以下、本発明を具体化した実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、各種処理のフローチャートなどは、特に特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
なお、以下の説明では、図1の左下側をテープ印字装置1の前側とし、図1の右上側をテープ印字装置1の後側とし、図1の右下側をテープ印字装置1の右側とし、図1の左上側をテープ印字装置1の左側とし、図1の上側をテープ印字装置1の上側とし、図1の下側をテープ印字装置1の下側とする。また、図3の右下側をテープカセット30の前側とし、図3の左上側をテープカセット30の後側とし、図3の右上側をテープカセット30の右側とし、図3の左下側をテープカセット30の左側とし、図3の上側をテープカセット30の上側とし、図3の下側をテープカセット30の下側とする(図24、図38、図42、図44も同様)。
なお、実際には、図3に示されているギヤ91、93、94、97、98、101を含むギヤ群は、凹陥部8aの底面により覆い隠されているが、これらのギヤ群を説明する必要上、図3には凹陥部8aの底面は図示されていない(図24、図38、図42、図44も同様)。また、図3では、カセット装着部8の周囲を形成する側壁が図示されているが、これはあくまでも模式図であって図中に示す側壁は実際よりも厚く描かれている(図24も同様)。一方、図38では、理解を容易にするために、カセット装着部8の周囲を形成する側壁を取り除いて図示している(図42、図44も同様)。また、図5および図6では、カセット装着部8にテープカセット30が装着された状態を、上ケース31aを取り除いて示している(図21、図26、図30、図31、図32、図34、図36、図45も同様)。
<第1の実施形態>
図1〜図23を参照して、第1の実施形態に係るテープ印字装置1およびテープカセット30について説明する。第1の実施形態では、テープカセット30が一の印字媒体(具体的には、感熱紙テープ)を収納するとともに、テープ印字装置1への着脱を案内するための3つの案内孔を有する場合を例示する。また、テープ印字装置1が上記の3つの案内孔に対応して、テープカセット30を適正な装着位置(以下、適正位置)に案内する3つの案内軸を有する場合を例示する。
はじめに、第1の実施形態に係るテープ印字装置1の概略構成について説明する。以下では、感熱紙テープのみが収納されたサーマルタイプのテープカセット30、印字テープとインクリボンとが収納されたレセプタータイプのテープカセット30、両面粘着テープとフィルムテープとインクリボンとが収納されたラミネートタイプのテープカセット30等、テープ種類が異なる複数のテープカセット30を共通して使用可能な汎用機として構成されたテープ印字装置1を例示する。
図1および図2に示すように、テープ印字装置1は、平面視長方形状の本体カバー2を備えている。本体カバー2の前側には、文字、記号及び数字等の文字キーや、種々の機能キー等を含むキーボード3が配設されている。キーボード3の後側には、入力した文字や記号を表示可能な液晶ディスプレイ5が設けられる。液晶ディスプレイ5の後側には、テープカセット30の交換時に開閉される蓋状のカセットカバー6が設けられている。カセットカバー6に対応する本体カバー2の内部には、テープカセット30を着脱自在な領域を形成するカセット装着部8が設けられている。カセット装着部8には、テープカセット30からテープを引き出して搬送する搬送機構や、テープの表面に文字等を印字する印字機構等が設けられているが、詳細は後述する。
本体カバー2の左側面後方には、印字済みのテープを外部に排出するための排出スリット9が設けられている。カセットカバー6の左側面には、カセットカバー6を閉じた状態で排出スリット9を外部に露出させる排出窓11が形成されている。カセットカバー6の前面略中央には、その下面から下方に突出する鉤状の係止ロック4が設けられている。本体カバー2には、係止ロック4に対応する位置にロック孔7が設けられており、カセットカバー6が閉じられると係止ロック4がロック孔7に嵌め込まれて係止されることで、カセットカバー6の自然開放が防止される。
次に、本体カバー2の内部構造について、図2〜図7を参照してカセット装着部8を中心に説明する。なお、図3〜図6では、理解を容易にするために、本体カバー2の内部構造(特に、カセット装着部8の形状や構造など)を模式的に図示している。図2〜図7に示すように、カセット装着部8の前部には、発熱体(図示外)を備えるサーマルヘッド10を搭載したヘッドホルダ74が固設されている。カセット装着部8の外側(図3では右上側)には、ステッピングモータであるテープ送りモータ23が配設されている。テープ送りモータ23の駆動軸の下端には駆動ギヤ91が固着されており、駆動ギヤ91は開口を介してギヤ93に噛合され、ギヤ93はギヤ94に噛合されている。ギヤ94の上面には、後述するリボン巻取スプール44の回転駆動を行う略円柱状のリボン巻取軸95が立設されている。リボン巻取軸95には、その軸体の基端側から先端側に向けて延びる複数のカム部材95aが、平面視で放射状をなすように外周側に設けられている(図14参照)。さらに、ギヤ94にはギヤ97が噛合され、ギヤ97にはギヤ98が噛合され、ギヤ98にはギヤ101が噛合されている。ギヤ101の上面には、後述するテープ送りローラ46の回転駆動を行う略円柱状のテープ駆動軸100が立設されている。テープ駆動軸100には、その軸体の基端側から先端側に向けて延びる複数のカム部材100aが、平面視で放射状をなすように外周側に設けられている(図14参照)。
テープカセット30がカセット装着部8に装着された状態でテープ送りモータ23が反時計回り方向に回転駆動されると、駆動ギヤ91、ギヤ93、ギヤ94を介して、リボン巻取軸95が反時計回り方向に回転駆動される。リボン巻取軸95は、リボン巻取軸95が嵌挿されたリボン巻取スプール44を回転駆動させる。さらに、ギヤ94の回転は、ギヤ97、ギヤ98、ギヤ101を介してテープ駆動軸100に伝達されて、テープ駆動軸100が時計回り方向に回転駆動される。テープ駆動軸100は、テープ駆動軸100が嵌挿されたテープ送りローラ46を回転駆動させる。なお、ギヤ98の後側には、後述する第1テープ支持孔65に挿脱される略円柱状の補助軸110が立設されている。
カセット装着部8の周縁には、2つの位置決めピン102,103が設けられている。位置決めピン102は、テープカセット30の底面に形成された後述のピン孔53に対応して、カセット装着部8における左縁部に設けられる。位置決めピン102は、カセット装着部8に装着されたテープカセット30の左縁側において、テープカセット30の高さ位置および平面位置を位置決めする。位置決めピン103は、テープカセット30の右側後部に位置する後述の共通部32に対応して、カセット装着部8における右縁部に設けられる。位置決めピン103は、カセット装着部8に装着されたテープカセット30の右縁側において、テープカセット30の高さ位置を位置決めする。
カセット装着部8の右側後部には、後述するガイド孔47に挿脱されるガイド軸120が立設されている。ガイド軸120は、略円柱状をなす軸体であるが、直径が異なる2つの軸部(大径軸部120aおよび小径軸部120b)と、大径軸部120aと小径軸部120bとを連設させるテーパ部120cとからなる(図14参照)。大径軸部120aは、ガイド軸120の基端側を構成する軸部であり、ガイド軸120において直径が最も大きい部位である。小径軸部120bは、ガイド軸120の先端側を構成する軸部であり、大径軸部120aよりも直径が小さい。大径軸部120aと小径軸部120bとの間には、大径軸部120aから小径軸部120bに向けて軸径が漸減してテーパ状の傾斜面を形成するテーパ部120cが設けられている。
ところで、カセット装着部8は、テープカセット30が装着されると、後述するカセットケース31の平面形状と略対応するように、平面視で丸みを帯びた角部を有する略長方形状の凹陥部8aを有する。凹陥部8aから上方に延設されて段差状を形成する平面が、カセット装着部8に装着されたテープカセット30の共通部32の下面(詳細は後述)に対向するカセット支持部8bである。
また、図7に示すように、プラテンホルダ12の後側面(つまり、サーマルヘッド10と対向する面)には、複数の検出スイッチ21が配置されたスイッチ部20が設けられている。詳細には、スイッチ部20は、複数の貫通孔が設けられるとともに、各貫通孔からは検出センサ基板22に設けられた検出スイッチ21の端子軸がそれぞれ後方に突出している。各検出スイッチ21は、後述するように、テープカセット30のアーム識別部80(非押圧部81および押圧部82の組み合わせ)によって、カセット装着部8に装着されたテープカセット30の種類を検出するためのものである。
ここで、カセット装着部8に立設された各部材の位置関係について、図4を参照して説明する。なお、図4における二点鎖線は、後述する分割線Jを示している。先述のテープ駆動軸100、ガイド軸120、補助軸110、リボン巻取軸95、位置決めピン102、ヘッドホルダ74は、カセット装着部8に装着されるテープカセット30のローラ支持孔64、ガイド孔47、第1テープ支持孔65、巻取支持孔67、ピン孔53、ヘッド装着部39(いずれも後述する。)と対向する位置にそれぞれ設けられている。
テープ駆動軸100は、カセット装着部8における左前方に位置する角部を含む第1軸設置領域8cに立設されている。より具体的には、第1軸設置領域8cは、平面視で略長方形状をなすカセット装着部8を、例えばその前後方向および左右方向でそれぞれ3等分した場合に形成される9つの領域のうち、最も左前方に位置する領域である。第1軸設置領域8cは、カセット装着部8の前部中央に固設されたヘッドホルダ74の左側に隣接しており、後述するテープ搬送方向におけるサーマルヘッド10の印字位置よりも下流側に位置している。
ガイド軸120は、カセット装着部8における右後方に位置する角部を含む第2軸設置領域8dに立設されている。より具体的には、第2軸設置領域8dは、平面視で略長方形状をなすカセット装着部8を、例えばその前後方向および左右方向でそれぞれ3等分した場合に形成される9つの領域のうち、最も右後方に位置する領域である。つまり、カセット装着部8を平面視した場合に、第2軸設置領域8dに含まれる角部は、第1軸設置領域8cに含まれる角部の対角に位置している。
テープ駆動軸100とガイド軸120とを平面視で結ぶ分割線Jを基準として、カセット装着部8を平面視で分割した場合に、分割線Jよりも後側を占めるのが第1設置領域8eであり、分割線Jよりも前側を占めるのが第2設置領域8fである。補助軸110は、第1設置領域8eに立設されており、詳細にはカセット装着部8の平面視中央からみた左後側に位置している。リボン巻取軸95は、第2設置領域8fに立設されており、詳細にはカセット装着部8の平面視中央からみた右前側に位置している。ここでは、補助軸110およびリボン巻取軸95は、平面視で分割線Jを中心としてほぼ対称に位置している。
テープ駆動軸100の後側には、位置決めピン102が隣接して設けられている。ガイド軸120の前側には、位置決めピン103が隣接して設けられている。位置決めピン102,103は、カセット装着部8に装着されたテープカセット30を、それぞれテープ駆動軸100およびガイド軸120の近傍で支持する。
カセット装着部8に立設された各部材は、以上のような平面上での位置関係を有している。これらの部材がそれぞれ立設される高さ位置は、先述の凹陥部8aおよびカセット支持部8bのいずれに設けられているかによって異なる。つまり、カセット支持部8bに設けられる部材(ここでは、ガイド軸120、位置決めピン102,103)のほうが、凹陥部8aに設けられる部材(ここでは、リボン巻取軸95、テープ駆動軸100、補助軸110、ヘッドホルダ74)よりも上方から立設される。なお、カセット装着部8に立設された各部材の高さ関係については、後述する。
図2〜図6に戻り、ヘッドホルダ74の前側には、アーム状のプラテンホルダ12が軸支部12aを中心に揺動可能に軸支されている。プラテンホルダ12の先端側には、サーマルヘッド10に相対して接離可能に設けられたプラテンローラ15と、テープ駆動軸100が嵌挿されるテープ送りローラ46に相対して接離可能に設けられた可動搬送ローラ14とが、共に回転可能に軸支されている。
プラテンホルダ12には、カセットカバー6の開閉に連動して左右方向に移動する図示外のリリースレバーが連結されている。カセットカバー6が開放されると、リリースレバーが右方向に移動して、プラテンホルダ12が図5に示す待機位置に向けて移動する。図5に示す待機位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8から離間する方向に移動して、テープカセット30をカセット装着部8に着脱することができる。なお、プラテンホルダ12は、図示外の巻きバネにより常に待機位置に弾性付勢されている。
カセットカバー6が閉鎖されると、リリースレバーが左方向に移動して、プラテンホルダ12が図6に示す印字位置に向けて移動する。図6に示す印字位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8に近接する方向に移動する。そして、カセット装着部8にテープカセット30が装着されていれば、プラテンローラ15が印字媒体のテープ(ここでは、感熱紙テープ55)を介してサーマルヘッド10を押圧するとともに、可動搬送ローラ14がテープを介してテープ送りローラ46を押圧する。これにより、図6に示す印字位置では、カセット装着部8に装着されたテープカセット30を使用して印字を行うことが可能となる。
テープ排出口49から排出スリット9までの間には、印字済テープが搬送される搬送経路が設けられている。この搬送経路には、印字済テープを所定位置で切断するカット機構17が設けられている。カット機構17は、固定刃18と、固定刃18に対向して前後方向(図5および図6に示す上下方向)に移動可能に支持された移動刃19とで構成されている。移動刃19は、カッターモータ(図示外)によって前後方向に移動される。
次に、第1の実施形態に係るテープカセット30の構造について説明する。以下では、その内部に収納されるテープの種類、および、インクリボンの有無などを適宜変更することによって、先述のサーマルタイプ、レセプタータイプ、ラミネートタイプ等、各種のテープ種類を実装可能な汎用カセットとして構成されたテープカセット30を例示する。
図3、図5、図6〜図9を参照して、テープカセット30の全体構成について説明する。テープカセット30は、下ケース31bおよび下ケース31bの上部に固定される上ケース31aにより構成された略直方体状の筐体であるカセットケース31を有している。上ケース31aにおいて下ケース31bと対向する方向と直交する左右方向長手の長方形状の平面部が、カセットケース31の上壁面35を形成する。下ケース31bにおいて上ケース31aと対向する方向と直交して上壁面35とほぼ同一形状をなす平面部が、カセットケース31の下壁面36を形成する。上壁面35の外縁全周から下ケース31bに向けて延びる上ケース31aの側部と、下壁面36の外縁全周から上ケース31aに向けて延びる下ケース31bの側部とが、カセットケース31の側壁37を形成する。つまり、カセットケース31は、その上下方向で対向配置された矩形状の平面をなす一対の上壁面35および下壁面36と、上壁面35および下壁面36の外縁に亘って所定高さで形成された側壁37とを有する箱状のケース体である。カセットケース31は、上壁面35および下壁面36の周縁部全体が側壁37によって囲われている必要はなく、側壁37の一部(例えば後壁)にカセットケース31内を露出させるような開口部が設けられていたり、その開口部を臨む位置に上壁面35および下壁面36を接続するボスが設けられたりしてもよい。なお、カセットケース31の上下方向(つまり、上壁面35および下壁面36が対向する方向)は、テープカセット30がカセット装着部8に対して着脱される方向(以下、テープカセット30の着脱方向)と略一致する。
テープカセット30の平面視中央からみた左後側には、第1のテープが巻回された第1テープスプール40を回転可能に支持する第1テープ支持孔65が形成されている。テープカセット30の平面視中央からみた右後側には、第2のテープが巻回された第2テープスプール(図示外)を回転可能に支持する第2テープ支持孔66が形成されている。テープカセット30の平面視中央からみた右前側には、インクリボンが巻回されたリボンスプール(図示外)を回転可能に支持するリボン支持孔68が形成されている。第1テープ支持孔65とリボン支持孔68との間には、リボンスプールからインクリボンを引き出すとともに、文字等の印字にて使用されたインクリボンを巻き取るリボン巻取スプール44を回転可能に支持する巻取支持孔67が形成されている。
第1の実施形態に係るテープカセット30は、第1テープスプール40に第1のテープとして感熱紙テープ55が巻回された所謂サーマルタイプのテープカセットとして実装されている。サーマルタイプのテープカセット30は、他の印字媒体を収納する必要がないため、第2のテープが巻回される第2テープスプールを備えていない。また、インクリボンを収納する必要がないため、インクリボンが巻回されるリボンスプールも備えていない。
テープカセット30の前面右側には、テープカセット30の前方にやや延びるとともに中央に向かって直角に折り返されたアーム部34が設けられている。アーム部34は、未使用のテープやインクリボンを案内して、その先端に設けられた開口34aからヘッド装着部39に供給する。ヘッド装着部39は、アーム部34の内面とテープカセット30の前面とに囲まれる隙間であって、テープ印字装置1のサーマルヘッド10が嵌め込まれる部位である。なお、ヘッド装着部39は、サーマルヘッド10を備えたヘッドホルダ74が装着されたときにヘッドホルダ74に対して前後左右方向の遊びが生じるように、ヘッドホルダ74の厚み(前後方向長さ)および横幅(左右方向長さ)よりも大きな開口幅を有している。
アーム部34の前面を構成するアーム側面33には、テープカセット30の種類(例えば、テープ幅やテープ種類など)に応じたパターンで構成されたアーム識別部80が設けられている。アーム識別部80は、複数の検出スイッチ21にそれぞれ対応する識別部として、スイッチ端子を挿脱可能なスイッチ孔である非押圧部81およびスイッチ端子を挿脱不可能な面部である押圧部82のいずれかを有する。
テープカセット30の左前部には、ローラ支持孔64が設けられている。ローラ支持孔64の内側には、テープ送りローラ46が回転可能に軸支されている。テープ送りローラ46は、対向する可動搬送ローラ14との協働により、未使用のテープを引き出す。テープ送りローラ46からみたテープ搬送方向の上流側には、上下一対の規制部材63が設けられている。規制部材63は、サーマルヘッド10からみたテープ搬送方向の下流側に、印字済テープを幅方向に規制してテープ排出口49に向かって案内する。なお、テープ搬送方向は、テープ印字装置1での印字実行時に、カセット装着部8内でテープカセット30に収納されたテープが搬送される方向である。
第1の実施形態のガイド孔47は、平面視で前後方向に対向する両辺が直線状をなし、かつ、左右方向に対向する両辺がガイド孔47の開口中心からの距離が一定となる曲線状をなすような開口形状を有する。ガイド孔47の開口幅は、平面視でガイド孔47の開口中心を通る全ての方向について、ガイド軸120の小径軸部120bの直径よりも大きい。ただし、ガイド孔47は、平面視でガイド孔47の開口中心を通る左右方向の開口幅が最も大きく、平面視でガイド孔47の開口中心を通る前後方向の開口幅が最も小さい。このガイド孔47の開口中心を通る前後方向の開口幅は、ガイド軸120の大径軸部120aの直径と略等しい。
なお、規制部材63の近傍には、案内壁38が立設されている。案内壁38とリボン巻取スプール44との間には、分離壁48が立設されている。これらの構成は、テープカセット30がラミネートタイプである場合に機能を発揮する。すなわち、案内壁38は、ヘッド装着部39を経由して搬送された使用済みのインクリボンをフィルムテープから離間させ、リボン巻取スプール44に向かって案内する。分離壁48は、案内壁38に沿って案内される使用済みのインクリボンと、第1テープスプール40に巻回して支持された両面粘着テープとが互いに接触するのを防止する。
ところで、カセットケース31は、先述したように、全体としては平面視で丸みを帯びた角部を有する略直方体状をなす。一方、カセットケース31の全側面の所定高さに亘って、テープカセット30の種類(例えば、テープ幅)に拘らず一定幅(後述する高さ寸法T)の共通部32が設けられている。そして、カセットケース31が有する所定の角部(詳細には、テープ排出口49が設けられていない角部)では、平面視で直角をなすように外側方向に共通部32が側方に突出している。共通部32は、テープカセット30がカセット装着部8に装着されたときに、カセット装着部8内において先述のカセット支持部8bに対向する。このとき、カセット装着部8では、カセットケース31の下面から所定高さ(つまり、共通部32の下面)までが凹陥部8aに入り込んだ状態となる。これにより、テープカセット30の厚み(カセットケース31の上下方向長さ)に関わらず、共通部32がカセット支持部8bによって同一の高さ位置に保持される。
具体的には、共通部32は、図7に示すようにカセットケース31の高さ(幅)方向における中心線Nに関して、上下方向に対称に形成された高さ寸法Tを有する部位である(図13参照)。共通部32の高さ寸法Tは、テープカセット30に収納される印字媒体のテープ幅に拘らず同一寸法に設定されている。一例として、共通部32の高さ寸法Tは「12mm」であるものとする。具体的には、テープ幅が大きくなると(例えば、18mm、24mm、36mmなど)、それに応じてカセットケース31の高さ寸法も大きくなるが、共通部32の高さ寸法Tは一定である。なお、テープ幅が高さ寸法T以下である場合(例えば、6mm、12mmなど)、カセットケース31の高さ寸法は共通部32の高さ寸法T+4mmの16mmである。
図10〜図13を参照して、テープカセット30を構成する各部の詳細について説明する。以下では、テープカセット30に形成される孔部(第1テープ支持孔65、巻取支持孔67、ローラ支持孔64、ガイド孔47)、および、これらの孔部に関連する部材について説明する。
図10に示すように、第1テープスプール40は、カセットケース31を上下方向に貫通する第1テープ支持孔65を介して回転可能に支持されている。詳細には、第1テープ支持孔65は、上壁面35および下壁面36から互いに対向する方向にそれぞれ延設される凹陥孔である開口部65aおよび開口部65bと、開口部65a,65b間を連通する軸孔65cからなる。上ケース31aは、開口部65aから下壁面36に向けて延設され、平面視で開口部65aの中心から放射状に複数の係止リブ84を備える。各係止リブ84は、それぞれの先端側がカセットケース31の内部で互いに対向する方向に突起する鉤状体である。下ケース31bは、開口部65bから上壁面35に向けて延設される円筒状の筒壁部85を備える。筒壁部85には、その上下方向に切り込まれた複数のスリット87が、平面視で開口部65bの中心から放射状に形成される。筒壁部85における各スリット87の上端側には、各スリット87の開口端を閉じるための頭部86がそれぞれ設けられている。カセットケース31の内部では、筒壁部85の先端側に設けられた各頭部86に、それぞれ対応する係止リブ84が各スリット87を介して係止されている。なお、筒壁部85の内部では、カセットケース31を上下方向に貫通する軸孔65cが開口部65a,65bを連通させる。
第1テープスプール40は、内壁40aと外壁40bとの二重壁構造を有する。内壁40aは、筒壁部85の外径よりも若干内径が大きい円筒体であり、印字媒体のテープ幅よりも小さい高さ寸法を有する。内壁40aの内部には、その上下方向に貫通する軸孔40dが形成されている。外壁40bは、内壁40aの径外側に設けられて内壁40aを全周に亘って取り囲む円筒体であり、印字媒体のテープ幅とほぼ同一の高さ寸法を有する。外壁40bの外周面には、第1のテープ(第1の実施形態では感熱紙テープ55)が巻回されている。内壁40aと外壁40bとの間には、上下方向を長手とする板状部材である連結体40cが、平面視で内壁40aおよび外壁40bの中心から放射状に架設されている。第1テープスプール40は、これらの連結体40cによって内壁40aおよび外壁40bが同軸をなす二重筒状に構成される。第1テープスプール40は、軸孔40dに挿入された筒壁部85によって軸支されつつ、カセットケース31内で軸線中心に回転自在となる。なお、第1テープスプール40では、軸孔65cに挿入された補助軸110に対して生じる周方向の遊びを小さくするために、軸孔65cの開口幅が補助軸110の軸径と比較して略等しいか若干大きい程度である。
図11に示すように、リボン巻取スプール44は、カセットケース31を上下方向に貫通する巻取支持孔67を介して回転可能に支持されている。詳細には、巻取支持孔67は、上壁面35および下壁面36において互いに対向する位置にそれぞれ形成される貫通孔である開口部67aおよび開口部67bからなる。リボン巻取スプール44は、カセットケース31の幅長(つまり、上下方向の長さ)とほぼ等しい高さ寸法を有する円筒状をなす。リボン巻取スプール44の外周面における上端縁および下端縁には、それぞれ径外方向の全周に亘って突出するフランジ状の支持部44eが設けられている。
カセットケース31の内部では、上端部44aが上壁面35の開口部67aに嵌合されるとともに、下端部44bが下壁面36の開口部67bに嵌合されている。リボン巻取スプール44の上端縁に設けられた支持部44eは、上ケース31aに下方から当接してリボン巻取スプール44の上方向への移動を規制する。リボン巻取スプール44の下端縁に設けられた支持部44eは、下ケース31bに上方から当接してリボン巻取スプール44の下方向への移動を規制する。これにより、リボン巻取スプール44は、両端部44a,44bにて支持されつつ、カセットケース31内で軸線中心に回転自在となる。
リボン巻取スプール44の内部には、その上下方向に貫通する軸孔44cが形成されている。リボン巻取スプール44の内周面(つまり、軸孔44cを形成する内壁)には、その上下方向の中央位置から若干下方に複数の係合リブ44dが設けられている。テープカセット30がカセット装着部8に装着されると、先述のリボン巻取軸95が開口部67bを介して軸孔44cに挿入される。そして、リボン巻取スプール44に設けられた複数の係合リブ44dに、リボン巻取軸95の周囲に形成された複数のカム部材95aが噛合される。これにより、リボン巻取軸95の回転がリボン巻取スプール44に伝達される(つまり、リボン巻取軸95の回転に伴ってリボン巻取スプール44が回転する)。なお、リボン巻取スプール44は、リボン巻取軸95が装着されたときにリボン巻取軸95に対して周方向の遊びが生じるように、軸孔44cの開口幅がリボン巻取軸95の軸径よりも大きくなっている。
図12に示すように、テープ送りローラ46は、カセットケース31を上下方向に貫通するローラ支持孔64を介して回転可能に支持されている。詳細には、ローラ支持孔64は、上壁面35および下壁面36において互いに対向する位置にそれぞれ形成される貫通孔である開口部64aおよび開口部64bからなる。開口部64a,64bの各近傍位置には、カセットケース31の前端縁に沿って、それぞれ対向する方向に突出する一対の規制部材63が形成されている。一対の規制部材63の後側には、一対の規制部材63と隣接して案内壁38が上ケース31aと下ケース31bとに亘って立設されている。一対の規制部材63の基端の間隔幅は、印字媒体のテープ幅と同一に設定されている。
テープ送りローラ46は、カセットケース31の幅長(つまり、上下方向の長さ)とほぼ等しい高さ寸法を有する円筒状をなす。テープ送りローラ46の本体部46eは、開口部64a,64bよりも径が大きく、その外周面が印字媒体に当接するローラ面46cである。ローラ面46cの上下方向長さ(つまり、テープ送りローラ46におけるテープ送り幅)は、印字媒体のテープ幅と同一に設定されている。テープ送りローラ46の本体部46eから上下方向にそれぞれ突出する上端部46aおよび下端部46bは、それぞれ開口部64a,64bよりも径が若干小さい。なお、テープ送りローラ46の内部では、本体部46eを上下方向に貫通する軸孔46dが両端部46a,46bを連通させる。
カセットケース31の内部では、上端部46aが上壁面35の開口部64aに嵌合されるとともに、下端部46bが下壁面36の開口部64bに嵌合されている。本体部46eは、上ケース31aに下方から当接してテープ送りローラ46の上方向への移動を規制し、下ケース31bに上方から当接してテープ送りローラ46の下方向への移動を規制する。これにより、テープ送りローラ46は、両端部46a,46bにて支持されつつ、カセットケース31内で軸線中心に回転自在となる。
テープ送りローラ46の内周面(つまり、軸孔46dを形成する内壁)には、その下端側に複数の係合リブ46f(図17参照)が設けられている。テープカセット30がカセット装着部8に装着されると、先述のテープ駆動軸100が開口部64bを介して軸孔46dに挿入される。そして、テープ送りローラ46に設けられた複数の係合リブ46fに、テープ駆動軸100の周囲に形成された複数のカム部材100aが噛合される。これにより、テープ駆動軸100の回転がテープ送りローラ46に伝達される(つまり、テープ駆動軸100の回転に伴ってテープ送りローラ46が回転する)。なお、テープ送りローラ46は、テープ駆動軸100が装着されたときにテープ駆動軸100に対して周方向の遊びが若干生じるように、軸孔46dの開口幅がテープ駆動軸100の軸径よりも若干大きくなっている。
図13に示すように、カセットケース31の右側後部には、カセットケース31の上下方向に貫通するガイド孔47が形成されている。詳細には、ガイド孔47は、上壁面35および下壁面36から互いに対向する方向にそれぞれ延設される凹陥孔である開口部47aおよび開口部47bと、開口部47a,47b間を連通する軸孔47cからなる。ここでは、ガイド孔47が平面視でカセットケース31の右側後部に位置する共通部32の範囲内に位置しているため、開口部47bはその共通部32の下面に形成されている。カセットケース31の内部には、開口部47a,47bを連通させる軸孔47cを内部に形成する円筒状の筒壁部89が、上壁面35および下壁面36(ここでは、共通部32の下面)に亘って設けられている。
なお、図8および図9に示すように、第2テープ支持孔66も、上壁面35および下壁面36において互いに対向する位置にそれぞれ形成される一対の開口部66a,66bからなる。各開口部66a,66bは、カセットケース31の内部にそれぞれ対向する方向に陥入する凹部に連設されている。第2テープスプール(図示外)は、印字媒体のテープ幅とほぼ同一の高さ寸法を有する円筒体であって、その外周面に第2のテープが巻回される。カセットケース31内に第2のテープを収納する場合は、第2テープスプールを上下方向に貫通する軸孔が有する両端開口に、各開口部66a,66bから連設される凹部がそれぞれ挿入される。これにより、第2テープスプールは、第2テープ支持孔66にて軸支されつつ、カセットケース31内で軸線中心に回転自在となる。なお、第1の実施形態のテープカセット30は、カセットケース31内に第2テープスプールを備えていない。
同様に、リボン支持孔68も、上壁面35および下壁面36において互いに対向する位置にそれぞれ形成される一対の開口部68a,68bからなる。各開口部68a,68bは、カセットケース31の内部にそれぞれ対向する方向に陥入する凹部に連設されている。リボンスプール(図示外)は、印字媒体のテープ幅とほぼ同一の高さ寸法を有する円筒体であって、その外周面にインクリボンが巻回される。カセットケース31内にインクリボンを収納する場合は、リボンスプールの上下方向に貫通する軸孔が有する両端開口に、各開口部68a,68bから連設される凹部がそれぞれ挿入される。これにより、リボンスプールは、リボン支持孔68にて軸支されつつ、カセットケース31内で軸線中心に回転自在となる。なお、第1の実施形態のテープカセット30は、カセットケース31内にリボンスプールを備えていない。
ここで、第1の実施形態における、テープカセット30に設けられた各部の位置関係について、図3、図8および図9を参照して説明する。なお、図8および図9における二点鎖線は、後述する分割線Kを示している。先述のローラ支持孔64、ガイド孔47、第1テープ支持孔65、巻取支持孔67、ピン孔53、ヘッド装着部39は、テープカセット30が装着されるカセット装着部8のテープ駆動軸100、ガイド軸120、補助軸110、リボン巻取軸95、位置決めピン102、ヘッドホルダ74と対向する位置にそれぞれ形成されている。
詳細には、ローラ支持孔64は、テープカセット30における左前方に位置する角部を含む第1孔形成領域30aに形成されている。より具体的には、第1孔形成領域30aは、平面視で略長方形状をなすテープカセット30を例えばその前後方向および左右方向でそれぞれ3等分した場合に形成される9つの領域のうち、最も左前方に位置する領域である。第1孔形成領域30aは、テープカセット30の前部中央に設けられたヘッド装着部39の左側に隣接している。言い換えると、第1孔形成領域30aはヘッド装着部39からみたテープ搬送方向の下流側に位置している。そのため、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着されると、第1孔形成領域30aに含まれる角部が先述の第1軸設置領域8cに対向する。
ガイド孔47は、テープカセット30における右後方に位置する角部を含む第2孔形成領域30bに形成されている。より具体的には、第2孔形成領域30bは、平面視で略長方形状をなすテープカセット30を例えばその前後方向および左右方向でそれぞれ3等分した場合に形成される9つの領域のうち、最も右後方に位置する領域である。つまり、テープカセット30を平面視した場合に、第2孔形成領域30bに含まれる角部は第1孔形成領域30aに含まれる角部の対角に位置している。そのため、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着されると、第2孔形成領域30bに含まれる角部が先述の第2軸設置領域8dに対向する。
ローラ支持孔64とガイド孔47とを平面視で結ぶ分割線Kを基準としてテープカセット30を平面視で分割した場合に、分割線Kよりも後側を占めるのが第1収納領域30cであり、分割線Kよりも前側を占めるのが第2収納領域30dである。第1テープ支持孔65は、平面視で三角形状をなす第1収納領域30cの重心(つまり、第1収納領域30cを形成する3辺の中線を結ぶ交点)またはその近傍に形成される。巻取支持孔67は、平面視で三角形状をなす第2収納領域30dの重心(つまり、第2収納領域30dを形成する3辺の中線を結ぶ交点)またはその近傍に形成される。ここでは、第1テープ支持孔65および巻取支持孔67は、平面視で分割線Kを中心としてほぼ対称に位置している。
下ケース31bにおけるローラ支持孔64の後側には、位置決めピン102の高さ寸法とほぼ等しい深さで上方に凹陥するピン孔53が、ローラ支持孔64に隣接して形成されている。カセット装着部8に装着されたテープカセット30は、ピン孔53に挿入される位置決めピン102によってローラ支持孔64の近傍で支持され、共通部32に接触する位置決めピン103によってガイド孔47の近傍で支持される。
なお、第2テープ支持孔66は平面視で分割線K上に形成されており、詳細にはテープカセット30の平面視中央とガイド孔47との略中間に位置している。リボン支持孔68は第2収納領域30dに形成されており、詳細には巻取支持孔67よりもテープカセット30の右前側に位置している。
上記のような位置関係によって、第1の実施形態に係るテープカセット30の重量バランスは次のようになる。先述したように第1テープ支持孔65では、テープカセット30の内部で第1テープスプール40が回転支持されている。これは、少なくとも第1テープスプール40の回転中心(つまり、軸孔40d)が、平面視で第1収納領域30cの範囲内に設けられていることを意味する。言い換えると、第1テープスプール40に巻回されている第1のテープ(ここでは、感熱紙テープ55)の重心が、平面視で第1収納領域30cの範囲内に位置していることを意味する。
一方、第1の実施形態のテープカセット30は、他の印字媒体(第2のテープ)やインクリボンを備えていない。つまり、テープカセット30では、感熱紙テープ55の重心が位置する第1収納領域30cのほうが第2収納領域30dよりも重量が大きい。このような重量バランスを有するテープカセット30を、例えばユーザが左右両端の側壁37を指で挟持しながら上壁面35および下壁面36を略水平に維持しつつカセット装着部8に垂直に嵌め込む。このとき、テープカセット30の重量の偏りによって、分割線Kを回転中心として第1収納領域30c側が下方傾斜しやすい。
それに対し、上記説明したテープ印字装置1およびテープカセット30では、テープカセット30がカセット装着部8に装着される場合、カセット装着部8に立設された3つの案内軸(テープ駆動軸100、ガイド軸120、補助軸110)がテープカセット30に設けられた3つの案内孔(ローラ支持孔64、ガイド孔47、第1テープ支持孔65)にそれぞれ挿入されることによって、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に案内される。なお、テープカセット30がカセット装着部8に着脱される態様については、詳細を後述する。
テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着されると、テープ駆動軸100がテープ送りローラ46に嵌挿され、リボン巻取軸95がリボン巻取スプール44に嵌挿される。そして、カセットカバー6が閉鎖されるとプラテンホルダ12が印字位置に移動して、プラテンローラ15がサーマルヘッド10に相対するとともに、可動搬送ローラ14がテープ送りローラ46を押圧する。これにより、テープ印字装置1は印字媒体への印字を実行することが可能な状態となる。
また、プラテンホルダ12が待機位置から印字位置に移動すると、プラテンホルダ12に設けられたスイッチ部20がテープカセット30に設けられたアーム識別部80に対向する。このとき、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着されていれば、アーム識別部80を構成する識別部(非押圧部81および押圧部82)のパターンに応じて、各検出スイッチ21がそれぞれオン状態またはオフ状態となる。詳細には、非押圧部81に対向する検出スイッチ21は、非押圧部81に挿入されてオフ状態となる。押圧部82に対向する検出スイッチ21は、押圧部82に押圧されてオン状態となる。
テープ印字装置1では、各検出スイッチ21のオン・オフの組合せに基づいてテープカセット30に関する情報が取得される。第1実施形態のテープカセット30は各種のテープ種類を実装可能な汎用カセットであるが、印字媒体として感熱紙テープ55のみを収納したサーマルタイプのテープカセットとして実装されている。そのため、テープ印字装置1ではスイッチ部20での検出結果に基づいて、テープカセット30の種類として例えば「テープ幅36mmのサーマルタイプ」が検出される。
第1の実施形態では、テープ印字装置1における印字実行時に、テープ駆動軸100を介して回転駆動されるテープ送りローラ46が、可動搬送ローラ14との協働によって第1テープスプール40から感熱紙テープ55を引き出す。第1テープスプール40から引き出された感熱紙テープ55は、平面視でリボン支持孔68の外側を通過しながらアーム部34内の搬送経路に沿って搬送される。さらに、感熱紙テープ55はアーム部34の開口34aからヘッド装着部39に供給されて、サーマルヘッド10とプラテンローラ15との間に搬送される。そして、サーマルヘッド10によって感熱紙テープ55の印字面に対して文字、図形、記号等が印字される。その後、テープ送りローラ46と可動搬送ローラ14との協働によって、印字済みの感熱紙テープ55はさらにテープ排出口49に向かって搬送され、カット機構17によって切断される。
なお、上記の印字実行時には、リボン巻取軸95を介してリボン巻取スプール44も回転駆動される。しかしながら、第1の実施形態のテープカセット30にはリボンスプールが収納されていない。そのため、リボン巻取スプール44による未使用のインクリボンの引き出しや使用済みのインクリボンの巻き取りは行われない。言い換えると、リボン巻取軸95を備えたテープ印字装置1にサーマルタイプのテープカセット30が使用された場合でも、リボン巻取軸95の回転駆動が感熱紙テープ55への印字動作に影響を与えることなく適正に印字を行うことができる。なお、上記のテープカセット30において、リボン巻取スプール44を設けることなく、巻取支持孔67内でリボン巻取軸95を同様に空転させてもよい。
ここで、第1の実施形態における、カセット装着部8に対するテープカセット30の着脱態様について、図14〜図18を参照して説明する。図14〜図16では、テープカセット30の右側面を示しているが、理解を容易にするためにテープカセット30の着脱に関する孔部のみを仮想線(二点鎖線)で示している。また、カセット装着部8を右側からみた概略断面を示しているが、理解を容易にするためにテープカセット30の着脱に関する軸部のみを図示している。ただし、図16では、ガイド孔47およびその近傍を右側面視での断面図として表している。
まず、カセット装着部8に立設された各部材の高さ関係について説明する。第1実施形態では、ヘッドホルダ74、テープ駆動軸100、リボン巻取軸95、補助軸110、ガイド軸120は、少なくとも共通部32の高さ寸法Tよりも大きな軸長(上下方向長さ)を有する。このうち、3つの案内軸(テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120)は、それぞれの軸長が略等しい。さらに、テープ駆動軸100、補助軸110およびガイド軸120の各軸長は、リボン巻取軸95の軸長およびヘッドホルダ74の縦サイズよりも大きい。そのため、ヘッドホルダ74、テープ駆動軸100、リボン巻取軸95、補助軸110が立設された状態では、凹陥部8aの平面部の高さ位置を基準として、テープ駆動軸100および補助軸110の上端における高さ位置が最も大きく、次いでヘッドホルダ74の上端における高さ位置が大きく、リボン巻取軸95の上端における高さ位置が最も小さい。ただし、リボン巻取軸95の上端における高さ位置は、ヘッドホルダ74に固着されているサーマルヘッド10の上端における高さ位置とほぼ等しくなっている。
先述したようにガイド軸120は、凹陥部8aよりも上方に位置するカセット支持部8b上に立設されている。そして、ガイド軸120の上端は、ヘッドホルダ74、テープ駆動軸100、リボン巻取軸95、補助軸110のいずれの上端よりも高さ位置が大きい。なお、テープ駆動軸100および補助軸110の各上端からガイド軸120の上端までの高さ(上下方向長さ)は、テープカセット30の下壁面36から共通部32の下面までの高さ(上下方向長さ)にほぼ等しい。つまり、ガイド軸120は、テープカセット30の厚みが共通部32の段差形状によって小さくなっている分だけ、テープ駆動軸100および補助軸110の高さ位置よりも上方に延びている。
図14に示すように、ユーザがテープカセット30をカセット装着部8に装着する場合は、ローラ支持孔64、第1テープ支持孔65、ガイド孔47をそれぞれテープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120に対して平面視での相対位置をほぼ一致させ、先述したように上壁面35および下壁面36を略水平に維持しつつ垂直に嵌め込む。テープカセット30をカセット装着部8に向けて下方に移動させると、図15に示すようにテープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120の各上端が、テープカセット30の下壁面36に設けられた開口部64b,65b,47bにほぼ同時にそれぞれ進入する。一方、ヘッドホルダ74およびリボン巻取軸95は、それぞれの上端が下壁面36の下方に位置している状態であるため、テープカセット30の内部に進入していない。
図15に示す状態から、テープカセット30をさらに下方に移動させると、テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120はそれぞれ開口部64b,65b,47bを介して軸孔46d,65c,47cに下方から挿入される。軸孔46d,65c,47cの内部では、それぞれに挿入されたテープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120が、各軸孔46d,65c,47cの内壁によって周方向への移動が規制され、その立設方向(つまり、上下方向)に沿って摺動可能な状態となる。言い換えると、テープカセット30は、軸孔46d,65c,47cにそれぞれ挿入されるテープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120の立設方向に沿って案内されつつ、自重の作用も加わって下方に移動する。
なお、テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120の上端縁は、その上端に向けて軸径が小さくなるようなテーパ形状となっている。そのため、ローラ支持孔64、第1テープ支持孔65、ガイド孔47に対して平面視での相対位置に若干ズレが生じていても、テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120を適切かつ円滑に挿入可能である。また、テープ駆動軸100の軸径がテープ送りローラ46(軸孔46d)の開口幅よりも若干小さいため、ローラ支持孔64内でテープ送りローラ46の平面位置が振動や傾斜等によって若干変化しても、テープ駆動軸100を円滑に挿入可能である。
さらに、先述したように、ガイド孔47は、ガイド軸120の先端部(先述の小径軸部120b)の軸径よりも開口幅が大きく、特に前後方向の開口幅よりも左右方向の開口幅が大きい。そのため、テープカセット30の装着時には、ガイド軸120に対する平面視でのガイド孔47の相対位置が若干左右方向にずれていても、ガイド孔47にガイド軸120を挿入可能である。これにより、カセット装着部8に設けられた3つの案内軸の全てに対してテープカセット30の対応する各孔部を正確に位置決めする必要はないため、テープカセット30の装着時におけるユーザの負担が軽減される。また、テープカセット30の製造時において、ローラ支持孔64およびガイド孔47との寸法幅を、テープ駆動軸100とガイド軸120との寸法幅と完全一致させるためには、作業者に高度な寸法精度が要求される。その点、ガイド孔47に左右方向の遊びを形成することで、ガイド孔47を形成する寸法精度の僅かな誤差が許容されるため、テープカセット30の製造時の負担も軽減される。
そして、テープカセット30が下方に案内されるのに伴って、サーマルヘッド10を備えたヘッドホルダ74がヘッド装着部39に下方から挿入され、リボン巻取軸95が開口部67bを介して軸孔44cに下方から挿入される。先述したように、ヘッド装着部39ではヘッドホルダ74が装着されても遊びが生じるため、ヘッド装着部39内でヘッドホルダ74が前後左右方向に変位可能な遊挿状態となる。また、リボン巻取スプール44(軸孔44c)の開口幅はリボン巻取軸95の軸径よりも大きいため、リボン巻取スプール44内でリボン巻取軸95が周方向に変位可能な遊挿状態となる。
図16に示すように、テープカセット30をテープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120に沿って下方に移動させていくと、カセット支持部8b上に立設された位置決めピン103がテープカセット30の右後部に位置する共通部32の下面に接触する。同時に、図16に図示しないが、カセット支持部8b上に立設された位置決めピン102がピン孔53に挿入され、位置決めピン102の上端がピン孔53内の天壁に接触する。つまり、カセット装着部8に装着されたテープカセット30の高さ位置は、位置決めピン102,103によって支持される高さ位置に規定される。
同時に、ガイド軸120の基端側(先述の大径軸部120a)がテーパ部120cに沿って案内されながらガイド孔47(軸孔47c)に嵌め込まれる。先述したように、大径軸部120aの軸径はガイド孔47の開口幅に略等しいため、大径軸部120aはガイド孔47の前後方向から緊密に係止されて、ガイド軸120の周方向(特に、前後方向)への変位が規制される。また、位置決めピン102はピン孔53の内部で係止されて、位置決めピン102の周方向への変位が規制される。つまり、カセット装着部8に装着されたテープカセット30の平面位置は、ガイド軸120および位置決めピン102によって係止される平面位置に規定される。
ところで、サーマルヘッド10による印字は、テープ搬送方向と直交する方向(ここでは、テープカセット30の前後方向)に沿って行われる。そのため、テープに対する印字位置のズレを防止するためには、テープカセット30の前後方向の装着位置が正確に規定されることが好適である。一方、テープカセット30の装着位置がテープ搬送方向(ここでは、テープカセット30の左右方向)に沿って多少ズレが生じたとしても、印字品質に大きな影響を与えない。第1の実施形態のガイド孔47は、ガイド軸120が挿入されると大径軸部120aに対して左右方向に若干の遊びを生じるため、印字品質を犠牲にすることなくテープカセット30の着脱をスムーズにすることができる。
このように、第1の実施形態では、テープカセット30が3つの案内軸(テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120)によってカセット装着部8の適正位置まで案内される。そして、テープカセット30は、ガイド軸120および位置決めピン102によって適正な平面位置に位置決めされるとともに、位置決めピン102,103によって適正な高さ位置に位置決めされる。そして、テープカセット30が適正位置に位置決めされた状態では、図17に示すように、テープ駆動軸100の基端側に設けられたカム部材100aが、テープ送りローラ46の係合リブ46fに適正に噛合される。また、図18に示すように、リボン巻取軸95に設けられたカム部材95aが、リボン巻取スプール44の係合リブ44dに適正に噛合される。また、ヘッドホルダ74に設けられたサーマルヘッド10が、ヘッド装着部39の適正な印字位置に配置される。つまり、先述したように、テープ印字装置1が印字媒体への印字を適切に実行することが可能な状態となる。
なお、テープカセット30をカセット装着部8から取り外す場合は、例えばユーザが左右両端の側壁37を指で挟持しながら、テープカセット30をカセット装着部8から上方に引き抜けばよい。このときも、テープカセット30が3つの案内軸(テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120)によってテープカセット30が上下方向に案内される。よって、テープカセット30をカセット装着部8から取り外す過程で、テープカセット30に傾きが生じてカセット装着部8の内壁等に引っ掛かるおそれが防止される。
ところで、第1の実施形態のテープカセット30は、第1収納領域30c側が下方傾斜しやすい重量バランスを有する。一方、第1収納領域30cには、第1のテープ(感熱紙テープ55)の重心を貫通する第1テープ支持孔65が設けられている。また、テープ印字装置1には、第1テープ支持孔65に挿入される補助軸110が設けられている。テープカセット30の着脱時には、カセット装着部8の内部で浮きや傾きが生じやすい第1収納領域30cが、第1テープ支持孔65に挿入される補助軸110によって上下方向に案内される。そのため、テープカセット30の装着時において、第1収納領域30cが下方傾斜することに起因するテープカセット30の浮きや傾きの発生が抑制される。
また、テープカセット30は、平面視でテープカセット30の一対の対角部(具体的には、ローラ支持孔64およびガイド孔47)と第1のテープの重心位置(具体的には、第1テープ支持孔65)との3点において上下方向に案内される。そのため、カセット装着部8に装着される過程で、テープカセット30に位置ズレや傾きが生じることが適切に防止される。なお、テープカセット30の全体の重心が、平面視でローラ支持孔64、第1テープ支持孔65、ガイド孔47を結ぶ領域内に位置することが好適である。これによれば、平面視でテープカセット30が案内される3点(すなわち、テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120)に、テープカセット30の自重が均等に分散して作用する。そして、テープカセット30の着脱方向への移動がスムーズになるとともに、テープカセット30が装着される過程での位置ズレや傾きの発生がより確実に防止される。
また、テープカセット30は平面視で4つの角部を有するところ、ローラ支持孔64が設けられた左前方の角部と、その対角に位置してガイド孔47が設けられた右後方の角部との少なくとも2点において、テープカセット30の着脱が案内される。テープカセット30の左前方の角部およびその近傍では、テープ送りローラ46によるテープ送り出しが行われるとともに、サーマルヘッド10による印字が行われる。また、テープの送り出しおよび印字のために、カセットケース31からテープが外部に露出している。そのため、この左前方の角部におけるテープカセット30の位置決めが、印字品質やテープ走行に大きな影響を与える。また、テープ送りローラ46によるテープ送り出しを行うためには、テープ送りローラ46を回転させるテープ駆動軸100が必須となる。
以上のことから、テープカセット30が左前方の角部にて着脱方向に案内される構成を採用することで、テープの送り出しおよび印字が行われる位置の近傍でテープカセット30の位置決めを正確に行うことができる。また、テープカセット30の装着過程で外部に露出したテープが他の部材に絡んでしまう不具合(いわゆる、ジャム)の発生を抑制できる。また、テープ駆動軸100を案内軸の一つとして利用することで、テープカセット30の左前方の角部を案内する軸体を別途立設する必要がなく、テープ印字装置1の構造を簡素化することができる。さらに、テープカセット30が右後方の角部にて着脱方向に案内される構成によって、平面視でテープカセット30において最も大きい2点間距離を確保できる両対角位置にてテープカセット30を安定的に着脱方向に案内することができる。
テープカセット30が適正位置に装着された状態では、平面視で分割線Jと分割線Kとが略一致する(図5、図6参照)。そして、カセット装着部8に対して傾きや位置ズレを生じることなく、テープカセット30が凹陥部8aに収容されるとともに共通部32がカセット支持部8bで支持される。ヘッドホルダ74に固設されたサーマルヘッド10が、ヘッド装着部39内の適正な印字位置に配置される。テープ駆動軸100およびリボン巻取軸95が、それぞれテープ送りローラ46およびリボン巻取スプール44に対して軸ズレを生じることなく適切に嵌挿される。プラテンホルダ12に設けられたスイッチ部20(複数の検出スイッチ21)が、アーム側面33に設けられたアーム識別部80(非押圧部81および押圧部82)と位置ズレを生じることなく対向して、テープカセット30の種類が正確に検出される。そのため、テープ印字装置1では、テープやインクリボンの走行不良やサーマルヘッド10での印字不良が発生するおそれが大幅に低減され、適正な印字を実行することが可能である。
尚、上記実施形態では、汎用カセットをサーマルタイプに構成したテープカセット30を、汎用機であるテープ印字装置1にて使用している。それにより、テープ印字装置1は1台でサーマルタイプ、レセプタータイプ、ラミネートタイプ等、各種のテープカセットに対応させることが可能であり、1台毎に異なるテープ印字装置を用いる必要がない。また、テープカセットの製造に際し、カセットケースは通常複数の金型を組み合わせた上で樹脂を流し込んで形成するが、同じテープ幅のテープに対応したテープカセットであれば、アーム識別部80を形成する部分に含む金型等、一部の金型を除いて共通の金型を使用可能なため大変なコスト削減になる。この利点を生かした形で、サーマルタイプのテープカセットを作成しようとした場合、上記実施形態のように、汎用のカセットケースに対し、感熱紙テープ55は第1テープスプール40に巻回することが、長い感熱紙テープ55を収納するためには有効である。
ところで、上記実施形態では、汎用カセットをサーマルタイプに構成したテープカセット30を、汎用機であるテープ印字装置1に使用する場合を例示したが、これに限定されない。
例えば、図19および図21に示すように、印字媒体への印字にインクリボンを使用しないサーマルタイプ専用のテープ印字装置1を構成する。すなわち、テープ印字装置1がサーマルタイプのテープカセット30のみが使用される専用機であれば、リボン巻取スプール44を回転させるリボン巻取軸95を備えていなくてもよい。そのため、ギヤ94にリボン巻取軸95が立設されていない。
一方、図20および図21に示すように、感熱紙テープのみを収納可能なサーマルタイプ専用のテープカセット30を構成する。すなわち、テープカセット30がサーマルタイプ専用であれば、他の印字媒体やインクリボンを収納するための構成を備えていなくてもよい。そのため、第2テープスプールおよび第2テープスプールを支持するための第2テープ支持孔66と、リボン巻取スプール44およびリボン巻取スプール44を支持するための巻取支持孔67と、リボンスプールおよびリボンスプールを支持するリボン支持孔68とが設けられていない。
このような構成を採用した場合も、先述と同様の態様で、テープカセット30がテープ印字装置1に着脱される。すなわち、3つの案内軸(テープ駆動軸100、ガイド軸120、補助軸110)が対応する3つの案内孔(ローラ支持孔64、ガイド孔47、第1テープ支持孔65)にそれぞれ挿入されることによって、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に案内される(図22参照)。
なお、図20および図21に示す専用カセットのテープカセット30では、図8および図9に示す汎用カセットのテープカセット30と比較して、第2収納領域30d側にリボン巻取スプール44等が存在しない分だけ、第1収納領域30cの重量がさらに大きくなる。そうすると、テープカセット30の装着時に第1収納領域30c側がさらに下方傾斜しやすくなり、カセット装着部8においてテープカセット30の傾きや浮きが生じやすくなる。第1の実施形態によれば、先述したように第1収納領域30cを貫通するガイド孔47に補助軸110が挿入されて、テープカセット30の着脱が案内される。そのため、テープカセット30における第1収納領域30cの重量が大きくなったとしても、テープカセット30の傾きや浮きを防止することができる。
また、上記実施形態では、平面視で第1テープ支持孔65の軸孔65cの開口中心に、軸孔65cの開口幅よりも若干軸径が小さい補助軸110が挿脱される場合を例示したが(図5、6等参照)、これに限定されない。すなわち、補助軸110は、平面視でカセット装着部8に着脱されるテープカセット30が傾斜しやすい方向に位置し、且つ、軸孔65cの内周面に接触するように設けられてもよい。
例えば、図23に示す補助軸110は、軸孔65cの開口幅よりも軸径が小さく(ここでは、軸孔65cの1/2程度)、カセット装着部8にテープカセット30を装着した場合に平面視で軸孔65cの開口中心よりも左上側に位置するように設けられている。補助軸110は、軸孔65cの開口幅よりも軸径が小さい一方、軸孔65cの内周面における平面視で左上部分(以下、左後側面)に接触する。そのため、テープカセット30の着脱時には、上記実施形態と同様に、補助軸110が軸孔65cの内周面に接触しながら挿脱されることによって、テープカセット30が補助軸110に沿って案内される。
ここで、カセット装着部8に着脱されるテープカセット30は、2つの案内軸(テープ駆動軸100およびガイド軸120)に沿って案内された場合、その着脱時に傾きが生じやすい方向は分割線Kと直交する方向F(図23の一点鎖線)となる。一方、図23に示す補助軸110が接触する軸孔65cの左後側面は、軸孔65cを平面視したときに、テープカセット30に傾きが生じやすい直交方向Fにおける回転中心(分割線K)から最も離間した位置である。
つまり、図23に示す補助軸110は、第1テープ支持孔65の適正な平面位置を、平面視で分割線Kからの距離によって規定している。そして、補助軸110が軸孔65cの左後側面に接触していることで、テープカセット30が平面視で分割線Kを回転中心として直交方向Fに傾斜することが抑止される。なお、図23では補助軸110を軸孔65cの開口中心よりも左上側に位置するように設けているが、テープカセット30が傾斜しやすい他の方向(例えば、軸孔65cの開口中心よりも左側または上側)に位置するように設けても、上記と同様の効果が得られる。
<第2の実施形態>
図24〜図31を参照して、第2の実施形態に係るテープ印字装置1およびテープカセット30について説明する。第2の実施形態では、テープカセット30が一の印字媒体(具体的には、非感熱式の印字テープ)およびインクリボンを収納するとともに、テープ印字装置1への着脱を案内するための2つの案内孔を有する場合を例示する。また、テープ印字装置1が上記の2つの案内孔に対応して、テープカセット30を適正位置に案内する2つの案内軸を有する場合を例示する。
図24〜図26に示すように、第2の実施形態に係るテープ印字装置1は、第1の実施形態に係るテープ印字装置1(図1〜図7参照)と同様に、テープ種類が異なる複数のテープカセット30を共通して使用可能な汎用機である。ただし、補助軸110が設けられていない点が、第1の実施形態に係るテープ印字装置1とは異なる。
図24に示すように、第2の実施形態に係るテープカセット30は、第1の実施形態に係るテープカセット30(図3、図7〜図13参照)と同様に、各種のテープ種類を実装可能な汎用カセットである。ただし、図26に示すように、第2の実施形態のテープカセット30は、第1テープ支持孔65によって第1テープスプール40が回転支持されるとともに、第1のテープとして非感熱式の印字テープ57が第1テープスプール40に巻回されている。また、リボン支持孔68によってリボンスプール42が回転支持されるとともに、印字テープ57への印字に使用されるインクリボン60がリボンスプール42に巻回されている。つまり、第2の実施形態のテープカセット30は、所謂レセプタータイプのテープカセットとして実装されている。なお、レセプタータイプのテープカセット30は他の印字媒体を収納する必要がないため、第2のテープが巻回される第2テープスプールを備えていない。
上記説明したテープ印字装置1およびテープカセット30では、テープ印字装置1における印字実行時に、テープ駆動軸100を介して回転駆動されるテープ送りローラ46が、可動搬送ローラ14との協働によって第1テープスプール40から印字テープ57を引き出す。また、リボン巻取軸95を介して回転駆動されるリボン巻取スプール44が、印字スピードと同期してリボンスプール42から未使用のインクリボン60を引き出す。第1テープスプール40から引き出された印字テープ57は、平面視でリボン支持孔68の外側を通過しながらアーム部34内の搬送経路に沿って搬送される。さらに、印字テープ57はその表面にインクリボン60が重合された状態で開口34aからヘッド装着部39に供給され、テープ印字装置1のサーマルヘッド10とプラテンローラ15との間に搬送される。そして、サーマルヘッド10によって印字テープ57の印字面に対して文字、図形、記号等が印字される。その後、使用済みのインクリボン60は案内壁38にて印字済みの印字テープ57から剥がされ、リボン巻取スプール44に巻き取られる。一方、印字済みの印字テープ57はさらにテープ排出口49に向かって搬送され、カット機構17によって切断される。
図8、図9、図26に示すように、第2の実施形態に係るテープカセット30に設けられた各部の位置関係は、第1の実施形態と同様であるが次の点で異なる。すなわち、第1テープ支持孔65では、印字テープ57が巻回された第1テープスプール40が回転支持されている。そのため、印字テープ57の重心が、平面視で第1収納領域30cの範囲内に位置している。一方、リボン支持孔68では、未使用のインクリボン60が巻回されたリボンスプール42が回転支持されている。巻取支持孔67では、使用済みのインクリボン60が巻回されたリボン巻取スプール44が回転支持されている。そのため、インクリボン60の重心が、平面視で第2収納領域30dの範囲内に位置している。
上記のような位置関係によって、第2の実施形態に係るテープカセット30では、分割線Kを基準とした第1収納領域30cと第2収納領域30dとの重量が近似する。このような重量バランスを有するテープカセット30を、例えばユーザが左右両端の側壁37を指で挟持しながら上壁面35および下壁面36を略水平に維持しつつカセット装着部8に垂直に嵌め込む。このとき、テープカセット30における重量の偏りが少ないことによって、分割線Kを回転中心としてテープカセット30が傾斜することが抑制される。さらに、一般に印字テープ57のほうがインクリボン60よりも重量が大きいところ、リボン巻取スプール44の重みによって第1収納領域30cと第2収納領域30dとの重量差がさらに小さくなっている(つまり、テープカセット30の重量の偏りが軽減されている)。
第2の実施形態における、カセット装着部8に対するテープカセット30の着脱態様について、図27および図28を参照して説明する。なお、カセット装着部8に立設された各部材の高さ関係については、補助軸110が設けられていない点を除いて、第1の実施形態と同様である。
ユーザがテープカセット30をカセット装着部8に装着する場合は、ローラ支持孔64およびガイド孔47をそれぞれテープ駆動軸100およびガイド軸120に対して平面視での相対位置をほぼ一致させ、先述したように上壁面35および下壁面36を略水平に維持しつつ垂直に嵌め込む。テープカセット30をカセット装着部8に向けて下方に移動させると、図27に示すようにテープ駆動軸100およびガイド軸120の各上端が、テープカセット30の下壁面36に設けられた開口部64b,47bにほぼ同時にそれぞれ進入する。
図27に示す状態から、テープカセット30をさらに下方に移動させると、テープ駆動軸100およびガイド軸120はそれぞれ開口部64b,47bを介して軸孔46d,47cに下方から挿入される。そして、テープカセット30は、軸孔46d,47cにそれぞれ挿入されるテープ駆動軸100およびガイド軸120の立設方向(つまり、上下方向)に沿って案内されつつ、自重の作用も加わって下方に移動する。これに伴って、サーマルヘッド10を備えたヘッドホルダ74がヘッド装着部39に挿入されるとともに、リボン巻取軸95が開口部67bを介して軸孔44cに下方から挿入される。
図28に示すように、テープカセット30をテープ駆動軸100およびガイド軸120に沿って下方に移動させていくと、カセット支持部8b上に立設された位置決めピン103がテープカセット30の右後部に位置する共通部32の下面に接触する。同時に、図28に図示しないが、カセット支持部8b上に立設された位置決めピン102がピン孔53に挿入され、位置決めピン102の上端がピン孔53内の天壁に接触する。このように、第2実施形態では、テープカセット30が2つの案内軸(テープ駆動軸100およびガイド軸120)によってカセット装着部8の適正位置まで案内される。そして、テープカセット30は、ガイド軸120および位置決めピン102によって適正な平面位置に位置決めされるとともに、位置決めピン102,103によって適正な高さ位置に位置決めされる。テープカセット30をカセット装着部8から取り外す場合も、テープカセット30が2つの案内軸に沿って上方に案内される。
なお、第2の実施形態のガイド孔47は、平面視で左右方向を長径とし、前後方向を短径とする楕円形状の開口をなす。ガイド孔47の径(長径および短径)は、ガイド軸120の小径軸部120bの直径よりも大きく、特に前後方向の開口幅よりも左右方向の開口幅が大きい。また、ガイド孔47の短径はガイド軸120の大径軸部120aの直径と略等しいため、ガイド軸120が挿入されると大径軸部120aに対して前後方向から緊密に係止する一方、大径軸部120aの左右方向に遊びを生じる。よって、第1の実施形態と同様に、カセット装着部8に設けられた2つの案内軸の全てに対してテープカセット30の対応する各孔部を正確に位置決めする必要がなく、テープカセット30の装着時におけるユーザの負担などが軽減される。また、印字品質を犠牲にすることなくテープカセット30の着脱をスムーズにすることができる。
第2の実施形態のテープカセット30は、第1収納領域30cと第2収納領域30dとで重量が近似した重量バランスを有する。そのため、テープカセット30をカセット装着部8に装着する過程で、テープカセット30の自重による傾きが生じにくい。よって、第1の実施形態のように補助軸110を設けなくても、テープカセット30を2つの案内軸(テープ駆動軸100およびガイド軸120)によってカセット装着部8の適正位置まで案内することができる。
さらに、テープカセット30は、平面視でテープカセット30の一対の対角部(具体的には、ローラ支持孔64およびガイド孔47)の2点において上下方向に案内される。つまり、印字テープ57の重心位置とインクリボン60の重心位置との間を通る分割線Kを中心に、テープカセット30が着脱方向に案内される。そのため、カセット装着部8に装着される過程で、テープカセット30に位置ズレや傾きが生じることが適切に防止される。
ところで、上記実施形態では、汎用カセットをレセプタータイプに構成したテープカセット30を、汎用機であるテープ印字装置1に使用する場合を例示したが、これに限定されない。
例えば、図29および図30に示すように、印字テープおよびインクリボンのみを収納可能なレセプタータイプ専用のテープカセット30を構成する。すなわち、テープカセット30がレセプタータイプ専用であれば、他の印字媒体を収納するための構成を備えていなくてもよい。そのため、第2テープスプールおよび第2テープスプールを支持するための第2テープ支持孔66が設けられていない。
また、第2の実施形態のテープ印字装置1は補助軸110を備えていないため、テープカセット30に補助軸110が挿入される第1テープ支持孔65を設けなくてもよい。例えば、図29に示すように第1テープ支持孔65に代えて、カセットケース31の内部で第1テープスプール40を軸支する筒壁部65dを、上壁面35および下壁面36に亘って立設してもよい。
このような構成を採用した場合も、先述と同様の態様で、テープカセット30がテープ印字装置1に着脱される。すなわち、2つの案内軸(テープ駆動軸100およびガイド軸120)が対応する2つの案内孔(ローラ支持孔64およびガイド孔47)にそれぞれ挿入されることによって、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に案内される(図28参照)。
なお、上記実施形態では、印字テープ57の重心が第1収納領域30cに位置し、インクリボン60の重心が第2収納領域30dに位置する構成によって、テープカセット30の重量バランスが調整されている。しかしながら、印字テープ57はそのテープの厚みや材質の違いによって重量が変化する。例えばテープの材質等によって重量の大きい印字テープ57が使用されると、2つの案内孔(ローラ支持孔64およびガイド孔47)で結んだ線上にテープカセット30の重心が位置せず、第1収納領域30c側に偏ることが想定される。
この場合は、図31に示すように、第1の実施形態と同様に、テープカセット30を第1テープ支持孔65が設けられた構成(図24参照)とし、テープ印字装置1を先述の補助軸110が設けられた構成(図3、図4等参照)とすればよい。そうすると、第1の実施形態と同様に、カセット装着部8に対して着脱されるテープカセット30は、2つの案内軸(テープ駆動軸100およびガイド軸120)に加えて補助軸110によっても案内される(図14〜図16参照)。つまり、印字テープ57の重量が大きいためにテープカセット30全体の重心が第1収納領域30c側に偏った場合でも、第1の実施形態と同様にテープカセット30をカセット装着部8にスムーズに装着することができる。
<第3の実施形態>
図32〜図35を参照して、第3の実施形態に係るテープ印字装置1およびテープカセット30について説明する。第3の実施形態では、テープカセット30が一の印字媒体(具体的には、感熱紙テープ)を収納するとともに、テープ印字装置1への着脱を案内するための2つの案内孔を有する場合を例示する。また、テープ印字装置1が上記の2つの案内孔に対応して、テープカセット30を適正位置に案内する2つの案内軸を有する場合を例示する。
図32に示すように、第3の実施形態に係るテープ印字装置1は、第2の実施形態に係るテープ印字装置1(図24〜図26参照)と同様に、テープ種類が異なる複数のテープカセット30を共通して使用可能な汎用機であって、第1の実施形態とは異なり補助軸110は設けられていない。
第3の実施形態に係るテープカセット30は、第1の実施形態に係るテープカセット30(図3、図7〜図13参照)と同様に、各種のテープ種類を実装可能な汎用カセットである。ただし、図32に示すように、第3の実施形態のテープカセット30は、第2テープ支持孔66によって第2テープスプール41が回転支持されるとともに、第2のテープとして感熱紙テープ55が第2テープスプール41に巻回されている。つまり、第3の実施形態のテープカセット30は、所謂サーマルタイプのテープカセットとして実装されている。なお、サーマルタイプのテープカセット30は他の印字媒体およびインクリボンを収納する必要がないため、第1のテープが巻回される第1テープスプールおよびインクリボンが巻回されるリボンスプールを備えていない。
上記説明したテープ印字装置1およびテープカセット30では、第1の実施形態と同様に、感熱紙テープ55への印字が実行される。ただし、第1の実施形態とは異なり、感熱紙テープ55は第2テープスプール41から引き出される。
図8、図9、図32に示すように、第3の実施形態に係るテープカセット30に設けられた各部の位置関係は、第1の実施形態と同様であるが次の点で異なる。すなわち、第2テープ支持孔66では、感熱紙テープ55が巻回された第2テープスプール41が回転支持されている。そのため、感熱紙テープ55の重心が、平面視で分割線K上に位置している。
上記のような位置関係によって、第3の実施形態に係るテープカセット30では、テープカセット30全体の重心が平面視で分割線K上またはその近傍に位置する。このような重量バランスを有するテープカセット30を、例えばユーザが左右両端の側壁37を指で挟持しながら上壁面35および下壁面36を略水平に維持しつつカセット装着部8に垂直に嵌め込む。このとき、テープカセット30の重心が分割線K上またはその近傍に位置することによって、分割線Kを回転中心としてテープカセット30が傾斜することが抑制される。
第3の実施形態におけるカセット装着部8に対するテープカセット30の着脱態様は、第2の実施形態(図27および図28参照)と同様である。すなわち、テープカセット30は、2つの案内軸(テープ駆動軸100およびガイド軸120)によってカセット装着部8の適正位置まで案内される。テープカセット30をカセット装着部8から取り外す場合も、テープカセット30が2つの案内軸に沿って上方に案内される。
なお、第3の実施形態のガイド孔47は、平面視で真円形状の開口をなし、ガイド軸120の小径軸部120bの軸径よりも開口幅が大きい。そのため、第1の実施形態と同様に、カセット装着部8に設けられた2つの案内軸の全てに対してテープカセット30の対応する各孔部を正確に位置決めする必要がなく、テープカセット30の装着時におけるユーザの負担などが軽減される。ただし、ガイド孔47の直径は、ガイド軸120の大径軸部120aの軸径と略等しい。そのため、ガイド孔47にガイド軸120が挿入された場合は、大径軸部120aがガイド孔47の全周方向から緊密に係止される。これによれば、カセット装着部8に装着されたテープカセット30をより正確な平面位置に位置決めすることができる。
第3の実施形態のテープカセット30は、平面視で分割線K上またはその近傍に重心が位置する重量バランスを有する。そのため、テープカセット30をカセット装着部8に装着する過程で、テープカセット30の自重による傾きが生じにくい。よって、第1の実施形態のように補助軸110を設けなくても、テープカセット30を2つの案内軸(テープ駆動軸100およびガイド軸120)によってカセット装着部8の適正位置まで案内することができる。
さらに、テープカセット30は、平面視でテープカセット30の一対の対角部(具体的には、ローラ支持孔64およびガイド孔47)の2点において上下方向に案内される。つまり、感熱紙テープ55の重心位置またはその近傍を通る分割線Kを中心に、テープカセット30が着脱方向に案内される。そのため、カセット装着部8に装着される過程で、テープカセット30に位置ズレや傾きが生じることが適切に防止される。
ところで、上記実施形態では、汎用カセットをサーマルタイプに構成したテープカセット30を、汎用機であるテープ印字装置1に使用する場合を例示したが、これに限定されない。
例えば、図19および図34に示すように、印字媒体への印字にインクリボンを使用しないサーマルタイプ専用のテープ印字装置1を構成する。先述したように、サーマルタイプ専用のテープ印字装置1はリボン巻取軸95を備えていないが、ここでは図19に示すテープ印字装置1とは異なり補助軸110も備えていない(図34参照)。一方、図33および図34に示すように、感熱紙テープのみを収納可能なサーマルタイプ専用のテープカセット30を構成する。ただし、図20および図21に示すサーマルタイプ専用のテープカセット30とは異なり、先述のように感熱紙テープ55を分割線K上に収納可能に構成される。そのため、第1テープスプールおよび第1テープスプールを支持するための第1テープ支持孔65と、リボン巻取スプール44およびリボン巻取スプール44を支持するための巻取支持孔67と、リボンスプールおよびリボンスプールを支持するリボン支持孔68とが設けられていない。
このような構成を採用した場合も、先述と同様の態様で、テープカセット30がテープ印字装置1に着脱される。すなわち、図35に示すように、2つの案内軸(テープ駆動軸100およびガイド軸120)が対応する2つの案内孔(ローラ支持孔64およびガイド孔47)にそれぞれ挿入されることによって、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に案内される。
<第4の実施形態>
図36および図37を参照して、第4の実施形態に係るテープ印字装置1およびテープカセット30について説明する。第4の実施形態では、テープカセット30が二の印字媒体(具体的には、両面粘着テープおよびフィルムテープ)およびインクリボンを収納するとともに、テープ印字装置1への着脱を案内するための2つの案内孔を有する場合を例示する。また、テープ印字装置1が上記の2つの案内孔に対応して、テープカセット30を適正位置に案内する2つの案内軸を有する場合を例示する。
図36および図37に示すように、第4の実施形態に係るテープ印字装置1は、第2の実施形態に係るテープ印字装置1(図24〜図26参照)と同様に、テープ種類が異なる複数のテープカセット30を共通して使用可能な汎用機であって、第1の実施形態とは異なり補助軸110は設けられていない。
第4の実施形態に係るテープカセット30は、第1の実施形態に係るテープカセット30(図3、図7〜図13参照)と同様に、各種のテープ種類を実装可能な汎用カセットである。ただし、図36および図37に示すように、第4の実施形態のテープカセット30は、第1テープ支持孔65によって第1テープスプール40が回転支持されるとともに、第1のテープとして両面粘着テープ58が第1テープスプール40に巻回されている。第2テープ支持孔66によって第2テープスプール41が回転支持されるとともに、第2のテープとしてフィルムテープ59が第2テープスプール41に巻回されている。リボン支持孔68によってリボンスプール42が回転支持されるとともに、インクリボン60がリボンスプール42に巻回されている。つまり、第4の実施形態のテープカセット30は、所謂ラミネートタイプのテープカセットとして実装されている。
上記説明したテープ印字装置1およびテープカセット30では、テープ印字装置1における印字実行時に、テープ駆動軸100を介して回転駆動されるテープ送りローラ46が、可動搬送ローラ14との協働によって第2テープスプール41からフィルムテープ59を引き出す。また、リボン巻取軸95を介して回転駆動されるリボン巻取スプール44が、印字スピードと同期してリボンスプール42から未使用のインクリボン60を引き出す。第2テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59は、平面視でリボン支持孔68の外側を通過しながらアーム部34内の搬送経路に沿って搬送される。さらに、フィルムテープ59はその表面にインクリボン60が重合された状態で開口34aからヘッド装着部39に供給され、テープ印字装置1のサーマルヘッド10とプラテンローラ15との間に搬送される。そして、サーマルヘッド10によってフィルムテープ59の印字面に対して文字、図形、記号等が印字される。その後、使用済みのインクリボン60は案内壁38にて印字済みのフィルムテープ59から剥がされ、リボン巻取スプール44に巻き取られる。一方、テープ送りローラ46と可動搬送ローラ14との協働によって、第1テープスプール40から両面粘着テープ58が引き出される。この両面粘着テープ58は、テープ送りローラ46と可動搬送ローラ14との間にガイドされて巻き込まれながら、印字済みのフィルムテープ59の印字面に重ねられて貼着される。両面粘着テープ58が貼着された印字済みのフィルムテープ59(つまり、印字済テープ50)は、さらにテープ排出口49に向かって搬送されてカット機構17によって切断される。
図8、図9、図36に示すように、第4の実施形態に係るテープカセット30に設けられた各部の位置関係は、第1の実施形態と同様であるが次の点で異なる。すなわち、第1テープ支持孔65では、両面粘着テープ58が巻回された第1テープスプール40が回転支持されている。そのため、両面粘着テープ58の重心が、平面視で第1収納領域30cの範囲内に位置している。一方、リボン支持孔68では、未使用のインクリボン60が巻回されたリボンスプール42が回転支持されている。巻取支持孔67では、使用済みのインクリボン60が巻回されたリボン巻取スプール44が回転支持されている。そのため、インクリボン60の重心が、平面視で第2収納領域30dの範囲内に位置している。なお、第2テープ支持孔66では、フィルムテープ59が巻回された第2テープスプール41が回転支持されている。そのため、フィルムテープ59の重心が、平面視で分割線K上に位置している。
上記のような位置関係によって、第4の実施形態に係るテープカセット30では、分割線Kを基準とした第1収納領域30cと第2収納領域30dとの重量が近似する。さらに、テープカセット30全体の重心が、平面視で分割線K上またはその近傍に位置する。このような重量バランスを有するテープカセット30を、例えばユーザが左右両端の側壁37を指で挟持しながら上壁面35および下壁面36を略水平に維持しつつカセット装着部8に垂直に嵌め込む。このとき、テープカセット30における重量の偏りが少ないことと、テープカセット30の重心が分割線K上またはその近傍に位置することとが相まって、分割線Kを回転中心としてテープカセット30が傾斜することが抑制される。さらに、一般に両面粘着テープ58のほうがインクリボン60よりも重量が大きいところ、リボン巻取スプール44の重みによって第1収納領域30cと第2収納領域30dとの重量差がさらに小さくなっている(つまり、テープカセット30の重量の偏りが軽減されている)。
第4の実施形態におけるカセット装着部8に対するテープカセット30の着脱態様は、第2の実施形態(図27および図28参照)と同様である。すなわち、図37に示すように、テープカセット30は、2つの案内軸(テープ駆動軸100およびガイド軸120)によってカセット装着部8の適正位置まで案内される。テープカセット30をカセット装着部8から取り外す場合も、テープカセット30が2つの案内軸に沿って上方に案内される。
なお、第4実施形態のガイド孔47は、平面視で左右方向の開口幅が前後方向の開口幅よりも大きい略長方形状の開口をなし、かつ、平面視でその四隅が丸みを帯びるような開口形状を有する長孔である。ガイド孔47の前後方向および左右方向の各開口幅は、ガイド軸120の小径軸部120bの直径よりも大きく、特に前後方向の開口幅よりも左右方向の開口幅が大きい。また、ガイド孔47の前後方向の開口幅は、ガイド軸120の大径軸部120aの直径と略等しいため、ガイド軸120が挿入されると大径軸部120aに対して前後方向から緊密に係止する一方、大径軸部120aの左右方向に遊びを生じる。よって、第1の実施形態と同様に、カセット装着部8に設けられた2つの案内軸の全てに対してテープカセット30の対応する各孔部を正確に位置決めする必要がなく、テープカセット30の装着時におけるユーザの負担などが軽減される。また、印字品質を犠牲にすることなくテープカセット30の着脱をスムーズにすることができる。
第4の実施形態のテープカセット30は、第1収納領域30cと第2収納領域30dとで重量が近似し、かつ、平面視で分割線K上またはその近傍に重心が位置する重量バランスを有する。そのため、テープカセット30をカセット装着部8に装着する過程で、テープカセット30の自重による傾きが生じにくい。よって、第1の実施形態のように補助軸110を設けなくても、テープカセット30を2つの案内軸(テープ駆動軸100およびガイド軸120)によってカセット装着部8の適正位置まで案内することができる。
さらに、テープカセット30は、平面視でテープカセット30の一対の対角部(具体的には、ローラ支持孔64およびガイド孔47)の2点において上下方向に案内される。つまり、両面粘着テープ58の重心位置とインクリボン60の重心位置との間を通り、かつ、フィルムテープ59の重心位置またはその近傍を通る分割線Kを中心に、テープカセット30が着脱方向に案内される。そのため、カセット装着部8に装着される過程で、テープカセット30に位置ズレや傾きが生じることが適切に防止される。
ところで、上記実施形態では、2つの案内軸を備えたテープ印字装置1に、汎用カセットをラミネートタイプに構成したテープカセット30を使用する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、第4の実施形態に係るテープカセット30を、第1の実施形態に係る3つの案内軸を備えたテープ印字装置1に装着してもよい。この場合は、第1の実施形態と同様に、3つの案内軸(テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120)が対応する3つの案内孔(ローラ支持孔64、第1テープ支持孔65、ガイド孔47)にそれぞれ挿入されることによって、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に案内される(図14〜図16参照)。
<第1〜第4の実施形態の共通要素について>
上記第1〜第4の実施形態では、各種のテープカセット30およびテープ印字装置1に本発明を適用した場合を個別具体的に説明した。ここで、第1〜第4の実施形態に例示したテープカセット30およびテープ印字装置1において、本発明を実現するために必要となる共通要素について説明する。
第1〜第4の実施形態に係るテープカセット30は、略矩形状をなす箱状ケース(カセットケース31)を備える。箱状ケースは、その角部を規定する上面(上壁面35)、下面(下壁面36)および前面,背面,左側面,右側面(側壁37)を備える。箱状ケースの内部では、その角部内で規定されたテープ収納領域(第1収納領域30c,第2収納領域30d)に、少なくとも一のテープ(感熱紙テープ55,印字テープ57,両面粘着テープ58,フィルムテープ)が支持される。下面から延びる一対の凹部(ローラ支持孔64およびガイド孔47)が、テープ収納領域と、略矩形状をなす箱状ケースにおける対角上に対向する両端の角部(第1孔形成領域30aおよび第2孔形成領域30b)との間に設けられる。
第1〜第4の実施形態に係るテープ印字装置1は、上記のテープカセット30が装着されると、一対の凹部(ローラ支持孔64およびガイド孔47)にそれぞれ挿入されて、テープカセット30を着脱方向に案内する2つの案内軸(テープ駆動軸100およびガイド軸120)を少なくとも備えている。
上記のような共通要素により、第1〜第4の実施形態では、テープ収納領域に収納された重量物であるテープがテープカセット30の重量バランスに与える影響に関わらず、一対の凹部のそれぞれに挿入される2つの案内軸に沿って、テープ印字装置1に対するテープカセット30の着脱をより正確かつスムーズに行うことができるという共通の効果を奏する。さらに、第1〜第4の実施形態では、上記の共通要素およびその効果を基礎として、各実施形態に個別の構成および効果を奏することは、先述したとおりである。
ところで、上記実施形態において、ローラ支持孔64が本発明の「第1開口部」に相当する。ガイド孔47が本発明の「第2開口部」に相当する。第3の実施形態において第2テープスプール41に巻回された感熱紙テープ55と、第4の実施形態において第2テープスプール41に巻回されたフィルムテープ59と、後述する変形例において第2テープスプール41に巻回された感熱紙テープ55とが、本発明の「テープロール」に相当する。ガイド軸120が、本発明の「案内部」に相当する。第2テープ支持孔66が、本発明の「ロール支持部」に相当する。第4の実施形態において第1テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58と、後述する変形例において第1テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58とが、本発明の「粘着テープロール」にそれぞれ相当する。リボンスプール42に巻回されたインクリボン60が、本発明の「リボンロール」に相当する。第1テープ支持孔65が本発明の「第3開口部」に相当する。
なお、本発明は上記第1〜第4の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更が可能である。また、上記第1〜第4の実施形態を適宜組み合わせて、テープ印字装置1およびテープカセット30を実装することが可能である。以下、上記実施形態に係るテープ印字装置1およびテープカセット30の変形例について説明する。
例えば、上記実施形態では、カセット装着部8がテープカセット30の平面形状と略対応する矩形状開口を有する収容部として構成されているが、これに限定されない。また、カセット装着部8の内部に共通部32を下方から支持するカセット支持部8bが設けられているが、これに限定されない。具体的には、図38および図39に示すように、カセット装着部8をテープカセット30の平面形状よりも大きな平面部として構成してもよい。この場合、図40に示すように、テープ駆動軸100、ガイド軸120、補助軸110、リボン巻取軸95、位置決めピン102,103、ヘッドホルダ74は、上記実施形態と同様の位置関係かつ、それらの上端は上記実施形態と同様の高さ関係で、カセット装着部8における同一の高さ位置から立設される(言い換えると、共通の平面上に立設される)。なお、位置決めピン102,103およびガイド軸120は、上記実施形態と比較して、カセット支持部8bの高さ分だけ軸長が大きくなっている。
カセット装着部8をテープカセット30の平面形状よりも大きな平面部として構成しても、テープカセット30の着脱態様は上記実施形態と同様である。すなわち、テープカセット30が3つの案内軸(テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120)によってカセット装着部8の適正位置まで案内される。そして、テープカセット30は、ガイド軸120および位置決めピン102によって適正な平面位置に位置決めされるとともに、位置決めピン102,103によって適正な高さ位置に位置決めされる。言い換えると、カセット装着部8の適正位置は、ガイド軸120および位置決めピン102,103によって規定される。そのため、カセット装着部8がテープカセット30の平面形状と対応していない場合でも、テープカセット30を適正位置に位置決めすることができる。
ところで、先述したように、テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120は、カセット装着部8に装着されるテープカセット30の開口部64b,65b,47bに、それぞれ同タイミングで挿入されることが好ましい。図40に示すように、テープ幅が大きいテープカセット30(例えば、36mm)では、共通部32において厚み方向(つまり、上下方向)に段差を生じる。そのため、共通部32の下面に形成された開口部47bに挿入されるガイド軸120は、共通部32にて形成される段差分だけ、テープ駆動軸100および補助軸110よりも上端の高さ位置が大きい。つまり、テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120の各上端の高さ位置は、カセット装着部8に装着されるテープカセット30の開口部64b,65b,47bの高さ位置によって規定される。
図41に示すように、テープ幅が小さいテープカセット30(例えば、12mm)では、共通部32において厚み方向(つまり、上下方向)に段差を生じないため、開口部64b,65b,47bの高さ位置がほぼ等しい。そのため、テープ幅が小さいテープカセット30が使用されるテープ印字装置1では、テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120の各上端の高さ位置をほぼ等しくすることが好適である。つまり、カセット装着部8に装着されるテープカセット30の開口部64b,65b,47bの高さ位置に応じて、テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120の各上端の高さ位置を適宜変更することが好適である。これによれば、テープカセット30の厚み(上下方向長さ)に対応して、3つの案内軸(テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120)を3つの案内孔(ローラ支持孔64、ガイド孔47、第1テープ支持孔65)にそれぞれ同タイミングで挿入させることができる。
さらに、テープ幅がより大きいテープカセット30(例えば、48mm)に対応して、ガイド軸120をより高い位置まで立設する(例えば、ガイド軸120の軸長を大きくする)ことが考えられる。しかしながら、テープ印字装置1(特に、カセット装着部8)の形状や大きさ等によって、ガイド軸120の軸長に制約が生じることがある。この場合には、テープカセット30をカセット装着部8に装着するときに、まず2つの案内軸(テープ駆動軸100および補助軸110)が2つの案内孔(ローラ支持孔64および第1テープ支持孔65)に挿入される。そして、テープカセット30が2つの案内軸によって案内されつつ下方に移動する過程で、3つ目の案内軸(ガイド軸120)が3つ目の案内孔(ガイド孔47)に挿入される装着態様となる。かかる装着態様では、ガイド軸120がガイド孔47に挿入される前に、ヘッドホルダ74およびリボン巻取軸95がそれぞれヘッド装着部39および巻取支持孔67に挿入されることがある。
しかしながら、先述したようにヘッド装着部39および巻取支持孔67は、ヘッドホルダ74およびリボン巻取軸95がそれぞれ遊挿される開口幅を有する。そのため、テープカセット30の装着過程において、ヘッドホルダ74およびリボン巻取軸95が他の部材に接触してテープカセット30の装着を妨げるような不具合の発生が抑制される。また、テープカセット30が2つの案内軸のみによって案内される過程で、ヘッド装着部39に対するヘッドホルダ74への装着状態に位置ズレや傾斜を生じたとしても、ガイド軸120がガイド孔47に挿入されると適正な装着状態に補正される(巻取支持孔67およびリボン巻取軸95も同様)。よって、ガイド軸120の上端位置に制約がある場合でも、テープカセット30をカセット装着部8の適正位置に案内および位置決めすることができる。
さらにいえば、テープ駆動軸100および補助軸110がそれぞれヘッドホルダ74およびリボン巻取軸95の高さと比較して同等または低く、かつ、テープカセット30の装着開始時にガイド軸120がガイド孔47に臨んでいなくても、上記実施形態と同様の効果を奏する。ここで、テープカセット30をカセット装着部8に装着する過程で、テープ駆動軸100、補助軸110およびガイド軸120がそれぞれ第1テープ支持孔65、ローラ支持孔64およびガイド孔47に挿入されるよりも先に、ヘッドホルダ74およびリボン巻取軸95がそれぞれヘッド装着部39および巻取支持孔67に挿入されるような場合を例示する。
この場合、ヘッドホルダ74およびリボン巻取軸95がそれぞれヘッド装着部39および巻取支持孔67に挿入された時点では、テープカセット30は3つの案内軸のいずれにも案内されていないので、先述のようにテープカセット30の装着状態に位置ズレや傾斜を生じやすい。しかしながら、テープカセット30をさらに下方に移動させることによって、テープ駆動軸100、補助軸110およびガイド軸120がそれぞれ第1テープ支持孔65、ローラ支持孔64およびガイド孔47に挿入されると、テープカセット30が適正な装着状態に補正される。その後は、カセット装着部8の適正位置に対して、テープカセット30を3つの案内軸に沿ってスムーズに装着することができる。また、テープカセット30の取り出しについては、最初からテープカセット30を3つの案内軸に沿ってスムーズに行うことができる。このように、3つの案内軸全ての上端位置に制約がある場合でも、テープカセット30をカセット装着部8の適正位置に案内および位置決めすることができる。
また、上記実施形態では、カセット装着部8に装着されたテープカセット30の高さ位置を、位置決めピン102,103によって規定しているが、これに限定されない。具体的には、図42に示すように、カセット装着部8に位置決めピン103を設けなくてもよい。この場合、図43に示すように、ガイド孔47はテープカセット30の上壁面35を貫通する開口部47aを有しておらず、ガイド孔47の上端が天壁部47dによって閉塞されている。なお、図43では、ガイド孔47およびその近傍を右側面視での断面図として表している。
このような構成を採用しても、テープカセット30の着脱態様は上記実施形態と同様である。すなわち、テープカセット30が3つの案内軸(テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120)によってカセット装着部8の適正位置まで案内される。そして、テープカセット30は、ガイド軸120および位置決めピン102によって適正な平面位置に位置決めされる。ただし、テープカセット30の右側縁では、ガイド孔47に挿入されたガイド軸120の上端が天壁部47dに接触することによって適正な高さ位置に位置決めされる。一方、テープカセット30の左側縁では、上記実施形態と同様にピン孔53に挿入される位置決めピン102によって適正な高さ位置に位置決めされる。
先述したように、ガイド軸120は位置決めピン103と隣接した位置に立設されている。そのため、ガイド軸120の上端がガイド孔47内で係止される構成を採用することで、ガイド軸120が位置決めピン103と同様に高さ位置も位置決めすることができる。このように、ガイド軸120を高さ方向の位置決め軸の一つとして利用することで、位置決めピン103を別途立設する必要がなく、テープ印字装置1の構造を簡素化することができる。また、上記のようにテープカセット30の高さ位置を共通部32で位置決めしない構成であれば、図42に示すようにテープカセット30に共通部32を設けない形状のカセットケース31を採用してもよい。
上記の変形例(図38〜図43参照)では、テープカセット30が3つの案内軸によって案内される場合を説明したが、テープカセット30が2つの案内軸(テープ駆動軸100およびガイド軸120)によって案内される場合も同様である。すなわち、図44に示すように、カセット装着部8に補助軸110を設けない場合も、カセット装着部8をテープカセット30の平面形状よりも大きな平面部として構成してもよい。また、カセット装着部8に装着されるテープカセット30の開口部64b,47bの高さ位置に応じて、テープ駆動軸100およびガイド軸120の各上端の高さ位置を適宜変更してもよい。また、位置決めピン103を設けずにガイド軸120がテープカセット30の高さ位置を位置決めしてもよい。なお、補助軸110が設けられていない場合は、先述と同様にテープカセット30に第1テープ支持孔65を設けなくてもよい。例えば、第1テープ支持孔65に代えて、カセットケース31の内部で第1テープスプール40を軸支する筒壁部65dを、上壁面35および下壁面36に亘って立設してもよい(図29参照)。
また、上記実施形態では、汎用カセットをサーマルタイプ、レセプタータイプ、ラミネートタイプとして実装したテープカセット30を例示したが、これに限定されない。例えば、図45に示すように、所謂感熱ラミネートタイプのテープカセットとして実装してもよい。この場合、第1テープ支持孔65では、第1のテープとして両面粘着テープ58が巻回された第1テープスプール40が回転支持される。第2テープ支持孔66では、第2のテープとして感熱紙テープ55が巻回された第2テープスプール41が回転支持される。所謂感熱ラミネートタイプのテープカセットではインクリボンは使用されないため、リボンスプールは設けられない。
図45に示すテープカセットが使用されるテープ印字装置1は、第1の実施形態と同様である。テープ印字装置1の印字実行時には、テープ駆動軸100を介して回転駆動されるテープ送りローラ46が、可動搬送ローラ14との協働によって第2テープスプール41から感熱紙テープ55を引き出す。第2テープスプール41から引き出された感熱紙テープ55は、平面視でリボン支持孔68の外側を通過しながらアーム部34内の搬送経路に沿って搬送される。さらに、感熱紙テープ55はアーム部34の開口34aからヘッド装着部39に供給されて、サーマルヘッド10とプラテンローラ15との間に搬送される。そして、サーマルヘッド10によって印字テープ57の印字面に対して文字、図形、記号等が印字される。一方、テープ送りローラ46と可動搬送ローラ14との協働によって、第1テープスプール40から両面粘着テープ58が引き出される。この両面粘着テープ58は、テープ送りローラ46と可動搬送ローラ14との間にガイドされて巻き込まれながら、印字済みの感熱紙テープ55の印字面に重ねられて貼着される。両面粘着テープ58が貼着された印字済みの感熱紙テープ55(すなわち、印字済テープ50)は、さらにテープ排出口49に向かって搬送されてカット機構17によって切断される。
図45に示すテープカセット30に設けられた各部の位置関係は、第1の実施形態と同様であるが次の点で異なる。すなわち、第1テープスプール40に巻回されている両面粘着テープ58の重心が、平面視で第1収納領域30cの範囲内に位置している。第2テープスプール41に巻回されている感熱紙テープ55の重心が、平面視で分割線K上に位置している。このような位置関係によって、図45に示すテープカセット30では、両面粘着テープ58の重心が位置する第1収納領域30cのほうが第2収納領域30dよりも重量が大きい。このテープカセット30の重量の偏りによって、分割線Kを回転中心として第1収納領域30c側が下方傾斜しやすい。
図45に示すカセット装着部8に対するテープカセット30の着脱態様は、第1の実施形態(図14〜図16参照)と同様である。すなわち、テープカセット30は、3つの案内軸(テープ駆動軸100、補助軸110、ガイド軸120)によってカセット装着部8の適正位置まで案内される。また、テープカセット30をカセット装着部8から取り外す場合も、テープカセット30が3つの案内軸に沿って上方に案内される。もちろん、テープカセット30の重量の偏りが小さい場合には、2つの案内軸(テープ駆動軸100およびガイド軸120)によってテープカセット30を案内してもよい。
なお、第1の実施形態と同様に、テープカセット30の全体の重心が、平面視でローラ支持孔64、第1テープ支持孔65、ガイド孔47を結ぶ領域内に位置することが好適である。その点、図45に示すテープカセット30では分割線K上に感熱紙テープ55の重心が位置しているため、この感熱紙テープ55が収納されていない場合よりもテープカセット30の重心位置が分割線K側に近づく。そのため、図45に示すテープカセット30は、平面視でローラ支持孔64、第1テープ支持孔65、ガイド孔47を結ぶ領域内に重心が位置しやすい重量バランスを有している。
図45に示すガイド孔47は、第2の実施形態(図24等参照)と同様の楕円形状孔であるが、平面視で分割線Kに沿う方向を長径かつ分割線Kと直交する方向を短径とする点で異なる。このガイド孔47によれば、ガイド軸120の平面位置に対する位置決め精度の許容幅を分割線Kに沿って大きくして、テープカセット30の位置決めを行うユーザの負担を軽減することができる。このように、ガイド孔47は、丸孔、楕円形状孔、長孔などに例示される任意の開口形状で構成することができる。
例えば、図46に示すガイド孔47は、第1の実施形態(図8等参照)と同様の長孔であるが、平面視で前後方向を長辺かつ左右方向を短辺とする点で異なる。このガイド孔47によれば、ガイド軸120の平面位置に対する位置決め精度の許容幅を前後方向に沿って大きくして、テープカセット30の位置決めを行うユーザの負担を軽減することができる。図46ではガイド孔47を長孔とした場合を例示したが、ガイド孔47を前後方向が長径をなす楕円形状孔としても同様である。
また、図47に示すガイド孔47は、第1の実施形態(図8等参照)と同様の長孔であるが、平面視で分割線Kに沿う方向を長辺かつ分割線Kと直交する方向を短辺とする点で異なる。このガイド孔47によれば、図45に示すガイド孔47と同様に、ガイド軸120の平面位置に対する位置決め精度の許容幅を分割線Kに沿って大きくして、テープカセット30の位置決めを行うユーザの負担を軽減することができる。
また、図48に示すガイド孔47は、第1の実施形態(図8等参照)と同様の長孔であるが、平面視で分割線Kと直交する方向を長辺かつ分割線Kに沿う方向を短辺とする点で異なる。このガイド孔47によれば、ガイド軸120の平面位置に対する位置決め精度の許容幅を分割線Kの直交方向に沿って大きくして、テープカセット30の位置決めを行うユーザの負担を軽減することができる。図48ではガイド孔47を長孔とした場合を例示したが、ガイド孔47を分割線Kの直交方向が長径をなす楕円形状孔としても同様である。
また、図49および図50に示すガイド孔47は、カセットケース31の右側後部における上下方向(ここでは、上壁面35と右側後部の共通部32の下面)に亘って、テープカセット30の右側面を構成する側壁37に形成され、平面視で左方向に向けて凹陥したU字型断面をなす溝部である。ガイド孔47の開口幅は、小径軸部120bの軸径よりも大きく、大径軸部120aの軸径と略等しい。この場合、テープカセット30がカセット装着部8に装着されると、ガイド孔47が貫通孔および凹陥部である場合と同様に、U字溝状のガイド孔47にガイド軸120が下方から挿入され、ガイド軸120の立設方向に沿ってテープカセット30が案内される。そして、ガイド孔47に大径軸部120aが嵌め込まれると、テープカセット30の位置決めが行われる。
図49および図50に示すガイド孔47では、第1の実施形態(図8等参照)で例示した横長長孔のガイド孔47等と同様に、テープカセット30の装着時におけるユーザの負担などが軽減され、テープカセット30の着脱をスムーズにすることができる。なお、ガイド孔47に挿入されたガイド軸120は、テープカセット30を右側方から目視可能に露出する。ガイド孔47に挿入されたガイド軸120を目視することによって、カセット装着部8に対するテープカセット30の着脱状態を確認することも可能となる。
図49および図50に示すU字溝状のガイド孔47についても、任意の溝状で構成することができる。例えば、図51〜図53に示すガイド孔47は上記と同様の溝部であるが、以下の点で異なる。図51に示すガイド孔47は、テープカセット30の背面を構成する側壁37に形成され、平面視で前方向に向けて凹陥した溝部である点で異なる。この場合、図46に示すガイド孔47と同様に、ガイド軸120の平面位置に対する位置決め精度の許容幅を前後方向に沿って大きくすることができる。図52に示すガイド孔47は、テープカセット30の右側面を構成する側壁37に形成され、平面視で分割線Kに沿って凹陥した溝部である点で異なる。この場合、図47に示すガイド孔47と同様に、ガイド軸120の平面位置に対する位置決め精度の許容幅を分割線Kに沿って大きくすることができる。図53に示すガイド孔47は、テープカセット30の背面を構成する側壁37に形成され、平面視で分割線Kの直交方向に沿って凹陥した溝部である点で異なる。この場合、図48に示すガイド孔47と同様に、ガイド軸120の平面位置に対する位置決め精度の許容幅を分割線Kの直交方向に沿って大きくすることができる。
また、図54および図55に示すガイド孔47は、テープカセット30の右側面を構成する側壁37および下壁面36に形成され、平面視で左方向に向けて凹陥したU字型断面をなす溝部である。このU字溝状のガイド孔47は、カセットケース31の右側後部における下壁面36から上壁面35のやや下方に亘って形成されており、天壁部47eによって溝部の上端が閉塞されている(つまり、ガイド孔47は上方に開口されていない)。ガイド孔47のU字型断面の開口幅は、小径軸部120bの軸径よりも大きく、大径軸部120aの軸径と略等しい。この場合、テープカセット30がカセット装着部8に装着されると、ガイド孔47が貫通孔および凹陥部である場合と同様に、U字溝状のガイド孔47にガイド軸120が下方から挿入され、ガイド軸120の立設方向に沿ってテープカセット30が案内される。そして、ガイド孔47に大径軸部120aが嵌め込まれると、テープカセット30の位置決めが行われる。特に、テープカセット30の右側縁では、ガイド孔47に挿入されたガイド軸120の上端が天壁部47eに接触することによって適正な高さ位置に位置決めされる。
図54および図55に示すガイド孔47では、図49および図50に示すU字溝状のガイド孔47等と同様に、テープカセット30の装着時におけるユーザの負担などが軽減され、テープカセット30の着脱をスムーズにすることができる。また、ガイド孔47に挿入されたガイド軸120を目視することによって、カセット装着部8に対するテープカセット30の着脱状態を確認することも可能となる。さらに、ガイド軸120を高さ方向の位置決め軸の一つとして利用することで、位置決めピン103を別途立設する必要がなく、テープ印字装置1の構造を簡素化することができる。
また、上記実施形態では、第1テープスプール40がその軸孔40dを貫通する筒壁部85によって回転自在に支持されるとともに、テープカセット30の着脱時に第1テープ支持孔65に挿脱される補助軸110が軸孔40dにも挿脱されるが、これに限定されない。例えば、図56に示すように、第1テープ支持孔65において、開口部65a,65bの開口縁全周からカセットケース31内にそれぞれ対向するように延設される一対の短筒部88を設ける。第1テープスプール40を、印字媒体のテープ幅とほぼ同一の高さ寸法を有する円筒体であるスプール本体40eに感熱紙テープ55が巻回される一重壁構造とする(印字テープ57、フィルムテープ59も同様)。カセットケース31内では、一対の短筒部88がスプール本体40eの両端開口にそれぞれ挿入される。かかる構造を採用しても、第1テープスプール40がその軸孔40dに挿入される一対の短筒部88によって回転自在に支持されるとともに、テープカセット30の着脱時に第1テープ支持孔65に挿脱される補助軸110が軸孔40dにも挿脱される。
つまり、第1テープ支持孔65は、第1テープスプール40の軸孔40dに補助軸110を挿脱可能とするために、軸孔40dを臨むように設けられていればよい。言い換えると、補助軸110が第1テープ支持孔65に挿脱される場合にその補助軸110が軸孔40dにも挿脱されるように、第1テープ支持孔65と軸孔40dとが連通していればよい。例えば、上記実施形態(図10参照)では、第1テープ支持孔65の軸孔65cは第1テープスプール40の軸孔40d内を貫通していることから、補助軸110が挿脱される開口部65bが軸孔40dと間接的に連通している。また、上記変形例(図56参照)では、補助軸110が挿脱される開口部65bが、短筒部65eを介して軸孔40dと直接的に連通している。いずれの場合であっても、第1テープ支持孔65が第1テープスプール40の軸孔40dを臨んでいるため、第1テープ支持孔65に挿脱された補助軸110が軸孔40dにも挿脱されることになる。その結果、テープカセット30の着脱時には、感熱紙テープ55等が巻回されたテープスプール40の重心位置が補助軸110に沿って案内される。
また、ローラ支持孔64も、第1テープ支持孔65と同様に、テープ送りローラ46の軸孔46dにテープ駆動軸100を挿脱可能とするために、軸孔46dを臨むように設けられていればよい。つまり、テープ駆動軸100がローラ支持孔64に挿脱される場合にそのテープ駆動軸100が軸孔46dにも挿脱されるように、ローラ支持孔64(ここでは、開口部64b)と軸孔46dとが連通していればよい。
なお、上記実施形態では、各種テープやインクリボン(具体的には、感熱紙テープ55、印字テープ57、両面粘着テープ58、フィルムテープ59、インクリボン60)が、それぞれスプール(具体的には、第1テープスプール40、第2テープスプール41、リボンスプール42)に巻回されているが、これに限定されない。例えば、上記のスプールを用いずに、各種テープやインクリボンを巻回中心に孔を形成するように巻回させた構成を採用してもよい(所謂、コアレスタイプ)。
ところで、上記実施形態では、テープカセット30に設けられた2つの案内孔(ローラ支持孔64およびガイド孔47)を使用して、2つの案内軸(テープ駆動軸100およびガイド軸120)に沿ってカセット装着部8への装着が案内される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、図57に示すように、テープカセット30の展示が行われる場所に、あらかじめローラ支持孔64およびガイド孔47に対応する一対の軸体140を立設しておく。一対の軸体140は、それぞれローラ支持孔64およびガイド孔47に挿脱自在の軸径を有する軸部140aと、その軸部140aがそれぞれ立設される所定高さの基部140bとを有する。そして、テープカセット30を展示する場合に、ローラ支持孔64およびガイド孔47にそれぞれ対応する軸部140aを挿入させる。そして、テープカセット30を各軸部140aに沿って下方に移動させていくと、そのテープカセット30は各軸部140aの下端に位置する基部140b上に載置される。これにより、展示対象のテープカセット30が、一対の軸体140によって視認しやすい所定の高さ位置に保持される。
また、図57に示す一対の軸体140の高さ位置を大きくして(例えば、各軸部140aの軸長を大きくする等)、各軸部140aに沿って複数のテープカセット30を基部140b上に順に積み上げる。これによって、複数のテープカセット30をまとめて保管、回収、運搬等を行うことができる。また、一対の軸体140の上端位置にて一つのテープカセット30が位置決めされるようにすれば、そのテープカセット30をより視認しやすい高さ位置で展示することもできる。もちろん、このような利用法は、テープカセット30に3つの案内孔(ローラ支持孔64、ガイド孔47、第1テープ支持孔65)が設けられている場合も、各案内孔に対応する一組(ここでは、3つ)の軸体140を使用して同様に行うことができる。