が音速を超え、吐出口でのガス圧が大気圧以上となるようにすることで、最適膨張又は不足膨張にすることが可能となる。
発明では、スロート部は、放電電極の配設位置を変動させることにより、スロート面の流路面積と吐出口の流路面積との比率を調整する。スロート部を放電電極の円錐形状の先端部分で吐出口近傍に設け、スロート面の流路面積と吐出口の流路面積との面積比率を1に近づけることによって、最適膨張になるガスの流速を小さくすることができるので、ガス流量を抑えることができる。またスロート面と吐出口との距離を0(ゼロ)に近づけることによって、低いガス圧で最適膨張にすることができる。例えば0.09MPa程度の圧力のガスを供給するだけで、吐出口から吐出するガスをいわゆる最適膨張形態又は不足膨張形態にすることができ、イオンを放出する放電電極の先端部分への異物の付着防止効果を高めることが可能となる。
発明では、ガス供給口の手前におけるガス圧に対する大気圧の比率が0.528以下となることにより、吐出口から吐出した直後のガスの流速が音速を超え、吐出口でのガス圧が大気圧以上となるようにすることで、最適膨張又は不足膨張にすることが可能となる。
発明では、スロート部の手前であって流路面積が変動しない部分におけるガス圧に対する大気圧の比率が0.528以下となることにより、吐出口から吐出した直後のガスの流速が音速を超え、吐出口でのガス圧が大気圧以上となるようにすることで、最適膨張又は不足膨張にすることが可能となる。
上記構成によれば、イオンを放出する放電電極の先端部分に異物が付着することを防止することができるとともに、速やかに充分なイオン化ガスを除電対象物に当てることができ、高い除電速度で充分な除電効果を得ることが可能となる。
また、放電電極がノズルの中心に配設してあり、ガス流路が、放電電極を取り囲むように形成されていることにより、イオンを放出する放電電極が偏心していないので、外部から混入する異物との距離が一定となるようにすることができ、異物が付着する可能性をより低減することができる。
さらに、ガス流路にガスを供給するガス供給口を備え、ガス供給口にてガスを絞り込むことにより、ガス流路内にスロート部を設けることなく、ガス供給口の手前におけるガス圧に対する大気圧の比率が0.528以下となるようにして、吐出口から吐出した直後のガスの流速が音速を超え、吐出口でのガス圧が大気圧以上となるようにすることで、最適膨張又は不足膨張にすることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態に係る除電器について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面を通じて、同一又は同様の構成又は機能を有する要素については、同一又は同様の符号を付して、重複する説明は省略する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る除電器の構成を模式的に示す斜視図である。図1に示すように本実施の形態1に係る除電器1は、略直方体で長手方向の角部が丸みを帯びた本体ケース2と、本体ケース2の一面に長手方向に沿って所定間隔で配設された複数(図1の例では4個)のノズル4、4、・・・とで構成されている、いわゆるバータイプの除電器1である。各ノズル4は、供給されたガスを後述する放電電極によって放出されたイオンとともに吐出する吐出口43を有する円盤状部分7を残して本体ケース2に埋め込まれている。本体ケース2の長手方向の端面には、空気、窒素ガス等を濾過したクリーンガスをノズル4へ供給するガス供給用ポート3が設けられている。エアユニット21(図6参照)は、本体ケース2の一部を構成しており、本体ケース2の下端開口を閉じている。また、本体ケース2の所定の位置に、図示しない高電圧ユニット、電気回路、CPU等で構成される制御ユニット等が配置されている。
図2は、本実施の形態1に係るノズル4の放電電極の軸を鉛直方向に見た正面図、吐出口の反対側から見た底面図及び側面図である。図2(a)は正面図を、図2(b)は底面図を、図2(c)は側面図を、それぞれ示している。図2(a)乃至(c)に示すように、ノズル4は、筒状部分6と円盤状部分7とで構成される。円盤状部分7は、筒状部分6の外径の倍程度の外径を有し、円盤状部分7の筒状部分6側には、円盤状部分7の外径と筒状部分6の外径との略中間の外径を有する筒状突起部分71がノズル4の本体ケース2への固着部分として形成されている。またノズル4は、高電圧の印加によってコロナ放電させてイオンを放出する放電電極41を有している。なお、図2の例では放電電極41が針電極である場合を示しており、放電電極41は筒状部分6及び円盤状部分7と同心に配置されている。
図3は、本実施の形態1に係るノズル4の斜視図である。図3(a)は斜め上から見た斜視図を、図3(b)は斜め下から見た斜視図を、それぞれ示している。図3(a)及び(b)に示すように、ノズル4の筒状部分6の周囲には、ノズル4を本体ケース2に嵌合して固定するための複数の突起61が設けられている。図4は、図2(c)に示す側面図のB−B断面図である。
図3(b)及び図4に示すように、筒状突起部分71は、円盤状部分7の下側に突き出して上面が閉じた筒状になっている。ノズル4は、筒状突起部分71の底面が本体ケース2と接する状態で、筒状突起部分71以外の円盤状部分7が本体ケース2から離れて本体ケース2に埋め込まれる。図4に示すように、ノズル4は、上述した放電電極41及び吐出口43の他、供給されたガスを吐出口43へ誘導するガス流路42を有する。
図5は、図2(b)に示す底面図のC−C断面図である。図5に示すように、ノズル4は、ガス流路42へガスを供給するガス供給口44を有する。図6は、図1に示す斜視図のA−A部分断面図である。図6に示すように、図1に示した本体ケース2のガス供給用ポート3へ供給されたガスは、矢印で示すように、本体ケース2内の長手方向に沿って設けられたメインガス供給通路31からノズル4内のガス流路441を経由してガス供給口44へ供給される。図7は、図4のD部分の拡大図である。
図4及び図7に示すように、放電電極41はノズル4の略中心に配設してあり、ガス流路42は、放電電極41を取り囲むように形成されている。イオンを放出する放電電極41が偏心していないので、万一外部から異物が混入した場合であっても、異物と放電電極41との距離は一定に維持されており、異物が付着する可能性を少しでも低減することができる。なお、放電電極41への電圧の印加方法としては、パルスAC、DC、AC、高周波AC、パルスDC等、種々の方法がある。
パルスACは、1本の放電電極に対して正の直流電圧と負の直流電圧とを交互に印加し、正のイオンと負のイオンとを交互に発生する。DCは、1本の放電電極に対して正又は負のみの直流電圧を印加し続け、正又は負のイオンのみを発生する。ACは、1本の放電電極に対して交流電圧を印加し、正のイオンと負のイオンとを交互に発生する。高周波ACは、ACと同様であるが、電圧の切替周期がACの1000倍程度速い点で相違する。パルスDCは、正の放電電極と負の放電電極とに交互に直流電圧を印加し、正の放電電極から正のイオンと負の放電電極から負のイオンとを交互に発生する。交流電圧より直流電圧を印加する方がイオン発生量が多くなり、1本の放電電極にて正及び負のイオンを交互に発生する場合にイオンバランスが良い。印加方法は特に限定されるものではないが、除電速度が速くイオンバランスが優れている点でパルスACで印加するのが好ましい。
図8は、パルスACにより電圧を印加する除電器1の電気回路の概要を示す回路図である。図8に示すように除電器1は、図示しない高電圧ユニットを構成する正側の高電圧発生回路100と負側の高電圧発生回路101とを有する。なお、高電圧ユニットは図示しない密閉ボックスの中に収容されている。正側の高電圧発生回路100は、トランス102の一次側コイルに接続された自励発振回路104と、二次側コイルに接続された昇圧回路106とを含む。負側の高電圧発生回路101は、トランス103の一次側コイルに接続された自励発振回路105と、二次側コイルに接続された昇圧回路107とを含む。昇圧回路106、107は、例えば倍整流回路からなる。
高電圧発生回路100、101と放電電極41との間には、保護抵抗(第1抵抗R1)が設けられている。トランス102、103の二次側コイルの接地端GNDと、フレームグランドFGとの間には、第2抵抗R2と第3抵抗R3とが直列に接続されている。対向電極プレート111とフレームグランドFGとの間には、第4抵抗R4と第3抵抗R3とが直列に接続されている。なお、対向電極プレート111は、本体ケース2の底面近傍の内部に埋め込まれている。
第4抵抗R4を流れる電流をイオン電流検知回路108で検出することにより、放電電極41の近傍のイオンバランスを知ることができる。第3抵抗R3を流れる電流をイオン電流検知回路108で検出することにより、除電対象物近傍のイオンバランスを知ることができる。なお、除電対象物は帯電した物体だけでなく、帯電した空気等も含む。第2抵抗R2を流れる電流を異常放電電流検知回路109で検出することにより、放電電極41と対向電極プレート111又はフレームグランドFGとの間の異常放電を検出することができ、制御ユニット14で異常放電と判別した場合、表示LED110を点灯して操作者に異常を知らせることができる。
図8に示すパルスACの電圧の印加方法では、正側の高電圧発生回路100と負側の高電圧発生回路101とで交互に高電圧を発生することにより、1本の放電電極41から正のイオンと負のイオンとを交互に発生する。具体的には、正側の高電圧発生回路100で正の高電圧を発生したとき、コロナ放電が起こり、放電電極41の先端部分の周辺にある空気の分子から電子を奪い取り、正のイオンを発生する。負側の高電圧発生回路101で負の高電圧を発生したとき、コロナ放電が起こり、放電電極41の先端部分から電子を放出し、放出した電子が空気の分子に衝突して負のイオンを発生する。
除電対象物に、放電電極41から発生した正のイオンと負のイオンとを交互に当てることにより、除電対象物が正極性に偏っている場合、正のイオンが当てられたときは反発し、負のイオンが当てられたときは結びついて電気的に中和される。一方、除電対象物が負極性に偏っている場合、正のイオンが当てられたときは結びついて電気的に中和され、負のイオンが当てられたときは反発する。したがって、パルスACの電圧の印加方法では、除電対象物が正又は負のいずれの極性に偏っている場合でも、イオンバランス良く除電対象物を中和して除電することができる。
本実施の形態1に係る除電器1は、放電電極41が高電圧を印加されてコロナ放電することにより、周囲のガスをイオン化し、イオン化ガスを吐出口43から吐出する。吐出されたイオン化ガスは図示しない除電対象物に当てられ、除電対象物が除電される。ガスは、従来から一般的に用いられている空気、窒素ガス等から選択する。空気を使用する場合、フィルタ等を通して清浄なクリーンドライエアとして使用する。なお、吐出口43から吐出するガスはイオン化ガスであるが、説明を容易にするため、「イオン化ガス」を単に「ガス」として説明する場合がある。
本実施の形態1に係る除電器1では、吐出口43から音速を超えた流速のイオン化ガスを、吐出口43の圧力が大気圧以上となるように吐出する。図4乃至図7に示すように、ガス流路42は、流路面積が漸次小さくなるように絞り込むスロート部45を備えている。ここで、音速は気温によって変化し、15℃の海面上で約340m/sである。ガスの流速は、音速との比のマッハ数で表わすことができ、音速を340m/sとすると、例えばガスの流速が272m/sである場合、音速の80%でマッハ数0.8(M0.8)で表わすことができ、ガスの流速が340m/sである場合には、M1で表わすことができる。したがって、音速(約340m/s)を超える場合には、M1を超える数値で表わすことができる。図9は、ノズル4の吐出口43から音速を超える流速で吐出するガスの3種類の膨張形態を模式的に示す状態図である。図9(a)は過膨張、図9(b)は最適膨張、図9(c)は不足膨張の各膨張形態を示している。
膨張形態について説明する前に、吐出口43から吐出するガスの流速が音速を超える条件について説明する。図9(a)乃至(c)に示すようなガス流路42の形状は、ラバールノズル形状と呼ばれ、矢印方向にガスが流れ、ガス供給口44から吐出口43までの途中にスロート面451が設けられている。スロート面451は、ガスの流路面積が漸次小さくなるように絞りこむスロート部45において流路面積が最小となる面である。なお、ガス流路42の流路面積は、放電電極41の断面積を含まない。スロート面451を通過した直後にガスの流速がM1で表わされる音速を超えると、吐出口43から吐出するガスの流速が音速を超える。そして、供給されるガスがスロート面451を通過した直後に流速が音速を超えるためには、スロート部45の手前のガス流路42の流路面積が変動しない部分におけるガス圧に対する大気圧の比率が0.528以下になることが条件となる。
図10は、吐出口43から吐出するガスの流速が音速を超える条件を説明するための模式図である。図10(a)はスロート面451がガス流路42の途中にある場合、図10(b)はガス供給口44がスロート面451となる場合、図10(c)はスロート面451が吐出口43にある場合を示している。図10(a)のスロート面451は、図9に示すラバールノズル形状と同様、ガス流路42の途中にスロート面451が設けられているので、スロート面451を通過した直後にガスの流速が音速を超えるには、図10(a)に示すようにスロート部45の手前のガス流路42の流路面積が変動しない部分におけるガス圧Poに対する大気圧Paの比率が0.528以下になることが条件となる。なお、ガス流路42は、スロート面451に均一な圧力のガスが供給されるように、スロート面451の手前に一定量のガスが溜まるチャンバー部が形成されていることが好ましい。
図10(b)に示すようにスロート部45が設けられていない場合であっても、ガス供給口44をスロート面451とみなし、ガス供給口44の手前におけるガス圧Poに対する大気圧の比率が0.528以下となる場合には、ガス流路42でガスの流速は音速を超えるので、吐出口43から吐出するガスの流速も音速を超える。なお、バータイプの除電器1で図10(b)に示すようにガス供給口44がスロート面451とみなせるノズル4を用いる場合、ガス圧Poは除電器1の筐体(本体ケース2)内の長手方向に沿って設けられたメインガス供給通路31でのガス圧である。
また図10(c)に示すように吐出口43がスロート面451になる場合には、吐出口43の手前のガス流路42の流路面積が変動しない部分におけるガス圧Poに対する大気圧Paの比率が0.528以下になると吐出口43から吐出するガスの流速が音速を超える。本実施の形態1に係る除電器1では、図10(a)に示すスロート面451を有するノズル4を用いるが、吐出口43から吐出した直後のガスの流速が音速を超え、かつ吐出口43でのガス圧が大気圧以上となるようにすれば、図10(b)、(c)に示すスロート面451を有するノズル4を用いても良い。
次に膨張形態について説明する。図9(a)乃至(c)に示すように、ガス流路42のガス供給口44から供給されたガスは、スロート部45で絞り込まれ、吐出口43から音速を超える流速で吐出される。吐出したガスの吐出領域面積は、吐出口43でのガス圧Peが大気圧Paより低い場合、図9(a)に示すようにガスが大気に押されて吐出口43の開口面積より小さくなり、吐出領域50が圧縮された形態の過膨張になる。吐出口43でのガス圧Peと大気圧Paとが等しい場合、図9(b)に示すように吐出したガスの吐出領域面積は、吐出口43の開口面積と等しく、吐出領域50が圧縮も膨張もされない形態の最適膨張になる。吐出口43でのガス圧Peが大気圧Paより高い場合、図9(c)に示すように吐出したガスの吐出領域面積は、ガスが大気を押して吐出口43の開口面積より大きく膨張した形態の不足膨張になる。
図9(a)乃至(c)のいずれの膨張形態でも、吐出口43から吐出するガスの流速は音速を超えているので、吐出口43近傍の空気、埃等は、吐出口43内へ入り込もうとしても、音速を超えた流速で吐出されるガスによって吐出口43で吹き飛ばされ、吐出口43内に入り込むことが困難となる。ただし、図9(a)の過膨張では、吐出口43から吐出したガスが大気に押され、ガスの吐出領域面積が圧縮されているので、吐出口43近傍の埃等が吐出口43内に巻き込まれる可能性がある。一方、図9(b)の最適膨張及び図9(c)の不足膨張では、吐出口43から吐出したガスの吐出領域面積は圧縮されないので、吐出口43近傍の埃等が吐出口43内に巻き込まれる可能性は低くなり、吐出口43付近の放電電極41に埃等が付着し難くなる。放電電極41への埃等の付着防止効果は、ガスの吐出領域面積が圧縮も膨張もしない最適膨張よりガスが膨張する不足膨張で高くなり、ガスの流速が音速を超えた場合であっても吐出口43でのガス圧Peが大気圧Paより高く、吐出するガスが不足膨張になる場合が好ましい。
図11は、膨張形態を判定するための圧力評価用のノズル114の正面図、斜視図及び断面図である。図11(a)は正面図を、図11(b)は斜め上から見た斜視図を、図11(c)は図11(b)に示す斜視図のE−E断面図を、図11(d)は図11(c)の吐出口43近傍の拡大図を、それぞれ示している。図11(a)乃至(d)に示すように、圧力評価用のノズル114は、本実施の形態1に係る除電器1のノズル4と同様、放電電極41、ガス流路42、吐出口43、ガス供給口44、スロート部45及びスロート面451を有する。
また圧力評価用のノズル114は、吐出口43でのガス圧を測定するための穴である吐出口圧力測定用穴51と、よどみ点でのガス圧を測定するための穴であるよどみ点圧力測定用穴52と、針キャップ出口53とを有する。なお、各所でのガス圧は圧力センサを用いて測定した。よどみ点圧力は、スロート部45の手前であってガス流路42の流路面積が変動しない部分におけるガス圧である。図12は、圧力評価用のノズル114の各寸法等を示す模式図である。
図12に示すように、Sは、吐出口43の開口面積から放電電極41の断面積を引いた吐出口43での流路面積である。Soは、スロート面451での流路面積であり、放電電極41の断面積を含まない。針角度は、放電電極41のイオンを放出する円錐形状の先端部分の頂角を意味しており、針高は吐出口43から突出している放電電極41の先端部分の長さを意味している。ノズル内径kは吐出口43の内径であり、ストレート距離Lはスロート面451から吐出口43までの距離である。
図13は、圧力評価用のノズル114を用いて測定したガス供給口44でのガス圧と吐出口43でのガス圧又は針キャップ出口53でのガス圧との関係を示すグラフ図である。図13は、図11に示した圧力評価用のノズル114を作製し、ガス供給口44から供給するガス圧力(ガス供給口圧力)を変えて測定した結果を示している。図13では、吐出口圧力とガス供給口圧力との関係を黒で塗りつぶした菱形記号で、針キャップ出口圧力とガス供給口圧力との関係は黒で塗りつぶした正方形記号で、それぞれ示しており、吐出口圧力及び針キャップ出口圧力はゲージ圧で示している。ゲージ圧は、大気圧との相対値(大気圧との差)であり、ゲージ圧が0の場合に大気圧と等しいことを示している。また、ゲージ圧が負の値となる場合には大気圧より低いことを意味しており、ゲージ圧が正の値となる場合には大気圧より高いことを意味している。
図13に示すように、ガス供給口圧力が0(ゼロ)である場合、ガスが供給されていない状態であることから、吐出口圧力は大気圧と等しくなっている。ガス供給口圧力を0.17MPaとした場合、吐出口圧力は−15kPaとなり大気圧より低くなっていることから、過膨張になっていると判定することができる。ガス供給口圧力を上げていくと、よどみ点圧力も比例して増大するが(図示せず)、吐出口圧力と針キャップ出口圧力とは大気圧より小さいので、過膨張となったと判断することができ、周囲の空気を巻き込むようになることがわかる。さらにガス供給口圧力を上げていくと、吐出口圧力と針キャップ出口圧力とは除々に上がり始め、吐出口圧力はガス供給口圧力を0.22MPaとした場合に、針キャップ出口圧力はガス供給口圧力を0.32MPaとした場合に、それぞれ0(ゼロ)となり大気圧と等しくなることから、最適膨張となったと判断することができる。その後、大気圧より大きくなることから、不足膨張となったと判断することができ、周囲の空気を巻き込まなくなることがわかる。
図14は、本実施の形態1に係る除電器1をガスの流速を音速以下及び音速を超えた状態で各膨張形態にした場合の放電電極41への異物付着量の評価結果を示す図表である。0.4mm径の吐出口43を用い、印加電圧を±7kV、周波数を33Hz、浄化用ガスとしてのパージエアをN2 とする評価条件にて、所定濃度の異物雰囲気内において、所定時間以上の連続運転を行った。
図14に示すように、ガス供給口圧力が0.02MPaでN2 ガスを供給した場合、ガスの流速は129m/sであることから音速以下であり、ガス流量は1.5L/minで最も少ないにもかかわらず、放電電極41への異物付着量は非常に多かった。ガス供給口圧力が0.17MPaでN2 ガスを供給した場合、ガスの流速はM1.1程度で音速を超えた状態で過膨張となり、ガス流量は3.8L/minで放電電極41への異物付着量は少量であった。
また図14に示すように、ガス供給口圧力が0.25MPaでN2 ガスを供給した場合、ガスの流速はM1.2となり音速を超えた状態で最適膨張となり、ガス流量は5L/minで放電電極41への異物付着量はわずかであった。ガス供給口圧力が0.325MPaでN2 ガスを供給した場合、ガスの流速はM1.2〜1.5となり音速を超えた状態で不足膨張となり、ガス流量は6L/minで放電電極41への異物付着量は極わずかであった。さらにガス供給口圧力を0.4MPaに上げてN2 ガスを供給した場合、ガスの流速はM1.7となり音速を超えた状態で不足膨張となり、ガス流量は7.1L/minで放電電極41への異物付着量はほとんど無かった。
したがって、ガスの流速が音速を超えた場合、音速以下の場合と比較してガス流量が多いにもかかわらず、放電電極41への異物付着量は少量からほとんど無い量にまで減少することがわかった。ガスの流速が音速を超えた場合であっても、過膨張ではガス流量が最も少ないにもかかわらず少量の異物が付着することがわかった。一方、最適膨張及び不足膨張では、異物付着量はわずかからほとんど無い量にまで減少し、ガス流量が多くなっても不足膨張でガスの流速が速くなるほど異物付着量は減少し、M1.7でほとんど無くなることがわかった。
図15は、吐出口43から吐出されるガスの超音速流を可視化した模式図である。図15(a)はガス供給口圧力を0.2MPaとしてM1.1で過膨張の場合を、図15(b)はガス供給口圧力を0.25MPaとしてM1.2で最適膨張の場合を、図15(c)はガス供給口圧力を0.35MPaとしてM1.5で不足膨張の場合を、図15(d)はガス供給口圧力を0.4MPaとしてM1.7で不足膨張の場合を、それぞれ示している。
図15(a)乃至(d)に示すように、過膨張、最適膨張及び不足膨張のいずれの膨張形態の超音速流であっても、放電電極41の軸に対して所定の角度βを有する縞模様が観察される。なお、放電電極41の軸方向はガスを吐出する方向であり、角度βはガスの吐出方向との角度でもある。縞模様の所定の角度βは、膨張形態によって異なり、ガスの流速が速くなるほど小さくなる。図15(a)のM1.1で過膨張の場合に角度βは63°、図15(b)のM1.2で最適膨張の場合に角度βは55°、図15(c)のM1.5で不足膨張の場合に角度βは43°、図15(d)のM1.7で不足膨張の場合に角度βは35°である。この角度βはマッハ数を計測する指標であり、マッハ数は1/sinβで計算される。
本実施の形態1に係る除電器1では、放電電極41は、先端部分が円錐形状に形成され、円錐形状の先端部分にてコロナ放電し、スロート部45は流路面積が最小となるスロート面451を有し、放電電極41の配設位置を変動させることにより、スロート面451の流路面積と吐出口43の流路面積との比率を調整する。図16は、本実施の形態1に係るノズル4の吐出口43とスロート面451との面積の関係を説明するための模式図である。図16(a)は、図7に示した吐出口43、スロート部45、スロート面451及び放電電極41を、図16(b)は吐出口43の開口面を、図16(c)はスロート面451を、それぞれ模式的に示している。
図16(a)に示すように、吐出口43の開口面積とスロート面451の面積とは略等しい。また、放電電極41の先端部分は円錐形状に形成され、吐出口43の開口面及びスロート面451は、放電電極41の軸と直交するように配置されている。そして、放電電極41の先端部分は、吐出口43の開口面及びスロート面451に交差する位置に配置してあり、吐出口43はスロート面451より放電電極41の先端部分側に配設されている。図16(a)及び(b)に示すように、吐出口43の流路面積oは、吐出口43の開口面積から放電電極41の吐出口43の位置での断面積pを差し引いた面積となり、スロート面451の流路面積qは、スロート面451の面積から放電電極41のスロート面451の位置での断面積rを差し引いた面積となる。したがって、吐出口43の流路面積oはスロート面451の流路面積qより広くなる。
図17は、本実施の形態1に係る除電器1に用いる吐出口43の径が異なる4つのノズルの例示図である。ノズルの吐出口43の内径が、図17(a)は0.9mmの例を、図17(b)は1mmの例を、図17(c)は0.86mmの例を、図17(d)は0.4mmの例を、それぞれ示している。Poは、いわゆるよどみ点圧力であり、スロート部45の手前であって流路面積が変動しない部分におけるガス圧である。Peは、吐出口43でのガス圧である。Po及びPeはゲージ圧で表しているので、Pe/Poは大気圧の値を加えた圧力に換算後の値である。Sは、吐出口43の開口面積から放電電極41の断面積を引いた吐出口43での流路面積である。Soは、スロート面451での流路面積であり、放電電極41の断面積を含まない。
針角度は、放電電極41のイオンを放出する円錐形状の先端部分の頂角であり、図17(a)乃至(c)の3つのノズルは同じ30°で、図17(d)のノズルは5°である。針高は吐出口43から突出している放電電極41の先端部分の長さである。ノズル内径kは吐出口43の内径であり、ストレート距離Lはスロート面451から吐出口43までの距離である。なお、スロート面451の面積と吐出口43の開口面積は等しく、スロート面451から吐出口43までは略円筒である。また4つのノズルは、針高とストレート距離Lとを変更することによって、スロート面451での流路面積と吐出口43での流路面積とを調整した。比熱比γは1.4で、大気圧Paは0.101MPaであった。
図17に示すように、4つのノズルのスロート面451での流路面積Soは、図17(a)のノズルaでは0.526mm2 、図17(b)のノズルbでは0.487mm2 、図17(c)のノズルcでは0.500mm2 、図17(d)のノズルdでは0.122mm2 である。図18は、図17の4つのノズルへ供給するガス供給量とガス流量との関係を示すグラフ図である。
図18に示すように、スロート面451での流路面積Soが最も小さい図17(d)のノズルdは、図17(a)乃至(c)のノズルa、b、cと比較してガス流量を抑えることができ、しかもガス供給圧力の増加に伴うガス流量の増加も抑えることができた。
図19は、図17の4つのノズルでの最適膨張時等の各種圧力、速度、面積等を示す図表である。図19(a)乃至(d)は、各々図17(a)乃至(d)のノズル(a、b、c、d)での圧力等を示している。図20は、図19に示す圧力等から各膨張形態での圧力と速度との関係を示す図表である。図20(a)乃至(d)は、各々図19(a)乃至(d)に示す圧力等に対応している。
図19及び図20に示すように、最適膨張時のよどみ点のガス圧Poは、図19(d)及び図20(d)のノズルdが0.14MPaで最も低い。すなわち、スロート面451での流路面積Soが最も小さいノズルdは、他のノズルと比較してガス流量を抑えるだけでなく、より低い圧力で最適膨張に達することができる。最適膨張時のPoは、図19(a)及び図20(a)のノズルaで0.21MPa、図19(c)及び図20(c)のノズルcで0.23MPaで、比較的低い圧力であったのに対し、図19(b)及び図20(b)のノズルbでは0.46MPaで、かなり高い圧力であった。
さらにスロート面451の流路面積Soは、ノズルcでの0.500mm2 がノズルaでの0.526mm2 より小さいが、吐出口43でのガス圧Peは、ノズルcでの0.08MPaは、ノズルaでの0.09MPaより小さくなっている。その理由は、スロート面451から吐出口43までのストレート距離Lが、ノズルcでは0.3mmであり、ノズルaでの0.2mmより長いので、ガスの流路面積比が1から遠ざかるためである。したがって、スロート面451から吐出口43までの距離が0(ゼロ)に近い方が好ましい。
またS/Soは、ノズルdで1.03、ノズルaで1.10、ノズルcで1.12、ノズルbで1.42であり、マッハ数Mは、ノズルdで1.19、ノズルaで1.38、ノズルcで1.41、ノズルbで1.78であった。スロート面451の流路面積Soと吐出口43の流路面積Sとの流路面積比S/Soが1である場合、マッハ数Mが1で最適膨張になるため、スロート面451の流路面積Soに対して吐出口43の流路面積Sが大きくなるほど、最適膨張になるマッハ数Mが大きくなる。したがって、最適膨張になるマッハ数Mが小さい方が単位時間あたりのガス量であるガス流量を抑えられるので好ましく、流路面積比S/Soが1に近いほど好ましい。
したがって、スロート面451を吐出口43近傍に設け、スロート面451から吐出口43までの距離を略0(ゼロ)とし、かつスロート面451の流路面積に対する吐出口43の流路面積の比を略1とすることにより、例えば0.09MPa程度の圧力のガスを供給するだけで、吐出口43から吐出するガスをいわゆる最適膨張形態又は不足膨張形態にすることができ、放電電極41のイオンを放出する先端部分への異物の付着防止効果を高めることが可能となる。なお、図10(c)に示したように吐出口43がスロート面451になるようにした場合には、スロート面451から吐出口43までの距離を0(ゼロ)とし、かつスロート面451の流路面積に対する吐出口43の流路面積の比を1とすることが可能となる。
上述した構成のバータイプの除電器1による除電方法について、フロ−チャートに基づいて説明する。図21は、本発明の実施の形態1に係る除電器1による除電方法を示すフローチャートである。
図21に示すように、バータイプの除電器1の筐体(本体ケース)2の長手方向の一面に、長手方向に沿って所定間隔で配設された複数のノズル4、4、・・・が有する放電電極41に、高電圧を印加してイオンを発生する(ステップS2101)。具体的には、例えばパルスAC方式によって、放電電極41に正、負、正・・・と交互に正又は負のイオンが発生するように電圧を印加する。
除電器1に接続する外部のガス供給管から、バータイプの除電器1の本体ケース2内の長手方向に沿って設けられたメインガス供給通路31を経由して、ノズル4内のガス流路42にガスを供給する(ステップS2102)。
ノズル4の吐出口43から吐出した直後のガスの流速が音速を超えるように、供給するガスの流量を調整し(ステップS2103)、吐出口43でのガス圧が大気圧以上となるように、供給するガスの流量を調整する(ステップS2104)。これにより、吐出口43から吐出するイオン化ガスを最適膨張又は不足膨張にすることができる。最適膨張又は不足膨張になったイオン化ガスを除電対象物に向けて吐出し、除電対象物を除電する(ステップS2105)。
以上のように本実施の形態1によれば、放電電極41から放出されたイオンをガス流路42に供給されたガスをイオン化ガスとして吐出口43から吐出し、吐出した直後のガスの流速が音速を超え、かつ吐出口43でのガス圧が大気圧以上となることにより、吐出口43から吐出するガスをいわゆる最適膨張又は不足膨張にすることができるので、放電電極41のイオンを放出する先端部分に異物が付着することを防止することができるとともに、速やかに充分なイオン化ガスを除電対象物に当てることができ、高い除電速度で充分な除電効果を得ることが可能となる。またガス流路42は、流路面積が漸次小さくなるように絞り込むスロート部45を備え、スロート部45の手前であってガスが流れる流路面積が変動しない部分におけるガス圧に対する大気圧の比率が0.528以下となることにより、吐出口43から吐出した直後のガスの流速が音速を超え、吐出口43でのガス圧が大気圧以上となるようにすることで、最適膨張又は不足膨張にすることが可能となる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る除電器1の構成は、実施の形態1と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。本実施の形態2では、ノズル204の形状が実施の形態1のノズル4と相違する。図22は、本実施の形態2に係る除電器1が備えるノズル204の斜視図、断面図及び拡大図である。図22(a)はノズル204の斜視図を、図22(b)は図22(a)に示す斜視図のF−F断面図を、図22(c)は図22(b)のG部分の拡大図を、それぞれ示している。
図22に示すように、本実施の形態2に用いるノズル204は、実施の形態1と同様の機能を有する、放電電極41、ガス流路42、吐出口43、ガス供給口44、スロート面451と一致するスロート部45を備える。ただし本実施の形態2のノズル204は、吐出口43近傍の形状において実施の形態1のノズル4と相違する。図20(b)、(c)に示すようにノズル204は、ノズル4と同様、筒状部分6と円盤状部分8とで構成され、円盤状部分8は、筒状部分6の外径の倍程度の外径を有し、円盤状部分8の筒状部分6側には、円盤状部分8の外径と筒状部分6の外径との略中間の外径を有する筒状突起部分81がノズル204の本体ケース2への固着部分として形成されている。ただしノズル204は、円盤状部分8が放電電極41と略直交する平面82で、吐出口43の開口面と一つの面をなしている点でノズル4と相違する。ガスは、ノズル204の吐出口43から音速を超える流速で吐出する。
一方、実施の形態1のノズル4は、図4に示すように円盤状部分7のイオンを放出する側の面が平面ではなく、吐出口43の周辺部分72がイオン放出方向へ突き出すように盛り上がっているので、吐出口43の開口面より、周辺部分72を含むノズル4の円盤状部分7のイオンを放出する側の面が、イオン放出方向の前方側に位置する。しかし、ノズル4の吐出口43から音速を超える流速で吐出するガスは、ノズル4の周辺部分72に沿って流れることはなく、吐出口43から吐出する。
図23は、本実施の形態2に係るノズル204の吐出口43とスロート面451との面積の関係を説明するための模式図である。図23(a)は、図22(c)に示した吐出口43、スロート部45、スロート面451及び放電電極41を、図23(b)は吐出口43の開口面を、図23(c)はスロート面451を、それぞれ模式的に示している。
図23(a)に示すように、吐出口43の開口面積とスロート面451の面積とは略等しい。また、放電電極41の先端部分は円錐形状に形成され、吐出口43の開口面及びスロート面451は、放電電極41の軸と直交するように配置されている。そして、放電電極41の先端部分は、吐出口43の開口面及びスロート面451に交差する位置に配置してあり、吐出口43はスロート面451より放電電極41の先端部分側に配設されている。図23(a)及び(b)に示すように、吐出口43の流路面積oは、吐出口43の開口面積から放電電極41の吐出口43の位置での断面積pを差し引いた面積となり、スロート面451の流路面積qは、スロート面451の面積から放電電極41のスロート面451の位置での断面積rを差し引いた面積となる。したがって、吐出口43の流路面積oはスロート面451の流路面積qより広くなる。
図23(a)に示す本実施の形態2のノズル204の吐出口43近傍の形状は、図16(a)に示した実施の形態1のノズル4の吐出口43近傍の形状と相違するが、図23(b)及び図16(b)に示すように、吐出口43の流路面積とスロート面451の流路面積との関係は、ノズル204とノズル4とで全く同様である。
上述のように本実施の形態2に用いるノズル204は、吐出口43近傍の形状において実施の形態1のノズル4と相違するが、形状の相違は、吐出口43から音速を超える流速で吐出するガスに影響はない。また上述のように、吐出口43とスロート面451との面積の関係が全く同様であり、吐出口43までの各構成についてもノズル204とノズル4とで同様であるので、本実施の形態2に用いるノズル204は、実施の形態1のノズル4と全く同様の寸法、ガスの圧力、流量等の条件で、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
以上のように本実施の形態2によれば、放電電極41から放出されたイオンをガス流路42に供給されたガスにて吐出口43から吐出し、吐出した直後のガスの流速が音速を超え、かつ吐出口43でのガス圧が大気圧以上となることにより、吐出口43から吐出するガスをいわゆる最適膨張又は不足膨張にすることができるので、放電電極41のイオンを放出する先端部分に異物が付着することを防止することができるとともに、速やかに充分なイオン化ガスを除電対象物に当てることができ、高い除電速度で充分な除電効果を得ることが可能となる。またガス流路42は、ガスが流れる流路面積が漸次小さくなるように絞り込むスロート部45を備え、スロート部45の手前であってガス流路42の流路面積が変動しない部分におけるガス圧に対する大気圧の比率が0.528以下となることにより、吐出口43から吐出した直後のガスの流速が音速を超え、吐出口43でのガス圧が大気圧以上となるようにすることで、最適膨張又は不足膨張にすることが可能となる。
なお、上述した実施の形態1及び2に係る除電器は、複数のノズルが筐体の長手方向の一面に配設されたバータイプの除電器である場合について説明したが、バータイプの除電器に限定されるものではない。例えば、ノズルを1つ備えて比較的狭い範囲をスポットで除電することができるガンタイプの除電器であっても良く、バータイプの除電器と同様の効果を奏することができる。
また、本発明に係る除電器では、上述したパルスAC、DC、AC、高周波AC、パルスDC等のいずれの電圧印加方法も採用することができ、同様の放電電極への異物付着防止効果とともに、採用する電圧印加方法に応じて高い除電速度で充分な除電効果を奏することができる。
その他、本発明は上記実施の形態1及び2に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変形、置換等が可能であることは言うまでもない。
本発明の実施の形態1に係る除電器の構成を模式的に示す斜視図である。 本実施の形態1に係るノズルの放電電極の軸を鉛直方向に見た正面図、吐出口の反対側から見た底面図及び側面図である。 本実施の形態1に係るノズルの斜視図である。 図2(c)に示す側面図のB−B断面図である。 図2(b)に示す底面図のC−C断面図である。 図1に示す斜視図のA−A部分断面図である。 図4のD部分の拡大図である。 パルスACにより電圧を印加する除電器の電気回路の概要を示す回路図である。 ノズルの吐出口から音速を超える流速で吐出するガスの3種類の膨張形態を模式的に示す状態図である。 吐出口から吐出するガスの流速が音速を超える条件を説明するための模式図である。 膨張形態を判定するための圧力評価用のノズルの正面図、斜視図及び断面図である。 圧力評価用のノズルの各寸法等を示す模式図である。 圧力評価用のノズルを用いて測定したガス供給口でのガス圧と吐出口でのガス圧又は針キャップ出口でのガス圧との関係を示すグラフ図である。 本実施の形態1に係る除電器をガスの流速を音速以下及び音速を超えた状態で各膨張形態にした場合の放電電極への異物付着量の評価結果を示す図表である。 微分干渉型顕微鏡によって観察した吐出口から吐出されるガスの超音速流の模式図である。 本実施の形態1に係るノズルの吐出口とスロート面との面積の関係を説明するための模式図である。 本実施の形態1に係る除電器に用いる吐出口の径が異なる4つのノズルの例示図である。 図17の4つのノズルへ供給するガス供給量とガス流量との関係を示すグラフ図である。 図17の4つのノズルでの最適膨張時等の各種圧力、速度、面積等を示す図表である。 図19に示す圧力等から各膨張形態での圧力と速度との関係を示す図表である。 本発明の実施の形態1に係る除電器による除電方法を示すフローチャートである。 本実施の形態2に係る除電器が備えるノズルの斜視図、断面図及び拡大図である。 本実施の形態2に係るノズルの吐出口とスロート面との面積の関係を説明するための模式図である。
符号の説明
1 除電器
2 本体ケース
4、204 ノズル
6 筒状部分
7、8 円盤状部分
41 放電電極
42 ガス流路
43 吐出口
44 ガス供給口
45 スロート部
61 突起
71、81 筒状突起部分
72 周辺部分
451 スロート面

Claims (5)

  1. 高電圧の印加によってコロナ放電させてイオンを放出する放電電極と、
    供給されたガスを放出されたイオンとともに吐出する吐出口と、
    供給されたガスを前記吐出口へ誘導するガス流路と
    を有するノズルを備え、
    複数の前記ノズルが、筐体の長手方向の一面にて、長手方向に沿って所定間隔で配設されたバータイプの除電器において、
    前記放電電極は前記ノズルの中心に配設し、先端部分が円錐形状に形成され、該先端部分にてコロナ放電するようにしてあり、
    前記ガス流路は、前記放電電極を取り囲むように形成されており、流路面積が漸次小さくなるように絞り込むスロート部を備え、
    該スロート部は、前記流路面積が最小となるスロート面を有し、前記放電電極の前記先端部分は、前記スロート面よりも前記吐出口側へ突出しており、
    前記ガス流路へガスを供給するガス供給口を備え、
    該ガス供給口にてガスを絞り込むようにしてあり、
    共通のメインガス供給通路から、それぞれの前記ノズルの前記ガス流路へガスが供給され、
    前記吐出口から吐出した直後のガスの流速が音速を超え、かつ該吐出口でのガス圧が大気圧以上となるようにしてあることを特徴とする除電器。
  2. 記流路面積は前記吐出口にて最小となるようにしてあることを特徴とする請求項1に記載の除電器。
  3. 前記スロート部は、前記放電電極の配設位置を変動させることにより、前記スロート面の流路面積前記吐出口の流路面積との比率を調整するようにしてあることを特徴とする請求項に記載の除電器。
  4. 前記ガス供給口の手前におけるガス圧に対する大気圧の比率が0.528以下となるようにしてあることを特徴とする請求項に記載の除電器。
  5. 前記スロート部の手前であって前記流路面積が変動しない部分におけるガス圧に対する大気圧の比率が0.528以下となるようにしてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の除電器。
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