JP5309644B2 - 膜電極接合体 - Google Patents
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Description
しかしながら、燃料電池を実用化するためには、解決すべき課題が残されている。例えば、燃料電池の発電性能の向上には、燃料電池の内部抵抗を低減させることが有効であり、そのためには、電解質膜と触媒層との界面の接触抵抗を低減することが好ましい。また、電解質膜又は触媒層内電解質に用いられる固体高分子電解質は、一般に、電気伝導度が高くなるほど、水に溶解又は膨潤しやすくなる。そのため、膨潤・収縮サイクルを繰り返すことにより、電解質膜が破損したり、あるいは、触媒層の内部構造が不安定になるという問題がある。
例えば、特許文献1には、電解質膜のスルホン酸基と触媒層内電解質のスルホン酸基とを脱水縮合させた燃料電池が開示されている。
同文献には、電解質膜と触媒層の界面を架橋構造を介して接合すると、電解質膜と触媒層の接触抵抗を低減できる点が記載されている。
同文献には、触媒層内電解質として、ビススルホニルイミド基等で架橋された固体高分子化合物を用いると、高湿度条件下又は高温条件下であっても、触媒層の内部構造が安定して保たれる点が記載されている。
同文献には、このような方法により、高い電気伝導度を有するデンドリマ型又は架橋ネットワーク型の高分子電解質が得られる点が記載されている。
また、特許文献2、3に開示されているように、電解質膜又は触媒層内電解質にビススルホニルイミド基などのイミド基からなる架橋構造を導入すると、架橋構造の生成水に対する安定性が向上する。しかしながら、このような架橋構造を電解質膜と触媒層との接合に用いた例は、従来にはない。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、プロトン伝導度を大きく低下させることなく、電解質膜と触媒層の界面の接合強度の向上及び接触抵抗の低減が可能な膜電極接合体を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、燃料電池内で生成水が生じても、電解質膜と触媒層の界面の接触抵抗の変動が相対的に小さい膜電極接合体を提供することにある。
固体高分子電解質を含む電解質膜と、
前記電解質膜の両面に接合された、触媒層内電解質を含む電極とを備え、
前記固体高分子電解質と前記触媒層内電解質との界面の少なくとも一方は、前記固体高分子電解質又は前記触媒層内電解質とは異なるポリマーからなる第3ポリマーにより相互貫入網目構造が導入され、及び/又は、イミド架橋により化学架橋されていることを要旨とする。
[1. 膜電極接合体(1)]
本発明の第1の実施の形態に係る膜電極接合体(MEA)は、
固体高分子電解質を含む電解質膜と、
電解質膜の両面に接合された、触媒層内電解質を含む電極とを備え、
固体高分子電解質と触媒層内電解質との界面の少なくとも一方は、第3ポリマーにより相互貫入網目構造が導入されていることを特徴とする。
電解質膜は、固体高分子電解質のみからなる膜でも良く、あるいは、多孔膜、フィブリル繊維などの補強材との複合体からなる膜であっても良い。
固体高分子電解質としては、具体的には、
(1)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の酸基が導入されたポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリサルホン、ポリエーテル等、又は、これらの誘導体(脂肪族炭化水素系電解質)、
(2)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の酸基が導入されたポリスチレン、芳香環を有するポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリサルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート等、又は、これらの誘導体(部分芳香族炭化水素系電解質)、
(3)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の酸基が導入されたポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレン、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド等、又は、これらの誘導体(全芳香族炭化水素系電解質)、
(4)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の酸基が導入されたポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリスチレン−グラフト−ポリテトラフルオロエチレン等、又は、これらの誘導体(部分フッ素系電解質)、
(5)デュポン社製ナフィオン(登録商標)、旭化成(株)製アシプレックス(登録商標)、旭硝子(株)製フレミオン(登録商標)等、又は、これらの誘導体(全フッ素系電解質)、
(6)後述するイミドネットワークポリマー(INP)、
などがある。
これらの中でも、INPは、電解質単体での電気伝導度が高いので、電解質膜を構成する固体高分子電解質として特に好適である。
MEAを構成する電極は、通常、触媒層と拡散層の二層構造を取るが、触媒層のみによって構成される場合もある。電極が触媒層と拡散層の二層構造を取る場合、電極は、触媒層を介して電解質膜に接合される。
第3ポリマーとは、電解質膜を構成する固体高分子電解質又は触媒層内電解質とは異なるポリマーをいう。
電解質膜と電極の界面に第3ポリマーを導入する方法には、
(1) 固体高分子電解質の少なくとも界面近傍と、触媒層内電解質の少なくとも界面近傍に第3ポリマーを形成可能な第3モノマーを導入し、電解質膜と電極との接合時又は接合後に、第3モノマーを重合させる方法、
(2) 固体高分子電解質の少なくとも界面近傍及び/又は触媒層内電解質の少なくとも界面近傍に第3ポリマーを導入し、電解質膜と電極とを接合する方法、
などがある。
ここで、「界面近傍」とは、第3ポリマーと固体高分子電解質又は触媒層内電解質との間で分子の絡み合いが生ずる領域をいう。第3ポリマーは、少なくとも電解質膜と触媒層の界面を跨ぐように導入されていれば良いが、電解質膜又は触媒層の全体に導入されていても良い。このような第3ポリマーと固体高分子電解質又は触媒層内電解質との間の分子の絡み合い(相互貫入網目構造)は、いずれか一方の電極と電解質膜との界面に形成されていても良く、あるいは、双方の電極と電解質膜との界面に形成されていても良い。
(1) ナフィオン(登録商標)などのフッ素系の酸性ポリマー、
(2) スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(PAMPS)などの炭化水素系の酸性ポリマー、
(3) ビニルピリジンポリマー、ポリベンズイミダゾールなどの炭化水素系の塩基性ポリマー、
(4) メタロキサンポリマー(例えば、シロキサンポリマー)などの無機系の非電解質ポリマー、
(5) PAAm系ポリマーなどの炭化水素系の非電解質ポリマー、
などがある。界面近傍には、これらのいずれか1種の異種ポリマーが含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
炭化水素系の酸性ポリマーを形成するための第3モノマーとしては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などがある。
炭化水素系の塩基性ポリマーを形成するための第3モノマーとしては、例えば、4−ビニルピリジンなどがある。
炭化水素系の非電解質ポリマーを形成するための第3モノマーとしては、例えば、メタクリルアミドなどがある。
[2.1 モノマー含浸法]
第3モノマーを出発原料に用いたMEAは、以下のようにして製造することができる。すなわち、まず、電解質膜を構成する固体高分子電解質に第3モノマーを導入する。
固体高分子電解質に第3モノマーを導入する方法には、
(1) 固体高分子電解質と第3モノマー(及び、必要に応じて、フィブリル繊維などの補強材)とを適当な溶媒に溶解又は分散させ、この溶液を適当な基板表面に塗布、又は、多孔膜の細孔内に充填し、溶媒を除去して電解質膜を製造する方法、
(2) 電解質膜(補強材を含んでいても良い)を製造した後、第3モノマーを溶解又は分散させた溶液を電解質膜に含浸させる方法、
などがある。
触媒層内電解質に第3モノマーを導入する方法には、
(1) Pt/Cのような電極触媒と触媒層内電解質を分散させた溶液(触媒インク)に、第3モノマーを加え、触媒インクを適当な基板(例えば、ポリテトラフルオロエチレンシート、上述の方法で作製した電解質膜など。以下、同じ。)表面に塗布して触媒層を製造する方法、
(2) 第3モノマーを含まない触媒インクを適当な基板表面に塗布して触媒層を製造し、第3モノマーを溶解又は分散させた溶液を触媒層に含浸させる方法、
などがある。
第3ポリマーを出発原料に用いたMEAは、以下のようにして製造することができる。すなわち、まず、電解質膜を構成する固体高分子電解質又は触媒層内電解質の少なくとも一方に第3ポリマーを導入する。
固体高分子電解質に第3ポリマーを導入する方法には、
(1) 固体高分子電解質と第3ポリマー(及び、必要に応じて、フィブリル繊維などの補強材)とを適当な溶媒に溶解又は分散させ、この溶液を適当な基板表面に塗布、又は、多孔膜の細孔内に充填し、溶媒を除去する方法、
(2) 電解質膜(補強材を含んでいても良い)を製造した後、第3ポリマーを溶解又は分散させた溶液を電解質膜に含浸させる方法、
などがある。
(1) Pt/Cのような電極触媒と触媒層内電解質を分散させた溶液(触媒インク)に、第3ポリマーを加え、触媒インクを適当な基板(例えば、ポリテトラフルオロエチレンシート、上述の方法で作製した電解質膜など)表面に塗布する方法、
(2) 第3ポリマーを含まない触媒インクを適当な基板表面に塗布して触媒層を製造し、第3ポリマーを溶解又は分散させた溶液を触媒層に含浸させる方法、
などがある。
本発明の第2の実施の形態に係る膜電極接合体(MEA)は、
固体高分子電解質を含む電解質膜と、
電解質膜の両面に接合された、触媒層内電解質を含む電極とを備え、
固体高分子電解質と触媒層内電解質との界面の少なくとも一方は、イミド架橋により化学架橋されていることを特徴とする。
電解質膜の詳細は、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[3.2 電極]
電極の詳細は、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
イミド架橋とは、ビススルホニルイミド基(−SO2NHSO2−)、スルホニルカルボニルイミド基(−SO2NHCO−)、ビスカルボニルイミド基(−CONHCO−)などのイミド基を含む架橋をいう。
電解質膜と電極の界面にイミド架橋を形成する方法には、
(1) 固体高分子電解質の少なくとも表面に反応性官能基Aを導入し、触媒層内電解質の少なくとも表面に、反応性官能基Aと反応することによってイミド架橋を形成することが可能な反応性官能基Bを導入し、電解質膜と電極の接合時又は接合後に、反応性官能基Aと反応性官能基Bとを反応させる方法、
(2) 固体高分子電解質の少なくとも表面に反応性官能基A及び/又は反応性官能基Bを導入し、触媒層内電解質の少なくとも表面に、反応性官能基A及び/又は反応性官能基Bを導入し、電解質膜と電極の間に反応性官能基A及び/又は反応性官能基Bを有する架橋剤を介在させ、電解質膜と電極の接合時又は接合後に、反応性官能基Aと反応性官能基Bとを反応させる方法、
などがある。
反応性官能基A、Bは、固体高分子電解質及び触媒層内電解質の表面近傍(界面近傍)に導入されていれば良いが、電解質膜及び触媒層の全体に導入されていても良い。このようなイミド架橋は、いずれか一方の電極と電解質膜との界面に形成されていても良く、あるいは、双方の電極と電解質膜との界面に形成されていても良い。
反応性官能基を用いたイミド架橋は、以下のようにして形成することができる。すなわち、まず、電解質膜を構成する固体高分子電解質の少なくとも表面に反応性官能基A及び/又は反応性官能基Bを導入する。
固体高分子電解質の表面に反応性官能基を導入する方法には、
(1) 反応性官能基(例えば、スルホニルフロライド基)を備えた固体高分子電解質を用いて電解質膜を製造する方法、
(2) 電解質膜を製造した後、表面の酸基又はその前駆体を反応性官能基に変換する方法(例えば、表面のスルホニルフロライド基にアンモニアを反応させて、スルホニルアミド基に変換する方法)、
などがある。
後述するイミドネットワークポリマーは、その性質上、少なくとも表面に未反応の反応性官能基A、B、又は、これらの誘導体を持つ。
触媒層内電解質に反応性官能基を導入する方法には、
(1) Pt/Cのような電極触媒と、反応性官能基(例えば、スルホニルアミド基)を備えた触媒層内電解質とを分散させた溶液(触媒インク)を適当な基板(例えば、ポリテトラフルオロエチレンシート、上述の方法で作製した電解質膜など)表面に塗布して触媒層を製造する方法、
(2) 触媒層を製造した後、表面の酸基又はその前駆体を反応性官能基に変換する方法(例えば、表面のスルホニルフロライド基にアンモニアを反応させる方法)、
などがある。
例えば、電解質膜の表面に反応性官能基Aを導入し、電極表面に反応性官能基Bを導入した場合、両者を直接、ホットプレスしても良い。あるいは、両者の界面に、少なくとも1個の反応性官能基Aと少なくとも1個の反応性官能基Bを備えた架橋剤を共存させた状態で、両者をホットプレスしても良い。
また、例えば、電解質膜の表面及び電極表面の双方に反応性官能基Aを導入した場合、両者の界面に、2個以上の反応性官能基Bを備えた架橋剤を介在させた状態で、両者をホットプレスする。
ホットプレス時に反応性官能基A、Bの反応が進行しない場合には、ホットプレス後にこれらを架橋反応させる。反応性官能基A、Bを架橋反応させる場合、界面にトリエチルアミンガスのような塩基を介在させると、反応を促進させることができる。ホットプレス及び架橋反応後、必要に応じて酸基のプロトン化を行うと、本実施の形態に係るMEAが得られる。
イミドネットワークポリマー(INP)とは、所定の条件を満たすモノマを反応させることにより得られるものからなる。
INPの第1の具体例は、所定の条件を満たす1種又は2種以上の第1モノマと、1種又は2種以上の第2モノマとを反応させることにより得られるものからなる。
本発明において、「第1モノマ」とは、分子量が10000以下であって、1分子内にn個(n≧2)の反応性官能基A及び/又反応性官能基Bを含むものを言う。
また、「第2モノマ」とは、分子量が10000以下であって、1分子内にm個(m≧3、m≠n)の反応性官能基A及び/又は反応性官能基Bを含むものを言う。
さらに、「反応性官能基A」及び「反応性官能基B」とは、これらの反応によって、ビススルホンイミド基(−SO2NHSO2−)、スルホンカルボンイミド基(−SO2NHCO−)、又はビスカルボンイミド基(−CONHCO−)(以下、これらを総称して「イミド基」という)を形成することが可能な官能基を言う。
また、モノマ(16)〜(18)において、「P1=P2=P3=P4以外の組み合わせ」とは、P1=P2=P3≠P4である場合、P1=P2=P4≠P3である場合、P1=P3=P4≠P2である場合、P1≠P2=P3=P4である場合、P1=P2≠P3≠P4である場合、P1=P3≠P2≠P4である場合、P1=P4≠P2≠P3である場合、P1≠P2≠P3=P4である場合、P1≠P2≠P3≠P4である場合等をいう。
また、モノマ(17)において、中央部の繰り返し単位「−(CF2CFP2)B−」中のBが2以上であるときには、各官能基P2は、それぞれ、互いに同一の官能基であっても良く、あるいは、異なる官能基の組み合わせであっても良い。
上述した第1モノマ及び第2モノマを反応させた場合、反応性官能基の数に応じて、高分子鎖が放射状に伸びた「デンドリマ型」のINP、又は、イミド基を介して高分子鎖が架橋している「架橋ネットワーク型」のINPが得られる。
デンドリマ型又は架橋ネットワーク型のINPを合成するためには、1種又は2種以上の第1モノマ及び1種又は2種以上の第2モノマは、これらのいずれかに、少なくとも1個の反応性官能基Aと、少なくとも1個の反応性官能基Bとを含む必要がある。
また、架橋ネットワーク型のINPを合成するためには、1種又は2種以上の第1モノマ及び1種又は2種以上の第2モノマは、これらのいずれかに、少なくとも2個の反応性官能基Aと、少なくとも2個の反応性官能基Bとを含む必要がある。
例えば、第1モノマとして、2個のイミド系官能基(A)を持つ2官能モノマ(例えば、上述したモノマ(1)又は(2)。以下、これを「AA」と略記する。)を用い、第2モノマとして、2個のイミド系官能基(A)と1個のハライド系官能基(B)を持つ3官能モノマ(例えば、上述したモノマ(15)。以下、これを「AAB」と略記する。)を用いた場合、これらを反応させると、2官能モノマAAの両端に3官能モノマAABが結合し、「AAB−AA−BAA」という構造を有するオリゴマが得られる。この場合、2官能モノマAAと3官能モノマAABの結合点には、合計2個のイミド基(「B−A」及び「A−B」)が形成される。
例えば、第1モノマとして、1個のイミド系官能基(A)と1個のハライド系官能基(B)とを持つ2官能モノマ(例えば、上述したモノマ(9)〜(14)。以下、これを「AB」と略記する。)を用い、第2モノマとして、3個のハライド系官能基(B)を持つ3官能モノマ(例えば、上述したモノマ(5)。以下、これを「BBB」と略記する。)を用いた場合、これらを反応させることによって、「BA−BB(AB)B−AB」という構造を有するオリゴマが得られる。
例えば、第1モノマとして、2個のイミド系官能基(A)を有する2官能モノマAAを用い、第2モノマとして、3個のハライド系官能基(B)を有する3官能モノマBBBを用いた場合、これらを反応させると、「AA−BB(AA)B−AA」という構造を有するオリゴマが得られる。
例えば、第1モノマとして、2個のイミド系官能基(A)を有する2官能モノマAAを用い、第2モノマとして、1個のイミド系官能基(A)と2個のハライド系官能基(B)を有する3官能モノマBAB(例えば、上述したモノマ(15))を用いた場合、これらを反応させると、「AA−BAB−AA」という構造を有するオリゴマが得られる。
例えば、第1モノマとして、1個のイミド系官能基(A)と1個のハライド系官能基(B)を有する2官能モノマABを用い、第2モノマとして、1個のイミド系官能基(A)と2個のハライド系官能基(B)を有する3官能モノマBABを用いた場合、これらを反応させると、「BA−BAB−AB」という構造を有するオリゴマが得られる。
例えば、第1モノマとして、1個のイミド系官能基(A)と1個のハライド系官能基(B)を有する2官能モノマABを用い、第2モノマとして、3個のイミド系官能基(A)を有する3官能モノマAAA(例えば、上述したモノマ(5))及び3個のハライド系官能基を有する3官能モノマBBBを用いた場合、これらを反応させると、まず、3官能モノマAAAと2官能モノマABが反応し、「AB−AA(BA)A−BA」という構造を有するオリゴマが得られる。
例えば、第1モノマとして、2個のイミド系官能基(A)を有する2官能モノマAA及び2個のハライド系官能基(B)を有する2官能モノマBBを用い、第2モノマとして、3個のハライド系官能基(B)を有する3官能モノマBBBを用いた場合、これらを反応させると、まず、3官能モノマBBBと2官能モノマAAが反応し、「AA−BB(AA)B−AA」という構造を有するオリゴマが得られる。
4個以上の反応性官能基を持つモノマを用いて合成する場合も同様であり、種類の異なる複数個のモノマのいずれかに、少なくとも1個の反応性官能基Aと、少なくとも1個の反応性官能基Bとを含む場合には、高分子鎖が放射状に成長したデンドリマ型のINPが得られる。
また、種類の異なる複数個のモノマのいずれかに、少なくとも2個の反応性官能基Aと、少なくとも2個の反応性官能基Bとを含む場合には、高分子鎖が相互に架橋された架橋ネットワーク型のINPが得られる。
1種又は2種以上の第1モノマと1種又は2種以上の第2モノマの配合比率は、合成されるINPの形態、用途、要求特性等に応じて最適な比率を選択する。例えば、デンドリマ型のINPを合成する場合、デンドリマの核となるモノマに対して、高分子鎖を構成するモノマの比率を相対的に多くするのが好ましい。
α0=1/(f−1)
である。いま一方がf官能性と2官能性モノマの混合物、他方が2官能性モノマのみとする。たとえば、f=3なら、AAAや、AA、BBの反応により両端が枝分かれした下記のような鎖、
pA{pB(1−ρ)pA}npBρ (n=0〜∞)
になり、したがってnに無関係に任意の鎖の両端が枝分かれ点につながった確率、すなわちαは、
α=γpA 2ρ/{1−γpA 2(1−ρ)}=pB 2ρ/{γ−pB 2(1−ρ)}
が誘導される。したがって、pA、pBを実測してαを求めることができるし、ゲル化点では、α0=1/(f−1)であるから、γ、ρが既知であればゲル化点のpAまたはpBが予測できる。(高分子学会編、「高分子科学の基礎」、p250〜251、東京化学同人(1978)参照。)
INPを含む電解質は、INPのみによって構成されていても良く、あるいは、INPと補強材としての多孔膜、フィブリル繊維等との複合体であっても良い。
この場合、多孔膜の気孔率、平均気孔径、厚さ等は、電解質膜の用途、要求特性等に応じて最適な値を選択する。また、INPは、多孔膜中に均一に分散していても良く、あるいは、多孔膜の表面又は内部に偏在していても良い。
INPは、合成に使用される第1モノマ及び第2モノマの種類、配合比率等の合成条件に応じて、その内部に架橋構造が導入される。ここで、INPにおける「架橋」とは、高分子鎖が物理的に絡み合うことにより形成される「物理架橋」と、高分子鎖が第1モノマ又は第2モノマによって分子架橋された「化学架橋」の双方を意味する。
架橋密度は、合成条件を最適化することによって、調整することができる。一般に、架橋密度が高くなるほど、水に対する膨潤・収縮が少なく、耐熱性及び耐久性に優れた固体高分子電解質が得られる。架橋密度は、具体的には、0.1mmol/g以上が好ましく、さらに好ましくは、0.5mmol/g以上である。
イミドネットワークポリマーの第1の具体例は、
所定の条件を満たす1種又は2種以上の第1モノマと、1種又は2種以上の第2モノマとを反応させることにより製造することができる。
溶媒は、出発原料の種類に応じて、最適なものを選択すれば良く、特に限定されるものではない。また、溶液中に含まれる出発原料の濃度も特に限定されるものではなく、出発原料の種類に応じて最適なものを選択すればよい。
さらに、溶液には、フィブリル繊維などの補強材を添加しても良い。
イミドネットワークポリマーの第2の具体例は、所定の条件を満たす1種又は2種以上の第3モノマとを反応させることにより得られるものからなる。
「第3モノマ」とは、分子量が10000以下であり、1分子内にp個(p≧3)の反応性官能基A及び/又は反応性官能基Bを含むものを言う。すなわち、第2の具体例においては、1分子当たりの官能基の数が等しい1種又は2種以上の第3モノマを出発原料として用いる点に特徴がある。
上述した第3モノマを反応させた場合、反応性官能基の数に応じて、デンドリマ型、又は、架橋ネットワーク型のINPが得られる。
例えば、デンドリマ型のINPを合成する場合、1種又は2種以上の第3モノマは、これらのいずれかに、少なくとも1個の反応性官能基Aと、少なくとも1個の反応性官能基Bとを含むものである必要がある。
一方、第3モノマとして、1分子内に4個以上の反応性官能基を有するものを用いるときには、1種又は2種以上の第3モノマであって、これらのいずれかに、少なくとも2個の反応性官能基Aと、少なくとも2個の反応性官能基Bとを含むものを用いるのが好ましい。
第3モノマを用いてINPを合成する場合において、出発原料の配合比率、補強材、及び、架橋密度に関する詳細は、第1の具体例と同様であるので、説明を省略する。
イミドネットワークポリマーの第2の具体例は、所定の条件を満たす1種又は2種以上の第3モノマを反応させることにより製造することができる。
第2の具体例の製造方法は、出発原料として第1モノマ及び第2モノマに代えて第3モノマを用いた以外は、第1の具体例と同様であるので、説明を省略する。
第1〜第3モノマは、これらに類似の分子構造を有する市販のモノマを出発原料に用い、これに対して公知の方法を用いて所定の官能基変換を行うことにより合成することができる。
電解質膜を構成する固体高分子電解質と触媒層に含まれる触媒層内電解質の界面に、第3ポリマーによる相互貫入網目構造又はイミド架橋による化学架橋を導入すると、電解質膜と触媒層の界面の接合強度が高くなり、接触抵抗を低減することができる。また、相互貫入網目構造を形成する際にプロトン伝導性基を消費することはなく、イミド架橋はプロトン伝導性基としても機能するので、相互貫入網目構造又は化学架橋導入に伴うプロトン伝導度の低下は少ない。さらに、第3ポリマー及びイミド架橋は、いずれも水に対して安定であるため、燃料電池作動環境下において生成水が生じても界面の接触抵抗の変動が少ない。
これに対し、INPを含む電解質膜と触媒層とを接合する場合において、界面に第3ポリマーを導入し、又は、界面にイミド架橋を導入すると、膜/触媒層界面の接合性が向上する。そのため、膜/触媒層界面の機械的特性が向上するだけでなく、界面の接触抵抗も低減され、高い特性が得られる。
[1.試料の作製]
[1.1 フィリングINP膜の作製]
ベンゼン1,3,5−トリスルホン酸トリアミド(BTSA)2.838gと、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−プロパン−1,3−ジスルホン酸ジアミド(PPDSA)8.375gの2種類のモノマ混合物を容器内に入れてアルゴン置換し、そこにMeCNを21.76g加えて攪拌した。さらに攪拌しながら、TEAを16.39g加えた。超音波を2分間照射して、1,1,2,2,3,3,−ヘキサフルオロ−プロパン−1,3−ジスルホニルフロライド(PPDSF)12.804gを加えた。モル比は、BTSA:PPDSA:PPDSF=1:3:4.5とした。さらに3分超音波を照射して、振とうを100rpmで30分行った。この溶液を多孔膜に含浸させた後、50℃で96時間反応させ、さらに90℃で24時間加熱した。
[1.2.1 実施例1:イミド架橋の導入]
500mLのオートクレーブにフッ素系溶媒(旭硝子(株)製AK225、100g)、ナフィオン(登録商標)モノマ(30g)と開始剤(70%のジ(エチルへキシル)パーオキシカーボネートのシクロヘキサン溶液、0.07mL)を仕込み、−40℃に冷却し、ヘキサフルオロエチレン(6g)を封入した。50℃で2時間反応させた後、アセトン200mLに再沈殿させ、ろ過、乾燥した。得られたナフィオン(登録商標)F体の当量重量(EW)は、700g/eqだった。
フィリングINP膜を、メタクリルアミド(第3モノマー):N,N'−メチレンビス−メタクリルアミド(架橋剤):ペルオキソ二硫酸カリウム(開始剤)のモル比1:0.1:0.01の2mol/Lメタクリルアミド水溶液に浸漬し、超音波を1分間照射し、30分振とうを行った。水溶液から取り出して、表面に付着した液滴を拭き取った。
触媒インクに対しても、メタクリルアミドの重量含有率が10wt%となるように、上記モル比のメタクリルアミド水溶液を加えた。この触媒インクをフィリングINP膜にスプレー法により所定量塗布した後、ポリテトラフルオロエチレンシートに挟んで、ホットプレス(50℃、50kg/cm2(4.9MPa)、30min)した。
N,N'−メチレンビス−メタクリルアミドを用いなかった以外は、実施例2と同様にして、MEAを作製した(実施例3)。
メタクリルアミド水溶液に代えて、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(第3モノマー):N,N'−メチレンビス−メタクリルアミド(架橋剤):ペルオキソ二流酸カリウム(開始剤)のモル比1:0.4:0.01の1mol/Lの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸水溶液を用いた以外は、実施例2と同様にして、MEAを作製した(実施例4)。
フィリングINP膜を80℃の20wt%ナフィオン(登録商標)溶液(DE2020、デュポン社製)(第3ポリマー)中で24時間放置した後、真空乾燥器中において室温で24時間乾燥した。この電解質膜に、実施例1で作製した触媒インクを所定量スプレー塗布し、ポリテトラフルオロエチレンシートで挟んでホットプレス(130℃、50kg/cm2(4.9MPa)、6min)し、目的のMEAを得た(実施例5)。
フィリングINP膜に、実施例1で作製した触媒インクを所定量スプレー塗布し、ポリテトラフルオロエチレンシートで挟んでホットプレス(130℃、50kg/cm2(4.9MPa)、6min)し、目的のMEAを得た(比較例1)。
作製したMEAについて、接合性評価試験を行った。評価は、粘着テープをMEAの触媒層上から所定圧で押した後、剥がすことにより行った。剥がした際に、触媒層がテープに付かず、膜との接合を保持した場合を「○」、触媒層から膜が剥がれてテープに付いた場合を「×」とした。
表1に、その結果を示す。表1より、比較例1に対し、実施例1〜5のMEAは、接合性が向上していることがわかる。
Claims (7)
- 固体高分子電解質を含む電解質膜と、
前記電解質膜の両面に接合された、触媒層内電解質を含む電極とを備え、
前記固体高分子電解質と前記触媒層内電解質との界面の少なくとも一方は、前記固体高分子電解質又は前記触媒層内電解質とは異なるポリマーからなる第3ポリマーにより相互貫入網目構造が導入され、及び/又は、イミド架橋により化学架橋されている
膜電極接合体。 - 前記固体高分子電解質の少なくとも界面近傍と、前記触媒層内電解質の少なくとも界面近傍に前記第3ポリマーを形成可能な第3モノマーを導入し、
前記電解質膜と前記電極の接合時又は接合後に、前記第3モノマーを重合させる
ことにより得られる請求項1に記載の膜電極接合体。 - 前記固体高分子電解質の少なくとも界面近傍及び/又は前記触媒層内電解質の少なくとも界面近傍に前記第3ポリマーを導入し、
前記電解質膜と前記電極とを接合する
ことにより得られる請求項1に記載の膜電極接合体。 - 前記固体高分子電解質の少なくとも表面に反応性官能基Aを導入し、前記触媒層内電解質の少なくとも表面に、前記反応性官能基Aと反応することによってイミド架橋を形成することが可能な反応性官能基Bを導入し、
前記電解質膜と前記電極の接合時又は接合後に、前記反応性官能基Aと前記反応性官能基Bとを反応させ、前記イミド架橋を形成する
ことにより得られる請求項1に記載の膜電極接合体。 - 前記固体高分子電解質及び前記触媒層内電解質の少なくとも一方は、以下の条件を満たす1種又は2種以上の第1モノマと、1種又は2種以上の第2モノマとを反応させることにより得られるイミドネットワークポリマーである請求項1から4までのいずれかに記載の膜電極接合体。
(1) 前記第1モノマは、分子量が10000以下であって、1分子内にn個(n≧2)の反応性官能基A及び/又は反応性官能基Bを含むものからなる。
(2) 前記第2モノマは、分子量が10000以下であって、1分子内にm個(m≧3、m≠n)の前記反応性官能基A及び/又は前記反応性官能基Bを含むものからなる。
(3) 前記反応性官能基A及び前記反応性官能基Bは、これらの反応によって、ビススルホンイミド基(−SO2NHSO2−)、スルホンカルボンイミド基(−SO2NHCO−)、又はビスカルボンイミド基(−CONHCO−)を形成するものからなる。
(4) 前記1種又は2種以上の第1モノマ及び前記1種又は2種以上の第2モノマは、これらのいずれかに、少なくとも1個の前記反応性官能基Aと、少なくとも1個の前記反応性官能基Bとを含むものからなる。 - 前記固体高分子電解質及び前記触媒層内電解質の少なくとも一方は、以下の条件を満たす1種又は2種以上の第3モノマーとを反応させることにより得られるイミドネットワークポリマーである請求項1から4までのいずれかに記載の膜電極接合体。
(1) 前記第3モノマーは、分子量が10000以下であり、1分子内にp個(p≧3)の反応性官能基A及び/又は反応性官能基Bを含むものからなる。
(2) 前記反応性官能基A及び前記反応性官能基Bは、これらの反応によって、ビススルホンイミド基(−SO2NHSO2−)、スルホンカルボンイミド基(−SO2NHCO−)、又はビスカルボンイミド基(−CONHCO−)を形成するものからなる。
(3) 前記1種又は2種以上の第3モノマーは、これらのいずれかに、少なくとも1個の前記反応性官能基Aと、少なくとも1個の前記反応性官能基Bとを含むものからなる。 - 前記電解質膜は、さらに補強材を含む請求項1から6までのいずれかに記載の膜電極接合体。
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