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JP5397934B2 - スフェロイド群およびその製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、スフェロイド群およびその製造方法に関するものである。
今日、創薬の開発において、細胞培養技術によって培養した細胞が、薬剤の薬理活性評価や毒性試験のシミュレーターに利用されている。
しかしながら、従来の細胞培養技術で培養した細胞は、細胞が二次元方向に広がった単層細胞であるため、生体内と同等の三次元組織を構築することができず、また、細胞が体内で有している特異的な機能を長時間維持することができないという問題があった。
そこで近年、生体内と同等の機能を有する三次元組織であるスフェロイドの培養が注目されている。例えば、底面がロート状のウェルに複数の単一細胞を播種し、底面でこの単一細胞を凝集および分裂させてスフェロイドを培養するもの(特許文献1)や、所定のポリマー混合物のキャスト液表面に水を結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることにより得られるハニカム構造体上でスフェロイドを培養するものがある(特許文献2)。
特開平6−327462号公報(段落番号0016、図1) 特開2002−335949号公報(第3頁、図1)
しかしながら、前者は、足場がないためスフェロイドが固定されておらず、培地交換等、良好な培養環境を維持することが難しいという課題があった。また、複数の細胞が凝集してスフェロイドを形成しているため、生体内で一つの細胞から分裂して形成された癌細胞等の性質とは、厳密には異なるという課題もあった。また、後者は、スフェロイドを培養するためのハニカム構造体の材料に制約があることや、ハニカム構造の大きさを精密に制御することはできないこと、構造をハニカム以外の形状にすることが困難であること等の課題があり、スフェロイドの性質等が制御されていない他、コストも高くなるという課題があった。また、用いられている細胞は、肝細胞のような複数の細胞が協働していても評価可能な細胞であり、癌細胞のように、生体内で一つの細胞から分裂して形成されるものの評価については示唆されていない。
そこで、本発明は、より確度の高いスクリーニング等が行えると共にコストが低いスフェロイド群およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明のスフェロイド群は、セル間の幅が3μm以下で平面方向の形状が正三角形、正方形、正六角形のいずれかであると共に最小内径が3μm以下のセルを等方的に連続して形成された細胞接着面として機能する凹凸構造であって、ナノインプリント技術によって精密に制御して形成された前記凹凸構造を有するスフェロイドを製造するために用いることができる細胞培養構造体上で細胞を培養して得られたことを特徴とする。
この場合、前記細胞は癌細胞を用いることができる。
また、前記細胞培養構造体は、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル樹脂、環状オレフィン系熱可塑性樹脂、アクリル樹脂、酸化アルミニウム、ガラス、石英ガラス、シリコンのいずれか1以上により形成形成されたものである方が好ましい。
また、前記セルは、最大内径が3μm以下である方が好ましい。
また、本発明のスフェロイド群の製造方法は、セル間の幅が3μm以下で平面方向の形状が正三角形、正方形、正六角形のいずれかであると共に最小内径が3μm以下のセルを等方的に連続して形成された細胞接着面として機能する凹凸構造であって、ナノインプリント技術によって精密に制御して形成された前記凹凸構造を有するスフェロイドを製造するために用いることができる細胞培養構造体上で細胞を培養することを特徴とする。
この場合、前記細胞は癌細胞を用いることができる。
また、前記細胞培養構造体は、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル樹脂、環状オレフィン系熱可塑性樹脂、アクリル樹脂、酸化アルミニウム、ガラス、石英ガラス、シリコンのいずれか1以上により形成されたものである方が好ましい。
また、前記セルは、最大内径が3μm以下である方が好ましい。
また、本発明は、上述したスフェロイド群の、薬剤のスクリーニングのための使用である。
また、本発明は、上述したスフェロイド群の、疾病の悪性度鑑別のための使用である。
また、本発明は、上述したスフェロイド群の、ヒトを治療する方法以外の再生医療のための使用。
また、本発明は、上述したスフェロイド群の、食品機能評価のための使用である。
また、本発明は、上述したスフェロイド群の、食品又は薬剤の安全性評価のための使用である。
本発明によれば、より確度の高いスクリーニング等を安価に行うことができる。
細胞培養構造体の凹凸構造を示す説明図である。 微細加工装置を示す概略正面図である。 膜厚40μmのフィルムに形成したハニカム構造を有する細胞培養構造体のSEM写真である。 膜厚40μmのフィルムに形成したハニカム構造を有する細胞培養構造体のSEM写真である。 膜厚100μmのフィルムに形成したハニカム構造を有する細胞培養構造体のSEM写真である。 膜厚100μmのフィルムに形成したハニカム構造を有する細胞培養構造体のSEM写真である。 細胞培養容器を示す平面図である。 図10のI−I線矢印方向から見た断面図である。 別の細胞培養容器を示す断面図である。 別の細胞培養容器を示す断面図である。 別の細胞培養容器を示す断面図である。 細胞培養構造体上で培養したヒトグリオーマ由来の細胞株U251細胞で形成された本発明のスフェロイドのSEM写真である。 本発明のスフェロイドと単層細胞のHIF−1α、P−AMPKを比較するウェスタンブロッティング像を示す写真である。 細胞培養構造体の平板効率とスフェロイド生成率の関係を示す表である。 細胞培養構造体上で培養したヒト頭頚部由来の細胞株SQ20B細胞で形成された本発明のスフェロイドの光学顕微鏡写真(倍率100倍)である。 細胞培養構造体上で培養したヒト大腸癌由来の細胞株SW480細胞で形成された本発明のスフェロイドの光学顕微鏡写真(倍率200倍)である。 細胞培養構造体上で培養したヒト大腸癌由来の細胞株HT29細胞で形成された本発明のスフェロイドの光学顕微鏡写真(倍率40倍)である。 凹凸構造の凹凸の幅と仮足の数との関係を示すグラフである。
100 型
200 加工対象物
201 多角形
202 線
203 溝
210 細胞培養容器
211 穴
212 筒状部材
213 基板
215 シール部材
220 細胞培養構造体
以下に、本発明の実施の形態を図1ないし図17に基づいて詳細に説明する。
<1>細胞培養構造体
まず、本発明のスフェロイドを製造するために用いることができる細胞培養構造体について説明する。
細胞培養構造体は、凹凸の幅が3μm以下の凹凸構造を有するものである。
このように、凹凸構造の幅を3μm以下にすることで、実施例5に記載のように、平板効率が同素材からなる平滑の細胞培養基材と比して高い細胞培養構造体が得られる。この理由としては、実施例10に記載のように、凹凸構造の幅が小さくなる程、播種された細胞は多くの仮足を成長させるようになり、細胞培養構造体への接着性が向上するためであると考えられる。ここで仮足とは、細胞質の一時的な突出で、細胞の接着や遊走に際して形成されるものである。仮足は、ガンの浸潤・転移にも関与している。運動時には、細胞膜付近でアクチンの重合による繊維ができ、この繊維がネットワークを形成することで仮足ができる。
なお、凹凸構造の幅は、例えば、3μm以下、2μm以下、1μm以下、700nm以下、500nm以下、250nm以下というように、小さくなるほど仮足を成長させることができる点で好ましい。
また、凹凸構造の深さ(加工対象物200の垂直方向の寸法)は、10nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、1μm以上、10μm以上、100μm以上等種々の大きさに形成される。また、このパターンのアスペクト比としては、0.2以上、0.5以上、1以上、2以上等種々のものがある。
また、凹凸構造は、図1に示すように、平面方向の形状が多角形であると共に最小内径が3μm以下のセルを複数連続した構造でも良い。これにより、細胞が二次元方向(平面方向)に広がった単層細胞に成長するのを阻害し、三次元状のスフェロイドに成長させることができる。この際、凹凸構造の平面方向の形状は正多角形のものが良く、更に平面方向へ等方的に連続して形成できる正三角形、正方形、正六角形のものが好ましい。これにより、等方的に均一な構造上でスフェロイドを成長させることができる。
また、セルの最小内径(好ましくは最大内径)やセル間の線202の幅は3μm以下、2μm以下、1μm以下、700nm以下、500nm以下、250nm以下というように、小さくなるほど仮足を成長させることができる点で好ましい。
また、細胞培養構造体の形状としては、どのようなものでも良いが、例えば、フィルム状のものや基板状(プレート状)のものを用いることができる。更に、材質は、細胞に対し無毒性のものであればどのようなものでも良く、例えば「ポリスチレン」、「ポリイミド」、「環状オレフィン共重合体(COC)や環状オレフィン重合体(COP)等の環状オレフィン系熱可塑性樹脂」、「アクリル樹脂」、「光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等のその他の樹脂」、「酸化アルミニウム等の金属」、「ガラス」、「石英ガラス」、「シリコン」等の材料を用いることができる。また、シリコンやガラス等からなる基板本体の表面に、「樹脂」、「フォトレジスト」、「酸化アルミニウムなどの金属」等の被覆層が形成されたものを用いることもできる。
なお、フィルム状とは、その厚さが、少なくとも1mm以下のものを指す。また、顕微鏡観察のし易さの観点からは薄い方が好ましく、500μm以下、200μm以下、100μm以下、50μm以下、40μm以下等、種々の厚さのものを用いることができる。
また、細胞培養構造体の大きさは、通常の容器、例えばシャーレ又はディッシュ、マルチウェルプレート、フラスコ、チェンバースライドの底面の大きさ以上に形成される方が好ましい。例えば、マルチウェルプレートの場合には、縦70〜90mm、横100〜130mmに形成される方が良い。また、細胞培養構造体がフィルム状の場合には、マルチウェルプレートの各穴の底面の大きさ以上に形成される方が好ましい。例えば、96穴マルチウェルプレートの場合には、約7mm以上に形成する方が良い。
また、図1(c)に示すように、図1(b)の隣り合う多角形201(正方形)同士の間に溝203が形成されているものも含まれる。この溝により、培養時の培地の成分を細胞又はスフェロイドの隅々にまで行き渡らせることができる。
次に、このような細胞培養構造体の製造方法について説明する。細胞培養構造体の製造方法には、加工対象物200に対し型100を押圧して型100に形成された微細なパターン(凹凸構造)を転写するナノインプリント技術を用いることができる。ナノインプリント技術には、熱式のインプリントプロセス技術や光式のインプリントプロセス技術等がある。図2に熱式のインプリントプロセス技術に用いる加工装置1を示す。
加工装置1は、図2に示すように、所定のパターンを有する型100と加工対象物200とを押圧して、型のパターンを加工対象物200に転写する微細加工装置であって、型100を保持する型保持部2と、加工対象物200を保持する加工対象物保持部12と、加工対象物200に対する型100の相対的な位置およびその位置を変化させる変位速度を調節可能な変位手段5と、加工対象物200に対する型100の相対的な位置を検出する位置検出手段7と、型100と加工対象物200との間の圧力を検出する圧力検出手段8と、型100を加熱する型加熱手段3と、型100を冷却する型冷却手段4と、型100の温度を検出する型温度検出手段31と、加工対象物200を加熱する加工対象物加熱手段13と、加工対象物200を冷却する加工対象物冷却手段14と、加工対象物200の温度を検出する加工対象物温度検出手段131と、位置検出手段7、圧力検出手段8、型温度検出手段31および加工対象物温度検出手段131の検出情報に基づいて、変位手段5、型加熱手段3、型冷却手段4、加工対象物加熱手段13および加工対象物冷却手段14の作動を制御する制御手段300と、で主に構成される。
型100の材料は、加工対象物200にその成分が付着することがなければどのようなものでも良く、例えば「ニッケル等の金属」、「セラミックス」、「ガラス状カーボン等の炭素素材」、「シリコン」などが用いられる。また、型100は、加工対象物200に押圧して加工対象物200を加工し得るものであればどのようなものでもよいが、その一端面(パターン面100a)に、凹凸からなる所定のパターンが形成されている。このパターンは、上述した細胞培養構造体の凹凸構造を反転させたものである。また、このパターンは、そのパターン面100aに精密機械加工を施すことで形成することができる。また、型100の原盤となるシリコン基板等にエッチング等の半導体微細加工技術によって所定の凹凸を形成した後、このシリコン基板等の表面に電気鋳造(エレクトロフォーミング)法、例えばニッケルメッキ法によって金属メッキを施し、この金属メッキ層を剥離して、凹凸からなるパターンを形成することもできる。もちろん型100は、微細パターンが形成できるものであれば材質やその製造法が特に限定されるものではない。このパターンの凹凸の幅は、製造される細胞培養構造体の種類にもよるが、3μm以下、2μm以下、1μm以下、700nm以下、500nm以下、250nm以下、等種々の大きさに形成される。更に、この凹凸の深さ(加工対象物200の垂直方向の寸法)は、10nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、1μm以上、10μm以上、100μm以上等種々の大きさに形成される。また、この凹凸のアスペクト比としては、0.2以上、0.5以上、1以上、2以上等種々のものがある。更に、このパターンが占める領域は、900mm以上、更に好ましくは2500mm以上の大きさが良い。なお、この型は、成型中に加熱・冷却されるため、できる限り薄型化し、その熱容量を小さくする方が好ましい。
型保持部2は、図2に示すように、型100を保持する型保持面2aに、ねじやクランプ金具等の締結具で型100を面接触するように固定可能に形成される。なお、型保持部2の構造は、型100を型保持面2a上に保持するものであればどのようなものでも良く、例えば、型保持面2aに静電吸着や真空吸着により吸着保持する構造とすることも可能である。
また、型保持部2には、型100を加熱するための型加熱手段3、例えば非常に応答性の良いカーボンヒータを備えている。カーボンヒータは、制御手段300によって図示しない電源からの電流供給を制御されており、型100を所定の一定温度に維持することができる。なお、ヒータとしては、例えば、伝熱ヒータやセラミックヒータ、ハロゲンヒータ、IHヒータ等を用いることも可能である。
また、型保持部2には、型100を冷却する型冷却手段4が設けられている。型冷却手段4としては、例えばアルミニウムや銅等の熱伝導性の高い金属で形成された型保持部2の内部に水や油等の冷却液、空気や不活性ガス等の冷却気体を流すことで、型100を冷却することができる冷却流路を用いることができる。
また、型保持部2には、型100の温度を検出する型温度検出手段31、例えば熱電対が設けられている。また、型温度検出手段31は、制御手段300に電気的に接続されており、検出した型100の温度に関する情報を制御手段300に伝達するように形成されている。
加工対象物保持部12は、図2に示すように、加工対象物200を略水平状態に保持するものであり、上面に加工対象物保持面12aを有した保持ステージを備えている。
この保持ステージには、加工対象物保持面12aに多数のバキューム孔(図示せず)が形成されており、このバキューム孔に図示しない負圧源から負圧を作用させることで、加工対象物保持面12a上に、加工対象物200を吸着保持できる構成となっている。なお、加工対象物保持部12の構造は、加工対象物200を加工対象物保持面12aに保持するものであればどのようなものでも良く、例えば、クランプ金具等の締結具で加工対象物保持面12aに固定したり、静電吸着で吸着保持したりする構造とすることも勿論可能である。
また、保持ステージの下部には保持した加工対象物200を加熱するための加工対象物加熱手段13、例えば非常に応答性の良いカーボンヒータを備えている。カーボンヒータは、制御手段300によって図示しない電源からの電流供給を制御されており、保持ステージ上の加工対象物200を所定の一定温度に維持することができる。なお、ヒータとしては、例えば、伝熱ヒータやセラミックヒータ、ハロゲンヒータ、IHヒータ等を用いることも可能である。
また、加工対象物保持部12には、加工対象物200を冷却する加工対象物冷却手段14を設けることも可能である。加工対象物冷却手段14としては、例えばアルミニウムや銅等の熱伝導性の高い金属で形成された加工対象物保持部12の内部に水や油等の冷却液、空気や不活性ガス等の冷却気体を流すことで、加工対象物200を冷却することができる冷却流路を用いることができる。
また、加工対象物保持部12には、加工対象物200の温度を検出する加工対象物温度検出手段131、例えば熱電対が設けられている。また、加工対象物温度検出手段131は、制御手段300に電気的に接続されており、検出した加工対象物200の温度に関する情報を制御手段300に伝達するように形成されている。
変位手段5は、図2に示すように、例えば、垂直方向に配置されたボールネジ51と、このボールネジ51を回転駆動させる電気モータ52とから構成されている。また、ボールネジ51の下端部と型保持部2の上面は、押圧部53、ベアリング機構54を介して連結されている。そして、ボールネジ51を電気モータ52で回転駆動することで、基台50と上部ベース55との間に設けられた複数例えば4本の支柱56に対し、押圧部53を型100と加工対象物200の接離方向(以下、Z方向と称する)に変位させることができる。なお、電気モータ52としては、直流モータ、交流モータ、ステッピングモータ、サーボモータ等、種々のものを用いることができる。ここで、変位手段5は、加工対象物200に対する型100の位置を、型100のパターンの深さ以下の変位量で調節できる方が好ましい。具体的には、変位量を100μm以下で調節することができるものが良く、好ましくは10μm以下、更に好ましくは1μm以下、更に好ましくは100nm以下、更に好ましくは10nm以下、更に好ましくは1nm以下で調節できるものが好ましい。
また、変位手段5は、加工対象物200に対する型100の変位速度を調節できるものが好ましい。具体的には、100μm/秒以下で調節できるものが良く、好ましくは10μm/秒以下、更に好ましくは1μm/秒以下、更に好ましくは100nm/秒以下、更に好ましくは10nm/秒以下、更に好ましくは1nm/秒以下で調節できるものが良い。なぜなら、制御手段300は、圧力検出手段8が検出した情報に基づいて変位手段5の作動を制御し、型100と加工対象物200との間の圧力を調節しているが、圧力検出手段8が検出した情報を変位手段5にフィードバックするには、多少の時間が掛かる。したがって、変位速度が大き過ぎると圧力検出手段8が検出した情報を変位手段5にフィードバックするのが遅れ、型100と加工対象物200との間の実際の圧力を正確に制御することができなくなるからである。
なお、ここでは、変位手段5を型保持部2側に設ける場合について説明したが、加工対象物保持部12側に設けることも勿論可能である。また、変位手段5としては、型100と加工対象物200との相対的な変位量や変位速度を調節できるものであれば、ボールねじと電気モータにより構成されるものに限られず、例えば、電圧を調節して大きさ(寸法)を変化させることができる圧電素子や磁界を調節して大きさ(寸法)を変化させることができる磁歪素子を用いることもできる。また、ボールねじおよび電気モータと圧電素子又は磁歪素子の両方を用いることも勿論可能である。この場合には、型100と加工対象物200を大きく変位させる際に、ボールねじおよび電気モータを適用し、型100と加工対象物200を微小量変位させる際に、圧電素子又は磁歪素子を用いることができる。更に、油圧式のものや空圧式のもの等を用いることも勿論可能である。
変位手段5をこのように構成することによって、型100を保持する型保持部2を上下し、加工対象物保持部12に保持される加工対象物200に対し、型100のパターン面100aを精密に近接・押圧及び離間することができる。
位置検出手段7は、例えば、型保持部2に配置されたリニアスケールにより形成される。このリニアスケールを用いて、加工対象物200と型保持部2との距離を測定し、その値から加工対象物200に対する型100の相対的な位置や変位速度を計算して検出することができる。また、位置検出手段7は、制御手段300に電気的に接続されており、検出した型100の位置や変位速度に関する情報を伝達するように形成されている。なお、位置検出手段7としては、リニアスケールに限らず種々のものを用いることができ、例えば、型保持部2側に設けられたレーザー測長機を用いて、加工対象物200の位置を測定するか、加工対象物保持部12側に設けられたレーザー測長機を用いて、型100の位置を測定すればよい。また、電気モータに設けられたエンコーダを用いて、変位手段5の変位量から計算により測定するものでもよい。なお、位置検出手段7の分解能は、少なくとも型100のパターンの深さ方向(Z方向)の大きさ以下、あるいは、変位手段5が調節できる変位量以下の値で検出できるものが好ましい。具体的には、100μm以下で検出することができるものが良く、好ましくは10μm以下、更に好ましくは1μm以下、更に好ましくは100nm以下、更に好ましくは10nm以下、更に好ましくは1nm以下で検出することができるものが好ましい。
位置検出手段7をこのように構成することによって、パターンの大きさや型100と加工対象物200との間の圧力に応じて、加工対象物200に対する型100のパターン面100aの位置を精密に調節することができるので、パターンの転写性および離型性を向上することができる。
圧力検出手段8は、型100と加工対象物200との間の圧力を検出するもので、例えば、型100と加工対象物200との間の荷重を測定するロードセルを用いることができる。これにより、荷重を測定し、型100のパターン面100aの面積で割れば型100と加工対象物200との間の圧力を検出することができる。また、圧力検出手段8は、制御手段300に電気的に接続されており、検出した圧力に関する情報を伝達するように形成されている。
制御手段300は、位置検出手段7、圧力検出手段8、型温度検出手段31および加工対象物温度検出手段131の検出情報に基づいて、変位手段5、押圧手段6、型加熱手段3、型冷却手段4、加工対象物加熱手段13および加工対象物冷却手段14の作動を制御するもので、例えばコンピュータを用いることができる。
ここで、調節する変位速度は、加工対象物200の材料や温度等にもよるが、例えば、100μm/秒以下で調節するのが良く、好ましくは10μm/秒以下、更に好ましくは1μm/秒以下、更に好ましくは100nm/秒以下、更に好ましくは10nm/秒以下、更に好ましくは1nm/秒以下で調節するのが良い。これにより、型100と加工対象物200の間の実際の圧力を確実に予め設定した所定値以下に調節することができる。なお、圧力検出手段8の情報に基づいて型加熱手段3および加工対象物加熱手段13の少なくともいずれか一方を制御し、加工対象物200の成型面200aの温度を変化させて、型100と加工対象物200との間の圧力を調節することも可能である。
この加工装置1を用いた細胞培養構造体の製造方法は以下の通りである。
まず、型100と加工対象物200は、成型するための所定の温度に加熱される。ここで、加工対象物200が基板等の比較的厚みのあるものの場合には、型100は加工対象物200より高い温度に加熱される方が好ましく、更に好ましくは、型100を加工対象物200が軟化する軟化温度(ガラス転移点や融点の温度)より高い温度に加熱し、加工対象物200はその軟化温度(ガラス転移点や融点の温度)より低い温度に加熱する方が好ましい。これにより、型100と加工対象物200とを押圧した際に、型100から加工対象物200に熱が伝達し、加工対象物200の表面近傍のみを軟化させることができるので、成型時に加工対象物200が潰れる等の問題を回避することができる。一方、加工対象物200がフィルムやシートのように比較的薄いものの場合には、型100と加工対象物200の温度を同じか同程度の温度に加熱する。これは、熱が伝わり易く結局型100と加工対象物200が同じ温度になるためである。加熱する温度は、加工対象物200の材質や型100の材質によるが、例えば、加工対象物が軟化する軟化温度(Tg)+20℃以上、軟化温度(Tg)+25℃以上、軟化温度(Tg)+30℃以上等にすれば良い。勿論、この温度に限定されるものではない。
型100と加工対象物200とを所定温度に加熱した後、型100と加工対象物200とを予め設定した圧力で押圧する。この際、型100と加工対象物200との間の圧力は、型100のパターンを加工対象物200に転写できる大きさの範囲で、できる限り小さい圧力を用いる方が良い。具体的には、4MPa以下、好ましくは2MPa以下、更に好ましくは1.5MPa以下、更に好ましくは1MPa以下、更に好ましくは、0.5MPa以下、更に好ましくは0.25MPa以下にするのが良い。これにより、従来よりも比較的小さい圧力で押圧するため、型100と加工対象物200との間の密着力を増加させることがなく、型崩れ等を防止して離型を容易にすることができる。
この場合、加工対象物200に対する型100の変位速度は、型100と加工対象物200との間の圧力が予め設定した圧力、例えば4MPaを常に超えないように調節できる速度にする方が良い。なお、更に好ましくは、加工対象物200に対する型100の変位量を制御して押圧する方が好ましい。
また、型100と加工対象物200とを押圧し、型100のパターンを加工対象物に転写する際には、型100と加工対象物200の雰囲気を真空にする方が好ましい。この場合、パターンの転写前に真空雰囲気にすれば良いが、加工対象物200の酸化等を考慮すれば、加工対象物200の加熱前に真空雰囲気にする方が好ましい。真空度としては、例えば40Pa以下にすれば良い。
次に、型100と加工対象物200とを接触させたまま、型100と加工対象物200を冷却し、加工対象物200の温度をガラス転移温度(または軟化温度)以下にする。例えば、冷却温度を軟化温度(Tg)−5℃以下、軟化温度(Tg)−45℃以下、軟化温度(Tg)−90℃以下等にすれば良い。勿論、この温度に限定されるものではない。また、型100と加工対象物200との間の圧力を保持したままで冷却しても良いし、ゼロ近傍まで減圧した後に冷却しても良い。
最後に、型100と加工対象物200とを離型して、微細加工方法のプロセスを終了する。
なお、この場合、転写されたパターンが形成されている加工対象物上の領域は、大きい方が好ましく、例えば、900mm以上、更に好ましくは2500mm以上の大きさが良い。
これにより、精密に形状を制御された、非常に安価で、大量生産に向く細胞培養構造体、すなわち、凹凸の幅が3μm以下の凹凸構造を有する細胞培養構造体を製造することができる。
なお、細胞培養構造体の製造方法は、ナノインプリント技術以外の方法を用いても良く、例えば、ブラストやコロナ放電、エッチング等の他の方法により表面に凹凸構造を形成するようにしても良い。この場合、細胞培養構造体は、凹凸の幅を3μm以下に形成する方が良く、好ましくは、2μm以下、1μm以下、700nm以下、500nm以下、250nm以下に形成される。
また、この場合にも、細胞培養構造体の大きさは、通常の容器、例えばシャーレ又はディッシュ、マルチウェルプレート、フラスコ、チェンバースライドの底面の大きさ以上に形成される方が好ましい。例えば、マルチウェルプレートの場合には、縦70〜90mm、横100〜130mmに形成される方が良い。また、細胞培養構造体がシート又はフィルム状の場合には、マルチウェルプレートの各穴の底面の大きさ以上に形成される方が好ましい。例えば、96穴マルチウェルプレートの場合には、約7mm以上に形成する方が良い。
<2>細胞培養容器
上述したように製造された細胞培養構造体は、細胞を培養するための容器であって、容器内に凹凸の幅が3μm以下の凹凸構造が形成されている細胞培養容器210に用いることもできる。
容器としては細胞を培養できるものであればどのようなものでも良く、例えば、培養用のシャーレ又はディッシュ、マルチウェルプレート、フラスコ、チェンバースライド等がある。
凹凸構造は、例えば、容器内の少なくとも一部に上述した細胞培養構造体を固着して形成すれば良い。
また、細胞培養容器がシャーレやマルチウェルプレートである場合には、例えば、図7、図8に示すように、1以上の穴211を有する筒状部材212と、プレート状の上述した細胞培養構造体220と、で構成するか、あるいは、図9に示すように、1以上の穴211を有する筒状部材212と、シート又はフィルム状の上述した細胞培養構造体220と、この細胞培養構造体220を筒状部材212との間に挟み込んで一体化する基板213と、で構成すれば良い。
この一体化する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、無毒性の接着剤を用いて接合したり、熱融着で接合、或いは吸着やねじによる螺合により接合したりすることができる。
無毒性接着剤には、アロンアルファ(商標名)等があり、少なくとも筒状部材212と細胞培養構造体220の間を密封するように接合すれば良い。
熱融着の場合は、少なくとも筒状部材212又は細胞培養構造体220をガラス転移温度又は融点近くまで加熱して接合する。例えば、超音波による振動エネルギーを摩擦熱に変換し、少なくとも筒状部材212又は細胞培養構造体220のいずれか一方をガラス転移温度又は融点まで加熱する超音波溶着を用いて接合すれば良い。
また、通常のシャーレやマルチウェルプレートの容器内に、所定のパターンが形成された型を押圧して、容器内の底面等に上述した細胞培養構造体と同様のパターンを転写するようにしても良い。この場合、型としては、容器の穴211の大きさよりわずかに小さいハンコ状のものを用い、型を容器の穴の上を移動しながら穴の中に挿入してパターンを成型するか、あるいは、このハンコ状の型を複数並べて複数の穴の中に挿入し、一括でパターンを成型すれば良い。もちろん、上述したブラストやコロナ放電、エッチング等の他の技術を用いて凹凸構造を形成することも可能である。
また、図10、図11に示すように、筒状部材212と細胞培養構造体220との間には、これらの間を密封するシール部材215、例えばシリコンゴム等からなるガスケットを配置する方が好ましい。このガスケットは、筒状部材212又は細胞培養構造体220にシリコンゴム等を塗布して一体に形成されるものでも勿論構わない。
<3>スフェロイド
次に、上述した細胞培養構造体上又は細胞培養容器上で培養した本発明のスフェロイドについて説明する。
上述した細胞培養構造体又は細胞培養容器上にスフェロイドにする細胞を播種し、培養することで細胞は、分裂を繰り返し、三次元立体状のスフェロイドとなる。
ここで使用する細胞としては、間葉系細胞、肝細胞、繊維芽細胞、内皮細胞、神経細胞、心筋細胞、グリア細胞、角膜上皮細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、脂肪細胞等の正常な細胞や、癌細胞由来細胞株(例えば、HepG2、HuH-7)や、イモータライズ(不死化)された細胞(例えば、HHY41、NKNT-3、Fa2N-4株等)、や染色体異常を有する細胞等の異常な細胞を用いることができる。培養に使用する培地は、かかる目的の細胞の種別に応じて当業者であれば適宜調製して使用することができる。なお、本発明の細胞培養構造体および細胞培養容器は、いずれもその表面に細胞が固着する構造を有するため、培養により生じたスフェロイドはかかる構造体又は容器上に固着して形成される。この理由は、本発明の細胞培養構造体上では、非常に多くの仮足が成長し、凹凸構造にしっかりとした足場を作るためであると考えられる。ここで、本発明の細胞培養構造体上に単細胞を播種すると共に8時間培養すると、細胞の周囲に、周囲の単位長さ当たり0.1本/μm以上の仮足が形成される。従って、スフェロイド形成のための培養に際する培地交換は、通常の培養と同様の手法で可能であり、培地交換を行いながらスフェロイドを容易に形成できる。
スフェロイドの大きさとしては、10μm以上あれば良いが、好ましくは15〜50μmが良く、更に好ましくは20〜40μmが良く、更に好ましくは25〜35μmである方が良いが、スフェロイドを使用する目的に応じて培地交換と培養を繰り返してより大きなスフェロイドを形成することも可能である。なお、本発明における「スフェロイドの大きさ」は、細胞培養構造体又は細胞培養容器と平行の平面上における長径を指称し、光学顕微鏡観察又は電子顕微鏡観察により正確に測定することができる。
このような方法により得られるスフェロイドは、主に、単一の細胞が分裂することで生じたクローン細胞によって構成される。通常、生体内にできる癌細胞は、従来技術のスフェロイド(特許文献1に記載のスフェロイド)のように複数の細胞が凝集してなるものではなく、単一細胞が分裂して形成されるため、本発明では、生体内にできる癌細胞に、より近い性質のスフェロイドを培養することができ、より確度の高いスクリーニングを行うことができる。
また、かかるスフェロイドは生体内に存在する組織と様々な点で共通した性質を有しており、単層培養と比して、より生体内の組織環境を再現している。
また、本発明により得られるスフェロイドは、様々な材質に人為的に制御された微細構造上で培養されることにより、この微細構造が形成された固相への固着面積が制御される。すなわち、その固着面積を、スフェロイドの全表面積の50%未満、好ましくは40%未満、更に好ましくは30%未満に調整することが可能である。
また、このように固相へ固着したスフェロイドは、従来の非固着型スフェロイド(アガロースゲル内で成型されたスフェロイドやフラスコ内で培地を流動させて成型させたスフェロイド)と比して、細胞外基質に対する細胞接着因子、細胞接着タンパク質又は細胞骨格タンパク質を強く発現していることが好ましい。かかる細胞接着因子・細胞接着タンパク質・細胞骨格タンパク質としては、たとえばインテグリン、カドヘリン、アクチンが例示される。これらはいずれも細胞接着に密接に関連していることが知られている。生体内の組織や腫瘍は、その三次元構造を維持すべくかかる因子・タンパク質を発現しているため、これらを発現しているスフェロイドは特に生体内における組織や腫瘍の特性を維持しているといえる。本発明により得られるスフェロイドはかかる因子・タンパク質を、従来のスフェロイドと比して強く発現している。これらの因子・タンパク質の発現量は、たとえばこれらの因子・タンパク質に対する特異的結合対(抗体、レセプター、レクチンなど当業者であれば適宜選択して使用することができる)を利用した免疫染色、ウェスタンブロッティングなどで確認することができる。
例えば、アクチンの測定は下記の方法によって行うことができる。
スフェロイドを形成する培養細胞を固定し、界面活性剤等で処理を行い、細胞を溶解させ、更にBSA(Bovine serum albumin)等でブロッキングする。この様にして調整したサンプルに、抗アクチン抗体等を結合させて、結合した抗体に対して例えば蛍光物質等の標識物質でラベルした二次抗体等を結合させ、この標識物質等を検出、定量することでアクチンを測定できる。
また、さらに本発明のスフェロイドは、たとえば酸素の欠乏や、栄養の不足といった腫瘍や組織と同様の環境を実現している。このことは、たとえば酸素が不足した状態で発現するタンパク質(たとえばHIF−1αタンパク質等)の高発現(タンパク質量で単層培養時の1.5倍以上、好ましくは2倍以上の発現)や、栄養が不足した状態で観察される現象(たとえばAMPKのリン酸化亢進等:たとえばAMPKのリン酸化亢進であれば単層培養時の1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上の亢進)を確認できることで裏付けられる。これらはそれぞれに対する特異的結合対(抗体やレセプターなど)を使用したウェスタンブロット、免疫染色などにより当業者であれば適宜観察することができる。
このようにして製造された本発明のスフェロイドは、薬剤のスクリーニングのために使用することができる。すなわち、細胞培養基材又は細胞培養容器に固着したスフェロイドに対して、化学物質、薬剤等を添加し、スフェロイドを形成する細胞に対して何らかの効果を有するものをスクリーニングすることができる。
また、本発明のスフェロイドは、疾病の悪性度鑑別のために使用することもできる。すなわち、生体から採取した組織片や腫瘍片を、細胞毎に分散させた後、本発明のスフェロイドとする課程において増殖能の評価を行ったり、或いはかかるスフェロイドからの遊離細胞の有無を評価したりすることにより癌転移能の評価をすることができる。
また、本発明のスフェロイドは、再生医療のために使用することもできる。すなわち、健常な組織より採取した細胞より本発明のスフェロイドを調製し、かかるスフェロイドを患者や治療を要する動物の該当組織に直接的又は間接的に注入することで、該当組織の機能の維持・再生に使用することができる。
また、本発明のスフェロイドは、食品機能評価のために使用することもできる。すなわち、細胞培養基材又は細胞培養容器に固着したスフェロイドに対して、機能性食品、食品中の活性成分等を添加し、スフェロイドを形成する細胞に対して何らかの効果を有するものをスクリーニングすることができる。
また、本発明のスフェロイドは、食品又は薬剤の安全性評価のために使用することもできる。すなわち、細胞培養基材又は細胞培養容器に固着したスフェロイドに対して、食品・薬剤等を添加し、スフェロイドを形成する細胞の形態的・生化学的変化を検証することで、これらの物質の安全性評価をすることができる。
以下、本発明を実施例により、より具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
加工対象物としては、ガラス転移温度{軟化温度(Tg)}が136℃のシクロオレフィンポリマーからなる膜厚40μmおよび100μmの透明なフィルム(日本ゼオン株式会社製:ZF14)を用いた。
なお、微細成型の評価には、SCIVAX社製の微細成型装置(VX-2000N-US)を使用した。金型は、加工対象物に転写した際に、ラインアンドスペースからなる凹凸構造を転写可能なパターンを有するものと、正六角形のハニカム構造を転写可能なパターン(ハニカム構造を反転させたパターン)を有するものの二つを用いた。また、この金型は、ニッケル製のもので、転写可能領域が50mm×50mm(金型の外形は55mm×55mm):面積が2500mmの正方形であるものを用いた。ラインアンドスペースからなる凹凸構造は、凹凸の深さが1μmで、凹凸の幅が、10μm、5μm、4μm、3μm、2μm、1μm、700nm、500nmの8種類の領域が形成されているものとした。また、ハニカム構造は、線幅が250nmでこの線の高さが380nm(アスペクト比が約1.5)、一つのセル(六角形)の最大内径が2μm(すなわち、線幅も含めた最大外径が2.5μm)とした。
加工対象物をシリコン基板上に載置した後、ガラス転移温度{軟化温度(Tg)}+25℃(161℃)に加熱し、ガラス転移温度{軟化温度(Tg)}+25℃(161℃)に加熱した金型を5μm/秒の速度で該フィルム表面に押し付け、金型上部に取り付けた荷重センサーが4500N(圧力が約1.5Mpa)に達したところで、その荷重で600秒間保持した。
その後、膜厚40μmのフィルムに対しては、金型の圧力を一定に保持しながら、ガラス転移温度{軟化温度(Tg)}−46℃(90℃)まで冷却し、冷却完了後、金型を10μm/秒の速度でフィルムから離型した。走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、転写領域全面に伸びや剥離の無い均一で良好な凹凸構造(ラインアンドスペースおよびハニカム構造)のパターンが転写されていた。ハニカム構造からなるパターンの転写後の平面写真(倍率:1万倍)を図3に、斜視方向からの写真(倍率:5千倍)を図4に示す。
また、膜厚が100μmのフィルムに対しては、金型の圧力を一定に保持しながら、ガラス転移温度{軟化温度(Tg)}−5℃(131℃)まで冷却し、冷却完了後、金型を10μm/秒の速度でフィルムから離型した。走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、転写領域全面に伸びや剥離の無い均一で良好なハニカム構造のパターンが転写されていた。転写後の平面写真(倍率:1万倍)を図5に、斜視方向からの写真(倍率:2万倍)を図6に示す。
厚さ3mmのポリスチレン製プレートを常法のブラストにより表面を粗面処理し、凹凸を有するフィルムを作成することができる。
膜厚40μmのポリスチレン製フィルムを常法のコロナ放電により表面を粗面処理し、凹凸を有するフィルムを作成することができる。
実施例1で製造した厚さ40μmの細胞培養構造体(ハニカム構造)を1.5cm角の大きさに切り取り、これを直径が3.5cmのシャーレ内に熱融着により固定して細胞培養容器を調製した。
実施例4で調製した細胞培養容器内にα−MEM培地(10%牛胎児血清、20mmol/lHEPES、8mmol/l炭酸水素ナトリウム、42000単位/lペニシリン、および0.03g/lストレプトマイシンを含む)2mlとともにヒトグリオーマ由来の細胞株U251細胞を1000個播種した。これを37℃、2%COの雰囲気下で7日間(途中、3日目と6日目に培地交換を行った)培養したところスフェロイドが形成された(図12参照)。
また、このようにして形成されたスフェロイドについて、ウェスタンブロット法により、HIF−1αタンパク質の発現量(抗HIF−1ウサギポリクローナル抗体を使用:サンタクルーズバイオテック社製)及びAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)のリン酸化(抗AMPKウサギポリクローナル抗体:セルシグナリングテクノロジー社製)を培養開始7日後に確認した。対照としては、従来のポリスチレン製培養皿で同様の細胞密度で播種、培地交換して培養したU251細胞を使用した。この結果を図13に示す。なお、ウェスタンブロット法は、次の方法により行った。まず、培養細胞より抽出した総蛋白質20μgをプレキャストゲル(ATTO製ポリアクリルアミドゲルcパジェル)で電気泳動を行った。電気泳動後に、ブロッティング緩衝液(20 mM Glycine/25mMTrisHCl/20%Methanol, pH 8.0)でPVDF膜(ATTO製クリアブロット・P膜)に転写を行った。転写後のPVDF膜を5%BSA・TBST(20 mM Tris-HCl/0.15 M NaCl/0.1 % Tween(商標名) 20,pH 8.0)溶液でブロッキングを行った後に、1次抗体を含む1%BSA・TBST溶液中で1時間インキュベーションした。TBST溶液で十分に洗浄後、2次抗体を含む溶液中で1時間インキュベーションした。十分に洗浄後、化学発光法(GL/Amersham製ECLplus)で検出した。
この結果より、培養されたスフェロイドは、HIF−1αタンパク質の発現量が単層細胞よりも多く、また、単層細胞よりもAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)のリン酸化が亢進していることから、単層細胞よりも生体内の組織に近い性質を示すことがわかる。このことは、本発明により得られるスフェロイドが、薬剤耐性、毒性などの試験に有用であることを示している。
また、このようにして形成されたスフェロイドについて、アクチンフィラメントの測定を行った。アクチンフィラメントの測定は、次の方法により行った。まず、培養細胞をPBSで2回洗浄する。3%Folmaldehyde/PBSで15分間固定してPBSで2回洗浄する。次に、0.1%TritonX-100/PBSで15分間処理を行いPBSで2回洗浄する。次に、1%BSA/PBSで30分間ブロッキングして2回PBSで洗浄する。次に、1μg/ml抗マウスアクチンモノクローナル抗体/0.1%BSA/PBS中で1時間インキュベーション後、PBSで3回洗浄する。次に、1μg/mlAlexaFlour488/0.1%BSA/PBSで1時間インキュベーション後、PBSで4回洗浄する。最後に、glycerol/PBSで封入し蛍光顕微鏡で観察する。その結果、アクチンフィラメントの増加を確認できる。
なお、上述の本発明のスフェロイド付き構造体の調製に際し、平板効率とスフェロイド生成率を測定した。この結果を図14に示す。
平板効率は、単位面積あたりに播種した細胞数に対する培養開始3日経過時に単位面積あたりにコロニーを形成している数の割合(%)として算出し、スフェロイド生成率は、単位面積あたりに播種した細胞数に対する培養開始7日経過時に単位面積あたりに形成されたスフェロイド数の割合(%)として算出した。
実施例4で調製した細胞培養容器内にα−MEM培地(10%牛胎児血清、20mmol/lHEPES、8mmol/l炭酸水素ナトリウム、42000単位/lペニシリン、および0.03g/lストレプトマイシンを含む)2mlとともにヒト頭頚部由来の細胞株SQ20B細胞を1000個播種した。これを37℃、2%COの雰囲気下で7日間(途中、3日目と6日目に培地交換を行った)培養したところスフェロイドが形成された(図15参照)。
実施例4で調製した細胞培養容器内にα−MEM培地(10%牛胎児血清、20mmol/lHEPES、8mmol/l炭酸水素ナトリウム、42000単位/lペニシリン、および0.03g/lストレプトマイシンを含む)2mlとともにヒト大腸癌由来の細胞株SW480細胞を1000個播種した。これを37℃、2%COの雰囲気下で7日間(途中、3日目と6日目に培地交換を行った)培養したところスフェロイドが形成された(図16参照)。
実施例4で調製した細胞培養容器内にα−MEM培地(10%牛胎児血清、20mmol/lHEPES、8mmol/l炭酸水素ナトリウム、42000単位/lペニシリン、および0.03g/lストレプトマイシンを含む)2mlとともにヒト大腸癌由来の細胞株HT29細胞を1000個播種した。これを37℃、2%COの雰囲気下で7日間(途中、3日目と6日目に培地交換を行った)培養したところスフェロイドが形成された(図17参照)。
実施例1で製造した厚さ40μmの細胞培養構造体(ラインアンドスペース)を1.5cm角の大きさに切り取り、これを直径が3.5cmのシャーレ内に熱融着により固定して本発明細胞培養容器を調製した。
実施例9で調製した本発明細胞培養容器内にα−MEM培地(10%牛胎児血清、20mmol/lHEPES、8mmol/l炭酸水素ナトリウム、42000単位/lペニシリン、および0.03g/lストレプトマイシンを含む)2mlとともに正常肝細胞株を1000個播種した。これを37℃、2%COの雰囲気下で8時間培養したところ、仮足を有するスフェロイドが細胞培養構造体上に形成された。
また、このようにして形成されたスフェロイドについて、スフェロイドの周囲の長さと、スフェロイドの周囲に形成されている仮足の数を測定し、周囲の単位長さ(1μm)当たりに対して成長している仮足の本数(本/μm)を計測した。この結果を表1および図18に示す。
Figure 0005397934
この結果より、スフェロイドの仮足の数は、ラインアンドスペースの凹凸の幅の大きさが3μm以下になると急激に増加していることがわかる。

Claims (3)

  1. セル間の幅が3μm以下で平面方向の形状が正三角形、正方形、正六角形のいずれかであると共に最小内径が3μm以下のセルを等方的に連続して形成された細胞接着面として機能する凹凸構造であって、ナノインプリント技術によって精密に制御して形成された前記凹凸構造を有するスフェロイドを製造するために用いることができる細胞培養構造体上で細胞を培養して得られたことを特徴とするスフェロイド群。
  2. セル間の幅が3μm以下で平面方向の形状が正三角形、正方形、正六角形のいずれかであると共に最小内径が3μm以下のセルを等方的に連続して形成された細胞接着面として機能する凹凸構造であって、ナノインプリント技術によって精密に制御して形成された前記凹凸構造を有するスフェロイドを製造するために用いることができる細胞培養構造体上で細胞を培養することを特徴とするスフェロイド群の製造方法。
  3. 請求項記載のスフェロイド群の、薬剤のスクリーニングのための使用。
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