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JP5315907B2 - 印刷用両面塗工紙の製造方法 - Google Patents

印刷用両面塗工紙の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、印刷用両面塗工紙の製造方法に関する。
一般に印刷用両面塗工紙は、原紙上に顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工、乾燥して製造されるが、塗工量や塗工紙の仕上げ方法によって、キャストコート紙、アート紙、コート紙、微塗工紙等に分類される。これらの塗工紙は、これに多色印刷又は単色印刷を施して、チラシ、パンフレット、ポスター等の商業用印刷物として、あるいは書籍、雑誌等の出版物として広く使用されている。近年、印刷物のビジュアル化、カラー化の進展と共に、印刷用両面塗工紙の高品質化の要求が高まっており、白紙光沢度、平滑度、白色度等の白紙品質、および印刷平滑性等の印刷仕上り等の品質が重要視されている。また、特に商業用印刷物のうちでもチラシやパンフレット等は、宣伝媒体としての目的から、低コストで印刷仕上がりのよいものが求められ、しかも使用される紙も薄物、軽量化に向かっている。
塗工紙に用いられる原紙を抄造する抄紙機については、省力化・製造コスト削減を目的として広幅化・高速化が進んでおり、ワイヤーパートにおける高速化対策の1つとして、長網フォーマーからオントップタイプのフォーマーへの改造が数多く行われている。長網フォーマーのワイヤー上にトップワイヤーを設置してオントップタイプ化することにより、高速化に伴って発生するワイヤーパートでの脱水能力の不足、原料表面の乱れによる地合の悪化、片面脱水の強化による紙表裏の特性差の増大を抑制することが可能となった。しかし、抄紙機の抄速が1200m/分を超えると、オントップタイプのフォーマーにおいても初期の長網部における原料表面の乱れの増加による地合の悪化が発生し始め、製品の品質低下を引き起こすので、これ以上の増速は困難となっている。
このため、高速での操業を可能にするために開発されたのが、ヘッドボックスを出た原料を直ちに2枚のワイヤーで挟み込むギャップタイプのフォーマーである。前記ギャップフォーマーでは、ヘッドボックスを出た原料を直ちに2枚のワイヤーで挟み込むため、高速化に伴う脱水能力の不足を補うことが可能となった。また、ワイヤー上での原料の自由表面をなくすことができると共に、ワイヤー間の原料に加える脱水圧力の最適化が可能となったため原紙の地合も向上し、特に新聞用紙の製造分野ではいち早くギャップフォーマーが導入されて、現在では主要な設備仕様となっている。
しかし、ヘッドボックスを出た原料から直ちに両ワイヤー面側に強力な脱水を行うことは、湿紙表面における原料のリテンションの低下や、両ワイヤー面からの脱水比率の差によって表裏に特性の差が生じる欠点を持っている。そのため、ワイヤーパートにギャップフォーマーを有する抄紙機で製造した原紙を用いて印刷用両面塗工紙を製造すると、製品の白紙および印刷品質の表裏差が生じる問題がある。これについて、表裏差を小さくする方法として、ツインワイヤーフォーマー部において、トップワイヤー側とボトムワイヤー側の両ワイヤーへの脱水比率を特定の範囲にする方法(特許文献1、2参照)が提案されているが、本方法は抄造条件が制限され、また高範囲な米坪に適用することが難しい点がある。
また、ギャップフォーマーを有する抄紙機に付設されて使用されるウェットプレス装置としては、1200m/分以上の高速操業においては、シュータイプの広幅ニップを有するウェットプレスが利用されるが、操業性の観点から、表裏に異なる用具を用いてプレスすることによる表裏差が発生する問題がある。この点について、塗工する前の原紙あるいは該原紙に下塗りした塗被紙をソフトカレンダーで処理して表裏差のない、高平滑な塗被紙を製造する方法(特許文献3、4参照)が提案されている。しかしながら、カレンダー処理した原紙に塗工を行った場合、原紙が湿潤状態となるため該カレンダー処理の効果は減殺され、結果として白紙面感ならびに印刷効果の点で、表裏差の解消にまでは至っていない。
また、特定の塗工液をロールコーター方式で塗工し、金属ロールと弾性ロールの組み合わせからなる2段ソフトニップを有する2スタックのソフトカレンダー処理を行う方法も提案されている(特許文献5参照)。しかし、この方法は紙の嵩の維持が目的とされて、さらに光沢が低い艶消し塗工紙に限定されており、高速での塗工紙の製造においてはカレンダー能力が不足する問題があった。
近年の塗工紙製造の高速化により、カレンダー処理時の速度も高速化を辿っているため、カレンダーニップでの紙の滞留時間が減少してきており、カレンダー1ニップあたりの平滑・光沢向上といったカレンダー効果が低下する傾向にある。このため、カレンダー効果を高める方法として、カレンダーに使用されている加熱金属ロールの温度を上昇させるといった方法が提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、特許文献6に記載された特に好ましい金属ロールの表面温度が230〜500℃の高温で短いニップ滞留時間でカレンダー処理を行った場合、カレンダー前の塗工紙の圧縮下での凹凸が反映されて、結果として光沢ムラや平滑ムラを生じて塗工紙の商品性を低下させてしまう問題、ならびに塗工紙に使用されているラテックスなどの熱可塑性物質が軟化することで粘着性を帯びて、紙表面からカレンダーロールに転移する結果ロール汚れを誘発し、操業を停止して清掃を行う必要性が生ずるといった問題があった。
さらに、特定の顔料を使用し、特定の温度範囲の低温ニップを通紙した後に特定の高温ニップを通紙する製造方法も提案されているが(特許文献7、8参照)、低温ニップの使用が必須であり生産効率に劣るという問題点を抱えている。
上記の通り、表裏差の少ない両面塗工紙を効率よく製造する製造方法として操業性などを良好に維持したまま塗工紙を効率よく製造可能で、かつ表裏差をなくす改善方法が強く望まれている。
特開平11−100788号公報 特開平11−100789号公報 特開平11−1891号公報 特開2007−270407号公報 特開2007−270405号公報 特開2006−118076号公報 特開2006−200109号公報 特開2006−274469号公報
本発明は、カレンダー処理を行って両面塗工紙を製造する方法において、カレンダー汚れ等による操業性の低下、塗工紙の密度上昇等の問題点を回避し、表裏差の少ない両面塗工紙を効率よく製造する方法を提供することにある。
本発明は、セルロース繊維を主体とする原紙上に、片面当たり少なくとも1層の顔料および接着剤を主体とする顔料塗工層を設けた印刷用両面塗工紙の製造方法において、該原紙上の両面に顔料塗工層を設けた後、加熱された金属ロールおよび弾性ロールにより構成されるプレカレンダー処理と、加熱された金属ロールおよび弾性ロール群からなるマルチニップカレンダー処理とをこの順に併用して行い、前記プレカレンダーの処理完了からマルチニップカレンダー処理開始までの時間T1が0.30〜1.20秒であることを特徴とする印刷用両面塗工紙の製造方法である
記マルチニップカレンダーのロールニップ加重が、全段独立して制御可能であることが好ましい。
前記プレカレンダーの金属ロールの表面温度が50〜130℃、ニップ線圧が5〜170kN/mであることが好ましく、マルチニップカレンダーの金属ロールの表面温度が80〜180℃、ニップ線圧が10〜450kN/mであることが好ましい。
前記プレカレンダーおよびマルチニップカレンダーに使用される金属ロールのJIS B 0601−2001で規定される算術平均粗さRaが0.05〜0.5μmであることが好ましい。
本発明を行うことにより、高速の操業時においてもマルチニップカレンダーにおけるニップ圧ならびに金属ロールの表面温度といった処理条件を緩和することができ、カレンダー汚れによる操業性の低下、塗工紙の密度上昇等の問題点を回避して良好な操業性を維持したまま表裏差がなく品質に優れた両面印刷用両面塗工紙を得られるとともに、カレンダー工程のトラブル発生時の対応が容易となる。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用される原紙の主体となるセルロース繊維として、ケナフ・バガス・バンブー・コットンなど非木材系パルプも使用できるが、代表的には木材を原料としたパルプが使用される。木材パルプの原材料は、広葉樹材、針葉樹材のいずれでもよく、原材料からパルプを得るための蒸解法としては、クラフト蒸解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカリサルファイト蒸解等の公知の蒸解法を用いることができるが、蒸解液を分割添加する蒸解法であるLo-solids法、Compact蒸解法、Kobudomari蒸解法、等の蒸解法は、蒸解時に使用するエネルギー量が少ない、製造されるパルプの漂白性がよいといった効果あるため、好適に用いられる。
上記により得られた未漂白パルプは、洗浄、粗選及び精選工程を経て、公知のアルカリ酸素漂白法により脱リグニンされることが好ましい。本発明に使用できるアルカリ酸素漂白法は、公知の中濃度法或いは高濃度法がそのまま適用できるが、現在、汎用的に用いられているパルプ濃度が8〜15%で行われる中濃度法が好ましい。
前記中濃度法によるアルカリ酸素漂白法において、アルカリとしては苛性ソーダあるいは酸化されたクラフト白液を使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。前記酸素ガスとアルカリは中濃度ミキサーにおいて中濃度のパルプスラリーに添加され、混合が十分に行われた後、加圧下でパルプ、酸素及びアルカリの混合物を一定時間保持できる反応塔へ送られて、脱リグニンされる。
酸素ガスの添加率は、絶乾パルプ質量当たり0.5〜3質量%、アルカリ添加率は0.5〜4質量%、反応温度は80〜120℃、反応時間は15〜100分、パルプ濃度は8〜15%であり、この他の条件は公知のものが適用できる。本発明では、アルカリ酸素漂白工程において、上記アルカリ酸素漂白を連続して複数回行い、できる限り脱リグニンを進めるのが好ましい実施態様である。
アルカリ酸素漂白が施されたパルプは次いで洗浄工程へ送られる。パルプは洗浄後、多段漂白工程へ送られる。
本発明で使用される漂白パルプを得るための多段漂白工程では、公知の漂白工程を適宜使用できるが、近年の環境問題に対する取り組みの見地から、オゾン漂白段を用いることが好ましい。また、必要であれば、二酸化塩素、他の漂白薬品を併用することも可能である。本発明の多段漂白工程で使用できる漂白段は、好ましく用いられるオゾン漂白段以外として、公知の漂白段を用いることができる。多段漂白後のパルプは、叩解工程、または抄紙工程へ送られる。
また、上記パルプに対して、砕木パルプ、加圧式砕木パルプ、リファイナ砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ等の機械パルプ、脱墨古紙パルプ、損紙なども、本発明の所望の効果を妨げない限り、適宜混合使用することができる。
原紙を構成するパルプは叩解工程を経た後、スラリー状のパルプ水分散液である紙料として抄紙機に送られる。この紙料に対して、填料や、内添サイズ剤、アニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等の抄紙用内添助剤を、必要に応じて添加することができる。原紙の抄紙条件については、酸性抄紙、中性抄紙、弱アルカリ抄紙等のいずれの方式でも良い。
本発明で、紙料中に添加し、原紙の形成に使用する填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、クレー、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネーテッドカオリン、珪藻土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機顔料や、尿素・ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機顔料等が例示でき、古紙や損紙等に含まれる填料も再使用できる。填料は2種類以上の混合使用も可能である。填料の配合量は、一般に紙(原紙)灰分が3〜30質量%の範囲、好ましくは5〜20質量%となるように添加される。
また、本発明で使用される内添サイズ剤の具体例としては、例えば、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系、ロジン系などのサイズ剤が挙げられる。また、歩留向上剤、濾顔料向上剤、紙力増強剤の具体例としては、例えば、アルミニウム等の多価金属化合物(具体的には硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物等)、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、ポリアミドポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。また、本発明の効果を妨げない範囲で、パルプ繊維間結合の阻害機能を有する嵩高剤、柔軟剤を使用することも可能である。嵩高剤、柔軟剤の具体例としては、例えば、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸エステル化合物のポリオキシアルキレン化合物、脂肪酸ポリアミドアミン、多価アルコール系界面活性剤、油脂系非イオン界面活性剤等が例示できる。かかる嵩高剤、柔軟剤の添加量は、一般に、乾燥重量対比でパルプに対して0.05〜2.0質量%程度である。
スラリー状のパルプ水分散液に必要な填料・薬剤を添加した紙料からシート状の原紙を形成する、原紙の抄造(フォーマー)形式としては特に限定されず、ツインワイヤーフォーマー、オントップフォーマー、ギャップフォーマー等が使用できるが、1200m/分を超える高速での原紙抄造を行う場合、操業性、ならびに得られる原紙の地合等の品質に優れるギャップフォーマー形式であることが好ましい。
ギャップフォーマー形式の抄紙機で、特に1300m/分以上の高速での原紙抄造時する場合、ブレードフォーミング型、および/またはロールフォーミング型のギャップフォーマーを使用すると、得られる原紙の地合を良好にすることができるため好ましい。
また、パルプおよび填料を主成分とするギャップフォーマーの紙料吐出方向としては、ほぼ鉛直上方に吐出する垂直吐出型と、抄紙機下流側に向かう水平方向と紙料吐出方向で形成する角度が30〜80°である傾斜吐出型があるが、どちらでも採用することができる。
ギャップフォーマー等と組み合わせて使用される、フォーマー部で形成された湿潤状態の紙料を搾水して固形分濃度を上昇させるプレスパートでは、公知のプレス形式であるトライニッププレス、トライニッププレス+4P等の構成を採用することが可能であるが、1200m/分を超える操業状態で搾水性を向上させ、操業性を良好とするには、シュープレスを使用することが好ましく、原紙の表裏差を低減させるためにはシュープレス2機を使用するタンデムシュープレス形式とすることが好ましい。また、原紙の平滑性を向上させるため、タンデムシュープレスの後にさらに3Pを追加した形式とすることも可能である。
これらの抄紙条件で抄紙された原紙の坪量としては特に限定はないが、30〜150g/mの範囲が好ましく、1200m/分以上の高速での操業においては、原紙品質の確保の見地から30〜100g/m、特には35〜70g/mの範囲であることが好ましい。プレスパートを経た原紙は、ドライヤーにより乾燥され、所望の水分とした後に、サイズプレス工程に送られる。
サイズプレス工程においては、得られる塗工紙の表面強度向上、ならびに顔料塗工層を設ける効果を効率よく発揮させるために原紙への塗工液浸透を抑制することを目的として、澱粉やポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等、天然もしくは合成の水溶性高分子を含有する水溶液あるいはエマルジョン型高分子が、原紙に塗工される。サイズプレス工程において、顔料を含まない、いわゆるクリアサイズを行う際の塗工量としては、原紙片面当たりの固形分塗工量として、サイズプレスの効果発現、および乾燥負荷の増大による操業性低下回避を考慮すると、0.1〜3.0g/mが好ましく、0.2〜2.0g/mがより好ましい。サイズプレス工程において顔料を含有する、いわゆるピグメントサイズプレスを行う際の塗工量としては、原紙片面当たりの固形分塗工量として、同様の観点から0.5〜6.0g/mが好ましく、0.8〜4.0g/mがより好ましい。
サイズプレス工程における塗工装置としては、サイズプレス工程における塗工液が顔料を含まないクリアサイズプレスであるか、顔料を含むピグメントサイズプレスであるかにかかわらず、1000m/分以上の高速での操業の場合、断紙等のトラブルによる生産効率低下を回避するため、フィルムトランスファー方式のロール塗工装置であることが好ましい。フィルムトランスファー方式のロール塗工装置としては、計量装置としてブレードまたはロッドを使用することにより、原紙に接する前のロール表面上にあらかじめ所望の塗工液量を計量し、この塗工液を原紙に接触、転移させることでサイズプレス、すなわち塗工が実施される。計量装置として、装置の耐久性を考慮すると、ロッドを使用したロッドメタリングサイズプレスであることがより好ましい。
サイズプレス工程を経た後、塗工層はドライヤーで乾燥され、顔料塗工層塗工工程に送られるが、サイズプレス工程後の乾燥が完了した後から顔料塗工層塗工工程前の間に於いて、必要に応じ金属ロール/金属ロールの組み合わせによるマシンカレンダー、あるいは金属ロール/弾性ロールの組み合わせであって金属ロールを加温したソフトカレンダー等による平滑化仕上げ処理を施すこともできる。
顔料塗工層を形成する塗工装置としては、特に限定されるものではなく、例えばベントブレードコーター、ベベルブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、ツーロールもしくはロッドメタリングあるいはブレードメタリング式のサイズプレスコーター、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーター、ゲートロールコーター、スプレーコーター、キャストコーター等の装置が適宜用いられる。このうち、原紙へ顔料塗工層を形成する際の塗工速度が1000m/分以上の場合、操業性や生産性、ならびに得られる塗工紙の品質を考慮すると、塗工装置としてはベベルブレードコーターもしくはロールコーターが好ましい。
塗工層を形成する塗工装置としてロール塗工方式を用いて塗工速度を上昇させた場合、両面同時にロール塗工を行う両面同時塗工タイプでは、顔料塗工層を塗工した際、ロールのニップ部から一方の面が離れるまでの距離と、他方の面が離れる距離に差が生じるために、一方の面と他方の面で塗工液の原紙への浸透性、ならびに湿潤塗工層内での塗工液の不動化状態が異なり、得られる塗工紙の平滑や光沢に表裏差が生じたり、前記距離の差が大きい場合には片面がロール周回方向に引き寄せられた状態で走行して走行性が不安定となったりして、断紙の発生につながる可能性がある。さらに、ミスティングと呼ばれる塗工液が液滴化して周囲に飛散する問題が生じ、周辺の環境を汚染したり、ひどい場合には塗工が完了した面に飛着したりすることで得られる塗工紙の商品性を著しく低下させる可能性がある。この現象は、1200m/分以上の塗工速度で顕在化しやすく、1500m/分を超える塗工速度では顕著となる。この現象を回避するため、顔料塗工層を設ける塗工方式としてロール塗工方式を用いる場合、該塗工層を設ける際に、顔料塗工層を片面に塗工・乾燥した後に反対面の顔料塗工層を塗工・乾燥する、片面ずつのロール塗工方式が好ましい。片面ずつのロール塗工方式とすることで、表裏差の発生抑制、断紙による操業性低下回避を図ることができ、さらにミスティングによる周辺環境の汚染や商品性低下の問題を回避できる。
本発明において、顔料塗工層に使用される顔料については、特に限定されるものではなく、例えば、通常のカオリン、焼成カオリン、構造化カオリン、デラミネーテッドカオリン等の各種カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)などの精製した天然鉱物顔料、軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、中空もしくは密実である有機顔料のプラスチックピグメント、バインダーピグメント、プラスチックビーズ、マイクロカプセルなどを本発明の効果を阻害しない範囲で適宜混合、使用することができる。
塗工層に用いられるバインダーとしては、天然植物から精製した澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉等の各種澱粉、およびカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の澱粉誘導体、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸等の天然多糖類およびそのオリゴマーさらにはその変性体が挙げられる。さらに、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲンなどの天然タンパク質およびその変性体、ポリ乳酸、ペプチドなどの合成高分子やオリゴマーが挙げられる。加えてスチレンブタジエン系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニルなどの各共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、変成ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物などが挙げられる。これらは一種以上で使用することができる。この他、公知の天然、合成有機化合物を使用することは特に限定されない。
また、塗工液に用いられる増粘剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、キサンタンガム、グアーガム等のガム類、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などの無機重合体などが挙げられる。
さらに、必要に応じて、分散剤、濡れ剤、流動性改質剤、消泡剤、耐水化剤、印刷適性向上剤、防腐剤、スライムコントロール剤、着色剤などの通常使用されている各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。
また、顔料塗工層が原紙の片面当たり2層以上設けられる場合は、原紙の片面に対して最終の塗工工程で設けられる最外塗工層の下に形成される顔料塗工層は、顔料と接着剤を主成分とする水性塗工液を塗工、乾燥して顔料塗工層を形成させるが、該顔料塗工層用水性塗工液に使用する顔料、バインダー、増粘剤、その他助剤は、特に限定されるものではなく、前述の顔料塗工層に用いるものとして例示した物と同様の物を用いることができる。サイズプレス工程において顔料を含有するピグメントサイズプレスを行い形成した塗工層も、顔料塗工層と同様に扱われる。
顔料塗工層を形成するための塗料の固形分濃度は、一般に20〜75質量%の範囲で調節され、より好ましくは30〜70質量%に調節される。また、最外顔料塗工層を設けるより前の顔料塗工層用塗工液の固形分濃度としても、一般に20〜75質量%の範囲で調節されるが、最外顔料塗工層より塗工量が少ないときは、30〜50質量%に調節されることが好ましい。
顔料塗工層合計の塗工量は、得られる塗工紙の白紙品質、印刷品質、および塗工適性等を考慮すると、片面当たり3〜40g/m程度、好ましくは5〜20g/m程度で調節される。このうち、最外塗工層における片面当たりの塗工量の好ましい範囲としては、下限として2.5g/m以上、上限としては20g/m以下であり、さらに好ましい範囲としては、下限として4.0g/m以上、上限としては16g/m以下である。
前記塗工装置の配置方法としては、抄紙工程から塗工工程までが連続的に行われる様に配置したオンマシンコーターでも良く、抄紙工程後サイズプレスでの塗工およびその塗工液の乾燥工程後、一度ワインダーで巻き取ってから、再びアンワインダーから巻きだして最外塗工層の塗工工程に供するオフマシンコーターであっても良いが、生産効率を向上させるためには、オンマシンコーターであることが好ましい。
塗工した塗料を乾燥する方法としては、従来から公知公用の熱風乾燥、ガスヒーター乾燥、高周波乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥、レーザー乾燥、電子線乾燥等の各種加熱乾燥方式が適宜採用される。
上記により塗工層を形成した後、カレンダー装置による平滑化処理が行われる。キャレンダー装置としては、スーパーキャレンダー、ソフトキャレンダー、グロスキャレンダー、コンパクトキャレンダー、マットスーパーキャレンダー、マットキャレンダー、粗面化カレンダー等が一般に使用されているが、本発明においては、プレカレンダーとマルチニップカレンダーを組み合わせることが必須である。プレカレンダー、マルチニップカレンダーともに、ロール表面が樹脂等からなる弾性ロールと加熱された金属ロールであるヒートロールの組み合わせにより形成されるニップ間、あるいはニップ間群を通過させることにより、塗工紙の平滑性や光沢等を向上させる効果を有する。本発明においては、プレカレンダー処理を行った後にマルチニップカレンダー処理を行うことにより、高速の操業時においてもマルチニップカレンダーにおけるニップ圧上昇による密度の上昇、ならびに金属ロールの表面温度上昇による塗工紙表面性のムラの発生やカレンダーロール汚れ等を回避でき、良好な操業性を維持したまま表裏差がなく品質に優れた両面印刷用両面塗工紙を得ることができるとともに、カレンダー工程のトラブル発生時の対応が容易となる。
本発明によるプレカレンダーとマルチニップカレンダーの組合せによる塗工紙の製造方法は、本発明においてプレカレンダーに使用できる、いわゆる熱ソフトカレンダーを4〜6台などの複数台設置して平滑化処理を行う公知の製造方法と比較して、設置面積を小さくできるという利点も有し、メンテナンスが容易になることから操業性が良好となって、効率よく塗工紙の製造が可能となる。また、マルチニップカレンダーにおいては、高速のカレンダー処理時において所望とするレベルの光沢・平滑性を得るためには、マルチニップカレンダーの処理能力を高くするため金属ロールの表面温度やニップ圧を高くする必要があって、近年の操業速度の高速化に伴い、金属ロールの表面温度やニップ圧はより高く設定する傾向にあった。そもそも、カレンダー処理において高温の金属ロールが使用されるのは、短時間に塗工層表面を熱可塑化させ、平滑化効果を高めるとともに、高温金属ロールへの接触が短時間であるため塗工層の下の原紙層までは熱可塑化されず、原紙層は圧縮されやすくはならないため、密度が低下しにくいという考え方に基づいている。
しかしながら、近年の操業速度の高速化と共に、塗工層表面が金属ロール表面に接する時間がより短くなってきているため、塗工層表面から塗工層内部への熱伝達が不十分となってきていることから熱可塑化によるカレンダー効果の発現が不十分となり、金属ロールの表面温度やニップ圧はより高く設定する傾向にあるのが実情である。高速の操業において、短時間の金属ロール/弾性ロールニップ滞留時間でカレンダー効果を得るために金属ロールの温度を高温化しすぎると、顔料塗工層中のラテックス等が粘着性を帯びて、ロール表面に接した際に塗工層がロール表面に付着・堆積し、このロール上のパターンが塗工層塗工層表面に転写され製品品質を低下させるとともに、ロール表面に堆積することで生産を一時的に停止して清掃等のメンテナンスを行う必要が生じて、操業性を低下させる。また、ニップ圧を上昇させた場合には、塗工紙の嵩や不透明度の低下が発生する。
これに対し、本発明におけるプレカレンダーで予備的にカレンダー処理を行い、塗工層表面から塗工層内部の熱可塑化を予備的に進行させておいた後、マルチニップカレンダー処理を行うと、プレカレンダーを設置しなかった場合と比較してマルチニップカレンダーの金属ロールの表面温度やニップ線圧を低く設定することが可能となる。このマルチニップカレンダーのカレンダー処理条件緩和により、ロール汚れ等の操業上の問題を回避できるとともに、嵩や不透明度の減少などの発生を抑制できる効果が発揮される。さらに、カレンダー処理前の塗工紙に表裏差があった場合にも、マルチニップカレンダーの1ニップ目から効率よくカレンダー効果が得られることから、同カレンダーの処理条件の変更可能な範囲が拡大でき、表裏差の解消を効率的に行うことができる。
特に、抄紙工程に於いて、高速での塗工紙製造の際に適するギャップフォーマーを選択した場合、紙料からシート状の原紙を抄造する際に急速な脱水が起こることから、脱水バランスを精密に制御しても、原紙表面として厳密に同一の特性を得ることは困難であり、表裏差が生じやすい。また、プレス工程に於いてシュープレスを選択した場合、原紙表裏に当たるフェルト用具が異なる、あるいは同じであってもフェルト用具をバックアップする部材としてロールとシューの違いがある等の要因により、シュープレスニップ構成部を上下対称とした2機のシュープレスを用いるタンデムシュープレス形式であっても、原紙表面の表裏差が生じやすい。本発明においては、プレカレンダー処理によりマルチニップカレンダーの処理条件を緩和できるとともに、前記表裏差の修正に利用できることから、ギャップフォーマーとタンデムシュープレスの組み合わせで抄造された原紙に対し、特に効果を発揮しやすく、ロールニップ加重が、全段独立して制御可能であるマルチニップカレンダーと組み合わせた場合、本発明の効果が最も発揮される。
本発明においては、プレカレンダー処理完了からマルチニップカレンダー処理開始までの時間T1が、0.30〜1.20秒である。ここで、プレカレンダー処理完了とは、プレカレンダーのニップを紙が通過し終わった時をいい、マルチニップカレンダー処理開始とは、マルチニップカレンダーの最初のニップに紙が到達した時を言う。本発明においては、プレカレンダー処理後にマルチニップカレンダー処理が行われるが、プレカレンダーを設置しない場合のマルチニップカレンダーにおいてニップ数を1つ増やした構成と比較して、プレカレンダー設置によるマルチカレンダーの操業条件緩和を効果的に発揮させるためには、前記T1としては0.30秒以上であ、これにより設備的にも設置が容易となる。また、マルチニップカレンダー処理前にプレカレンダー処理を行った効果が消失しないよう、前記T1が1.20秒以下である。前記T1として、プレカレンダーとマルチニップカレンダーの組合せ効果を最も発揮させるための好ましい範囲としては、下限として0.35秒以上、上限として0.80秒以下である。なお、T1の調整方法としては、プレカレンダーとマルチニップカレンダー間の設置距離の変更、ならびにペーパーロールの増減等による紙パスの変更で調整が可能である。
さらに、キャレンダーによる仕上げ前後の塗工紙の調湿、加湿のための水塗り装置、静電加湿装置、蒸気加湿装置等を適宜組み合わせて使用することも可能である。
なお、本発明ではプレカレンダーとマルチニップカレンダーを組み合わせて使用することにより、カレンダー前の塗工面に紙粉等の異物が付着していた場合、プレカレンダーで異物のトラップ効果が発揮され、異物がマルチニップカレンダーのカレンダーロールまで到達するのを防止できるため、プレカレンダーのニップを開放することにより、マルチニップカレンダー処理での操業を継続したままプレカレンダーの清掃を行うことができるという効果も発揮される。さらに、カレンダーニップを通過するとロールを破損するような異物が紙と同時に搬送された場合、プレカレンダーにより前記異物を除去して、マルチニップカレンダーのロール破損を防止したり、マルチニップカレンダー処理での操業を継続したままプレカレンダーのメンテナンスを行ったりすることができるという効果も発揮される。
プレカレンダーにおいて、2ニップを超える処理を行った場合、プレカレンダーでの予備的カレンダー効果を越えて表面可塑化が進行してしまって、本発明で所望する後続のマルチニップカレンダーとの組み合わせ効果が低下するため、プレカレンダーにおけるニップ数としては、2ニップ以下であることが好ましく、1ニップであることが最も好ましい。1ニップのプレカレンダーとしては、加熱された金属ロールと弾性ロールの組み合わせを一組として構成される、単一のニップを有するカレンダーであることが好ましい。プレカレンダーにおける金属ロールおよび弾性ロールの配置は、原紙の特性に応じ、原紙のどちら側に加熱された金属ロールを接触させるか決定することができる。
マルチニップカレンダーとしては、ロール段数として6〜12段である、スーパーカレンダー等の公知のカレンダーを使用することが可能であるが、高速でカレンダー効果を安定的に発揮させるため、金属ロールの表面温度として80℃以上とすることが可能なカレンダーであることが好ましい。さらに、一般的なマルチニップカレンダーでは、ロール自重の影響で下方のニップほど線圧が高くなるため、下方ニップで金属ロールに接触する塗工紙面の光沢・平滑がより上昇しやすくなっており、さらに密度も上昇しやすい。このため、塗工紙表裏の光沢・平滑等を独立して所望するレベルにコントロールするのがより容易である、カレンダーロール自重の影響を少なくできるよう金属ロール・弾性ロールの組み合わせを傾斜配置としたマルチニップカレンダー、およびロール自重をキャンセルできる機構を備えた垂直配置のマルチニップカレンダーをより好ましい形態として例示することができる。さらに、カレンダー処理前の塗工紙の表裏差を、嵩の低下や不透明度の低下を伴うことなく効率的に低下させるため、ロール自重をキャンセルできる機構を備えた垂直配置のマルチニップカレンダーで、各ニップ線圧を独立して制御可能なマルチニップカレンダーが最も好ましい形態である。
高速でのカレンダーにおける平滑化処理を行うため、金属ロールはカレンダーが設置された場所の室温より高い温度で使用される。カレンダー処理効果を発現させ、かつ、過度の温度上昇によるロール汚れを回避するために、プレカレンダーの金属ロールの表面温度としては50〜130℃、マルチニップカレンダーの金属ロールの表面温度が80〜180℃が好ましい範囲である。ここで、カレンダーの金属ロールの表面温度とは、当該金属ロールの表面温度をいう。
プレカレンダーおよびマルチニップカレンダーの金属ロールの加温方法としては特に限定はなく、電磁誘導作用を利用した内部もしくは外部加熱方式、加圧蒸気やシリコン油等の温媒をロール内に導入、循環させる温媒加熱方式いずれも採用することができるが、エネルギー効率の観点から、温媒循環方式が好ましく使用される。また、ロール端部の過昇温防止等のため、各種冷却装置を併用することも可能である。
プレカレンダーの金属ロール/弾性ロール間のニップ線圧としては、塗工紙の嵩を過度に減少させないため5〜170kN/mであることが好ましく、マルチニップカレンダーの金属ロール/弾性ロール間のニップ線圧としては、10〜450kN/mであることが好ましい。また、マルチニップカレンダーの各ニップにおけるニップ線圧は同一でもよく、異なっていても良い。ニップ線圧の設定は、塗工を行う原紙、顔料塗工層の塗工量および塗料配合等により、本発明所望の塗工紙が得られるように適宜調整して使用される。
カレンダーの金属ロールの表面粗さに関しては特に限定されないが、金属ロールの製造容易性、ならびにカレンダー温度や線圧上昇によるカレンダーロール汚れに起因する操業性・不透明度の低下回避のため、白紙光沢度が30を超える塗工紙を製造する場合、該表面粗さがJIS B0601−2001で規定される算術平均粗さRaとしては、0.05〜0.5μmであることが好ましい。
金属ロールの材質について特に限定はないが、ダクタイル鍛鋼などの鍛鋼、チルド鋳鉄、クロムチルド鋳鉄などが好ましく使用され、さらに表面加工としてクロムメッキされた各種金属ロールも使用できる。金属ロールの硬度にも特に限定はないが、継続して安定的にカレンダー処理を行うために、好ましくはJIS Z2244のビッカース硬度で450〜700HV、より好ましくは500〜600HVの硬度の物が使用される。
カレンダーの弾性ロールの材質に関しては特に限定されないが、ウール、コットン、アラミド繊維を使用した繊維系ロールと、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、ウレタンゴム、加硫ゴム、シリコン樹脂、ポリアリレ−ト樹脂、フッ化ビニデリン樹脂、ポリフェニレンスルフィルド樹脂、フェノ−ル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアセタ−ル樹脂、ポリイミド樹脂シリコン樹脂、ポリアリレ−ト樹脂、フッ化ビニデリン樹脂、ポリフェニレンスルフィルド樹脂、フェノ−ル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアセタ−ル樹脂、ポリイミド樹脂、および前記樹脂に芳香族ポリアミンやシリコン系改質剤を含んだ樹脂等の樹脂系ロールが例示できる。
弾性ロールは金属ロールに対向してニップを形成し、断紙時には直接加熱された金属ロールに接触する場合がある。このため、耐熱温度が好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上である弾性ロールを使用することが好ましい。好ましい範囲の上限は、特にないが、製造上の制限から、実質240℃程度が上限である。
また、弾性ロールの表面硬度としては、カレンダー前の塗工紙の圧縮下での凹凸が反映されて発生する塗工紙上の数mm〜サブmmオーダーの光沢ムラや密度ムラの発生回避の観点から、ISO 7619に準拠して測定されるショアD硬度の上限として96以下が好ましく、94以下がより好ましい。また、ニップ圧下でのロール回転に起因する内部発熱による弾性ロールの破損回避の観点から、前記ショアD硬度の下限として88以上が好ましく、90以上がより好ましい範囲である。弾性ロールとしては、耐熱性、硬度、操業性を考慮すると、前記好ましい耐熱温度・硬度範囲内の樹脂系ロールが最も好ましい形態としてあげることができる。
なお、高速での運転時の振動対策として、マルチニップカレンダーにはロール位置を変更するロールサイドシフト機能が備わっていることが好ましく、該ロールサイドシフト機能は、振動検出器で一定レベル以上の振動が検出された場合、自動制御でロールサイドシフトを行う機構となっていることが好ましい。さらに、トラブル時のカレンダーのロール保護を目的として、塗工紙の欠陥を検出する機構を備え、該欠陥に応じて、走行中の塗工紙を強制的に断紙させる機構や、カレンダーニップの開放機構を追加しておくことも、好ましい実施態様である。
また、弾性ロール、および金属ロールともに温度変化による熱変形を生じる。熱変形による幅方向のニップ圧変動を回避するため、および/または、温度によらないロール自身の変形によるニップ圧変動を回避するため、幅方向に分割したゾーン毎にニップ圧をコントロールできる、ゾーンコントロール機構を備えたロールを使用することが好ましい。前記機構のゾーンの分割幅が広すぎるとゾーンコントロールの効果が得られにくくなり、他方狭すぎると内部機構が複雑化してロール作成が困難となるため、各ゾーンの幅としては80〜250mm、さらに好ましくは100〜180mmである。
なお、プレカレンダーの後に、マルチニップカレンダーを通紙しないでワインダーへ送ることができるよう、バイパスの紙走行経路を設置することや、自動的にバイパス経路へ、および/またはバイパス経路からマルチニップカレンダーを経由する経路へ変更する装置を設置しておくことで、操業の停止を伴うことなく紙パスが可能で、使用していない他方のカレンダーのメンテナンスを行えるようにしておくことも可能である。上記装置の設置は、特に抄紙、塗工、カレンダー処理を一貫して行うオンマシンコーター形式の場合、カレンダー装置のメンテナンス等に起因する抄紙、塗工工程停止を回避できるため操業性を向上できる。
平滑化処理を行うカレンダーの配置方法としては、原紙へ顔料塗工層を設けて乾燥した後に、一度巻きとった後カレンダー処理を行うオフカレンダー、ならびに原紙へ顔料塗工層を設けて乾燥した後に、巻きとらずに連続的な工程としてカレンダー処理を行うオンカレンダーの形態があるが、本発明で規定するカレンダーの配置方法として、生産効率を良好な物とするためには、オンカレンダー形式であることが好ましい。また、プレカレンダーとマルチニップカレンダーの配置としては、プレカレンダーからマルチニップカレンダーまでの間隔を本発明所望の範囲となるように配置することが好ましく、紙進行方向に対して上流側にプレカレンダーを、下流側にマルチニップカレンダーを配置して、プレカレンダーによるカレンダー処理を最初に行うことが必要である。
カレンダー処理後、塗工紙はワインダーで巻取の形態となるよう巻き取られ、後工程に供される。後工程においては、さらに所望の形態となるように、ワインダーでの巻取幅より小幅および/または所望の長さとなるよう巻取の形態で仕上げたり、カッター設備で所望の大きさの平判(シート)に仕上げたりする。
なお、塗工紙の生産効率を最も良好とするため、フォーマー部での抄紙工程、プレス工程、原紙乾燥工程、塗工層形成工程(塗工工程)、塗工層乾燥工程、カレンダー処理工程までの一連の工程が、途中でとぎれることなく連続的に行われるオールオンマシン形式であることが好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はそれらの範囲に限定されるものでない。なお、例中の「部」及び「%」は特に断わらない限り、「質量部(固型分)」及び「質量%」を示す。
実施例1
(原紙の作製)
Lo-solids蒸解釜(アンドリッツ(株)製)を用い、アカシアマンギューム:ユーカリグランディス=30:70(質量比)からなる広葉樹チップをLo-solids蒸解法でクラフト蒸解した。なお、白液は硫化度28%のものを用意し、白液添加率は、活性アルカリとして、チップ供給系に対チップ絶乾重量当たり10%、蒸解ゾーンに8%、洗浄ゾーンに2%分割して添加し、蒸解温度は146℃で行なった。蒸解後のチップを解繊した後、洗浄工程、スクリーン工程、さらに再度洗浄工程を経て、未晒パルプを得た。
前記未晒パルプに対し、絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダを1.7%、酸素を1.8%添加し、パルプ濃度10%、98℃、50分の条件で二段アルカリ酸素漂白を行なった。なお、苛性ソーダは一段目に一括添加し、酸素ガスは一段目に1.0%、二段目に0.8%と分割添加した。アルカリ酸素漂白後のパルプは、洗浄工程で洗浄処理した。
前記アルカリ酸素漂白後のパルプに対し、絶乾パルプ重量当たり硫酸を1.2%添加し、パルプ濃度10%、60℃、60分の条件で滞留させた後、洗浄工程で洗浄処理した。次いで、絶乾パルプ重量当たりオゾンを0.5%、二酸化塩素を0.5%添加し、パルプ濃度10%、58℃、60分の条件で中濃度オゾン/二酸化塩素漂白を行なった後、洗浄工程で洗浄処理した。次いで、絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダを1.0%、過酸化水素を0.1%添加し、パルプ濃度10%、60℃、90分の条件でアルカリ抽出を行なった後、洗浄工程で洗浄処理した。最後に、絶乾パルプ重量当たり二酸化塩素を0.2%添加し、パルプ濃度10%、70℃、120分の条件で二酸化塩素漂白を行なった後、洗浄工程で洗浄処理して、漂白パルプを得た。
上記漂白パルプのスラリー100%に、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−121、奥多摩工業社製)を原紙灰分が10%になるように添加した後、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム0.5%、カチオン澱粉(商品名:エースK100、王子コーンスターチ社製)0.5%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(商品名:サイズパインK−287、荒川化学工業社製)0.1%、ポリアクリルアミド(商品名:ポリストロン851、荒川化学工業社製)0.2%を順次添加し、紙料を調製した。この紙料を運転抄速1500m/分でギャップフォーマーにより紙層を形成し、2基のシュープレスで搾水後、多筒式ドライヤーで乾燥して、53g/mの原紙を得た。
(下塗り塗工層用顔料塗工液の調製)
重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、備北粉化工業製)からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して、接着剤として澱粉(商品名:エースC、王子コーンスターチ社製)30部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:OJ−3000H、JSR社製)7部を添加し、さらに助剤として消泡剤および染料を順次加えて、さらに水を加えることで最終的に固形分濃度35%の下塗り塗工層用の顔料塗工液を調製した。
(上塗り塗工層用顔料塗工液の調製)
分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンT−50、東亜合成社製)を、分散するカオリンに対して0.1部添加した水溶液に、微粒カオリン(商品名:ハイドラグロス90、ヒューバー社製)50部、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)50部を添加し、コーレス分散機で分散して顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに、顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:王子エースC、前出)4部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:OJ−3000H、JSR社製)10部、さらに助剤として消泡剤および染料を順次加えて、さらに水を加えることで最終的に固形分濃度63%の上塗り塗工層用の顔料塗工液を調製した。
(印刷用両面塗工紙の作成)
前記で得た原紙(坪量53g/m2)に、上記で得た下塗り塗工層用の塗工液を、ロッドメタリング形式のロールコーターを使用し、片面あたりの乾燥塗布量が2.5g/m2となるように塗工・乾燥して、原紙の両面に下塗り層を形成した。次いで、下塗り層の各々に対し、上記で得た上塗り塗工層用塗工液を、ジェットファウンテン方式で塗布液を供給するブレードコーターを使用して、片面あたりの乾燥塗布量が8g/m2となるよう塗布・乾燥して、両面に上塗り塗工層を設けた。このようにして得られた塗工紙のカレンダー未処理時の白紙光沢度(上面/下面)は27/24%、王研式平滑度(上面/下面)は100/85秒であった。
上記塗工紙を、図1の構成を有するプレカレンダーとマルチニップカレンダーを組み合わせたカレンダー装置で、T1が0.50秒の条件でカレンダー処理を行った。該マルチニップカレンダーは、ロールニップ加重を全段独立して制御可能で、ロール段数8段のカレンダーであり、カレンダー処理条件は、表1に示したとおりである。ここで、表1中のマルチニップカレンダー条件のニップに付された番号は、図1においてニップを上から数えて1番目、2番目、・・、7番目とした番号であり、また金属ロールに付された番号は、符号の番号である。また加熱された金属ロールの表面温度と金属ロールの上下の各ニップにおける線圧をそれぞれ表示している。ここで、金属ロールのJIS B0601−2001で規定される算術平均粗さRaは、0.2μm、JIS Z2244のビッカース硬度は550HV、弾性ロールのISO 7619に準拠して測定されるショアD硬度は92であった。カレンダー処理後、ワインダーにより塗工紙を巻き取り、坪量74g/mの片面当たり2層の顔料塗工層を有する印刷用両面塗工紙を得た。なお、本実施例においては、抄紙、塗工、カレンダー処理の一連の工程全てを、オールオンライン形式で行った。
実施例2
実施例1の抄紙速度を、1500m/分から1200m/分、および表1記載のカレンダー条件に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用両面塗工紙を得た。この際のT1は、0.62秒であった。
実施例3
実施例1の抄紙速度を、1500m/分から1000m/分、および表1記載のカレンダー条件に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用両面塗工紙を得た。この際のT1は、0.75秒であった。
実施例4
実施例1において、プレカレンダーとマルチニップカレンダー間のパスを調節して、T1を0.30秒、および表1記載のカレンダー条件となるように変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用両面塗工紙を得た。
実施例5
実施例1において、プレカレンダーとマルチニップカレンダー間のパスを調節して、T1を1.20秒、および表1記載のカレンダー条件となるように変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用両面塗工紙を得た。
参考例1
実施例1において、プレカレンダーとマルチニップカレンダー間のパスを調節して、T1を1.50秒、および表1記載のカレンダー条件となるように変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用両面塗工紙を得た。
参考例2
実施例1において、プレカレンダーとマルチニップカレンダー間のパスを調節して、T1を0.10秒、および表1記載のカレンダー条件となるように変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用両面塗工紙を得た。
比較例1
実施例1において、プレカレンダーを使用せず、マルチニップカレンダーのみで表1記載のカレンダー条件でカレンダー処理を行った以外は、実施例1と同様にして印刷用両面塗工紙を得た。
比較例2
実施例1において、プレカレンダーを使用せず、マルチニップカレンダーのみで表1記載のカレンダー条件に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用両面塗工紙を得た。
比較例3
実施例1において、プレカレンダーを4台直列に配置して、表1記載のカレンダー条件でマルチニップカレンダーを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして印刷用両面塗工紙を得た。
上記で得られた印刷用両面塗工紙を、以下の評価方法で評価を行い、その結果をカレンダー条件とともに表1に示した。
(白紙光沢度)
光沢度計(型式:GM−26D、村上色彩技術研究所社製)を用いて、ISO 8254−1(1999)に準じ、入射角/反射角75度の条件で測定した値を、白紙光沢度とした。
(平滑性)
原紙および塗工紙の平滑性を、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に基づく王研式平滑度で平滑度を測定した。
(密度)
JIS P 8118に準じて測定を行った。
(カレンダー汚れ)
プレカレンダーおよびマルチニップカレンダーにおけるカレンダー処理において、連続2時間の操業内でロール汚れが発生しなかった場合を○、発生した場合を×として評価した。
Figure 0005315907

表1から、本発明に基づいた実施例1〜は、カレンダー汚れによる操業性の低下、塗工紙の密度上昇もなく、表裏差の少ない印刷用両面塗工紙が得られている。しかし、プレカレンダー処理をしていない比較例1、2は品質面で劣ったり、操業面で劣ったりしている。また比較例3では品質面でかなり劣っている。さらにまた、T1が本発明で規定する範囲を満たさない参考例1〜2は、光沢度と平滑度が劣るとともに、表裏差がある。このように、本発明における効果は明らかである。
プレカレンダーとマルチニップカレンダーの組み合わせ例を示す概要説明図である。
符号の説明
11・・・・・・・・・・プレカレンダー
11a・・・・・・・・・プレカレンダー弾性ロール
11b・・・・・・・・・プレカレンダー金属ロール
31 ・・・・・・・・・マルチニップカレンダー
41a、b、c、d、e・マルチニップカレンダー弾性ロール
42a、b、c・・・・・マルチニップカレンダー金属ロール

Claims (3)

  1. セルロース繊維を主体とする原紙上に、片面当たり少なくとも1層の顔料および接着剤を主体とする顔料塗工層を設けた印刷用両面塗工紙の製造方法において、該原紙上の両面に顔料塗工層を設けた後、加熱された金属ロールおよび弾性ロールにより構成されるプレカレンダー処理と、加熱された金属ロールおよび弾性ロール群からなるマルチニップカレンダー処理とをこの順に併用して行い、前記プレカレンダーの処理完了からマルチニップカレンダー処理開始までの時間T1が0.30〜1.20秒であって、前記プレカレンダーの金属ロールの表面温度が50〜130℃、ニップ線圧が5〜170kN/mであり、前記マルチニップカレンダーの金属ロールの表面温度が80〜180℃、ニップ線圧が10〜450kN/mであり、前記プレカレンダーの金属ロールの表面温度が前記マルチニップカレンダーの金属ロールの表面温度より低く、かつ前記プレカレンダーのニップ線圧が前記マルチニップカレンダーのニップ線圧より低いことを特徴とする印刷用両面塗工紙の製造方法。
  2. 前記マルチニップカレンダーのロールニップ加重が、全段独立して制御可能であることを特徴とする請求項1記載の印刷用両面塗工紙の製造方法。
  3. 前記プレカレンダーおよびマルチニップカレンダーに使用される金属ロールのJIS B 0601−2001で規定される算術平均粗さRaが0.05〜0.5μmであることを特徴とする、請求項1または記載の印刷用両面塗工紙の製造方法。
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